説明

シクロオレフィンの製造方法

【課題】 シクロオレフィンを高選択率で得る。
【解決手段】 単環芳香族炭化水素をルテニウム触媒及び水の存在下で部分水素化してシクロオレフィンを製造する際に、触媒担体として、■ジルコニウム及び■2族元素、3族元素から選ばれた少なくとも一種の元素を含有する担体を用いることを特徴とするシクロオレフィンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、単環芳香族炭化水素を部分水素化して対応するシクロオレフィン類、特にベンゼンを部分水素化してシクロヘキセンを製造する方法に関するものである。シクロオレフィンは、ラクタム類、ジカルボン酸等のポリアミド原料、リジン、医薬、農薬などの重要な中間原料として有用な化合物である。
【0002】
【従来の技術】シクロオレフィンの製造方法としては、従来より単環芳香族炭化水素の部分水素化反応、シクロアルカノールの脱水反応、及びシクロアルカンの脱水素反応、酸化脱水素反応など多くの方法が知られている。なかでも、単環芳香族炭化水素の部分水素化によりシクロオレフィンを効率よく得ることができれば、最も簡略化された反応工程となり、プロセス上好ましい。
【0003】単環芳香族炭化水素の部分水素化によるシクロオレフィンの製造方法としては、触媒として主にルテニウム金属が使用され、水の存在下で水素化反応を行う方法が一般的である。また、反応系には、アルカリ剤又は金属塩などの添加剤を含有させる方法が、シクロオレフィンの選択率、収率が高く、一般的に好ましい方法されている(特開昭61−40226、特開昭61−40226、特開昭63−243038など)。また、ルテニウム触媒の使用形態としては、ルテニウム微粒子をそのまま触媒として用いる方法もあるが(特開昭61−50930等)、一般的に、担体担持触媒は触媒成分当たりの活性向上あるいは触媒活性の安定性向上が期待されやすい等の理由により、ルテニウムを担体に担持させた触媒を用いる方法も多数提案されている。
【0004】このルテニウム触媒に用いる担体の種類としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、硫酸バリウムなどが知られている(特公昭52−3933、特開昭53−63350、特開昭57−130926、特開昭61−40226等)。また、担体の性質を改良して触媒性能を高める方法として、希土類元素を含有させた担体を用いる方法(特開昭59−186932)、特定の細孔容量及び分布を有する担体を用いる方法(特開平4−74141)、シリカとランタンからなる特定構造の複合酸化物担体を用いる方法(特表平7−504418、特表平7−507767)などが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の方法はいずれも何らかの問題点を抱えており、工業的に必ずしも有利な方法が確立していない。特に、目的とするシクロオレフィンの選択率でいまだに充分でないことが挙げられる。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題を解決ですべく、特に単環芳香族炭化水素の部分水素化反応を実施する際に使用するルテニウム触媒の担体成分に関して詳細な検討を行った結果、特定の成分を含有した担体に担持したルテニウム触媒では、反応成績が顕著に改善されることを見いだし、本発明に到達した。
【0007】即ち、本発明の要旨は、単環芳香族炭化水素をルテニウム触媒及び水の存在下で部分水素化してシクロオレフィンを製造する際に、触媒担体として、■ジルコニウム、及び■2族元素、3族元素から選ばれた少なくとも一種の元素を含有する担体を用いることを特徴とするシクロオレフィンの製造方法に存する。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。触媒活性成分のルテニウムの原料としては、ルテニウムのハロゲン化物、硝酸塩、水酸化物、さらに、ルテニウムカルボニル、ルテニウムアンミン錯体などの錯体化合物や、ルテニウムアルコキシド等が例示される。なかでも、塩化ルテニウムが好適に使用される。触媒の活性成分であるルテニウムは、単独で使用することもできるが、他の金属成分を助触媒成分を併用してもよい。助触媒を添加することによって、本発明の効果を一層発揮することが可能である。助触媒成分としては、亜鉛、鉄、コバルト、マンガン、金、ランタン、銅などが有効であり、特に亜鉛が好ましい。助触媒成分の原料としては、各金属のハロゲン化物、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩及び各金属を含む錯体化合物が使用される。助触媒金属を使用する場合は、ルテニウム原子に対する助触媒金属の原子比は、通常0.01〜20、好ましくは0.1〜10である。
【0009】ルテニウム触媒成分の担体への担持方法としては、触媒成分液に担体を浸漬後、撹拌しながら溶媒を蒸発させ活性成分を固定化する蒸発乾固法、担体を乾燥状態に保ちながら触媒活性成分液を噴霧するスプレー法、あるいは、触媒活性成分液に担体を浸漬後、ろ過する方法などの公知の含浸担持法が好適に用いられる。また、触媒調製時の活性成分を担持する際使用する溶媒としては、水、またはアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、ヘキサン、トルエンなどの有機溶媒が使用される。ルテニウムの担持量は、通常0.001〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。また、前記の助触媒成分は、ルテニウム化合物と同時に担持させてもよいし、予め担持した後にルテニウムを担持してもよいし、予めルテニウムを担持した後に担持してもよい。
【0010】このようにして調製された触媒前駆体は、通常、還元活性化してから触媒として使用する。還元法としては、水素ガスによる接触還元法、あるいはホルマリン、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン等による化学還元法が用いられる。このうち、好ましくは水素ガスによる接触還元であり、通常80〜500℃、好ましくは100〜450℃の条件化で還元活性化する。還元温度が80℃未満では、ルテニウムの還元率が著しく低下し、また、500℃を越えるとルテニウムの凝集が起こりやすくなり、シクロオレフィン生成の収率、選択率が低下する原因となるので好ましくない。
【0011】また、以上の方法で得られた触媒は、以下に説明する水処理を施すことにより、シクロオレフィンの選択性などを改善させることができる。水処理条件としては、上記の触媒(ルテニウム還元物)に対して、通常0.01〜100重量倍、好ましくは0.1〜10重量倍の水に浸漬するなどして実施される。処理条件としては、通常、常圧から加圧下、室温〜250℃、好ましくは室温〜200℃で、通常10分以上、好ましくは1〜20時間行う。触媒処理の雰囲気は、通常、不活性ガス雰囲気下あるいは水素ガス雰囲気下であり、好ましくは水素ガス雰囲気下である。更に、水接触処理後の触媒は、通常、乾燥し、再還元処理、特に水素ガス雰囲気下で接触処理することにより、活性がより高められた触媒を得ることができる。
【0012】また、以上の接触処理に用いる水としては、純水のほかに、金属塩を含有する水溶液であってもよい。該金属塩水溶液中の金属成分の少なくとも一部は触媒に結合することにより、助触媒成分として働くこととなり、触媒活性の更なる向上が期待できるので望ましい。金属塩の種類としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどの1族金属、マグネシウム、カルシウムなどの2族金属、あるいは亜鉛、鉄、マンガン、コバルトなどの金属の硝酸塩、塩化物、硫酸塩、酢酸塩、燐酸塩等が例示される。水溶液中の金属塩の濃度としては、水に対して、通常1×10-5〜1重量倍、好ましくは1×10-4〜0.2重量倍である。接触処理後の触媒は、通常、金属塩水溶液をろ別し、純水で洗浄し、乾燥して使用する。また、乾燥後、水素ガス雰囲気下などで再還元処理することが望ましい。
【0013】以上のルテニウム触媒において、本発明での重要な特徴は担体の元素組成にある。具体的な担体の必須成分は、第一成分としてジルコニウム、第二成分として2族元素、3族元素から選ばれた少なくとも一種の元素を含有する担体を用いる。また、第二成分としては、2族族元素としてマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなど、3族元素としてスカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウムなどが例示され、特に2族元素ではカルシウム、マグネシウム、3族元素ではランタン、イットリウムが好ましい。担体における第一成分と第二成分の成分比率は、原子比で、通常1:0.001から1:2、好ましくは1:0.01から1:1である。
【0014】かかる第一成分と第二成分を含有する担体に担持したルテニウム触媒によりシクロオレフィン選択性が顕著に向上する。この原因は明確ではないが、ルテニウム触媒の担持物質として第一成分のジルコニウムは特に優れた性能を有し、かかるジルコニウムの性能を更に向上させる役割を第二成分が担っているものと推定できる。かかる第二成分がジルコニウムと共存することによって、ジルコニウム化合物の結晶形態がルテニウムの担体としてより好ましい形態となり、結果としてシクロオレフィン生成に有利な活性点を生じていることが考えられる。
【0015】第一成分と第二成分は、担体中において、酸化物、水酸化物、難溶性塩等の存在形態が考えられるが、好ましくは酸化物である。また、本発明の担体としては、第一成分と第二成分以外に、第三成分として硫酸バリウム、硫酸カルシウム、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、チタニア、クロミナなどの一般的に触媒担体として使用される難溶性の酸化物や金属塩を用い、該第三成分と第一成分、第二成分を組み合わせて使用することが可能である。この場合、第一成分と第二成分は合計で、担体全体の、通常0.1重量%以上、好ましくは0.3重量%以上の有意量が含まれる。
【0016】以上の第三成分のうち、好ましいのがシリカ、アルミナ等の酸化物であり、特にシリカが好ましい。シリカとと第一成分、第二成分の組み合わせの方法としては、担体の主成分をシリカとして各成分を物理混合して焼成して得た複合酸化物する方法、あるいは、シリカを支持体とし、第一成分と第二成分で該シリカを修飾した担体が例示されるが、特に、後者の担体が好ましい。この場合、第一成分と第二成分の修飾量は合計で、シリカに対して、通常0.1〜30重量%、好ましくは0.3〜20重量%以上の有意量が含まれる。
【0017】この第一成分と第二成分で修飾したシリカ担体とは、シリカ外表面だけではなく、細孔の表面も含めた全体の表面に修飾成分が均一に分散されたシリカ担体を意味する。シリカに修飾する第一成分の量は、第一成分をジルコニウム酸化物(ジルコニア)で修飾した場合に、シリカに対して、通常0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%である。第一成分及び第二成分の酸化物で修飾したシリカ担体の調製方法としては、通常、ジルコニウム化合物及び第二成分の化合物を水または有機溶媒に溶解させた溶液、あるいはジルコニウム化合物及び第二成分化合物を溶解後、一部あるいは全部をアルカリなどで加水分解させた溶液を用いて、公知の含浸担持法やディップコーティング法を好適に用いることによりシリカに担持し、その後、乾燥、焼成する方法が用いられる。ここで用いられるジルコニウム化合物及び第二成分化合物としては、ハロゲン化物、オキシハロゲン化物、硝酸塩、オキシ硝酸塩、水酸化物、さらにアセチルアセトナ−ト錯体などの錯体化合物やアルコキシド等が用いられる。また、ここでの焼成温度は用いたジルコニウム化合物がジルコニアになる温度以上であればよく、通常600℃以上、特に800〜1200℃が好ましい。但し、1200℃を超えて更に高温で焼成すると、シリカの結晶化が著しくなり触媒活性の低下を招くことになるので、あまり好ましくない。
【0018】なお、上記の細孔の状態に注目した場合、好ましいものとしては、水銀圧入法により細孔容量と細孔分布を測定した場合、細孔直径75〜100,000Åの全細孔容量が0.2〜10ml/g、特に好ましくは0.3〜5ml/gであり、かつ、細孔直径が75〜100,000Åの全細孔容量に対して、細孔直径が250Å以上の細孔容量が50%以上、特に好ましくは70%以上の細孔を有する担体である。細孔直径が250Å未満の細孔の割合が大きすぎると選択率の低下を招く傾向があるのであまり好ましくない。
【0019】本発明は以上のルテニウム触媒を使用することを特徴とするが、本発明を実施する場合、反応原料の単環芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、および、炭素数1〜4程度の低級アルキル基置換ベンゼン類などが挙げられる。
【0020】本発明の反応系には、水の存在が必要である。水の量としては、反応形式によって異なるが、一般的には単環芳香族炭化水素の0.01〜10重量倍であり、好ましくは0.1〜5重量倍である。かかる条件では、原料及び生成物を主成分とする有機液相(油相)と水を含む液相(水相)との2相を形成することになる。油相と水相の割合が極端な場合は2相の形成が困難となり、分液が困難となる。また、水の量が少なすぎても、多すぎても水の存在効果が減少し、更に、水が多すぎる場合は反応器を大きくする必要があるので好ましくない。
【0021】また、本発明の反応系において、従来知られた方法の如く金属塩を併用してもよい。金属塩の種類としては、周期表のリチウム、ナトリウム、カリウム等の1族金属、マグネシウム、カルシウム等の2族金属(族番号はIUPAC無機化学命名法改訂版(1989)による)、あるいは亜鉛、マンガン、コバルト等の金属の硝酸塩、塩化物、硫酸塩、酢酸塩、燐酸塩などが例示され、特に硫酸亜鉛あるいは硫酸コバルトが好ましい。金属塩の使用量は、通常、反応系の水に対して1×10-5〜1重量倍、好ましくは1×10-4〜0.1重量倍である。
【0022】本発明の反応条件としては、反応温度は、通常50〜250℃、好ましくは100〜220℃の範囲から選択される。250℃以上ではシクロオレフィンの選択率が低下し、50℃以下では反応速度が著しく低下し好ましくない。また、反応時の水素の圧力は、通常0.1〜20MPa、好ましくは0.5〜10MPaの範囲から選ばれる。20MPaを超えると工業的に不利であり、一方、0.1MPa未満では反応速度が著しく低下し設備上不経済である。反応は気相反応、液相反応のいずれも実施することができるが、好ましくは液相反応である。反応型式としては、一槽または二槽以上の反応槽を用いて、回分式に行うこともできるし、連続的に行うことも可能であり、特に限定されない。反応は原料である単環芳香族炭化水素、水、触媒などが懸濁された液状反応混合物に水素ガスを供給することにより実施され、水素ガスはかかる液状反応混合物中に、通常、ノズル開口部などを介して供給される。
【0023】
【実施例】以下に実施例を示すが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例および比較例中に示される転化率、選択率は次式によって定義される。
【0024】
【数1】


【数2】


【0025】実施例1(触媒の調製)オキシ硝酸ジルコニウム2水和物及び、硝酸カルシウムを所定量純水に溶解した水溶液に、シリカ(富士シリシア化学製、商品名:CARIACT50)を加え、室温にて浸漬後、水を留去し、乾燥させた。次に、空気流通下、1000℃にて4時間焼成し、シリカに対して5重量%のジルコニア、及びジルコニウム:カルシウム(原子比)=1:0.1の量の酸化カルシウムで修飾したシリカ担体を調製した。このようにして得た担体の細孔直径75〜100,000Åの全細孔容量が0.75ml/gであった。このうち、細孔直径が250Å以上の細孔容量の割合は92%であった。所定量の塩化ルテニウムと塩化亜鉛を含有した水溶液に、上記のジルコニア−酸化カルシウム修飾シリカ担体を加え、60℃にて1時間浸漬後、水を留去し、乾燥させてルテニウム(Ru)成分と亜鉛(Zn)成分を担体に対して各々0.5重量%を担持させ、触媒前駆体を得た。該触媒前駆体を水素気流中にて200℃で3時間焼成を行うことによりルテニウム触媒を得た。
【0026】(ベンゼン部分水素化反応)次に、内容積500mlのチタン製オ−トクレ−ブに硫酸コバルト0.1重量%の水溶液150ml、上記触媒1.0g、ベンゼン100mlを仕込んだ。反応温度150℃、圧力50MPaの条件下、水素ガスを57Nl/Hrの流量で供給し、1000rpmの撹拌を行い、ベンゼンの部分水素化反応を実施した。反応器内に設置したノズルより反応液を経時的に適宜抜き出し、油相をガスクロマトグラフで分析した。反応成績を表−1に示す。
【0027】実施例2酸化カルシウムの修飾量をジルコニウム:カルシウム(原子比)=1:0.2に変更した以外は実施例1と同様の方法でジルコニア−酸化カルシウム修飾シリカ担体を調製した。かかる担体の細孔直径75〜100,000Åの全細孔容量は0.75ml/gであった。このうち、細孔直径が250Å以上のの細孔容量の割合は91%であった。かかる担体を使用し、実施例1と同様の方法で調製した触媒を用い、実施例1と同様の条件にてベンゼンの部分水素化反応を行った。反応成績を表−1に示す。
【0028】実施例3硝酸カルシウムの代わりに硝酸ランタンを使用し、シリカに対して5重量%のジルコニア、及びジルコニウム:ランタン(原子比)=1:0.1の量の酸化ランタンで修飾したシリカ担体を調製した。かかる担体の細孔直径75〜100,000Åの全細孔容量は0.76ml/gであった。このうち、細孔直径が250Å以上のの細孔容量の割合は91%であった。かかる担体を使用し、実施例1と同様の方法で調製した触媒を用い、実施例1と同様の条件にてベンゼンの部分水素化反応を行った。反応成績を表−1に示す。
【0029】実施例4酸化ランタンの修飾量をジルコニウム:ランタン(原子比)=1:0.2に変更した以外は実施例3と同様の方法でジルコニア−酸化ランタン修飾シリカ担体を調製した。かかる担体の細孔直径75〜100,000Åの全細孔容量は0.68ml/gであった。このうち、細孔直径が250Å以上のの細孔容量の割合は91%であった。かかる担体を使用し、実施例1と同様の方法で調製した触媒を用い、実施例1と同様の条件にてベンゼンの部分水素化反応を行った。反応成績を表−1に示す。
【0030】比較例1硝酸カルシウムを使用しなかった以外は実施例1の方法と同様の方法により、ジルコニア修飾シリカ担体を調製した。かかる担体の細孔直径75〜100,000Åの全細孔容量は0.75ml/gであった。このうち、細孔直径が250Å以上のの細孔容量の割合は92%であった。かかる担体を使用し、実施例1と同様の方法で調製した触媒を用い、実施例1と同様の条件にてベンゼンの部分水素化反応を行った。反応成績を表−1に示す。
【0031】比較例2比較例1の方法においてオキシ硝酸ジルコニウムの代わりに所定量の硝酸ランタンを用い、シリカに対して5重量%の酸化ランタンで修飾したシリカ担体を調製した。かかる担体の細孔直径75〜100,000Åの全細孔容量は0.75ml/gであった。このうち、細孔直径が250Å以上のの細孔容量の割合は91%であった。かかる担体を使用し、実施例1と同様の方法で調製した触媒を用い、実施例1と同様の条件にてベンゼンの部分水素化反応を行った。反応成績を表−1に示す。
【0032】
【表1】


【0033】実施例5実施例1の方法で得た触媒10gと硫酸亜鉛6%水溶液200mlをチタン製オートクレーブに仕込み、200℃、圧力5.0MPaの条件下、水素ガスを57Nl/Hrの流量で供給し、600rpmにて攪拌し、5時間、触媒を水処理した。該処理後、触媒を取出し、純水で洗浄した。洗浄は、触媒に30倍量の純水を加えて1時間撹拌などにより充分に混合し、実質的に平衡状態となった際の洗浄水中の亜鉛濃度が0.1ppm以下になるまで行った。次に、この触媒を水素気流中にて200℃で3時間焼成を行うことにより活性化した。以上の水処理、活性化処理を経た触媒2gを用いた以外は、実施例1と同様の条件でベンゼンの部分水素化反応を行った。反応成績を表−2に示す。
【0034】比較例3比較例1の触媒につき、実施例5と同様の方法で処理を行った。かかる触媒を面板以外は実施例5と同様の条件でベンゼンの部分水素化反応を行った。反応成績を表−2に示す。
【0035】
【表2】


【0036】
【発明の効果】本発明によれば、単環芳香族炭化水素の部分水素化反応において、触媒の活性が高く、しかもシクロオレフィンを高選択率で得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 単環芳香族炭化水素をルテニウム触媒及び水の存在下で部分水素化してシクロオレフィンを製造する際に、触媒担体として、■ジルコニウム及び■2族元素、3族元素から選ばれた少なくとも一種の元素を含有する担体を用いることを特徴とするシクロオレフィンの製造方法。
【請求項2】 ■ジルコニウムと■2族元素、3族元素から選ばれた少なくとも一種の元素の成分比率が、原子比で1:0.001から1:2であることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項3】 2族元素が、カルシウム又はマグネシウムであることを特徴とする請求項1又は2の方法。
【請求項4】 3族元素が、ランタン又はイットリウムであることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項5】 担体が、シリカを含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの方法。
【請求項6】 担体が、■ジルコニウム及び■2族元素、3族元素から選ばれた少なくとも一種の元素で修飾したシリカ担体であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかの方法。
【請求項7】 ■ジルコニウム及び■2族元素、3族元素から選ばれた少なくとも一種の元素が、シリカに対して0.1〜30重量%であることを特徴とする請求項6の方法。
【請求項8】 担体の細孔直径75〜100,000Åの全細孔容量が0.2〜10ml/gであり、かつ、細孔直径が250Å以上の細孔容量が50%以上であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかの方法。

【公開番号】特開平9−208498
【公開日】平成9年(1997)8月12日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−19673
【出願日】平成8年(1996)2月6日
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)