説明

シアントラニリプロールとモノスルタップを含む殺虫組成物

本発明は、重量比が1:0.1〜200であるシアントラニリプロールとモノスルタップを有効成分とする殺虫組成物であって、その有効成分の含有量が2.2〜70重量%である殺虫組成物を提供する。重量が異なる溶媒と補助溶媒、乳化剤、分散剤、抗凍結剤、消泡剤、増粘剤、安定化剤、または粘結剤を添加することによって、水性乳剤、マイクロエマルジョン、懸濁化剤、 水和剤または顆粒水和剤を調製することができる。該組成物は農産物などの病害虫の防除に有効であり、特に稲の害虫防除に適用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シアントラニリプロールとモノスルタップを含有する殺虫組成物及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
シアントラニリプロール(cyantraniliprole)は、商品名がcyazypyrTM(登録商標)、実験用コードがDPX-HGW86、化学名が3-ブロモ-N-(4-シアノ-2-メチル-6-(メチルアミノカルボニル)フェニル)-1-(3 -クロロピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-5-カルボキサミドであり、米国デュポン社により開発された新型O-ホルミルアミノベンゾイルアミン系殺虫剤である。シアントラニリプロールは、昆虫のリアノジン受容体の阻害剤に属し、主に昆虫のリアノジン受容体が調整する細胞内カルシウムイオンの放出を誘導することによって、接触殺虫、および胃毒性などの効果を発揮し、水稲、野菜、綿花、ビートなどのいろんな作物の害虫防除に用いられ、特に各種の鱗翅目害虫に対する防除効果が高い。その防除効果は、従来から使用されている他の殺虫剤商品の品種より著しく優れており、かつ他の殺虫剤に対して交差抵抗性が存在しない。従って、シアントラニリプロールは、世界上新世代の高効率の殺虫剤として認められているが、合成方法が複雑で、コストが高くて、知的財産権などの問題があるため、現在中国では製造できない状況である。このような状況では、幅広い普及が制限され、特に、いくつかの経済後進地域での普及が難しくなっている。
【0003】
【化1】

【0004】
モノスルタップ(monosultap)は、化学名が2-N,N-(ジメチルアミノ)-1,3- ビス(チオ硫酸ナトリウム)プロパンであり、農業生産において10年以上使用されている従来品の農薬であり、ネライストキシン系殺虫剤に属し、ニコチン性アセチルコリン受容体拮抗薬である。昆虫に対して強力に接触殺虫、胃毒性、燻蒸、及び吸引などの効果を有し、水稲のズイムシ、コブノメイガ、アワヨトウ、ヨコバイ類、ウンカなどの複数種の害虫に対して防除効果を発揮することができ、水稲のズイムシとコブノメイガの特効薬であり、製造コストと農業コストが低い。しかし、該薬剤は、使用量が多く、即効性が比較的に低く、既に害虫の薬剤耐性が発生したなどの問題があるため、作用機序を変えて、薬剤耐性を低減させ、該薬剤の耐用年数を延長させるようにそれと複合できる薬剤を求めている。
【0005】
本発明者らは、シアントラニリプロールとモノスルタップとの配合について研究を行う過程において、シアントラニリプロールとモノスルタップとの配合により、元の薬剤の殺虫効果を維持するだけではなく、顕著な協力作用も持ち、害虫の薬剤耐性の発生リスクを低減でき、農業コストも明らかに低減できるなどの効果を有することを見出した。新規性調査により、これまでにシアントラニリプロールとモノスルタップを含む殺虫組成物が未だないことが分かった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、シアントラニリプロールとモノスルタップを含む殺虫組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、現代のバイオアッセイ法を採択し、かつSun Y P & Johnson E R (1960)における協力作用係数法(CTC)によって得られた、シアントラニリプロールとモノスルタップを有効成分とする殺虫組成物である。また、重量が異なる溶媒、補助溶媒、乳化剤、分散剤、抗凍結剤、消泡剤、増粘剤、安定化剤、または粘結剤を添加し、当業者に知られている方法を用いることにより、水性乳剤(EW)またはマイクロエマルジョン(ME)、懸濁化剤(SC)、水和剤(WP)、顆粒水和剤(WDG)を調製した。シアントラニリプロールとモノスルタップとの重量比が1:0.1〜200であり、シアントラニリプロールとモノスルタップの重量の合計が、殺虫組成物の総重量の2.2〜70%である。
【0008】
本発明において、水性乳剤を調製する際に、添加される溶媒は、水、キシレンからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、溶媒の使用量は組成物総重量の20〜60%を占める。補助溶媒は、メタノール、アセトン、ピロリドン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、補助溶媒の使用量は、組成物総重量の1〜5%を占める。乳化剤は、アルキルフェノールポリエトキシレート、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、リン酸化アルキルフェノールポリエトキシレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、フェニルエチルフェノールポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩からなる群から選ばれる1つ以上のものであり、乳化剤の使用量は、組成物総重量の10〜30%を占める。分散剤は、ポリビニルアルコール、アラビアガム、またはその混合物であり、分散剤の使用量は、組成物総重量の5〜10%を占める。抗凍結剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトールからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、抗凍結剤の使用量は、組成物の総重量の1〜8%を占める。消泡剤は、有機シリコーンオイル、エポキシ化大豆油からなる群から選ばれる1つ以上のものであり、消泡剤の使用量は、組成物総重量の0.5〜8%を占める。
【0009】
本発明において、マイクロエマルジョンを調製する際に、添加される溶媒は、水、トルエン、キシレンからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、溶媒の使用量は、組成物の総重量の20〜60%を占める。補助溶媒は、メタノール、ピロリドン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、補助溶媒の使用量は、組成物の総重量の1〜5%を占める。乳化剤は、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルビス(ポリオキシエチレン)スルホン酸塩、リン酸化アルキルフェノールポリエトキシレート、ジフェニルフェノールポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル、フェニルエチルフェノールポリオキシエチレンエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、アルキルフェノールポリエトキシレート、ヒマシ油ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル、スチレン化フェノールポリエトキシレートからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、乳化剤の使用量は、組成物の総重量の10〜30%を占める。抗凍結剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール、ソルビトールからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、抗凍結剤の使用量は、組成物の総重量の1〜8%を占める。安定化剤は、尿素、可溶性デンプン、トリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、安定化剤の使用量は、組成物の総重量の0.5〜10%を占める。消泡剤は、有機シリコーンオイル、エポキシ化大豆油、メタノールからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、消泡剤の使用量は、組成物の総重量の0.5〜8%を占める。
【0010】
本発明において、懸濁化剤を調製する際に、添加される溶媒は、水、キシレン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、溶媒の使用量は、組成物の総重量の20〜60%を占める。湿潤分散剤は、リグニンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、脂肪族アルコールスルフェート、アルキルアリールスルホン酸塩、ポリアリールフェノールポリオキシエチレンエーテルホスフェートアルキルアミン塩、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、リン酸化アルキルフェノールポリエトキシレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、アルキルフェノールポリエトキシレート、脂肪族アルコールポリエトキシレートからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、湿潤分散剤の使用量は、組成物の総重量の0.5〜40%を占める。増粘剤は、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、アラビアガム、ポリビニルピロリドン、ベントナイト、ケイ酸マグネシウムアルミニウムからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、増粘剤の使用量は、組成物の総重量の0.2〜5%を占める。安定化剤は、尿素、可溶性デンプン、ソルビン酸ナトリウム、ピロ没食子酸、トリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、安定化剤の使用量は、組成物の総重量の0.5〜10%を占める。消泡剤は、有機シリコーンオイル、メタノール、エタノール、エポキシ化大豆油からなる群から選ばれる1つ以上のものであり、消泡剤の使用量は、組成物の総重量の0.5〜8%を占める。抗凍結剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール、ソルビトールからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、抗凍結剤の使用量は、組成物の総重量の0.1〜5%を占める。
【0011】
本発明は、水和剤を調製する際に、添加される分散剤は、リグニンスルホン酸塩、脂肪酸アミドN-メチルタウリンナトリウム塩、硫酸化アルキルフェノールポリエトキシレート、硫酸化脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、アルキルフェノールポリエトキシレート類、脂肪族アルコールポリエトキシレートからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、分散剤の使用量は、組成物の総重量の5〜35%を占める。湿潤剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリルアルコール硫酸塩、農薬乳化剤2000、SOPA230、SOPA270、SOPA235、湿潤・浸透剤Fからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、湿潤剤の使用量は、組成物の総重量の5〜30%を占める。キャリアは、カオリン、ベントナイト、珪藻土、活性白土、ホワイトカーボンブラック、軽質炭酸カルシウムからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、キャリアの使用量は、組成物の総重量の15〜75%を占める。
【0012】
本発明において、顆粒水和剤を調製する際に、添加される湿潤剤は、脂肪酸アミドN-メチルタウリンナトリウム塩、リグニンスルホン酸塩、硫酸化アルキルフェノールポリエトキシレート、アルキルナフタレンスルホン酸塩、硫酸化脂肪酸エステル、アルキルフェノールポリエトキシレート、脂肪族アルコールポリエトキシレートからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、湿潤剤の使用量は、組成物の総重量の5〜30%を占める。分散剤は、ラウリルアルコールポリエトキシレート、アルキルアリールポリエトキシレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、アクリル酸ホモポリマーナトリウム塩からなる群から選ばれる1つ以上のものであり、分散剤の使用量は、組成物の総重量の5〜10%を占める。粘結剤は、デンプン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ケイ酸ナトリウム、ゼラチン、シクロデキストリン、アラビアガムからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、粘結剤の使用量は、組成物の総重量の1〜10%を占める。崩壊剤は、尿素、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウムからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、崩壊剤の使用量は、組成物の総重量の5〜10%を占める。キャリアは、カオリン、珪藻土、活性白土、ホワイトカーボンブラック、ベントナイト、粘土、軽質炭酸カルシウム、タルクパウダー、モンモリロナイトからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、キャリアの使用量は、組成物の総重量の15〜70%を占める。
【0013】
本発明において調製された製剤は、水により希釈された後、噴霧、ミスト、散粉、散布または灌漑などの方式を用いて虫害防除のために異なる作物と場所に実施し、特に、水稲のズイムシ防除効果が優れ、アワヨトウの防除に対して顕著な協力作用を有する。単剤に比べて、水稲のサンカメイチュウとコブノメイガに対する殺虫効果が対応する単剤農薬の殺虫効果より顕著に高く、更に、害虫の薬剤耐性の発生を克服または遅らせることができる。特に従来品のモノスルタップは、単独に使用する場合に薬剤の使用量が多く、通常1畝(ほ、以下同様。)あたりの有効成分の使用量は、50グラム以上であるが、本発明を採用すると、1畝あたりの有効成分の使用量がわずか4〜20グラムであっても、各種の害虫を効率的に防除することができ、数年間使用されてきた市販品であるモノスルタップの新しい応用分野を広げることができ、従来品の農薬の安全耐用年数を延長し、かつ、生産及び使用コストを大幅に削減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を十分に理解するために、以下実施例を参照しながら本発明を更に詳細に説明するが、下記の実施例に限定されることがない。
【0015】
<実施例1>
まず、シアントラニリプロール10g、モノスルタップ1g、リグニンスルホン酸塩10g、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体9g、アルキルフェノールポリエトキシレート2g、ポリオキシエチレンソルビタンエステル2g、プロピレングリコール2g、ポリビニルアルコール2g、メタノール3g、ジメチルホルムアミド2g、エポキシ化大豆油1g、キシレン5gと脱イオン水51gをはかり取る。その後、常温・高せん断ミキサーでの条件下、油相を水相中に添加し、かつ平均液滴径が2μm未満になるように均一に撹拌混合することで、11%の水性乳剤サンプルを得た。
【0016】
<実施例2>
まず、シアントラニリプロール2g、モノスルタップ0.2g、フェニルフェノールポリオキシエチレンエーテルホスフェート10g、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル10g、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体5g、アルキルベンゼンスルホン酸塩5g、有機シリコーンオイル3g、アラビアガム5g、ソルビトール2g、アセトン2g、ジメチルスルホキシド3g、ピロリドン1gと脱イオン水51.8gをはかり取る。その後、常温・高せん断ミキサーでの条件下、油相を水相中に添加し、平均液滴径が2μm未満になるように均一に撹拌混合することで、2.2%の水性乳剤サンプルを得た。
【0017】
<実施例3>
まず、シアントラニリプロール1g、モノスルタップ10g、フェニルエチルフェノールポリオキシエチレンエーテルホスフェート10g、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体10g、フェニルエチルフェノールポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル5g、ポリビニルアルコール2g、エチレングリコール1g、酢酸エチル3g、メタノール2g、エポキシ化大豆油1gと脱イオン水55gをはかり取る。その後、常温・高せん断ミキサーでの条件下、油相を水相中に添加し、平均液滴径が2μm未満になるように均一に混合撹拌することで、11%の水性乳剤サンプルを得た。
【0018】
<実施例4>
シアントラニリプロール10g、モノスルタップ10g、ドデシルベンゼンスルホン酸塩6g、フェニルエチルフェノールポリオキシエチレンエーテルホスフェート5g、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体5g、アルキルフェノールポリエトキシレート4g、酢酸エチル5g、ポリエチレングリコール5g、エポキシ化大豆油2gと脱イオン水48gをはかり取る。その後、常温・高せん断ミキサーでの条件下、各成分を平均液滴径が0.1μm未満になるように均一に混合撹拌することで、20%のマイクロエマルジョンサンプルを得た。
【0019】
<実施例5〜実施例7>
実施例4に類似する方法によって、下記の含有量が異なる組成物MEを調製した。


【0020】
<実施例8>
シアントラニリプロール10g、モノスルタップ1g、リグニンスルホン酸ナトリウム10g、ポリアリールフェノールポリオキシエチレンエーテルホスフェートアルキルアミン塩10g、トリルグリシジルエーテル1g、アラビアガム1g、ポリビニルピロリドン4g、ポリエチレングリコール5gと水57gをはかり取る。前記各成分を均一に混合し、ボールミルによってボールミル粉砕を4時間行うことで粗分散液を得た。更に湿式法による超微細化粉砕で平均粒径が5μm未満になるようにして、11%の懸濁化剤サンプルを得た。
【0021】
<実施例9〜実施例11>
実施例8に類似する方法によって、下記の含有量が異なる組成物SCを調製した。


【0022】
<実施例12>
シアントラニリプロール0.1g、モノスルタップ19.9g、リグニンスルホン酸ナトリウム10g、ドデシルベンゼンスルホン酸塩10gおよびカオリン60gをはかり取って、それらを十分混合させ、混合物をジェットミルにより粉砕させ、平均粒径が20μmの20%の水和剤サンプルを得た。
【0023】
<実施例13〜15>
実施例12に類似する方法によって、下記の含有量が異なる組成物WPを調製した。


【0024】
<実施例16>
シアントラニリプロール1g、モノスルタップ19g、硫酸化アルキルフェノールポリエトキシレート5g、ラウリルアルコールポリエトキシレート15g、ケイ酸ナトリウム2g、ポリエチレングリコール4g、デンプン2g、尿素2g、活性白土10gとカオリン42gをはかり取る。混合物を超細化粉砕してから、造粒、乾燥、篩分けを行うことで、平均粒径が4μm程度の20%の顆粒水和剤サンプルを得た。
【0025】
<実施例17〜実施例20>
実施例16に類似する方法によって、下記の含有量が異なる組成物WDGを調製した。


【0026】
<実施例21>
アワヨトウ(Mythimna separata)に対するシアントラニリプロールとモノスルタップとの配合物による配合スクリーニング及び毒性の測定
【0027】
浸漬法を用いる。測定される試薬で所定濃度の母液を調製し、更に清水で5つの濃度に希釈し、清水をコントロールとする。新鮮で柔らかいトウモロコシの葉を切断し、長さ約50mmのサイズに揃った葉っぱを調製された試薬に10秒間浸漬してから、取り出して自然乾燥させ、ろ紙を敷いたシャーレ(Ф90mm)に入れる。その後、ヨトウムシの3齢幼虫をシャーレに入れ、シャーレ1つあたりに10匹を置き、各濃度で3回繰り返して測定する。処理が完了すると、蓋をかぶせて、回復室内で培養し、定期的に観察し、48Hr後に死亡状況を確認・記録し、死亡率(%)を計算する。プロビット解析法に従って、毒性回帰方程式、相関係数(r)と半数致死濃度(LC50)を求める。Sun& Johnson (1960)による協力作用係数法(CTC)によって複合効果を評価する。通常、CTCが120より大きいとき、協力作用を有し、CTCが80〜120の間にあるとき、相加作用を有し、CTCが80より小さいとき、拮抗効果を有することを表す。協力作用係数は次の式により計算することができる。
【0028】
【数1】

【0029】
シアントラニリプロールとモノスルタップとの配合によるアワヨトウに対する毒性測定の結果を表1に示す。シアントラニリプロールとモノスルタップが1:0.1、1:0.5、1:1、1:10、1:20、1:50、1:100と1:200の割合での配合は、いずれもアワヨトウに対して顕著な協力作用が生じ、協力作用係数はそれぞれ151.15、124.88、179.79、200.58、163.17、157.68、141.02と122.20であることがわかった。
【0030】
【表1】


表1は、シアントラニリプロールとモノスルタップとの配合によるアワヨトウに対する毒性測定結果(48hr)を示す。
【0031】
<実施例22>
試験圃場でのシアントラニリプロールとモノスルタップとの配合物における水稲のサンカメイチュウに対する防除効果テスト
【0032】
テスト結果を表2に示す。シアントラニリプロールとモノスルタップとの配合物は水稲のサンカメイチュウに対して優れた防除効果を有することがわかった。試薬の投入量が5、10と20g a.i./畝の場合、投入7日後と20日後の防除効果は、各実施例サンプルがそれぞれ85%と98%以上に達し、シアントラニリプロール2g a.i./畝及びモノスルタップ50g a.i./畝における水稲のサンカメイチュウに対する防除効果より顕著に優れることが分かった。
【0033】
【表2】


表2は、試験圃場でのシアントラニリプロールとモノスルタップとの配合物における水稲のサンカメイチュウに対する防除効果(中国永州、 2009.9)を示す。
備考: 上記表におけるデータは、3回繰り返して測定した平均値であり、同列の数字の後に同じ英文字が附加されたことはP=0.05レベルで有意な差がないことを表す。以下の表も同様である。
【0034】
<実施例23>
試験圃場でのシアントラニリプロールとモノスルタップとの配合物におけるコブノメイガに対する防除効果テスト
【0035】
テスト結果は表3に示す。シアントラニリプロールとモノスルタップとの配合物はコブノメイガ に対して優れた防除効果を有することがわかった。試薬の投入量が5、10と16g a.i./畝の場合、投入7日後、20日後、30日後の防除効果は、各実施例のサンプルが90%以上に達し、シアントラニリプロール2g a.i./畝及びモノスルタップ50g a.i./畝におけるコブノメイガに対する防除効果より顕著に優れることが分かった。
【0036】
【表3】


表3は、 試験圃場でのシアントラニリプロールとモノスルタップとの配合物におけるコブノメイガに対する防除効果(中国長沙, 2009.9)を示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアントラニリプロールとモノスルタップを含む殺虫組成物であって、
シアントラニリプロールである[3-ブロモ-N-(4-シアノ-2-メチル-6-(メチルアミノカルボニル)フェニル)-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド]と、モノスルタップである[2-N,N-(ジメチルアミノ)-1,3-ビス(チオ硫酸ナトリウム)プロパン] を殺虫有効活性成分とし、溶媒又は補助溶媒、乳化剤、分散剤、抗凍結剤、消泡剤、増粘剤、安定化剤、粘結剤を添加することによって、水性乳剤又はマイクロエマルジョン、懸濁化剤、 水和剤、顆粒水和剤 を調製し、シアントラニリプロールとモノスルタップとの重量比が1:0.1〜200であり、シアントラニリプロールとモノスルタップの重量の合計が殺虫組成物の総重量の2.2〜70%であることを特徴とするシアントラニリプロールとモノスルタップを含む殺虫組成物。
【請求項2】
水性乳剤を調製する際に、
添加される溶媒は、水、キシレンからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、溶媒の使用量は、組成物の総重量の20〜60%を占め、
補助溶媒は、メタノール、アセトン、ピロリドン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、補助溶媒の使用量は、組成物の総重量の1〜5%を占め、
乳化剤は、アルキルフェノールポリエトキシレート、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、リン酸化アルキルフェノールポリエトキシレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、フェニルエチルフェノールポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩からなる群から選ばれる1つ以上のものであり、乳化剤の使用量は、組成物の総重量の10〜30%を占め、
分散剤は、ポリビニルアルコール、アラビアガム、またはその混合物であり、分散剤の使用量は組成物の総重量の5〜10%を占め、
抗凍結剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトールからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、抗凍結剤の使用量は、組成物の総重量の1〜8%を占め、
消泡剤は、有機シリコーンオイル、エポキシ化大豆油からなる群から選ばれる1つ以上のものであり、消泡剤の使用量は、組成物の総重量の0.5〜8%を占めることを特徴とする請求項1に記載のシアントラニリプロールとモノスルタップを含む殺虫組成物。
【請求項3】
マイクロエマルジョンを調製する際に、
添加される溶媒は、水、トルエン、キシレンからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、溶媒の使用量は、組成物の総重量の20〜60%を占め、
補助溶媒は、メタノール、ピロリドン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、補助溶媒の使用量は、組成物の総重量の1〜5%を占め、
乳化剤は、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルビス(ポリオキシエチレン)スルホン酸塩、リン酸化アルキルフェノールポリエトキシレート、ジフェニルフェノールポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル、フェニルエチルフェノールポリオキシエチレンエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、アルキルフェノールポリエトキシレート、ヒマシ油ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル、スチレン化フェノールポリエトキシレートからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、乳化剤の使用量は、組成物の総重量の10〜30%を占め、
抗凍結剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール、ソルビトールからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、抗凍結剤の使用量は、組成物の総重量の1〜8%を占め、
安定化剤は、尿素、可溶性デンプン、トリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、安定化剤の使用量は、組成物の総重量の0.5〜10%を占め、
消泡剤は、有機シリコーンオイル、エポキシ化大豆油、メタノールからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、消泡剤の使用量は、組成物の総重量の0.5〜8%を占めることを特徴とする請求項1に記載のシアントラニリプロールとモノスルタップを含む殺虫組成物。
【請求項4】
懸濁化剤を調製する際に、
添加される溶媒は、水、キシレン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、溶媒の使用量は、組成物の総重量の20〜60%を占め、
湿潤分散剤は、リグニンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、脂肪族アルコールスルフェート、アルキルアリールスルホン酸塩、ポリアリールフェノールポリオキシエチレンエーテルホスフェートアルキルアミン塩、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、リン酸化アルキルフェノールポリエトキシレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、アルキルフェノールポリエトキシレート、脂肪族アルコールポリエトキシレートからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、湿潤分散剤の使用量は、組成物の総重量の0.5〜40%を占め、
増粘剤は、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、アラビアガム、ポリビニルピロリドン、ベントナイト、ケイ酸マグネシウムアルミニウムからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、増粘剤の使用量は、組成物の総重量の0.2〜5%を占め、
安定化剤は、尿素、可溶性デンプン、ソルビン酸ナトリウム、ピロ没食子酸、トリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、安定化剤の使用量は、組成物の総重量の0.5〜10%を占め、
消泡剤は、有機シリコーンオイル、メタノール、エタノール、エポキシ化大豆油からなる群から選ばれる1つ以上のものであり、消泡剤の使用量は、組成物の総重量の0.5〜8%を占め、
抗凍結剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール、ソルビトールからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、抗凍結剤の使用量は、組成物の総重量の0.1〜5%を占めることを特徴とする請求項1に記載のシアントラニリプロールとモノスルタップを含む殺虫組成物。
【請求項5】
水和剤を調製する際に、
添加される分散剤は、リグニンスルホン酸塩、脂肪酸アミドN-メチルタウリンナトリウム塩、硫酸化アルキルフェノールポリエトキシレート、硫酸化脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、アルキルフェノールポリエトキシレート類、脂肪族アルコールポリエトキシレートからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、分散剤の使用量は、組成物の総重量の5〜35%を占め、
湿潤剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリルアルコール硫酸塩、農薬乳化剤2000、SOPA230、SOPA270、SOPA235、湿潤・浸透剤Fからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、湿潤剤の使用量は、組成物の総重量の5〜30%を占め、
キャリアは、カオリン、ベントナイト、珪藻土、活性白土、ホワイトカーボンブラック、軽質炭酸カルシウムからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、キャリアの使用量は、組成物の総重量の15〜75%を占めることを特徴とする請求項1に記載のシアントラニリプロールとモノスルタップを含む殺虫組成物。
【請求項6】
顆粒水和剤を調製する際に、
添加される湿潤剤は、脂肪酸アミドN-メチルタウリンナトリウム塩、リグニンスルホン酸塩、硫酸化アルキルフェノールポリエトキシレート、アルキルナフタレンスルホン酸塩、硫酸化脂肪酸エステル、アルキルフェノールポリエトキシレート、脂肪族アルコールポリエトキシレートからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、湿潤剤の使用量は、組成物の総重量の5〜30%を占め、
分散剤は、ラウリルアルコールポリエトキシレート、アルキルアリールポリエトキシレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、アクリル酸ホモポリマーナトリウム塩からなる群から選ばれる1つ以上のものであり、分散剤の使用量は、組成物の総重量の5〜10%を占め、
粘結剤は、デンプン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ケイ酸ナトリウム、ゼラチン、シクロデキストリン、アラビアガムからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、粘結剤の使用量は、組成物の総重量の1〜10%を占め、
崩壊剤は、尿素、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウムからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、崩壊剤の使用量は、組成物の総重量の5〜10%を占め、
キャリアは、カオリン、珪藻土、活性白土、ホワイトカーボンブラック、ベントナイト、粘土、軽質炭酸カルシウム、タルクパウダー、モンモリロナイトからなる群から選ばれる1つ以上のものであり、キャリアの使用量は、組成物の総重量の15〜70%を占めることを特徴とする請求項1に記載のシアントラニリプロールとモノスルタップを含む殺虫組成物。
【請求項7】
農作物、水稲における各種の害虫の防除への使用であって、害虫に対する毒性に協力作用があり、協力作用係数が100より大きいことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のシアントラニリプロールとモノスルタップを含む殺虫組成物の使用。

【公表番号】特表2013−512198(P2013−512198A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540271(P2012−540271)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【国際出願番号】PCT/CN2010/078759
【国際公開番号】WO2011/066770
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(507417053)湖南化工研究院 (2)
【Fターム(参考)】