説明

シクロスポリン化合物ISA247の生体内変換法

【解決手段】 微生物を用いて生体内変換により生体異物化合物の代謝物を産生する方法であって、前記生体異物化合物はシクロスポリンISA247であり、界面活性剤の混合物中、前記微生物に到達されるものである。前記方法をスケールアップし、例えば、リアクタ中、生体内変換により大量の代謝物を産生することができる。本発明の方法により産生される代謝物は、治療量モニタリングまたは薬学的応用分野の標準として、抗体産生に利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物の代謝物の調整法、より具体的には、生体内変換によるその代謝物の調整に関する。
【背景技術】
【0002】
患者に医薬品を投与する際、患者に治療量の薬物が投与されていることを確認するため、前記薬物の血清濃度モニタリングが必要となることが多い。これは、治療量モニタリング(TDM)と呼ばれる。TDMにより、親化合物および/または1若しくはそれ以上の前記親化合物の代謝物を測定することができる。代謝物は、前記薬物が体内から排泄されやすくなるように、酵素、一般には肝酵素が作用して薬物を分解または修飾した時に形成される。前記親化合物が急速に代謝される場合、TDMの目的で、代謝物の濃度を測定することが最も都合がよいと考えられる。そのような測定には、イムノアッセイが利用されることが多い。
【0003】
代謝物を測定するTDMアッセイがイムノアッセイの場合、そのアッセイの使用に対して所望の特異性を有する抗体を作成および/または選択するために、前記薬物、または前記薬物の単離、精製代謝物が使用されることがある。或いは、前記精製代謝物を利用し、前記親化合物に特異的な抗体、つまり、前記親化合物と前記親化合物の代謝物との間の最小限の交差反応性を示す抗体を限定することもある。従って、TDM用に抗体を産生するのに適した代謝物を一定量入手するため、単離代謝物の効率的な産生法が必要である。
【0004】
代謝物は、TDMと関係のない使用法を有することもある。代謝物は、薬学的に重要な活性を有することもある。例えば、代謝物は薬物動態の改善、薬理活性の上昇、または生物学的利用能の向上など、有益な特徴を示す。親薬剤化合物の代謝物自体が、有用な治療となることもある。例えば、A77 1726はレフルノミドの活性代謝物であり、ヒドロキシ−tert−ブチルアミドはHIV治療薬ネルフィナビルの活性代謝物であり、4−OH−タモキシフェンはタモキシフェンの活性代謝物である。前記代謝物が活性を示す場合、大量の前記代謝物を効率的に産生する方法が求められる。或いは、1若しくはそれ以上の前記代謝物が有毒であることもある。そのため、薬物の代謝様式、その結果生じる代謝物、およびこれらの代謝物の活性に関する知識は、薬物の活性を理解する上で重要である。この情報は、薬物の承認前に必要となることもある。前記代謝物とその特徴を特定するため、十分な量の前記代謝物を産生、単離する必要がある。
【0005】
代謝物を産生する一つの方法は、ヒトなどの哺乳類に前記薬物を投与し、血液、尿、胆汁などの体液を回収し、これらの体液から代謝物を抽出、精製、単離するものである。一般に、薬物から前記薬物の代謝物への変換である生体内変換は、ヒト患者の肝臓においては、肝シトクロムP450酵素群(CYP450またはP450)によって達成される。前記P450酵素ファミリーには、胆汁または尿中に排泄するため、化合物の溶解性を高めるように作用する、推定70種類程度の酵素が含まれる。生体内変換による代謝物の形成をモニタリングするため、親化合物を標識し、前記代謝物を認識できるようにすることも可能である。代わりに、高圧液体クロマトグラフィー分離および質量スペクトル解析によりその結果をモニタリングする場合、同様の構造を有する薬物を同時に分析することもある。第二の親化合物の生体内変換法は、生体内変換系として全臓器、組織スライス、または肝細胞などの培養細胞を用いるものである。第三の方法では、哺乳類細胞から調整されたミクロソームが利用されることもある。これらのアプローチでは動物の分離株を使用するため、前記代謝物に望まない汚染物質が導入される危険性がある。より大量で1若しくはそれ以上の前記代謝物が求められる場合、これらの方法はスケールアップすることが難しい。さらに、前記親化合物を代謝物に変換するため、微生物を用いた生体内変換を利用することもある。
【0006】
生体異物が高い親油性である、つまり大規模発酵法に用いる水性培養液に非常に溶けにくい場合は、大量の代謝物を産生することが特に困難となる可能性がある。従って、効率的に大量な不溶性生体異物の代謝物を産生する方法が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、微生物を用いた生体内変換により、生体異物化合物の代謝物を産生する方法を提供するものである。前記生体異物化合物は、界面活性剤との混合中において前記微生物にさせることもできる。前記方法をスケールアップし、例えばリアクタで生体内変換することにより、大量の代謝物を産生することも可能である。本発明の方法により産生された代謝物は、例えば治療量モニタリングまたは薬学的応用分野の標準として、抗体産生に利用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明の一観点は、微生物中の生体異物化合物の少なくとも1つの代謝産物を産生する方法を提供し、この方法は、
(a)前記生体異物化合物と界面活性剤との混合物を提供する工程と、
(b)前記混合物を前記微生物の培養液に添加する工程と、
(c)前記代謝物が形成するのに十分な時間、前記培養液を培養する工程と
を有する。
【0009】
前記混合物は、前記生体異物化合物、溶媒、および前記界面活性剤を有する。前記生体異物化合物に適切ないかなる溶媒も使用することができる。例えば、前記溶媒はエタノールなどのアルコールとすることもできる。前記溶媒は1以上の物質を有することもある。いくつかの実施形態では、前記溶媒はアルコールおよびジメチルスルフォキシド(DMSO)の両方を有する。
【0010】
前記微生物は、前記生体異物化合物を代謝することができるいかなる微生物とすることもでき、ヒトと同じ前記生体異物化合物の代謝経路を持つものが好ましい。特定の実施形態では、前記微生物がActinoplanes sp.、Streptomyces griseus、Streptomyces setonii、Saccharopolyspora erthyraeaから成る群から選択される。前記微生物は、Cunningham ellaechinulata、Nerospora crassa、またはActinoplanes sp.とすることもできる。
【0011】
前記界面活性剤はいかなる適切な界面活性剤とすることもでき、本開示の教示に基づき、当業者が特定することができる。例えば、前記界面活性剤は、ポリエチレングリコール(PEG)400、ヒマシ油、ミリスチン酸イソプロピル、グリセリン、クレモホール(登録商標)(ポリオキシヒマシ油)、ラブラゾール(登録商標)(カプリロカプロイルマクロゴールグリセリド)、およびTWEEN(登録商標)40から成る群から選択することができる。
【0012】
前記生体異物化合物は、水溶液中の溶解度が低い化合物が好ましい。いくつかの実施形態では、前記生体異物化合物が免疫抑制剤および抗菌化合物、好ましくはシクロスポリン化合物、より好ましくはISA247またはシクロスポリンAから成る群から選択される。前記代謝物は、好ましくは、IM1−d−1、IM1−d−2、IM1−d−3、IM1−d−4、IM1−c−1、IM1−c−2、IM1−e−1、IM1−e−2、IM1−e−3、IM9、IM4、IM4n、IM6、IM46、IM69、およびIM49から成る群から選択される。
【0013】
本発明の方法はさらに、選択的に、前記培養液から前記代謝物を単離する工程を有することができる。
【0014】
本発明の別の観点では、生体内変換系での使用に適した微生物を同定する方法を提供し、a)代謝される化合物の構造を既知の酵素活性と比較する工程と、b)前記既知の酵素活性を発現した酵素を同定する工程と、c)前記同定された酵素を発現した微生物を同定する工程と、d)生体内変換系において、前記同定された酵素を発現した微生物を使用し、前記化合物の代謝物を作成する工程とを有する。特定の実施形態では、様々な微生物のゲノム配列を前記同定された酵素の配列と比較し、それによって前記酵素を発現した微生物を少なくとも1種類同定することで、前記微生物を同定することができる。
【0015】
本発明の1若しくはそれ以上の実施形態の詳細は、添付図面および以下の記述で説明される。本発明のその他の特徴、目的、および利点は、記述および図、および請求項から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明では、微生物を用いた生体内変換により、生体異物化合物の代謝物を産生する方法を提供する。特に、前記生体異物化合物は、界面活性剤と混合して前記微生物に到達させる。前記方法をスケールアップし、例えばリアクタで生体内変換することにより、大量の代謝物を産生することが可能である。本発明により産生された代謝物は、例えば治療量モニタリングまたは薬学的応用分野の標準として、抗体産生に利用することができる。
【0017】
多くの薬学的に活性な化合物は水溶液に難溶性である。例えば、シクロスポリンおよび特定の他の免疫抑制剤(ラパマイシン、アザチオプリン、ミゾリビン、およびFK506(タクロリムス))は、水性環境で難溶性を示すことが知られている。本発明者らは被験化合物としてシクロスポリン誘導体であるISA247を用い、微生物発酵を利用して首尾よく難溶性化合物の代謝物を調整することが可能であることを発見した。本発明をさらに詳細に説明する前に、他に指示がない限り、本出願書類で使用されている用語を以下に定義する。
【0018】
定義
本明細書では、「生体内変換」という用語は、生細胞、特に微生物の細胞による化合物の代謝プロセスを指す。
【0019】
「生体異物化合物」、または「生体異物」は、本来は微生物に存在しない化合物である。生体異物化合物は、薬学的に活性なこともある。本発明の生体異物化合物は、好ましくは、水に容易に溶けない。例えば、前記化合物の水溶性は、25℃で1mg/ml以下、0.75mg/ml以下、0.5mg/ml以下、0.25mg/ml以下、0.1mg/ml以下、0.08mg/ml以下、0.06mg/ml以下、0.04mg/ml以下、または0.02mg/ml以下とすることができる。
【0020】
「シクロスポリン化合物」は、免疫抑制作用を有するシクロスポリン、またはその誘導体である。前記用語は、天然由来のシクロスポリン、シクロスポリンA〜Z、ISA247、米国特許第4,108,985号、第4,210,581号、および第4,220,641号明細書に開示されているような合成および人工のジヒドロ−およびイソ−シクロスポリン、米国特許第4,384,996号、第4,703,033号、第4,764,503号、第4,771,122号、第4,798,823号、第4,885,276号、第5,525,590号、第5,643,870号、第5,767,069号明細書で示されているような誘導体化シクロスポリン、および国際公開第WO02069902号、第WO03033010号、第WO03030834号、および第WO04050687号明細書で提供されているシクロスポリン誘導体化合物を含む。
【0021】
ISA247およびその代謝物
ISA247(ISATX247またはISA)およびそのISA関連ファミリーについては、米国特許第6,613,739号および第6,605,593号明細書に図示されている。シクロスポリンAと同様、ISA247はほぼ完全に疎水性アミノ酸から成る環状ウンデカペプチドである。これらのアミノ酸の多くは、通常、哺乳類タンパク質には認められない。図1は、ISA247の構造と、この分子の環状ペプチド環を有する11アミノ酸残基を図示している。図のように、前記アミノ酸残基は時計回りの方向に番号が付けてある。図1に示す通り、11員環アミノ酸の11アミノ酸のうち7アミノ酸がN−メチル化されている。残り4つのプロトン化された窒素原子はカルボニル基と分子間水素結合を形成することができ、これがCsAおよびISA247のシクロスポリン骨格の硬度に実質的に貢献している。CsAの溶解度は25℃で約0.04mg/mlである。水溶性が低いため、シクロスポリンAの生物学的利用能は、ヒトに経口投与した場合で30%以下であることが知られている。ISA247も同様に水溶性が低い。
【0022】
ISA247は、サルコシン残基(3文字の略語はSarであり、サルコシンはメチル化グリシン残基であり、MeGlyと略されることもある)、D−およびL−アラニン(Ala)残基のいずれか1つ、α−アミノ酪酸残基(Abu)、バリン(Val)残基、N−メチルバリン(MeVal)残基、4つのN−メチルロイシン(MeLeu)残基、および(4R)−4−[(E)−2−ブテニル]−4,N−ジメチル−L−トレオニン(MeBmt)と呼ばれる、シクロスポリンに特有の、アルケンを含む9炭素である、β−水酸化アミノ酸を含む。ISA247の化学名は、シクロ{{(E)−および(Z)−(2S,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチル−2−(メチルアミノ)−6,8−ノナジエノイル}−L−2−アミノブチリル−N−メチル−グリシル−N−メチル−L−ロイシル−L−バリル−N−メチル−L−ロイシル−L−アラニル−D−アラニル−N−メチル−L−ロイシル−N−メチル−L−ロイシル−N−メチル−L−バリル}である。その実験式は、C63H111N11O12.Iである。分子量は約1214.85である。
【0023】
ISA247は、シス−ISA247(またはZ−ISA247)およびトランス−ISA247(またはE−ISA247)の2つの異性体として存在することが知られている。図2Aおよび2Bは、ISA247のトランスおよびシス体を示している。前記ISA247化合物のシス体およびトランス体の混合物は、CsAよりも毒性が低く、強力であることが分かった(米国特許第6,605,593号および第6,613,739号明細書を参照)。さらに、ISA247は、シス体およびトランス体の混合物として、前記混合物がトランス異性体を高比率で含む場合、CsAよりも毒性が低く、強力であることが分かった。ISA247を参照した場合、ISA247はシスおよびトランス異性体の混合物であり、前記混合物は前記化合物のトランス異性体を多く含むこともあることは、当業者が理解することとする。前記異性体化合物は混合物として存在し、シス:トランス比は1:99〜99:1の範囲である。
【0024】
ISA247代謝物は以下のように記述することができる。式1の化合物であって、
【化1】

【0025】
は以下の群から選択される。
【0026】
【化2−1】

【0027】
【化2−2】

【0028】
式中、RはCHおよびHから成る群から選択され、RはCH2CH(CH3)2およびCH2C(CH3)2OHから成る群から選択され、RはCH(CH3)2およびC(CH3)2OHから成る群から選択される。
【0029】
前記ISA247化合物のアミノ酸1で修飾されたISA247代謝物の構造は、表1に示されている。長方形の部分は、修飾されたアミノ酸1とシクロスポリン構造の環状部分を形成するアミノ酸2〜11であり、図1を参照のこと。表1はアミノ酸1で修飾されたISA247代謝物の完全な表ではない。例えば、アミノ酸1代謝物は、5、6、7、または8員環を含むこともできる。
【0030】
【表1−1】

【0031】
【表1−2】

【0032】
【表1−3】

【0033】
ISA247代謝物にはN−脱メチル化代謝物を含み、前記N−脱メチル化は、例えばIM4n(つまり、ISA247 Metabolite,N−demethylation at amino acid−4)などのアミノ酸のアミド結合にある、少なくとも1つのメチル化窒素で起こる。N−脱メチル化は、アミノ酸−3(IM3n)、アミノ酸−4(IM4n)、アミノ酸−6(IM6n)、アミノ酸−9(IM9n)、アミノ酸−10(IM10n)、またはアミノ酸−11(IM11n)で起こる可能性がある。ISA247代謝物には水酸化代謝物も含み、前記水酸化は、例えばアミノ酸4、6、9、または10(IM4、IM6、IM9、またはIM10)などの少なくとも1つのメチルロイシンアミノ酸、またはバリン残基5(IM5)またはメチルバリン残基11(IM11)で起こる。IM46ではアミノ酸4および6のいずれも水酸化され、IM49ではアミノ酸4および9のいずれなども水酸化される。N−脱メチル化および水酸化代謝物が組み合わされることもあり、表1に示す通り、N−脱メチル化または水酸化にアミノ酸−1が変化した代謝物が組み合わさることもある。ISA247代謝物には、ISA247の水酸化代謝物のグルクロニド、スルホニド、グリコシル化、およびリン酸化誘導体である代謝物も含む。同時係属中で指定代理人に譲渡された米国特許出願第号(弁護士整理番号16593−009001、2005年12月19日出願)では、ISA247代謝物およびその使用法を提供している。
【0034】
ISA247代謝物の調整法
ISA247の代謝物は、まずシス:トランスISA247の50:50混合物を投与された被験者のヒト全血を用いて分析した(実施例1)。図3は、この被験者の全血から単離した代謝物の代謝プロフィールを示したHPLCスキャンである。ヒト全血に有機抽出法を用い、代謝物を抽出、乾燥、メタノールに再溶解し、質量分析と連動したクロマトグラフィー法により同定した。図3に示す通り、ヒト全血では、少なくとも3つのジオール代謝物、2つの水酸化代謝物、および3つのN−脱メチル化代謝物が検出可能であった。
【0035】
ISA247代謝物を産生するため、イヌ肝ミクロソーム試料も使用した(実施例2)。ISA247代謝物はこの方法で生産可能であるが、その収率は低く、コストは高かった。従って、このアプローチを用いて、意味のある量のISA247代謝物を得ることは実用的ではない。
【0036】
これまでの経験では、本発明以前に、多量のCsAおよびISA247の代謝物を産生する方法として慣習的な生体内変換法が報告されていなかったが、これはおそらくこれらの化合物が親油性の性質を持つためである。理論に縛られることは望まないが、問題は、ISA247などの疎水性化合物が、培養を行い前記産生物の代謝物を処理するために用いる、ろ過器、カラム、その他の器具の表面に付着する傾向を有することであると本発明者らは考えている。また、これらの非常に高い親油性の化合物は、培養中微生物の水性環境で溶液に溶けない。培養された微生物は、代謝するためにこれらの親油性化合物に近づくことができない可能性がある。いくつかの観点では、微生物の増殖試料に薬物を提供することが、哺乳類に薬物を提供することと差がない。前記薬物の生物学的利用能を向上させる製剤が必要なこともある。
【0037】
ヒトでは、シトクロムP450酵素がCsAから代謝物を形成することが知られている。シトクロムP450酵素はISA247代謝物の形成にも作用することが分かってきた。特に、シトクロムP450酵素のCYP3A4は、シクロスポリンおよびISA247の代謝に関与する酵素として同定された。ヒトで得られた代謝プロフィールと同様のプロフィールを作成するため、前記生体内変換系では、微生物の活発な増殖および代謝に適した培地と培養条件下で増殖し、ヒトシトクロムP450酵素に相当する微生物の酵素を有する微生物を利用する必要がある。
【0038】
生体内変換法はSmithら(Arch.Biochem.Biophys.(1974)161:551−558)が例示している。UrlackerおよびSchmid(Curr Opin Biotechnol.(2002)13(6):557−64)は、原核生物のP450モノオキシゲナーゼ酵素を用いて生体内変換を行うことができる、と指摘している。VenisettyおよびCiddi(Current Pharmaceutical Biotechnology(2003)4(3):153−167)は、新規薬物を見つけるため、天然の薬物に微生物を応用することを提案した。
【0039】
Sebekia benihanaにより、メタノールに溶解したシクロスポリンAの[γ−ヒドロキシ−MeLeu]4シクロスポリン(AM4)および[γ−ヒドロキシ−MeLeu][γ−ヒドロキシ−MeLeu]シクロスポリン(AM46)への生体内変換は、米国特許第6,255,100号明細書に開示された。しかし、CsAをヒトに投与する場合、TDM用に産生され、モニタリングされる主な代謝物はAM1(アミノ酸−1、MeBmtで水酸化されたCsAの代謝物)、AM9(アミノ酸9位のMeLeuで水酸化された代謝物)、およびAM4n(アミノ酸4位のMeleuで脱メチル化されたCsA代謝物)であることに注意する必要がある(LeGatt et al.,Clin Biochem.(1994)27(1):43−8)。そのため、Sebekia benihanaは、CsAの哺乳類代謝プロフィールを模倣した代謝プロフィールを提供しない微生物を例示している。
【0040】
本明細書では、生体内変換を利用し、ISA247の代謝物を産生できることを証明する。実施例3に示した通り、ISA247および界面活性剤TWEEN(登録商標)40(ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート)を含む混合物をSaccharopolyspora erytheraeaに到達させることで、ヒト血液に認められるISA247代謝物の主なカテゴリーは、すべて産生された。特に、7種類のISA247代謝物が検出され、それはIM4n(アミノ酸4でN−脱メチル化されたISA247代謝物)、IM9(アミノ酸9で水酸化されたISA247代謝物)、IM4(アミノ酸4で水酸化されたISA247代謝物)、IM1−c−1(表1を参照)、IM1−d−1(表1)、IM1−d−2(表1)、およびIM1−d−3(表1)であった。微生物によって産生されるISA247代謝物の種類、数、量は異なり、前記産生は培地を変更することで最適化することができる(実施例5)。さらに、特定の微生物では、異なる界面活性剤または溶媒を使用することで、代謝物の量が増加するか、産生プロフィールが改善することがある。例えば、Saccharopolyspora erytheraeaを使用した場合、PEG 400およびグリセロールにより代謝物の産生量が多くなるが(実施例4)、TWEEN(登録商標)40は、Beauvaria bassianaにより産生される代謝物の種類をかなり増加させた(実施例6)。
【0041】
その結果、本発明の一観点では、微生物中の生体異物化合物の少なくとも1つの代謝物を産生する方法を提供し、この方法は、
(a)前記生体異物化合物と界面活性剤との混合物を提供する工程と、
(b)前記混合物を前記微生物の培養液に添加する工程と、
(c)前記代謝物が形成するのに十分な時間、前記培養液を培養する工程とを有する。前記方法は、選択的に、さらに前記培養液から前記代謝物を単離する工程を有することもある。
【0042】
本発明の特定の実施形態では、本明細書に示したような溶解性の低い化合物、特にシクロスポリン(例えば、ISA247およびCsA)、マクロライドラクトン(例えば、FK506)、およびトリエンマクロライド(例えば、ラパマイシン)などの免疫抑制化合物の代謝物を大量に産生するin vitro生体内変換系を提供している。適切な生体異物化合物については、詳細を以下に考察する。
【0043】
さらに、親化合物−界面活性剤の混合物を増殖培地に前記微生物を含めた生物反応混合物に添加後、前記生物反応を一時、前記親化合物が代謝される条件下で進めることができる。前記目標時間の後、前記代謝物を前記生物反応混合物から抽出し、高圧液体クロマトグラフィーおよび質量スペクトル解析(HPLC−MS)などのクロマトグラフィーにより分離精製する。核磁気共鳴分析を利用し、個々の代謝物が互いに単離されたことを確認し、その構造を確認することができる。別の化学構造として確認された個々の代謝物は、その後のアッセイで標準として使用することができる。
【0044】
精製された代謝物は、TDMアッセイで使用されることもある。例えば、ISA247は、免疫抑制を達成し、移植臓器の拒絶反応を抑制するのに十分な量で、臓器移植患者に投与することができる。前記患者で適切な薬物濃度が維持され、従って、移植臓器の拒絶反応を予防するために適切な免疫抑制剤の濃度を維持していることを確認するため、時間を置いて前記患者から採血することもある。ISA247の血中濃度を測定することもある。さらに少なくとも1種類の代謝物の血中濃度をモニタリングし、前記患者の身体が予測可能な方法で前記薬物を代謝していることを確認することもある。前記患者の系から前記薬物を排泄するように患者自身の代謝が機能していない場合、未代謝の活性薬物の血中濃度が上昇し、患者の投与法に変更が必要となることもある。定量は、例えばイムノアッセイまたはHPLC−MSにより行うことができる。同様に、ISA247またはその代謝物の1つに特異的な抗体を開発することもできる。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態では、エタノール中のISA247をグリセロールと混合し、次にSaccharopolyspora erytheraeaを含む生体内変換系(ATCC 11635など)に添加する。他の実施形態では、前記生体内変換系にISA247を添加する前に、PEG 400をエタノール中のISA247と混合する。他の実施形態では、前記生体内変換系にISA247を添加する前に、ヒマシ油をエタノール中のISA247と混合する。他の実施形態では、前記生体内変換系にISA247を添加する前に、ミリスチン酸イソプロピルをエタノール中のISA247と混合する。他の実施形態では、前記生体内変換系にISA247を添加する前に、クレモホール(登録商標)をエタノール中のISA247と混合する。他の実施形態では、前記生体内変換系にISA247を添加する前に、ラブラゾール(登録商標)をエタノール中のISA247と混合する。他の実施形態では、前記生体内変換系にISA247を添加する前に、TWEEN(登録商標)40をエタノール中のISA247と混合する。
【0046】
さらなる典型的な生体異物化合物
水溶液で溶解性が低い薬物のさらなる例には、鎮痛薬/解熱剤(例えば、アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセンナトリウム、ブプレノルフィン、塩酸プロポキシフェン、ナプシル酸プロポキシフェン、塩酸メペリジン、塩酸ヒドロモルホン、モルヒネ、オキシコドン、コデイン、酒石酸水素ジヒドロコデイン、ペンタゾシン、酒石酸水素ヒドロコドン、レボルファノール、ジフルニサル、トロラミンサリチル塩、塩酸ナルブフィン、メフェナム酸、ブトルファノール、サリチル酸コリン、ブタルビタール、クエン酸フェニルトロキサミン、クエン酸ジフェンヒドラミン、メトトリメプラジン、塩酸シンナメドリン、およびメプロバメート)、抗喘息薬(例えば、ケトチフェンおよびトラキサノックス)、抗生物質(例えば、ネオマイシン、ストレプトマイシン、クロラムフェニコール、セファロスポリン、アンピシリン、ペニシリン、テトラサイクリン、およびシプロフロキサシン)、抗うつ薬(例えば、ネフォパム、オキシペルチン、ドキセピン、アモキサピン、トラゾドン、アミトリプチリン、マプロチリン、フェネルジン、デシプラミン、ノルトリプチリン、トラニルシプロミン、フルオキセチン、ドキセピン、イミプラミン、パモ酸イミプラミン、イソカルボキサジド、トリミプラミン、およびプロトリプチリン)、抗糖尿病薬(例えば、ビグアニドおよびスルホニルウレア誘導体)、抗真菌薬(例えば、グリセオフルビン、ケトコナゾール、イトラコナゾール、アンフォテリシンB、ナイスタチン、およびカンジシジン)、降圧薬(例えば、プロプラノロール、プロパフェノン、オキシプレノロール、ニフェジピン、レセルピン、トリメタファン、フェノキシベンズアミド、塩酸パルジリン、デセルピジン、ジアゾキシド、グアネチジンモノサルフェート、ミノキシジル、レシナミン、ニトロプルシドナトリウム、インドジャボク、アルサーオキシロン、およびフェントラミン)、抗炎症薬(例えば、(非ステロイド系)インドメタシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ナプロキセン、イブプロフェン、ラミフェナゾン、ピロキシカム、(ステロイド系)コルチゾン、デキサメサゾン、フルアザコルト、セレコキシブ、ロフェコキシブ、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、およびプレドニゾン)、抗悪性腫瘍薬(例えば、シクロフォスファミド、アクチノマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、マイトマイシン、メトトレキセート、フルオロウラシル、カルボプラチン、カルムスチン(BCNU)、メチル−CCNU、シスプラチン、エトポシド、カンプトテシンおよびその誘導体、フェネステリン(phenesterine)、パクリタキセルおよびその誘導体、ドセタキセルおよびその誘導体、ビンブラスチン、ビンクリスチン、タモキシフェン、およびピポスルファン)、抗不安薬(例えば、ロラゼパム、プラゼパム、クロルジアゼポキシド、オキサゼパム、クロラゼプ酸二カリウム、ジアゼパム、パモ酸ヒドロキシジン、塩酸ヒドロキシジン、アルプラゾラム、ドロペリドール、ハラゼパム、クロルメザノン、およびダントロレン)、抗片頭痛薬(例えば、エルゴタミン、プロプラノロール、イソメテプテン・ムケート(isometheptene mucate)、およびジクロラルフェナゾン)、鎮静剤/睡眠薬(例えば、ペントバルビタール、ペントバルビタール、およびセコバルビツールなどのバルビツール酸塩、および塩酸フルラゼパム、トリアゾラム、およびミダゾラムなどのベンゾジアゼピン)、抗狭心症薬(例えば、β−アドレナリン遮断薬、ニフェジピン、およびジルチアゼムなどのカルシウムチャネル遮断薬、およびニトログリセリン、硝酸イソソルビド、四硝酸ペンタエリスリトール、および四硝酸エリトリチルなどの硝酸塩)、抗精神病薬(例えば、ハロペリドール、コハク酸ロキサピン、塩酸ロキサピン、チオリダジン、塩酸チオリダジン、チオチキセン、フルフェナジン、デカン酸フルフェナジン、エナント酸フルフェナジン、トリフルオペラジン、クロルプロマジン、ペルフェナジン、クエン酸リチウム、およびプロクロルペラジン)、抗不整脈薬(例えば、ブレチリウムトシレート、エスモロール、ベラパミル、オミオダロン、エンカイニド、ジゴキシン、ジギトキシン、メキシレチン、リン酸ジソピラミド、プロカインアミド、硫酸キニジン、グルコン酸キニジン、ポリガラクツロン酸キニジン、酢酸フレカイニド、トカイニド、およびリドカイン)、抗関節炎薬(例えば、フェニルブタゾン、スリンダク、ペニシラミン、サルサラート、ピロキシカム、アザチオプリン、インドメタシン、メクロフェナメート、金チオリンゴ酸ナトリウム、ケトプロフェン、オーラノフィン、アウロチオグルコース、およびトルメチンナトリウム)、抗痛風薬(例えば、コルヒチン、およびアロプリノール)、抗凝固剤(例えば、ヘパリン、ヘパリンナトリウム、およびワルファリン・ナトリウム)、血栓溶解薬(例えば、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、およびアルテプラーゼ)、抗線溶薬(例えば、アミノカプロン酸)、血液レオロジー作用薬(例えば、ペントキシフィリン)、抗血小板薬(例えば、アスピリン)、抗けいれん薬(例えば、バルプロ酸、ジバルプロックスナトリウム、フェニトイン、フェニトインナトリウム、クロナゼパム、プリミドン、フェノバルビトール(phenobarbitol)、カルバマゼピン、アモバルビタール・ナトリウム、メトスクシミド、メタルビタール、メフォバルビタール、メフェニトイン、フェンスクシミド、パラメタジオン、エトトイン、フェナセミド、セコバルビトール・ナトリウム(secobarbitol sodium)、クロラゼプ酸二カリウム、トリメタジオン)、抗パーキンソン病薬(例えば、エトスクシミド)、抗ヒスタミン薬/かゆみ止め薬(例えば、ヒドロキシジン、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、マレイン酸ブロムフェニラミン、塩酸シプロヘプタジン、テルフェナジン、フマル酸クレマスチン、トリプロリジン、カルビノキサミン、ジフェニルピラリン、フェニンダミン、アザタジン、トリペレナミン、マレイン酸デキシクロルフェニラミン(dexchlorpheniramine maleate)、メトジラジン、および)、抗菌薬(例えば、硫酸アミカシン、アズトレオナム、クロラムフェニコール、パルミチン酸クロラムフェニコール、シプロフロキサシン、クリンダマイシン、パルミチン酸クリンダマイシン、リン酸クリンダマイシン、メトロニダゾール、塩酸メトロニダゾール、硫酸ゲンタマイシン、塩酸リンコマイシン、硫酸トブラマイシン、塩酸バンコマイシン、硫酸ポリミキシンB、コリスチメセートナトリウム(colistimethate sodium)、および硫酸コリスチン)、抗ウイルス薬(例えば、インターェロンα、β、またはγ、ジドブジン、塩酸アマンタジン、リバビリン、およびアシクロビル)、抗菌薬(例えば、セファゾリンナトリウム、セフラジン、セファクロール、セファピリンナトリウム、セフチゾキシムナトリウム、セフォペラゾンナトリウム、セフォテタン2ナトリウム、セフロキシムeアゾチル(cefuroxime e azotil)、セフォタキシムナトリウム、セファドロキシル一水和物、セファレキシン、セファロチンナトリウム、塩酸セファレキシン一水和物、セファマンドール・ナファート、セフォキシチンナトリウム、セフォニシドナトリウム、セフォラニド、セファドロキシル、セフラジン、およびセフロキシムナトリウムなどのセファロスポリン、アンピシリン、アモキシシリン、ペニシリンGベンザチン、シクラシリン、アンピシリンナトリウム、ペニシリンGカリウム、ペニシリンVカリウム、ピペラシリンナトリウム、オキサシリンナトリウム、塩酸バカンピシリン、クロキサシリンナトリウム、チカルシリン2ナトリウム、アゾシリンナトリウム、カルベニシリンインダニルナトリウム、ペニシリンGプロカイン、メチシリンナトリウム、およびナフシリンナトリウムなどのペニシリン、エチルコハク酸エリスロマイシン、エリスロマイシン、エリスロマイシン・エストレート、ラクトビオン酸エリスロマイシン、ステアリン酸エリスロマイシン、およびエチルコハク酸エリスロマイシンなどのエリスロマイシン、および塩酸テトラサイクリン、ドキシサイクリン・ハイクラート、および塩酸ミノサイクリンなどのテトラサイクリン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン)、抗感染薬(例えば、GM−CSF)、気管支拡張薬(例えば、塩酸エピネフリン、硫酸メタプロテレノール、硫酸テルブタリン、イソエタリン、イソエタリン・メシラート、塩酸イソエタリン、ビトルテロルメシラート(bitolterolmesylate)、塩酸イソプロテレノール、硫酸テルブタリン、酒石酸水素エピネフリン、硫酸メタプロテレノール、エピネフリン、および酒石酸水素エピネフリンなどの交感神経刺激薬、臭化イプラトロピウムなどの抗コリン薬、アミノフィリン、ジフィリン(dyphylline)、硫酸メタプロテレノール、およびアミノフィリンなどのキサンチン、クロモグリク酸ナトリウムなどの肥満細胞安定薬、ステロイド化合物およびホルモン(例えば、ダナゾール、テストステロン・シピオネート、フルオキシメステロン、エチルテストステロン、テストステロン・エナテート(testosterone enathate)、メチルテストステロン、フルオキシメステロン、およびテストステロン・シピオネートなどのアンドロゲン、エストラジオール、エストロピペート、抱合エストロゲンなどのエストロゲン、酢酸メトキシプロゲステロン、および酢酸ノルエチンドロンなどのプロゲスチン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、酢酸デキサメタゾンプレドニゾン、酢酸メチルプレドニゾロン懸濁液、トリアムシノロン・アセトニド、メチルプレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、トリアムシノロンヘキシアセトニド、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンシピオネート、プレドニゾロン、酢酸フルドロコルチゾン、酢酸パラメタゾン、テブト酸プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、およびコハク酸ヒドロコルチゾンナトリウムなどのコルチコステロイド、およびレボチロキシンナトリウムなどの甲状腺ホルモン)、血糖降下薬(例えば、グリブリド、クロルプロパミド、トルブタミド、およびトラザミド)、脂質低下薬(例えば、クロフィブラート、デキストロサイロキシン・ナトリウム、プロブコール、プラバスタチン(pravastitin)、アトルバスタチン、ロバスタチン、およびナイアシン)、抗潰瘍薬/逆流防止薬(例えば、ファモチジン、シメチジン、および塩酸ラニチジン)、制嘔吐剤/制吐薬(例えば、塩酸メクリジン、ナビロン、プロクロルペラジン、ジメンヒドリナート、塩酸プロメタジン、チエチルペラジン、およびスコポラミン)、および油溶性ビタミンを含む。これらの溶解性が低い化合物の代謝物は、本発明の方法により産生することができる。
【0047】
微生物
生体内変換を成功させるために適した微生物は、前記親化合物を代謝させる能力を有するシトクロムP450酵素などの微生物酵素の有無に基づき選択することができる。生体内変換法に有用と考えられる微生物は、シトクロムP450活性を有する細菌、真菌、および放線菌などである。これらの酵素を有する生物は、ISA247投与後の血液または尿に認められる代謝物と生体内変換または微生物変換試料を用いた場合に認められる代謝物を比較することで、経験的に同定することができる。例えば、CYP3A4は、テストステロンを水酸化することで6β−ヒドロキシテストステロンを産生する能力により特徴付けられるヒトP450酵素である。前記酵素はクロトリマゾールおよびナリンゲニンなどの化合物により阻害される。これはカルバマゼピン、フェノバルビタール、およびリファンピンにより誘導される。シトクロムP450活性を有する酵素を発現し、増殖培地で増殖する微生物は、テストステロンを前記培地に導入するときに6β−ヒドロキシテストステロンを産生するはずであり、この産生は既知の阻害薬および誘導薬の影響を受けるはずである。CYP3A4によって代謝される他の基質には、例えば、アセトアミノフェン、ジアゼパム、テオフィリン、ワルファリン、タキソール、およびニフェジピンを含む。同様に、これらの化合物が微生物を含む培地に導入されると、前記微生物が前記酵素を発現している場合、前記基質を代謝するはずである。
【0048】
既知の解明された酵素は、既知の解明された活性を有するものである。代謝化合物の構造を既知の酵素活性と比較することで、前記化合物の代謝活性を有する酵素を同定することが可能である。前記同定された酵素の有無について、微生物をスクリーニングすることも可能である。そのため、本発明の一観点では、生体内変換系での使用に適した微生物を同定する方法を提供しており、前記方法は、a)代謝される化合物の構造を既知の酵素活性と比較する工程と、b)望みの酵素活性を発現した酵素を同定する工程と、c)前記同定された酵素を発現した微生物を同定する工程と、d)生体内変換処理に前記同定された酵素を発現した微生物を使用し、前記化合物の代謝物を作成する工程とを有する。この方法を用いることで、化合物の代謝物を産生するために有用と考えられる微生物を同定することができる。
【0049】
或いは、遺伝子配列データを用い、微生物の遺伝子配列と、例えばCYP3A4などのシトクロム酵素をコードした既知の哺乳類遺伝子の配列とを比較することで、有用と考えられる微生物を同定することができる。適当な遺伝子配列を有し、適切な条件で増殖させた微生物は、目標酵素を発現しているはずである。対照化合物に加え、特定のヒトP450酵素を阻害または誘導する化合物は、両方の系で検討することができる。
【0050】
特定のシトクロム酵素によって代謝されることが知られている薬物には、(1)CYP1A2により分解されるアセトアミノフェン、芳香族アミン、カフェイン、エストラジオール、イミプラミン、フェナセチン、テオフィリン、およびワルファリン、(2)CYP2D6により分解されるアミトリプチリン、ブフロロール(bufurolol)、カプトプリル、クロゼピン(clozepine)、デブリソキン(debrisopuine)、フレカイニド、フルオキセチン、ハロペリドール、メトプロロール、メキシレチン、スパルテイン、チモロール、トモキセチン、プロプラノロール、およびコデイン、(3)CYP3A4により分解されるアセトアミノフェン、ジアゼパム、アミオダロン、ベンズフェタミン、カルバマゼピン(carbemazepine)、シクロスポリン、ジギトキシン、ジルチアゼム、エリスロマイシン、エトポシド(etopiside)、フルタミド、イミプラミン、リドカイン、ロラチジン、ニフェジピン、ミダゾラム、レチノイン酸、ステロイド、タモキシフェン、タキソール、テルフェナジン、THC、ベラパミル、およびワルファリンを含む。
【0051】
CYP3A4酵素を発現し、生体内変換法に有用と考えられる微生物には、Actinoplanes sp.(例えば、ATCC番号53771)、Streptomyces griseus(例えば、ATCC 13273)、Saccharopolyspora erythraea(例えば、ATCC番号11635)、およびStreptomyces setonii(例えば、ATCC番号39116)を含むが、これだけに限らない。シトクロムP450酵素を発現することができる他の有用な微生物には、Amycolata autotrophica(例えば、ATCC番号35204)、Streptomyces californica(例えば、ATCC番号15436)、Saccharopolysora hirsute(例えば、ATCC番号20501)、Streptomyces lavandulae(例えば、ATCC番号55209)、Stretomyces aureofaciens(例えば、ATCC番号10762)、Streptomyces rimosus(例えば、ATCC番号28893)、Bacillus subtillis(例えば、ATCC番号55060)、およびNocardia asteroids(例えば、ATCC番号3318)、Saccharomyces cerevisiae(例えば、ATCC番号20137またはATCC番号64667)、Aspergillus nidulans(例えば、ATCC番号32353)、Cunninghamella echinulata var. elegans(例えば、ATCC番号36112)、Rhizopus stolonifer(例えば、ATCC番号6227b)、Candida apicola(例えば、ATCC番号96134)、Coprinus cireneus(例えば、ATCC番号MYA−727、MYA−726、MYA−728、MYA−729、MYA−730、MYA−731)を含む。
【0052】
適切な培養時間、培養条件、抽出および精製法の選択は、当業者に周知である。選択した微生物の増殖は、例えば炭素および窒素などの栄養素、緩衝系、および微量元素を含む適切な増殖培地を利用し、増殖を促すpH、温度、および給気条件を利用し、当業者が達成することができる。典型的な炭素供給源には、グルコース、マルトース、デキストリン、でんぷん、ラクトース、スクロース、糖蜜、大豆油などを含む。適切な窒素供給源には、大豆ミール、綿実ミール、魚粉、酵母、酵母エキス、ペプトン、米ぬか、肉エキス、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウムなどを含む。リン酸塩、塩化ナトリウム、炭酸カルシウムなどの無機塩類を添加することもできる。前記微生物の増殖ステージによって、異なる増殖培地を使用することもある。
【0053】
Saccharopolyspora erythraea(例えば、ATCC 11635)、Saccharopolysora hirsute(例えば、ATCC 20501)、Amycolata autotrophica(例えば、ATCC 35204)によるシクロスポリンおよびシクロスポリン誘導体の生物変換での使用に適した、微生物を増殖させるための典型的な条件および培地は、Corconan,Methods in Enzymology 43:487−498(1975)、米国特許第5,124,258号、第6,043,064号、および第6,331,622号明細書に提供されている。Actinoplanes sp.(例えば、ATCC番号53771)の増殖条件は、米国特許第5,270,187号明細書に例示されている。
【0054】
微生物によるマクロライドのその水酸化および/または脱メチル化代謝物への生物変換のための典型的な増殖条件には、1)米国特許第5,268,370号に例示され、Actinomycete sp.(Merck Culture Collection MA 6474;ATCC番号53828)を用いた、L−679,934(FK−506)からその代謝物L−683,519への脱メチル化について開示された増殖条件、および2)米国特許第5,202,258号に提供された増殖条件を用いた、Actinoplanes sp.(ATCC番号53771)によるL−679,934からL−682,993またはL−683,590からL−683,742への脱メチル化を含む。Actinoplanes spp. ATCC 53771、Saccharopolyspora erthyreae ATCC 11653、Streptomyces lavandulae ATCC 55209、Stretomyces aureofaciens ATCC 10762、Streptomyces rimosus ATCC 28893、Bacillus subtillis ATCC 55060、およびNocardia asteroids ATCC 3318を用い、ラパマイシンの水酸化代謝物(例えば、24−OHラパマイシン)および/または脱メチル化代謝物(例えば、39−O−脱メチル化ラパマイシン)を産生することができる(Kuhnt,M.,et al,1997,Enzyme and Microbial Technology 21:405−412)。
【0055】
界面活性剤
本発明の方法の実施形態での使用に適した界面活性剤は、微生物の増殖環境に導入する前の加圧滅菌処理に耐えることができる。適切な界面活性剤は生体適合性界面活性剤であり、これだけに限らないが、例えばPEG 300、PEG 400、PEG 600(BASFのルトロール(登録商標)E 300、ルトロール(登録商標)E 400、ルトロール(登録商標)E 600、ルトロール(登録商標)F 127、およびルトロール(登録商標)F 68としても知られる)といったポリエチレングリコールなどの非イオン性界面活性剤、ラブラゾール(登録商標)(Gatte Fosse、フランスCedex)などのカプリロカプロイルマクロゴール−8グリセリド、Tween(登録商標)20、Tween(登録商標)21、Tween(登録商標)40、Tween(登録商標)80、Tween(登録商標)80K、Tween(登録商標)81、およびTween(登録商標)85(ICI Americas Inc.、ニュージャージー州Bridgewater、Aldrich Chemical Company Inc.(ウィスコンシン州Miwaukee)より入手)などのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン(BDH Fine Chemicals、オンタリオ州Toronto)、ヒマシ油(Wiler Fine Chemicals Ltd、オンタリオ州London)、ミリスチン酸イソプロピル(Wiler Fine Chemicals Ltd、オンタリオ州London)、クレモホール(登録商標)EL(Sigma Chemical、ミズーリ州St Louis)、およびPluronics(登録商標)F127およびPluronics(登録商標)L108(BASF)などのポロキサマーを含む。その他の使用できる界面活性剤には、チロキサポール[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールポリマーとホルムアルデヒドおよびオキシラン]などの潤滑剤または乳化剤として作用することができる界面活性剤、BASFのクレモホール(登録商標)A25、クレモホール(登録商標)A6、クレモホール(登録商標)EL、クレモホール(登録商標)ELP、クレモホール(登録商標)RHおよびRhone Poulenc CoのAlkamuls EL620などのポリエトキシル化ヒマシ油、HCO−40などのポリエトキシル化硬化ヒマシ油、およびポリエチレン9ヒマシ油を含む。
【0056】
使用できる他の界面活性剤には、ポリソルベート20、ポリソルベート60、およびポリソルベート80、クレモホール(登録商標)RH、ポロキサマー、Pluonics L10、L31、L35、L42、L43、L44、L61、L62、L63、L72、L81、L101、L121、L122、PEG 20アーモンドグリセリド、PEG 20トウモロコシグリセリドなどを含む。適当な界面活性剤には、アルキルグルコシド、アルキルマルトシド、アルキルチオグリコシド、ラウリルマクロゴールグリコシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリグリセロール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリド、ポリオキシエチレンステロール、ポリオキシエチレン植物油、ポリオキシエチレン硬化植物油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリグリセロール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリド、ポリオキシエチレン植物油、ポリオキシエチレン硬化植物油、PEG−10ラウレート、PEG−12ラウレート、PEG−20ラウレート、PEG−32ラウレート、PEG−32ジラウレート、PEG−12オレアート、PEG−15オレアート、PEG−20オレアート、PEG−20ジオレアート、PEG−32オレアート、PEG−200オレアート、PEG−400オレアート、PEG−15ステアレート、PEG−32ジステアレート、PEG−40ステアレート、PEG−100ステアレート、PEG−20ジラウレート、PEG−25グリセリルトリオレアート、PEG−32ジオレアート、PEG−20グリセリルラウレート、PEG−30グリセリルラウレート、PEG−20グリセリルステアレート、PEG−20グリセリルオレアート、PEG−30グリセリルオレアート、PEG−30グリセリルラウレート、PEG−40グリセリルラウレート、PEG−40パーム核油、PEG−50硬化ヒマシ油、PEG−40ヒマシ油、PEG−35ヒマシ油、PEG−60ヒマシ油、PEG−40硬化ヒマシ油、PEG−60硬化ヒマシ油、PEG−60トウモロコシ油、PEG−6カプレート/カプロン酸グリセリド、PEG−8カプレート/カプロン酸グリセリド、ポリグリセリル−10ラウレート、PEG−30コレステロール、PEG−25フィトステロール、PEG−30大豆ステロール、PEG−20トリオレート、PEG−40ソルビタンオレアート、PEG−80ソルビタンラウレート、ポリソルベート20、ポリソルベート80、POE−9ラウリルエーテル、POE−23ラウリルエーテル、POE−10オレイルエーテル、POE−20オレイルエーテル、POE−20ステアリルエーテル、トコフェリルPEG−100コハク酸塩、PEG−24コレステロール、ポリグリセリル−10オレアート、スクロースモノステアレート、スクロースモノラウレート、スクロースモノパルミテート、PEG 10−100ノニルフェノール類、ポロキサマーのPEG 15−100オクチルフェノール類、PEG−35ヒマシ油、PEG−40硬化ヒマシ油、PEG−60トウモロコシ油、PEG−25グリセリルトリオレート、PEG−6カプレート/カプロン酸グリセリド、PEG−8カプレート/カプロン酸グリセリド、ポリソルベート20、ポリソルベート80、トコフェリルPEG−1000コハク酸塩、およびポロキサマーのPEG−24コレステロールなどポリオールの反応混合物も含む。さらに、アーモンドオイル、ババス油、ボラージオイル、ブラックカラント種子油、キャノーラ油、ココナッツ油、トウモロコシ油、綿実油、月見草油、ブドウの種から取った油、ラッカセイ油、からし油、オリーブオイル、パーム油、パーム核油、ピーナッツ油、菜種油、ベニバナ油、ゴマ油、サメ肝油、大豆油、ひまわり油、硬化ヒマシ油、硬化ココナッツ油、硬化パーム油、硬化大豆油、硬化植物油、硬化綿実油およびヒマシ油、半硬化大豆油、大豆油、グリセリルトリカプロエート、グリセリルトリカプリレート、グリセリルトリカプレート、グリセリルトリウンデカノエート、グリセリルトリラウレート、グリセリルトリオレート、グリセリルトリリノレート、グリセリルトリリノレネート、グリセリルトリカプリレート/カプレート、グリセリルトリカプリレート/カプレート/ラウレート、グリセリルトリカプリレート/カプレート/リノレート、グリセリルトリカプリレート/カプレート/ステアレート、飽和ポリグリコール化グリセリド、リノール酸グリセリド、カプリル酸/カプリン酸グリセリドなどのオイルを使用することもできる。さらに、界面活性剤および/またはオイルおよび/またはアルコールの混合物を使用することもできる。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態では、活発に増殖している微生物培養液に添加する前に、選択した親油性生体異物をアルカノールおよび適切な非イオン性界面活性剤と混合する。前記親化合物をアルコールと混合する場合、前記アルコールはエタノールとすることができる。さらに適切なアルコールには、メタノール、イソプロパノール、1−プロパノール、および当該分野で周知の他の適切なアルコールを含む。
【0058】
溶媒
本発明のいくつかの実施例では、前記生体異物化合物を微生物培養液に添加する前に、溶媒と混合する。前記溶媒は、前記生体異物化合物と混合する前に、殺菌されることもある。選択的に、界面活性剤も前記生体異物化合物−溶媒混合物に添加される。本発明に適した溶媒は、前記微生物の増殖および代謝を抑制しない、いかなる溶媒とすることもできる。前記溶媒は、非極性、非プロトン性極性、またはプロトン性極性とすることができる。例えば、前記溶媒には、ベンゼン、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルt−ブチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール、塩化メチレン、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタンなどのハロゲン含有溶媒、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルホスホロトリアミドなどの他の溶媒を含む。前記溶媒はDMSOではないことが好ましい。
【0059】
以下の実施例は本発明を説明するために提供され、いかなる方法でも、本発明の範囲を制限するものとして解釈されない。本発明は、特にその好適な実施形態を参照して示され、説明されるものであるが、添付の請求項で定義された本発明の観点と範囲から逸脱せずに、本発明に様々な形態および詳細の変更を加えることができることは、当業者が理解することとする。
【0060】
実施例
以下の実施例では、次の略語は次の意味を有する。定義されていない略語は、一般に受け入れられた意味を有する。
℃=摂氏温度
hr=時間
min=分
secまたはS=秒
μM=マイクロモル
mM=ミリモル
M=モル濃度
ml=ミリリットル
μl=マイクロリットル
mg=ミリグラム
μg=マイクログラム
mol=モル
pmol=ピコモル
ATCC=アメリカンタイプカルチャーコレクション
PBS=リン酸緩衝食塩水
CSA=シクロスポリンA
TDM=治療量モニタリング
LC=液体クロマトグラフィー
MS=質量分析
PEG=ポリエチレングリコール
一般的な材料および方法
液体クロマトグラフィー(LC)の条件
液体クロマトグラフィー(LCまたはHPLC)では、長鎖炭化水素基を多孔質シリカ基質に化学的に結合することで形成された固定相を有するカラム、つまりWaters Symmetry C8、2.1×50mm、3.5μm分析カラム(Waters cat# WAT 200624)と、Perisorb RP−8(Upchurch Scientific cat# C−601)を充填したガードカラム2×20mm(Upchurch Scientific cat# C−130B)を使用した。前記LCプログラムで利用された溶媒の割合と流速を表2に示す。
【0061】
【表2】

【0062】
質量分析(MS)の条件
質量分析では、Applied Biosystems/MDS Sciex API3000(分析ソフトウェアv1.2)機を用いた。ランタイムは15分、注入量は5μL、ガードカラム温度および分析カラム温度は60℃とした。手動設定は以下の通りである。ターボイオンスプレーは8000、ターボイオンスプレー水平設定は+4、ターボイオンスプレー外側設定は10とした。前記Sciex機は、表3に示したパラメーターで設定した。
【0063】
【表3】

【0064】
表4は、イオンおよびイオン特異的な機器設定を示している。
【0065】
【表4】

【実施例1】
【0066】
全血からのISA247代謝物の調整
ISA247(シス:トランスISA247の50:50混合物)投与後のヒトから全血を採取した。tertブチル−メチル−エーテル(またはメチルtertブチルエーテル、MTBE)を用い、全血からISA247およびその代謝物を抽出し、乾燥、エタノールに再溶解した。2mLのMTBE(cat.No.7001−2;Caledon)を200uLの血液に添加し、10分間振盪、2分間テーブルトップ型遠心分離機で遠心分離させた。上部のMTBE層を除去し、真空濃縮した。この残渣を200uLのメタノールに再溶解した。ミクロソーム試料および生体内変換試料の抽出と同様、胆汁と尿の抽出を行うことができる。抽出したら、代謝物をHPLC−MS、NMR、または本分野で既知の他の方法により特徴付けることができる。図3は、一般的な材料および方法で説明した通りに行われたLC−MSの結果を示している。全血のISA247代謝物には主に3群あり、ジオール、水酸化、脱メチル化代謝物である。
【実施例2】
【0067】
イヌ肝ミクロソーム試料によるISA247代謝物の産生
イヌミクロソームの調整
イヌ肝ミクロソームは以下の方法で調整した。肝臓を取り出した後、1.15%塩化カリウム(KCl)で灌流し、小片に角切りにし(約25g)、Polytronホモジナイザーを用い、15,000rpmで3〜5分、大きな塊が冷却した粉砕用緩衝液(0.1Mリン酸緩衝液pH 7.4、4℃、緩衝液:肝臓の比1:1)中に分解するまで粉砕することでホモジネートを生成し、これには肝ミクロソームなどの膜結合性細胞小器官が含まれた。前記粒子状物質から上清をデカント後、前記上清を90分間、100,000×gで遠心分離し、ペレットと上清を得た。タンパク質含有量は、Lowryのタンパク質測定により決定した。このミクロソーム試料のタンパク質濃度は約23.2mg/mLであった。酵素活性の損失を避けるため、ミクロソームを4.0または6.0mLずつ−80℃で保存し、凍結融解の繰り返しを避けた。
【0068】
以下の成分を257mL三角フラスコに徐々に加えた。57.3mgのNADP、254mgのグルコース−6−リン酸、および23.0mgのNADPHを6.0mLのリン酸緩衝液(pH 7.4に調整)に添加した。次に、2.0mLの5.0mM MgCl、および6.0mLのグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(10単位/mL、CALBIOCHEM、カリフォルニア州San Diegoから入手可能、Cat.No.346774)を前記溶液に添加した。最後に、10mLのリン酸緩衝液(pH 7.4)を添加した。前述の通り調整した用量6mLのイヌ肝ミクロソームを前記フラスコに添加した後、ISA247を添加し、環境を制御した恒温器/振盪器で37℃、2時間、250rpmにて培養した。2時間の時点で、500μLの2M HClを添加し、前記反応を停止した。
【0069】
次に、この方法で産生される代謝物を有機溶媒で抽出し、さらに高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)で分離した。前記代謝物は、さらにエレクトロスプレー質量分析(MS)およびNMRで特徴を決定した。得られた代謝物のプロフィール(データは示されていない)は、ヒト全血と同等であった。しかし、前記イヌミクロソームのジオールははるかに少なかった。
【実施例3】
【0070】
Saccharopolyspora erythraeaを用いた生体内変換によるISA247代謝物の産生
この実施例では、ヒトシトクロムP450ミクロソーム酵素に相当する微生物の酵素を含む微生物を利用した生体内変換系と、前記微生物の活発な増殖に適した培地について説明する。前記生体内変換系に添加する前に、水に難溶性の親化合物をエタノールおよび界面活性剤と混合した。この実施例では、ISA247のエタノール溶液をTWEEN(登録商標)40と混合し、次にSaccharopolyspora erytheraea(ATCC 11635)を含む生体内変換系に添加した。
【0071】
開始培養液は以下の通り調整した。酵母エキス4g/L、麦芽エキス10g/L、デキストロース4g/L、および寒天2g/Lを含む、ISP2斜面培養の試験管15本(16×26mm、各6ml)を調整した。これらの成分を最高1リットルの脱塩水中で混合し、必要に応じてNaOHでpHを7に中和した。前記培地は30分間100℃で滅菌した。前記試験管は使用するまで4℃で保存した。各斜面培地にSaccharopolvspora erythraea(ATCC番号11635)を播種した。播種した斜面培地を滅菌条件下、室温で3週間培養した。
【0072】
前培養液を第I相培地に移した。第I相培地は10g/Lデキストリン、1g/Lグルコース、3g/L牛肉エキス、10g/L酵母エキス、5g/L硫酸マグネシウム、および400mg/Lリン酸カリウムで調整した。これらの成分を最高1リットルの脱塩水中で混合し、必要に応じてNaOHでpHを7に中和し、2つのバッフル付き250mL培養フラスコそれぞれに50mLずつ入れた。前記培地は30分間100℃で滅菌した。Saccharopolyspora erythraeaを含む斜面培地試験管に、前記培地5mLを入れた。前記斜面培地表面の細胞をこすり落とし、前記懸濁液2.5mLを各フラスコに入れた。前記フラスコを27℃でLabline恒温器に入れ、250rpmで3日間(72時間)振盪した。
【0073】
第I相フラスコの内容物を3300rpmで5分間遠心分離し、上清をデカントすることで、第I相培地から第II相培地にSaccharopolyspora erythraeaを移し、ペレットを得た。5mLの第II相培地を前記ペレットに添加し、前記試験管をボルテックス、次に3300rpmで4分間遠心分離した。前記上清を再びデカントした。前記ペレットは第II相培地に再懸濁した。前記懸濁液をバッフル付き培養フラスコ中、第II相培地50mLに添加した。
【0074】
第II相培地には、10g/Lグルコース、1g/L酵母エキス、1g/L牛肉エキス、および11.6g/Lの3−N−モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)緩衝液を含めた。これらの成分は1リットルまでの脱イオン水に混合し、次に50mLを2つのバッフル付き培養フラスコ(250mL)に分配した。5M NaOHでpHを7.0に調節後、前記培地を30分間100℃で加圧滅菌処理し、その後冷却した。TWEEN(登録商標)40はISA247およびエタノールと混合する前に加圧滅菌処理した。
【0075】
ISA247(EおよびZ異性体の約50/50混合物4mg)を95%エタノール(0.1ml)に溶解し、次に0.4mlのTWEEN(登録商標)40(ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、Cat.No.P1504、Sigma−Aldrich、ミズーリ州St.Louis)と混合した。前記親化合物−界面活性剤の混合物は、次に前記第II相培地中、Saccharopolyspora erythraeaに添加した。ゼロ時間のサンプルを入手、凍結した。各フラスコのキャップを閉め、27℃でInnova恒温器に入れ、170rpmで振盪しながら、120時間培養した。
【0076】
第2のサンプルは前記第II相培地から入手した。前記ゼロ時間のサンプルおよび前記第2のサンプルは、tert−ブチル−メチルエーテル(cat.No.7001−2、Caledon)により抽出した。前記抽出代謝物をメタノール(HPLCグレード)に再溶解し、前述のLC−MSで分析した。図4に示す通り、この方法で得られた代謝物プロフィールは、ヒト全血から得られた代謝物プロフィールと同等である(実施例1を参照)。前記生体内変換混合物を分析した際、7種類の代謝化合物があることが分かり、それはIM4n(アミノ酸−4でN−脱メチル化されたISA247代謝物)、IM9(アミノ酸−9で水酸化されたISA247代謝物)、IM4(アミノ酸−4で水酸化されたISA247代謝物)、IM1−c−1(表1参照)、IM1−d−1(表1)、IM1−d−2(表1)、IM1−d−3(表1)であった。従って、ヒトの血液において明らかとなったISA247の代謝物8種類中7種類が、この生体内変換系で産生された。
【実施例4】
【0077】
Saccharopolyspora erythraeaを用いた生体内変換において前記界面活性剤を変化させる影響
様々な界面活性剤の影響を検討するため、Saccharopolyspora erythraea(ATCC番号11635)の活発に増殖する第II相培養液を前述の通り調整した。エタノール(0.33ml)中ISA247(56mg、EおよびZ異性体の50/50混合物)を含む試験管7本を調整した。界面活性剤(試験管1本につき0.67ml)を以下の通り、各試験管に添加した。
試験管1−PEG 400(ポリエチレングリコール400、Carbowax−Fisher Scientific、ニュージャージー州FairLonn);
試験管2−ヒマシ油(Wiler Fine Chemicals Ltd、オンタリオ州London);
試験管3−ミリスチン酸イソプロピル(Wiler Fine Chemicals Ltd、オンタリオ州London);
試験管4−グリセリン(BDH Fine Chemicals、オンタリオ州Toronto、ロット番号120343/73865);
試験管5−クレモホール(登録商標)EL(Sigma Chemical、ミズーリ州St Louis);
試験管6−ラブラゾール(登録商標)(Gatte Fosse、フランスCedex);および
試験管7−TWEEN(登録商標)4 (Aldrich Chemical Company Inc.、ウィスコンシン州Milwaukee)。
【0078】
前記親化合物−界面活性剤混合物を活発に増殖しているSaccharopolyspora培養液に添加し、ゼロ時間のサンプルを採取した。27℃で振盪しながら5日間培養後、サンプルを入手、抽出し、前記代謝物を実施例4に示す通り定量した。図3および4に示したものと同等なHPLCピークの曲線下面積は、存在する代謝物量の指標として測定した。前記HPLCピークは、IM4nと同定されたN−脱メチル化代謝物1種類、IM4およびIM9と同定された水酸化代謝物2種類、IM1−c−1と同定された環状代謝物1種類、およびジオール代謝物3種類、つまり、IM1−d−1、IM1−d−2、およびIM1−d−3と同定された前記ISA247化合物の1アミノ酸で形成されたジオールに対応した(表1を参照)。7種類の前記界面活性剤は、前記生体内変換試料の代謝物産生を亢進させる活性が、すべて等価ではなかった。図5に示す通り、前記生体内変換試料にグリセリンまたはPEG 400を添加すると、産生される代謝物の量が大きく増加した。しかし、ヒマシ油、ミリスチン酸イソプロピル、クレモホール(登録商標)、ラブラゾール(登録商標)、TWEEN(登録商標)40すべてを添加すると、界面活性剤なしの試料中での代謝物産生よりも、前記生体内変換試料中での代謝物の産生が増加した(図示せず)。
【実施例5】
【0079】
様々な微生物を用いた生体内変換
様々な微生物がISA247からのISA247代謝物産生について評価され、これにはCurvularia lunata(University of Alberta Microfungal Collection and Herbarium(UAMH)9191、ATCC 12017)、Cunninghamella echinulata var. elegans(UAMH 7370、ATCC 36112)、Curvularia echinulata var. blakesleena(UAMH 8718、ATCC 8688a)、Cunninghamella echinulata var. elegans(UAMH 7369、ATCC 26269)、Beauvaria bassiana(UAMH 8717、ATCC 7159)、Actinomycetes(ATCC 53828)、Actinoplanes sp.(ATCC 53771)、Cunninghamella echinulata(UAMH 4144、ATCC 36190)、Cunninghamella echinulata(UAMH 7368、ATCC 9246)、Cunninghamella bainiere(echinulata)(UAMH 4145、ATCC 9244)、およびSaccharopolyspora erythraea(ATCC 11635)が含まれる。
【0080】
これらの微生物について、代謝物の変換収率(産生された既知のISA247代謝物の量)および代謝多様性(産生された異なるISA247代謝物の数)をスクリーニングした。前記微生物は第I相で増殖させ、第II相でISA247とともに培養した。ISA247を前記発酵培地に添加後、前記培地からサンプルを採取し、ヒトの標準的なISA247代謝物プロフィールと対比してLC−MSで分析し、回収した代謝物を同定および定量した。96時間の生体内変換サイクルで各菌株を一次検査した後、改良された培地組成を選択するため、代謝物の変換と代謝多様性が最も高い組み合わせの菌株2種類を、異なる培地組成を持つ第III相培地で再度検討した。
【0081】
第I相/第II相の方法
検討した各微生物は、培養液特異的な寒天斜面培地で管理した。汚染を避けるため、すべての斜面培地は1ヵ月前に調整した。調整した寒天培地は123℃および分圧360mmHgで58分間加圧滅菌処理し、若干冷却し、6mLを滅菌した16×125mm培養管に正確に量った。前記寒天を前記培養管に入れた後、前記培養管を斜面に置いて斜面培地を作り、前記寒天が固まるまで冷却、ラベルを付け、27℃で1〜2週間培養した。ATCC 11635およびATCC 53771は、ISP寒天(0.4%酵母エキス、1%麦芽エキス、0.4%デキストロース、および2%粒状寒天)を用いて胞子形成した。ATCC 53828、UAMH 8717、およびUAMH 8718は、ジャガイモデキストロース寒天(PDA、蒸留水中3.9%)を用いて胞子形成した。UAMH 4145、UAMH 7369、UAMH 7370、およびUAMH 9191は、穀類斜面培地(10%混合穀類、乾燥、好ましくは乳児用栄養物、2%粒状寒天。前記穀類は滅菌の前後で混合し、前記穀類が凝集し、前記斜面培地で寒天の分配が不十分になるのを防ぐ)で胞子形成した。2週間培養後、各微生物を微生物特異的な寒天に播種し、27℃に戻した。前記斜面培地が完全にコロニーで覆われてから、前記斜面培地はできれば第I相で直ちに使用するか、必要であれば4℃に保存した。
【0082】
その後、2mLの滅菌第I相培地(ISP種培養液を含む。1%デキストリン、1%グルコース、0.27%牛肉エキス、1%酵母エキス、0.004%硫酸マグネシウム、および0.036%二リン酸カリウム、pH 7.0)を、検討対象の微生物を含む原料斜面培地に添加した。滅菌接種ループを用い、前記コロニーを取り除き、ボルテックスした後、得られた懸濁液を、滅菌した250mLのバッフル付き培養フラスコに含まれる、50mLの滅菌第I相培地に添加した。各フラスコは96時間培養し、バイオマスを増加させてから、第II相でISA247を添加した。
【0083】
第II相に移すバイオマス(生物量)を調整するため、前記細胞を十分に洗い、第I相の残渣を取り除いた。第I相の内容物を無菌的に50mL遠心分離用円錐管に移し、5分間3300rpmで遠心分離し、デカントして上清を取り除いた。前記細胞は過剰な第II相培地5mL(3.65% MOPS、0.31%酵母エキス、3.14%グルコース、および0.31%牛肉エキス、pH 7.0)で洗い、再度3300rpmで5分間遠心分離し、その後、前記上清をデカントし、調整直後の第II相培地5mLを添加した。前記得られた混合物を十分ボルテックスし、無菌条件下、250mLのバッフル付き培養フラスコに入った50mLの無菌第II相培地に定量的に移した。ISA247の一部(0.5mL、56mg/mLのISA247(主にトランス型)の33.75%エタノール(95%):66.25%グリセロール溶液)を前記培地に添加し、前記混合物を激しく振盪した。一定分量のサンプルを採取し(0.5mL、96時間の第II相発酵中、12時間間隔で採取)、LC−MS分析まで−80℃で保存した。96時間後に発酵を修了した。
【0084】
第III相
第III相では、ATCC 53771およびATCC 11635株を種培養液として培地C(2%グルコース、2%デンプン、0.5%酵母エキス、2%大豆タンパク質、0.32% CaCO、0.25% NaCl)において96時間培養した後、個別の同型試験で、無菌的に培地3(2%グリセロール、0.5%ペプトン、0.5%酵母エキス、0.2%牛肉エキス、0.1%(NHHPO、0.1% CaCO、0.3% NaCl、0.03% MgSO−7HO、pH 7.0)または培地16(2%グルコース、1%グリセリン、1%ペプトン、1%肉エキス、2%大豆タンパク質、0.5% CaCO、0.5% NaCl、pH 7.0)に移した。前記発酵培地の粘性が一貫しているため、LC−MSのサンプルを採取する場合は注意した。
【0085】
【表5】

【0086】
LC−MSによる代謝物分析
−80℃で保存したサンプルを解凍し、16×10mmの培養管にラベルを付け、分析するサンプルを示した。0.5mLの各サンプルから200μLずつ取り除き、内部標準として25uLの1mg/mLCsA(シクロスポリンA)溶液を添加した。2mLのHPLC−グレードメタノールを各サンプルに添加し、前記サンプルにキャップを付け、20分間振盪した。前記サンプルは3300rpmで1分45秒間遠心分離した。前記上清を清潔でラベルを付けた16×10mm培養管にデカントし、減圧濃縮し、有機溶媒を除去した。乾燥し、前記代謝物と親薬物を含む層を200μLのHPLC−グレードメタノールに再溶解し、前記サンプルは定量的にオートサンプラーバイアルに移した。サンプルを15分間脱イオン水と0.01%酢酸/酢酸ナトリウムで測定し、12分間m−TBE(メチルtert−ブチルエーテル)およびHPLC−グレードメタノールを増量した勾配を開始した。
【0087】
図6は、ヒト参加者からプールしたサンプルの典型的な代謝物について、質量分析シグナルと保持時間を対比したグラフである。表6は、認められたイオン質量、対応する定量可能なISA247代謝物、およその保持時間をまとめている。定量されたイオン質量は、1223、1237、1239、1253、1255、1267、および1271などであった。ここでは2つのジオール(IM1−d−1およびIM1−d−4)が検出されたが、実施例1では3つのジオール(IM1−d−1、IM1−d−2、およびIM1−d−3)が検出された点に注意すること。この相違の理由は、ISA247のトランス体はIM1−d−1およびIM1−d−4に代謝されるが、ISA247のシス体はIM1−d−2およびIM1−d−3に代謝されるためである。実施例1で使用された親化合物はシス:トランスの50:50混合物であり、この実施例の親化合物は主にトランス−ISA247であったため、前記代謝プロフィールは前記ジオールと異なっていた。
【0088】
【表6】

【0089】
相対変換率(%)は、検出された定量化可能な各代謝物のピーク曲線下面積(AUC)と内部CsA標準の曲線下面積の比から、以下の式により計算した。
変換率(%)=(代謝物AUC)/(CsA内部標準AUC)×100
結果
生体内変換96時間後の代謝多様性を表7にまとめた。チェックマークは、定量可能な量の代謝物が産生されたことを示している。表8は、検討された各微生物が産生した各代謝物の量を示している。
【0090】
【表7】

【0091】
【表8】

【0092】
従って、本実験で検討した微生物の中では、ATCC 11635が最も大きな変換率と代謝多様性を示した。ATCC 11635サンプルでは、既知のヒトISA247代謝物8種類が検出された。UAMH 4145は8種類中6種類の代謝物を産生した。大量のIM4nを発生させる(6.66%)という固有の能力があるため、研究室で使用されることが多いATCC 53771は、8種類中5種類のヒト代謝物を産生した。ATCC 53828は8種類中4種類の代謝物を産生し、これらの代謝物産生はそれぞれ少量であったが、まれな代謝物1239が産生された。UAMH 7369およびUAMH 7370は、それぞれ4種類の代謝物を産生した。UAMH 9191およびUAMH 8718は、それぞれ6種類の代謝物を産生した。UAMH 8717は3種類の代謝物を産生した。
【0093】
微生物の選択において考察される別の要因は、ISA247には「まれな」代謝物があるという点であった。「まれである」とは、IM1−d−4、1239、および1255などATCC 11635が大量に産生しない代謝物と定義される。IM1−d−4はATCC 11635、UAMH 8717、およびUAMH 9191に存在するが、ATCC 11635により最も大量に産生された。微生物株ATCC 11635、ATCC 53771、ATCC 53828、UAMH 7370、UAMH 8717、UAMH 8718、UAMH 9191はすべて1239を産生した。最も大量に産生する微生物はUAMH 8717であった。イオン1255に対応する代謝物は、ATCC 11635、UAMH 4145、ATCC 53771、UAMH 8717により産生され、変換率が最も高いのはATCC 11635であった。
【0094】
この実験の第III相では、ATCC 11635およびATCC 53771が培地3および培地16で培養され、前記培地の効果を比較した。図7は、ATCC 11635の結果を示している。培地3および培地16は、IM1−d−1、IM1−d−4、およびIM1−c−1を除き、各代謝物を同量ずつ産生した。IM1−d−1の産生は培地3で減少し、培地16では検出可能なレベルで存在していなかった。IM1−d−4の産生は培地3および培地16のいずれにおいても減少した。IM1−c−1の産生は培地3で10%増加した。図8は、ATCC 53771中のISA247代謝物の産生における、培地組成の影響を示したグラフである。IM1−d−1はISP2培地を用いた場合にのみ検出され、IM9およびIM4は培地3および培地16を用いた場合にのみ検出された。IM1−d−4を除き、ほとんどの前記代謝物は培地3および培地16を用いることで増量した。従って、前記微生物の増殖培地を変更し、生体内変換の作用を最適化することができる。
【実施例6】
【0095】
Beauvaria bassianaを用いた生体内変換における界面活性剤と溶媒の影響
実施例5では、Beauvaria bassiana(UAMH 8717)のみがわずかにISA247代謝物を産生した。界面活性剤または溶媒によって産生プロフィールを変化させることができるか否かを検討するため、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびTWEEN(登録商標)40を(実施例5で使用した)グリセロールと比較した。0.5mLの56mg/mL ISA247溶液(33.75%エタノール中(95%)、グリセロールの代わりに66.25% DMSOまたはTWEEN(登録商標)40)を50mLの培地に添加した。同じ第I相および第II相培地と実施例の方法を用いた。
【0096】
図9に示す通り、界面活性剤としてグリセロールを使用すると、IM1−d−4、1239、および1255が形成し、DMSOではIM1−d−1、IM4n、IM4が形成し、TWEEN(登録商標)40ではIM1−d−1、IM1−d−4、1255、IM4n、IM9、およびIM4が形成した。変換量も劇的に変化した。結果的に、生体内変換結果は、前記親化合物を到達させるために使用される溶媒または界面活性剤を変更することで最適化することができ、当業者が特定の溶媒、界面活性剤、培地を選択し、代謝物の組み合わせに含まれる特定の代謝物の産生を増加させることができる。
【0097】
本明細書で引用された文献、特許、特許出願書類はすべて、それぞれ個別の文献、特許出願書類、または特許が具体的かつ個別にそのまま参考文献として組み込まれることが示されている場合と同程度に、本明細書でそのまま参考文献として組み込まれている。
【0098】
本発明の多数の実施例について述べてきた。それにもかかわらず、本発明の観点と範囲から逸脱せずに様々な修正を加えることができることは、理解されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】図1は、ISA247の構造を示すものである。ISA247のアミノ酸残基が数で示されている。ギリシャ文字は、アミノ酸1の炭素の位置を示している。
【図2】図2Aおよび2Bは、それぞれ、ISA247分子のトランス(E−)およびシス(Z−)異性体の構造を提供するものである。
【図3】図3は、シス:トランスISA247の50:50混合物を投与された被験者のヒト全血から単離した、ISA247代謝物のプロフィールを示したHPLCスキャンである。
【図4】図4は、実施例4で説明した生体内変換法により単離したISA247代謝物のプロフィールを示したHPLCスキャンである。
【図5】図5は、生体内変換系において、異なる界面活性剤がISA247代謝物の産生に与える影響を示したグラフである。
【図6】図6は、主にISA247のトランス異性体を含むISA247製剤を投与された被験者の、ヒト全血から単離したISA247代謝物のLC−MSプロフィールを示している。
【図7】図7および8は、それぞれ、Actinoplanes sp.(ATCC 53771)およびSaccharopolyspora erythraea(ATCC 11635)による、ISA247代謝物の産生に対する培地3および培地16の影響を比較したものである。
【図8】図7および8は、Actinoplanes sp.(ATCC 53771)およびSaccharopolyspora erythraea(ATCC 11635)それぞれによる、ISA247代謝物の産生に対する培地3および培地16の影響を比較したものである。
【図9】図9は、Beauvaria bassianaによるISA247代謝物の産生に対する異なる溶媒および界面活性剤の影響を示したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物中で生体異物化合物の少なくとも1つの代謝物を産生する方法であって、
(a)前記生体異物化合物と界面活性剤との混合物を提供する工程と、
(b)前記混合物を前記微生物の培養液に添加する工程と、
(c)前記代謝物が形成するのに十分な時間、前記培養液を培養する工程と
を有する方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記混合物は、前記生体異物化合物、溶媒、および前記界面活性剤を有するものである。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、前記溶媒は、アルコールである。
【請求項4】
請求項3記載の方法において、前記アルコールは、エタノールである。
【請求項5】
請求項1〜4記載のいずれかの方法において、前記溶媒は、アルコールおよびDMSOの両方を有するものである。
【請求項6】
請求項1〜5記載のいずれかの方法において、前記微生物は、Actinoplanes sp.、Streptomyces griseus、Streptomyces setonii、およびSaccharopolyspora erthyraeaから成る群から選択されるものである。
【請求項7】
請求項1〜5記載のいずれかの方法において、前記微生物は、Cunningham ellaechinulataである。
【請求項8】
請求項1〜5記載のいずれかの方法において、前記微生物は、Nerospora crassaである。
【請求項9】
請求項1〜5記載のいずれかの方法において、前記微生物は、Actinoplanes spである。
【請求項10】
請求項1〜9記載のいずれかの方法において、前記界面活性剤は、PEG 400、ヒマシ油、ミリスチン酸イソプロピル、グリセリン、クレモホール(登録商標)、ラブラゾール(登録商標)、TWEEN(登録商標)40から成る群から選択されるものである。
【請求項11】
請求項1〜10記載のいずれかの方法において、前記生体異物化合物は、免疫抑制剤および抗菌化合物から成る群から選択されるものである。
【請求項12】
請求項1〜11記載のいずれかの方法において、前記生体異物化合物は、シクロスポリン化合物である。
【請求項13】
請求項12記載の方法において、前記シクロスポリン化合物は、ISA247である。
【請求項14】
請求項12記載の方法において、前記シクロスポリン化合物は、シクロスポリンAである。
【請求項15】
請求項1〜14記載のいずれかの方法において、前記代謝物は、IM1−d−1、IM1−d−2、IM1−d−3、IM1−d−4、IM1−c−1、IM1−c−2、IM1−e−1、IM1−e−2、IM1−e−3、IM9、IM4、IM4n、IM6、IM46、IM69、およびIM49から成る群から選択されるものである。
【請求項16】
請求項1〜15記載のいずれかの方法において、前記微生物は、Saccharopolyspora erthyraea(ATCC 11635)である。
【請求項17】
請求項1〜16記載のいずれかの方法であって、この方法は、さらに、
前記培養液から前記代謝物を単離する工程を有するものである。
【請求項18】
生体内変換系での使用に適した微生物を同定する方法であって、a)代謝される化合物の構造を既知の酵素活性と比較する工程と、b)前記既知の酵素活性を発現した酵素を同定する工程と、c)前記同定された酵素を発現した微生物を同定する工程と、d)生体内変換系に前記同定された酵素を発現した微生物を使用し、前記化合物の代謝物を作成する工程とを有する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2008−524992(P2008−524992A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547128(P2007−547128)
【出願日】平成17年12月23日(2005.12.23)
【国際出願番号】PCT/CA2005/001972
【国際公開番号】WO2006/066416
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(507211576)アイソテクニカ インク. (3)
【Fターム(参考)】