説明

シクロアルキル−ヒドラジンの環外誘導体およびヘテロシクロアルキル−ヒドラジンの環外誘導体の製造方法

本発明は、シクロアルキル−ヒドラジンの環外誘導体およびヘテロシクロアルキル−ヒドラジンの環外誘導体の合成方法に関する。本発明は、複素環式アミンをモノクロラミンと反応させて合成した該誘導体を含む溶液を、無水水酸化ナトリウムを加えることにより、有機相と水相とに分離することを特徴とする。本発明により、未反応の出発アミンを集め、追加の処理を全く行わずに、直接再使用する。本発明の方法は、対応する環外ヘテロシクロアルキル−ヒドラジンまたはシクロアルキル−ヒドラジンの誘導体を、他の公知の方法と比較して、低コストで得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、環外シクロアルキル−ヒドラジンの誘導体および環外ヘテロシクロアルキル−ヒドラジンの誘導体の新規な合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環外シクロアルキル−ヒドラジンおよびヘテロシクロアルキル−ヒドラジンの誘導体、とりわけN−アミノピペリジンは、医薬製品の製造における中間体として使用されることが非常に多い。
【0003】
現在、科学文献中に記載されている環外シクロアルキル−ヒドラジンおよびヘテロシクロアルキル−ヒドラジンの誘導体の合成方法は、尿素およびニトロソアミンによることが多い。例えば、N−アミノピペリジンの合成には、3工程で行われる第一の合成方法は、1−ピペリジル尿素を製造し、続いて次亜塩素酸ナトリウムで酸化することからなる。次いで形成された1−ピペリジル−3−クロロ−尿素を、濃水酸化ナトリウム溶液の作用の下でN−アミノピペリジンに転化する(非特許文献1)。第二の方法は、ピペリジンのニトロソ化とそれに続く、ニトロソ化された誘導体(1−ニトロソピペリジン)の、化学的(LiAlH)または触媒作用(Zn/AcOH)による水素化からなる(非特許文献2)。いずれの場合も、ニトロソ化された化合物を蒸留により精製する必要がある。この方法はかなり良い収率(75%)が得られる。しかしながら、第一工程から生じる生成物は、その毒性(発癌性の高い化合物)のために、非常に注意して取り扱う必要があり、その工業的製造に問題がある。さらに、LiAlHの使用には、微量の水も存在してはならず、密封された反応器および無水溶剤(ジエチルエーテル)が必要であるが、これは反応混合物の燃焼の危険性を増大させる。
【0004】
また、様々なヒドラジンの製造には、アンモニアと次亜塩素酸ナトリウム溶液の反応によりモノクロラミンを合成し、形成されたモノクロラミンをアミンと反応させ、対応するヒドラジンを得る、いわゆるラッシヒ反応に頼ることが多い。この方法は、2つの異なった工程を必要とし、第一工程はモノクロラミンを合成するための低温工程であり、第二工程は実際のヒドラジン合成が行われる高温工程である。さらに、モノクロラミンは、二次的な分解反応を回避するために、中間体溶液中で大過剰のアミンの存在下になければならず、従って、この方法は、非常に大量の溶液を処理することが必要である。
【0005】
しかしながら、この方法は、すべての環外アルキル−およびヘテロアルキルヒドラジンの製造に応用できるわけではなく、特に高い沸騰温度で熱分解を示す有機ヒドラジンの製造には適用できない。特に、合成溶液の処理には、水、次いでアミンの抽出が必要であり、コストの掛かる操作が必要である。
【0006】
欧州特許第0277267号(特許文献1)には、N−アミノアザ −3ビシクロ[3,3,0]オクタンの連続的合成方法であって、水酸化アンモニウムおよび塩化アンモニウムの溶液を、次亜塩素酸ナトリウムの水溶液と、アルカリ性媒体中、温度−15℃〜−7℃で反応させ、続いて形成されたモノクロラミンを、アザ−3ビシクロ[3,3,0]オクタンと、共軸パドル攪拌機を備えた好適な反応器中の2相媒体中で、温度30℃〜90℃で、アルカリ性媒体中で反応させ、アンモニアを反応媒体から分離し、次いで未反応のアザ−3ビシクロ[3,3,0]オクタンを蒸留により分離して循環使用し、次いで反応媒体に水酸化ナトリウムを加えて分離することにより、N−アミノアザ−3ビシクロ[3,3,0]オクタンの濃縮された溶液を単離し、得られたヒドラジンを、必要に応じて蒸留により精製することを特徴とする、方法が開示されている。
【0007】
N−アミノアザ−3ビシクロ[3,3,0]オクタンを形成し、冷却した後、反応溶液を脱気してアンモニアを除去し、未反応のアザ−3ビシクロ[3,3,0]オクタンを大気圧および温度90〜100℃で通常の蒸留により、反応媒体から分離する。これらの条件下で、アミンは、30%濃度のアザ−3ビシクロ[3,3,0]オクタンを含む水溶液の形態で得られる。この溶液は循環使用される。
【特許文献1】欧州特許第0277267号
【非特許文献1】R. Ohme, H. Preuschof, J. Prakt. Chem. 312, 349 (1970)
【非特許文献2】Allen & Hamburys Ltd. (1965), 74, 3693-4
【発明の概要】
【0008】
ここで本発明者らは、環外シクロアルキル−ヒドラジンの誘導体および環外ヘテロシクロアルキル−ヒドラジンの誘導体、とりわけN−アミノピペリジンの新規な合成方法を見出した。この方法は、連続的に行い、部分的にラッシヒ法の交換に基づき、低温におけるアンモニアに対する次亜塩素酸ナトリウムの作用によりクロラミンを製造し、次いで、製造されたクロラミンを複素環式アミンに、均質質媒体中で、または温度に応じて、不均質媒体中で作用させ、次いで形成されたヒドラジンを抽出することからなる。出発アミンは、循環使用し、所望により、追加の処理を行わずにモノクロラミン上に直ちに再注入する。
【0009】
本発明では、簡単にするために、環外シクロアルキル−ヒドラジンの誘導体および環外ヘテロシクロアルキル−ヒドラジンの誘導体を、用語「ヒドラジン」で表すこともある。
【0010】
本発明の意味では、「環外シクロアルキル−ヒドラジンまたはヘテロシクロアルキル−ヒドラジンの誘導体」の表記は、「環外シクロアルキル−ヒドラジンの誘導体または環外ヘテロシクロアルキル−ヒドラジンの誘導体」と解釈されるものである。
【0011】
同様に、複素環式アミンは、「アミン」と呼ぶこともある。
【0012】
従って、本発明は、環外シクロアルキル−ヒドラジンの誘導体および環外ヘテロシクロアルキル−ヒドラジンの誘導体を合成する方法であって、
a)好適な反応器中で、アルカリ性媒体中、温度30〜60℃で、モノクロラミンを複素環式アミンと反応させて、環外シクロアルキル−ヒドラジンまたはヘテロシクロアルキル−ヒドラジンの誘導体を合成し、次いで
b)工程a)で得た溶液を、温度が前記化合物の沸点を超えないように冷却しながら、無水水酸化ナトリウムを添加して、有機相と水相とに分離し、そして
c)所望により、得られた前記有機相を蒸留して、環外シクロアルキル−ヒドラジンまたはヘテロシクロアルキル−ヒドラジンの誘導体を単離する、前記a)〜c)の連続工程、
を含んでなる、方法に関する。
【0013】
環外シクロアルキル−ヒドラジンまたはヘテロシクロアルキル−ヒドラジンの誘導体は、下記式(I):
【化1】

(式中、環の炭素原子の一つが、所望により窒素または酸素から選択された異原子により置き換えられており、R1およびR2が、同一または異なるものであって、水素原子またはC1〜C6アルキル基を表すか、またはR1およびR2が共にC3〜C8シクロアルキルを形成し、nが1〜3である)
を有する。
【0014】
環外シクロアルキル−ヒドラジンまたはヘテロシクロアルキル−ヒドラジンの誘導体は、さらに、N−アミノピペリジン、N−アミノモルホリン、N−アミノ−2,6−ジメチル−ピペリジン、N−アミノピロリジン、N−アミノアゼピン、N−アミノ−4−メチル−ピペラジンからなる群から選択するのが有利である。
【0015】
工程a)の反応器は、不活性雰囲気中に、特にアルゴンまたは窒素流中に配置するのが有利である。工程a)における該好適な反応器は、攪拌している管状反応器が有利であろう。管状反応器により、発生期のヒドラジンとモノクロラミンの接触を回避し、それによって、これら2種類の試薬間のレドックス反応を回避することができる。反応最前線は管に沿って移動し、ヒドラジンは、反応器の底部に注入されるモノクロラミンと接触したままにはならない。
【0016】
本発明の有利な一変形では、工程a)における反応媒体中のヒドロキシルイオン濃度は、0.3〜0.8モル.l−1である。
【0017】
複素環式アミンとモノクロラミンのモル濃度比は、有利には、4以上で10以下でなければならない。反応時間は、変えることができ、反応を行う温度および試薬の濃度比によって異なる。例えば、N−アミノピペリジン合成の場合、特定の濃度比範囲にわたり、反応時間は25℃で20秒間〜2分間のオーダーにあり、60℃で4秒間〜30秒間のオーダーにある。
【0018】
本発明の有利な実施態様では、工程aの前に、強塩基、例えば水酸化ナトリウムの溶液をミキサー中に、水酸化ナトリウムの重量百分率が2〜6%になるように加えることにより、モノクロラミンをアルカリ処理する。該ミキサーは、温度−10〜5℃に維持するのが有利である。
【0019】
従って、モノクロラミンと複素環式アミンとの反応を、水酸化ナトリウム水溶液の存在下で加熱して行うのが有利である。環外シクロアルキル−ヒドラジンまたはヘテロシクロアルキル−ヒドラジン誘導体の合成反応の終了時、すなわち工程a)が反応器から出る時、反応媒体中の水酸化ナトリウム濃度は約0.3モルL−1である。水酸化ナトリウム濃度は、塩析により反応混合物が分離する危険性があるので、高過ぎてはならない。この場合、攪拌しているピストン型反応器を使用しなければならない。
【0020】
ヒドラジン合成反応の際、塩酸も形成されるので、混合の際、アミンの局所的なプロトン化をすべて回避し、置換されたクロラミンの形成を回避する必要がある。例えば、N−アミノピペリジンの合成には、塩酸によりプロトン化されたピペリジン(ピペリジニウム)は、モノクロラミンと反応し、1−クロロピペリジンを形成することがあり、次いでこれがヒドロキシルイオンと反応して2,3,4,5−テトラヒドロピペリジンを形成することがあり、次いでこれが三量体化することがある。モノクロラミンのアルカリ処理、すなわち強塩基、例えば水酸化ナトリウム、の添加により、形成された酸を中和することができる。加える強塩基の量は、形成された酸のすべてを中和するのに十分でなければならない。その上、ヒドラジンの形成速度は、媒体のアルカリ度と共に増加するが、これは、分解反応、例えばクロラミンによる発生期ヒドラジンの酸化、の速度には当てはまらない。
【0021】
工程b)の際、無水水酸化ナトリウムは、水酸化ナトリウムの重量百分率が10〜35%、好ましくは30%になるような量で加える。これらの条件下で、媒体は2相に分離し、その一方の軽い相(有機相)には、形成された環外シクロアルキル−ヒドラジンまたはヘテロシクロアルキル−ヒドラジンの誘導体が濃縮されている。この水酸化ナトリウム処理による分離により、反応媒体中に存在する水を除去し、下側相(水相)中にある塩および所望によりアンモニアを抽出することができる。
【0022】
例えばN−アミノピペリジンの合成には、工程b)における分離媒体の温度は80℃を超えてはならない。
【0023】
本発明の第一の有利な実施態様では、複素環式アミンを工程a)で無水複素環式アミンの形態で加える。
【0024】
アルカリ処理してあるのが有利であるモノクロラミン、および無水複素環式アミンは、反応器に同時に加えるのが有利である。複素環式アミンおよびモノクロラミンの添加速度は、無水複素環式アミンとモノクロラミンのモル濃度比が4〜10になるのが有利である。環外シクロアルキル−ヒドラジンおよびヘテロシクロアルキル−ヒドラジンの誘導体の合成反応の一部は、均質媒体中で行うことができる。
【0025】
工程b)で、無水水酸化ナトリウムを、水酸化ナトリウムの重量百分率が15〜35%になるような量で加えるのが有利であり、これにより、媒体は2相に分離し、その一方の上側相または有機相には、実質的にすべての有機物質、すなわち環外シクロアルキル−ヒドラジンまたはヘテロシクロアルキル−ヒドラジンの誘導体および複素環式アミンが濃縮されている。
【0026】
この処理の利点は、一工程で、アミンおよびヒドラジン分子の有機的性格(炭素原子の数)に応じて、反応媒体中に存在する水の80〜90重量%を除去し、下側相(水相)中で塩と共にアンモニアを抽出できることである。
【0027】
工程c)は、下記の連続的な工程、すなわち
i)前記工程b)で得られた前記有機相を蒸留して、未反応の前記複素環式アミンと、前記環外シクロアルキル−ヒドラジンまたはヘテロシクロアルキル−ヒドラジン誘導体の濃縮溶液とを分離し、次いで
ii)所望により、減圧下で蒸留することにより、前記環外シクロアルキル−ヒドラジンまたはヘテロシクロアルキル−ヒドラジンの誘導体の濃縮溶液を精製する工程
を含んでなるのが有利である。
【0028】
工程i)の際、蒸留を単一の蒸留カラム中で、出発アミンの沸点に応じて、大気圧または減圧下で行うのが有利である。最初に、カラムのヘッドで複素環式アミンの濃縮溶液が、または所望により、水が枯渇するまで水−複素環式アミンの共沸溶液、次いで無水複素環式アミンが集められる。
【0029】
このようにして集められた無水複素環式アミンは、ヒドラジンの合成が行われる工程a)の反応器中に直接再注入することができる。濃縮溶液または水との共沸溶液の形態で得られた複素環式アミンを集め、所望により好適な処理の後で再注入することができる。
【0030】
所望により、工程i)におけるカラムの脚部で得られる生成物を、約115mmHgが有利である減圧下で精製することにより、環外シクロアルキル−ヒドラジンまたはヘテロシクロアルキル−ヒドラジンの誘導体を99%、有利な場合には99.9%を超えるタイターで集めることができる。
【0031】
該環外シクロアルキル−ヒドラジンまたはヘテロシクロアルキル−ヒドラジンの誘導体は、不活性雰囲気、例えばアルゴン、中で保存し、酸素との酸化反応をすべて回避しなければならない。
【0032】
本発明のこの変形は、環外シクロアルキル−ヒドラジンまたはヘテロシクロアルキル−ヒドラジンの誘導体をバッチ製造するのに特に有利である。
【0033】
本発明の第二の有利な変形により、複素環式アミンを工程a)で、複素環式アミンの濃縮された水溶液または水−複素環式アミンの共沸溶液の形態で加える。次いで、工程a)を均質または不均質媒体(アミンが非常に重い場合)中で行う。
【0034】
問題のアミンに関して、複素環式アミンの濃縮された水溶液は、水−複素環式アミン共沸混合物の形態でよい。
【0035】
好ましくはアルカリ処理したモノクロラミン、および複素環式アミンの溶液は、反応器中に同時に導入するのが有利である。複素環式アミンの濃縮された水溶液または共沸水−複素環式アミン溶液は、複素環式アミン溶液とモノクロラミンのモル濃度比が4〜10になるような速度で加える。
【0036】
工程a)の際、所望により反応混合物を一回以上の脱気工程にかけ、該混合物中に含まれるアンモニアを除去することができる。
【0037】
本発明のこの第二の変形では、工程a)の後で、かつ工程b)の前に、下記の工程、すなわち
i')前記工程a)の後に得られた前記溶液中に存在するアンモニアを、ストリッピングにより除去し、次いで
ii')前記工程i')の後に得られた前記溶液を温度50〜180℃で蒸留することにより、形成された前記環外シクロアルキル−ヒドラジンまたはヘテロシクロアルキル−ヒドラジンの誘導体を含む溶液と、未反応複素環式アミンの水溶液、所望により共沸溶液と、に分離し、そして
iii')前記工程ii')の後に得られた複素環式アミンの前記水溶液、所望により共沸溶液、を前記工程a)の反応器中に再注入する工程
を含んでなる。
【0038】
本発明では、「ストリッピング」とは、揮発性が非常に高い物質、この場合にはアンモニア、を、混合物を単に加熱して除去することを意味する。
【0039】
次いで、工程ii')で集めたヒドラジン含有反応溶液を、強塩基、例えば水酸化ナトリウムを加えて処理する(工程b)。この操作により、ヒドラジン分子の有機的性質に応じて70〜90%のヒドラジンを含む有機相中の、環外シクロアルキル−ヒドラジンまたはヘテロシクロアルキル−ヒドラジンの誘導体を分離することができる。使用上の規格に応じて、得られた濃縮ヒドラジン溶液を、直接、または減圧下で蒸留して使用することができる(工程c)。
【0040】
蒸留工程ii')の際に得たアミンの循環使用は、ヒドラジンを含まずに、アミンの熱分解を避けるためにアミンの沸点未満の温度で行う。所望により共沸混合物の形態にある、複素環式アミンを含む水溶液には、痕跡量のヒドラジンも存在しないので、この溶液は、追加の処理を行わずに、ヒドラジンが形成される工程a)の反応器中に直接注入することができる。
【0041】
本発明のこの変形は、環外シクロアルキル−ヒドラジンまたは環外ヘテロシクロアルキル−ヒドラジンの誘導体を連続的に合成するのに特に有利である。
【0042】
従って、本発明の方法により、環外シクロアルキル−ヒドラジンまたはヘテロシクロアルキル−ヒドラジンの誘導体を、毒性中間体を全く形成せずに、連続的に合成できるのみならず、該ヒドラジンを低コストで得ることができる。
【0043】
従来のラッシヒ合成は一般的に大過剰のアミンを必要とするが、これは、対応するヒドラジンを製造するための原料として使用するアミンが非常に高価である場合、大きな欠点になる。本発明の方法は、所望により共沸混合物の形態にある複素環式アミンの濃縮溶液を集め、循環使用することにより、対応する環外シクロアルキル−ヒドラジンまたはヘテロシクロアルキル−ヒドラジンの誘導体を、他の公知の製法と比較して、非常に低コストで得ることができる。水溶液、場合により共沸溶液の形態で、比較的低温でアミンを分離することは、本発明の方法にさらなる独創性および著しい経済的な優位性も与える。
【0044】
工程a)で加えられるモノクロラミンは、下記の一連の工程、すなわち
α)所望により、塩素滴定度が100°〜120°である次亜塩素酸塩溶液を希釈して、塩素滴定度が36°〜100°である次亜塩素酸ナトリウム水溶液を調製し、次いで
β)低アルカリ性媒体中、温度−15〜−7℃で、水酸化アンモニウムおよび塩化アンモニウムの溶液を、前記工程a)で得た前記次亜塩素酸ナトリウム水溶液と反応させて、前記モノクロラミンを形成する工程
を含んでなる方法により、調製するのが有利である。
【0045】
本発明では、「低アルカリ性媒体」の表記は、pHが約10±1である媒体を意味する。
【0046】
水酸化アンモニウム溶液および塩化アンモニウム溶液/次亜塩素酸ナトリウム水溶液のモル比は、2.5〜3であるのが有利である。
【0047】
塩化アンモニウム/水酸化アンモニウムのモル比は0.1〜1.75であるのが有利であり、約0.65であるのがより有利である。
【0048】
工程α)で使用する塩素化された試薬が、100〜120°塩素滴定の高タイター次亜塩素酸塩溶液の希釈により得られる場合、この希釈により、塩化ナトリウム含有量を40%減少させる利点が得られる。この環境に好ましい処理により、漂白剤溶液を、結晶化の危険性無しに、−15℃に冷却することができる。
【実施例】
【0049】
例1は、図1に示す本発明の方法を詳細に説明するが、この例は本発明を制限するものではない。
【0050】
例2は、図2に示す本発明の方法を詳細に説明するが、この例は本発明を制限するものではない。
【0051】
例1 N−アミノピペリジンの連続的製造
指定する量はすべて、一つの操作単位に対応し、注入する次亜塩素酸塩1リットルに関連する。
【0052】
高タイター次亜塩素酸塩溶液(100〜120°塩素滴定、すなわち[NaOCl]=2.14モル.L−1、[NaCl]=0.85モル.L−1)の50%希釈により調製した次亜塩素酸ナトリウム溶液1リットル、およびアンモニア濃度3.60モル.L−1および塩化アンモニウム濃度2.38モル.L−1を有する溶液1リットルを、攪拌している反応器(R1)中にそれぞれ流量5mL/分、/(すなわち48°塩素滴定溶液6g/分およびNH+NHClアンモニア混合物5.05g/分)でそれぞれ連続的に導入する。
【0053】
反応器中の温度は、−8〜−11℃に維持し、反応混合物のpHは約10である。R1から取り出した後、タイターが1モル.L−1を超えるモノクロラミン溶液が得られるが、これは次亜塩素酸ナトリウムに関して100%に近い収率に相当する。
【0054】
R1から取り出した後、上で得たモノクロラミン溶液(2リットル)を、水酸化ナトリウムの濃縮溶液(30重量%で0.37リットル)を、−9〜−11℃の低温に維持した二重ケーシングを有するミキサーM中に連続的に導入することにより、アルカリ処理する。磁気攪拌により均質性を確保する。
【0055】
N−アミノピペリジンの合成は、攪拌している管状反応器(R2)中、アルゴンまたは窒素流中で行う。
【0056】
得られたNHCl/NaOH混合物(2.37リットル)、およびピペリジン溶液(66重量%で2.36リットル)を、同時に、ピペリジンとモノクロラミンのモル比が約8であり、反応後の反応媒体中の水酸化ナトリウムタイターが0.3モル.L−1になるような好適な速度で、反応器R2に連続的に(アルゴンまたは窒素下で)加える。反応温度は約55℃に維持する。30秒間の反応後、反応混合物を脱気し、溶液中に含まれるアンモニアを除去する。先ずストリッピング(蒸留カラムCD1、アンモニア約62gをカラムのヘッドで集める)により反応溶液からアンモニアを除去し、次いでアンモニアを含まない溶液約4.6kgを大気圧下、92.2℃で蒸留し(蒸留カラムCD2)、未反応アミン、ピペリジンを除去する。この蒸留工程の後、カラムのヘッドでピペリジンが、アミン約66%(2kg)を含む水溶液の形態で得られる。次いで、この溶液を循環させ、追加の処理を行わずに、R2に直ちに再注入する(図1、破線)。
【0057】
ピペリジンを分離した後、ヒドラジンを含む反応溶液(カラムCD2の脚部で集める、約2.7kg)を、冷却しながら、アルゴン流中で、固体水酸化ナトリウムを加えて処理し、タイターが80℃で70〜80である有機相中のN−アミノピペリジンを分離する。注入した無水水酸化ナトリウムの重量百分率は、好ましくは15〜30重量%である。従って、ヒドラジン含有量が約92%である該有機相および水および塩(NaCl、NaOH)を含む水層が集められる。使用上の規格に応じて、濃縮されたヒドラジン溶液(有機相)を直接使用するか、または減圧下で蒸留(蒸留カラムCD3)することができる。
【0058】
減圧蒸留の後、純度が99.5%を超えるN−アミノピペリジンが得られる。
【0059】
消費したピペリジンに対するヒドラジンの収率は92%を超える。
【0060】
例2 N−アミノピペリジンのバッチ製造
指定する量はすべて、一つの操作単位に対応し、注入する次亜塩素酸塩1リットルに関連する。
【0061】
この方法の特徴は、水酸化アンモニウムおよび塩化アンモニウムの溶液([NH3]=3.60モル.L−1、[NHCl]=2.38モル.L−1、5mL/分)を次亜塩素酸ナトリウムの水溶液(流量5mL/分)と、連続攪拌している反応器R1で、アルカリ性媒体中、温度−15℃〜−7℃で反応させることである。
【0062】
R1から出る反応液体(2リットル)は、モノクロラミンタイターが1モル.L−1を超えており、水酸化ナトリウムの30%溶液を連続的に供給しているミキサーMに加える(流量1/75mL/分)。サーモスタットケーシングがミキサー内側を固定温度−10℃に維持する。
【0063】
N−アミノピペリジンの合成は、攪拌している管状反応器R2中、アルゴン流中で行う。ミキサーMのチャンバーから出るアルカリ処理したモノクロラミン(2.35リットル)、およびアミノ試薬を、計量ポンプを使用して反応器の底部に同時に加える。無水ピペリジン1.69リットル、すなわち密度が0.861であるので1.455kgを加える。無水ピペリジンの添加流量は8.47mL/分であり、反応の一部は均質媒体中、55℃で行う。R2から出る時のNaOHの最終濃度は0.3モル.L−1である。
【0064】
本変形の特徴は、均質反応液体(4.04リットル)に、水酸化ナトリウムを13〜30%の量で、温度が60℃を超えないように冷却しながら加えることである。これらの条件下で、2つの相が得られ、その一方の軽い相(1.8kg)は、有機物質のすべて、すなわちN−アミノピペリジンおよび過剰のピペリジン、を、タイター約15〜20重量%で含む。従って、この処理により、合成溶液中に存在する水の80〜85重量%を除去することができる。
【0065】
次いで、N−アミノピペリジンを得るには、2つの連続工程が必要である。
−有機相を、アルゴン下、大気圧で蒸留することにより、未反応ピペリジンを回収する工程。最初に66重量%の濃縮されたアミン溶液約1kgが温度92.2℃で、水が枯渇するまで得られ(1”)、次いで無水ピペリジン(1’)約600gが温度105℃で得られる(蒸留カラムCD1’)。
−カラムの脚部で得た溶液の、115mmHgでの精製(蒸留カラムCD2’)。
【0066】
減圧蒸留の後、純度99.5%を超えるN−アミノピペリジンが得られる。
【0067】
消費されたピペリジンに対するヒドラジンの収率は90%を超える。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の方法を図式的に示す図である。
【図2】本発明の方法を図式的に示す図である。
【符号の説明】
【0069】
R1 反応器1
M ミキサー
R2 反応器2
CD1 蒸留カラム1、1'
CD2 蒸留カラム2、2'
CD3 蒸留カラム3
1 ピペリジン溶液
1' 無水ピペリジン
1” 66重量%ピペリジン溶液(水−ピペリジン共沸混合物)
2 N−アミノ−ピペリジン
2’ N−アミノ−ピペリジン
3 水+NaCl+NaOH溶液
3’ 水+NH+NaCl+NaOH溶液
4 残留物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環外シクロアルキル−ヒドラジンおよびヘテロシクロアルキル−ヒドラジンの誘導体を製造する方法であって、
a)好適な反応器中で、アルカリ性媒体中、温度30〜60℃で、モノクロラミンを複素環式アミンと反応させて、環外シクロアルキル−ヒドラジンまたはヘテロシクロアルキル−ヒドラジンの誘導体を合成し、次いで
b)工程a)で得た溶液を、温度が前記化合物の沸点を超えないように冷却しながら、無水水酸化ナトリウムを添加して、有機相と水相とに分離し、そして
c)所望により、得られた前記有機相を蒸留して、環外シクロアルキル−ヒドラジンまたはヘテロシクロアルキル−ヒドラジンの誘導体を単離する、前記a)〜c)の連続工程、
を含んでなる、方法。
【請求項2】
前記環外シクロアルキル−ヒドラジンまたはヘテロシクロアルキル−ヒドラジンの誘導体が、下記式(I):
【化1】

(式中、環の炭素原子の一つが、所望により窒素または酸素から選択された異原子により置き換えられており、R1およびR2が、同一または異なるものであって、水素原子またはC1〜C6アルキル基を表すか、またはR1およびR2が共にC3〜C8シクロアルキルを形成し、nが1〜3である)
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程a)において、前記複素環式アミン/モノクロラミンのモル比が4〜10である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程a)の反応器が、不活性雰囲気中に配置される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程a)の前に、水酸化ナトリウムの溶液を、水酸化ナトリウムの重量百分率が2〜6%になるように加えることにより、前記モノクロラミンをミキサー中でアルカリ処理する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ミキサーが、温度−10〜5℃に維持される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記工程b)において、無水水酸化ナトリウムが、水酸化ナトリウムの重量百分率が10〜35%になるような量で加えられる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程a)において、前記複素環式アミンが無水複素環式アミンの形態で加えられる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記工程c)が、
i)前記工程b)で得られた前記有機相を蒸留して、未反応の前記複素環式アミンと、前記環外シクロアルキル−ヒドラジンまたはヘテロシクロアルキル−ヒドラジン誘導体の濃縮溶液とを分離し、次いで
ii)所望により、減圧下で蒸留することにより、前記環外シクロアルキル−ヒドラジンまたはヘテロシクロアルキル−ヒドラジンの誘導体の濃縮溶液を精製する、前記i)およびii)の連続工程、
を含んでなる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記工程a)において、前記複素環式アミンが、複素環式アミンの濃縮された水溶液の形態で、所望により水−複素環式アミン共沸混合物の形態で加えられる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記工程a)の後で、かつ前記工程b)の前に、
i')前記工程a)の後に得られた前記溶液中に存在するアンモニアを、ストリッピングにより除去し、次いで
ii')前記工程i')の後に得られた前記溶液を温度50〜180℃で蒸留することにより、形成された前記環外シクロアルキル−ヒドラジンまたはヘテロシクロアルキル−ヒドラジンの誘導体を含む溶液と、未反応複素環式アミンの水溶液、所望により共沸溶液と、に分離し、そして
iii')前記工程ii')の後に得られた複素環式アミンの前記水溶液、所望により共沸溶液、を前記工程a)の反応器中に再注入すること
を含んでなる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記モノクロラミンが、
α)所望により、塩素滴定度が100°〜120°である次亜塩素酸塩溶液を希釈して、塩素滴定度が36°〜100°である次亜塩素酸ナトリウム水溶液を調製し、次いで
β)低アルカリ性媒体中、温度−15〜−7℃で、水酸化アンモニウムおよび塩化アンモニウムの溶液を、前記工程a)で得た前記次亜塩素酸ナトリウム水溶液と反応させて、前記モノクロラミンを形成する、前記α)とβ)の一連の工程、
を含んでなる方法により製造される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記水酸化アンモニウムおよび塩化アンモニウム溶液/次亜塩素酸ナトリウム水溶液のモル比が2.5〜3である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記塩化アンモニウム/水酸化アンモニウムのモル比が0.1〜1.75であり、約0.65であるのが有利である、請求項12または13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−514723(P2007−514723A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544502(P2006−544502)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【国際出願番号】PCT/FR2004/003288
【国際公開番号】WO2005/058852
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(599109353)
【出願人】(594016872)サントル、ナショナール、ド、ラ、ルシェルシュ、シアンティフィク、(セーエヌエルエス) (83)
【出願人】(596096180)ユニベルシテ・クロード・ベルナール・リヨン・プルミエ (16)
【Fターム(参考)】