説明

シェルモールド法による鋳造方法

【課題】 従来のシェルダンプバックアップ鋳造法は、重労働であり、さらに、砂や鋼球などの充填作業時に大量の粉塵が飛散し、作業者への負担が大きかった。
【解決手段】 本発明のシェルモールドによる鋳造方法は、一側が、鋳造品Xの外形の一部と同形状に形成されたシェルモールド鋳型1,11と、該シェルモールド鋳型1,11の他側をはめ込み或ははめ込まれる形状に一側が形成された生砂型2,12と、を有し、前記シェルモールド鋳型1,11により鋳造品Xの外側形状の空間1e、11fを内部に形成し、かつ、一端に湯口1c,11dを形成させた状態に組合せ、該組合せたシェルモールド鋳型1,11の外側に生砂型2,12をはめ込み固定し、組合せたシェルモールド鋳型1,11を生砂型2,12内に埋め、注湯口1c,11dから溶湯を注湯する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シェルモールド法による鋳造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、精密な鋳造品を鋳造するときは、シェルモールドダンプ造形方法が使われていた。このシェルモールドダンプ造形方法で小型の鋳造品を鋳造するときは、シェルモールド鋳型を接着するだけで注湯された溶湯の溶湯圧、ガス圧や熱などにシェルモールド鋳型が耐えられる。しかしながら、大型の鋳造品になるほど鋳造時に溶湯圧、ガス圧や熱などにシェルモールドダンプ造形方法で造形されたシェルモールド鋳型が、接着部の剥れやシェルモールド鋳型がパンクしたり、割れたり、裂けたり、変形したり或は抜けがあったりした場合などにシェルモールド鋳型からの溶湯漏れにより鋳造不良品が生じやすかった。
【0003】
このような鋳造不良品の発生を防ぐために、シェルダンプバックアップ鋳造法が使われる。このシェルダンプバックアップ鋳造法は、以下のようにして鋳造品を鋳造していた。先ず、シェルモールドダンプ造形方法によりシェルモールド鋳型を造形し、このシェルモールド鋳型を使って一端に湯口を設け、内部に鋳造品形状の空間を形成した状態で接着したシェルダンプ鋳型を容器内に収納する。ついで、この容器の内壁とシェルモールド鋳型間の空間に砂や鋼球などを充填したのち、容器ごと振動させることにより砂や鋼球などを鋳型の外側の入り組んだ細部まで充填して保持・補強する。こうして容器内に充填した砂や鋼球などにより保持・補強されたシェルダンプ鋳型の湯口から溶湯を注湯することで、シェルモールド鋳型からの溶湯漏れを防止し、あるいは、シェルモールド鋳型が接着部の剥れやシェルモールド鋳型がパンクしたり、割れたり、裂けたり、変形したり或は抜けがあったりした場合などにシェルダンプ鋳型からの溶湯漏れを防止していた。鋳造品を取出すときは、容器内に充填された砂や鋼球などの中から鋳造品を引き抜いたり、砂や鋼球などが収納された容器を反転させたりして鋳造品を取出していた。このシェルダンプバックアップ鋳造法によるときは、この容器とシェルダンプ鋳型間の空間に多量の砂や鋼球などを充填するための作業が、作業者にとって過酷な重労働を強いることになるため特別な場合を除き使われなかった。しかも、容器内への砂や鋼球などの充填作業や鋳造後の砂や鋼球などの中から鋳造品を取出す作業は、作業環境へ粉塵を飛散させるため、作業環境を劣化させていた。
【0004】
しかしながら、このシェルダンプバックアップ鋳造法以外に鋳造時にシェルモールド鋳型を生砂型で補強・保持する特許文献は見つからなかった。
【0005】
また、一般に使われるシェルモールド法による鋳造方法として利用されるスタック製法では、載置板上に多段のシェルモールド鋳型を重ね、その多段のシェルモールド鋳型の上に固定板を載せ、下の載置板と上の固定板をボルトで締付けて多段のシェルモールド鋳型を固定した状態で鋳造していた。このようにシェルモールド鋳型を使った鋳造方法は、シェルモールドが空気中に露出した状態で鋳造されるためシェルモールド鋳型に含まれる樹脂が高温の溶湯で燃え、その臭気がシェルモールド鋳型から拡散し、作業環境を異臭で充満させていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明のシェルモールド法による鋳造方法は、上記課題を解決するためになされたものであり、第一に、シェルモールド鋳型の樹脂が高温な溶湯の熱によって燃え、シェルモールド鋳型から発生する異臭による作業環境の劣悪化の軽減を目的としている。第二に、容器内への砂や鋼球などの充填作業或は鋳造後に砂や鋼球などの中から鋳造品を取出す作業は、作業者に過酷な重労働を強いるものであり、この重労働の軽減を目指している。そして第三に、容器内への砂や鋼球などの充填作業或は鋳造後に砂や鋼球などの中から鋳造品を取出す作業時の作業環境へ大量の粉塵の飛散による作業環境の劣化を軽減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明の請求項1に記載の一側が、鋳造品の外形の一部と同形状に形成されたシェルモールド鋳型と、該シェルモールド鋳型の他側をはめ込み或ははめ込まれる形状に一側が形成された生砂型と、を有し、前記シェルモールド鋳型により鋳造品の外側形状の空間を内部に形成し、かつ、一端に湯口を形成させた状態に組合せ、該組合せたシェルモールド鋳型の外側に前記、生砂型をはめ込み固定し、組合せたシェルモールド鋳型を生砂型内に埋め、組合せたシェルモールド鋳型の湯口へ溶湯を注湯することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記構成の本発明のシェルモールド法による鋳造方法は、シェルモールド鋳型がシェルモールド鋳型を保持・補強するバックアップ用生砂型内に埋められているため、シェルモールド内の樹脂が高温な溶湯の熱によって燃えて発生する異臭が、生砂型の外に漏れ難く、作業環境の異臭が大幅に軽減された。
【0009】
また、生砂型でシェルモールド鋳型の外周から覆うことによりシェルモールド鋳型を補強したので、シェルモールド鋳型内の空間に注湯した溶湯の漏れを防止できた。
【0010】
さらに、従来のシェルダンプバックアップ鋳造法では、容器の内壁とシェルモールド鋳型間の空間に、砂や鋼球などを充填して固定する代わりに、組合せたシェルモールド鋳型の外側に生砂型をはめ込み固定することによりシェルモールド鋳型を生砂型内に埋めるものである。したがって、容器の内壁とシェルモールド鋳型間の空間に、砂や鋼球などを充填して固定する過酷な重労働を作業者に強いる工程がなくなり、作業者の過酷な重労働が大幅に軽減された。
【0011】
その上、容器の内壁とシェルモールド鋳型間の空間に、砂や鋼球などを充填して固定する過酷な重労働を作業者に強いる工程がなくなった結果、同作業時に発生していた作業環境への粉塵の飛散がなくなり、粉塵による作業環境の劣化を軽減できた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の実施例について図面を用いて説明する。図1は、本発明のシェルモールド法による鋳造時の1実施例としての生砂型内にシェルモールド鋳型を埋めた状態を示す分解縦断面図である。図示したように本発明のシェルモールド法による鋳造方法は、シェルモールド鋳型1、11と、生砂型2、12とを備えている。シェルモールド鋳型1、11は、精密に造形されており、シェルモールド鋳型1、11を合わせると、内部に鋳造品Xの外形となる空間が形成される。すなわち、シェルモールド鋳型1、11の一側面(後述するシェルモールド鋳型を組合せた時の内側面)には、鋳造品Xの外形の一部と同形状の凹凸部1a、11bが形成されている。このシェルモールド鋳型1、11の一側面を内側にして合せると、一端(普通、上端)に湯口1c、11dが形成された状態で内部に鋳造する鋳造品Xの外側形状の空間1e、11fが形成される。このようにシェルモールド鋳型1、11を組合せて接着すると、湯口1c、11dと外形状の空間1e、11fとは連通する。従来は、この状態で湯口1c、11dから鋳造品Xの外側形状の空間1e、11fに溶湯を注湯した後、冷却してシェルモールド鋳型1、11内から鋳造品Xを取り出していた。
【0013】
本発明では、前記生砂型2、12は、上記シェルモールド鋳型1、11の湯口1c、11dを残して埋め込むため、生砂型2、12の内側面には、シェルモールド鋳型1、11の外側面がはめ込み或ははめ込まれる凹凸部2a、12bを形成する。前記組合せて必要に応じて接着した(接着しないこともある)シェルモールド鋳型1、11の外側面を生砂型2、12の内側面の凹凸部2a、12bに嵌め込み、生砂型2、12を固定すると、シェルモールド鋳型1、11は生砂型2、12に埋め込まれた状態となる。この状態の生砂型2、12の一端(普通は上端)にも湯口2c、12cが形成されており、この生砂型2、12の湯口2c、12cと前記組合せたシェルモールド鋳型1、11の湯口1c、11dは連通している。
【0014】
生砂型2、12の造形方法は、通常の鋳物の砂型を作るのと同じ方法で造形することができる。ただし、シェルモールド鋳型1、11自身は小型品では強度があるが、中、大型品になると接着面や鋳型の肉薄部分の強度が低いので、シェルモールド鋳型1、11と同じ外形の模型を使用したり、複数のに分割した生砂型を接合することでシェルモールド鋳型1、11をバックアップするとよい。
【0015】
以上のように、シェルモールド鋳型1、11が埋め込まれた生砂型2、12の湯口2c、12cに溶湯を注湯すると、溶湯がシェルモールド鋳型1、11の湯口1c、11dを通ってシェルモールド鋳型1、11内の鋳造品Xの外側形状の空間1e、11fに注湯され、時間の経過と共に鋳造品Xが固まる。このように鋳造品Xが固まってから生砂型2、12とシェルモールド鋳型1、11から内部の鋳造品Xを簡単に取出す。
【0016】
なお、実施例のように、湯口2c、12cが、シェルモールド鋳型1、11の合わせ面内の上方に形成された場合、溶湯を注湯したとき湯の圧力やガス圧によってシェルモールド鋳型1、11及び生砂型2、12が離反する可能性がある。これを防止するために、シェルモールド鋳型1、11の合わせ面は接着剤などで接着しているが、強度が不足する場合には、シェルモールド鋳型1、11及び生砂型2、12が離反するのを防止したり、複数に分割した生砂型を接合することでシェルモールド鋳型1、11をバックアップすることが望ましい。
【0017】
以上のように、本発明のシェルモールド法による鋳造方法では、シェルモールド鋳型1、11が生砂型2、12の中に埋め込まれているので、大型の鋳造品Xであっても鋳造時にシェルモールド鋳型1、11にかかる溶湯圧、ガス圧や熱などにシェルモールド鋳型1、11が耐えられる。又、シェルモールド法による鋳造方法では、容器内壁とシェルモールド鋳型1、11の間への砂や鋼球などの充填作業がないから作業者の過酷な重労働もなく、作業環境への粉塵の拡散も軽減された。更に、高温な溶湯熱によりシェルモールド鋳型1、11内の樹脂が燃えて発生する異臭が、生砂型2、12内に閉じ込められるので、作業環境への異臭の拡散が大幅に軽減された。
【0018】
なお、例示した実施例では、2点1対のシェルモールド鋳型1、11が、2点1対の生砂型2、12に埋められた状態で説明しているが、3点以上のシェルモールド鋳型を組合せ、生砂型に埋め込んだ場合にも適応できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のシェルモールド法による鋳造方法の1実施例を示す分解縦断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1、11 シェルモールド鋳型
1a、11b 鋳造品の外形の一部と同形状の凹凸部
1c、11d シェルモールド鋳型の湯口
1e、11f 鋳造品Xの外側形状の空間
2、12 生砂型
2a、12b シェルモールド鋳型の凹凸部
2c、12c 生砂型の湯口
X 鋳造品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側が、鋳造品の外形の一部と同形状に形成されたシェルモールド鋳型と、
該シェルモールド鋳型の他側をはめ込み或ははめ込まれる形状に一側が形成された生砂型と、
を有し、
前記シェルモールド鋳型により鋳造品の外側形状の空間を内部に形成し、かつ、一端に湯口を形成させた状態に組合せ、該組合せたシェルモールド鋳型の外側に前記、生砂型をはめ込み固定し、組合せたシェルモールド鋳型を生砂型内に埋め、組合せたシェルモールド鋳型の湯口へ溶湯を注湯することを特徴とするシェルモールド法による鋳造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−125771(P2009−125771A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302576(P2007−302576)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(594054036)三條金属株式会社 (4)
【Fターム(参考)】