説明

シクロスポリン類似体

本発明は一般式(I)の環状化合物(式中、A,B,RおよびRは、本明細書で規定される)の使用およびその薬学的使用、例えばHCV感染の治療に関する。特に、Rは、水素、アルキル、アルケニル、XRから選択され;Rはアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルから選択され、これらは任意に置換され;RはRと同じ群及びアルコキシカルボニルから選択される。好ましい化合物は、エーテル官能性をLeu−4の側鎖に有するシクロスポリン類似体である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2009年12月30日付け出願の米国仮出願第61/290,917号の「新規エーテル大員環」の優先権の効果を主張するものであり、その内容のすべてをここに参照して援用する。
【0002】
本発明は、新規化合物、それを含む組成物、その製造方法、およびその治療への使用、例えば抗ウイルス剤としての使用である。
【背景技術】
【0003】
シクロスポリンAは、抗HIV活性に加えて、その免疫抑制活性および抗真菌剤、抗寄生虫剤および抗炎症剤を含む広範囲の治療用途について周知である。シクロスポリンAおよび特定の誘導体が抗HCV活性を有するとして報告されている、Watashi et al., Hepatology, 2003, Vol. 38: pp1282−1288, Nakagawa et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 2004, American Transplant Congress, Abstract No. 648 (American Journal of Transplantation 2004, Volume 4, Issues8, Pages 1−653)を参照のこと。
【0004】
ヒドロキシル基を4−位に導入して修飾したシクロスポリンA(シクロスポリン)誘導体が文献公知である。例えば[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンAが、欧州特許第484,281号明細書に記載され、HIV−I複製に対して活性を有すると述べられている。3−エーテル/チオエーテル[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA誘導体が、米国特許第5,948,755号;第5,994,299号;第5,948,884号および第6,583,265号明細書;国際公開第2006/039668号および第07/041631号に記載されている。4−位に(4−アセトキシ−N−メチルロイシン)および1−位に(3’−アセトキシ−N−メチル−Bmt)を有する特定のシクロスポリンA誘導体が、国際公開第2006/039668号、米国特許第7,196,161B2号明細書およびCarry et al., Synlett (2004), No. 2, pages 316−320に記載されている。4−位に(4−アセトキシ−N−メチルロイシン)を有するシクロスポリンA誘導体が、国際公開第98/49193号、米国特許第5,977,067号明細書およびCarry et al., Synlett (2004), No. 2, pages 316−320に記載されている。これらの化合物が生物学的活性を有することは記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,948,755号明細書
【特許文献2】米国特許第5,994,299号明細書
【特許文献3】米国特許第5,948,884号明細書
【特許文献4】米国特許第6,583,265号明細書
【特許文献5】国際公開第2006/039668号
【特許文献6】国際公開第07/041631号
【特許文献7】米国特許第7,196,161B2号明細書
【特許文献8】国際公開第98/49193号
【特許文献9】米国特許第5,977,067号明細書
【特許文献10】米国特許第3,845,770号明細書
【特許文献11】米国特許第3,916,899号明細書
【特許文献12】米国特許第3,536,809号明細書
【特許文献13】米国特許第3,598,123号明細書
【特許文献14】米国特許第4,008,719号明細書
【特許文献15】米国特許第5,674,533号明細書
【特許文献16】米国特許第5,059,595号明細書
【特許文献17】米国特許第5,591,767号明細書
【特許文献18】米国特許第5,120,548号明細書
【特許文献19】米国特許第5,073,543号明細書
【特許文献20】米国特許第5,639,476号明細書
【特許文献21】米国特許第5,354,556号明細書
【特許文献22】米国特許第5,639,480号明細書
【特許文献23】米国特許第5,733,566号明細書
【特許文献24】米国特許第5,739,108号明細書
【特許文献25】米国特許第5,891,474号明細書
【特許文献26】米国特許第5,922,356号明細書
【特許文献27】米国特許第5,972,891号明細書
【特許文献28】米国特許第5,980,945号明細書
【特許文献29】米国特許第5,993,855号明細書
【特許文献30】米国特許第6,045,830号明細書
【特許文献31】米国特許第6,087,324号明細書
【特許文献32】米国特許第6,113,943号明細書
【特許文献33】米国特許第6,197,350号明細書
【特許文献34】米国特許第6,248,363号明細書
【特許文献35】米国特許第6,264,970号明細書
【特許文献36】米国特許第6,267,981号明細書
【特許文献37】米国特許第6,376,461号明細書
【特許文献38】米国特許第6,419,961号明細書
【特許文献39】米国特許第6,589,548号明細書
【特許文献40】米国特許第6,613,358号明細書
【特許文献41】米国特許第6,699,500号明細書
【特許文献42】欧州特許第484,281号明細書
【特許文献43】米国特許第6,630,343号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Watashi et al., Hepatology, 2003, Vol. 38: pp1282-1288
【非特許文献2】Nakagawa et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 2004, American Transplant Congress, Abstract No. 648 (American Journal of Transplantation 2004, Volume 4, Issues8, Pages 1-653)
【非特許文献3】Carry et al., Synlett (2004), No. 2, pages 316-320
【非特許文献4】Ruegger et al., 1976, Helv. Chim. Acta. 59:1075-92; Borel et al., 1977, Immunology 32:1017-25
【非特許文献5】J. Kallen et al., “Cyclosporins: Recent Developments in Biosynthesis, Pharmacology and Biology, and Clinical Applications”, Biotechnology, second edition, H.-J. Rehm and G. Reed, ed., 1997, p535-591
【非特許文献6】Cahn et al., 1966, Angew. Chem. 78:413-447, Angew. Chem., Int. Ed. Engl. 5:385-414 (errata: Angew. Chem., Int. Ed. Engl. 5:511); Prelog and Helmchen, 1982, Angew. Chem. 94:614-631, Angew. Chem. Internal. Ed. Eng. 21:567-583; Mata and Lobo, 1993, Tetrahedron: Asymmetry 4:657-668
【非特許文献7】Jens T. Carstensen, Drug Stability: Principles & Practice, 2d. Ed., Marcel Dekker, NY, NY, 1995, pp.379-80
【非特許文献8】Sefton, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201 (1987); Buchwald et al., Surgery 88:507 (1980); Saudek et al., N. Engl. J. Med. 321 :574 (1989)
【非特許文献9】Goodson, Medical Applications of Controlled Release, vol. 2, pp.115-138 (1984)
【非特許文献10】Langer, 1990, Science 249: 1527-1533
【非特許文献11】Remington’s Pharmaceutical Sciences, 16thおよび18th eds., Mack Publishing, Easton PA (1980, 1990 & 2000)
【非特許文献12】Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms, 4th ed., Lea & Febiger, Philadelphia (1985)
【非特許文献13】Simmonds, 2004, J Gen Virol. 85:3173-88; Simmonds, 2001, J. Gen. Virol. 82: 693-712
【非特許文献14】Maier and Wu, 2002, World J Gastroenterol 8:577-57
【非特許文献15】Lesens et al., 1999, J Infect Dis 179:1254-1258
【非特許文献16】Kriger et al., Journal of Virology, 2001 volume 75, p.4614-4624
【非特許文献17】Pietschmann et al., Journal of Virology, 2002 volume 76, p.4008-4021
【非特許文献18】Weislow et al., 1989, J. Natl. Cancer Inst. 81:577-586
【非特許文献19】Quesniaux et al., 17, Eur. J Immunol. 27:1359-1365
【非特許文献20】Blattner et al., Analytical Biochem., 295:220(2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の1つの態様は、一般式(I)のシクロスポリン誘導体を提供するものである:
【0008】
【化1】

【0009】
式中のAは(E)−CH=CHRまたは−CHCHRであり、Rはメチル、−CHSH、−CH(チオアルキル)、カルボキシルまたはアルコキシカルボニルを示し;
【0010】
Bはエチル、1−ヒドロキシエチル、イソプロピルまたはn−プロピルを示し;
【0011】
は:
水素;
1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル;
2〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルケニル;または
−XRを示し;
【0012】
は:
1〜6個の炭素原子を有し、同じか異なる1個以上のR基により任意に置換される直鎖または分岐鎖のアルキル;
2〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される直鎖または分岐鎖のアルケニル;
2〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される直鎖または分岐鎖のアルキニル;
3〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換されるシクロアルキルを示し;
【0013】
Xは−S(=O)−または酸素を示し、nは0,1または2であり;
【0014】
は:
1〜6個の炭素原子を有し、同じか異なる1個以上のR基により任意に置換される直鎖または分岐鎖のアルキル;
2〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される直鎖または分岐鎖のアルケニル;
2〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される直鎖または分岐鎖のアルキニル;
3〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換されるシクロアルキル;または
2〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルコキシカルボニルを示し;
【0015】
は、ハロゲン;ヒドロキシ;アルコキシ;カルボキシル;アルコキシカルボニル;−NR、−NR(CHNR;チオアルキル;ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換されるフェニル;及び、窒素、硫黄および酸素からなる群から選択される同じか異なる1〜3個のヘテロ原子を含む5または6個の環原子を有する飽和または不飽和の複素環であり、該環の炭素原子を経てアルキルに結合する(置換される)複素環、からなる群から選択され;
【0016】
およびRは同じか異なり、それぞれ;
水素;
1〜6個の炭素原子を有し、同じか異なる1個以上のR基により任意に置換される直鎖または分岐鎖のアルキル;
2〜4個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖のアルケニルまたはアルキニル;
3〜6個の炭素原子を有し、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキルにより任意に置換されるシクロアルキル;
ハロゲン、アルコキシ、シアノ、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノおよびジアルキルアミノからなる基から選択される同じか異なる1〜5個の置換基により任意に置換されるフェニル;または
窒素、硫黄および酸素から選択される同じか異なる1〜3個のヘテロ原子を含む5〜6個の環原子を有する飽和または不飽和の複素環であり、ハロゲン、アルコキシ、シアノ、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノおよびジアルキルアミノからなる基から選択される同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される複素環を示すか;または
およびRは、これらが結合した窒素原子と共に、4〜6個の環原子を有する飽和または不飽和の複素環を形成し、該環は窒素、酸素および硫黄からなる基から選択される他の環ヘテロ原子を任意に有し、アルキル、フェニルおよびベンジルからなる基から選択される同じか異なる1〜4個の置換基により任意に置換され;
【0017】
は:
水素;
1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル;または
ハロゲンおよびアルコキシからなる基から選択される同じか異なる1〜5個の置換基により任意に置換されるフェニル基を示し;
【0018】
pは0,1または2であり;
【0019】
mは2から4の整数である;
【0020】
シクロスポリン誘導体もしくは薬学的に許容可能な塩またはその溶媒和物である。
【0021】
特定の場合においては、置換基A,B,RおよびRが、光学異性体および/または立体異性体に関与することができる。これら形態の全てが本発明に包含される。
【0022】
本発明の他の態様は、ここに記載の化合物と薬学的に許容可能な無効成分、担体または希釈剤とを含む組成物を提供する。
【0023】
本発明の他の態様は、ここに記載の化合物の薬学的に許容可能な塩を提供する。薬学的に許容可能な塩の例としては、例えば、ナトリウム、カリウムもしくはリチウム等のアルカリ金属との塩、または、例えばマグネシウムもしくはカルシウム等のアルカリ土類金属との塩、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルアミン、プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、ベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N−ベンジルフェノールエチルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジフェニレンジアミン、ベンズヒドリルアミン、キニン、コリン、アルギニン、リジン、ロイシンもしくはジベンジルアミン等のアンモニウム塩もしくは窒素塩基の塩が挙げられる。
【0024】
本発明の他の態様は、ここに記載の化合物または組成物を使用して、感染症、神経変性疾患、虚血/再かん流損傷、炎症性疾患または自己免疫疾患を治療または予防する方法を提供する。前記方法は、通常、疾患または疾病を有する被検体に、かかる疾患または疾病を治療または予防するのに有効な量の化合物または組成物を投与することを備える。典型的な感染としては、HCVまたはHIV感染および本明細書に詳細に記載する他のものが挙げられる。他の態様において、ここに記載の治療に用いる化合物または組成物を提供する。本発明の他の態様は、ここに記載の化合物または組成物を使用して、感染症、神経変性疾患、虚血/再かん流損傷、炎症性疾患または自己免疫疾患を治療または予防する方法を提供する。他の態様において、薬剤製造における化合物または組成物の使用を提供する。本発明の他の態様は、ここに記載の化合物または組成物を使用して、感染症、神経変性疾患、虚血/再かん流損傷、炎症性疾患または自己免疫疾患を治療または予防する薬剤を製造する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<定義>
本明細書の化合物および複合体を指す場合、下記の用語は、特に指示がない限り、以下の意味を有するものとする。
【0026】
「シクロスポリン」は、当業者に既知のあらゆるシクロスポリン化合物またはその誘導体とする。例えばRuegger et al., 1976, Helv. Chim. Acta. 59:1075−92; Borel et al., 1977, Immunology 32:1017−25を参照し、その内容のすべてを本明細書に参照して援用する。本発明の例示的な化合物は、シクロスポリンの誘導体である。特記しない限り、本明細書に記載のシクロスポリンは、シクロスポリンAであり、本明細書に記載のシクロスポリン誘導体は、シクロスポリンAの誘導体である。
【0027】
以下に使用するシクロスポリンの命名法および番号付け方式は、J. Kallen et al., “Cyclosporins: Recent Developments in Biosynthesis, Pharmacology and Biology, and Clinical Applications”, Biotechnology, second edition, H.−J. Rehm and G. Reed, ed., 1997, p535−591により使用されるものであり、以下に示す通りである:
位置 シクロスポリンA中のアミノ酸
1 N−メチル−ブテニル−トレオニン(MeBmt)
2 [α]−アミノ酪酸(Abu)
3 サルコシン(Sar)
4 N−メチル−ロイシン(MeLeu)
5 バリン(Val)
6 N−メチル−ロイシン(MeLeu)
7 アラニン(Ala)
8 (D)−アラニン((D)−Ala)
9 N−メチル−ロイシン(Me−Leu)
10 N−メチル−ロイシン(MeLeu)
11 N−メチルバリン(MeVal)
【0028】
これは以下に示すような式(I)の化合物の飽和環炭素原子に相当する:
【0029】
【化2】

【0030】
「アルキル」は、一価の飽和性脂肪族ヒドロカルビル基であり、特に11個までの炭素原子、より詳細には1〜8個の炭素原子を有する低級アルキル、さらに詳細には1〜6個の炭素原子を有する低級アルキルを有するものを指す。炭化水素鎖は、直鎖または分岐鎖のいずれかである。この用語は、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、tert−オクチル基等を示す。
【0031】
「アルキレン」は直鎖または分岐鎖とすることができ、特に11個までの炭素原子、より詳細には1〜6個の炭素原子を有する二価の飽和脂肪族ヒドロカルビル基を指す。この用語は、メチレン(−CH−)、エチレン(−CHCH−)、プロピレン異性体(例えば−CHCHCH−および−CH(CH)CH−)等のような基により例示される。
【0032】
「アルケニル」は、1つの実施形態では11個までの炭素原子、別の実施形態では2〜8個の炭素原子、他の実施形態では2〜6個の炭素原子を有する一価のオレフィン系不飽和ヒドロカルビル基を指し、直鎖または分岐鎖とすることができ、少なくとも1部位または1〜2部位のオレフィン系不飽和を有する。いくつかの実施形態において、アルケニル基はエテニル(−CH=CH)、n−プロペニル(−CHCH=CH)、イソプロペニル(−C(CH)=CH)、ビニルおよび置換ビニル等を含む。
【0033】
「アルケニレン」は、特に11個までの炭素原子、より詳細には2〜6個の炭素原子を有する二価のオレフィン系不飽和ヒドロカルビル基を指し、直鎖または分岐鎖とすることができ、少なくとも1部位、特に1〜2部位のオレフィン系不飽和を有する。この用語は、エテニレン(−CH=CH−)、プロペニレン異性体(例えば−CH=CHCH−、−C(CH)=CH−および−CH=C(CH)−)等のような基により例示される。
【0034】
「アルキニル」は、特に11個までの炭素原子、より詳細には2〜6個の炭素原子を有するアセチレン系不飽和ヒドロカルビル基を指し、直鎖または分岐鎖とすることができ、少なくとも1部位、特に1〜2部位の不飽和アルキニルを有する。アルキニル基のある例としては、アセチレン、エチニル(−C≡CH)、プロパルギル(−CHC≡CH)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
「アルコキシ」は、Rがアルキル基である−OR基を指す。アルキル基は、11個までの炭素原子、より好適には1〜8個の炭素原子を有する低級アルキル、さらに好適には1〜6個の炭素原子を有する低級アルキルを有するものを指す。特定のアルコキシ基の一例として、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、sec−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、1,2−ジメチルブトキシ等が挙げられる。
【0036】
「N−モノアルキルアミノ」または「N−アルキルアミノ」は、H−NR’−基を指し、ここでR’は水素およびアルキル基から選択される。アルキル基は、11個までの炭素原子、より詳細には1〜8個の炭素原子を有する低級アルキル、さらに詳細には1〜6個の炭素原子を有する低級アルキルを有するものを指す。
【0037】
「アルコキシカルボニル」は、アルコキシがここに規定されるものであるラジカル−C(=O)−アルコキシを指す。
【0038】
「アリル」はラジカルHC=C(H)−C(H)−を指す。
【0039】
「アミノ」はラジカル−NHを指す。
【0040】
「アリール」は任意に置換された芳香族炭化水素ラジカル、例えばフェニル基を指すものとする。
【0041】
「アリールアミノ」は、Rが水素、アリールおよびヘテロアリールであるアリール−NR’−基を指す。
【0042】
「Bmt」は2(S)−アミノ−3(R)−ヒドロキシ−4(R)−メチル−6(E)−オクテン酸を指す。
【0043】
「Cpd」は化合物を意味する。
【0044】
「カルボキシル」は、ラジカル−C(=O)OHを指す。
【0045】
「N,N−ジアルキルアミノ」は、ラジカル−NRR’を意味し、RおよびR’は独立して本明細書に定義するアルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換シクロヘテロアルキル、ヘテロアリールまたは置換ヘテロアリールを示す。
【0046】
「ハロゲン」または「ハロ」はクロロ、ブロモ、フルオロまたはヨードを指す。
【0047】
「ヘテロアリール」は任意に置換される飽和または不飽和の複素環ラジカルであって、硫黄、酸素および窒素からなる基から選択される1〜3個の複素環原子を有するものを指す。一般に、複素環は4〜7個の環原子、例えば5または6個の環原子を有する。ヘテロアリールの例として、チエニル、フリル、ピローリル、オキサジニル、チアジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、モルホリニル、ピラゾリル、テトラヒドロフリルオキサジアゾリル、チアジアゾリルおよびイソキサゾリルが挙げられる。
【0048】
「ヒドロキシ」はラジカル−OHを指す。
【0049】
「チオアルキル」はRがアルキル基である−SR基を指す。アルキル基は、11個までの炭素原子、より詳細には1〜8個の炭素原子を有する低級アルキル、さらに詳細には1〜6個の炭素原子を有する低級アルキルを有するものを指す。例としては、特に制限されるものではないが、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ等が挙げられる。
【0050】
「薬学的に許容可能な塩」は、生物学的性質を保持し、毒性がないか、若しくは薬学的用途のために望ましくないものでない限り、本発明の化合物のあらゆる塩を指すものとする。該塩としては、従来技術から知られている様々な有機および無機カウンターイオンに由来するものが挙げられる。(1)有機酸または無機酸から形成された酸付加塩、有機酸または無機酸としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、スルファミン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンチルプロピオニック酸、グリコール酸、グルタル酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、ソルビン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ピクリン酸、桂皮酸、マンデル酸、フタル酸、ラウリン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、ショウノウ酸、カンファースルホン酸、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert−ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、安息香酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、キナ酸、ムコン酸等の酸が挙げられる;または(2)親組成物に存在する酸性陽イオンが、(a)金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンもしくはアルミニウムイオン、またはアルカリ金属の水酸化物もしくはアルカリ土類金属の水酸化物であって、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、リチウム、亜鉛および水酸化バリウム、アンモニアに置換された場合;または(b)有機塩基、例えば脂肪族化合物、脂環式化合物または芳香族有機アミン、例えばアンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N−ベンジルフェノールエチルアミン、N−メチルグルカミンピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン、水酸化テトラメチルアンモニウム等と組み合された場合に形成される塩が挙げられる。
【0051】
さらに塩としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム等が挙げられ、化合物が塩基性の官能性を含有する場合、非毒性の有機酸または無機酸の塩、例えば塩酸塩および臭化水素塩等のハロゲン化水素塩、硫酸塩、リン酸塩、スルファミン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、プロピオン酸塩、ヘキサン酸塩、シクロペンチルプロピオン酸塩、グリコール酸塩、グルタル酸塩、ピルビン酸塩、乳酸塩、マロン酸塩、琥珀酸塩、ソルビン酸塩、アスコルビン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)ベンゾアート、ピクリン酸塩、ケイ皮酸塩、マンデル酸塩、フタル酸塩、ラウリン酸塩、メタンスルホン酸塩(メシラート)、エタンスルホン酸塩、1,2−エタン−二硫酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシラート)、4−クロロベンゼンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、4−トルエンスルホン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸塩、グルコヘプタン酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、トリメチル酢酸塩、tert−ブチル酢酸塩、ラウリル硫酸塩、グルコン酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、キニン塩酸、ムコン酸塩等が挙げられる。
【0052】
「生理的に許容可能なカチオン」の用語は、酸性官能基の非毒性の生理的に許容可能なカチオン性カウンターイオンを指すものとする。該カチオンとしてナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウムおよびテトラアルキルアンモニウム等のカチオンが例示される。
【0053】
「溶媒和物」は、本発明の化合物またはその塩を指し、化学量論的または非化学量論的に非共有結合の分子間力によって結合した溶媒が挙げられる。溶媒が水である場合、溶媒和物は水和物である。
【0054】
同じ分子式を有するが、原子の結合配列または原子配列の立体構造の異なる化合物を「異性体」と称する。原子の立体構造の異なる異性体は「立体異性体」と称される。
【0055】
互いに鏡像でない立体異性体を「ジアステレオ異性体」、互いに重ね合わせることができない鏡像の立体異性体を「鏡像異性体」と称する。化合物に非対称性の中心が存在する場合、例えばそれが4つの異なる基に結合している場合、一対の鏡像異性体が存在し得る・。鏡像異性体は、その非対称性の中心の全体的な構成によりその特性が定まり、カーン・インゴルド・プレローグ順位則(Cahn et al., 1966, Angew. Chem. 78:413−447, Angew. Chem., Int. Ed. Engl. 5:385−414 (errata: Angew. Chem., Int. Ed. Engl. 5:511); Prelog and Helmchen, 1982, Angew. Chem. 94:614−631, Angew. Chem. Internal. Ed. Eng. 21:567−583; Mata and Lobo, 1993, Tetrahedron: Asymmetry 4:657−668)によって(R)または(S)のいずれかが決定づけられるか、偏光性平面の回転によりその特性が定まり、右旋性または左旋性のいずれかに決定づけられる(即ち、それぞれ(+)−異性体または(−)−異性体とする)。キラル化合物には、各鏡像異性体またはその混合物のいずれかが存在することができる。各鏡像異性体を等量含有する混合物を「ラセミ混合物」と称する。
【0056】
特定の実施形態において、本発明の化合物は1つ以上の非対称中心を有し得る;従ってかかる化合物を(R)もしくは(S)−鏡像異性体またはその混合物として産生し得る。特記しない限り、例えば式の任意の位置に立体化学の指定により、明細書および請求項における特定の化合物の記載または命名法は、それぞれ鏡像異性体および混合物の双方、ラセミ化合物またはその他のものを含有することを意図する。立体化学の決定および立体異性体の分離方法は、従来技術から周知である。特定の実施形態において、本発明は本明細書に記載した化合物の塩基での処理による立体異性体を提供する。
【0057】
特定の実施形態において、本発明の化合物は「立体化学的に純粋」である。立体化学的に純粋な化合物は、当業者に「純粋」として認識される立体科学的純度のレベルを有する。当然、この純度のレベルは100%未満である。特定の実施形態において、「立体化学的に純粋」とは、代替異性体を実質的に有さない化合物を示す。特定の実施形態において、化合物は他の異性体を85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%有さない。
【0058】
「サルコシン」または「Sar」は、当業者に公知の−N(Me)CHC(=O)−の構造を有するアミノ酸残基を指すものとする。当業者は、サルコシンをN−メチルグリシンとして認識するであろう。
【0059】
ここでは、「被検体」および「患者」の用語が交互に使用される。「被検体(subjectおよびsubjects)」の用語は、動物を指し、いくつかの実施形態において、非霊長類(例えばウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットおよびマウス)および霊長類(例えばサルであるマカクザル、チンパンジーおよびヒト等)を含む哺乳類ならびにヒトが挙げられる。他の実施形態においては、被検体は家畜(例えばウマ、ウシ、ブタ等)またはペット(例えばイヌまたはネコ)である。1つの実施形態においては被検体はヒトである。
【0060】
ここに使用するように、「治療薬(therapeutic agentおよびtherapeutic agents)」の用語は、病気または1以上のその症状の治療、処置または改善に使用することができる、あらゆる薬剤を示す。ある実施形態においては、「治療薬」の用語は本発明の化合物を指す。他のある実施形態においては、「治療薬」の用語は、本発明の化合物を指さない。1つの実施形態において、治療薬は病気もしくは1以上の症状の治療、処置、予防または改善に有効であることが知られているか、以前から若しくは現在使用されている薬剤を指す。
【0061】
「治療有効量」は、被検体の疾患を治療するために投与する際に、係る疾患の治療に十分な化合物、複合体または組成物の量を意味する。「治療有効量」は、特に、化合物、疾患およびその重症度ならびに治療する被検体の年齢、体重等によって異なる。
【0062】
あらゆる疾患または疾病の「治療(treatingまたはtreatment)」は、1つの実施形態においては、被検体の疾患または疾病の改善を指す。他の実施形態においては、「治療(treatingまたはtreatment)」は、被検体自身によっては認識できない、少なくとも1つの身体パラメータを改善することを指す。さらに他の実施形態においては、「治療(treatingまたはtreatment)」は、物理的(例えば認識可能な症状の安定化)もしくは生理的(例えば身体パラメータの安定化)またはその両方のいずれかの、疾患または疾病の制御を指す。さらに他の実施形態においては、「治療(treatingまたはtreatment)」は、疾患または疾病の発症の遅延を指す。
【0063】
ここに用いる「予防薬(prophylactic agentおよびprophylactic agents)」の用語は、病気または1以上の症状の予防に使用し得るあらゆる薬剤を指す。ある実施形態においては、「予防薬」の用語は、本発明の化合物を指す。ある他の実施形態においては、「予防薬」の用語は、本発明の化合物を指さない。1つの実施形態において、予防薬は疾患の発症、発達、進行および/もしくは重篤化を予防もしくは妨げるのに有効なことが知られているか、以前からまたは現在使用されている薬剤である。
【0064】
ここでは、「予防(prevent、preventingおよびprevention)」の用語は、治療の(例えば予防薬または治療薬)の実施、または治療の併合(例えば予防薬または治療薬の配合)の実施による、被検体における1つ以上の疾患の症状の再発、発症または発達の予防を指す。
【0065】
ここでは、「予防有効量」の用語は、1つ以上の疾患と関連のある症状の発達、再発もしくは発症の予防に至るか、他の治療(例えば他の予防剤)の予防効果を向上または改善するのに十分な治療薬(例えば予防剤)の量を指すものとする。
【0066】
「ラベル」の用語は、物品の直接容器上の記入、印刷または図画の物体の表示、例えば薬学的な活性剤を含有するバイアルに表示された試料等の物品の表示を指す。
【0067】
「ラベル付け」という用語は、物品、またはその容器、包装紙もしくはかかる物品の付属品(例えば薬学的活性剤の容器に付属するか、添付される、添付文書、指示用ビデオテープ若しくはDVD等)のいずれかに対する全てのラベルおよび他の記入、印刷もしくは図画を指す。
【0068】
ある実施形態において、Aは(E)−CH=CHRを示す。さらなる実施形態において、Aは−CHCHRを示す。他の実施形態において、Aは(E)−CH=CHRを示す。さらなる実施形態において、Aは(E)−CH=CHR、Rはメチルを示す。
【0069】
1つの実施形態において、Bはエチルを示す。
【0070】
1つの実施形態において、Rは水素を示す。他の実施形態において、Rは1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルキル;2〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル;または−XRを示す。他の実施形態において、Rは−XRを示す。他の実施形態において、Rはメチルを示す。
【0071】
ある実施形態において、Rは1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキルを示す。またさらなる実施形態において、Rはメチルまたはエチルを示す。また、さらなる実施形態において、RはR基により置換される1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキルを示す。また、さらなる実施形態において、RはR基により置換される1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキルを示す。また、さらなる実施形態において、RはN,N−ジアルキルアミノにより置換される1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキルを示す。さらなる実施形態において、RはN,N−ジメチルアミノにより置換されるエチルを示す。
【0072】
特定の実施形態において、Rは1〜6個の炭素原子を有し、同じか異なる1個以上のR基により任意に置換される直鎖または分岐鎖のアルキルを示す。また、さらなる実施形態において、Rは1〜4個の炭素原子を有し、R基により任意に置換される直鎖または分岐鎖のアルキルを示す。また、さらなる実施形態において、Rは1または2個の炭素原子を有し、R基により任意に置換される直鎖または分岐鎖のアルキルを示す。さらなる実施形態において、Rはメチル、エチルまたはR基により置換されるエチルを示す。
【0073】
ある実施形態において、Rはハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる基から選択される同じか異なる1つ以上の置換基により任意に置換されるフェニル基を示す。また、さらなる実施形態において、Rはフェニルを示す。
【0074】
いくつかの実施形態において、Xは酸素または硫黄である。特定の実施形態において、Xは酸素または硫黄である。さらなる実施形態において、Xは酸素である。またさらなる実施形態において、Xは硫黄である。
【0075】
1つの実施形態において、ここに提供する化合物は以下から選択される:
化合物 名称
A [4’−ベンジルオキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA
B [4’−エトキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA
C [4’−メトキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA
D [(R)−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルチオ−Sar]−[4’−エトキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA
【0076】
以後、文字AからDを用いて上記化合物を同定する。
【0077】
本発明の化合物は、当業者に明白なあらゆる方法によって調製、分離または得ることができる。例示的な調製方法を以下に詳細に説明する。
【0078】
1つの実施形態において、式(I)の化合物は式R−OHの化合物の存在下式CH(ORの化合物を用いて式(II)の化合物を調製することができる:
【0079】
【化3】

【0080】
意外にも上記反応はシクロスポリン環の1位のヒドロキシ基では実質的に反応が生じないで、シクロスポリン環の4位のヒドロキシル基で位置選択的であることが見出された。
【0081】
一般に、反応は溶媒中約0℃〜約100℃、例えば約0℃〜50℃(例えば室温)で実施され、前記溶媒は式ROHの化合物でもよい。反応は酸、例えばp−トルエンスルホン酸もしくはメタンスルホン酸等のブレンステッド酸、ルイス酸の存在下実施することができる。式CH(ORの化合物はオルトギ酸トリアルキル、例えばオルトギ酸トリエチルでもよい。
【0082】
他の実施形態において、式(I)の化合物は上記に規定するような式(II)の化合物の反応によって式(III):
【0083】
【化4】

【0084】
(式中、Rは上記に規定する)のカチオンを含む塩を用いて調製することができる。意外にも上記反応はシクロスポリン環の1位のヒドロキシ基では実質的に反応は生じず、シクロスポリン環の4位のヒドロキシル基で位置選択的であることが見出された。
【0085】
この反応の適切な塩の例としては、強酸、例えばトリフラート、トリフルオロ酢酸またはトリクロロ酢酸の塩が挙げられる。反応は、通常、酸化マグネシウム等の緩衝剤の存在下、芳香族炭化水素等の溶媒中、例えばトルエンまたはα,α,α−トリフルオロトルエン中において実施される。通常、反応は約0℃〜約100℃、例えば約50℃〜約100℃、約80℃〜約85℃で実施される。
【0086】
他の実施形態において、RがXRを示す式(I)の化合物は、Rが水素を示す対応する式(I)の化合物をポリアニオンを生じる適切な溶媒中、塩基で処理し、その後ポリアニオン、即ち式RX−L(式中、RおよびXは上記に規定し、Lは離脱基である)の求電子剤との反応によって調製することができる。通常、式(I)(Rは水素である)の化合物は適切な溶媒中に溶解され、約−70℃まで冷却される。溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジメトキシメタン、メチルtert−ブチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。混合物に塩基を添加した後、通常、生成された混合物は約1時間反応し、任意に約−20℃まで加熱される。一般的に、反応混合物は約−70℃まで冷却され、適切な求電子剤が添加される。この反応に好ましい塩基としてはn−ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムジイソプロピルアミドと塩化リチウムおよびナトリウムアミドとの配合が挙げられる。適切な求電子剤としては、限定しないが、ハロゲン化またはスルホン化の活性化アルキルおよびアルケニル、ジスルフィド、チオ硫酸およびハロゲン化またはスルホン化トリアルキルシリル等が挙げられる。
【0087】
式(II)の化合物は、当業者に既知の方法、例えば米国特許第5,948,884号、第5,994,299号および第6,583,265号明細書、国際公開第99/32512号および第99/67280号に開示された方法に従って調製することができる。これら参考文献の内容をすべてここに参照して援用する。式(III)の化合物は既知であり、既知の方法を適応または適合して調製することができる。
【0088】
上述したように、本発明のシクロスポリン化合物は中性型または塩の形態とすることができる。塩の形態は当業者に既知のあらゆる塩の形態とすることができる。特に有用な塩の形態は、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、塩化物、メタンスルホン酸塩またはプロピオン酸塩と配位するものである。
【0089】
本発明の化合物を塩基部分で置換する場合、酸付加塩が形成される。酸付加塩を調製するのに使用することができる酸としては、遊離塩基と配合された際に薬学的に許容可能な塩、即ちアニオンが塩の製薬学的な投与量で被検体に非毒性である塩を産生するものが挙げられる。本発明の範囲の薬学的に許容可能な塩は、以下の酸由来のものである:塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、スルファミン酸および硝酸のような無機酸;および酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンチルプロピオン酸、グリコール酸、グルタル酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、ソルビン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ピクリン酸、桂皮酸、マンデル酸、フタル酸、ラウリン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1、2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、ショウノウ酸、カンファースルホン酸、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert−ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、安息香酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、キナ酸、ムコン酸等の有機酸。
【0090】
対応する酸付加塩としては、塩酸塩および臭化水素酸塩のようなヒドロハライド、硫酸塩、リン酸塩、スルファミン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、プロピオン酸塩、ヘキサン酸塩、シクロペンチルプロピオン酸塩、グリコール酸塩、グルタル酸塩、ピルビン酸塩、乳酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、アスコルビン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)ベンゾエート、ピクリン酸塩、ケイ皮酸塩、マンデル酸塩、フタル酸塩、ラウリン酸塩、メタンスルホン酸塩(メシレート)、エタンスルホン酸塩、1、2−エタン−二硫酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシラート)、4−クロロベンゼンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、4−トルエンスルホン酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸塩、グルコヘプタン酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、トリメチル酢酸塩、tert−ブチル酢酸塩、ラウリル硫酸塩、グルコン酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、キニン酸塩、ムコン酸塩等が挙げられる。
【0091】
本発明の更なる特徴においては、本発明の酸付加塩の化合物は既知の方法の適用し、または適合させ、遊離塩基と適切な酸の反応によって調製することができる。例えば本発明の化合物の酸付加塩は、遊離塩基を水溶液、水溶性アルコール溶液または適当な酸を含有する他の適当な溶媒に溶解し、溶液を蒸発させて塩を分離するか、または遊離塩基および酸を有機溶媒中で反応させ、塩を直接分離若しくは溶液の濃縮により得るかかの、いずれかの方法によって調製することができる。
【0092】
本発明の化合物の酸付加塩、例えば本発明の化合物は、既知の方法を適用し、または適合させることで、塩から再生することができる。例えば本発明の親化合物を、その酸付加塩から重炭酸ナトリウム水溶液またはアンモニア水溶液等のアルカリで処理することによって再生することができる。
【0093】
本発明の化合物を酸部分で置換する場合、塩基付加塩が形成される。本発明の範囲内で、例えばアルカリおよびアルカリ土類金属塩を含む薬学的に許容可能な塩は、下記の塩基に由来するものが挙げられる:水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化リチウム、水酸化亜鉛、水酸化バリウム;および脂肪族、脂環式または芳香族有機アミンのような有機アミン、例えばアンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N−ベンジルフェノールエチルアミン、N−メチルグルカミンピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン、水酸化テトラメチルアンモニウム等。
【0094】
本発明の化合物の金属塩は、水性または有機溶媒中で、所定金属の水素化物、水酸化物、炭酸塩または類似の反応性化合物を遊離酸形態の化合物と接触させることによって得られる。使用する水性溶媒は、水とするか、水と有機溶媒との混合物とすることができ、特定の実施形態において、有機溶媒はメタノールまたはエタノールのようなアルコール、アセトンのようなケトン、テトロヒドロフランのような脂肪族エーテルまたは酢酸エチルのようなエステルである。このような反応は、通常、大気温度で行うが、所望に応じて加熱しながら行ってもよい。
【0095】
本発明の化合物のアミン塩は、アミンを水性または有機溶媒中に遊離酸形態の化合物と接触させることによって得られる。適当な水性溶媒は、水および水とメタノール若しくはエタノール等のアルコール、テトラヒドロフラン等のエーテル、アセトニトリルのようなニトリルまたはアセトンのようなケトンとの混合物を含む。アミノ酸塩を同様に調製することができる。
【0096】
本発明の化合物の塩基付加塩は、既知の方法を適用し、または適合させて、塩から再生することができる。例えば本発明の親化合物をその塩基付加塩から、塩酸等の酸で処理することによって再生できる。
【0097】
<医薬品組成物および投与法>
本発明の方法に用いるシクロスポリン化合物は、特定の実施形態において一般式(I)の少なくとも1つの化合物を含有する医薬品組成物を、塩形態が適切な場合においては単独で、希釈剤若しくはアジュバンドのような1つ以上の互換性および製薬学的に許容可能な担体または他の抗HCV剤との組み合わせの形態で使用して、提供することができる。臨床診療における本発明のシクロスポリン化合物は、既知のあらゆる経路で、特に経口、非経口、直腸または吸入(例えばエアロゾルの形態)で投与することが可能である。1つの実施形態において、本発明のシクロスポリン化合物を経口投与する。
【0098】
経口投与用の固体組成物としては、錠剤、丸剤、硬いゼラチンカプセル、粉末または顆粒を使用することができる。これら組成物において、本発明に係る活性製品をサッカロース、ラクトースまたは澱粉のような1つ以上の不活性希釈剤またはアジュバントと混合する。
【0099】
これらの組成物は、希釈剤以外の材料、例えばステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤または放出制御用のコーティングを含有させてもよい。
【0100】
経口投与用の液体組成物として、水または液体パラフィン等の不活性希釈剤を含有する、薬学的に許容可能な溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップおよびエリキシルを使用することができる。また、これら組成物は希釈剤以外の物質、例えば湿潤剤、甘味剤または香味剤を含んでいてもよい。
【0101】
非経口投与用の組成物はエマルジョンまたは滅菌溶液とすることができる。溶媒または賦形剤として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、特にオリーブ油または注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルを使用することができる。また、これらの組成物はアジュバント、特に湿潤剤、等張剤、乳化剤、分散剤および安定剤を含有させてもよい。殺菌は、いくつかの方法、例えば細菌フィルターの使用、放射線または加熱によって実施することができる。これらは、使用時に滅菌水またはあらゆる他の注射可能な滅菌媒体に溶解可能な、滅菌固体組成物の形状で調製してもよい。
【0102】
直腸投与用の組成物は、有効成分に加えて、カカオバター、半合成グリセリドまたはポリエチレングリコールのような無効成分を含有する坐薬または直腸カプセルである。
【0103】
また、組成物はエアロゾルとすることができる。液体エアロゾルの形態で使用するために、組成物を、安定した滅菌溶液、または使用時に非発熱性の滅菌水、食塩水若しくはあらゆる他の薬学的に許容可能な賦形剤に溶解した固体組成物とすることができる。直接吸入すべき乾燥エアロゾルの形態で使用するために、有効成分を微粉砕し、水溶性の固形希釈剤または賦形剤、例えばデキストラン、マンニトールまたはラクトースと混合する。
【0104】
1つの実施形態において、本発明の組成物は医薬品組成物または単一ユニット投与形態である。本発明の医薬品組成物および単一ユニット投与形態は、予防または治療に有効な量の1つ以上の予防薬または治療薬(例えば本発明の化合物または他の予防薬または治療薬)と、通常1つ以上の薬学的に許容可能な担体または賦形剤とを含む。特定の実施形態および本件において、「薬学的に許容可能な」という用語は、動物、特にヒトにおける使用に関して連邦政府または州政府の監督官庁により承認されたか、米国薬局方または他の通常認識された薬局方に記載されたものを意味する。「担体」という用語は、治療剤を投与する際の希釈剤、アジュバント(例えばフロイントアジュバント(完全および不完全))、無効成分または賦形剤を指す。このような製剤担体は、滅菌液体、例えば水と、落花生油、大豆油、鉱油、胡麻油等のような石油、動物、野菜または合成由来のものを含む油である。特定の実施形態において、医薬品組成物を静脈内に投与する場合、水が担体である。食塩水溶液、デキストロースおよびグリセロール水溶液を、特に注射可能な溶液に対する液体担体として用いることもできる。適切な薬学的担体の例は、E.W. Martinによる“Remington’s Pharmaceutical Sciences”に記載されている。
【0105】
典型的な医薬品組成物および剤形は、1つ以上の無効成分を含有する。適切な無効成分が薬学分野の当業者に周知であり、適切な無効成分の例としては、特に制限されるものではないが、澱粉、グルコース、ラクトース、サッカロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が挙げられる。特定の無効成分が医薬品組成物または剤形への混和に適切であるかどうかは、限定しないが剤形を被検体に投与する方法および剤形中の特定の活性成分を含む当業界で周知の様々な要因に依存する。組成物または単一ユニット剤形は、所望に応じて、少量の湿潤剤、乳化剤またはpH緩衝剤を含有させてもよい。
【0106】
本発明のラクトースを含まない組成物は、当業界において周知で、例えば米国薬事法(USP)SP(XXI)/NF(XVI)に記載された無効成分を含有することができる。一般に、ラクトースの無い組成物は、薬学的に互換性のある量で、薬学的に許容可能な量の活性成分、結合剤/充填剤および潤滑剤を含有する。典型的なラクトースを含まない剤形としては、活性成分、微結晶性セルロース、α澱粉およびステアリン酸マグネシウムが挙げられる。
【0107】
本発明は、さらに活性成分を含有する無水の医薬品組成物および剤形を包含する。いくつかの化合物が水で分解されるからである。例えば水の添加(例えば5%)は、貯蔵寿命または長期の製剤の安定性等の特徴を決定するために、製剤業界において長期保存をシミュレーションする手段として幅広く受け入れられている。例えばJens T. Carstensen, Drug Stability: Principles & Practice, 2d. Ed., Marcel Dekker, NY, NY, 1995, pp.379−80を参照のこと。実際、水および熱はいくつかの化合物の分解を促進する。従って、水の製剤への作用が非常に重要である。水分および/または湿気が、通常、製剤の製造、取扱い、包装、保管、出荷および使用中に影響するからである。
【0108】
本発明の無水性医薬品組成物および剤形は、無水の、または含水量の低い材料を用いて、低水分または低湿度条件下で製造することができる。ラクトースと、一級または二級のアミンを有する少なくとも1つの活性成分と、を含む医薬品組成物および剤形は、特定の実施形態において、製造、包装および/または保存中に実質的な水分および/または湿気との接触が予期される場合に無水である。
【0109】
無水医薬品組成物は、その無水性が維持されるように調製し、保存すべきである。従って、無水組成物は、これらを適切な処方キットに包含できるように水への露出を防ぐことが知られた材料を使用して包装することが好ましい。適切な包装の例としては、限定しないが、密封したフォイル、プラスチック、ユニット投与容器(例えばバイアル)、ブリスターパックおよびストリップパックが挙げられる。
【0110】
また、本発明は、活性成分の分解速度を低下させる1つ以上の化合物を含む医薬品組成物および剤形を包含する。かかる化合物は、ここで「安定剤」と称し、特に制限されるものではないが、アスコルビン酸のような酸化防止剤、pH緩衝剤または塩緩衝剤が挙げられる。
【0111】
医薬品組成物および単一ユニット剤形は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、丸剤、カプセル、粉末、持続性放出製剤等の形態とすることができる。経口処方剤は、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等のような標準の担体を含むことができる。このような組成物および剤形は、1つの実施形態において、予防または治療に有効な量の精製された形態の予防薬または治療薬を、被検体への適切な投与用形態を付与するのに適した量の担体と共に含有する。製剤は投与様式に適しているべきである。1つの実施形態において、医薬品組成物または単一ユニット剤形は無菌で、動物被検体のような被検体、1つの実施形態においてはヒト被検体のような哺乳類の被検体への投与に適した形態である。
【0112】
本発明の医薬品組成物は、その意図する投与ルートに互換性を有するように処方される。投与ルートの例としては、特に制限されるものではないが、例えば静脈内、皮内、皮下、筋肉内、皮下等の非経口、経口、口腔、舌下、吸入、鼻腔内、経皮、局所、経粘膜、腫瘍内、滑膜生内および直腸の投与が挙げられる。特定の実施形態において、組成物をヒトへの静脈内、皮下、筋肉内、経口、鼻腔内または局所投与に適合する医薬品組成物として常法に従って処方する。一実施形態において、医薬品組成物をヒトへの皮下投与用に常法に従って処方する。通常、静脈内投与用の組成物は、滅菌された等張性水性緩衝剤の溶液である。必要に応じて、組成物はまた可溶化剤および注射部位の痛みを和らげるためのリグノカインのような局所麻酔薬を含んでもよい。
【0113】
剤形の例としては、特に制限されるものではないが、錠剤;カプレット;軟ゼラチンカプセルのようなカプセル;カシェ;トローチ;菱形剤;分散液;坐薬;軟膏;湿布(湿布薬);ペースト;粉末;包帯;クリーム;絆創膏;溶液;パッチ;エアロゾル(例えば点鼻薬または吸入器);ゲル;懸濁液(例えば水性または非水性の液体懸濁液、水中油型エマルジョンまたは油中水型液体エマルジョン)、溶液およびエリキシルを含む被検体への経口または粘膜投与に適した液体剤形;被検体への非経口投与に適した液体剤形;および被検体への非経口投与に適した液体剤形を提供するために再構築し得る無菌の固体(例えば結晶性または非結晶性の固体)が挙げられる。
【0114】
本発明の剤形の組成、形状および種類は、通常その使用に応じて異なる。例えばウイルス感染の初期治療に用いる剤形は、同じ感染の維持療法に用いる剤形より多い量の1つ以上の活性成分を含有することができる。同様に、非経口剤形は、同じ疾病または疾患を治療するのに用いる経口剤形より少ない量の1つ以上の活性成分を含むことができる。本発明に包含される特徴的な剤形が多様な形態を示す、これらの方法及び他の方法は、当業者にとって、明確に理解できるであろう。例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences, 20th ed., Mack Publishing, Easton PA (2000)を参照のこと。
【0115】
一般に、本発明の組成物の成分は、例えば乾燥凍結粉末または水を含まない濃縮物として活性剤の量を示す、アンプルまたは小袋のような密封した容器に、個々に、または一緒に混合されたユニット剤形として供給される。組成物を点滴によって投与すべき場合、それは滅菌製薬品質の水または食塩水を含有する点滴ボトルに分注することができる。組成物を注射によって投与する場合、注射用の滅菌水または食塩水のアンプルを提供することができるので、成分を投与前に混合してもよい。
【0116】
本発明の典型的な剤形は、本明細書に開示の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物または水和物を、一日一回の服用で朝に、または1つの態様においてはその日に摂取する食べ物との分割投与で、一日当たり約0.1mg〜約1000mgを含有する。特定の実施形態において、本発明の剤形は約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1.0、2.0、2.5、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、50.0、100、200、250、500または1000mgの活性型シクロスポリンを有する。
【0117】
<経口剤形>
経口投与に適した本発明の医薬品組成物は、限定しないが、錠剤(例えば咀嚼錠)、カプレット、カプセルおよび液体(例えば風味をつけたシロップ)のような個別の剤形として示すことができる。このような剤形は所定量の活性成分を含有し、当業者に周知の薬学的方法によって調製することができる。一般的にRemington’s Pharmaceutical Sciences, 20th ed., Mack Publishing, Easton PA (2000)を参照のこと。
【0118】
特定の実施形態において、経口剤形は固体であり、前項に詳細に記載したように無水成分を用いて無水条件下で調製される。しかしながら、本発明の範囲は無水の固形経口剤形以外のものも包含する。このようにさらなる形態を本明細書にて開示する。
【0119】
最近の薬学的合成技術に従って、活性薬剤を、少なくとも1つの無効成分と十分に混合して、本発明の特徴的な経口剤形を製造する。無効成分は、投与に望ましい製造形態であれば、多種多様な形態とすることができる。例えば経口液体またはエアロゾルの剤形としての使用に適切な無効成分としては、水、グリコール、油、アルコール、香料、防腐剤および着色剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。固体経口剤形(例えば粉末、錠剤、カプセルおよびカプレット)における使用に適切な無効成分の例としては、澱粉、糖類、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤および崩壊剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0120】
投与を容易とするため、錠剤およびカプセルが最も有利な経口投薬ユニット形態を示し、この場合固体無効成分が用いられる。必要に応じて、錠剤を標準の水性または非水性の技術によってコーティングすることができる。このような剤形は、あらゆる薬学的方法によって調製することができる。一般に、医薬品組成物および剤形は、活性成分を液体担体、微粉細固体担体またはその両方と均一且つ徹底的に混合し、必要に応じて生成物を所望の体裁に成形することによって調製することができる。
【0121】
例えば錠剤は、圧縮または成形することによって調製することができる。圧縮錠剤は、適当な機械で粉末または顆粒のような自由流動形態の活性成分を、任意に無効成分と混合して圧縮することによって調製することができる。成形錠剤は、不活性の液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適当な機械で成形することによって製造することができる。
【0122】
本発明の経口剤形に使用できる無効成分の例としては、限定しないが、結合剤、充填剤、崩壊剤および潤滑剤が挙げられる。医薬品組成物および剤形の使用に適した結合剤としては、特に制限されるものではないが、穀物澱粉、ジャガイモ澱粉または他の澱粉、ゼラチン、アカシア、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギン酸塩、粉末トラガカントゴム、グアーゴム、セルロースおよびその誘導体(例えばエチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、α澱粉、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えばNo.2208,2906,2910)、微結晶性セルロースおよびそれらの混合物のような天然および合成の粘性物質が挙げられる。
【0123】
本明細書に開示の医薬品組成物および剤形の使用に適した充填剤の例は、特に制限されるものではないが、タルク、炭酸カルシウム(例えば顆粒または粉末)、微結晶性セルロース、粉末セルロース、デキストレート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、澱粉、α澱粉およびそれらの混合物を含む。本発明の医薬品組成物中の結合剤または充填剤は、通常、医薬品組成物または剤形の約50〜約99重量%で存在する。
【0124】
微結晶性セルロースの適当な形態は、特に制限されるものではないが、AVICEL PH 101、AVICEL PH 103 AVICEL RC 581、AVICEL PH 105(FMC Corporation, American Viscose Division, Avicel Sales, Marcus Hook, PAから入手可能)およびそれらの混合物として販売されている物質を含む。特定の結合剤は、AVICEL RC 581として販売されている微結晶性セルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムの混合物である。適当な無水、低水分無効成分または添加剤としては、AVICEL PH103およびSTARCH 1500LMが挙げられる。
【0125】
崩壊剤を本発明の組成物に用いて、水性環境にさらした際に崩壊する錠剤を提供する。過剰の崩壊剤を含有する錠剤は保管中崩壊してしまうが、一方で、少なすぎる含有量の錠剤は、所望の速度または所望の条件下で崩壊しない場合がある。従って、活性成分の放出を有害なものに変えるほど過剰でもなく、非常に少なくもない、十分な量の崩壊剤を用いて本発明の固体剤形を形成するべきである。使用する崩壊剤の量は、製剤の種類に基づいて異なり、当業者に容易に認識される。典型的な医薬品組成物は、約0.5〜約15重量%の崩壊剤、特に約1〜約5重量%の崩壊剤を含有する。
【0126】
本発明の医薬品組成物および剤形に使用し得る崩壊剤としては、限定しないが、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、ナトリウム澱粉グリコレート、ジャガイモまたはタピオカの澱粉、α澱粉、他の澱粉、粘土、他のアルギン、他のセルロース、ゴムおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0127】
本発明の医薬品組成物および剤形に使用し得る潤滑剤としては、特に制限されるものではないが、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、水素化植物油(例えば落花生油、綿実油、ヒマワリ油、胡麻油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天およびそれらの混合物が挙げられる。さらなる潤滑剤としては、例えばシロイドシリカゲル(メリーランド州、ボルティモアのW.R. Grace社から製造されているAEROSIL 200)、合成シリカの凝固エアロゾル(テキサス州、プラノのDegussa社から市販されている)、CABO SIL(マサチューセツ州、ボストンのCabot社から販売されている発熱性の二酸化ケイ素製品)およびそれらの混合物が挙げられる。少しでも使用する場合、潤滑剤はそれらが組み込まれる医薬品組成物または剤形の約1重量%未満の量にて一般的に使用される。
【0128】
<遅延放出剤形>
本発明の化合物のような活性成分を、制御放出手段または当業者に既知の送達装置によって投与することができる。例としては、特に制限されるものではないが、米国特許第3,845,770号;第3,916,899号;第3,536,809号;第3,598,123号;第4,008,719号;第5,674,533号;第5,059,595号;第5,591,767号;第5,120,548号;第5,073,543号;第5,639,476号;第5,354,556号;第5,639,480号;第5,733,566号;第5,739,108号;第5,891,474号;第5,922,356号;第5,972,891号;第5,980,945号;第5,993,855号;第6,045,830号;第6,087,324号;第6,113,943号;第6,197,350号;第6,248,363号;第6,264,970号;第6,267,981号;第6,376,461号;第6,419,961号;第6,589,548号;第6,613,358号;第6,699,500号明細書に記載されており、それぞれここに参照して援用する。このような剤形を用いて、例えば所望の放出プロフィールを異なる割合で提供するために、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマー材料、ゲル、透過性の膜、浸透圧法、多層コーティング、微粒子、リボソーム、微小球またはそれらの配合を使用した1つ以上の活性成分の徐放または放出制御を提供することができる。本明細書に記載のものを含む当業者に既知の適当な放出制御製剤を、本発明の活性成分での使用に関し容易に選択することができる。従って、本発明は、特に制限するものではないが、放出制御に適した錠剤、カプセル、ゲルカプセルおよびカプレットのような経口投与に適した単一ユニット剤形を包含する。
【0129】
全ての放出制御製剤製品は、非制御対応物により達成されるものを超えて、薬物療法を改善するといった共通の目的を有する。理想的には、薬物治療に最適に設計された放出制御調剤の使用が、最小限の時間で疾患を治療または制御するための、最小限の薬剤物質を用いることを特徴とする。放出制御製剤の利点として、薬物の延長した活性、減少した投薬回数および上昇した被検体への対応性が挙げられる。さらに、制御放出製剤を使用して、薬物の血液レベルのような作用、または他の特徴の発症時間に影響を及ぼすことができ、従って副作用(例えば逆作用)の発生に影響を及ぼすことができる。
【0130】
大抵の放出制御製剤は、まず所望の治療効果を速やかにもたらす量の薬物(活性成分)を放出し、このレベルの治療的または予防的な効果を長期間に渡って維持する薬物の量を、段階的に、且つ絶えず放出するように設計されている。この一定レベルの薬物を体内で維持するために、薬物は体内から代謝、分泌される薬物量を置き換えるような速度にて剤形から放出する必要がある。活性成分の放出制御は、特に制限されるものではないが、pH、温度、酵素、水または他の生理的条件もしくは化合物を含む様々な条件によって刺激されることがある。
【0131】
特定の実施形態において、薬物を静脈内点滴、移植可能な浸透圧ポンプ、経皮パッチ、リポソームまたは他の投与様式を使用して投与することができる。1つの実施形態においては、パンプを使用することができる(Sefton, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201 (1987); Buchwald et al., Surgery 88:507 (1980); Saudek et al., N. Engl. J. Med. 321:574 (1989)を参照)。他の実施形態においては、ポリマー材料を用いることができる。さらに他の実施形態において、放出制御システムを施術者により決められた、即ち全身服用量の画分のみを必要とする適切な部位で被検体に配置することができる(例えばGoodson, Medical Applications of Controlled Release, vol. 2, pp.115−138 (1984)を参照)。他の放出制御システムが、Langerによる論評(Langer, Science 249:1527−1533 (1990))において論述されている。活性成分を固体内部材料(例えばポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、可塑化または未可塑化のポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、炭酸シリコーン共重合体、アクリル酸およびメタクリル酸のエステルのヒドロゲルのような親水性重合体、コラーゲン、架橋ポリビニルアルコールおよび架橋した部分加水分解ポリ酢酸ビニル)に分散することができ、前記固体内部材料は、体液に不溶性である外部の重合膜(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/エチルアクリレート共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、ネオプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニルと塩化ビニルとの共重合体、塩化ビニリデン、エチレンおよびプロピレン、イオノマポリエチレンテレフタレート、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコール共重合体、エチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコール三元共重合体および体液に不溶なエチレン/ビニルオキシエタノール共重合体)に包摂されている。次いで、活性成分は放出速度制御ステップにおいて外部重合膜を介して拡散する。このような非経口組成物における活性成分の割合は、その特定の性質ならびに被検体の必要性に非常に依存する。
【0132】
<非経口剤形>
固体の無水経口剤形を使用することができるが、本発明はまた非経口剤形を提供する。非経口剤形を被検体に、特に制限されるものではないが、皮下、静脈内(急速静注法を含む)、筋肉内および動脈内を含む様々なルートによって投与することができる。かかる投与において、コンタミネーションに対する被検体の自然免疫能を回避するため、通常、1つの実施形態における非経口剤形は、滅菌であるかまたは被検体への投与前に滅菌することができる。非経口剤形の例としては、特に制限されるものではないが、注射に備えた溶液、注射用の薬学的に許容可能な賦形剤に溶解または懸濁された乾燥生成物、注射に適した懸濁液およびエマルジョンが挙げられる。
【0133】
本発明の非経口剤形を提供するのに使用可能な適切な賦形剤が、当業者に周知である。一例としては、特に制限されるものではないが、注射用水USP;塩化ナトリウム注射、リンゲル注射、デキストロース注射、デキストロースおよび塩化ナトリウム注射および乳酸化リンガー注射のような水性賦形剤;エチルアルコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのような水混和性賦形剤;ならびにトウモロコシ油、綿実油、落花生油、胡麻油、オレイン酸エチル、イソプロピルミリステートおよび安息香酸ベンジルのような非水性賦形剤が挙げられる。
【0134】
本明細書に開示の1つ以上の活性成分の溶解度を向上させる化合物を、本発明の非経口剤形に組み込むこともできる。
【0135】
<経皮、局所および粘膜の剤形>
1つの実施形態において、固体の無水経口剤形を使用することができる。他の態様において、経皮、局所および粘膜の剤形を提供する。本発明の経皮、局所および粘膜の剤形としては、特に制限されるものではないが、点眼薬、スプレー、エアロゾル、クリーム、ローション、軟膏、ゲル、溶液、エマルジョン、懸濁液または他の当業者に知られた形態が挙げられる。例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences, 16thおよび18th eds., Mack Publishing, Easton PA (1980, 1990 & 2000);およびIntroduction to Pharmaceutical Dosage Forms, 4th ed., Lea & Febiger, Philadelphia (1985)を参照のこと。口腔内の粘膜組織を治療するのに適した剤形をうがい薬または経口ゲルとして処方することができる。さらに、経皮剤形としては、皮膚に塗布し、特定の期間静置して所望量の活性成分の浸透を可能にすることができる、「蓄積タイプ」または「マトリックスタイプ」のパッチが挙げられる。
【0136】
本発明に包含される経皮、局所および粘膜剤形を提供するのに使用できる適切な無効成分(例えば担体および希釈剤)および他の成分は、製剤の当業者に周知であり、所定の医薬品組成物または剤形を塗布する特定の組織に依存する。その事実を考慮して、典型的な無効成分としては、特に限定されるものではないが、非毒性および薬学的に許容可能なローション、チンキ、クリーム、エマルジョン、ゲルまたは軟膏を形成するための水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン−1,3−ジオール、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、鉱油およびそれらの混合物が挙げられる。また、必要に応じて、保湿剤または湿潤剤を医薬品組成物および剤形に添加することができる。このような追加成分の例が当業界で周知である。例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences, 16thおよび18th ed., Mack Publishing, Easton PA (1980,1990 & 2000)を参照のこと。
【0137】
治療すべき特定の組織に応じて、追加の成分を本発明の活性成分での治療前、治療中、または治療後に使用することができる。例えば浸透促進剤を使用して活性成分の組織への送達を助けることができる。適当な浸透促進剤としては、限定しないが、アセトン;エタノール、オレイルおよびテトラヒドロフリルのような種々のアルコール;ジメチルスルホキシドのようなアルキルスルホキシド;ジメチルアセトアミド;ジメチルホルムアミド;ポリエチレングリコール;ポリビニルピロリドンのようなピロリドン; Kollidon品質(ポビドン、ポリビドン);尿素;ならびにTween80(ポリソルベート80)およびSpan60(ソルビタンモノステアレート)のような種々の水溶性または不溶性の糖エステルが挙げられる。
【0138】
医薬品組成物もしくは剤形のpHまたは医薬品組成物もしくは剤形を塗布する組織のpHを調節して、1つ以上の活性成分の送達を改善することもできる。同様に、溶媒担体の極性、そのイオン強度または浸透圧を調整して送達を改善することができる。また、ステアリン酸塩等の化合物を医薬品組成物または剤形に添加して、送達を改善するように1つ以上の活性成分の親水性または親油性を有利に変更することができる。この点に関して、ステアリン酸塩は、製剤用の脂質賦形剤;乳化剤または界面活性剤;および送達促進剤または浸透促進剤として機能を果たすことができる。活性成分の異なる塩、水和物または溶媒和物を使用して得られる組成物の物性をさらに調整することができる。
【0139】
<被検体の疾患を治療または予防する方法>
本発明の化合物はシクロフィリンと称する酵素に働き、それら触媒活性を阻害する。他の態様において、化合物または組成物をその投与する工程を備えるシクロフィリンの阻害方法を必要とする被検体に投与する方法を提供する。シクロフィリンは、ヒト、酵母、バクテリア、原生動物、後生動物、昆虫、植物またはウイルスを含む広範囲の異なる生命体に生じる。感染性生命体の場合、本発明の化合物によるシクロフィリン触媒活性の阻害が、しばしば生命体に対する抑制効果をもたらす。さらに、ヒトにおけるシクロフィリンの触媒活性は多くの異なる疾患状態において影響をもたらす。該触媒活性の阻害は、しばしば治療効果と関連する。従って、本発明の特定の化合物を、HCVおよびHIVが原因であるもの(以下に詳細に記載する)ならびに菌類の病原体、原生動物およびメタゾア寄生体が原因であるものを含む感染の治療に使用することができる。さらに、本発明の特定の化合物を使用してアルツハイマー病、パーキンソン病および神経障害のような神経変性疾患を治療することができる。本発明の化合物の他の使用としては、脊髄もしくは頭部の損傷後の麻痺性障害または心筋梗塞症後の心臓障害のような虚血および再かん流に関連する組織の損傷に対する保護がある。さらに、本発明の化合物は、損傷または他の根本的な病状、例えば緑内障の目の神経の障害による再生プロセス、例えば髪、肝臓、歯肉または神経組織の再生を誘発することができる。1つの実施形態において、本発明は細胞におけるシクロフィリンの阻害方法であって、前記細胞に式(I)の有効量の化合物または薬学的に許容可能な塩またはその溶媒和物を投与する工程を提供する。
【0140】
本発明の特定の化合物を使用して、慢性炎症性疾患および自己免疫疾患を治療することができる。免疫抑制薬として、式(I)の特定の化合物が免疫介在性の組織または臓器の移植拒否の予防のために投与する際に有用である。また、本発明の化合物による免疫反応の調節は、慢性関節リウマチ、全身紅斑性狼瘡、高イムノグロブリンE血症、橋本甲状線炎、多発性硬化症、汎発性強皮症、重症筋無力症、1型糖尿病、ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、糸球体腎炎のような自己免疫疾患の治療における有効性が見出された。さらなる用途としては、炎症性および過剰増殖性の皮膚病ならびに免疫を介する疾患の皮膚症状、例えば乾癬、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎および湿疹性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、扁平苔癬、天疱瘡、類天疱瘡、表皮水泡症、蕁麻疹、血管浮腫、脈管炎、紅斑、皮下気腫、紅斑性狼瘡、にきびおよび円形脱毛症;角結膜炎、春季カタル、角膜炎、ヘルペス性角膜炎、円錐角膜、角膜上皮ジストロフィー、角膜白斑、眼天疱瘡、モーレン潰瘍、強膜炎、グレーブス眼症、フォークト−コヤナギ−ハラダ症候群、類肉腫症、多発性骨髄腫等の様々な眼病(自己免疫やその他);COPD、喘息(例えば気管支喘息、アレルギー性喘息、内因性の喘息、外部喘息および塵喘息)、特に慢性的または常習的な喘息(例えば遅発型喘息および気道過敏症)、気管支炎、アレルギー性鼻炎等の疾患を含む閉塞性気道疾患;胃潰瘍、虚血性疾患および血栓症が原因の脈管損害のような粘膜および血管の炎症の治療および予防が挙げられる。さらに、本発明のある化合物によって、過剰増殖性血管病、例えば内膜平滑筋細胞増殖、再狭窄および血管閉塞、特に生物学的または機械的に介在する血管損傷を治療または予防することができる。他の治療可能な疾患は、限定しないが、虚血腸管疾患;炎症性腸疾患、壊死性腸炎、熱傷と関連する腸の病変およびロイコトリエンB4を介在する疾患;腸の炎症/アレルギーである小児脂肪便症、直腸炎、好酸性胃腸炎、肥満細胞症、クローン病および潰瘍性大腸炎;消化管と関係の薄い症状を有する食品関連のアレルギー疾患(例えば片頭痛、鼻炎および湿疹);腎疾患である間質性腎炎、グッドパスチャー症候群、容血性尿毒症症候群および糖尿病性ネフロパシ;神経系の疾患である多発性筋炎、ギラン・バレー症候群、メニエール病、多発性神経炎、多発性神経炎、単発神経炎および神経根神経病;内分泌疾患である甲状腺機能亢進症およびバセドー病;血液疾患である赤芽球癆、無形成性貧血、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、無顆粒球症、悪性貧血、巨大赤芽球性貧血および赤血球形成不全;骨疾患である骨粗鬆症;呼吸器疾患である類肉腫症、肺線維症および原因不明の間質性肺炎;皮膚病である皮膚筋炎、尋常性白斑、尋常性魚鱗癬、光線過敏症および皮膚T細胞リンパ腫;循環疾患である動脈硬化、アテローム性動脈硬化症、大動脈炎症候群、結節性多発性動脈炎および心筋症;膠原病である硬皮症、ヴェゲナー肉芽腫およびシェーグレン症候群;脂肪過多;好酸性筋膜炎;歯周病である歯肉、歯周組織、歯槽骨および歯のセメント質の病変;ネフローゼ症候群である糸球体腎炎;脱毛の予防もしくは毛芽の提供および/または髪生成の促進および、育毛による男性型脱毛症または老人性脱毛症;筋ジストロフィー;膿皮症およびセザリー症候群;アジソン病;活性酸素の介在された疾患、例えば臓器損傷である保存、移植または虚血性疾患(例えば血栓症および心臓の梗塞)に応じて生じる臓器(例えば心臓、肝臓、腎臓および消化管)の虚血−再かん流傷害;薬物または放射線が原因の腸の疾患であるエンドトキシン−ショック、偽膜性大腸炎および大腸炎;腎疾患である虚血性急性腎不全および慢性腎不全;肺−酸素または薬物が原因の肺疾患である中毒症(例えばパラコートおよびブレオマイシン)、肺癌および肺気腫;眼性疾患である白内障、鉄症、網膜炎、網膜色素変性、老人性黄斑変性症、硝子体瘢痕化および角膜アルカリ熱傷;皮膚炎である多形性紅斑、線状IgA水疱症およびセメント皮膚炎;ならびに他の歯肉炎、歯周炎、敗血症、膵炎、環境汚染(例えば大気汚染)、老化、発癌、癌の転移および高山病が原因の疾患;ヒスタミンまたはロイコトリエン−C4放出が原因となる疾患;口腔、皮膚、目、外陰部、関節、副睾丸、肺、腎臓等に影響を及ぼすベーチェット病である腸、血管または神経ベーチェット病、ならびにベーチェット病を含む。さらに、本明細書に開示の特定の化合物は、肝臓疾患、例えば免疫原性の疾病(例えば自己免疫肝炎、原発性胆汁性肝硬変および硬化性胆管炎からなる群のような慢性自己免疫肝疾患)、肝臓部分的切除、急性肝壊死、肝硬変(例えばアルコール性肝硬変)、肝不全である劇症肝炎、遅発性肝不全および急性肝不全の慢性肝疾患の治療および予防に有用である。
【0141】
免疫抑制特性を有する上記式(I)の化合物は、免疫不全患者(例えばHIVまたはAIDSを有する患者)の治療に適していない場合があることが理解される。
【0142】
<被検体のHCVおよび/またはHIV感染の治療または予防方法>
本発明は、ウイルス感染の治療または予防に本発明の化合物または組成物を用いた方法を必要とする被検体に投与する方法を提供する。一般に、該方法は有効量の化合物または組成物を被検体に投与して、ウイルス感染を治療または予防する工程を備える。特定の実施形態において、ウイルス感染はHCV感染もしくはHIV感染またはHCVとHIVの重感染である。
【0143】
本発明のある実施形態として、被検体はHCVに感染したか、その感染の危険性のある、あらゆる被検体である。感染または感染の危険性は、当業者にとって適切であると考えられる、あらゆる技術によって判定することができる。ある実施形態として、被検体はHCVに感染したヒトである。1つの実施形態において、HCV複製を阻害する方法を提供し、前記方法はHCV感染細胞を有効量の上記に規定するような式(I)の化合物または薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物と接触させる工程を備える。
【0144】
HCVは当業者に既知のあらゆるHCVとすることができる。現在、当業者に知られているHCVとしては、少なくとも6つのジェノタイプおよび少なくとも50個のサブタイプが存在する。HCVは当業者に公知のあらゆるジェノタイプまたはサブタイプであってよい。ある実施形態において、HCVは、未同定のジェノタイプまたはサブタイプとする。ある実施形態では、被検体は単一のジェノタイプのHCVに感染している。ある実施形態では、複数のサブタイプまたは複数のジェノタイプのHCVに感染している。
【0145】
ある実施形態において、HCVはジェノタイプ1型であり、あらゆるサブタイプであってよい。例えばある実施形態において、HCVはサブタイプ1a型、1b型または1c型である。ジェノタイプ1型のHCV感染は、最近のインターフェロン療法に対して感受性が低いと考えられている。本発明の方法はジェノタイプ1型のHCV感染症の療法に有効となり得る。
【0146】
ある実施形態において、HCVはジェノタイプ1型以外のものである。ある実施形態において、HCVはジェノタイプ2型であり、あらゆるサブタイプであってよい。例えばある実施形態において、HCVはサブタイプ2a型、2b型または2c型である。ある実施形態において、HCVはジェノタイプ3型であり、あらゆるサブタイプであってよい。例えばある実施形態において、HCVはサブタイプ3a型または3b型でとすることができる。ある実施形態において、HCVはジェノタイプ4型であり、あらゆるサブタイプであってよい。例えばある実施形態において、HCVはサブタイプ4a型である。ある実施形態において、HCVはジェノタイプ5型であり、あらゆるサブタイプであってよい。例えばある実施形態において、HCVはサブタイプ5a型である。ある実施形態において、HCVはジェノタイプ6型であり、あらゆるサブタイプであってよい。例えばある実施形態において、HCVはサブタイプ6a型、6b型、7b型、8b型、9a型または11a型である。例えばSimmonds, 2004, J Gen Virol. 85:3173−88; Simmonds, 2001, J. Gen. Virol. 82, 693−712を参照し、その内容のすべてをここに取り込む。
【0147】
本発明のある実施形態において、被検体は、一度もHCV感染症に対する治療または予防を受けたことがないものとする。本発明のさらなる実施形態において、被検体は、以前HCV感染症に対する治療または予防を受けたことがあるものとする。例えば、ある実施形態において、被検体はHCV療法に反応してこなかったものである。実際、従来のインターフェロン療法において、50%までの、またはそれ以上のHCV被検体者が療法に反応しない。ある実施形態において、被検体は治療を受けたことがあるが、ウイルス感染症またはその1つ以上の症状を有する被検体とすることができる。ある実施形態において、被検体は、治療を受けたが、ウイルス低減の達成に失敗したものとすることができる。ある実施形態において、被検体は、HCV感染症の治療を受けたが、療法から12週間後HCVのRNAレベルにおいて、2log10低減することに失敗したものとする。治療12週間後に血清HCVのRNAが、2log10を超える減少を示さない被検体は、97〜100%の確率で反応しないと考えられている。本発明の化合物は、最近のHCV療法以外の機構によって作用するため、本発明の化合物はこのような非応答の被検体の治療に効果的であると考えられる。
【0148】
ある実施形態において、被検体は1つ以上の治療と関連する有害事象のため、HCV療法を中断した被検体としてもよい。ある実施形態において、被検体は最近の治療が勧められない被検体とする。例えばHCVのためのある治療は、神経精神病学的症状と関連している。インターフェロン(IFN)−αとリバビリンは、高い割合で、うつ病と関連する。うつ病の症状は、数々の治療失敗例に関連している。生死に関わるか、致命的な神経精神病学的現象として、HCV治療中の、自殺および自殺念慮、殺人念慮、うつ病、薬物中毒の再発/過剰摂取および攻撃的な行動等が、前兆としての身体的な不具合を伴って、または伴わずに生じてきた。インターフェロンによって誘発されるうつ病は、特に精神医学的障害を有する被検体に対する、慢性C型肝炎の治療を制限してしまう。精神的な副作用はインターフェロン療法において一般的であり、最近のHCV感染症療法の中断原因の約10%〜20%を占める。
【0149】
従って、本発明は、最近のHCV治療では治療禁忌とされる、神経精神病学的症状、例えばうつ病の危険性のある被検体におけるHCV感染症の治療または予防方法を提供する。また本発明は、最近のHCV治療では治療の中断が推奨される、神経精神病学的症状、例えばうつ病またはその危険性のある被検体に、HCV感染症の治療または予防方法を提供する。また、本発明は、最近のHCV治療では投薬量の低減が推奨される、神経精神病学的症状、例えばうつ病またはその危険性のある被検体に、HCV感染症の治療または予防方法を提供する。
【0150】
また、従来の治療は、インターフェロンもしくはリバビリンまたはそれら双方、またはあらゆるインターフェロンもしくはリバビリンの他の製剤製品の成分に対して、過敏性の被検体を禁忌としている。従来の治療は、異常血色素症である被検体(例えばサラセミアメジャー、鎌型赤血球貧血症)および従来の治療の血液学的副作用の危険性のある他の被検体には推奨されない。一般的な血液学的な副作用として、骨髄抑制、好中球減少および血小板減少が挙げられる。さらに、リバビリンは赤血球に対して毒性があり、溶血と関与する。従って、また本発明はインターフェロンもしくはリバビリンまたはそれら双方に敏感な被検体、異常血色素症を有する被検体であり、例えばサラセミアメジャーの被検体および鎌型赤血球貧血症の被検体、ならびに最近の治療の血液学的な副作用の危険性のある他の被検体における、HCV感染症の治療または予防方法を提供する。
【0151】
ある実施形態において、HCV治療を受けてきた被検体については、本発明の方法を投与する前に、その治療を中断する。また、さらなる実施形態において、被検体に治療を実施し、その治療を本発明の方法と併用して継続する。本発明の方法は、当業者の判断に従って、HCVに対する他の療法と併用してもよい。有利な実施形態において、本発明の方法または組成物を、投与量を減じた他のHCV治療と、同時に実施し、または投与することができる。
【0152】
ある実施形態において、本発明はインターフェロンによる治療に対して抵抗性のある被検体の治療方法を提供する。例えば、いくつかの実施形態において、被検体はインターフェロン、インターフェロンα、ペグインターフェロンα、インターフェロンとリバビリン、インターフェロンαとリバビリン、およびペグインターフェロンαとリバビリンからなる群から選択される1以上の薬剤との治療に対する反応に劣る被検体である。いくつかの実施形態において、被検体はインターフェロン、インターフェロンα、ペグインターフェロンα、インターフェロンとリバビリン、インターフェロンαとリバビリンおよびペグインターフェロンαとリバビリンからなる群から選択される、1以上の薬剤との治療に対する反応がない被検体としてもよい。
【0153】
さらなる実施形態において、本発明は、妊婦または妊娠の可能性がある被検体におけるHCV感染症の治療方法を提供する。従来の両方が、妊婦に禁忌を示すからである。
【0154】
ある実施形態において、本発明の方法または組成物を肝移植後の被検体に投与する。C型肝炎は、米国において肝移植の原因となり、肝移植を経た多くの被検体は、移植後も依然としてHCV陽性のままである。本発明は、本発明の化合物または組成物を用いて、このようにHCVを再発した被検体を治療する方法を提供する。ある実施形態において、本発明は、HCV感染症の再発を予防するため、肝臓移植前、移植中または移植後の被検体への治療方法を提供する。
【0155】
一般式(I)のシクロスポリン化合物は、レトロウイルス疾病、特にAIDSおよびAIDSを伴う症候群の予防および疾患に有用となり得る。予防は、特にHIVウイルス、詳細には一次感染の数ヶ月後または数年後に疾病を発症する危険性を示す、無症候性血清反応陽性者の被検体の治療を意味すると解釈される。この態様において、本発明に係る一般式(I)のシクロスポリン化合物は、あらゆる細胞毒性または細胞増殖抑制作用の無い濃度で抗レトロウイルス活性を示す。
【0156】
本発明の実施形態において、被検体はHIVに感染したか、その感染の危険性のある、あらゆる被検体である。感染または感染の危険性は、当業者にとって適切であると考えられるあらゆる技術によって判定することができる。ある実施形態として、被検体はHIVに感染したヒトである。HIVは当業者に公知のあらゆるHIVとすることができる。
【0157】
本発明のある実施形態において、被検体は、一度もHIV感染症に対する治療または予防を受けたことがないものとする。本発明のさらなる実施形態において、被検体は、以前HIV感染症に対する治療または予防を受けたことがあるものとする。例えば、ある実施形態において、被検体は、HIV療法に反応しない。ある実施形態において、被検体は、治療を受けたことがあるが、ウイルス感染症またはその1つ以上の症状を有する被検体とすることができる。ある実施形態において、被検体は、治療を受けたが、ウイルス低減の達成に失敗したものとすることができる。
【0158】
ある実施形態において、被検体は、1つ以上の治療と関連する有害事象のため、HIV療法を中断した被検体としてもよい。ある実施形態において、被検体は、従来の治療が勧められない被検体とする。ある実施形態において、被検体はHIV治療を受け、本発明の方法を投与する前に、その治療を中断する。またさらなる実施形態において、被検体に治療を実施し、その治療を本発明の方法と併用して継続する。本発明の方法は、当業者の判断に従って、HIVに対する他の療法と併用してもよい。有利な実施形態において、本発明の方法または組成物を、投与量を減じた他のHIV治療と、同時に実施することができる。
【0159】
ある実施形態において、本発明はHIV治療に対して抵抗性のある被検体の治療方法を提供する。例えばいくつかの実施形態において、被検体は1つ以上のHIVに対する治療薬での治療に応答するのに失敗した被検体とすることができる。いくつかの実施形態において、被検体は1つ以上のHIVに対する治療薬での治療に若干応答した被検体とすることができる。
【0160】
ある実施形態において、被検体はHCVとHIVに重感染しているか、その危険性のある被検体とする。例えば米国において、HIV感染被検体の30%はHCVに重感染していて、HIVに感染した人々は、C型肝炎に単独で感染した人々より、比較的速い進行を見せることがMaier and Wu, 2002, World J Gastroenterol 8:577−57に示されている。このような被検体において、HCV感染症の治療または予防に本発明の方法を使用することができる。これらの被検体におけるHCVの除去は、末期肝臓疾患による死亡率を低下させると考えられる。実際、進行性の肝臓疾患の危険性は、重篤なAIDS指標免疫不全である被検体において、そうでない者より高い。例えばLesens et al., 1999, J Infect Dis 179:1254−1258を参照のこと。特定の実施形態において、本発明はHIV感染およびHCV感染の治療または予防方法を必要とする被検体に提供する。
【0161】
<投薬およびユニット剤形>
ヒトの治療において、医師は、予防処置かまたは治療処置かによって、かつ治療すべき被検体に特異的な年齢、体重、感染の段階および他の要因によって、最も適切であると考えられる薬量を決定する。通常、投与量は成人において、約1〜約1500mg/日、もしくは約50〜約1300mg/日、または約100〜約1100mg/日である。1つの実施形態において、投与量は約250〜約1000mg/日である。
【0162】
さらなる態様において、本発明は、それを必要とする被検体に、本発明の有効量の化合物またはその薬学的に許容可能な塩をHIVおよび/またはHCVに対する高い治療指数で投与することにより、被検体のHIVおよび/またはHCV感染を治療または予防する方法を提供する。治療指数は、当業者に既知のあらゆる方法、例えば、以下の実施例に記載した方法に従って測定することができる。特定の実施形態において、治療指数は、化合物が有毒性を呈する濃度 対 HIVおよび/またはHCVに有効な濃度の比率である。毒性は、細胞毒性(例えばIC50またはIC90)および致死量(例えばLD50またはLD90)を含む、当業者に既知のあらゆる技術によって決定することができる。同様に、有効濃度は、有効濃度(例えばEC50またはEC90)および有効投与量(例えばED50またはED90)を含む、当業者に既知のあらゆる技術によって決定することができる。
【0163】
障害またはその1つ以上の症状の予防または治療に有効な本発明の化合物または組成物の量は、疾病または疾患の特徴ならびに重篤度、活性成分の投与経路によって異なる。回数および投薬量はまた、投与された特異的療法(例えば治療薬または予防薬)、障害、疾病または疾患の重篤度、投与経路ならびに被検体の年齢、身体、体重、反応および過去の病歴に応じた各被検体に特異的な因子によって異なる。有効投与量は、生体外または動物モデルの試験システムに由来した、投与量―応答曲線から推定することができる。
【0164】
典型的な組成物の投与量として、被検体またはサンプル重量のkg当たり活性成分の量mgまたはμg(例えば約10μg/kg〜約50mg/kg、約100μg/kg〜25mg/kgまたは100μg/kg〜約10mg/kg)が挙げられる。本発明の組成物に関して、被検体に投与する投薬量は、通常、活性成分の重量に基づいて被検体の体重1kg当たり約0.140mg〜約3mgである。特定の態様において、被検体に投与する投薬量は、被検体の体重1kg当たり0.20mg〜2.00mg、または0.30mg〜1.50mgである。
【0165】
一般に、本明細書に記載の疾患に対する、本発明の組成物の推奨される一日の投与量範囲は、一回で一日一度の服用量または一日に分割した服用量として投与して、一日あたり約0.1mg〜約1500mgの範囲内である。1つの実施形態において、一日の服用量は、等しく分割した服用量で一日二回投与する。特に、一日の投与量範囲は約50mg/日〜約1300mg/日、より詳細には約100mg/日〜約1100mg/日、またはさらにより詳細には約250mg/日〜約1000mg/日であるべきである。いくつかの場合において、本明細書に開示の範囲外の活性成分の投与量を使用する必要があり得ることは、当業者にとって明白である。さらに臨床医または治療医師が、被検体の反応によって、療法を如何に中断、調整または終了するかどうかを知っているか留意すべきである。
【0166】
種々の治療に有効な量を、異なる疾病および疾患に適用することができることは、当業者にとって容易に理解できる。同様に、かかる障害を、予防、管理、治療または改善するのに十分であるが、本発明の組成物と関連する副作用を生じるほどではない、または減じさせる量についても、上記投薬量および投薬回数スケジュールに包含される。さらに、被検体に本発明の組成物を複数会の投薬で投与する場合、全ての投薬量が同じである必要はない。例えば被検体に投与する服用量を増やして組成物の予防または治療効果を向上させてもよく、または減らして特定の被検体が経験する1つ以上の副作用を軽減させてもよい。
【0167】
特定の実施形態において、治療または予防は、本発明の化合物または組成物の1つ以上の導入量と、それに続く1つ以上の維持量で開始することができる。
【0168】
特定の実施形態において、本発明の化合物または組成物の服用量を投与して、被検体の血液または血清中に活性成分を定常濃度とすることができる。定常濃度は、当業者に利用可能な測定によって決定することができるか、または身長、体重および年齢のような被検体の身体的特徴に基づくことができる。
【0169】
特定の態様において、本発明は本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を投与に適した形態で含有する単位投与量を提供する。かかる形態は、上記に詳細に記載されている。ある実施形態において、単位投与量は1〜1500mg、5〜250mgまたは10〜50mgの活性成分を含有する。特定の実施形態において、単位投与量は約1、5、10、25、50、100、125、250、500または1000mgの活性成分を含有する。かかる単位投与量は、当業者によく知られている技術に従って調製することができる。
【0170】
<併用療法>
本発明は、HIVおよび/またはHCV感染の治療または予防に効果的な、第2薬剤を必要とする被検体に投与することを備えた治療または予防方法を提供する。第2薬剤は、HIVおよび/またはHCV感染の治療または予防に効果的な、当業者に既知のあらゆる薬剤とすることができる。第2薬剤は、現在当業者に既知の第2薬剤とするか、または第2薬剤はHIVおよび/またはHCVの治療または予防のため最近開発された第2薬剤とすることができる。特定の実施形態において、第2薬剤はHIVおよび/またはHCVの治療用または予防用として現在承認されている。
【0171】
特定の実施形態において、本発明の化合物を第2薬剤、例えばHCV薬剤と組み合わせて投与する。さらなる実施形態において、第2薬剤を2つの第2薬剤と組み合わせて投与する。なお、さらなる実施形態において、第2薬剤を二つ以上の第2薬剤と組み合わせて投与する。第2のHCV薬剤の例としては、インターフェロン、ペグインターフェロン、リバビリン、テラプレビル、ボセプレビルまたはITMN−191等のプロテアーゼ阻害剤またはR−7128等のポリメラーゼ阻害剤が挙げられる。1つの実施形態において、本発明の化合物は2つの異なるHCV薬剤の組み合わせ(例えばペグインターフェロンとリバビリン、ペグインターフェロンとプロテアーゼ阻害剤、ペグインターフェロンとポリメラーゼ阻害剤)を提供する。この実施形態の他の態様において、本発明の化合物は3つの異なるHCV薬剤の組み合わせ(例えばペグインターフェロン、リバビリンとプロテアーゼ阻害剤;ペグインターフェロン、リバビリンとポリメラーゼ阻害剤;リバビリン、プロテアーゼ阻害剤とポリメラーゼ阻害剤)を提供する。
【0172】
<キット>
本発明は、HIVおよび/またはHCV感染の治療または予防方法に用いるためのキットも提供する。キットは、本発明の医薬化合物または組成物と、細菌感染の治療または予防の使用に関する健康管理供給者に情報を提供する説明書とを備えることができる。説明書は、印刷形態、フロッピーディスク、CDもしくはDVDのような電子媒体形態または該説明書を入手できるウェブサイトアドレスの形態で提供することができる。本発明の化合物または組成物の単位投与量は、被検体に投与した際に化合物または組成物の治療または予防に有効な血漿レベルを、被検体にて少なくとも1日間維持できるような投与量を備えることができる。いくつかの実施形態において、本発明の化合物または組成物を、滅菌した水性医薬品組成物または乾燥粉末(例えば凍結乾燥)の組成物として含むことができる。
【0173】
いくつかの実施形態において、適当な包装を提供する。ここで用いる「包装」はシステムに慣習的に使用され、被検体への投与に適した本発明の化合物または組成物を、一定の限度内で保持することができる、固体マトリックスまたは材料を指す。このような材料として、ガラスおよびプラスチック(例えばポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリカーボネイト)のボトル、バイアル、紙、プラスチックおよびプラスチック箔積層包装材料等が挙げられる。eビーム滅菌技術を用いる場合、包装は内容物の滅菌を可能とするのに十分低い密度を有するべきである。
【0174】
本発明のキットは本発明の化合物または組成物に加えて、上記方法に記載したような化合物または組成物との使用のための、第2薬剤または第2薬剤を含有する組成物を備えることができる。
【実施例】
【0175】
以下の実施例は、本発明に用いる典型的なシクロスポリン化合物の合成を示し、以下の参考例はその調製における中間体の合成を示す。これらの例は、本発明の範囲を限定することを意図するものでも、そのように解釈されるべきものでもない。本明細書に具体的に記載された態様以外でも、本発明を実施することができることが明白である。本発明の多くの修正変更が本明細書の教示の観点から可能な、本発明の多くの修正・変更は、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0176】
実施例1
炉乾燥した50mLの丸底フラスコはビグリューカラム、不活性ガスインレットを備える。[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA(250mg、0.205mmol)、2−ベンジルオキシ−1−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホン酸(143mg、0.41mmol)、酸化マグネシウム(軽焼)(16.5mg、0.41mmol)、α,α,α−トリフルオロトルエン(1mL)を反応フラスコに添加した。不均一反応混合物を、予め82℃に加熱したオイルバスに浸し、24時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、ジクロロメタンで希釈し、シリカゲルで蒸発させた。0〜100%の濃度勾配をつけた10%メタノール/酢酸エチルのヘプタン溶液で溶出するフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、白い固体として[4’−ベンジルオキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA(化合物A)を得た;1H NMR (400 MHz, CDC13) δ ppm 0.68 (d, J = 5.71 Hz, 3 H), 2.70 (s, 3 H), 2.71 (s, 3 H), 2.96 (s, 3 H), 3.09 (s, 3 H), 3.27 (s, 3 H), 3.27 (s, 3 H), 3.52 (s, 3 H), 3.74 (m, 1 H), 4.28 (d, J = 10.54 Hz, 1 H), 4.34 (d, J = 10.54 Hz, 1 H), 4.43 (m, 1 H),4.54 (m, 1 H), 4.61 (m, 1 H), 4.82 (m, 1 H), 4.92 (dd, J = 9.08, 6.49 Hz, 1 H), 4.99 (m, 1 H), 5.06 (m, 1 H), 5.16 (d, J = 10.83 Hz, 1 H), 5.35 (m, 2 H), 5.52 (m, 2 H), 5.70 (dd, J = 10.69, 4.03 Hz, 1 H), 7.11 (d, J = 7.91 Hz, 1 H), 7.30 (m, 5 H), 7.46 (d, J = 8.15 Hz, 1 H), 7.56 (d, J = 7.52 Hz, 1 H), 7.77 (d, J = 9.71 Hz, 1 H); LCMS- MS (ESI+) 1308.9 (M+H).2−ベンジルオキシ−1−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホン酸は、Poon, K. W. C; Albiniak, P. A.; Dudley, G. B. Org. Synth. 2007, 84, 295に記載されている。
【0177】
実施例2
乾燥p−トルエンスルホン酸(127mg、0.74mmol)をエタノール中の[4’−ヒドロキシル−N−メチルロイシン]シクロスポリンA(1.0g、0.82mmol)に添加した。フラスコを空にし、アルゴンを加え、その後、オルトギ酸トリエチル(2.2mL、14.8mmol)を添加した。混合物を室温で3日撹拌し、飽和水性炭酸水素ナトリウムで希釈し、酢酸エチルを用いて抽出した。有機層の組み合わせを、シリカゲルを用いて乾燥し、濾過し、濃縮した。0〜100%の濃度勾配をつけた酢酸エチル/ヘプタン混合物で溶出するクロマトグラフィーにより精製して、白い固体として[4’−エトキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA(化合物B)を得た;1H NMR (400 MHz, CDC13) δ ppm 0.70 (d, J = 5.71 Hz, 3 H), 2.70 (s, 3 H), 2.71 (s, 3 H), 3.10 (s, 3 H), 3.13 (s, 3 H), 3.26 (s, 3 H), 3.33 (m, 2 H), 3.40 (s, 3 H), 3.52 (s, 3 H), 3.78 (m, 1 H), 4.54 (m, 1 H), 4.63 (t, J = 9.12 Hz, 1 H), 4.70 (m, 1 H), 4.83 (m, 1 H), 4.95 (m, 1 H), 5.06 (m, 2 H), 5.15 (d, J = 10.64 Hz, 1 H), 5.35 (m, 2 H), 5.51 (m, 2 H), 5.72 (dd, J = 10.88, 4.15 Hz, 1 H), 7.14 (d, J = 7.91 Hz, 1 H), 7.49 (d, J = 8.15 Hz, 1 H), 7.59 (d, J = 7.52 Hz, 1 H), 7.87 (d, J = 9.76 Hz, 1 H); LCMS- MS (ESI+) 1246.9 (M+H);
【0178】
および[4’−デヒドロ]シクロスポリンA;1H NMR (400 MHz, CDC13) δ ppm 0.73 (d, J = 6.10 Hz, 3 H), 2.70 (s, 3 H), 2.71 (s, 3 H), 3.10 (s, 3 H), 3.12 (s, 3 H), 3.27 (s, 3 H), 3.40 (s, 3 H), 3.51 (s, 3 H), 3.79 (m, 1 H), 4.53 (m, 1 H), 4.68 (t, J = 8.80 Hz, 1 H), 4.71 (br s, 1 H), 4.77 (br s, 1 H), 4.82 (m, 1 H), 4.99 (m, 1 H), 5.06 (m, 2 H), 5.13 (d, J = 10.83 Hz, 1 H), 5.35 (m, 2 H), 5.49 (d, J = 4.00 Hz, 1 H), 5.52 (dd, J = 12.10, 3.37 Hz, 1 H), 5.71 (dd, J = 10.98, 3.90 Hz, 1 H), 7.17 (d, J = 7.96 Hz, 1 H), 7.53 (d, J = 8.35 Hz, 1 H), 7.65 (d, J = 7.42 Hz, 1 H), 8.00 (d, J = 9.81 Hz, 1 H); LCMS- MS (ESI+) 1200.9 (M+H).
【0179】
エタノールの代わりにメタノール、オルトギ酸トリエチルの代わりにオルトギ酸トリメチルを使用する同様の工程によって、[4’−メトキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA(化合物C)を調製した;1H NMR (400 MHz, CDC13) δ ppm 0.70 (d, J = 5.71 Hz, 3 H), 2.70 (s, 3 H), 2.71 (s, 3 H), 3.11 (s, 3 H), 3.13 (s, 3 H), 3.26 (s, 3 H), 3.40 (s, 3 H), 3.52 (s, 3 H), 3.78 (m, 1 H), 4.12 (m, 1 H), 4.54 (m, 1 H), 4.64 (t, J = 9.12 Hz, 1 H), 4.70 (m, 1 H), 4.83 (m, 1 H), 4.95 (m, 1 H), 5.07 (m, 2 H), 5.15 (d, J = 10.88 Hz, 1 H), 5.35 (m, 2 H), 5.50 (m, 2 H), 5.72 (dd, J = 10.79, 4.03 Hz, 1 H), 7.13 (d, J = 7.91 Hz, 1 H), 7.49 (d, J = 8.15 Hz, 1 H), 7.59 (d, J = 7.52 Hz, 1 H), 7.87 (d, J = 9.81 Hz, 1 H); LCMS- MS (ESI+) 1232.2 (M+H).[4’−デヒドロ]シクロスポリンAを反応の第2産物として得た。
【0180】
実施例3
p−トルエンスルホン酸一水和物(12.2mg、0.064mmol)を2mLのエタノール中の[(R)−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルチオ−Sar]−[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA(51.5mg、0.039mmol)に添加した。フラスコを空にし、アルゴンを加え、その後オルトギ酸トリエチル(0.116mL、0.701mmol)を添加した。混合物を室温で3日間撹拌し、シリカゲルを用いて蒸発させた。0〜100%の濃度勾配をつけたジクロロメタン/メタノール/水酸化アンモニウムのジクロロメタン混合物を用いたクロマトグラフィー溶出による精製は、[(R)−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルチオ−Sar]−[4’−エトキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA(化合物D)を白い固体として得た;1H NMR (400 MHz, CDC13) δ ppm 0.69 (d, J = 6.10 Hz, 3 H), 2.24 (s, 6 H), 2.70 (s, 6 H), 3.12 (s, 3 H), 3.16 (s, 3 H), 3.26 (s, 3 H), 3.35 (m, 2 H), 3.45 (s, 3 H), 3.49 (s, 3 H), 3.76 (m, 1 H), 4.54 (m, 1 H), 4.64 (t, J = 9.13 Hz, 1 H), 4.84 (m, 1 H), 4.98 (m, 1 H), 5.07 (m, 2 H), 5.14 (d, J = 10.79 Hz, 1 H), 5.34 (m, 2 H), 5.51 (dd, J = 15.91, 6.30 Hz, 1 H), 5.70 (dd, J = 10.59, 3.76 Hz, 1 H), 6.02 (s, 1 H), 7.14 (d, J = 8.35 Hz, 1 H), 7.37 (d, J = 8.15 Hz, 1 H), 7.63 (d, J = 7.52 Hz, 1 H), 7.95 (d, J = 9.71 Hz, 1 H); LCMS- MS (ESI+) 1349.7 (M+H);
【0181】
および[(R)−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルチオ−Sar]−[4’−デヒドロ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA;1H NMR (400 MHz, CDC13) δ ppm 0.71 (d, J = 5.91 Hz, 3 H), 2.24 (s, 6 H), 2.70 (s, 6 H), 3.11 (s, 3 H), 3.12 (s, 3 H), 3.27 (s, 3 H), 3.43 (s, 3 H), 3.51 (s, 3 H), 3.86 (m, 1 H), 4.55 (m, 1 H), 4.68 (t, J = 8.80 Hz, 1 H), 4.71 (br s, 1 H), 4.77 (br s, 1 H), 4.82 (m, 1 H), 4.99 (m, 1 H), 5.06 (m, 2 H), 5.13 (d, J = 10.83 Hz, 1 H), 5.35 (m, 2 H), 5.49 (d, J = 4.00 Hz, 1 H), 5.52 (dd, J = 12.10, 3.37 Hz, 1 H), 5.71 (dd, J = 10.98, 3.90 Hz, 1 H), 5.95 (s, 1 H), 7.17 (d, J = 7.96 Hz, 1 H), 7.53 (d, J = 8.35 Hz, 1 H), 7.65 (d, J = 7.42 Hz, 1 H), 8.00 (d, J = 9.81 Hz, 1 H); LCMS- MS (ESI+) 1303.6 (M+H).
【0182】
オルトギ酸トリエチルを用いたエーテル化はLinnanen et al., Journal of Medicinal. Chemistry (2000) Volume 43, page 1339に記載されている。
【0183】
[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンAを、欧州特許第484,281号明細書に開示された方法に従って調製し、開示物を特にここに参照して援用した。
【0184】
<HCV活性>
本発明の化合物のHCVに対する活性について、Kriger et al., Journal of Virology, 2001 volume 75, p.4614−4624, Pietschmann et al., Journal of Virology, 2002 volume 76, p.4008−4021の記載を応用した方法を使用し、また米国特許第6,630,343号明細書に記載されたHCVのRNAコンストラクトを使用して試験した。また、それらの内容のすべてをここに参照して援用する。化合物を、ヒト肝癌細胞株ET(lub ubi neo/ET)、安定したルシフェラーゼ(LUC)レポータを含有するHCVのRNAレプリコンにおいて検査した。HCVのRNAレプリコンETは、ホタルルシフェラーゼ(LUC)の産生を促進するHCVの5’末端(HCV内部リボソーム結合配列(IRES)およびHCVコアタンパク質の最初の数個のアミノ酸を有する)、ユビキチンおよびネオマイシンホスホトランフェラーゼ(NeoR)融合タンパク質を含む。ユビキチンの開裂はLUCおよびNeoRタンパク質を放出する。EMCVのIRES要素は、HCV構造タンパク質NS3−NS5の翻訳を制御する。NS3タンパク質はHCVポリタンパク質を開裂してHCV複製に必要な成熟NS3、NS4A、NS4B、NS5AおよびNS5Bタンパク質を放出する。レプリコンの3’末端に本物のHCVの3’NTRが存在する。LUCレポータの活性はHCV複製レベルに直接比例し、陽性コントロールの抗ウイルス化合物はLUCの端点を使用した再現可能な抗ウイルス反応をもたらす。
【0185】
化合物を、それぞれ0.03〜3μMまたは1〜100μMの範囲の、5つの半対数希釈濃度(half−log concenrations)でDMSOに溶解した。ET株の亜密集培地を細胞数(細胞毒性)または抗ウイルス活性の分析専用の96穴プレートに播種し、翌日、化合物を適切なウェルに添加した。72時間後の細胞が依然亜密集のとき、細胞を処理した。抗ウイルス活性をEC50およびEC90として示す。これは、ウイルス複製をそれぞれ50%および90%減少するのに有効な化合物の濃度である。化合物のEC50およびEC90値を、LUC活性由来のHCVのRNAレプリコンとして評価した、HCVのRNAレベルから導く。細胞毒性をIC50およびIC90として示す。これは、それぞれ細胞生存率を50%および90%のみ阻害する化合物の濃度である。化合物のIC50およびIC90値を、比色分析を用いて、細胞数および細胞毒性の指標として算出した。LUCレポータの活性は、ヒト細胞株におけるHCVのRNAレベルと直接比例する。HCVレプリコンアッセイを、インターフェロン−α−2bを陽性コントロールとして用いる平行実験において検証した。シクロスポリンAを比較の目的で試験した。本発明の典型的な化合物は、この分析において活性を示した。1例として化合物AはEC50値410nMを示した。
【0186】
<HIV活性>
また、本発明の化合物を、ヒト免疫不全ウイルス−1(HIV)に対する抗レトロウイルス活性についてヒトT−リンパ芽細胞株、CEM−SSのHIV株であるHIV−1IIIB(Weislow et al., 1989, J. Natl. Cancer Inst. 81:577−586)での感染を使用して試験した。このMTS細胞保護作用分析において、それぞれの実験は細胞コントロールのウェル(細胞のみ)、ウイルスコントロールのウェル(細胞とウイルス)、薬物毒性のウェル(細胞と薬物のみ)、薬物比色コントロールのウェル(薬物のみ)ならびに試験用ウェル(薬物、細胞とウイルス)を有する。化合物を、まずDMSOに溶解し、20または2μMのいずれかの高い濃度から始める、6つの半対数希釈を使用して試験した。HIV−1RFをそれぞれのウェルに約90%の細胞が感染後6日で死滅するように決定したウイルス量、50μLの容積で添加した。アッセイ終了時、アッセイプレートを可溶性テトラゾリウム系色素MTS(CellTiter 96試薬、Promega)で染色して細胞生存率を求め、化合物の毒性を定量化した。MTSを、代謝的に活性な細胞のミトコンドリア酵素によって代謝して、細胞生存率および化合物の細胞毒性の定量分析を提供する可溶性ホルマザン生成物を得る。陽性コントロールとしてジドブジン(3’−アジド−3’−デオキシチミジンまたはAZT)を使用した並列実験を実施して、分析を確認した。分析は、化合物のEC50(ウイルス複製を50%阻害する濃度)、IC50(細胞成長の50%阻害をもたらす濃度)および選択指数(IC50/EC50)の決定を含む。
【0187】
<シクロフィリン結合活性>
本発明の化合物のシクロフィリン阻害結合を、Quesniaux et al. (Eur. J Immunol. 1987, Vol. 17, pages 1359−1365)に記載された方法を応用した競合ELISAを使用して求めた。D−Lys−シクロスポリンA(D−Lys−Cs)に結合したスクシニルスペーサの活性化エステルを、8位のD−リジル残基によってウシ血清アルブミン(BSA)に結合した。BSAを0.1MのpH9.0(4mgの1.4mL溶液)ホウ酸塩緩衝剤に溶解した。ジメチルホルムアミド(0.6mL)に溶解した100倍のモル過剰なD−Lys−CsをBSAに激しい撹拌下条件下で滴下した。カップリング反応を室温で温和な撹拌下2〜3時間実行し、コンジュゲートをリン酸緩衝生理食塩水(PBS,pH7.4)に対して広範囲に透析した。コンジュゲートタンパク質のアリコートのアセトン沈殿後、共有結合したD−Lys−Csはアセトン溶液に残存せず、シクロスポリンの共有結合の範囲を算出した。
【0188】
マイクロタイタープレートを、D−Lys−Cs−BSA共役物で被覆した(24時間40℃でPBS中2pg/mL)。プレートをTween(登録商標)/PBSで、またPBSのみで洗浄した。非特異的な結合をブロックするため、2%BSA/PBS(pH7.4)をウェルに添加し、37℃で2時間培養した。試験すべき化合物の5倍の希釈系列を別途のマイクロタイタープレート中のエタノールで作成した。出発濃度は、ヒト組み換えシクロフィリンでのアッセイのため0.1mg/mLであった。0.1μg/mLのシクロフィリン溶液198μLをマイクロタイターに添加し、その直後に2μLの希釈したシクロスポリンA(参考化合物として使用)または本発明の化合物を添加した。シクロスポリンAの無い被覆BSA−Cs複合体およびシクロフィリンの間の反応を一晩4℃で平衡にした。シクロフィリンを、PBSを含有する1%BSAに希釈し、4℃で一夜培養した抗シクロフィリンラビット免疫血清で検出した。プレートを上記のように洗浄した。次いで、結合したラビット抗体を、1%BSA−PBSに希釈し、37℃で2時間培養したアルカリホスファターゼに共有結合したヤギの抗ラビットIgGによって検出した。プレートを上記のように洗浄した。4−ニトロフェニルホスフェート(pH9.8のジエタノールアミン緩衝剤中1g/1)を用いて、37℃で1〜2時間培養した後、酵素反応は分光光度計を使用して405nmで分光測光法によって測定した。
【0189】
得られた結果は以下の通りであった:化合物AはシクロフィリンA結合値98ng/mL以下、シクロフィリンB結合値102ng/mLおよびシクロフィリンD結合値124ng/mLであり、本発明の典型的な化合物のシクロフィリン阻害率を示した。
【0190】
本発明の化合物を、Jurkat細胞におけるT細胞刺激(IL−2)について抗CD3および抗CD28の共刺激で試験した。全ての化合物は10μM(n=2)から出発して0.0015μMの0.5−Log9点の滴定を有する。シクロスポリンA(コントロール)は、また500ng/mLから始めて0.5−Log9点の滴定を有する。試験すべき全ての化合物をジメチルスルホキシドに溶解した。細胞毒性を平行Almar Blueプレートで評価した。Jurkat細胞を96ウェルプレートの190μLの成長培地中に1ウェルあたり2×10細胞で播種した。細胞をRPMI1640培地、10%ウシ胎仔血清およびL−グルタミン中37℃で5%二酸化炭素を用いて培養した。培養から1時間後、細胞を固定抗CD3(0.4μg/ウェル)、抗CD28可溶(2μg/mL)で刺激した。6時間後、試料の上清を採取し、−80℃にて保存した。上清試料50μLをLuminex(登録商標)1−plexアッセイを用いてIL−2について試験した。
【0191】
下記の典型的なIL−2活性の結果を得た:化合物Aに対するEC50値は細胞毒性の非存在下43ng/mLである。
【0192】
<ミトコンドリア透過性遷移>
ミトコンドリア透過性遷移(MPT)を、Ca2+により誘導されたミトコンドリアの膨張を測定することによって求めた。方法はBlattner et al., Analytical Biochem., 295:220(2001)に記載された方法を応用した。ミトコンドリアをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で潅流して血液を除去したラットの肝臓からサッカロース系緩衝剤におけるおだやかな均質化を用いた標準の方法を使用して調製し、その後、分画遠心法によってまず細胞破片を取り除き、次いでミトコンドリアをペレットにした。膨張が150マイクロモルのCa2+(塩化カルシウムの濃縮溶液から添加)により誘発され、535〜540nmでの散乱を測定することによりモニターした。膨潤が誘発する5分前に典型的な化合物を添加した。EC50は本発明の化合物の有無で膨潤を比較することによって決定した。
【0193】
上記の試験において、化合物Aは10μM以下のEC50値が得られ、本発明の典型的な化合物のミトコンドリアへの浸透およびMPTの阻害能力を示した。
【0194】
本明細書中で引用する全ての刊行物および特許出願は、特に個別に参考文献として示す場合、ここに参照して援用するものとする。本発明は、数々の実施形態を開示しているが一方で、当業者はその趣旨から逸脱することなく、様々な修正、置換、省略および変更することができると解釈される。従って、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲およびそれと同等のものを含むもののみによって制限される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

(式中、Aは(E)−CH=CHRまたは−CHCHRであり、Rはメチル、−CHSH、−CH(チオアルキル)、カルボキシルまたはアルコキシカルボニルを示し;
Bはエチル、1−ヒドロキシエチル、イソプロピルまたはn−プロピルを示し;
は:
水素;
1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキル;
2〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖アルケニル;または
−XRを示し;
は:
1〜6個の炭素原子を有し、同じか異なる1以上のR基により任意に置換される直鎖若しくは分岐鎖アルキル;
2〜6個の炭素原子を有し、同じか異なるハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される1以上の置換基により任意に置換される直鎖惜しくは分岐鎖アルケニル;
2〜6個の炭素原子を有し、同じか異なるハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される1以上の置換基により任意に置換される直鎖若しくは分岐鎖アルキニル;または
3〜6環炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる基から選択される同じか異なる1以上の置換基により任意に置換されるシクロアルキルを示し;
Xは−S(=O)−または酸素を示し、ここでnは0,1または2であり;
は:
1〜6個の炭素原子を有し、同じか異なる1以上のR基により任意に置換される直鎖または分岐鎖アルキル;
2〜6個の炭素原子を有し、同じか異なるハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される1以上の置換基により任意に置換される直鎖若しくは分岐鎖アルケニル;
2〜6個の炭素原子を有し、同じか異なるハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される1以上の置換基により任意に置換される直鎖若しくは分岐鎖アルキニル;
3〜6個の環炭素原子を有し、同じか異なるハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される1以上の置換基により任意に置換されるシクロアルキル;または
2〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖アルコキシカルボニルを示し;
は:
ハロゲン;ヒドロキシ;アルコキシ;カルボキシル;アルコキシカルボニル;−NR;−NR(CHNR;チオアルキル; 同じか異なるハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される1以上の置換基により任意に置換されるフェニル;および
5または6環原子を有し、そのうち1〜3個の前記環原子が窒素、硫黄および酸素から選択される、同じか異なるヘテロ原子である、飽和または不飽和の複素環であり、環炭素原子によりアルキニルに結合している(または置換されている)複素環;からなる群より選択され;
およびRは、同じか異なり、それぞれ:
水素;
1〜6個の炭素原子を有し、同じか異なる1以上のR基により任意に置換される直鎖または分岐鎖アルキル;
2〜4個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルケニルまたはアルキニル;
3〜6個の環炭素原子を有し、1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖により任意に置換されるシクロアルキル;
同じか異なるハロゲン、アルコキシ、シアノ、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノおよびジアルキルアミノからなる群から選択される1〜5個の置換基により任意に置換されるフェニル;または
5または6個の環原子を有し、そのうち1〜3個の前記環原子が窒素、硫黄および酸素から選択される、同じか異なるヘテロ原子である、飽和または不飽和の複素環であり、ハロゲン、アルコキシ、シアノ、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノおよびジアルキルアミノからなる群から選択される同じか異なる1以上の置換基により任意に置換される複素環を示すか;または
およびRは、それらが結合する窒素と共に飽和または不飽和の4〜6個の環原子を有する複素環を形成し、該環は窒素、酸素および硫黄からなる群から任意に選択される他のヘテロ原子を有し、アルキル、フェニルおよびベンジルからなる群から任意に選択される同じか異なる1〜4個の置換基により置換される複素環を示し;
は:
水素;
1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキル;または
同じか異なるハロゲンおよびアルコキシからなる群から選択される1〜5個の置換基により任意に置換されるフェニルを示し;
pは0,1または2であり;
mは2〜4の整数である)
の化合物またはその薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物。
【請求項2】
は:
1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキル;
2〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖アルケニル;または
−XRを示す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
は−XRを示す、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Xは硫黄または酸素を示す、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
は水素を示す、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
Aは(E)−CH=CHR、Rはメチル、かつBはエチルを示す、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
は1〜6個の炭素原子を有し、同じか異なる1以上のR基により任意に置換され、Rは請求項1で規定される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
は、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される、同じか異なる1以上の置換基により任意に置換されるフェニルを示す、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
[4’−ベンジルオキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA;[4’−エトキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA;および[4’−メトキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンAからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
[(R)−2−(N,N−ジメチルアミノ)−エチルチオ−Sar]−[4’−エトキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンAである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に規定する式(I)の化合物、その薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を含む組成物、および薬学的に許容可能な賦形剤、担体または希釈剤。
【請求項12】
有効量の請求項1〜10のいずれか1項で規定される式(I)の抗HCV化合物、その薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、または請求項11に規定する組成物を、必要とする患者に投与する工程を備える、HCV感染の治療または予防方法。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか1項で規定される式(I)の化合物、その薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、または請求項11で規定される組成物の有効量を、細胞に投与する工程を含む、細胞におけるシクロフィリンを阻害する方法。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれか1項で規定される式の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物の薬剤としての使用。
【請求項15】
請求項1で規定される式(I)の化合物の調製方法であって:
(a)式(II)
【化2】

(式中、A,BおよびRは請求項1で規定される)の化合物を、式R−OH(式中、Rは請求項1で規定される)の化合物の存在下、式CH(ORの化合物と反応させる工程;
(b)式(III)
【化3】

(式中、Rは前記で規定される)のカチオンを含む塩を用いて、前記式(II)の化合物を反応する工程、を含む方法。
【請求項16】
式(I)
【化4】

(式中、AおよびRは請求項1で規定され、Rは−XRを示し、XおよびRは請求項1で規定される)の化合物の調製方法であって、式(I)の対応する化合物(式中、AおよびRは請求項1で規定され、Rは水素を示す)を適切な溶媒中、塩基で処理し、ポリアニオンを生成し、その後ポリアニオンの反応によって式RX−Lの求電子剤(式中、RおよびXは請求項1で規定され、Lは離脱基である)を得る工程、を備える調製方法。

【公表番号】特表2013−516424(P2013−516424A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547295(P2012−547295)
【出願日】平成22年12月30日(2010.12.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/062480
【国際公開番号】WO2011/082289
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(508296370)サイネクシス,インコーポレーテッド (9)
【Fターム(参考)】