説明

サーマルプリントヘッド

【課題】 構成部品点数を削減するとともに、小型化を図ることが可能なサーマルプリントヘッドを提供すること。
【解決手段】 基板1と基板1上に形成され、主走査方向に配列された複数の発熱部31と、基板1上に配置され、複数の発熱部31を選択的に発熱させる駆動IC4と、駆動IC4の少なくとも一部を覆うカバー6と、を備えるサーマルプリントヘッドA1であって、カバー6は、互いに主走査方向に離間しており、かつそれぞれが基板1の副走査方向一端部を挟持する1対の挟持部61を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリンタの構成部品として用いられるサーマルプリントヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
図29は、従来のサーマルプリントヘッドの一例を示している(たとえば、特許文献1参照)。同図に示されたサーマルプリントヘッドXは、放熱板91に取り付けられたセラミック基板92および樹脂基板93を有している。セラミック基板92には、主走査方向に延びる発熱抵抗体94および駆動IC95が搭載されている。駆動IC95は、発熱抵抗体94を部分的に選択的に発熱させる。駆動IC95は、保護樹脂96によって覆われている。また、駆動IC95は、保護樹脂96とともにカバー97によって覆われている。カバー97は、たとえば金属板を折り曲げ加工したものであり、主走査方向においてほぼ均一断面とされている。カバー97は、ねじ98によって、樹脂基板93を介して放熱板91に取り付けられている。カバー97を取り付けることにより、プラテンローラPrによって発熱抵抗体94に押し付けられる感熱紙が、保護樹脂96によって傷つけられることを防止可能である。
【0003】
しかしながら、カバー97を取り付けるために、ねじ98が用いられている。これは、サーマルプリントヘッドXの構成部品を増加させる。また、放熱促進の目的においては、放熱板91が不要となる場合であっても、カバー97を支持するためのものとして放熱板91またはこれの代替品が必要となる。さらに、ねじ98を締結するための部分を確保することが強いられるため、サーマルプリントヘッドXのサイズが大きくなってしまうという欠点もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−106020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、構成部品点数を削減するとともに、小型化を図ることが可能なサーマルプリントヘッドを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって提供されるサーマルプリントヘッドは、基板と上記基板上に形成され、主走査方向に沿って配置された発熱抵抗体と、上記基板上に配置され、上記発熱抵抗体を部分的に発熱させる駆動ICと、上記駆動ICの少なくとも一部を覆うカバーと、を備えるサーマルプリントヘッドであって、上記カバーは、互いに主走査方向に離間しており、かつそれぞれが上記基板を挟持する1対の挟持部を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記1対の挟持部は、上記基板の副走査方向一端部を挟持する。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記1対の挟持部は、主走査方向において上記駆動ICを挟む配置とされている。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記1対の挟持部は、副走査方向において上記駆動ICと重なっている。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記1対の挟持部の少なくともいずれかには、上記基板のうち上記駆動ICが設けられた面を露出させる貫通孔が形成されている。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記基板のうち上記駆動ICが設けられた面には、副走査方向において上記貫通孔よりも副走査方向一端寄りに位置する部分、および主走査方向において上記貫通孔よりも外方寄りに位置する部分を有し、かつ上記基板とは色相、彩度、明度の少なくともいずれかが異なる導電膜が形成されている。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記貫通孔は、上記基板の厚さ方向において上記基板から離れるほど断面寸法が大となる部分を有している。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導電膜は、グランドラインに導通するものであり、上記1対の挟持部の少なくともいずれかは、上記導電膜とともに上記基板を挟持している。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記主走査方向において上記貫通孔よりも外方寄りに位置する部分は、上記基板の主走走査方向一端から退避した退避部と、この退避部から上記主走走査方向一端につながる延出部と、を有する。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記貫通孔には、接着材が充填されている。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記カバーは、主走査方向において上記1対の挟持部の間に位置し、上記駆動ICの少なくとも一部を覆うとともに、上記各挟持部よりも薄肉である薄肉部を有している。
【0017】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記基板の副走査方向一端部に設けられており、上記駆動ICと導通するとともに、主走査方向において上記1対の挟持部の間に位置するコネクタを備えている。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記カバーには、副走査方向において上記コネクタから離間するほど、上記基板のうち上記発熱抵抗体が形成された面の法線方向において上記コネクタから離間する傾斜部が設けられている。
【0019】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記基板のうち上記発熱抵抗体が形成された面とは反対側に位置する面に取り付けられた放熱板をさらに備える。
【0020】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記放熱板には、上記基板よりも印刷方向下流側に位置し、上記基板のうち上記発熱抵抗体が形成された面の法線方向に突出する隆起部が形成されている。
【0021】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記隆起部は、上記法線方向において上記基板よりも突出している。
【0022】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記隆起部には、印刷方向下流側に向かうほど上記基板のうち上記法線方向とは反対方向に位置する斜面が形成されている。
【0023】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記隆起部には、印刷方向上流側を向いており、上記基板の端面と正対する側面が形成されている。
【0024】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記放熱板には、上記側面に対して上記法線方向とは反対方向に位置し、かつ上記法線方向とは反対方向にへこんだ溝が形成されている。
【0025】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記放熱板は、上記挟持部を回避した位置に設けられている。
【0026】
このような構成によれば、上記カバーを固定するための、たとえば図20に示されたねじ98や、放熱板91を構成要素として備える必要が無い。これにより、上記サーマルプリントヘッドの構成部品点数を削減することができる。また、たとえばねじ98を締結するためのスペースを確保しなくてよい。これにより、サーマルプリンタの小型化を図ることができる。また、上記駆動ICを避けた位置に上記1対の挟持部を配置することにより、上記各挟持部を比較的肉厚の剛性が高い部分とすることが可能である。これは、上記カバーを上記基板に対して強固に固定するのに適している。一方、上記薄肉部は、上記駆動ICとプラテンローラとの間に位置しつつ、感熱紙に対して不当に干渉することを抑制することができる。
【0027】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に基づくサーマルプリントヘッドの一例を示す平面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に基づくサーマルプリントヘッドの一例を示す分解平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に基づくサーマルプリントヘッドの一例を示す背面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に基づくサーマルプリントヘッドの一例を示す底面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に基づくサーマルプリントヘッドの発熱抵抗体を示す要部平面図である。
【図6】図1のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】図1のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】図1のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【図9】図1に示すサーマルプリントヘッドに用いられるカバーを示す斜視図である。
【図10】図1に示すサーマルプリントヘッドに用いられるカバーを示す斜視図である。
【図11】図1に示すサーマルプリントヘッドに用いられるカバーを示す底面図である。
【図12】図11のXII−XII線に沿う断面図である。
【図13】図11のXIII−XIII線に沿う断面図である。
【図14】図11のXIV−XIV線に沿う断面図である。
【図15】図11のXV−XV線に沿う断面図である。
【図16】図11のXVI−XVI線に沿う断面図である。
【図17】図11のXVII−XVII線に沿う断面図である。
【図18】図1に示すサーマルプリントヘッドにおいて、基板とカバーとが適切な位置関係とされている状態を示す要部拡大平面図である。
【図19】図1に示すサーマルプリントヘッドにおいて、基板とカバーとが不適切な位置関係とされている状態を示す要部拡大平面図である。
【図20】本発明の第1実施形態に基づくサーマルプリントヘッドの導電膜の変形例を示す要部平面図である。
【図21】本発明の第1実施形態に基づくサーマルプリントヘッドのカバーの変形例を示す断面図である。
【図22】図21のXXII−XXII線に沿う要部断面図である。
【図23】本発明の第2実施形態に基づくサーマルプリントヘッドの一例を示す底面図である。
【図24】図23のXXIV−XXIV線に沿う要部断面図である。
【図25】本発明の第3実施形態に基づくサーマルプリントヘッドの一例を示す底面図である。
【図26】本発明の第4実施形態に基づくサーマルプリントヘッドの一例を示す平ら面図である。
【図27】本発明の第4実施形態に基づくサーマルプリントヘッドの一例を示す底面図である。
【図28】図26のXXVIII−XXVIII線に沿う要部断面図である。
【図29】従来のサーマルプリントヘッドの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0030】
図1〜図8は、本発明の第1実施形態に基づくサーマルプリントヘッドの一例を示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA11は、基板1、電極2、発熱抵抗体3、駆動IC4、およびカバー6を備えている。なお、図1においては、電極2および後述する接着材69を省略している。
【0031】
基板1は、主走査方向に延びた平面視矩形状の絶縁基板であり、たとえばアルミナセラミック製である。基板1の表面には、グレーズと呼ばれる絶縁層が形成されている(図示略)。
【0032】
図5に示すように、基板1には、電極2が形成されている。電極2は、発熱抵抗体3に通電するためのものであり、共通電極21と複数の個別電極22とを含んでいる。共通電極21は、主走査方向に延びる帯状部分と、副走査方向に櫛歯状に延びる複数の枝状部分とが連結された形状とされている。複数の個別電極22は、その先端部分が上記複数の枝状部分と交互に主走査方向に沿って配列されている。電極2は、たとえばレジネートAuペーストを厚膜印刷した後に焼成を施すことにより形成される。
【0033】
発熱抵抗体3は、サーマルプリントヘッドA1の発熱源である。発熱抵抗体3は、図1に示すように、主走査方向に延びる帯状とされており、図5に示すように、共通電極21の上記複数の枝状部分および複数の個別電極22の先端部分を跨いでいる。共通電極21といずれかの個別電極22とが通電すると、発熱抵抗体3のうち上記枝状部分と上記先端部分とに挟まれた領域が部分的に発熱する。この部分を、発熱部31と呼ぶ。発熱抵抗体3によって、主走査方向に配列された複数の発熱部31が構成されている。発熱抵抗体3は、たとえば、酸化ルテニウムペーストを厚膜印刷した後に焼成を施すことにより形成される。
【0034】
駆動IC4は、共通電極21および複数の個別電極22を介して発熱抵抗体3に通電することにより、発熱抵抗体3を部分的に(すなわち、発熱部31を選択的に)発熱させるための駆動制御を行う。本実施形態においては、複数の駆動IC4が、基板1上において主走査方向に配列されている。駆動IC4は、保護樹脂41によって覆われている。保護樹脂41は、たとえば黒色樹脂であり、駆動IC4の損傷、および紫外線などの受光による誤作動を防止する。
【0035】
カバー6は、駆動IC4を部分的に覆っており、たとえば黒色樹脂にカーボングラフィックが混入された導電性樹脂からなる。図9〜図17に示すように、カバー6は、1対の挟持部61を有している。各挟持部61は、上片62と下片63からなる。図7に示すように、各挟持部61は、基板1の副走査方向一端部を挟持することにより、カバー6を基板1に取り付けるためのものである。図1に示すように、1対の挟持部61は、主走査方向に離間しており、それらの間に駆動IC4を挟む配置とされている。また、副走査方向においては、1対の挟持部61(特に、上片62)と駆動ICとが重なる配置となっている。
【0036】
各挟持部61には、貫通孔64が形成されている。貫通孔64は、図1および図8に示すように、基板1のうち駆動IC4が搭載されている面を露出させる。貫通孔64は、基板1の厚さ方向において、基板1に近い側に位置し、かつ比較的小断面形状の部分と、基板1に遠い側に位置し、かつ基板1から遠ざかるほど大断面形状となる部分とを有している。本実施形態においては、貫通孔64は、たとえばエポキシ樹脂などの接着材69によって埋められている。
【0037】
基板1には、導電膜5が形成されている。導電膜5は、たとえばAgペーストを用いて形成されており、基板1の表面よりも、より白く、明るい色を呈している。導電膜5は、2つずつの両端部52および一端部51を有している。両端部52は、貫通孔64よりも主走査方向外方に配置されており、基板1の主走査方向端部において副走査方向に延びる帯状に形成されている。一端部51は、貫通孔64よりも基板1の副走査方向位置端寄りに配置されており、基板1の副走査方向一端部において主走査方向に延びる帯状に形成されている。カバー4を基板1に取り付けた状態においては、挟持部61が導電膜5とともに基板1を挟む格好となっており、上片62が導電膜5に対して押し付けられている。なお、導電膜5は、短絡を防止するために比較的薄い絶縁膜によって覆われている。したがって、上片62は、この絶縁膜を介して導電膜5に押し付けられる。
【0038】
図18および図19に示すように、両端部52の近傍には、抵抗体マーク32および導電体マーク23が設けられている。抵抗体マーク32は、発熱抵抗体3と同様に酸化ルテニウムペーストを厚膜印刷した後に焼成を施すことにより形成されており、発熱抵抗体3と同じ工程で形成される。導電体マーク23は、電極2と同様にたとえばレジネートAuペーストを用いて形成されており、電極2と同じ工程で形成される。抵抗体マーク32と導電体マーク23とは、それぞれ短い線状であり、互いに直角に交差している。このような抵抗体マーク32と導電体マーク23とをたとえば画像処理することにより、電極2や発熱抵抗体3の位置、さらには印字ドットが形成される位置を正確に認識することができる。これは、サーマルプリントヘッドA1の製造工程もしくは検査工程において有利であり。
【0039】
図9〜図17に示すように、カバー6には、薄肉部65が形成されている。薄肉部65は、1対の挟持部61の間に位置しており、挟持部61よりも顕著に薄肉とされている。本実施形態においては、図6に示すように、薄肉部65は、駆動IC4を部分的に覆うひさしのような形状および配置とされている。また、カバー6には、傾斜部68が設けられている。傾斜部6は、コネクタから図中右方に離間するほど図中上方に位置する傾斜とされている。傾斜部6が設けられていることにより、たとえばフラットケーブルをコネクタ7に挿入する際に、指がカバー6と干渉することを防止するという効果をそうする。
【0040】
基板1には、図1〜図8に示すように、基板1の副走査方向一端部には、コネクタ7が取り付けられている。コネクタ7は、主走査方向において1対の挟持部61の間に位置しており、サーマルプリントヘッドA1をプリンタに組み込む際に、ケーブル(図示略)に取り付けられた別のコネクタ(図示略)が取り付けられる部分である。コネクタ7に含まれるピンのいずれかは、上記プリンタの使用時に設置されるいわゆるグランドラインとして用いられる。導電膜5および共通電極21は、このグランドラインに接続される。
【0041】
次に、サーマルプリントヘッドA1の作用について説明する。
【0042】
本実施形態によれば、カバー6は、1対の挟持部61によって基板1の副走査方向一端部に取り付けられる。このためカバー6を固定するための、たとえば図20に示されたねじ98や、放熱板91を構成要素として備える必要が無い。これにより、サーマルプリントヘッドA1の構成部品点数を削減することができる。また、たとえばねじ98を締結するためのスペースを確保しなくてよい。これにより、サーマルプリントヘッドA1の小型化を図ることができる。
【0043】
駆動IC4を避けた位置に1対の挟持部61を配置することにより、各挟持部61を比較的肉厚の剛性が高い部分とすることが可能である。これは、カバー6を基板1に対して強固に固定するのに適している。一方、カバー6のうち主走査方向において駆動IC4と重なる部分は、ひさしのような薄肉部65とされている。図6に示すように、プラテンローラPrによって、感熱紙Tpが発熱抵抗体3に押し付けられる。少なくとも印刷中においては、サーマルプリントヘッドA1に対するプラテンローラPrの位置は固定であり、サーマルプリントヘッドA1に対して進行してくる感熱紙Tpの入射角もほぼ一定である。サーマルプリントヘッドA1の小型化を図るほど、この感熱紙Tpとカバー6との干渉が生じやすい。本実施形態においては、薄肉部65を副走査方向において駆動ICと部分的に重なる配置とすることにより、感熱紙Tpとの干渉を回避可能としている。また、図6に示すように、カバー6の薄肉部65のうちプラテンローラPrに近い部分の接線Tlよりも、保護樹脂41がプラテンローラPr側に突出させないことが好ましい。このような構成によれば、プラテンローラPrや感熱紙Tpと保護樹脂41との干渉を防止することができる。
【0044】
図18に示すように、カバー6が基板1に対して適切な位置に取り付けられている場合、貫通孔64には、導電膜5の一端部51および両端部52は、いずれも露出しない。しかし、図19に示すように、カバー6の副走査方向における押し込みが不足すると、貫通孔64から一端部51が部分的に露出する。また、カバー6が基板1に対して主走査方向においてずれた位置に固定されると、いずれかの両端部52が対応する貫通孔64から露出する。このように、貫通孔64から導電膜5が露出しているか否かを目視確認することにより、カバー6の取り付けの適否を容易に判断することができる。貫通孔64が徐々に断面形状が大となる形状とされていることは、斜め横方向から導電膜5の有無を目視確認するのに都合がよい。導電膜5が基板1とは特に明度および彩度が大きく異なる明白色とされていることは、目視確認を行うのに好適である。また、接着材69として紫外線硬化性樹脂を用いる場合、貫通孔64が徐々に断面形状が大となる形状とされていることにより、紫外線を接着材69にくまなく照射することができる。
【0045】
図18および図19に示すように、カバー6と基板1との間には、導電膜5が部分的に介在している。このため、カバー6と基板1との間に導電膜5が介在していない領域においては、カバー6と基板1との間に導電膜5の厚さ程度の隙間が生じうる。貫通孔64の周辺部分は、この領域にあたる。これにより、接着材69を貫通孔64に充填する際、カバー6と基板1との隙間に接着材69が浸透することが期待できる。したがって、カバー6と基板1との接合力を高めることが可能である。
【0046】
感熱紙Tpとの意図しない摩擦などが生じた場合であっても、カバー6が導電性樹脂からなるため、静電気によってカバー6が帯電することを抑制できる。
【0047】
貫通孔64を接着材69によって埋めることにより、接着材69がカバー6と基板1とを補助的に固定する効果が期待できる。
【0048】
コネクタ7を1対の挟持部61の間に配置することは、サーマルプリントヘッドA1の小型化を図るのに好ましい。
【0049】
図20は、導電膜5の変形例を示している。本変形例においては、両端部52の構成が上述した実施形態異なっている。両端部52は、その大部分が基板1の図中左端面から若干離間している。また、両端部52には、退避部52aおよび延出部52bが設けられている。退避部52aは、基板1の図中左端面から若干退避した位置に設けられている。延出部52bは、退避部52aから基板1の図中左端面まで延びている。
【0050】
サーマルプリントヘッドA1の製造においては、比較的大サイズの基板材料から複数の基板1を形成する。この際、上記基板材料に電極2や導電膜5のもととなる導電パターンおよび発熱抵抗体3を形成し、駆動ICを実装する。上記基板材料内において隣り合う基板1どうしの両端部52は、互いの延出部52bが繋がった状態で形成されるため、導通しあっている。このような状態の上記基板材料を用いて個別電極22などの導通チェックを行う場合、上記基板材料の両端部52はすべて導通しているため、いずれかの両端部52にテスターのプローブを接しておけば、すべての個別電極22の導通テストを行うことが可能である。
【0051】
また、上記導通テストを完了した後は、上記基板材料を分割することにより複数の基板1が作成される。このとき、互いにつながりあった延出部52bは、その境界で分割されるが、両端部52の大部分を占める退避部52aは、分割されない。このため、上記基板材料の分割作業において、両端部52に不当なクラックが発生してしまうことを防止することができる。
【0052】
図21および図22は、カバー6の変形例を示している。本変形例のカバー6には、点突起66および線突起67が形成されている。点突起66は、カバー6のうち基板1の端面が押し付けられる部分に形成されている。具体的には、カバー6には、2〜3個程度の点突起66が、基板1の長手方向に離間して設けられている。これらの点突起66を設けることにより、基板1の上記端面が2〜3個の点突起66によって支えられる。したがって、基板1に対してカバー6をより平行に取り付けることができる。
【0053】
線突起67は、各挟持部61の各下片63に設けられている。線突起67は、カバー6に対して基板1を押し込む方向に延びた形状とされており、図22に示すように断面形状がたとえば三角形状である。線突起67を設けることにより、基板1が挟持部61に進入すると、線突起67が弾性変形させられる。この変形により、挟持部61の挟持力を高めることが可能であり、基板1に対してカバー6をより強固に取り付けることができる。
【0054】
図23〜図28は、本発明の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0055】
図23および図24は、本発明の第2実施形態に基づくサーマルプリントヘッドを示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA2は、放熱板8を備えている点が上述した実施形態と異なっている。図23に示すように、放熱板8は、長矩形状であり、図24に示すように基板1の裏面に取り付けられている。放熱板8は、基板1よりも熱伝導率が高い材質によって形成されており、たとえばアルミからなる。本実施形態においては、基板1の裏面のうち、コネクタ7が設けられた領域、およびカバー6の挟持部63が接している領域、以外のほとんどの領域が放熱板8によって覆われている。基板1の厚さがたとえば1mm程度であるのに対し、放熱板8の厚さはたとえば4mm程度と厚肉とされている。
【0056】
このような実施形態によっても、プラテンローラPrや感熱紙Tpとの干渉を回避しつつ、サーマルプリントヘッドA2の小型化を図ることができる。また、放熱板8を備えることにより、基板1に不当に熱がこもってしまうことを防止することが可能である。これは、サーマルプリントヘッドA2の動作安定性を高めるとともに、印刷の高速化に有利である。
【0057】
図25は、本発明の第3実施形態に基づくサーマルプリントヘッドを示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA3は、放熱板8の構成が上述したサーマルプリントヘッドA2と異なっている。本実施形態においては、放熱板8に2つの延出部81が設けられている。各延出部81は、カバー6の挟持部61の下片63とコネクタ7との間に位置している。
【0058】
このような実施形態によれば、基板1からより効率よく熱を放散させることが可能であり、サーマルプリントヘッドA3の動作安定性の向上や印刷の高速化に好適である。
【0059】
図26〜図28は、本発明の第4実施形態に基づくサーマルプリントヘッドを示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA3は、主に、コネクタ7の配置および放熱板8の構成が、上述した実施形態と異なっている。
【0060】
本実施形態においては、図26に示すように、2つのコネクタ7が基板1の両端寄りに離間して配置されている。図27に示すように、カバー6の挟持部61は、2つのコネクタ7の間に配置されている。
【0061】
図28によく表れているように、放熱板8は、基板1よりも図中左方に飛び出した部分を有しており、隆起部82および溝83が形成されている。隆起部82は、基板1の図中左端面に隣接しており、図中上方に隆起している。本実施形態においては、隆起部82の頂点は、基板1の上面よりも0.1〜0.15mm程度上方に飛び出ている。隆起部82の頂点付近はなだらかな断面円弧形状とされている。隆起部82は、斜面82aおよび側面82bを有している。斜面82aは、隆起部82の頂点から図中斜め左下に向かってなだらかにつづく面である。側面82bは、図中上下方向に起立しており、基板1の左端面と正対している。
【0062】
溝83は、側面82bの下端に繋がるように形成されており、たとえば断面矩形状である。溝83には、基板1の端部が覆いかぶさる格好となっている。放熱板8と基板1とは、たとえば比較的熱伝導率が高い接着テープ(図示略)によって接合されている。
【0063】
本実施形態においては、プラテンローラPrの直径が20mm以下程度、具体的にはたとえば16mm程度、隆起部82の頂点と発熱抵抗体3との距離が3.2mm程度とされている。
【0064】
図28は、サーマルプリントヘッドA4によって、台紙Mtに複数のラベルLbが配置されたラベル印刷用紙に印刷する場合を示している。ラベルLbに印刷するときには、ラベルLbが台紙Mtとともに方向Fwに順送りされる。ラベルLbへの印刷が一通り終了すると、サーマルプリントヘッドA4が組み込まれたたとえばプリンタから印刷済みのラベルLbがすべて露出するまで台紙Mtが方向Fwに順送りされる。そして、印刷済みのラベルLbが台紙Mtから剥がされる。
【0065】
印刷済みのすべてのラベルLbを上記プリンタから露出させる場合、いまだ印刷していないラベルLbもサーマルプリントヘッドA4の方向Fw下流側へと送られてしまうことが一般的である。引き続きラベルLbへの印刷を開始するときには、ラベルLbを無駄にしないように、先頭に位置するラベルLbをサーマルプリントヘッドA4による印刷位置まで方向Bkに逆送りすることが望ましい。このとき、ラベルLbが台紙Mtからわずかに剥がれかけていても、このラベルLbは、放熱板8の斜面82aから隆起部82の頂点部分に対して滑るように進行しうる。また、基板1が隆起部82よりも若干低い位置関係とされていることにより、このラベルLbは、基板1に引っかかりにくい。したがって、複数のラベルLbが配置された台紙Mtを適切に逆送りすることが可能であり、ラベルLbを無駄に廃棄することなく、複数のラベルLbに対して継続的に印刷することができる。
【0066】
味噌83が設けられていることにより、図28において基板1の図中斜め左下角部分が放熱板8と不当に干渉することを回避することができる。
【0067】
本発明に係るサーマルプリントヘッドは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るサーマルプリントヘッドの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0068】
貫通孔64を1対の挟持部61の双方に形成する構成に限定されず、たとえば一方の挟持部61にのみ貫通孔64を形成してもよい。またカバー6の位置ずれが生じた場合に、1対の貫通孔64の一方からのみ導電膜5が露出する構成であってもよい。
【0069】
電極2および発熱抵抗体3は、上述した構成に限定されず、たとえば共通電極21の櫛葉状部分と個別電極22とが副走査方向に間隔をおいて対向配置され、これらの間に発熱抵抗体3が設けられた構成であってもよい。また、本願で言う発熱抵抗体は、主走査方向に延びる一体的な帯状のものに限定されず、1つ1つが印刷時の1ドットに相当する大きさとされた複数の要素が主走査方向に配列されたものを含む。
【符号の説明】
【0070】
A サーマルプリントヘッド
1 基板
2 電極
3 発熱抵抗体
4 駆動IC
5 導電膜
6 カバー
7 コネクタ
8 放熱板
21 共通電極
22 個別電極
23 導電体マーク
31 発熱部
32 抵抗体マーク
41 保護樹脂
51 一端部
52 両端部
52a 退避部
52b 延出部
61 挟持部
62 上片
63 下片
64 貫通孔
65 薄肉部
66 点突起
67 線突起
68 傾斜部
69 接着材
81 延出部
82 隆起部
82a 斜面
82b 側面
83 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と
上記基板上に形成され、主走査方向に沿って配置された発熱抵抗体と、
上記基板上に配置され、上記発熱抵抗体を部分的に発熱させる駆動ICと、
上記駆動ICの少なくとも一部を覆うカバーと、
を備えるサーマルプリントヘッドであって、
上記カバーは、互いに主走査方向に離間しており、かつそれぞれが上記基板を挟持する1対の挟持部を有することを特徴とする、サーマルプリントヘッド。
【請求項2】
上記1対の挟持部は、上記基板の副走査方向一端部を挟持する、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
上記1対の挟持部は、主走査方向において上記駆動ICを挟む配置とされている、請求項1または2に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
上記1対の挟持部は、副走査方向において上記駆動ICと重なっている、請求項3に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項5】
上記1対の挟持部の少なくともいずれかには、上記基板のうち上記駆動ICが設けられた面を露出させる貫通孔が形成されている、請求項1ないし4のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項6】
上記基板のうち上記駆動ICが設けられた面には、副走査方向において上記貫通孔よりも副走査方向一端寄りに位置する部分、および主走査方向において上記貫通孔よりも外方寄りに位置する部分を有し、かつ上記基板とは色相、彩度、明度の少なくともいずれかが異なる導電膜が形成されている、請求項5に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項7】
上記貫通孔は、上記基板の厚さ方向において上記基板から離れるほど断面寸法が大となる部分を有している、請求項6に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項8】
上記導電膜は、グランドラインに導通するものであり、
上記1対の挟持部の少なくともいずれかは、上記導電膜とともに上記基板を挟持している、請求項6または7に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項9】
上記主走査方向において上記貫通孔よりも外方寄りに位置する部分は、上記基板の主走走査方向一端から退避した退避部と、この退避部から上記主走走査方向一端につながる延出部と、を有する、請求項6ないし8のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項10】
上記貫通孔には、接着材が充填されている、請求項5ないし9のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項11】
上記カバーは、主走査方向において上記1対の挟持部の間に位置し、上記駆動ICの少なくとも一部を覆うとともに、上記各挟持部よりも薄肉である薄肉部を有している、請求項1ないし10のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項12】
上記基板の副走査方向一端部に設けられており、上記駆動ICと導通するとともに、主走査方向において上記1対の挟持部の間に位置するコネクタを備えている、請求項1ないし11のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項13】
上記カバーには、副走査方向において上記コネクタから離間するほど、上記基板のうち上記発熱抵抗体が形成された面の法線方向において上記コネクタから離間する傾斜部が設けられている、請求項12に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項14】
上記基板のうち上記発熱抵抗体が形成された面とは反対側に位置する面に取り付けられた放熱板をさらに備える、請求項1ないし13のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項15】
上記放熱板には、上記基板よりも印刷方向下流側に位置し、上記基板のうち上記発熱抵抗体が形成された面の法線方向に突出する隆起部が形成されている、請求項14に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項16】
上記隆起部は、上記法線方向において上記基板よりも突出している、請求項15に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項17】
上記隆起部には、印刷方向下流側に向かうほど上記基板のうち上記法線方向とは反対方向に位置する斜面が形成されている、請求項15または16に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項18】
上記隆起部には、印刷方向上流側を向いており、上記基板の端面と正対する側面が形成されている、請求項15ないし17のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項19】
上記放熱板には、上記側面に対して上記法線方向とは反対方向に位置し、かつ上記法線方向とは反対方向にへこんだ溝が形成されている、請求項18に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項20】
上記放熱板は、上記挟持部を回避した位置に設けられている、請求項13ないし19のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2010−280214(P2010−280214A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106920(P2010−106920)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】