説明

サーマルプリントヘッド

【課題】被印刷媒体の直線的な搬送経路を確保しつつ、サーマルプリントヘッドを高解像度化する
【解決手段】サーマルプリントヘッド11に、セラミック基板22とグレーズ層23と導電棒70と発熱抵抗体26と電極25と駆動素子42とを備える。セラミック基板22には板厚方向に貫通する貫通穴21が形成されている。支持樹脂28は、貫通穴21を埋めている。導電棒70は、複数であって、それぞれ貫通穴21を通過して支持樹脂28に支持さている。発熱抵抗体26は、グレーズ層23の表面に間隔を置いて線状に配列されている。電極25は、発熱抵抗体26から導通棒70まで延びている。駆動素子42は、セラミック基板22の発熱抵抗体26に対して反対側に配置された回路基板40上に搭載され、導電棒70の電極25に接続された端部の反対側の端部と駆動素子42との間に架け渡されたボンディングワイヤー44で接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリントヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリントヘッドは、発熱部に配列された複数の発熱体を発熱させ、その熱により感熱記録紙などの媒体に文字や図形などの画像を形成する出力用デバイスである。このサーマルプリントヘッドは、バーコードプリンタ、デジタル製版機、ビデオプリンター、イメージャー、シールプリンターなどの記録機器に広く利用されている。
【0003】
一般的なサーマルプリントヘッドは、放熱板と、放熱板に取り付けられた発熱体板と、発熱体板と同じ側で放熱板に取り付けられた回路基板とを備えている。この発熱体板の放熱板と相対する表面の反対側の表面の帯状に延びる発熱領域には、複数の発熱抵抗体が所定の間隔で直線状に配列されている。また、回路基板には、発熱抵抗体を駆動する駆動回路の一部となる駆動ICなどの電気部品が搭載されている。発熱抵抗体に接続された電極と駆動ICとの間は、ワイヤーボンディングで結線されている。結線に用いられたボンディングワイヤーは、樹脂で封止される。
【0004】
このようなサーマルプリントヘッドを用いたプリンタは、一般的に、所定の弾性を持つ材料で円筒状に形成されたプラテンローラを備えている。このプラテンローラは、側面が支持基板上の発熱領域に接するように配置され、発熱抵抗体が配列された主走査方向に平行な軸を中心に回転可能に設けられる。プラテンローラの回転によって、プラテンローラと発熱領域の間に挿入された媒体は、主走査方向に垂直な副走査方向に移動する。プラテンローラによって媒体を発熱領域に押し付けつつ、その媒体を副走査方向に移動させ、発熱抵抗の発熱パターンを媒体の移動とともに変化させることにより、所望の画像を媒体上に形成する。
【0005】
このようなサーマルプリントヘッドでは、発熱領域と駆動素子が同じ側に配置されるため、駆動素子などを封止する封止樹脂が被印刷媒体と干渉する場合がある。特に被印刷媒体が硬質メディアの場合には、直線的な搬送経路を確保することが困難になる。
【0006】
そこで、たとえば特許文献1には、駆動素子を発熱体板の裏面に取付け、発熱体板を板厚方向に貫通するスルーホールを介して発熱抵抗体と駆動素子とを接続する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−38941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、サーマルプリントヘッドには、高解像度化が求められている。したがって、発熱抵抗体から延びる電極のピッチ(間隔)を小さくすることが求められている。
【0009】
一方、サーマルプリントヘッドの発熱抵抗体とは反対側の面に駆動素子を取付けてスルーホールを介して接続する場合、微細なスルーホールの形成が困難である。たとえばレーザー光で絶縁基板にスルーホールを形成する場合、その開口形状はレーザー光の照射面側で大きい円錐台形状となる。レーザー光の照射面の反対側の面でも一定の開口が必要であるから、照射面側の開口を小さくすることには限界がある。また、照射面側の開口の大きさよりスルーホールのピッチを小さくすることができない。
【0010】
そこで、本発明は、被印刷媒体の直線的な搬送経路を確保しつつ、サーマルプリントヘッドを高解像度化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するため、本発明は、サーマルプリントヘッドにおいて、板厚方向に貫通する少なくとも1つの貫通穴が形成された絶縁基板と、前記貫通穴を埋める支持樹脂と、同一の前記貫通穴に複数本が通過して前記支持樹脂に支持された導電棒と、前記絶縁基板の表面に間隔を置いて線状に配列された複数の発熱抵抗体と、前記抵抗体から延びて前記導電棒の一端部に接続された電極と、前記発熱抵抗体を駆動する駆動素子と、前記導電棒の前記電極に接続された端部の反対側の端部と前記駆動素子との間に架け渡されたボンディングワイヤーと、前記駆動素子および前記ボンディングワイヤーを封止する封止樹脂と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被印刷媒体の直線的な搬送経路を確保しつつ、サーマルプリントヘッドを高解像度化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るサーマルプリントヘッドの一実施の形態の断面図である。
【図2】本発明に係るサーマルプリントヘッドの一実施の形態の下面図である。
【図3】本発明に係るサーマルプリントヘッドの一実施の形態の上面図である。
【図4】本発明に係るサーマルプリントヘッドの一実施の形態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るサーマルプリントヘッドの一実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、この実施の形態は単なる例示であり、本発明はこれらに限定されない。
【0015】
図1は、本発明に係るサーマルプリントヘッドの一実施の形態の断面図である。図2は、本実施の形態におけるサーマルプリントヘッドの下面図である。図3は、本実施の形態におけるサーマルプリントヘッドの上面図である。図4は、本実施の形態におけるサーマルプリントヘッドの側面図である。なお、ここでは、サーマルプリントヘッド11の発熱領域24が設けられた側を「上」とし、その反対側を「下」として説明するが、実際のサーマルプリントの姿勢を限定することを意図していない。
【0016】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド11は、放熱板30と発熱体板20と回路基板40とを有している。放熱板30は、長方形部分とその長辺の両端部から突出した部分とを有する。この長方形部分の上面は、発熱体板20を載置する発熱体板載置部31である。長方形部分から突出した部分の上面は、回路基板40を支持する回路基板支持部32である。回路基板支持部32は、発熱体板載置部31よりも回路基板40の厚さ分下方に形成されている。放熱板30は、たとえばアルミニウムで形成される。
【0017】
発熱体板20は、セラミック基板22とグレーズ層23と発熱抵抗体26と電極25と保護膜層29とを有している。セラミック基板22は、たとえばアルミナ(Al)で形成された長方形の板であって、板厚方向に貫通した貫通穴21が形成されている。セラミック基板22の厚さは、たとえば1mmである。貫通穴21は、一方の長辺の近傍に、その長辺に沿って延びている。グレーズ層23は、セラミック基板22の表面に形成されたガラスの層である。
【0018】
セラミック基板22に形成された貫通穴21の内部には、導電棒70がセラミック基板22の板厚方向に延びるように配置されている。この貫通穴21には、支持樹脂28が埋められていて、その支持樹脂28が導電棒70を支持している。支持樹脂28は、その表面がグレーズ層23の表面と段差を生じないように貫通穴21に埋め込まれている。導電棒70の上端は、セラミック基板22およびグレーズ層23からなる絶縁基板の表面から少し突出している。
【0019】
導電棒70は、導電性の棒であって、たとえばアルミニウムで形成される。導電棒70の直径はたとえば20μmである。導電棒70の長さは、たとえば1.2mmである。支持樹脂28は、絶縁性の樹脂であって、たとえばエポキシ樹脂である。
【0020】
発熱抵抗体26は、グレーズ層23の表面に設けられている。発熱抵抗体26は、複数であって、セラミック基板28の貫通穴21が隣接する長辺と対向する長辺の近傍で、その長辺方向(主走査方向)に間隔を置いて線状に配置されている。それぞれの発熱抵抗体26は、セラミック基板22の短辺方向(副走査方向)に延びている。
【0021】
電極25は、それぞれの発熱抵抗体26の副走査方向の端部に接続されている。発熱抵抗体26の貫通穴21から遠い方の端部に接続された電極25は、たとえば共通電極に接続されている。発熱抵抗体26の貫通穴21に近い方の端部に接続された電極25は、グレーズ層23の表面および支持樹脂28の表面に沿って副走査方向に延びて、導電棒70に接している。
【0022】
発熱抵抗体26の電極25で挟まれた部分は、抵抗発熱部となり、その抵抗発熱部が主走査方向に連なることによって、線状の発熱領域24が形成されている。発熱抵抗体26および電極25は、それらを保護する保護膜層29によって覆われている。保護膜層29は、グレーズ層25および支持樹脂28の表面の全体を覆っていてもよい。
【0023】
発熱抵抗体26および電極25の幅は、たとえば20μmである。発熱抵抗体26および電極25のピッチ、すなわち主走査方向の中心間の距離は、たとえば25μmである。導電棒70は、たとえば50μmピッチで副走査方向の異なる2か所に配列される。
【0024】
発熱体板20は、放熱板30の発熱体板載置部31に載置される。発熱体板20の下面と放熱板の発熱板載置部31とは、たとえば両面テープで接着される。回路基板40は、その上面が発熱体板20の下面と接するように配置され、放熱板30の回路基板支持部32に支持される。回路基板40の端部上面と放熱板30の回路基板支持部32とは、たとえば両面テープで接着される。
【0025】
回路基板40には、板厚方向に貫通する貫通部45が形成されている。導電棒70は、貫通部45を通過し、導電棒70の下端は回路基板40の下面よりも下方に少し突出している。回路基板40の下面には、発熱抵抗体26を駆動する駆動素子42が搭載される。駆動素子42と導電棒70の下端との間には、ボンディングワイヤー44が架け渡されている。駆動素子42と回路基板40の下面に設けられた端子(図示せず)との間にもボンディングワイヤー44が架け渡されている。
【0026】
駆動素子42およびボンディングワイヤー44は、封止樹脂48で封止されている。封止樹脂48は、たとえばエポキシ系樹脂である。封止樹脂48は、回路基板40の貫通部45を埋めていてもよい。
【0027】
発熱抵抗体26を発熱させるための電力および信号は、回路基板40に接続されたコネクター49から供給される。
【0028】
このようなサーマルプリントヘッド11を用いたサーマルプリンタは、プラテンローラを有している。プラテンローラは、軸が発熱領域24に平行で、その側面が発熱領域24に接するように配置される。プラテンローラによって被印刷媒体が発熱領域24に押し付けられた状態で、駆動素子42が発熱抵抗体26を駆動して発熱させることによって、被印刷媒体に印画される。発熱抵抗体26を所定のパターンで発熱させながら、被印刷媒体を搬送することによって所望の画像が形成される。
【0029】
次に、本実施の形態のサーマルプリントヘッドの製造方法を説明する。
【0030】
まず、セラミックの板に貫通穴21を形成してセラミック基板22を得る。貫通穴21は、たとえばレーザー光を照射して形成することができる。あるいは、セラミック基板22は、アルミナ粉末を貫通する穴を持つ板状に成形した後、焼き固めて形成することもできる。
【0031】
次に、セラミック基板22の一方の表面に、ガラスペーストを印刷し、焼成する。これにより、グレーズ層23が形成される。
【0032】
このようにして形成されたセラミック基板22およびグレーズ層23からなる絶縁基板の貫通穴21に導通棒70を配置し、支持樹脂28を貫通穴21に埋めて固める。たとえば導電棒70の配置と対応する位置に穴が形成された樹脂板に導電棒70を通し、それらの導電棒70を貫通穴21の所定の位置に配置した状態で、貫通穴21に支持樹脂28を埋めることによって、導電棒70を所定の位置に配置することができる。導電棒70の配置用の樹脂板は、たとえば樹脂製の板にレーザー光を照射して導電棒70を配置するための穴を穿つことによって形成することができる。この樹脂板は薄い厚さのものであってもよいため、たとえば10μm程度のピッチで穴をあけることは容易である。
【0033】
次に、グレーズ層23および支持樹脂28の表面に、発熱抵抗体層および金属配線層をスパッタリング法などによって積層する。積層された発熱抵抗体層および金属配線層を所定のパターンにエッチングすることによって、発熱抵抗体26および電極25が形成される。抵抗体層は、発熱領域24から貫通穴21に向かって延びていてもよいが、支持樹脂28の表面部には形成されないようにしておくことが好ましい。導電棒70と電極25との間に抵抗体が介在して、電力を消費しないようにするためである。
【0034】
その後、発熱抵抗体26および電極25を覆うように、保護膜層29をスパッタリング法などによって形成する。
【0035】
別途、回路基板40に駆動素子42を搭載する。また、放熱板30を所定の形状に成形する。
【0036】
次に、駆動素子42が搭載された回路基板40を放熱板30の回路基板支持部31に固定する。さらに、発熱体板20を、放熱板30の発熱体板載置部31に載置して固定する。
【0037】
このように回路基板40と発熱体板20とが放熱板30を介して固定された後、駆動素子42と導電棒70の端部とをワイヤーボンディングする。放熱板30に設けられた回路基板支持部32の2本の突出部の間は、空間80が形成されているため、ワイヤーボンダーは、容易に駆動素子42および導電棒70の端部にアクセスできる。
【0038】
ワイヤーボンディングが終了したら、封止樹脂48を駆動素子42およびボンディングワイヤー44に塗布し硬化させる。その後、コネクター49を取り付けることなどによって、サーマルプリントヘッド11が完成する。
【0039】
本実施の形態によれば、セラミック基板22を貫通して配置された導電棒70によって、発熱体板20は発熱領域24とは反対側の面で回路基板40と接続されている。このため、発熱領域24に接触して搬送される被印刷媒体の直線的な搬送経路を確保することができる。
【0040】
また、セラミック基板22の発熱領域24が形成された面とその反対側の面とを電気的に接続するために、それぞれの電極25に対して貫通穴を形成する必要がない。つまり、セラミック基板22には電極25の数に対してきわめて少ない数の貫通穴21を形成すればよく、この貫通穴21に複数の電極25が絶縁性の支持樹脂28で間隔を保持して支持される。このため、それぞれの発熱抵抗体26に接続された電極25のピッチを小さくすることができる。その結果、サーマルプリントヘッド11を高解像度化することができる。なお、貫通穴21は、複数であっても、それぞれに複数本の導電棒70が通過していればよい。
【0041】
さらに、本実施の形態は、導電棒70の主走査方向に延びる配列を副走査方向の異なる位置に複数設けている。このため、絶縁性を確保したまま、主走査方向の所定の範囲内により多くの導電棒70を配置することができる。つまり、解像度を高めて、電極25の密度が高くなっても、導電棒70を配置することができる。
【符号の説明】
【0042】
11…サーマルプリントヘッド、20…発熱体板、21…貫通穴、22…セラミック基板、23…グレーズ層、24…発熱領域、25…電極、26…発熱抵抗体、28…支持樹脂、29…保護膜層、30…放熱板、31…発熱体板載置部、32…回路基板支持部、40…回路基板、42…駆動素子、44…ボンディングワイヤー、45…貫通部、48…封止樹脂、49…コネクター、70…導電棒


【特許請求の範囲】
【請求項1】
板厚方向に貫通する少なくとも1つの貫通穴が形成された絶縁基板と、
前記貫通穴を埋める支持樹脂と、
同一の前記貫通穴に複数本が通過して前記支持樹脂に支持された導電棒と、
前記絶縁基板の表面に間隔を置いて線状に配列された複数の発熱抵抗体と、
前記抵抗体から延びて前記導電棒の一端部に接続された電極と、
前記発熱抵抗体を駆動する駆動素子と、
前記導電棒の前記電極に接続された端部の反対側の端部と前記駆動素子との間に架け渡されたボンディングワイヤーと、
前記駆動素子および前記ボンディングワイヤーを封止する封止樹脂と、
を具備することを特徴とするサーマルプリントヘッド。
【請求項2】
板厚方向に貫通部が形成されて前記駆動素子を搭載する回路基板をさらに具備し、
前記回路基板は前記導電棒が前記貫通部を通過するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
放熱板をさらに具備し、前記絶縁基板および前記回路基板は前記放熱板の同じ側に固定されていることを特徴とする請求項2に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
前記放熱板は前記回路基板が固定された側からその反対側に貫通した空間が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項5】
前記放熱板は長方形の板とその板の一方の側面の長手方向の両端部から突出する2本の回路基板支持部とを有し、前記空間は前記2本の棒の間に形成されていることを特徴とする請求項4に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項6】
前記絶縁基板は長方形であって、前記貫通穴は前記絶縁基板の長辺に沿って延びていることを特徴とする請求項1ないし請求項5に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項7】
前記導電棒は、前記発熱抵抗体の配列からの距離が異なる位置に複数の列を形成していることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−75393(P2013−75393A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215792(P2011−215792)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000113322)東芝ホクト電子株式会社 (172)
【Fターム(参考)】