説明

サーマルプリンタ

【課題】サーマルプリンタにおけるモータの発熱を効率よく、充分に放熱させることができる構造の提供
【解決手段】サーマルプリンタは、ヘッド部4とプラテンローラ3とモータ5と歯車伝達機構6をフレーム2に保持する。フレーム2を合金材料のダイキャスト加工により成形し、モータ取付部に放熱フィン15を形成する。放熱フィン15の各フィン16の寸法d1はモータ取付部の壁(左側壁12)の厚さ寸法d2よりも大きくするのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
サーマルプリンタの放熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
プラテンローラを用紙搬送手段とするプリンタは、これを駆動するモータに発熱があるので、種々の放熱対策が提案されている。特に小形でサーマルヘッドを利用するプリンタでは、放熱に利用されることが多いフレーム自体が小形で熱容量が小さい上、部品相互が近接していて放熱環境が悪い。加えて、ヘッド部分からの放熱もあり、さらに、ヘッドに対する熱影響も考慮する必要があって、モータの放熱対策は重要である。
特許文献1のサーマルプリンタでは、プリンタのメインフレームとは別に、アルミ箱型部材2を準備し、これにモータ1の取付フランジ11を密着させて取り付けている。引用文献2のプリンタ装置では、プリンタのメインフレーム10とは別に準備した歯車取付部材22にモータ21を取り付けることとし、歯車取付部材22を放熱性の良い合金材料のダイキャスト加工によるものとしている。
【0003】
【特許文献1】特開平7−0237324号公報
【特許文献2】特開2005−238658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のサーマルプリンタにおける放熱構造は効果の点で充分とはいえない。例えば、特許文献1のアルミ箱型部材は箱型とすることで放熱面を確保しようとするものであるが、単にアルミ板のプレス加工品であって、熱容量が少なく、短時間で熱的に飽和する。このために、モータの発熱量とアルミ箱型部材の放熱量とが均衡する温度が高く、放熱効果が充分でない。
特許文献2の歯車取付部材は、合金材料のダイキャスト部品であるから、放熱効果は特許文献1の例よりは高い。しかし、歯車取付部材は、従来、メインフレームへ直接それぞれに取り付けていたモータと歯車伝達機構をユニットに組み付けるためのものであり、このユニットを本体フレームへ組み付けることによって各部品の位置精度を向上させるためのものである。歯車取付部材の素材を合金材料とすることで、放熱効果をあげてはいるが、歯車取付部材は本体フレームからすると小形で熱容量は小さく、また、放熱効果を向上させるための積極的な構成は見出せない。
【0005】
この発明は、プラテンローラを用紙搬送手段とするサーマルプリンタにおけるモータの発熱を効率よく、充分に放熱させることができる構造の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
サーマルヘッドとプラテンとモータと歯車伝達機構を保持するフレームとを有するサーマルプリンタにおいて、前記フレームを合金材料のダイキャスト加工により成形し、フレームの前記モータ取付部に放熱フィンを形成する。フレームにおいて放熱フィンを設ける箇所は、モータ取付部のその反対側面やフレームの少なくとも一方の側壁の外側面である。また、放熱フィンは、上下方向に形成された複数の溝を挟んで構成することがあり、さらに、フィンとしての突出寸法をモータが取り付けられる壁の厚さよりも大きくすることがある。
【発明の効果】
【0007】
プリンタにおいてモータの発熱と熱的に関連する部材の熱容量が増加し、また、放熱面積が拡大することにより、放熱効果が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1,2は、サーマルプリンタの本体カバーを取り除いたプリント機構部1を、図1では組み付け後の全体を、図2では各部品を分解した状態で示している。
プリント機構部1は、フレーム2、プラテンローラ3、サーマルヘッドを備えたヘッド部4、モータ5、歯車伝達機構6を備える。符合7はギアカバー、符合8はガイドプレート、符合9はフレキシブルプリント回路(FPC)、符合10は、ヘッド押圧ばねである。これらの部材は、フレーム2を除いて従来の各部品と同様の構成及び機能である。なお、サーマルプリンタは制御装置(図示していない)を備え、前記のFPC9を通じてヘッド部4に印字信号を伝達すると共にモータ5の駆動を制御している。
【0009】
フレーム2は、この実施例において、アルミ合金のダイキャスト部材であり、前記のプラテンローラ3、ヘッド部4、歯車伝達機構6などを組み付けてプリント機構部1の全体を構成する上で中心となる部材である。フレーム2は、用紙11の供給方向に向かって左右の側壁12,13とこれらを結合する連結部14を有して一体に構成されている。
左側壁12の外面には、歯車伝達機構6を構成する各ギア6a〜6dを軸支する軸12a〜12dが外側へ突出して一体に形成されるとともに、後端部(用紙11の供給方向に向かって手前側)に放熱フィン15が一体形成されている。放熱フィン15は複数のフィン16からなり各フィン16は上下方向の溝17を挟んで平行に配置されている。各溝17の上端及び下端は開放されている。各フィン16の外側への突出寸法d1は左側壁12の厚さ寸法d2より大きく、この実施例で3倍程度としてある。
【0010】
左側壁12の後端部でその内面はモータ5の取付部であって、このモータ取付部にはモータ5の出力軸18とその先端に取り付けた出力ギア18aを内外に貫通させるための通孔と、モータ5を左側壁12へ固定するためのビス孔(いずれも図に見えていない)が形成されている。
左側壁12の中央部で上面には爪受け部19が外側へ水平に突出して形成され、また、左側壁12の前端部にはプラテンローラ3の左軸受け溝20が形成されている。
右側壁13は、中央部の上面に右軸受け溝21が形成されていると共に、外側にヘッドアップレバー22が前後方向で位置決め可能に取り付けられている。符合25はプラテンの有無を検出するスイッチである。
【0011】
プラテンローラ3は、両端に回転軸が突出して設けられると共に左側の回転軸に受動ギア3aが取り付けられている。
ヘッド部4は、左右に長く平らな板状部材の両端が左右の側壁12,13へ回動可能に支持されるものであり、右側の端部からは外側へ鈎状に屈曲して受け片23が形成されている。サーマルヘッドは板状部材の前面にプラテンローラ3に沿って取り付けられている(図に見えていない)。
【0012】
ギアカバー7は、左側壁12の外面側に配置される歯車伝達機構6とこれに噛み合わされるプラテンローラ3の受動ギア3a及びモータ5の出力軸先端に固定した出力ギア18aを取り囲んで覆うことができる前面7a、上面7b、後面7c及び側面7dを備えた構造であり、上面7bの一部が係合爪24に形成されている。また、後面7cは、歯車伝達機構6の外周付近を覆う円弧部分とモータ5の出力ギア18aの外周付近を覆う円弧部分が連続した形態となっている。
左側壁12の放熱フィン15は、左側壁12の外面から外方へ突出しているが、ギアカバー7における後面の前記した円弧形状に対応して切り取られ、ギアカバー7における後面部分の右端面が左側壁の外面へ直接当接できるようにされている。
【0013】
これらの部材は、ヘッド部4をフレーム2に取り付け(図1)、ガイドプレート8を前方からフレーム2に取り付ける。ついで、ヘッド押圧ばね10をフレーム2に取り付け、ヘッドアップレバー22をアップ側に位置決めした状態でプラテンローラ3をフレーム2に取り付ける。ヘッドアップレバー22をアップ側に回転すると、ヘッドアップレバー22の基部に形成してある凸部分がヘッド部4の受け片23を係合して回動させ、ヘッド部4が開放される(プラテンローラから離れる)。プラテンローラ3は、その両端の軸部が左側壁12と右側壁13の軸受け溝20、21に落とし込まれて装着される。プラテンローラ3はフレーム2に対して着脱自在である。なお、プラテンローラ3が装着されることでプラテン有無検出スイッチ25がオンとなる。そして、ヘッドアップレバー22をセット位置に戻すとヘッド部4はヘッド押圧ばね10によってプラテンローラ側に押圧され、印字が可能な状態となる。
【0014】
ついで、フレーム2の左側壁12に外面側から歯車伝達機構6をギア軸12a〜12dに軸支させて取り付けた後、左側壁12の内面側からモータ5をビス止めにより固定する。このとき、左側壁12の通孔から外方へ突出させた出力軸18の先端に固定してある出力ギア18aを歯車伝達機構6の第1のギア6dに噛み合わせ、また、プラテンローラ3の左端の受動ギア3aにギア6aを噛み合わせる。そして、内側に出力ギア18aや歯車伝達機構6を納めるようにしてギアカバー7を取り付け、係合爪24を左側壁12側の爪受け部19に係合させて固定する。
【0015】
この状態は、放熱フィン15がフレーム2におけるモータ5を取り付ける壁(左側壁12)のモータ取付部のその反対側面に形成されており、その各フィン16の突出寸法d1は、フレーム2における前記モータを取り付ける壁、すなわち、左側壁12の厚さ寸法d2よりも大きい。そして、放熱フィン15は、複数のフィン16の各フィン間に上端及び下端が開放された上下方向の溝17を挟んで形成された構造である。なお、前記放熱フィンが形成された箇所は、前記フレームの少なくとも一方の側壁の外側面でもある。
【0016】
モータ5が駆動されると、用紙11は、ガイドプレート8に沿って、前方からプラテンローラ3とヘッド部4の間に送り込まれ、サーマルヘッドによって印字される。印字された用紙11は、プラテンローラ3によって上方に送出されてくる。なお、プリント機構部1には全体を覆ってプリンタとしての体裁を整えるカバーが取り付けられるか、プリントアウトを必要とする機器の内部に、その機器を構成する部品の一部として装填される。
【0017】
以上の構成であって、モータ5の稼動にともない発生した熱は、フレーム2の左側壁に吸収され、フレーム2の全体に拡散する。また、フレーム2の表面から発散される。このとき、フレーム2はモータ5が取り付けられる箇所だけではなく、プリント機構部1の全体を支持する部材なので熱を吸収する容量が大きい。また、フレーム2の全体がアルミ合金のダイキャスト製なので鋼板製や合成樹脂製に比べ熱の伝播拡散が早い。このため、フレーム2全体の温度が上昇することが少なく、低い温度で熱の発生と発散が均衡する。そして、左側壁12のモータ取付部のその反対側面すなわち外面に放熱フィン15を形成し放熱面を拡大しているので、熱発生源の近くで効率よく放熱させることができる。
【0018】
このとき、実施例のように、放熱フィン15の各フィン16の突出寸法d1が左側壁12の厚さ寸法d2よりも大きくて、モータ5を取り付けた箇所の熱容量が大きいのと、各フィン16間の溝17が上下方向に形成され、上端と下端が開放されているので、フレーム2の温度が上昇した際に対流によりフィン間に下方から上方へ気流が発生して冷却効果が高い。このように、空気の流動がスムーズなことから、特に、モータ取付部での放熱効果が高い。
【0019】
以上、実施例を説明した。フレーム2の素材はアルミ合金に限らず、ダイキャストの可能な熱伝導性の高い金属、合金を用いることができる。放熱フィン15を設ける位置は、モータ取付部のその反対側がモータ5に近く好ましいが、基本的に、モータ取付部(例えば、左側壁12)のどの位置でもよい。ギアカバー7は、アルミ合金のダイキャスト製あるいは合成樹脂性である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】斜視図
【図2】プリント機構部を分解して示す斜視図。
【符号の説明】
【0021】
1 プリント機構部
2 フレーム
3 プラテンローラ
3a 受動ギア
4 ヘッド部
5 モータ
6 歯車伝達機構
6a〜6d ギア
7 ギアカバー
7a 前面
7b 上面
7c 後面
7d 側面
8 ガイドプレート
9 フレキシブルプリント回路
10 ヘッド押圧ばね
11 用紙
12 左側壁
12a〜12d ギアの軸
13 右側壁
14 連結部
15 放熱フィン
16 フィン
17 溝
18 出力軸
18a 出力ギア
19 爪受け部
20 左軸受け溝
21 右軸受け溝
22 ヘッドアップレバー
23 受け片
24 係合爪
25 プラテン有無検出スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状に配列された複数の発熱体を選択的に発熱させて記録紙に印字を行うサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドとの間で記録紙を挟持して搬送するプラテンローラと、前記プラテンローラを駆動するためのモータと、前記モータの駆動力をプラテンローラに伝達するための歯車伝達機構と、前記サーマルヘッドと前記プラテンと前記モータと前記歯車伝達機構を保持するフレームを有するサーマルプリンタにおいて、前記フレームを合金材料のダイキャスト加工により成形し、前記フレームの前記モータ取付部に放熱フィンを形成したことを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記放熱フィンは、前記フレームにおける前記モータを取り付ける壁のモータ取付部のその反対側面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記放熱フィンは、前記フレームの少なくとも一方の側壁の外側面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項4】
前記放熱フィンは、複数のフィンの各フィン間に上下方向の溝を挟んで形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のサーマルプリンタ。
【請求項5】
前記放熱フィンが挟む溝は、上端及び下端が開放されていることを特徴とする請求項4に記載のサーマルプリンタ。
【請求項6】
前記放熱フィンは、そのフィンとしての突出寸法が前記フレームにおける前記モータを取り付ける壁の厚さよりも大きいことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のサーマルプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−101638(P2009−101638A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276616(P2007−276616)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(507351883)シチズン・システムズ株式会社 (82)
【Fターム(参考)】