説明

サーマルヘッドおよびサーマルプリンター

【課題】外乱光の影響を受け難い信頼性の高いサーマルヘッドを提供する。
【解決手段】回路パターンが形成される基板110と、前記基板110上に列状に並ぶようにして形成された複数の発熱素子145と、前記回路パターンに接続され前記発熱素子145を発熱駆動させる駆動IC120と、前記駆動IC120を前記基板の前記回路パターンにフェースダウン接続する異方性導電膜135と、を有し、前記異方性導電膜135は、遮光性を生じさせる材質で形成されていることを特徴とするサーマルヘッド1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルヘッドおよびサーマルプリンターに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置の1つとしてサーマルプリンターが知られている。サーマルプリンターは、発熱素子が直線的に配置されたサーマルヘッドを有している。サーマルヘッドに配置された発熱素子は、通電により選択的に発熱する。そして、この熱エネルギーが感熱紙に含まれる発色剤と選択的に反応することにより、感熱紙上に種々の情報を印刷する。この印刷方式は、感熱発色方式と呼ばれている。
【0003】
このようなサーマルヘッドは、絶縁基板上に列状に配置された多数の発熱素子を駆動ICによって発熱駆動するように構成されている。発熱素子は、コモン電極と個別電極に導通しており、個別電極は、駆動ICの出力パッドに異方性導電膜によって接続されている。駆動ICは、印刷データにしたがって所定の出力パッドをオンとし、このオンとなった出力パッドに対応する個別電極と上記コモン電極間に電流が流れ、所定の発熱素子が発熱駆動される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−208285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のサーマルヘッドに用いられる駆動ICは、外部からの光による光電効果により起電力が発生し、駆動ICが誤動作する場合がある。駆動ICが誤動作すると正常な印刷がなされず、著しい場合はサーマルヘッドが破壊する虞がある。上述のサーマルヘッドは、異方性導電膜で個別電極と駆動ICの出力パッドとを接続しているのみであり、この種の課題に対応していない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
(適用例1)回路パターンが形成される基板と、前記基板上に列状に並ぶようにして形成された複数の発熱素子と、前記回路パターンに接続され前記発熱素子を発熱駆動させる駆動ICと、前記駆動ICを前記基板の前記回路パターンにフェースダウン接続する異方性導電膜と、を有し、前記異方性導電膜は、遮光性を生じさせる材質で形成されていることを特徴とするサーマルヘッド。
【0008】
この構成によれば、サーマルヘッドは、遮光性を有する異方性導電膜で駆動ICがフェースダウン接続される。そのため、駆動ICの能動面が、遮光性を有する異方性導電膜で覆われる構造となり、駆動ICは光の影響を受け難い。その結果、サーマルヘッドの駆動ICは、外乱光による誤動作が低減される。従って、信頼性の高いサーマルヘッドを提供することができる。
【0009】
(適用例2)前記異方性導電膜は、前記基板と前記駆動ICとを接着する樹脂と、前記樹脂中に前記基板と前記駆動ICとを接続する導電粒子と、前記樹脂中に着色材を含有するマイクロカプセルと、を有することを特徴とする上記のサーマルヘッド。
【0010】
この構成によれば、異方性導電膜は、樹脂と導電粒子と着色材を含有するマイクロカプセルとで構成される。着色剤を含有するマイクロカプセルは、駆動ICの実装時に融解もしくは壊れて、内包されている着色剤が外に染み出し拡散する。そのため、樹脂は着色され遮光性を有することができる。その結果、駆動ICの能動面は、着色され遮光性を有する異方性導電膜で覆われる構造となり、外乱光の影響を受け難い。従って、サーマルヘッドの駆動ICは、外乱光による誤動作が低減される。従って、信頼性の高いサーマルヘッドを提供することができる。
【0011】
(適用例3)上記のサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドの発熱素子列部分で圧接するプラテンとを有することを特徴とするサーマルプリンター。
【0012】
この構成によれば、サーマルプリンターは、外乱光による誤動作が発生しにくいサーマルヘッドを備えることができる。そのため、信頼性の高いサーマルプリンターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】サーマルプリンターの外観構成を示す斜視図。
【図2】カバーフレームが開いた状態のプリンター機構部の斜視図。
【図3】カバーフレームが閉じた状態のプリンター機構部の斜視図。
【図4】プリンター機構部の側断面を示す側断面図。
【図5】サーマルヘッドの取付を説明する側面図。
【図6】サーマルヘッドの外観斜視図。
【図7】サーマルヘッドのヘッド基板の平面図。
【図8】サーマルヘッドの駆動IC接続部の部分断面図。
【図9】異方性導フィルムの構造を示す断面図。
【図10】駆動ICの実装手順を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で参照する図面では、説明および図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺を実際のものとは異なるように表す場合がある。
【0015】
(サーマルプリンターの全体構成について)
本実施形態の印刷装置としてのサーマルプリンターを、図1〜3を参照して説明する。図1は、サーマルプリンターの外観構成を示す斜視図である。図2は、カバーフレームが開いた状態のプリンター機構部の斜視図であり、図3は、カバーフレームが閉じた状態のプリンター機構部の斜視図である。
【0016】
このサーマルプリンターは、POSシステム等に用いられ、レシートやクーポン等を印刷して発行することに適用される。サーマルプリンターは、ロール状の感熱紙を使用して、この感熱紙に情報を印刷する。なお、図1〜図3に示すX方向は、印刷される感熱紙の幅方向を示し、Z方向は、サーマルヘッド部での感熱紙の紙送り方向を示し、Y方向は、X方向およびZ方向と直交する方向を示す。
【0017】
図1〜3に示すように、サーマルプリンター100は、外装ケース部200と、プリンター機構部300と、図示しない制御部を有している。図2および図3に示すプリンター機構部300は、回路基板等からなる制御部とともに図1に示す外装ケース部200に収容される。詳しくは、プリンター機構部300は、樹脂等からなる下ケース205に固定され、側面部および後方部は、上ケース210に覆われており、そのY方向の前方部分は、パネル215により覆われている。さらに、プリンター機構部300の上面は、上部カバー220に覆われている。
【0018】
図2に示すように、プリンター機構部300は、印刷された感熱紙を切断するための紙カット部20およびロール状の感熱紙を収納保持するためのロール紙ホルダー30を備えている。図1に示すパネル215の上部にはこの紙カット部20が配置され、紙カット部20はカッタカバー225で覆われている。このカッタカバー225は、図1中矢印A方向にスライドさせて引き出すことができる。
【0019】
図1に示すように、上ケース210の上面のX方向の一方の側には、オープンボタン230が設けられている。オープンボタン230は、図1中矢印B方向に押し下げられることによって、プリンター機構部300に設けられたカバーオープンレバー235を、支点240を中心に回転させることができる。カバーオープンレバー235は、図2に示すプリンター機構部300のカバーフレーム10のロック機構と係合しており、時計方向に回転されることにより、ロック機構が解除される。さらに、カバーフレーム10は、上部カバー220と結合されている。
【0020】
そのため、矢印B方向にオープンボタン230を押下げると、カバーオープンレバー235が時計方向に回転されてロック機構が外され、上部カバー220が矢印C方向に開き、ロール紙ホルダー30が露出する。すなわち、この状態が、図2に示すプリンター機構部300のカバーフレーム10が開いた状態である。このようにすることにより、ロール状の感熱紙のセットもしくは取り出しができる。
【0021】
なお、本実施形態で使用する感熱紙は、発色剤がバインダー等により保持されている発色層からなる印刷面を有し、この印刷面を外面に順次積層され構成されているロール状の感熱紙である。以降、このロール状の感熱紙をロール紙と呼ぶ。
【0022】
(プリンター機構部について)
次いで、プリンター機構部の詳細を図2〜5を参照して説明する。図4は、プリンター機構部の側断面を示す側断面図である。図5はサーマルヘッドの取付を説明する側面図であり、(a)はサーマルヘッドが本体フレームに取り付けられた状態を示す部分側面図、(b)はサーマルヘッドを本体フレームに取り付ける過程を示す部分側面図である。なお、図4および図5に示すY方向およびZ方向は、図1〜3に示すY方向およびZ方向と同一方向である。
【0023】
図2〜4に示すように、プリンター機構部300は、本体フレーム60とカバーフレーム10と、ロール紙ホルダー30と、紙カット部20と、印刷部70と、を備えている。図2に示すように、本体フレーム60は、板金等からなり、Z方向上方およびY方向前方に開口を有する略箱型に形成されている。カバーフレーム10は、本体フレーム60の上部後方に設けられている。カバーフレーム10は、本体フレーム60の後部両側の上端部に設けられた支軸68を中心として開閉自在に取り付けられている。カバーフレーム10には、カバーフレーム10を閉じた際にロール紙との接触を避けるための円弧状の蓋部15が設けられている。また、本プリンターの設置角度を変える場合、すなわち、例えば縦置きにする場合、この蓋部15は、ロール紙を受ける保持部材としても機能する。
【0024】
ロール紙ホルダー30は、本体フレーム60の箱状に形成された内部の後方に、上記カバーフレーム10に覆われて設けられている。ロール紙ホルダー30は、樹脂等により形成され、中央部にロール紙の最大径に相当する略円弧状のくぼみを有し、本体フレーム60の底部に、円弧状のくぼみの側面開口が本体フレーム60の両側面側に向くように取り付けられている。本体フレーム60の内側の両側面部分は、ロール紙の側面ガイド部として機能する。そのため、ロール紙は、側面を本体フレーム60の内側の両側面部分に幅方向の動きを規制され、ロール紙ホルダー30の略円弧状のくぼみに回転自在に保持される。
【0025】
図3に示すように、紙カット部20は、本体フレーム60の前方すなわちカバーフレーム10の支軸68とは相対する位置に設けられている。紙カット部20は、可動刃21およびその駆動手段が収納されている。可動刃21は駆動手段により、支点22を中心に矢印E方向に回動する。図4に示すように、この可動刃21とハサミ状に交叉する固定刃24は、紙カット部20に対向するようにカバーフレーム10に配置される。
【0026】
この固定刃24と可動刃21との隙間は感熱紙が通過する紙出口Gに連結している。そのため、駆動手段により回動される可動刃21の刃部と固定刃24の刃部とがハサミ状に交叉することによって、感熱紙は紙出口G近傍でカットされる。なお、固定刃24の上部には、固定刃カバー25が設けられている。また、感熱紙を切断しない時は、可動刃21は紙カット部20の内部に収納されており、可動刃21の刃部は露出しない。
【0027】
図4に示すように、印刷部70は、ロール紙ホルダー30を始点として紙カット部20の紙出口Gを終点とする感熱紙Sの搬送経路D上の紙カット部20側に設けられている。図4および図5に示すように、印刷部70は、プラテン71とサーマルヘッド1とヘッド保持機構77とを備えている。サーマルヘッド1は、両側面にヘッド支持軸102が設けられている。このサーマルヘッド1の詳細については後述する。ヘッド保持機構77は、本体フレーム60に形成された溝部としての切り欠き部62とヘッド押圧板72とヘッド押圧板72に取り付けられるバネ75とから構成されている。
【0028】
図5(b)に示すように、切り欠き部62は、本体フレーム60の上方に開口を有し、プラテン側に溝62aが形成され、溝62aと対向する位置の上下に溝62b,62cが形成されている。サーマルヘッド1は、ヘッド支持軸102が本体フレーム60の切り欠き部62に挿入され、ヘッド支持軸102が切り欠き部62の溝62aに係合することによって、本体フレーム60に取り付けられる。ヘッド押圧板72は、上下に曲げ部72b,72cが形成され、圧縮コイルバネであるバネ75が固定されている。このヘッド押圧板72は、切り欠き部62に挿入され、曲げ部72b,72cがそれぞれ切り欠き部62の溝62b,62cに係合する。
【0029】
このようにすることによって、サーマルヘッド1とヘッド押圧板72とは、切り欠き部62の両側に、互いに略平行状態で支持される。ヘッド押圧板72に固定されるバネ75は、サーマルヘッド1の背面に当接する。このバネ75によりサーマルヘッド1はプラテン71方向に付勢される。
【0030】
上述のヘッド保持機構77は、ヘッド押圧板72に固定されたバネ75をサーマルヘッド1の背面からずらすことによって、切り欠き部62から取り外すことができる。サーマルヘッド1もバネ75からの付勢力がなくなることによって、切り欠き部62から取り外すことができる。このようにして、サーマルヘッド1は本体フレーム60に対して、着脱可能に支持される。
【0031】
図2に示すように、プラテン71は、ゴム等の弾性部材により円筒形のローラー状に形成され、プラテン軸受73を介してカバーフレーム10に回転可能に支持されている。プラテン71の一方の軸には、プラテン歯車74が圧入されている。本体フレーム60には、溝部64が設けられており、カバーフレーム10を閉じると、プラテン71が、サーマルヘッド1の案内斜面部104(図4参照)に案内された後、プラテン軸受73が溝部64と当接する。さらに、サーマルヘッド1によるプラテン71への加圧力で、カバーフレーム10には下向きの力が作用し、プラテン71の位置が定められる。
【0032】
以上の構成により、図5(a)に示すように、プラテン71は、感熱紙Sの内面S2の側から感熱紙Sをサーマルヘッド1の方向に押圧し、プラテン71と対向するサーマルヘッド1は、感熱紙Sの外面S1の側から感熱紙Sをプラテン71の方向に押圧して、感熱紙Sを挟持する。なお、このとき感熱紙Sの外面S1の表面に、前述の発色層が形成されている。
【0033】
また、図2に示すように、本体フレーム60の側面には、プラテン71を回転駆動させるための紙送りモーター66と紙送り伝達歯車67とが設けられている。上述のように、プラテン71が本体フレーム60の溝部64に位置決めされることによって、プラテン歯車74と紙送り伝達歯車67とが噛み合い、紙送りモーター66からの動力がプラテン71へ伝達される。
【0034】
上述の構造を有するサーマルプリンター100は、上部カバー220と連結するカバーフレーム10を開き感熱紙Sからなるロール紙Rをセットして、感熱紙Sを紙出口Gまで引き出し、上部カバー220と連結するカバーフレーム10を閉じることによって、感熱紙Sはプラテン71とサーマルヘッド1との間にセットされる。そして、紙送りモーター66を起動しプラテン71を回転させて感熱紙Sを送りながら、サーマルヘッド1の直線状に配置された発熱素子に選択的に通電して発熱素子を発熱させることによって、感熱紙Sに所定の情報を印刷することができる。
【0035】
(サーマルヘッドについて)
次いで、サーマルヘッド1について、図6〜8を参照して説明する。図6はサーマルヘッドの外観斜視図である。図7は、サーマルヘッドのヘッド基板の平面図であり、(a)は、ヘッド基板全体図、(b)は、(a)の部分拡大図である。図8は、サーマルヘッドの駆動IC接続部の部分断面図である。なお、図6および図7に示すX方向およびZ方向は、図1〜3に示すX方向およびZ方向と同一方向であり、図8に示すY方向およびZ方向は、図1〜3に示すY方向およびZ方向と同一方向である。
【0036】
図6に示すように、サーマルヘッド1は、放熱板106とヘッド支持軸102と基板としてのヘッド基板110と駆動IC120とFPC108とを有している。ヘッド基板110は、長矩形形状を呈しており、複数の発熱素子145からなる発熱素子列145aが長手方向に沿って図中Z方向上方に形成されている。また、発熱素子列145aと平行して、発熱素子145を駆動する複数の駆動IC120が配設されている。放熱板106は、アルミニウム等の引き抜き材で形成され、ヘッド基板110が放熱板106の係止面106aに両面粘着テープ等で貼り付けられている。
【0037】
放熱板106のヘッド基板110のZ方向上方には、案内斜面部104が放熱板106の長手方向にわたって形成されている。この案内斜面部104は、図4に示すカバーフレーム10を閉じる際に、プラテン71を滑動させて所定の位置まで案内する。この際、案内斜面部104の傾斜は、プラテン71がヘッド基板110と衝突しないような所定の角度を有している。また、案内斜面部104の斜面は、この案内斜面部104に近接して付設されたヘッド基板110と略同じ高さになるように設定されている。ヘッド支持軸102は円柱状の丸ピンであり、放熱板106の左右の側面部に設けられた穴部に圧入されている。
【0038】
ここでヘッド基板110について、図7を参照して説明する。図7(a),(b)に示すように、ヘッド基板110は、アルミナセラミック等からなり、一側縁110aに近い位置に長手方向に沿って、通電された電流を熱に変換する線状の発熱体140が保護膜に保護された状態で直線状に設けられている。ヘッド基板110の他側縁110bには、外部との電気的接続に供せられる複数の接続端子112が設けられている。発熱体140とヘッド基板110の一側縁110aとの間の帯状領域には、コモン配線パターン114が形成されている。このコモン配線パターン114の両端部は、接続端子112にいたるまでに延ばされている。
【0039】
ヘッド基板110の略中央には、駆動IC120を実装するIC実装部120aが各駆動IC120ごとに設けられ、線状の発熱体140と並列した列状に配置されている。なお、図7(a)中二点鎖線で示される列状に配置されたIC実装部120aを囲む領域が、第1の領域125に対応する。ヘッド基板110の同じく略中央には、この第1の領域125を囲むようにひとまわり大きい第2の領域130が、ヘッド基板110の回路パターン部を被覆するレジスト128(図8参照)によって区画されている。
【0040】
すなわち、第2の領域130は、平面視で周囲をレジスト128によって囲まれ、第2の領域130のヘッド基板110の表面を底面とし、レジスト128の表面を上面とし、レジスト128の厚さを深さ、すなわち段差とする凹状の長矩形状に形成されている。このとき、図8に示すように、レジスト128によって形成される段差は、レジスト128の表面方向に広がるテーパー形状に形成されることが好ましい。なお、本実施形態では、レジスト128によって段差が形成されているがこれに限定されない。別材料を付与して凸状の突起を設けてもよいし、第2の領域130を平面研削して周囲に段差を設けてもよい。
【0041】
図7(b)に示すように、上記コモン配線パターン114から、櫛歯状のコモン電極114aが延ばされており、一方、この櫛歯状のコモン電極114a間に入り込むようにして、個別電極118の一端が延出されている。各個別電極118の他端部は、ヘッド基板110上に設けられたIC実装部120aまで延びており、その端部には、電極パッド124が千鳥状に形成されている。IC実装部120aのヘッド基板110の他側縁110b側には、電極パッド126が千鳥状に設けられている。この電極パッド126は、図7(a)に示す接続端子112に接続されている。なお、この接続端子112は、FPC108が取り付けられ、FPC108を介してサーマルプリンター100を制御する制御部を構成する主回路基板(図示せず)と接続されている。
【0042】
上記発熱体140は、図7(b)に二点鎖線で示すように、上記櫛歯状のコモン電極114aおよびこれらの間に入り込む個別電極118に重なるようにして形成されている。そのため、隣合う櫛歯状のコモン電極114aと個別電極118とによって、発熱素子145が規定される。すなわち、選択された個別電極118がオン駆動されると、この個別電極118と櫛歯状のコモン電極114aとに囲まれる領域の発熱体140に電流が流れ、その部分が発熱素子145として機能する。
【0043】
すなわち、それぞれの領域の発熱体140が選択的に通電されることで、通電された領域の発熱体140のみが瞬時に発熱するとともに、通電が休止された場合は、速やかに放熱板106に放熱されるように構成されている。さらに、発熱体140は、感熱紙Sを挟持搬送するプラテン71とサーマルヘッド1との接点近傍に配置されている。そのため、発熱体140から発熱された熱エネルギーは感熱紙Sの発熱素子145に対応する領域に伝わる。
【0044】
次いで、図8を参照して、駆動IC120とIC実装部120aとの接続について説明する。発熱素子145を所定個数ずつ担当して駆動するための駆動IC120は、図8に示すように、その底面に所定個数の出力パッド132と入力パッド134が設けられ、それぞれ千鳥状に配置されている。駆動IC120は、出力パッド132がヘッド基板110の電極パッド124に対応し、入力パッド134が電極パッド126に対応するように遮光性を有する異方性導電膜135を介してIC実装部120aに配設されている。異方性導電膜135は、例えば、異方性導電フィルムを加熱しながら加圧することによって形成される。
【0045】
異方性導電フィルムは、弾性を有する熱硬化性の樹脂中に導電粒子と、遮光性を生じさせる物質とを分散させている。異方性導電フィルムは、適度な厚みと第2の領域130の開口部と略同等な面積とを有し、第2の領域130に貼り付けられる。駆動IC120は、異方性導電フィルムの上面に配置され図8中F方向に熱プレスされる。異方性導電フィルムが圧縮されつぶされることにより、出力パッド132と電極パッド124との間、および入力パッド134と電極パッド126との間は導電粒子を介して導通性が確保される。同時に、異方性導電フィルムは熱硬化する。なお、異方性導電フィルムの構成、遮光性を生じさせる物質、実装手順については、後述する。
【0046】
(異方性導電フィルムについて)
次いで、異方性導電フィルムについて、図9を参照して説明する。図9は異方性導電フィルムの構造を示す断面図である。
【0047】
図9に示すように、異方性導電フィルム135aは、導電粒子162と遮光性を生じさせる物質としてのマイクロカプセル164を厚さ10〜50μmのエポキシまたはアクリルを主成分とするフィルム状の樹脂160に分散させた構造を有している。
【0048】
導電粒子162は、例えば球状の樹脂コアの周りにNi/Auメッキされた導電性のある粒子で、その平均直径は4.0〜5.0μm程度であり、その形状は例えば粒径の揃った球状に近い形をしている。
【0049】
マイクロカプセル164は、例えば外側には、熱可塑性樹脂であるアクリル樹脂やポリウレタン樹脂等により壁物質168が形成されており、その壁物質168に遮光材である黒色染料169が内包されている。黒色染料169としては、例えば油性染料(分散染料、建染染料及び有機溶剤溶解性染料等)を用いることができる。更に例えばカーボンブラック等の無機顔料やアニリンブラック等の有機顔料等の顔料を用いても良い。また、その黒色染料は更に凝縮したものでも良い。
【0050】
更にマイクロカプセル164の大きさは、導電粒子162より大きく例えばその直径は5.0〜6.0μm程度であり、導電粒子162同様その形状は例えば球状に近い形をしている。これにより、導電粒子162が出力パッド132と電極パッド124との間、および入力パッド134と電極パッド126との間に挟まれるより前に、黒色染料169を内包したマイクロカプセル164が、駆動IC120の能動面とIC実装部120aとの間に挟まれて加圧されるので、壁物質168が十分破壊されそのマイクロカプセル164から黒色染料169が周りの樹脂160に拡散することができる。
【0051】
また、マイクロカプセル164の壁物質168は、例えば150〜250℃程度の加熱と駆動IC120の押圧、例えば20〜100MPa程度の圧力により融解もしくは壊れて、内包されていた芯物質である黒色染料169が外に染み出し拡散することが出来る程度の膜厚に形成されている。
【0052】
以上は、熱圧着する前の異方性導電フィルム135aの状態の説明であるが、熱圧着した後の異方性導電膜135は、例えば図8に示すようにマイクロカプセル164の壁物質168が融解、破壊して内包されていた黒色染料169が異方性導電膜135の全体に広がると共に、導電粒子162が例えば出力パッド132と電極パッド124との間、および入力パッド134と電極パッド126との間に挟まれる。
【0053】
これにより、例えば図8に示すように黒色染料169により黒色化した樹脂160は、駆動IC120をIC実装部120aの所定の実装領域に接合させる接着剤として作用すると共に、駆動IC120の特に能動面に入射しようとする光を吸収し遮蔽する。また、導電粒子162は出力パッド132と電極パッド124との間、および入力パッド134と電極パッド126との間とを電気的に接続させる導電性部材として作用する。
【0054】
(駆動ICの実装手順について)
次いで、駆動ICの実装手順について、図10を参照して説明する。図10は、駆動ICの実装手順を示す図である。詳しくは、図8と同様にヘッド基板の駆動IC接続部の部分断面を示している。
【0055】
図10(a)に示すように、ヘッド基板110の第2の領域130の略全域を覆うように異方性導電フィルム135aを配置する。この段階では、異方性導電フィルム135aの上面にはセパレーター136が貼り付けられている。なお、このセパレーター136の材料としては、例えば、PETフィルムが好適に用いられる。なお、異方性導電フィルム135aと段差を構成するレジスト128との間隔については、異方性導電フィルム135aの厚さおよび弾力性等によって適宜調整する。
【0056】
次いで、図10(b)に示すように、異方性導電フィルム135aの上面からセパレーター136を剥離する。次いで、図10(c)に示すように、異方性導電フィルム135aの上面に駆動IC120をセットする。このとき、駆動IC120の出力パッド132がヘッド基板110の電極パッド124に、駆動IC120の入力パッド134がヘッド基板110の電極パッド126に対応するように位置合わせする。
【0057】
また、同じく図10(c)に示すように、図示しない熱プレス機の熱ヘッド150を駆動IC120の上面にセットする。そして、熱ヘッド150を加熱して図中矢印F方向に移動させ、駆動IC120をヘッド基板110の面110c方向に押圧する。このときの加熱および加圧条件は、約60℃、約50MPa、約1秒程度が好ましい。このようにすることにより、駆動IC120は、ヘッド基板110に仮圧着される。
【0058】
さらに、熱ヘッド150をさらに加熱して図中矢印F方向に移動させ、駆動IC120を介して異方性導電フィルム135aをヘッド基板110の面110cに押圧する。このときの加熱および加圧条件は、約200℃、約100MPa、約10秒程度が好ましい。
【0059】
このようにすることにより、図10(d)に示すように、異方性導電フィルム135aはつぶされて、弾性を有する熱硬化性の樹脂は駆動IC120の周辺に押し出され、導電粒子162が駆動IC120の出力パッド132とヘッド基板110の電極パッド124との間、および駆動IC120の入力パッド134とヘッド基板110の電極パッド126との間に凝集して導電性を確保する。
【0060】
同時に、マイクロカプセル164は、壁物質168が融解もしくは壊れて、内包されていた黒色染料169が外に染み出し樹脂160中に拡散する。そして、異方性導電フィルム135aは、駆動IC120の外周方向にはみ出しレジスト128の段差にせき止められ、図中矢印H方向に盛り上がった状態で熱硬化し、異方性導電膜135を形成する。このとき、黒色染料169によって遮光性を有する異方性導電膜135は、駆動IC120の外側面の高さの略半分以上を覆っていることが好ましい。これにより、駆動IC120の能動面はより確実に遮光される。
【0061】
なお、上述の駆動IC120の実装方法で説明した熱プレス機の熱ヘッド150の加熱および加圧条件は一例であって、これに限定されない。異方性導電フィルム135aの種類、サイズ、弾力性等や、ヘッド基板110の第2の領域130の面積、段差の高さ等によって適宜調整することができる。
【0062】
以下、実施形態の効果を記載する。
(1)上記実施形態のサーマルヘッド1は、駆動IC120を、弾性を有する熱硬化性の樹脂160中に導電粒子162およびマイクロカプセル164を分散させている異方性導電フィルム135aを用いて、ヘッド基板110の回路パターンにフェースダウン実装されている。このとき、駆動IC120を熱プレスすることにより、異方性導電フィルム135aに分散されているマイクロカプセル164が融解、破壊して内包されていた黒色染料169が樹脂160中に広がると共に、導電粒子162が駆動IC120とヘッド基板110とのパッド間に凝集しつつ硬化して異方性導電膜135となる。そのため、駆動IC120とヘッド基板110との導電性を確保すると共に、黒色化した樹脂160により駆動IC120の能動面を遮光することができる。その結果、駆動ICの外乱光による誤動作を防止することができる。従って、信頼性の高いサーマルヘッドを提供することができる。
【0063】
(2)上記実施形態のサーマルヘッド1は、異方性導電膜135の樹脂160をつぶして駆動IC120を樹脂160部に半ば埋没状態で取り付けることができる。そのため、駆動IC120の能動面側は、硬化した黒色の異方性導電膜135によって完全に覆われた状態になり、完全に遮光されることになる。その結果、駆動ICの外乱光による誤動作を防止することができる。
【0064】
(3)上記実施形態のサーマルヘッド1に適用される異方性導電フィルム135aは、フィルム状態では半透明となっており、熱プレスされることによってマイクロカプセル164が融解、破壊し黒色の異方性導電膜135となる。そのため、駆動IC120のヘッド基板110への実装のための位置合わせの作業性を損なうことはない。従って、実装の作業性を確保しつつ遮光性を有する異方性導電膜135を形成することができる。
【0065】
以上、本発明の実施例について説明したが、上記実施例に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。例えば上記実施例以外の変形例は、以下の通りである。
【0066】
(第1変形例)
上記実施形態では、異方性導電フィルム135aにおいて、導電粒子162と黒色染料169を内包するマイクロカプセル164とを樹脂160に分散させた場合について説明したがこれに限定されない。異方性導電フィルム135aを2層構造として、一方の層は樹脂160中に導電粒子162を分散し、他方の層は樹脂160中マイクロカプセル164を分散してもよい。また、マイクロカプセル164の代わりに着色剤を直接分散させてもよい。これらの場合においても上記実施形態と同様な効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0067】
1…サーマルヘッド、60…本体フレーム、66…紙送りモーター、70…印刷部、71…プラテン、100…サーマルプリンター、110…ヘッド基板、120…駆動IC、120a…IC実装部、124,126…電極パッド、132…出力パッド、134…入力パッド、135…異方性導電膜、135a…異方性導電フィルム、145…発熱素子、160…樹脂、162…導電粒子、164…マイクロカプセル、168…壁物質、169…着色剤としての黒色染料、300…プリンター機構部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路パターンが形成される基板と、
前記基板上に列状に並ぶようにして形成された複数の発熱素子と、
前記回路パターンに接続され前記発熱素子を発熱駆動させる駆動ICと、
前記駆動ICを前記基板の前記回路パターンにフェースダウン接続する異方性導電膜と、を有し、
前記異方性導電膜は、遮光性を生じさせる材質で形成されていることを特徴とするサーマルヘッド。
【請求項2】
前記異方性導電膜は、前記基板と前記駆動ICとを接着する樹脂と、
前記樹脂中に前記基板と前記駆動ICとを接続する導電粒子と、
前記樹脂中に着色材を含有するマイクロカプセルと、を有することを特徴とする請求項1に記載のサーマルヘッド。
【請求項3】
請求項1または2に記載のサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドの発熱素子列部分で圧接するプラテンと、を有することを特徴とするサーマルプリンター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−106365(P2012−106365A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255588(P2010−255588)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】