説明

サーマルラベル

【課題】 感熱発色層の発色状態を長期間に亘って良好に維持し得るサーマルラベルを提供する。
【解決手段】 紙基材2の表面側に熱印加によって発色する感熱発色層3を備え、かつ紙基材2の裏面側に可塑剤を含有する粘着剤層4を備えたサーマルラベル1において、前記感熱発色層3と粘着剤層4との間に、可塑剤の浸透を遮断する浸透遮断層5を設けた。これにより、粘着剤層4から滲出する可塑剤の浸透経路が遮断され、感熱発色層3に浸透することがなく、サーマルラベル1を被着物に貼付した状態で長期間に亘って保存しても、可塑剤との接触に起因する感熱発色層3の発色印字部分の消色現象が発生せず、感熱発色層3の発色状態を長期間に亘って良好に維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱発色層の発色状態を長期間に亘って良好に維持し得るようにしたサーマルラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
紙基材の表面側に熱印加によって発色する感熱発色層を備え、紙基材の裏面側に粘着剤層を備えたサーマルラベルが知られている(例えば、特許文献1参照)。このサーマルラベルの感熱発色層は、ロイコ染料からなる発色剤と、酸性物質からなる顕色剤とを主成分としており、サーマルヘッドで加熱印字することによって、前記発色剤と顕色剤とが瞬時に化学反応して色素が生成され、発色することで印字状態が得られる。また、前記粘着剤層は、フタル酸エステル等の可塑剤を含有しており、該可塑剤によって粘着剤層の柔軟性や粘着度が調整されている。このようなサーマルラベルは、例えば、医療分野においては、被験者の個別情報を印字して試験管等に貼付する検体ラベルや、医薬品名を印字して薬品容器に貼付する薬名ラベル、或いは検査結果を印字してカルテに貼付する検査結果ラベル等として用いられている。
【特許文献1】実開平2−87269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来のサーマルラベルにあっては、感熱発色層に加熱印字を施し、裏面の粘着剤層によって被着物に貼付した状態で、長期間に亘って保存した場合、粘着剤層に含有されている可塑剤が時間の経過に伴って次第に紙基材に浸透し、さらに上層の感熱発色層に浸透すると、発色している印字部分が次第に消色してしまうという問題点があった。即ち、粘着剤層から滲出した可塑剤との接触に起因して、感熱発色層の発色印字部分に消色現象が生じるという問題点があった。
【0004】
本発明は、かかる従来の問題点を解消し得るサーマルラベルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、紙基材の表面側に熱印加によって発色する感熱発色層を備え、かつ紙基材の裏面側に可塑剤を含有する粘着剤層を備えたサーマルラベルにおいて、前記感熱発色層と粘着剤層との間に、可塑剤の浸透を遮断する浸透遮断層が設けられていることを特徴とするサーマルラベルである。
【0006】
ここで、前記浸透遮断層は、可塑剤の浸透を遮断する樹脂からなるものとし、該樹脂からなる浸透遮断層を、紙基材と粘着剤層との間に設ける構成が好適である。
【0007】
前記サーマルラベルにあって、前記浸透遮断層を、可塑剤の浸透を遮断するマットニスからなる樹脂とする構成が提案される。
【0008】
また、前記浸透遮断層を、可塑剤の浸透を遮断する、ワックス成分を含まないマットニスからなる樹脂とする構成が提案される。
【0009】
また、前記浸透遮断層を、可塑剤の浸透を遮断する紫外線硬化型インキからなる樹脂とする構成が提案される。
【0010】
さらに、前記サーマルラベルにあって、前記浸透遮断層を、可塑剤の浸透を遮断する樹脂が含浸された紙基材とする構成が提案される。
【0011】
また、前記可塑剤の浸透を遮断する樹脂に粒状多孔質体を混入した構成が提案される。
【0012】
また、前記サーマルラベルにあって、前記浸透遮断層を、0.95〜1.1g/cm3の紙密度に設定された紙基材とする構成が提案される。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、上述したように、紙基材の表面側に熱印加によって発色する感熱発色層を備え、かつ紙基材の裏面側に可塑剤を含有する粘着剤層を備えたサーマルラベルにおいて、前記感熱発色層と粘着剤層との間に、可塑剤の浸透を遮断する浸透遮断層が設けられていることを特徴とするサーマルラベルであるから、該浸透遮断層によって粘着剤層から滲出する可塑剤の浸透経路が遮断され、感熱発色層に浸透することがない。これにより、可塑剤との接触に起因する感熱発色層の発色印字部分の消色現象が発生せず、感熱発色層の発色状態を長期間に亘って良好に維持することができる。
【0014】
そして、前記浸透遮断層を、可塑剤の浸透を遮断するマットニスからなる樹脂とする構成にあっては、該浸透遮断層を紙基材の裏面側、即ち、紙基材と粘着剤層との間に設ける場合において、マットニスからなる樹脂が紙基材と粘着剤層とによく馴染み、その両者に対する密着性を良好なものとすることができる。
【0015】
また、前記浸透遮断層を、可塑剤の浸透を遮断する、ワックス成分を含まないマットニスからなる樹脂とする構成にあっては、粘着剤層との密着性をさらに優れたものとすることができる。
【0016】
また、前記浸透遮断層を、可塑剤の浸透を遮断する紫外線硬化型インキからなる樹脂とする構成にあっては、該紫外線硬化型インキを紙基材に塗工した後、紫外線を照射することで瞬時に硬化させることができるため、浸透遮断層の形成時間が短縮され、生産効率が向上する。
【0017】
さらに、前記サーマルラベルにあって、前記浸透遮断層を、可塑剤の浸透を遮断する樹脂が含浸された紙基材とする構成にあっては、従来構成のサーマルラベルの積層構造を何ら変更することなく、紙基材自体に可塑剤の浸透を遮断する作用を付与することができる。これにより、可塑剤との接触に起因する感熱発色層の発色印字部分の消色現象が発生せず、感熱発色層の発色状態を長期間に亘って良好に維持することができる。
【0018】
また、前記可塑剤の浸透を遮断する樹脂に粒状多孔質体を混入した構成にあっては、該粒状多孔質体が可塑剤を吸収することにより、浸透遮断層の遮断作用をさらに向上させることができる。
【0019】
また、前記サーマルラベルにあって、前記浸透遮断層を、0.95〜1.1g/cm3の紙密度に設定された紙基材とする構成にあっては、従来構成のサーマルラベルの積層構造を何ら変更することなく、紙基材自体に可塑剤の浸透を遮断する作用を付与することができる。これにより、可塑剤との接触に起因する感熱発色層の発色印字部分の消色現象が発生せず、感熱発色層の発色状態を長期間に亘って良好に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、図1〜図3に示すように、紙基材2の表面側に熱印加によって発色する感熱発色層3を備え、かつ紙基材2の裏面側に可塑剤を含有する粘着剤層4を備えたサーマルラベル1において、前記感熱発色層3と粘着剤層4との間に、可塑剤の浸透を遮断する浸透遮断層5が設けられていることを特徴としている。
【0021】
図1は、本発明にかかるサーマルラベル1の第一実施例を示し、この第一実施例は、紙基材2の表面側に熱印加によって発色する感熱発色層3を備え、かつ紙基材2の裏面側に可塑剤を含有する粘着剤層4を備えたサーマルラベル1において、前記紙基材2と粘着剤層4との間に、可塑剤の浸透を遮断する樹脂からなる浸透遮断層5を設けたものである。尚、図示した例では、前記粘着剤層4の下面に剥離紙6が仮着されており、また、感熱発色層3の上面にはOPニス等からなるオーバーコート層7が設けられている。
【0022】
前記紙基材2は紙からなり、これには上質紙が好適に用いられる。感熱発色層3は、ロイコ染料からなる発色剤と、酸性物質からなる顕色剤とを主成分としており、これらを必要に応じて用いられる各種添加剤とともにバインダー(保持剤)中に分散させた混合物を紙基材2の上面全体に亘って塗布し、乾燥させることによって形成されている。尚、紙基材2の表面側に感熱発色層3を備えた感熱記録紙は、製紙メーカーで製造されたものが二次加工用として市販されており、この第一実施例の場合には、このような市販品を用いることにより、製造コストを低減することができる。
【0023】
前記紙基材2の裏面に設けられる浸透遮断層5は、可塑剤の浸透を遮断し得る樹脂であれば特に制限はないが、印刷適性に優れたものが好ましい。このような樹脂としては、ニス,マットニス,紫外線硬化型インキ,酸化重合型インキ等が挙げられる。これらの樹脂をオフセット印刷,凸版印刷,グラビア印刷等の印刷手段によるベタ印刷によって、紙基材2の裏面全体に亘って塗工し、乾燥させることにより、浸透遮断層5が形成されている。
【0024】
前記浸透遮断層5の下面に形成される粘着剤層4は可塑剤を含有しており、該可塑剤によって粘着剤層4の柔軟性や粘着度が調整されている。この可塑剤としては、代表的なフタル酸エステルを始め、ミネラルオイル,液状ポリブテン,液状ポリアクリレート,ラノリン等が挙げられる。また、粘着剤としては、エステル系,ポリエステル系,ポリウレタン系,ゴム系等の粘着剤が用いられ得る。そして、前記可塑剤を適宜の割合で混合した粘着剤を、ロールナイフコーター,リバースコーター,ダイコーター,グラビアコーター等のコート手段によって、浸透遮断層5の裏面に塗工し、乾燥させることにより、粘着剤層4が形成されている。尚、該粘着剤層4は、剥離紙6の離型面に可塑剤が混合された粘着剤を前記コート手段で塗工し、乾燥させて粘着剤層4を設けた後、これを浸透遮断層5に貼着して形成するようにしてもよい。
【0025】
かかる構成にあって、サーマルラベル1の感熱発色層3にサーマルヘッドで加熱印字を施した後、裏面の粘着剤層4によって被着物に貼付した状態において、紙基材2の裏面に可塑剤の浸透を遮断する浸透遮断層5が設けられていることにより、該浸透遮断層5によって粘着剤層4から滲出する可塑剤の浸透経路が遮断され、感熱発色層3に浸透することがない。これにより、サーマルラベル1を被着物に貼付した状態で長期間に亘って保存しても、可塑剤との接触に起因する感熱発色層3の発色印字部分の消色現象が発生せず、感熱発色層3の発色状態を長期間に亘って良好に維持することができる。
【0026】
ここで、前記浸透遮断層5を構成する樹脂として、マットニスを用いた場合には、紙基材2と粘着剤層4とによく馴染み、その両者に対する密着性を良好なものとすることができる。
【0027】
また、前記浸透遮断層5を構成する樹脂として、ワックス成分を含まないマットニスを用いた場合には、粘着剤層4との密着性がさらに優れたものとなる。
【0028】
また、前記浸透遮断層5を構成する他の樹脂として、紫外線硬化型インキを用いた場合には、該紫外線硬化型インキを紙基材2に塗工した後、紫外線を照射することで瞬時に硬化させることができるため、浸透遮断層5の形成時間が短縮され、生産効率が向上する。
【0029】
また、前記浸透遮断層5は、ニス,マットニス,紫外線硬化型インキ,酸化重合型インキ等の樹脂をオフセット印刷等の印刷手段を介して印刷することで形成し得るので製造が簡単で生産性がよい。
【0030】
図2は、本発明にかかるサーマルラベル1の第二実施例を示し、この第二実施例は、感熱発色層3と粘着剤層4との間に設けられる浸透遮断層5を、可塑剤の浸透を遮断する樹脂が含浸された紙基材2によって構成したものである。この紙基材2は、アクリル系,ポリエステル系,ポリウレタン系等の樹脂溶液を上質紙等の紙に含浸させた後、乾燥させることにより形成されている。そして、この樹脂が含浸された紙基材2の表面側に感熱発色層3が形成されており、また、該紙基材2の裏面側に可塑剤を含有する粘着剤層4が形成されている。
【0031】
かかる構成にあっては、樹脂が含浸された紙基材2からなる浸透遮断層5によって粘着剤層4から滲出する可塑剤の浸透経路が遮断され、感熱発色層3に浸透することがない。これにより、サーマルラベル1を被着物に貼付した状態で長期間に亘って保存しても、可塑剤との接触に起因する感熱発色層3の発色印字部分の消色現象が発生せず、感熱発色層3の発色状態を長期間に亘って良好に維持することができる。そして、この第二実施例の構成にあっては、従来構成のサーマルラベルの積層構造を何ら変更することなく、紙基材2自体に可塑剤の浸透を遮断する作用を付与することができる。
【0032】
尚、上述した第一実施例及び第二実施例において、可塑剤の浸透を遮断する樹脂に、粒状多孔質体を予め混入したものを用いるようにしてもよい。この粒状多孔質体としては、例えば、平均粒子径が0.1〜20μmに形成された活性炭粒子,多孔質炭酸カルシウム系化合物粒子,多孔質りん酸カルシウム系化合物粒子等が好適に用いられ得る。このように、可塑剤の浸透を遮断する樹脂に粒状多孔質体を混入すると、該粒状多孔質体が可塑剤を吸収することにより、浸透遮断層5の遮断作用をさらに向上させることができる。
【0033】
図3は、本発明にかかるサーマルラベル1の第三実施例を示し、この第三実施例は、感熱発色層3と粘着剤層4との間に設けられる浸透遮断層5を、0.95〜1.1g/cm3の紙密度に設定された紙基材2によって構成したものである。ここで、紙基材2に用いられる紙の通常の紙密度は、0.7〜0.9g/cm3程度であるが、この紙をカレンダー処理によって厚み方向に圧潰して、その紙密度を0.95〜1.1g/cm3に高めることにより、可塑剤の浸透を遮断し得るようにしたものである。このカレンダー処理は、感熱発色層3の形成前または形成後に行われる。そして、感熱発色層3が形成されていない紙基材2のみにカレンダー処理を施した場合には、表面側に感熱発色層3を形成した後、裏面側に可塑剤を含有する粘着剤層4が形成される。また、表面側に感熱発色層3が形成された紙基材2にカレンダー処理を施した場合には、その後、裏面側に可塑剤を含有する粘着剤層4が形成される。
【0034】
かかる構成にあっては、第二実施例と同様に、従来構成のサーマルラベルの積層構造を何ら変更することなく、紙基材2自体に可塑剤の浸透を遮断する作用を付与することができる。これにより、可塑剤との接触に起因する感熱発色層3の発色印字部分の消色現象が発生せず、感熱発色層3の発色状態を長期間に亘って良好に維持することができる。また、この第三実施例の構成にあっては、紙基材2の表面側に感熱発色層3が形成された市販の感熱記録紙に対してカレンダー処理を行うことが可能であり、この場合にはコストが低廉となる利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明にかかるサーマルラベル1は、医療分野において、被験者の個別情報を印字して試験管等に貼付する検体ラベルや、医薬品名を印字して薬品容器に貼付する薬名ラベル、或いは検査結果を印字してカルテに貼付する検査結果ラベル等として用いることが可能であり、さらに各種産業分野においても利用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第一実施例にかかるサーマルラベル1の縦断面図である。
【図2】第二実施例にかかるサーマルラベル1の縦断面図である。
【図3】第三実施例にかかるサーマルラベル1の縦断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 サーマルラベル
2 紙基材
3 感熱発色層
4 粘着剤層
5 浸透遮断層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材の表面側に熱印加によって発色する感熱発色層を備え、かつ紙基材の裏面側に可塑剤を含有する粘着剤層を備えたサーマルラベルにおいて、
前記感熱発色層と粘着剤層との間に、可塑剤の浸透を遮断する浸透遮断層が設けられていることを特徴とするサーマルラベル。
【請求項2】
浸透遮断層が、可塑剤の浸透を遮断するマットニスからなる樹脂であることを特徴とする請求項1記載のサーマルラベル。
【請求項3】
浸透遮断層が、可塑剤の浸透を遮断する、ワックス成分を含まないマットニスからなる樹脂であることを特徴とする請求項1記載のサーマルラベル。
【請求項4】
浸透遮断層が、可塑剤の浸透を遮断する紫外線硬化型インキからなる樹脂であることを特徴とする請求項1記載のサーマルラベル。
【請求項5】
浸透遮断層が、可塑剤の浸透を遮断する樹脂が含浸された紙基材であることを特徴とする請求項1記載のサーマルラベル。
【請求項6】
可塑剤の浸透を遮断する樹脂に、粒状多孔質体が混入されていることを特徴とする請求項2乃至請求項5の何れかに記載のサーマルラベル。
【請求項7】
浸透遮断層が、0.95〜1.1g/cm3の紙密度に設定された紙基材であることを特徴とする請求項1記載のサーマルラベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−91220(P2006−91220A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−274523(P2004−274523)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000186566)小林記録紙株式会社 (169)
【Fターム(参考)】