説明

シクロパミン類似体の酵素によるアミノ基転移

【課題】ケトンの出発材料から、アミノ酸類似体(IPI−926など)を合成する新規プロセスを提供する。
【解決手段】溶液中で、式(I)の化合物又はその塩と、アミノドナー分子と、アミンアミノ基転移酵素とを接触させて式(II)の化合物又はその塩を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年8月5日に出願された米国仮出願61/231439号(その全体が本願に引用によって組み込まれる)の利益(優先権)を主張する。
【背景技術】
【0002】
ベラトルム・カルフォルニクム(Veratrum californicum)から単離された天然の製造物であるシクロパミンは、顕著な薬学的なツールとして見出され、癌におけるヘッジホッグ(Hh)経路を証明している。シクロパミンは、膵臓癌、髄芽腫、前立腺癌、小細胞肺癌、及び消化管の癌のいくつかのネズミモデルにおいて、SMOに対して直接的に作用し、腫瘍の成長を阻害する。しかしながら、他の既に報告されている小分子Hh拮抗剤(アンタゴニスト)と比べて、溶解性に乏しいこと、酸感受性であること、効能が弱いことによって、癌治療薬としてのシクロパミンの臨床開発は妨げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許7,230,004号
【特許文献2】米国特許7,407,967号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Tremblay el al., "Discovery of a Potent and Orally Active Hedgehog Pathway Antagonist (IPI-926)" J. Med. Chem. (2009) 52:4400-4418
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シクロパミンと比べて改善された効能や、改善された薬物動態及び医薬的特徴を有する新規のシクロパミン類似体の開発にはかなりの注目が集まっている(例えば、米国特許7,230,004号及び米国特許7,407,967号参照(本願に引用によって組み込まれる))。その試みから、シクロパミンの7員のD環のスルホンアミド類似体(IPI−926)が臨床開発における候補物質として見出された(Tremblay el al., "Discovery of a Potent and Orally Active Hedgehog Pathway Antagonist (IPI-926)" J. Med. Chem. (2009) 52:4400-4418(本願に引用によって組み込まれる))。臨床開発には大量のIPI−926が必要とされる。さらに、IPI−926を製造する工程と類似する工程で他の有望なアミノ類似体が合成され得る。

【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、ケトンの出発材料から、アミノ酸類似体(IPI−926など)を合成する新規プロセスが提供される。
【0007】
例えば、1つの視点において、式(I)の化合物又はその塩から、式(II)の化合物又はその塩を調製するプロセスであって、溶液中で、式(I)の化合物又はその塩と、アミノドナー分子と、アミンアミノ基転移酵素とを接触させて式(II)の化合物又はその塩を提供することを含むプロセスが提供される:


なお、式(I)、式(II)において、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、及び、Xは、本願において定義されたものである。
【0008】
ある実施形態において、前記プロセスは、溶液に補因子を添加することを更に含む。
【0009】
ある実施形態において、前記補因子は、ピリドキサールリン酸(PLP)である。
【0010】
ある実施形態において、前記補因子は、補酵素である。ある実施形態において、前記補酵素は、L−アラニン脱水素酵素(LADH)、乳酸脱水素酵素(LDH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、ギ酸脱水素酵素(FDH)、及び、グルコース脱水素酵素(GDH)から選択される。
【0011】
ある実施形態において、前記プロセスは、前記溶液にピルビン酸還元酵素ミックスを添加することを更に含む。本願において使用される場合に、用語「ピルビン酸還元酵素ミックス」とは、ピルビン酸の還元を触媒することが可能な酵素と、1つ以上の(例えば、1、2、3、4、5、又は6、例えば、2、3又は4、例えば、2又は3の)追加の薬剤(例えば、酵素、補酵素又は補因子、還元剤、並びに、それらの組み合わせ)とを含む混合物(combination)を意味する。
【0012】
ある実施形態において、ピルビン酸の還元を触媒することが可能な酵素はLDHである。
【0013】
ある実施形態において、前記混合物は、ピルビン酸の還元を触媒(媒介)する補酵素又は補因子を再生することが可能な薬剤(例えば、酵素)を含む。ある実施形態において、前記混合物は、NADPHを再生することが可能な酵素を含むことができる。そのような酵素は、GDH及びFDHを含むことができるが、それらに限定されない。
【0014】
ある実施形態において、前記混合物は、還元剤を含む。該還元剤は、グルコース又はギ酸(ないしホルマート)を含むことができるが、それらに限定されない。
【0015】
ある実施形態において、前記混合物は、補酵素又は補因子を含む。該補酵素又は補因子は、NADを含むことができるが、それに限定されない。
【0016】
ある実施形態において、前記混合物は、本願の何れかの箇所において定義されたピルビン酸の還元を触媒する補酵素又は補因子を再生することが可能な薬剤(例えば、酵素)と、1つ以上の追加の薬剤(例えば、2又は3個の追加の薬剤)とを含む。例えば、前記混合物は、本願の何れかの箇所において定義されたピルビン酸の還元を触媒する補酵素又は補因子を再生することが可能な薬剤(例えば、酵素)と、還元剤及び補酵素(又は補因子)の片方又は両方とを含むことができる。
【0017】
ある実施形態において、ピルビン酸還元酵素ミックスは、LDHと、本願の何れかの箇所において定義されたピルビン酸の還元を触媒する補酵素又は補因子を再生することが可能な薬剤(例えば、酵素)と、1つ以上の追加の薬剤(例えば、2又は3個の追加の薬剤)(例えば、還元剤及び補酵素(又は補因子)の片方又は両方)とを含む。例えば、ピルビン酸還元酵素ミックスは、LDH、GDH及びグルコースを含むことができるし、そして更に、NADを含むこともできる。例えば、ピルビン酸還元酵素ミックスは、LDH、GDH、グルコース及びNADを含むPRM−102(Codexis)である。他の例としては、ピルビン酸還元酵素ミックスは、LDH、FDH及びギ酸(ないしホルマート)を含むことができ、そして更にNADを含むこともできる。
【0018】
ある実施形態において、本願に記載のプロセスの過程の間にピルビン酸が生成する場合には、ピルビン酸を除去することができるし、他の製造物へ化学的に変換することもでき、更に、任意的に、化学的に変換したピルビン酸を、除去することや、リサイクルすることもできる(あるいは、それらを組み合わせることもできる)。そのような操作を記載した方法は、例えば、Koszelewski, D., et al., Trends in Biotechnology 2010, 28, 324-332(全体が本願に引用によって組み込まれる)に記載されている。
【0019】
ある実施形態において、前記酵素は、式(II)の化合物又はその塩を優先的に生成し、新たに形成されるアミノ基は、(R)立体化学性又は(S)立体化学性を有する。
【0020】
ある実施形態において、前記酵素は、オメガアミンアミノ基転移酵素、ブロードレンジアミノ基転移酵素、グルタミン酸−ピルビン酸アミノ基転移酵素、又は、グルタミン酸−オキサロ酢酸アミノ基転移酵素である。
【0021】
ある実施形態において、前記酵素は、オメガアミンアミノ基転移酵素である。
【0022】
ある実施形態において、オメガアミンアミノ基転移酵素は、ATA−101、ATA−102、ATA−103、ATA−104、ATA−105、ATA−106、ATA−107、ATA−108、ATA−109、ATA−110、ATA−113、ATA−114、ATA−115、ATA−116、ATA−117、ATA−124、クロモバクテリウム・ビオラセウム由来のオメガアミンアミノ基転移酵素、アルカリゲネス・デニトリフィカンス由来のオメガアミンアミノ基転移酵素、アルスロバクター・シトレウス由来のオメガアミンアミノ基転移酵素、クレブシエラ・ニューモニエ由来のオメガアミンアミノ基転移酵素、バチルス・チューリンギエンシス由来のオメガアミンアミノ基転移酵素、バチルス・セレウス由来のオメガアミンアミノ基転移酵素、及び、ビブリオ・フルビアリス由来のオメガアミンアミノ基転移酵素から成る群から選択される。
【0023】
ある実施形態において、アミノドナー分子は、アミン又はその塩である。ある実施形態において、該アミンは、ピリドキサミン、メチルベンジルアミン、2−アミノブタン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、1,1,1−トリフルオロプロパン−2−アミン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−アミン、ベンジルアミン、2−アミノ−1−ブタノール、1−アミノ−1−フェニルエタン、1−アミノ−1−(2−メトキシ−5−フルオロフェニル)エタン、1−アミノ−1−フェニルプロパン、1−アミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1−アミノ−1−(4−ブロモフェニル)プロパン、1−アミノ−1−(4−ニトロフェニル)プロパン、1−フェニル−2−アミノプロパン、1−(3−トリフルオロメチルフェニル)−2−アミノプロパン、2−アミノプロパノール、1−アミノ−1−フェニルブタン、1−フェニル−2−アミノブタン、1−(2,5−ジメトキシ−4−メチルフェニル)−2−アミノブタン、1−フェニル−3−アミノブタン、1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−アミノブタン、1−アミノ−1−(2−ナフチル)エタン、シス−2−メチルシクロペンタンアミン、トランス−2−メチルシクロペンタンアミン、シス−3−メチルシクロペンタンアミン、トランス−3−メチルシクロペンタンアミン、シス−2−エチルシクロペンタンアミン、トランス−2−エチルシクロペンタンアミン、シス−3−エチルシクロペンタンアミン、トランス−3−エチルシクロペンタンアミン、シス−2−メチルシクロヘキサンアミン、トランス−2−メチルシクロヘキサンアミン、シス−3−メチルシクロヘキサンアミン、トランス−3−メチルシクロヘキサンアミン、シス−2−エチルシクロヘキサンアミン、トランス−2−エチルシクロヘキサンアミン、シス−3−エチルシクロヘキサンアミン、トランス−3−エチルシクロヘキサンアミン、1−アミノテトラリン、2−アミノテトラリン、2−アミノ−5−メトキシテトラリン、1−アミノインダン、2−アミノインダン、2−アミノ−1−プロパノール、シス−1−アミノ−2−インダノール、トランス−1−アミノ−2−インダノール、1−アミノ−6−ヒドロキシインダンアミン、タウリン、及び、それらの塩から選択される。
【0024】
ある実施形態において、前記アミノドナー分子は、キラルアミノドナー分子である。ある実施形態において、キラルアミノドナー分子は、キラルアミン又はその塩であり、例えば、少なくとも1つの不斉中心を含むアミンである。キラルアミンの例は、以下のものを含むが、それらに限定されない:(R)−メチルベンジルアミン、(S)−メチルベンジルアミン、(S)−2−アミノブタン、(R)−2−アミノブタン、(S)−1−アミノインダン、(R)−1−アミノインダン、(R)−1,1,1−トリフルオロプロパン−2−アミン、(S)−1,1,1−トリフルオロプロパン−2−アミン、(R)−2−アミノ−1−プロパノール、(S)−2−アミノ−1−プロパノール、(1R、2S)−シス−1−アミノ−2−インダノール、(1R、2R)−トランス−1−アミノ−2−インダノール、1−(R)−アミノ−6−ヒドロキシインダンアミン、1−(S)−アミノ−6−ヒドロキシインダンアミン、(R)−2−アミノ−1−ブタノール、(S)−2−アミノ−1−ブタノール、(R)−1−アミノ−1−フェニルエタン、(S)−1−アミノ−1−フェニルエタン、(R)−1−アミノ−1−(2−メトキシ−5−フルオロフェニル)エタン、(S)−1−アミノ−1−(2−メトキシ−5−フルオロフェニル)エタン、(R)−1−アミノ−1−フェニルプロパン、(S)−1−アミノ−1−フェニルプロパン、(R)−1−アミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、(S)−1−アミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、(R)−1−アミノ−1−(4−ブロモフェニル)プロパン、(S)−1−アミノ−1−(4−ブロモフェニル)プロパン、(R)−1−アミノ−1−(4−ニトロフェニル)プロパン、(S)−1−アミノ−1−(4−ニトロフェニル)プロパン、(R)−1−フェニル−2−アミノプロパン、(S)−1−フェニル−2−アミノプロパン、(R)−1−(3−トリフルオロメチルフェニル)−2−アミノプロパン、(S)−1−(3−トリフルオロメチルフェニル)−2−アミノプロパン、(R)−1−アミノ−1−フェニルブタン、(S)−1−アミノ−1−フェニルブタン、(R)−1−フェニル−2−アミノブタン、(S)−1−フェニル−2−アミノブタン、(R)−1−(2,5−ジ−メトキシ−4−メチルフェニル)−2−アミノブタン、(S)−1−(2,5−ジ−メトキシ−4−メチルフェニル)−2−アミノブタン、(R)−1−フェニル−3−アミノブタン、(S)−1−フェニル−3−アミノブタン、(R)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−アミノブタン、(S)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−アミノブタン、(R)−1−アミノ−1−(2−ナフチル)エタン、(S)−1−アミノ−1−(2−ナフチル)エタン、(R)−1−アミノテトラリン、(S)−1−アミノテトラリン、(R)−2−アミノテトラリン、(S)−2−アミノテトラリン、(R)−2−アミノ−5−メトキシテトラリン、(S)−2−アミノ−5−メトキシテトラリン、(1R,2S)−シス−2−メチルシクロペンタンアミン、(1S,2R)−シス−2−メチルシクロペンタンアミン、(1R,2R)−トランス−2−メチルシクロペンタンアミン、(1S,2S)−トランス−2−メチルシクロペンタンアミン、(1R,3S)−シス−3−メチルシクロペンタンアミン、(1S,3R)−シス−3−メチルシクロペンタンアミン、(1R,3R)−トランス−3−メチルシクロペンタンアミン、(1S,3S)−トランス−3−メチルシクロペンタンアミン、(1R,2S)−シス−2−エチルシクロペンタンアミン、(1S,2R)−シス−2−エチルシクロペンタンアミン、(1R,2R)−トランス−2−エチルシクロペンタンアミン、(1S,2S)−トランス−2−エチルシクロペンタンアミン、(1R,3S)−シス−3−エチルシクロペンタンアミン、(1S,3R)−シス−3−エチルシクロペンタンアミン、(1R,3R)−トランス−3−エチルシクロペンタンアミン、(1S,3S)−トランス−3−エチルシクロペンタンアミン、(1R,2S)−シス−2−メチルシクロヘキサンアミン、(1S,2R)−シス−2−メチルシクロヘキサンアミン、(1R,2R)−トランス−2−メチルシクロヘキサンアミン、(1S,2S)−トランス−2−メチルシクロヘキサンアミン、(1R,3S)−シス−3−メチルシクロヘキサンアミン、(1S,3R)−シス−3−メチルシクロヘキサンアミン、(1R,3R)−トランス−3−メチルシクロヘキサンアミン、(1S,3S)−トランス−3−メチルシクロヘキサンアミン、(1R,2S)−シス−2−エチルシクロヘキサンアミン、(1S,2R)−シス−2−エチルシクロヘキサンアミン、(1R,2R)−トランス−2−エチルシクロヘキサンアミン、(1S,2S)−トランス−2−エチルシクロヘキサンアミン、(1R,3S)−シス−3−エチルシクロヘキサンアミン、(1S,3R)−シス−3−エチルシクロヘキサンアミン、(1R,3R)−トランス−3−エチルシクロヘキサンアミン、(1S,3S)−トランス−3−エチルシクロヘキサンアミン、又はそれらの塩。
【0025】
ある実施形態において、アミノドナー分子は、アミノ酸、そのポリペプチド、及び/又は、その塩である。ある実施形態において、アミノ酸は、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、2−アミノペンタン二酸、3−アミノブチラート、γ−アミノブチラート、β−アラニン、アスパラギン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、プロリン、セレノシステイン、セリン、チロシン、アルギニン、ヒスチジン、オルニチン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、スレオニン、トリプトファン、バリン、及び、それらのポリペプチド、及び/又は、それらの塩から選択される。
【0026】
ある実施形態において、キラルアミノドナー分子は、キラルアミノ酸、又はそのポリペプチド、及び/又は、その塩であり、例えば、少なくとも1つの不斉中心を含む。キラルアミノ酸の例は、以下のものを含むが、それらに限定されない:(L)−アラニン、(D)−アラニン、(L)−アスパラギン酸、(D)−アスパラギン酸、(L)−フェニルアラニン、(D)−フェニルアラニン、(2S)−2−アミノペンタン二酸、(L)−アスパラギン、(D)−アスパラギン、(L)−システイン、(D)−システイン、(L)−グルタミン、(D)−グルタミン、(L)−グルタミン酸、(D)−グルタミン酸、(L)−プロリン、(D)−プロリン、(L)−セレノシステイン、(D)−セレノシステイン、(L)−セリン、(D)−セリン、(L)−チロシン、(D)−チロシン、(L)−アルギニン、(D)−アルギニン、(L)−ヒスチジン、(D)−ヒスチジン、(L)−イソロイシン、(D)−イソロイシン、(L)−ロイシン、(D)−ロイシン、(L)−リシン、(D)−リシン、(L)−メチオニン、(D)−メチオニン、(L)−スレオニン、(D)−スレオニン、(L)−トリプトファン、(D)−トリプトファン、(L)−バリン、(D)−バリン、(L)−オルニチン、(D)−オルニチン、(3R)−アミノブチラート、(3S)−アミノブチラート、及びそれらのポリペプチド、及び/又は、それらの塩。
【0027】
ある実施形態において、前記溶液は、緩衝された溶液である。ある実施形態において、緩衝された溶液は、リン酸ナトリウムで緩衝された溶液である。
【0028】
ある実施形態において、前記溶液のpHは、約5及び約9の間であるか、約5及び約8の間であるか、約6及び約8の間であるか、約7及び約8の間であるか、約7及び約7.5の間であるか、又は、約7.5及び約8の間である。
【0029】
ある実施形態において、前記溶液のpHは、約9未満であるか、約8.5未満であるか、又は、約8未満である。ある実施形態において、溶液のpHは、約7である。ある実施形態において、溶液のpHは、約7.5である。ある実施形態において、溶液のpHは、約8である。
【0030】
ある実施形態において、式(I)の化合物又はその塩、及び、式(II)の化合物又はその塩は、表1、2、3、4又は5に示された化合物の任意の組み合わせから選択される。
【0031】
ある実施形態において、本発明に係るプロセスは、式(II)の化合物又はその塩と、スルホニル化剤とを接触させて、式(III)の化合物又はその塩を提供することを更に含む。


なお、式(III)において、R23は、アルキル又はアリールである。
【0032】
ある実施形態において、スルホニル化剤は、ベンゼンスルホン酸クロリド、ベンゼンスルホン酸無水物、p−トルエンスルホン酸クロリド、p−トルエンスルホン酸無水物、メタンスルホン酸クロリド、及び、メタンスルホン酸無水物から選択される。ある実施形態において、スルホニル化剤は、メタンスルホン酸クロリド又はメタンスルホン酸無水物であり、かつ、R23が−CHである。
【0033】
追加的な実施形態又は代わりの実施形態の詳細は、以下に記載の発明を実施するための形態、及び、実施例に記載される。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、この記載及び請求の範囲から明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、Tremblay et al, "Discovery of a Potent and Orally Active Hedgehog Pathway Antagonist (IPI-926)" J. Med. Chem. (2009) 52:4400-4418に記載のケトンの出発材料から6つのステップでのIPI−926の化学合成を示す。本発明のアミノ基転移方法は、このルートを少なくとも3ステップ短縮する。
【0035】
【図2】図2は、2つのタイプの酵素によるアミノ基転移を示す。図2(a)は、L−アラニン脱水素酵素(LADH)/ギ酸脱水素酵素(FDH)がアミノ基転移を促進したことを示す。図2(b)は、乳酸脱水素酵素(LDH)/グルコース脱水素酵素(GDH)がアミノ基転移を促進したことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[定義]
特定の官能基及び化学的な用語の定義は、以下において、より詳細に記載される。化学元素は、the Elements, CAS version, Handbook of Chemistry and Physics, 75th Ed.の内表紙の周期表に従って規定され、特定の官能基は、一般的には、該当箇所に記載されるように定義される。更に、有機化学の一般原則、特定の官能基の部分(moieties)及びその反応性は、Organic Chemistry, Thomas Sorrell, University Science Books, Sausalito, 1999、Smith and March, March 's Advanced Organic Chemistry, 5th Edition, John Wiley & Sons, Inc., New York, 2001、Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers, Inc., New York, 1989、及び、Carruthers, Some Modern Methods of Organic Synthesis, 3rd Edition, Cambridge University Press, Cambridge, 1987に記載される(上記文献の記載事項は、各々、本願に引用によって組み込まれる)。
【0037】
本発明のある化合物は、1つ以上の不斉中心を含む。従って、本発明のある化合物は、様々な異性体(例えば、鏡像異性体及び/又はジアステレオマー)の形態で存在することができる。本願に係る化合物は、個別の鏡像異性体、ジアステレオマー又は幾何異性体の形態であり得るし、あるいは、ラセミ混合物や1つ以上の立体異性体が豊富な混合物を含む立体異性体の混合物の形態でもあり得る。ある実施形態において、本発明の化合物は、鏡像異性体的に純粋な(enantiopure)化合物(複数)である。ある実施形態(複数)において、立体異性体の混合物(複数)が提供される。
【0038】
更に、本願に記載される場合には、ある化合物は1つ以上の二重結合を有することができる。当該二重結合は、特段の指示のない限り、シス又はトランスのいずれでも存在し得るし、あるいは、E又はZ異性体としても存在し得る。本発明は、他の異性体を実質的に含まない個別の異性体としての化合物を包含するし、あるいは、種々の異性体の混合物としての化合物(例えば、E/Z異性体のラセミ混合物やE/Z異性体の片方が豊富な混合物)も包含する。
【0039】
本願において互換的に使用される用語たる「鏡像異性体的に豊富な」、「鏡像異性体的に純粋な」及び「非ラセミ状の」とは、ラセミ状の組成(例えば、重量比で1:1を上回る組成)のコントロール混合物において、1つの鏡像異性体の重量%が他の鏡像異性体の重量%よりも大きい組成を意味する。例えば、(S)−鏡像異性体の鏡像異性体的に豊富な製剤とは、(R)−鏡像異性体の化合物の重量%と相対的な(S)−鏡像異性体の化合物の重量%において、(S)−鏡像異性体の化合物の重量%が50重量%を上回る、より好ましくは、少なくとも75重量%を上回る、そして、更に好ましくは、少なくとも80重量%を上回る製剤を意味する。いくつかの実施形態において、「豊富」とは、重量%で80%よりも顕著に大きいことを意味し得る。また、「鏡像異性体的に実質的に豊富な」製剤、「鏡像異性体的に実質的に純粋な」製剤又は「実質的に非ラセミ状の」製剤とは、他の鏡像異性体に対して相対的に、少なくとも85重量%の鏡像異性体を有する組成の製剤、より好ましくは少なくとも90重量%の鏡像異性体を有する組成の製剤、そして、更に好ましくは少なくとも95重量%の鏡像異性体を有する組成の製剤を意味し得る。鏡像異性体は、当業者に知られている方法(キラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)やキラル塩の形成及び結晶化を含む)によって混合物から単離することもできるし、あるいは、好ましい鏡像異性体を不斉合成によって生成することもできる。例えば、Jacques, et al., Enantiomers, Racemates and Resolutions (Wiley lnterscience, New York, 1981); Wilen, S.H., et al., Tetrahedron 33:2725 (1977); Eliel, EX. Stereochemistry of Carbon Compounds (McGraw-Hill, NY, 1962); and Wilen, S. H. Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p. 268 (E.L. Eliel, Ed., Univ. of Notre Dame Press, Notre Dame, IN 1972) を参照(これらの各引用文献は、本願に引用によって組み込まれる)。
【0040】
炭素原子は、特段の指示のない限り、1つ以上の置換基で任意に置換され得る。置換基の数は、典型的には、炭素原子の利用可能な価電子の数によって限定され、未置換基上の利用可能な1つ以上の水素原子が、置き換えによって置換され得る。適切な置換基は、当業者に知られており、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、アリールチオ、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ハロ、アジド、ヒドロキシ、チオ、アミノ、ニトロ、ニトリル、イミド、アミド、カルボン酸、アルデヒド、カルボニル、エステル、シリル、ハロアルキル、ハロアルコキシ(例えば、−OCFなどのパーフルオロアルコキシ)、=O、=S及び同様のものを含むが、これらに限定されない。
【0041】
数値の範囲が列挙される場合には、各値と、数値範囲に含まれるサブ範囲(subrange)とを含むものとする。例えば、1−6個の炭素原子を含むアルキル基(C1‐6アルキル)は、C、C、C、C、C、C、C1‐6、C2‐6、C3‐6、C4‐6、C5‐6、C1‐5、C2‐5、C3‐5、C4‐5、C1‐4、2‐4、C3‐4、C1‐3、C2‐3、及びC1‐2のアルキルを含むものとする。
【0042】
本願で使用される用語「アルキル」とは、1個及び30個の間の炭素原子を含む、飽和、直鎖又は分枝状鎖の炭化水素ラジカルを意味する。ある実施形態において、アルキル基は、1‐20個の炭素原子を含む。アルキル基は、特段の指示のない限り、1つ以上の置換基で任意に置換され得る。ある実施形態において、アルキル基は、1‐10個の炭素原子を含む。ある実施形態において、アルキル基は、1‐6個の炭素原子を含む。ある実施形態において、アルキル基は、1‐5個の炭素原子を含む。ある実施形態において、アルキル基は、1‐4個の炭素原子を含む。ある実施形態において、アルキル基は、1‐3個の炭素原子を含む。ある実施形態において、アルキル基は、1‐2個の炭素原子を含む。ある実施形態において、アルキル基は、1個の炭素原子を含む。アルキルラジカルの例は、メチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、n‐ブチル、イソ‐ブチル、sec‐ブチル、sec‐ペンチル、イソ‐ペンチル、tert‐ブチル、n‐ペンチル、ネオペンチル、n‐ヘキシル、sec‐ヘキシル、n‐ヘプチル、n‐オクチル、n‐デシル、n‐ウンデシル、ドデシル及び同様のものを含むが、これらに限定されない。
【0043】
本願で使用される用語「アルケニル」とは、単一の水素原子の除去によって生じる少なくとも1つの炭素‐炭素二重結合を有する、直鎖又は分枝状鎖の炭化水素ラジカルを意味し、該炭化水素ラジカルは、2個及び30個の間の炭素原子を含む。アルケニル基は、特段の指示のない限り、1つ以上の置換基で任意に置換され得る。ある実施形態において、アルケニル基は、2‐20個の炭素原子を含む。ある実施形態において、アルケニル基は、2‐10個の炭素原子を含む。ある実施形態において、アルケニル基は、2‐6個の炭素原子を含む。ある実施形態において、アルケニル基は、2‐5個の炭素原子を含む。ある実施形態において、アルケニル基は、2‐4個の炭素原子を含む。ある実施形態において、アルケニル基は、2‐3個の炭素原子を含む。ある実施形態において、アルケニル基は、2個の炭素原子を含む。アルケニル基は、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、1‐メチル‐2‐ブテン‐1‐イル及び同様のものを含む。
【0044】
本願で使用される用語「アルキニル」とは、単一の水素原子の除去によって生じる少なくとも1つの炭素‐炭素三重結合を有する、直鎖又は分枝鎖の炭化水素ラジカルを意味し、2個及び30個の間の炭素原子を含む。アルキニル基は、特段の指示のない限り、1つ以上の置換基で任意に置換され得る。ある実施形態において、アルキニル基は、2‐20個の炭素原子を含む。ある実施形態において、アルキニル基は、2‐10個の炭素原子を含む。ある実施形態において、アルキニル基は、2‐6個の炭素原子を含む。ある実施形態において、アルキニル基は、2‐5個の炭素原子を含む。ある実施形態において、アルキニル基は、2‐4個の炭素原子を含む。ある実施形態において、アルキニル基は、2‐3個の炭素原子を含む。ある実施形態において、アルキニル基は、2個の炭素原子を含む。代表的なアルキニル基は、エチニル、2‐プロピニル(プロパルギル)、1‐プロピニル及び同様のものを含むが、これらに限定されない。
【0045】
単独で又はより大きな部分の一部として使用される用語「シクロアルキル」は、3−15個の炭素の環員を有する飽和単環又は二環の炭化水素環系を意味する。シクロアルキル基は、特段の指示のない限り、1つ以上の置換基で任意に置換され得る。ある実施形態において、シクロアルキル基は、3‐10個の炭素の環員を含む。ある実施形態において、シクロアルキル基は、3‐9個の炭素の環員を含む。ある実施形態において、シクロアルキル基は、3‐8個の炭素の環員を含む。ある実施形態において、シクロアルキル基は、3‐7個の炭素の環員を含む。ある実施形態において、シクロアルキル基は、3‐6個の炭素の環員を含む。ある実施形態において、シクロアルキル基は、3‐5個の炭素の環員を含む。シクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロへキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチルを含むが、それらに限定されない。また、用語「シクロアルキル」は、デカヒドロナフチル又はテトラヒドロナフチルなどの1つ以上のアリール又はヘテロアリール環に融合した飽和炭化水素環系(結合点は、飽和炭化水素環上に存在する)も含む。
【0046】
単独で又はより大きな部分(モイエティ)(「アラルキル」の如く)の一部として使用される用語「アリール」は、総計で6−10個の炭素の環員を有する芳香族の単環及び二環の炭化水素環系を意味する。アリール基は、特段の指示のない限り、1つ以上の置換基で任意に置換され得る。本発明のある実施形態において、「アリール」とは、1つ以上の置換基を有し得る芳香族環系を意味し、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラシル及び同様のもの含むが、それらに限定されない。また、本願で使用される用語「アリール」の範囲には、アリール環が1つ以上の非芳香族環に融合した基(例えば、インダニル、フタルイミジル又はテトラヒドロナフタリル及び同様のものなど)も含まれる。なお、結合点は、アリール環に存在する。
【0047】
本願で定義される用語「アラルキル」とは、本願で定義されるアリール基によって置換されるアルキル基を意味し、結合点は、アルキル基に存在する。
【0048】
用語「ヘテロ原子」は、ホウ素、リン、セレン、窒素、酸素又は硫黄を意味し、そして、任意の酸化形態の窒素又は硫黄、任意の四級化形態の非塩基性窒素(abasic nitrogen)も含まれる。
【0049】
単独で又はより大きな部分(モイエティ)(例えば、「ヘテロアラルキル」)の一部として使用される用語「ヘテロアリール」とは、5−10個の環原子を有する芳香族単環又は二環炭化水素環系を意味し、環原子は、炭素原子に加えて、1から5つのヘテロ原子を含む。ヘテロアリール基は、特段の指示のない限り、任意に、1つ以上の置換基で置換され得る。ヘテロアリール基の環原子に関して使用される場合には、用語「窒素」は、置換された窒素を含む。ヘテロアリール基は、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリジニル、プリニル、ナフチリジニル、及びプテリジニルを含むが、それらに限定されない。本願で使用される用語「ヘテロアリール」及び「ヘテロアル‐(heteroar-)」は、ヘテロアリール環が1つ以上のアリール、シクロアルキル又はヘテロシクロアルキル環に融合された基も含み、結合点は、ヘテロアリール環上に存在する。用語「ヘテロアリール」及び「ヘテロアル‐」の例は、インドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、4H‐キノリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロキノリニル及びテトラヒドロイソキノリニルを含むが、これらに限定されない。
【0050】
用語「ヘテロアラルキル」とは、本願で定義のヘテロアリール基で置換される本願で定義のアルキル基を意味し、結合点は、アルキル基上に存在する。
【0051】
本願で使用される用語「ヘテロシクロアルキル」又は「ヘテロシクリル」とは、安定した非芳香族5−7員単環炭化水素又は、飽和状の又は部分的に飽和状の安定した非芳香族7−10員二環炭化水素を意味し、炭素原子に加えて、1つ以上のヘテロ原子を有する。ヘテロシクロアルキル基又はヘテロシクリル基は、特段の指示のない限り、1つ以上の置換基で任意に置換され得る。ヘテロシクロアルキル基の環原子に関して使用される場合には、用語「窒素」は、置換された窒素を含む。ヘテロシクロアルキル基の結合点は、該ヘテロシクロアルキル基における任意のヘテロ原子上又は炭素環原子上であり、安定した構造をもたらし得るものである。ヘテロシクロアルキル基の例は、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ピロリジニル、ピロリドニル、ピペリジニル、ピロリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、ジアゼピニル(diazepinyl)、オキサゼピニル(oxazepinyl)、チアゼピニル(thiazepinyl)、モルホリニル、及びキヌクリジニル(quinuclidinyl)を含むが、これらに限定されない。「ヘテロシクロアルキル」は、ヘテロシクロアルキル環が1つ以上のアリール、ヘテロアリール又はシクロアルキル環に融合した基(例えば、インドリニル、クロマニル、フェナントリジニル、又はテトラヒドロキノリニルなど)も含み、ラジカル又は結合点は、ヘテロシクロアルキル環上に存在する。
【0052】
本願で使用される用語「不飽和」とは、1つ以上の二重結合又は三重結合を有する部分(モイエティ)を意味する。
【0053】
本願で使用される用語「部分的に不飽和」とは、少なくとも1つの二重結合又は三重結合を含む環部分(モイエティ)を意味する。用語「部分的に不飽和」は、複数の不飽和状の部位を有する環(複数)を含むものとするが、当該複数の不飽和状の部位には、本願で定義のアリール又はヘテロアリール部分(モイエティ)などの芳香族基(における不飽和状の部分)は含まないものとする。
【0054】
本願で使用される用語「ジラジカル」とは、2つの水素原子が取り除かれて二価の部分を形成した、本願で記載のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、及びヘテロアラルキル基を意味する。典型的には、ジラジカルは、「‐エン(-ene)」の接尾語で終わる。例えば、アルキルジラジカルは、アルキレンなどと称される(例えば、



や‐(CR’‐である。ここで、R’は、水素又は他の置換基であり、xは、1、2、3、4、5又は6である)。アルケニルジラジカルは、「アルケニレン」と称される。アルキニルジラジカルは、「アルキニレン」と称される。アリール及びアラルキルジラジカルは、それぞれ「アリーレン」及び「アラルキレン」と称される(例えば、


である)。ヘテロアリール及びヘテロアラルキルジラジカルは、それぞれ「ヘテロアリーレン」及び「ヘテロアラルキレン」と称される(例えば、


である)。シクロアルキルジラジカルは「シクロアルキレン」と称される。ヘテロシクロアルキルジラジカルは「ヘテロシクロアルキレン」と称される等々。
【0055】
本願で使用される用語「ハロ」及び「ハロゲン」とは、フッ素(フルオロ、‐F)、塩素(クロロ、‐Cl)、臭素(ブロモ、‐Br)、及びヨウ素(ヨード、‐I)から選択される原子を意味する。
【0056】
本願で使用される用語「ハロアルキル」とは、アルキル基の1つ以上のハロゲン原子が1つ以上のハロゲン原子で置き換えられた本願に記載のアルキル基を意味する。ある実施形態において、ハロアルキル基は、パーハロアルキル基である。即ち、ある実施形態において、ハロアルキル基は、アルキル基の全ての水素原子がハロゲンで置き換えられた基(例えば、パーフルオロアルキル基、基‐CFなど)である。
【0057】
本願で使用される用語「アジド」とは、基‐Nを意味する。
【0058】
本願で使用される用語「ニトリル」とは、基‐CNを意味する。
【0059】
本願で使用される用語「ニトロ」とは、基‐NOを意味する。
【0060】
本願で使用される用語「ヒドロキシル」又は「ヒドロキシ」とは、基‐OHを意味する。
【0061】
本願で使用される用語「チオール」又は「チオ」とは、基‐SHを意味する。
【0062】
本願で使用される用語「カルボン酸」とは、基‐COHを意味する。
【0063】
本願で使用される用語「アルデヒド」とは、基‐CHOを意味する。
【0064】
本願で使用される用語「アルコキシ」とは、基‐OR’を意味し、R’は、本願で定義されたアルキル、アルケニル又はアルキニル基である。
【0065】
本願で使用される用語「アリールオキシ」とは、基‐OR’を意味し、各R’は、本願で定義のアリール又はヘテロアリール基である。
【0066】
本願で使用される用語「アルキルチオ」又は「アルキルチオオキシ(alkylthiooxy)」とは、基‐SR’を意味し、各R’は、独立して、例えば、本願で定義のアルキル、アルケニル、又はアルキニル基のような炭素部分(モイエティ)である。
【0067】
本願で使用される用語「アリールチオ」は、基‐SR’を意味し、各R’は、本願で定義されたアリール又はヘテロアリール基である。
【0068】
本願で使用される用語「アミノ」は、基‐NR’を意味する。ここで、各R’は、独立して、水素、炭素部分(モイエティ)(例えば、本願で定義のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール基など)であるか、あるいは、2つの基R’が、それらが結合する窒素原子と一緒になって5−8員の環を形成するものである。
【0069】
本願で使用される用語「カルボニル」は、基‐C(=O)R’を意味する。ここで、R’は、独立して、炭素部分(モイエティ)(例えば、本願で定義のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール基など)である。
【0070】
本願で使用される用語「エステル」とは、基‐C(=O)OR’又は‐OC(=O)R’を意味する。ここで、各R’は、独立して、炭素部分(モイエティ)(例えば、本願で定義のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール基など)である。
【0071】
本願で使用される用語「アミド(amide)」又は「アミド(amido)」は、基‐C(=O)N(R’)又は、‐NR’C(=O)R’を意味する。ここで、各R’は、独立して、水素又は炭素部分(モイエティ)(例えば、本願で定義されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール基など)であるか、あるいは、2つの基R’は、それらが結合する窒素原子と一緒になって5−8員環を形成する。
【0072】
本願で使用される用語「イミド(imide)」又は「イミド(imido)」とは、基‐C(=NR’)N(R’)又は‐NR’C(=NR’)R’を意味する。ここで、各R’は、独立して、水素又は炭素部分(モイエティ)(例えば、本願で定義のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール基など)であるか、あるいは、2つの基R’は、それらが結合する窒素原子と一緒になって5−8員環を形成する。
【0073】
本願で使用される「シリル」とは、基‐Si(R’)を意味する。ここで、各R’は、炭素部分(モイエティ)(例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール基など)である。
【0074】
用語「塩」は、本発明の化合物の無機酸添加塩又は本発明の化合物の有機酸添加塩を意味する。塩の代表的な例は、適切な無機酸及び有機酸由来の塩(例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸及び過塩素酸、又は、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、こはく酸、マロン酸などの有機酸を有する塩)、又は、イオン交換のような本発明の分野において使用されている他の方法によって生じる塩を含むが、それらに限定されない。他の酸添加塩は、アジペート(adipate)、アルギネート(alginate)、アスコルベート(ascorbate)、アスパルテート(aspartate)、ベンゼンスルホネート(benzenesulfonate)、ベンゾアート、ビスルファート、ボラート、ブチラート、カンホラート、カンホスルホナート、シトラート、シクロペンタンプロピオナート、ジグルコナート、ドデシルスルファート、エタンスルホナート、ホルマート、フマラート、グルコヘプトナート、グリセロポスファート、グルコナート、ヘミスルファート、ヘプタノアート、ヘキサノアート、ヒドロヨージド、2‐ヒドロキシ‐エタンスルホナート、ラクトビオナート、ラクタート、ラウラート、ラウリルスルファート、マラート(malate)、マレアート、マロナート、メタンスルホナート、2−ナフサレンスルホナート、ニコチナート、ニトラート、オレアート、オキサラート、パルミタート、パモアート、ペクチナート(pectinate)、ペルスルファート、3‐フェニルプロピナート、ホスファート、ピクラート(picrate)、ピバラート(pivalate)、プロピオナート、ステアラート、スクシナート、スルファート、タートラート(tartrate)、チオシアナート、p‐トルエンスルホナート、ウンデカノアート、バレラート塩などを含む(例えば、Berge et al. (1977) "Pharmaceutical Salts", J. Pharm. Sci. 66: 1-19参照、当該引用文献は、引用によって本願に組み込まれる)。
【0075】
[詳細な説明]
本発明によれば、式(I)の化合物又はその塩から、式(II)の化合物又はその塩を調製するプロセスであって、溶液中で、式(I)の化合物又はその塩と、アミノドナー分子と、アミンアミノ基転移酵素とを接触させて式(II)の化合物又はその塩を提供することを含むプロセスが提供される。


なお、式(I)、式(II)において、
は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、ハロアルキル、−OR16、−C(O)R16、−CO16、−SO16、−C(O)N(R17)(R17)、−[C(R16−R16、−[(W)−N(R17)C(O)]16、−[(W)−C(O)]16、−[(W−C(O)O]16、−[(W)−OC(O)]16、−[(W)−SO16、−[(W)−N(R17)SO16、−[(W)−C(O)N(R17)]17、−[(W)−O]16、−[(W)−N(R17)]16、又は、−[(W)−S]16であり(Rにおいて、Wはジラジカルであり、qは1、2、3、4、5、又は6である)、
各R及びRは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、ハロアルキル、ハロ、−OR16、−OR16、−N(R17、又は、−SR16であるか、あるいは、R及びRは、一緒になって、二重結合を形成するか又は下記の基(下記の基において、Zは、NR17、O、又はC(R18である)を形成し、


は、独立して、H、ハロ、−OR16、−N(R17、又は、−SR16であり、
各R及びRは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、ハロ、−OR16、−N(R17、又は、−SR16であるか、あるいは、R及びRは、それらが結合する炭素と一緒になって、C=O、C=S、C=N−OR17、C=N−R17、C=N−N(R17を形成するか、又は、任意に置換された3−8員環を形成し、
各R、R、R、R10、R11、R12及びR13は、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、ハロ、−OR16、−N(R17、又は、−SR16であるか、あるいは、R10及びR11が一緒になるか、もしくは、R11及びR12が一緒になって二重結合を形成するか又は下記の基(下記の基において、Zは、NR17、O、又はC(R18である)を形成し、


各R14及びR15は、独立して、H、ハロ、−OR16、−N(R17又は−SR16であるか、あるいは、R14及びR15は、それらが結合する炭素と一緒になってC=O又はC=Sを形成し、
Xは、結合であるか、基−C(R19−であり(該基において、各R19は、独立して、H、アルキル、アラルキル、ハロ、−CN、−OR16、又は、−N(R17である)、
16は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、又は、−[C(R20−R21(pは0−6である)であるか、あるいは、同一置換基上の任意の2つのR16は、一緒になって、4−8員の任意に置換される環を形成し、
17は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、−C(=O)R20、−C(=O)OR20、−SO20、−C(=O)N(R20、又は、−[C(R20−R21(pは0−6である)であるか、あるいは、同一置換基上の任意の2つのR17は、一緒になって、4−8員の任意に置換される環を形成し、
18は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、ハロ、−CN、−OR20、−OSi(R20,−C(=O)R20、−C(=O)OR20、−SO20、又は、−C(=O)N(R20であり、
20は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、又は、ヘテロアラルキルであるか、あるいは、同一置換基上の任意の2つのR20は、一緒になって、4−8員の任意に置換される環を形成し、
21は、−OR22、−N(R22)C(=O)R22、−N(R22)C(=O)OR22、−N(R22)SO(R22)、−C(=O)R22N(R22、−OC(=O)R22N(R22)(R22)、−SON(R22)(R22)、−N(R22)(R22)、−C(=O)OR22、−C(=O)N(OH)(R22)、−OS(O)OR22、−S(O)OR22、−OP(=O)(OR22)(OR22)、−N(R22)P(O)(OR22)(OR22)、又は、−P(=O)(OR22)(OR22)であり、
22は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルであるか、あるいは、同一置換基上の任意の2つのR22は、一緒になって、4−8員の任意に置換される環を形成する。
【0076】
ある実施形態において、Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、ハロアルキル、−OR16、−C(O)R16、−CO16、−SO16、−C(O)N(R17)(R17)、又は、−[C(R16−R16である。ある実施形態において、Rは、H、アラルキル、−C(O)R16、−CO16、−SO16、又は、−C(O)N(R17)(R17)である。ある実施形態において、Rは、H、アラルキル、又は、−CO16である。
【0077】
ある実施形態において、Rは、Hである。
【0078】
ある実施形態において、Rは、アラルキルである。
【0079】
ある実施形態において、Rは、−CO16である。ある実施形態において、Rが−CO16であり、かつ、R16が、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、又は、ヘテロアラルキルである。ある実施形態において、Rは、−Boc基(例えば、Rが−CO16であり、かつ、R16がt−ブチル)である。ある実施形態において、Rは、−CBz基(例えば、Rが−CO16であり、かつ、R16がベンジル)である。
【0080】
ある実施形態において、R及びRは、一緒になって、二重結合を形成する。
【0081】
ある実施形態において、R及びRは、下記の基(下記の基において、Zは、−NR17−、−O−、又は−C(R18−である)を形成する。


ある実施形態において、Zは、−C(R18−である。ある実施形態において、Zは、−CH−である。
【0082】
ある実施形態において、Xは、結合である。例えば、ある実施形態において、R及びRは、一緒になって、二重結合を形成するか又は下記の基(下記の基において、Zは、−NR17−、−O−、又は−C(R18−である)を形成し、かつ、Xは、結合である。

【0083】
ある実施形態において、Xは、基−C(R19−である。ある実施形態において、R19は、Hである。すなわち、例えば、Xは、−CH−である。
【0084】
ある実施形態において、R及びRが一緒になって二重結合を形成し、かつ、Xが基−C(R19−である。ある実施形態において、R及びRが一緒になって二重結合を形成し、かつ、Xが基−CH−である。
【0085】
ある実施形態において、RはHである。
【0086】
ある実施形態において、各R及びRは、独立して、Hであるか、あるいは、R及びRは、それらが結合する炭素と一緒になって、C=Oを形成する。ある実施形態において、R及びRの各々は、独立して、Hである。ある実施形態において、R及びRは、それらが結合する炭素と一緒になって、C=Oを形成する。
【0087】
ある実施形態において、R及びRは、各々、Hである。
【0088】
ある実施形態において、R及びR10は、各々、Hである。
【0089】
ある実施形態において、R11は、Hである。
【0090】
ある実施形態において、R12及びR13は、各々、Hである。
【0091】
ある実施形態において、R14及びR15は、各々、Hである。
【0092】
ある実施形態において、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14及びR15の各々は、Hである。
【0093】
ある実施形態において、RがHであり、かつ、R10及びR11が一緒になって二重結合を形成する。
【0094】
ある実施形態において、R13がHであり、かつ、R11及びR12が一緒になって二重結合を形成する。
【0095】
ある実施形態において、式(I)の化合物が、式(I−AA)の化合物又はその塩であり、式(II)の化合物が、式(II−AA)の化合物又はその塩である。

なお、式(I−AA)及び式(II−AA)において、R、R、R、R、R、R10、R11、R12及びXは、本願において定義されたものである。
【0096】
ある実施形態において、式(I)の化合物が、式(I−BB)の化合物又はその塩であり、式(II)の化合物が、式(II−BB)の化合物又はその塩である。


なお、式(I−BB)及び式(II−BB)において、R、R、R、R、R及びXは、本願において定義されたものである。
【0097】
ある実施形態において、式(I)の化合物が、式(I−CC)の化合物又はその塩であり、式(II)の化合物が、式(II−CC)の化合物又はその塩である。


なお、式(I−CC)及び式(II−CC)において、R及びXは、本願において定義されたものである。
【0098】
式(I)の化合物の例は、米国特許7,230,004号、米国特許7,407,967号、米国特許公開20080293754号、及び、米国特許公開20090012109において提供される(各特許文献は、それらの全体が本願に引用によって組み込まれる)。
【0099】
ある実施形態において、 式(I)の化合物又はその塩、及び、式(II)の化合物又はその塩は、表1、2、3及び4に示された化合物又はその塩の組み合わせから選択される。なお、Rは、上記の本願において定義されたものである。








【0100】
ある実施形態において、Rは、Hである。
【0101】
ある実施形態において、Rは、アラルキルである。
【0102】
ある実施形態において、Rは、−CO16である。ある実施形態において、Rは、−CO16であり、かつ、R16は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール又はヘテロアラルキルである。ある実施形態において、Rは、−Boc基(例えば、Rが−CO16であり、かつ、R16がt−ブチル)である。ある実施形態において、Rは、−CBz基(例えば、Rが−CO16であり、かつ、R16がベンジル)である。
【0103】
ある実施形態において、本発明に係るプロセスは、式(I)の化合物又はその塩から式(II)の化合物又はその塩を優先的に生成し、式(II)において新たに形成されるアミノ基は、(R)立体化学性又は(S)立体化学性を有する。
【0104】
例えば、ある実施形態において、本発明に係るプロセスは、式(II)の化合物又はその塩を優先的に生成し、新たに形成されるアミノ基は、(S)立体化学性を有する(例えば、式(S)−(II)の化合物又はその塩である)。


なお、式(S)−(II)において、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、及び、Xは、本願において定義されたものである。
【0105】
ある実施形態において、本発明に係るプロセスは、式(II)の化合物又はその塩を優先的に生成し、新たに形成されるアミノ基は、(R)立体化学性を有する(例えば、式(R)−(II)の化合物又はその塩である)。


なお、式(R)−(II)において、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、及び、Xは、本願において定義されたものである。
【0106】
本願において使用される「優先的に生成する」とは、式(II)の化合物の1種類の立体異性体の生成量が、他の立体異性体の生成量を上回ることを意味する。ある実施形態において、本発明に係るプロセスは、式(II)の化合物又はその塩を優先的に生成し、新たに形成されるアミノ基は、HPLCによって決定される場合において、40%ジアステレオマー過剰率(de)を上回る、50%deを上回る、60%deを上回る、70%deを上回る、75%deを上回る、80%deを上回る、85%deを上回る、90%deを上回る、95%deを上回る、98%deを上回る、又は、99%deを上回る、(R)立体化学性又は(S)立体化学性を有する。
【0107】
好ましい実施形態において、本発明に係るプロセスは、式(II)の化合物又はその塩を優先的に生成し、新たに形成されるアミノ基は、(R)立体化学性を有する。
【0108】
例えば、ある実施形態において、式(I)の化合物は、式(I−AA)の化合物又はその塩であり、式(II)の化合物は、式(R)−(II−AA)の化合物又はその塩である。


なお、式(I−AA)及び式(R)−(II−AA)において、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、及び、Xは、本願において定義されたものである。
【0109】
ある実施形態において、式(I)の化合物は、式(I−BB)の化合物又はその塩であり、式(II)の化合物は、式(R)−(II−BB)の化合物又はその塩である。


なお、式(I−BB)及び式(R)−(II−BB)において、R、R、R、R、R、及び、Xは、本願において定義されたものである。
【0110】
例えば、ある実施形態において、式(I)の化合物は、式(I−CC)の化合物又はその塩であり、式(II)の化合物は、式(R)−(II−CC)の化合物又はその塩である。


なお、式(I−CC)及び式(R)−(II−CC)において、R、及び、Xは、本願において定義されたものである。
【0111】
他の好ましい実施形態において、式(I)の化合物及び式(II)の化合物は、表1に示された化合物又はその塩の組み合わせから選択される。
【0112】
ある好ましい実施形態において、本発明に係るプロセスは、表1の式(II)の化合物又はその塩を優先的に生成し、新たに形成されるアミノ基は、(R)立体化学性を有する。
【0113】
例えば、ある実施形態において、式(I)の化合物及び式(II)の化合物は、表5に示された化合物又はその塩の組み合わせから選択され、新たに形成される式(II)の化合物のアミノ基は、(R)立体化学性を有する。

【0114】
ある実施形態において、式(I)の化合物は、式(I−a)の化合物又はその塩であり、式(II)の化合物は、式(R)−(II−a)の化合物又はその塩である。


なお、式(I−a)及び式(R)−(II−a)において、Rは、本願において定義されたものである。
【0115】
ある実施形態において、Rは、Hである。
【0116】
ある実施形態において、Rは、アラルキルである。
【0117】
ある実施形態において、Rは、−CO16である。ある実施形態において、Rは、−CO16であり、かつ、R16は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール又はヘテロアラルキルである。ある実施形態において、Rは、−Boc基(例えば、Rが−CO16であり、かつ、R16がt−ブチル)である。ある実施形態において、Rは、−CBz基(例えば、Rが−CO16であり、かつ、R16がベンジル)である。
【0118】
[マスクされたケトン]
ある実施形態において、式(I)の化合物は、マスクされたケトンである。この文脈において、「マスクされたケトン」とは、インサイチュ(例えば、加水分解によって)でケトンに転換した官能基を含む化学的に改変された式(I)の化合物又はその塩を意味する。
【0119】
マスクされたケトンの例は、以下のものを含むが、それらに限定されない:アミナール及びヘミアミナール(例えば、Vogel et al., J. Org. Chem. (2004) 69:4487-4491; Reeder and Meyers, Tetrahedron Letters (1999) 40:3115-3118(各々、本願に引用によって組み込まれる)参照)、アセタール及びヘミアセタール(例えば、Boyce et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. (2008) 18:5771-5773(本願に引用によって組み込まれる)参照)、水和物(例えば、Silverman et al., J. Med. Chem. (1987) 31: 1566-1570(本願に引用によって組み込まれる)参照)、イミン(例えば、Hine et al., J. Am. Chem. Soc. (1970) 92:5194-5199(本願に引用によって組み込まれる)参照)、オキシム(例えば、Sha et al., J. Am. Chem. Soc. (2006) 128:9687-9692(本願に引用によって組み込まれる)参照)、チオカルボニル(例えば、Kalm, J. Chem. Soc. (1961) 2925-2929(本願に引用によって組み込まれる)参照)、チオアセタール及びチオヘミアセタール(例えば、Ogura et al., Tetrahedron Letters (1986) 27:3665-3668(本願に引用によって組み込まれる)参照)、エノールエーテル(例えば、Manis and Rathke, J. Org. Chem. (1981) 46:5348-5351(本願に引用によって組み込まれる)参照)、及び、それらの塩。
【0120】
例えば、本発明によれば、式(I)の化合物のマスクされたケトン又はその塩から、式(II)の化合物又はその塩を調製するプロセスであって、溶液中で、式(I)の化合物のマスクされたケトン又はその塩と、アミノドナー分子と、アミンアミノ基転移酵素とを接触させて式(II)の化合物又はその塩を提供することを含むプロセスが提供される。


なお、式(I)、式(II)において、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、及び、Xは、本願において定義されたものである。
【0121】
ある実施形態において、式(I)の化合物は、式(I−DD)を有するマスクされたケトン又はその塩である。


なお、式(I−DD)において、
24及びR25は、−OR26、−SR26、及び、−N(R26から選択されるか、あるいは、
24及びR25は、一緒になって、基 =S、=N−R26、又は、=N−OR26を形成するか、あるいは、
24は、−OR27又は−O(C=O)R27であり、かつ、R25及びRもしくはR25及びRが一緒になって結合を形成し、
26は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、−C(=O)R27、−C(=O)OR27、又は、−C(=O)N(R28であるか、あるいは、任意の2つのR26は、一緒になって、4−8員の任意に置換される環を形成し、
27は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、又は、ヘテロアラルキルであり、
28は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、又は、ヘテロアラルキルであるか、あるいは、同一置換基上の任意の2つのR28は、一緒になって、一緒に 4−8員の任意に置換される環を形成する。
【0122】
ある実施形態において、式(I−DD)の化合物又はその塩は、水和物、アセタール又はヘミアセタールである。
【0123】
ある実施形態において、式(I−DD)の化合物又はその塩は、式(I−EE)の水和物、アセタール又はヘミアセタール、あるいは、それらの塩である。


なお、式(I−EE)において、
26は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、−C(=O)R27、−C(=O)OR27、又は、−C(=O)N(R28であるか、あるいは、任意の2つのR26は、一緒になって、4−8員の任意に置換される環を形成し、
27は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、又は、ヘテロアラルキルであり、
28は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、又はヘテロアラルキルであるか、あるいは、同一置換基上の任意の2つのR28は、一緒になって、4−8員の任意に置換される環を形成する。
【0124】
ある実施形態において、式(I−DD)の化合物又はその塩は、アミナール又はヘミアミナールである。
【0125】
ある実施形態において、式(I−DD)の化合物又はその塩は、式(I−FF)のアミナール又はヘミアミナール、あるいはそれらの塩である。


なお、式(I−FF)において、
25は、−OR26又は−N(R26であり、
26は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、−C(=O)R27、−C(=O)OR27又は−C(=O)N(R28であるか、あるいは、任意の2つのR26は、一緒になって、4−8員の任意に置換される環を形成し、
27は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、又は、ヘテロアラルキルであり、
28は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、又は、ヘテロアラルキルであるか、あるいは、同一置換基上の任意の2つのR28は、一緒になって、4−8員の任意に置換される環を形成する。
【0126】
ある実施形態において、式(I−DD)の化合物又はその塩は、チオアセタール又はチオヘミアセタールである。
【0127】
ある実施形態において、式(I−DD)の化合物又はその塩は、式(I−GG)のチオアセタール又はチオヘミアセタール、あるいは、それらの塩である。


なお、式(I−GG)において、
25は、−OR26又は−SR26であり、
26は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、−C(=O)R27、−C(=O)OR27又は−C(=O)N(R28であるか、あるいは、任意の2つのR26は、一緒になって、4−8員の任意に置換される環を形成し、
27は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、又は、ヘテロアラルキルであり、
28は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、又は、ヘテロアラルキルであるか、あるいは、同一置換基上の任意の2つのR28は、一緒になって、4−8員の任意に置換される環を形成する。
【0128】
ある実施形態において、式(I−DD)の化合物又はその塩は、イミンである。
【0129】
ある実施形態において、式(I−DD)の化合物又はその塩は、式(I−HH)のイミン又はその塩である。


なお、式(I−HH)において、
26は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、−C(=O)R27、−C(=O)OR27又は−C(=O)N(R28であり、
27は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、又は、ヘテロアラルキルであり、
28は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、又は、ヘテロアラルキルであるか、あるいは、同一置換基上の任意の2つのR28は、一緒になって、4−8員の任意に置換される環を形成する。
【0130】
ある実施形態において、式(I−DD)の化合物又はその塩は、オキシムである。
【0131】
ある実施形態において、式(I−DD)の化合物又はその塩は、式(I−JJ)のオキシム又はその塩である。


なお、式(I−JJ)において、
26は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、−C(=O)R27、−C(=O)OR27、又は−C(=O)N(R28であり、
27は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、又は、ヘテロアラルキルであり、
28は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、又は、ヘテロアラルキルであるか、あるいは、同一置換基上の任意の2つのR28は、一緒になって、4−8員の任意に置換される環を形成する。
【0132】
ある実施形態において、式(I−DD)の化合物又はその塩は、チオカルボニルである。
【0133】
ある実施形態において、式(I−DD)の化合物又はその塩は、式(I−KK)のチオカルボニル又はその塩である。

【0134】
ある実施形態において、式(I−DD)の化合物又はその塩は、エノールエーテルである。
【0135】
ある実施形態において、式(I−DD)の化合物又はその塩は、式(I−LL)又は式(I−MM)のエノールエーテル、あるいは、それらの混合物、及び/又は、それらの塩である。


なお、式(I−LL)及び式(I−MM)において、
24は、−OR27又は−O(C=O)R27であり、かつ、R27は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、又は、ヘテロアラルキルである。
【0136】
[アミノドナー分子]
「アミノドナー分子」は、反応過程中で式(I)の化合物へ転移される−NH基を有する化合物である。アミノドナー分子は、アミン及びアミノ酸の両方を含む。
【0137】
ある実施形態において、アミノドナー分子は、アミン又はその塩(例えば、第1級アミン)である。アミンの例は、以下のものを含むが、それらに限定されない:ピリドキサミン、メチルベンジルアミン、2−アミノブタン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、1,1,1−トリフルオロプロパン−2−アミン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−アミン、ベンジルアミン、2−アミノ−1−ブタノール、1−アミノ−1−フェニルエタン、1−アミノ−1−(2−メトキシ−5−フルオロフェニル)エタン、1−アミノ−1−フェニルプロパン、1−アミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1−アミノ−1−(4−ブロモフェニル)プロパン、1−アミノ−1−(4−ニトロフェニル)プロパン、1−フェニル−2−アミノプロパン、1−(3−トリフルオロメチルフェニル)−2−アミノプロパン、2−アミノプロパノール、1−アミノ−1−フェニルブタン、1−フェニル−2−アミノブタン、1−(2,5−ジメトキシ−4−メチルフェニル)−2−アミノブタン、1−フェニル−3−アミノブタン、1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−アミノブタン、1−アミノ−1−(2−ナフチル)エタン、シス−2−メチルシクロペンタンアミン、トランス−2−メチルシクロペンタンアミン、シス−3−メチルシクロペンタンアミン、トランス−3−メチルシクロペンタンアミン、シス−2−エチルシクロペンタンアミン、トランス−2−エチルシクロペンタンアミン、シス−3−エチルシクロペンタンアミン、トランス−3−エチルシクロペンタンアミン、シス−2−メチルシクロヘキサンアミン、トランス−2−メチルシクロヘキサンアミン、シス−3−メチルシクロヘキサンアミン、トランス−3−メチルシクロヘキサンアミン、シス−2−エチルシクロヘキサンアミン、トランス−2−エチルシクロヘキサンアミン、シス−3−エチルシクロヘキサンアミン、トランス−3−エチルシクロヘキサンアミン、1−アミノテトラリン、2−アミノテトラリン、2−アミノ−5−メトキシテトラリン、1−アミノインダン、2−アミノインダン、2−アミノ−1−プロパノール、シス−1−アミノ−2−インダノール、トランス−1−アミノ−2−インダノール、1−アミノ−6−ヒドロキシインダンアミン、タウリン、及びそれらの塩。
【0138】
ある実施形態において、アミノドナー分子は、アミノ酸又はそのポリペプチド、及び/又は、それらの塩である。本願において使用されるポリペプチドとは、ペプチド結合によって結合した2つ以上のアミノ酸を意味する。ある実施形態において、ポリペプチドはジペプチド(例えば、ペプチド結合によって結合した2つのアミノ酸)である。
【0139】
ある実施形態において、アミノ酸は、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、2−アミノペンタン二酸、3−アミノブチラート、γ−アミノブチラート、β−アラニン、アスパラギン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、プロリン、セレノシステイン、セリン、チロシン、アルギニン、ヒスチジン、オルニチン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、スレオニン、トリプトファン、バリン、及びそれらのポリペプチド、及び/又は、それらの塩から選択される。
【0140】
ある実施形態において、アミノドナー分子は、キラルアミノドナー分子又はその塩であり、例えば、アミノドナー分子は、少なくとも1つの不斉中心を含む。ある実施形態において、転移されるべきアミノ基(−NH)は、キラル炭素に結合している。ある実施形態において、キラル炭素は、(R)−立体化学を有する。ある実施形態において、キラル炭素は、(S)−立体化学を有する。
【0141】
ある実施形態において、キラルアミノドナー分子は、キラルアミン又はその塩であり、例えば、少なくとも1つの不斉中心を含むアミンである。キラルアミンの例は、以下のものを含むが、それらに限定されない:(R)−メチルベンジルアミン、(S)−メチルベンジルアミン、(S)−2−アミノブタン、(R)−2−アミノブタン、(S)−1−アミノインダン、(R)−1−アミノインダン、(R)−1,1,1−トリフルオロプロパン−2−アミン、(S)−1,1,1−トリフルオロプロパン−2−アミン、(R)−2−アミノ−1−プロパノール、(S)−2−アミノ−1−プロパノール、(1R、2S)−シス−1−アミノ−2−インダノール、(1R、2R)−トランス−1−アミノ−2−インダノール、1−(R)−アミノ−6−ヒドロキシインダンアミン、1−(S)−アミノ−6−ヒドロキシインダンアミン、(R)−2−アミノ−1−ブタノール、(S)−2−アミノ−1−ブタノール、(R)−1−アミノ−1−フェニルエタン、(S)−1−アミノ−1−フェニルエタン、(R)−1−アミノ−1−(2−メトキシ−5−フルオロフェニル)エタン、(S)−1−アミノ−1−(2−メトキシ−5−フルオロフェニル)エタン、(R)−1−アミノ−1−フェニルプロパン、(S)−1−アミノ−1−フェニルプロパン、(R)−1−アミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、(S)−1−アミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、(R)−1−アミノ−1−(4−ブロモフェニル)プロパン、(S)−1−アミノ−1−(4−ブロモフェニル)プロパン、(R)−1−アミノ−1−(4−ニトロフェニル)プロパン、(S)−1−アミノ−1−(4−ニトロフェニル)プロパン、(R)−1−フェニル−2−アミノプロパン、(S)−1−フェニル−2−アミノプロパン、(R)−1−(3−トリフルオロメチルフェニル)−2−アミノプロパン、(S)−1−(3−トリフルオロメチルフェニル)−2−アミノプロパン、(R)−1−アミノ−1−フェニルブタン、(S)−1−アミノ−1−フェニルブタン、(R)−1−フェニル−2−アミノブタン、(S)−1−フェニル−2−アミノブタン、(R)−1−(2,5−ジ−メトキシ−4−メチルフェニル)−2−アミノブタン、(S)−1−(2,5−ジ−メトキシ−4−メチルフェニル)−2−アミノブタン、(R)−1−フェニル−3−アミノブタン、(S)−1−フェニル−3−アミノブタン、(R)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−アミノブタン、(S)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−アミノブタン、(R)−1−アミノ−1−(2−ナフチル)エタン、(S)−1−アミノ−1−(2−ナフチル)エタン、(R)−1−アミノテトラリン、(S)−1−アミノテトラリン、(R)−2−アミノテトラリン、(S)−2−アミノテトラリン、(R)−2−アミノ−5−メトキシテトラリン、(S)−2−アミノ−5−メトキシテトラリン、(1R,2S)−シス−2−メチルシクロペンタンアミン、(1S,2R)−シス−2−メチルシクロペンタンアミン、(1R,2R)−トランス−2−メチルシクロペンタンアミン、(1S,2S)−トランス−2−メチルシクロペンタンアミン、(1R,3S)−シス−3−メチルシクロペンタンアミン、(1S,3R)−シス−3−メチルシクロペンタンアミン、(1R,3R)−トランス−3−メチルシクロペンタンアミン、(1S,3S)−トランス−3−メチルシクロペンタンアミン、(1R,2S)−シス−2−エチルシクロペンタンアミン、(1S,2R)−シス−2−エチルシクロペンタンアミン、(1R,2R)−トランス−2−エチルシクロペンタンアミン、(1S,2S)−トランス−2−エチルシクロペンタンアミン、(1R,3S)−シス−3−エチルシクロペンタンアミン、(1S,3R)−シス−3−エチルシクロペンタンアミン、(1R,3R)−トランス−3−エチルシクロペンタンアミン、(1S,3S)−トランス−3−エチルシクロペンタンアミン、(1R,2S)−シス−2−メチルシクロヘキサンアミン、(1S,2R)−シス−2−メチルシクロヘキサンアミン、(1R,2R)−トランス−2−メチルシクロヘキサンアミン、(1S,2S)−トランス−2−メチルシクロヘキサンアミン、(1R,3S)−シス−3−メチルシクロヘキサンアミン、(1S,3R)−シス−3−メチルシクロヘキサンアミン、(1R,3R)−トランス−3−メチルシクロヘキサンアミン、(1S,3S)−トランス−3−メチルシクロヘキサンアミン、(1R,2S)−シス−2−エチルシクロヘキサンアミン、(1S,2R)−シス−2−エチルシクロヘキサンアミン、(1R,2R)−トランス−2−エチルシクロヘキサンアミン、(1S,2S)−トランス−2−エチルシクロヘキサンアミン、(1R,3S)−シス−3−エチルシクロヘキサンアミン、(1S,3R)−シス−3−エチルシクロヘキサンアミン、(1R,3R)−トランス−3−エチルシクロヘキサンアミン、(1S,3S)−トランス−3−エチルシクロヘキサンアミン、及びそれらの塩。
【0142】
ある実施形態において、キラルアミノドナー分子は、キラルアミノ酸、又はそのポリペプチド、及び/又は、それらの塩であり、例えば、少なくとも1つの不斉中心を含む。キラルアミノ酸の例は、以下のものを含むが、それらに限定されない:(L)−アラニン、(D)−アラニン、(L)−アスパラギン酸、(D)−アスパラギン酸、(L)−フェニルアラニン、(D)−フェニルアラニン、(2S)−2−アミノペンタン二酸、(L)−アスパラギン、(D)−アスパラギン、(L)−システイン、(D)−システイン、(L)−グルタミン、(D)−グルタミン、(L)−グルタミン酸、(D)−グルタミン酸、(L)−プロリン、(D)−プロリン、(L)−セレノシステイン、(D)−セレノシステイン、(L)−セリン、(D)−セリン、(L)−チロシン、(D)−チロシン、(L)−アルギニン、(D)−アルギニン、(L)−ヒスチジン、(D)−ヒスチジン、(L)−イソロイシン、(D)−イソロイシン、(L)−ロイシン、(D)−ロイシン、(L)−リシン、(D)−リシン、(L)−メチオニン、(D)−メチオニン、(L)−スレオニン、(D)−スレオニン、(L)−トリプトファン、(D)−トリプトファン、(L)−バリン、(D)−バリン、(L)−オルニチン、(D)−オルニチン、(3R)−アミノブチラート、(3S)−アミノブチラート、及びそれらのポリペプチド、及び/又は、それらの塩。
【0143】
ある実施形態において、キラルアミノドナー分子は、(R)−メチルベンジルアミン又はその塩である。他の実施形態において、キラルアミノドナー分子は、(S)−メチルベンジルアミン又はその塩である。
【0144】
ある実施形態において、キラルアミノドナー分子は、(L)−アラニン又はその塩である。ある実施形態において、キラルアミノドナー分子は、(D)−アラニン又はその塩である。
【0145】
ある実施形態において、キラルアミノドナー分子は、(S)−1−アミノインダンである。ある実施形態において、キラルアミノドナー分子は、(R)−1−アミノインダンである。
【0146】
ある実施形態において、本発明に係るプロセスは、溶液中で、式(I)の化合物と、キラルアミノドナー分子と、アミンアミノ基転移酵素とを接触させて、新たに形成されるアミノ基が(S)立体化学性を有する式(II)の化合物又はその塩を提供することを含む。
【0147】
ある実施形態において、本発明に係るプロセスは、溶液中で、式(I)の化合物又はその塩と、キラルアミノドナー分子と、アミンアミノ基転移酵素とを接触させて、新たに形成されるアミノ基が(R)立体化学性を有する式(II)の化合物又はその塩を提供することを含む。
【0148】
[アミンアミノ基転移酵素(ATA)]
アミンアミノ基転移酵素(ATA)は、式(II)の化合物を提供するために、アミノドナー分子からケトン官能基を有する化合物(例えば、式(I)の化合物)への−NH基の転移を触媒する。
【0149】
ある実施形態において、アミンアミノ基転移酵素は、新たに形成されるアミノ基が(R)立体化学性又は(S)立体化学性を有する式(II)の化合物又はその塩を優先的に生成する。本願において使用される場合に、「優先的に生成する」とは、式(II)の化合物の1種類の立体異性体の生成量が、他の立体異性体の生成量を上回ることを意味する。
【0150】
ある実施形態において、アミンアミノ基転移酵素は、新たに形成されるアミノ基が(R)立体化学性を有する式(II)の化合物又はその塩を優先的に生成する。
【0151】
ある実施形態において、アミンアミノ基転移酵素は、新たに形成されるアミノ基が(S)立体化学性を有する式(II)の化合物又はその塩を優先的に生成する。
【0152】
ある実施形態において、アミンアミノ基転移酵素は、新たに形成されるアミノ基が(R)立体化学性又は(S)立体化学性を有する式(II)の化合物又はその塩を優先的に生成し、HPLCによって決定されるものとして、40%ジアステレオマー過剰率(de)を上回る、50%deを上回る、60%deを上回る、70%deを上回る、75%deを上回る、80%deを上回る、85%deを上回る、90%deを上回る、95%deを上回る、98%deを上回る、又は、99%deを上回る。
【0153】
ある実施形態において、アミンアミノ基転移酵素は、鏡像異性体的に純粋な式(II)の化合物又はその塩を優先的に生成する。
【0154】
ある実施形態において、アミンアミノ基転移酵素は、オメガアミンアミノ基転移酵素、ブロードレンジアミノ基転移酵素、グルタミン酸−ピルビン酸アミノ基転移酵素又はグルタミン酸−オキサロ酢酸アミノ基転移酵素である。
【0155】
ある実施形態において、アミンアミノ基転移酵素は、オメガアミンアミノ基転移酵素である。
【0156】
オメガアミンアミノ基転移酵素の例は、以下のものを含むが、それらに限定されない:ATA−101、ATA−102、ATA−103、ATA−104、ATA−105、ATA−106、ATA−107、ATA−108、ATA−109、ATA−110、ATA−113、ATA−114、ATA−115、ATA−116、ATA−117及びATA−124などのCodexis, Inc. (Redwood City, CA)からのオメガアミンアミノ基転移酵素、WO2007093372(本願に引用によって組み込まれる)などに開示のビブリオ・フルビアリス、アルカリゲネス・デニトリフィカンス、クレブシエラ・ニューモニエ又はバチルス・チューリンギエンシス、Smithies et al., Tetrahedron Asymmetry (2009) 570-574(本願に引用によって組み込まれる)などに開示のクロモバクテリウム・ビオラセウム由来のオメガアミンアミノ基転移酵素、Nakano et al., J. Biochem. (1977) 81:1375-1381(本願に引用によって組み込まれる)などに開示のバチルス・セレウス由来のオメガアミンアミノ基転移酵素、Cassimjee et al, ChemComm (2010) 46:5569-5571(本願に引用によって組み込まれる)などに開示のアルスロバクター・シトレウス由来のオメガアミノ基転移酵素。
【0157】
本発明に従って使用され得る他の適切なオメガアミンアミノ基転移酵素の例は、Iwa-saki et al., Biotechnol. Lett. (2003) 25:1843-1846、Shin et al., Biotechnol. Bioeng. (1997) 55:348-358、Shin and Kim, Biosc. Biotechnol. Biochem. (2001) 65: 1782-1788、Koszelewski et al., Trends in Biotechnology (2010) 28:324-332、及び、Shin and Kim, Biotechnol. Bioeng. (1998) 60:534-540(これらの文献は各々、本願に引用によって組み込まれる)。
【0158】
アミンアミノ基転移酵素の固定は、酵素の安定性を改善することにも有効であり得るし、再使用を可能にするだろうし、それによって本発明に係るプロセスがより経済的になる。酵素の固定は、疎水性の樹脂への単純な吸着によって、酵素と種々の官能基との分子間共有結合性クロスリンクによって、あるいは、最終的に酵素をポリマーマトリックス又は膜の格子に組み込むことによって達成されている。ビブリオ・フルビアリスJS17由来のオメガアミンアミノ基転移酵素の共有結合性の固定は、Leeらによって報告されており、該著者は、酵素をキトサンビーズ上に吸着させ、その後、グルタルアルデヒドとクロスリンクした(Yi et al., Proc. Biochem. (2007) 42:895-898, 本願に引用によって組み込まれる)。キトサンビーズに固定されたアミンアミノ基転移酵素は、5回の連続した基質との反応の後にca.77%の活性を保持し、本発明に係るプロセスの有用性を示した。
【0159】
ある実施形態において、オメガアミンアミノ基転移酵素は、Codexis, Inc.からのアミンアミノ基転移酵素である。
【0160】
ある実施形態において、オメガアミンアミノ基転移酵素は、ATA−113である。
【0161】
ある実施形態において、オメガアミンアミノ基転移酵素は、ATA−117である。
【0162】
ある実施形態において、オメガアミンアミノ基転移酵素は、ビブリオ・フルビアリス由来のオメガアミンアミノ基転移酵素である。
【0163】
ある実施形態において、オメガアミンアミノ基転移酵素は、アルカリゲネス・デニトリフィカンス由来のオメガアミンアミノ基転移酵素である。
【0164】
ある実施形態において、オメガアミンアミノ基転移酵素は、アルスロバクター・シトレウス由来のオメガアミンアミノ基転移酵素である。
【0165】
ある実施形態において、オメガアミンアミノ基転移酵素は、クレブシエラ・ニューモニエ由来のオメガアミンアミノ基転移酵素である。
【0166】
ある実施形態において、オメガアミンアミノ基転移酵素は、バチルス・チューリンギエンシス由来のオメガアミンアミノ基転移酵素である。
【0167】
ある実施形態において、オメガアミンアミノ基転移酵素は、バチルス・セレウス由来のオメガアミンアミノ基転移酵素である。
【0168】
ある実施形態において、オメガアミンアミノ基転移酵素は、クロモバクテリウム・ビオラセウム由来のオメガアミンアミノ基転移酵素である。
【0169】
ある実施形態において、オメガアミンアミノ基転移酵素は、固定されたオメガアミンアミノ基転移酵素である。
【0170】
[補因子]
ある実施形態において、本発明に係るプロセスは、溶液に補因子を添加することを更に含む。補因子は、酵素反応の間に酵素に結合する補欠分子族と、酵素反応の間に化学基の転移をするように作用する補酵素とを含む。
【0171】
補因子の例は、補欠分子族であるピリドキサールリン酸(PLP)、及び、L−アラニン脱水素酵素(LADH)、乳酸脱水素酵素(LDH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、ギ酸デヒドロゲナーゼ(FDH)そしてグルコース脱水素酵素(GDH)などの補酵素を含む。
【0172】
ある実施形態において、本発明に係るプロセスは、溶液に、補因子であるピリドキサールリン酸(PLP)を添加することを更に含む。
【0173】
ある実施形態において、式(I)の化合物と接触させる前に、溶液に添加されるアミンアミノ基転移酵素と、補因子であるピリドキサールリン酸とを、予め複合体化する。他の実施形態において、式(I)の化合物と接触させる前に、溶液に添加されるアミンアミノ基転移酵素(ATA)と、ピリドキサールリン酸とを、予め複合体化しない(すなわち、溶液に各々を個々に添加する)。
【0174】
ある実施形態において、本発明に係るプロセスは、溶液に補酵素を添加することを更に含む。ある実施形態において、本発明に係るプロセスは、溶液に、L−アラニン脱水素酵素(LADH)、乳酸脱水素酵素(LDH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、ギ酸デヒドロゲナーゼ(FDH)、及びグルコース脱水素酵素(GDH)から選択される1つ以上の補酵素を添加することを更に含む。
【0175】
ある実施形態において、本発明に係るプロセスは、溶液に補酵素であるLADHを添加することを更に含む。
【0176】
ある実施形態において、本発明に係るプロセスは、溶液に補酵素であるFDHを添加することを更に含む。
【0177】
ある実施形態において、本発明に係るプロセスは、溶液に補酵素であるNADを添加することを更に含む。
【0178】
ある実施形態において、本発明に係るプロセスは、溶液に補酵素であるLDHを添加することを更に含む。
【0179】
ある実施形態において、本発明に係るプロセスは、溶液に補酵素であるGDHを添加することを更に含む。
【0180】
ある実施形態において、本発明に係るプロセスは、溶液にLADH、FDH及びNADの混合物を添加することを更に含む。
【0181】
ある実施形態において、本発明に係るプロセスは、溶液に、補酵素であるLDH、GDH及びNADの混合物を添加することを更に含む。
【0182】
ある実施形態において、本発明に係るプロセスは、溶液に、糖を添加することを更に含む。ある実施形態において、糖は、グルコースである。
【0183】
ある実施形態において、本発明に係るプロセスは、溶液に、ピルビン酸還元酵素ミックスを添加することを更に含む。ある実施形態において、本発明に係るプロセスは、溶液に、補酵素であるLDH、GDH、NADと、糖であるグルコースとの混合物(例えば、Codexis, Inc.から入手可能であるピルビン酸還元酵素ミックス)を添加することを更に含む。
【0184】
ある実施形態において、本発明に係るプロセスは、溶液に、アンモニア又はアンモニウム塩を添加することを更に含む。ある実施形態において、アンモニウム塩は、アンモニウムホルマート(NHCOH)である。アンモニウムホルマートは、ギ酸及びアンモニアの混合物から、インサイチュウで、取得することが可能である。
【0185】
[他の反応条件]
ある実施形態において、溶液は、水性の溶液を含む。
【0186】
ある実施形態において、水性の溶液は、緩衝溶液化した水性の溶液である。緩衝液の例は、以下のものを含むが、それらに限定されない:3−{[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}プロパンスルホン酸(TAPS)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(Bicine)、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン(Tris)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン(Tricine)、4−2−ヒドロキシエチル−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、2−{[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}エタンスルホン酸(TES)、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、ジメチルアルシン酸(Cacodylate)、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、炭酸、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、アセタート、ホスファートナトリウム、及び、それらの塩。
【0187】
ある実施形態において、緩衝溶液化した水性の溶液は、ホスファートナトリウム緩衝液である。
【0188】
ある実施形態において、本発明に係る溶液は、共溶媒を更に含む。ある実施形態において、共溶媒は、有機溶媒である。
【0189】
ある実施形態において、有機溶媒は、水溶性(ないし、水混和性)である。ある実施形態において、有機溶媒は、非水溶性(ないし、非水混和性)である。
【0190】
ある実施形態において、本発明に係る溶液は、例えば、水性の溶液と1つ以上の水溶性の有機溶媒とを含む単相性のシステムである。適切な水溶性の有機溶媒は、以下のものを含むが、それらに限定されない:有機アルコール(例えば、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、イソプロパノール(iPrOH)及び2,2,2−トリフルオロエタノール(CFCHOH))、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、グリコール(例えば、エチレングリコール及びプロピレングリコール)、そして、それらの混合物。
【0191】
ある実施形態において、本発明に係る溶液は、水性の溶液及び有機アルコールを含む。ある実施形態において、本発明に係る溶液は、水性の溶液及びメタノールを含む。
【0192】
しかしながら、他の実施形態において、本発明に係る溶液は、例えば、水性の溶液と、1つ以上の非水溶性の有機溶媒とを含む二相性のシステムである。適切な非水溶性の有機溶媒は、以下のものを含むが、それらに限定されない:アルカン(例えば、ヘキサン、ヘプタン、パーフルオロヘキサン)、エステル(例えば、エチルアセタート(EtOAc)、イソプロピルアセタート(iPrOAc))、ケトン(例えば、シクロヘキサノン)、エーテル(例えば、2−メチルテトラヒドロフラン)、及び、芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン)。
【0193】
ある実施形態において、溶液のpHは、約5及び約9の間であるか、約5及び約8の間であるか、約6及び約8の間であるか、約7及び約8の間であるか、約7及び約7.5の間であるか、又は、約7.5及び約8の間である。
【0194】
ある実施形態において、溶液のpHは、約9未満であるか、約8.5未満であるか、又は、約8未満である。ある実施形態において、溶液のpHは、約7である。ある実施形態において、溶液のpHは、約7.5である。ある実施形態において、溶液のpHは、約8である。
【0195】
ある実施形態において、溶液の温度は、少なくとも約20℃、少なくとも約25℃、少なくとも約30℃、又は、少なくとも約35℃である。ある実施形態において、溶液の温度は、約20℃及び約50℃の間である。
【0196】
ある実施形態において、本発明に係るプロセスは、樹脂を更に含む。ケトン出発材料(I)又は製造物であるアミン(II)の樹脂への吸着は、反応メディウムにおけるそれぞれの濃度を減少させ、酵素を阻害する性質(propensity)を減少させる。樹脂の例は、Amberlite(登録商標)樹脂、Amberlyst(登録商標)樹脂、Dowex(登録商標)樹脂を含むがそれらに限定されない。
【0197】
ある実施形態において、本発明に係るプロセスは、シクロデキストリン又は界面活性剤などの溶解剤(ないし可溶化剤)を更に含む。シクロデキストリンの例は、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンを含むが、それらに限定されない。界面活性剤の例は、以下のものを含むが、それらに限定されない:ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート[Tween20]、ポリオキシエチレンソルビタン[Tween60]、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート[Tween80]、ソルビタンモノパルミタート[Span40]、ソルビタンモノステアラート[Span60]、ソルビタントリステアラート[Span65]、グリセリルモノオレアート、ソルビタンモノオレアート[Span80])、ポリオキシエチレンエステル(例えば、ポリオキシエチレンモノステアラート[Myrj45]、ポリオキシエチレン水素添加ヒマシ油、ポリエトキシレート化ヒマシ油、ポリオキシメチレンステアラート、及び、ソルトール(Solutol))、ポリオキシエチレンエーテル(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル[Brij30])、ジエチレングリコールモノラウラート、トリエタノールアミンオレアート、ナトリウムオレアート、カリウムオレアート、エチルオレアート、オレイン酸、エチルラウラート、ナトリウムラウリルスルファート、プルロニックF68、ポロキサマ188、及び/又は、それらの混合物。
【0198】
ある実施形態において、本発明に係るプロセスは、スルファート(例えば、ナトリウムビスルファート)を更に含む。例えば、ベンジルアミンをアミノドナー分子として使用する場合には、ナトリウムビスルファートは、副生成物であるベンズアルデヒドと反応して、不溶性のビスルファイト付加物(bisulfite adduct)を形成する。
【0199】
ある実施形態において、本発明に係るプロセスは、脱水素酵素(例えば、サッカロミセス・セレビシエなどの酵母由来のアルコール脱水素酵素(YADH))を更に含む。例えば、イソプロピルアミンをアミノドナー分子として使用する場合には、YADH酵素がアセトン副生成物をイソプロパノールに転換し、それによって平衡状態がシフトし、反応の完遂を促進する(Cassimjee et al., Chem. Comm. (2010) 46:5569-5571(本願に引用によって組み込まれる)を参照)。
【0200】
[追加の実施形態]
ある実施形態において、式(I−a)の化合物又はその塩から式(R)−(II−a)の化合物又はその塩を調製するプロセスであって、溶液中で、式(I−a)の化合物又はその塩と、アミノドナー分子と、アミンアミノ基転移酵素とを接触させて式(R)−(II−a)の化合物又はその塩を提供するプロセスが提供される。


式(I―a)、式(R)−(II−a)において、
は、H、アラルキル、又は−CO16であり、
16は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、又は、−[C(R20−R21(pは0−6である)であり、
20は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、又は、ヘテロアラルキルであるか、あるいは、同一置換基上の任意の2つのR20は、一緒になって、4−8員の任意に置換される環を形成し、
21は、−OR22、−N(R22)C(=O)R22、−N(R22)C(=O)OR22、−N(R22)SO(R22)、−C(=O)R22N(R22、−OC(=O)R22N(R22)(R22)、−SON(R22)(R22)、−N(R22)(R22)、−C(=O)OR22、−C(=O)N(OH)(R22)、−OS(O)OR22、−S(O)OR22、−OP(=O)(OR22)(OR22)、−N(R22)P(O)(OR22)(OR22)、又は、−P(=O)(OR22)(OR22)であり、
22は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルであるか、あるいは、同一置換基上の任意の2つのR22は、一緒になって、4−8員の任意に置換される環を形成する。
【0201】
ある実施形態において、Rは、H、アラルキル、又は、−CO16である。
【0202】
ある実施形態において、Rは、Hである。
【0203】
ある実施形態において、Rは、アラルキルである。
【0204】
ある実施形態において、Rは、−CO16である。ある実施形態において、Rが−CO16であり、かつ、R16がアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール又はヘテロアラルキルである。ある実施形態において、Rは、−Boc基(例えば、Rが−CO16であり、かつR16がt−ブチル)である。ある実施形態において、Rは、−CBz基(例えば、Rが−CO16であり、かつ、R16がベンジル)である。
【0205】
ある実施形態において、アミノドナー分子は、キラルアミノドナー分子である。ある実施形態において、キラルアミノドナー分子は、(R)−メチルベンジルアミン又はその塩である。他の実施形態において、キラルアミノドナー分子は、(S)−メチルベンジルアミン又はその塩である。
【0206】
ある実施形態において、キラルアミノドナー分子は、(L)−アラニン又はその塩である。ある実施形態において、キラルアミノドナー分子は、(D)−アラニン又はその塩である。
【0207】
ある実施形態において、アミンアミノ基転移酵素は、オメガアミンアミノ基転移酵素である。ある実施形態において、オメガアミンアミノ基転移酵素は、Codexis, Inc.からのATA−113である。ある実施形態において、オメガアミンアミノ基転移酵素は、Codexis, Inc.からのATA−117である。ある実施形態において、オメガアミンアミノ基転移酵素は、ビブリオ・フルビアリス由来のオメガアミンアミノ基転移酵素である。
【0208】
[追加のステップ]
ある実施形態において、本発明に係るプロセスは、式(II)の化合物又はその塩と、スルホニル化剤とを接触させて、式(III)の化合物又はその塩を提供することを更に含む。


なお、式(II)において、
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15及びXは、 本願において定義されたものであり、
式(III)において、
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15及びXは、本願において定義されたものであり、
23は、アルキル又はアリールである。
【0209】
スルホニル化剤の例は、以下のものを含むが、それらに限定されない:ベンゼンスルホン酸クロリド、ベンゼンスルホン酸無水物、p−トルエンスルホン酸クロリド、p−トルエンスルホン酸無水物、メタンスルホン酸クロリド、及び、メタンスルホン酸無水物。
【0210】
ある実施形態において、スルホニル化剤がベンゼンスルホン酸クロリド又はベンゼンスルホン酸無水物であり、かつ、R23がベンジニル(すなわち、−C)である。
【0211】
ある実施形態において、スルホニル化剤がp−トルエンスルホン酸クロリド又はp−トルエンスルホン酸無水物であり、かつ、R23がトルエニル(すなわち、−C(p−CH))である。
【0212】
ある実施形態において、スルホニル化剤がメタンスルホン酸クロリド又はメタンスルホン酸無水物であり、かつ、R23がメチル(すなわち、−CH)である。
【0213】
ある実施形態において、式(II)の化合物は、式(II−a)の化合物又はその塩であり、かつ、式(III)の化合物は、式(III−a)の化合物又はその塩である。


なお、式(II−a)及び式(III−a)において、R及びR23は本願において定義されたものである。
【0214】
ある実施形態において、式(II)の化合物は、式(R)−(II−a)又はその塩であり、かつ、式(III)の化合物は、式(R)−(III−a)又はその塩である。


なお、式(R)−(II−a)及び式(R)−(III−a)において、R及びR23は本願において定義されたものである。
【0215】
ある実施形態において、Rは、Hである。
【0216】
ある実施形態において、Rは、アラルキルである。
【0217】
ある実施形態において、Rは、−CO16である。
【0218】
ある実施形態において、Rがアラルキル又は−CO16であり、本発明に係るプロセスが式(III)(Rがアラルキル又は−CO16である)の化合物を脱保護化して、式(III)の化合物(RがHである)の化合物を提供することを更に含む。脱保護方法の例は、水素化などの還元条件を含むがそれに限定されない。
【0219】
例えば、ある実施形態において、本発明に係るプロセスは、式(R)−(III−a)の化合物又はその塩を脱保護化して、式(R)−(III−b)の化合物又はその塩を提供することを更に含む。


なお、式(R)−(III−a)において、Rはアラルキル又は−CO16であり、式(R)−(III−b)において、R23は本願において定義されたものである。
【実施例】
【0220】
本願明細書は、概略的に記載されており、以下実施例を参照することによって、より容易に理解されるであろう。以下の実施例は単に例示のために包含され、当該実施例には限定されない。
【0221】
化合物(I−a)の酵素によるアミノ基転移


方法と材料
酵素
アミンアミノ基転移酵素は、商業的に入手可能な供給源から購入し、−20℃で保存し、そして、そのまま使用した:ATA‐113(Codexis, Redwood City, CA;ロット番号 104020902);ATA−117(Codexis, Redwood City, CA;ロット番号 104020902);ビブリオ・フルビアリス由来のオメガアミノ基転移酵素(Fluka;カタログ番号 08374);グルタミン酸−ピルビン酸アミノ基転移酵素(Fluka);ブロードレンジアミノ基転移酵素(Fluka)。
【0222】
補酵素
本研究に利用された補酵素は、L‐アラニン脱水素酵素(LADH、シグマ、番号、A7653-100U)、ギ酸脱水素酵素(FDH、Codexis、FDH-101)、及び、ピルビン酸還元酵素ミックス(PRM-102、Codexis)を含む。ピルビン酸還元酵素ミックスは、乳酸脱水素酵素(LDH)、グルコース脱水素酵素(GDH)、グルコース、及び、NADの混合物である。
【0223】
pH
以下の緩衝液が研究の間に使用された:100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7;Fluka、番号 82637);20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5;Fluka、番号 82592)、20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH8;Fluka、番号 82593)。
【0224】
HPLC方法1
シンメトリーC18カラム 4.6×150mm;流速 1.5mL/分;移動相A=0.1%TFA水溶液;移動相B=0.1%TFAアセトニトリル溶液;10μL注入;40℃カラム温度;検出波長=215nm(全種類)。化合物(II−a)の保持時間(R=Bn:S−(II−a)=5.9分;R−(II−a)=6.8分)。
HPLC方法1における勾配

【0225】
HPLC方法2
エックスブリッジ(Xbridge)C8カラム 4.6×75mm;流速 1.0mL/分;移動相A=10mMアンモニウムホルマート緩衝液、pH3.8;移動相B=0.05%ギ酸アセトニトリル溶液;5μL注入(注射);40℃カラム温度;検出波長=215nm(全種類)。化合物(II−a)の保持時間(R=Bn:S−(II−a)=7.0分;R−(II−a)=7.5分)。
HPLC方法2における勾配

【0226】
HPLC方法3
エクリプス(Eclipse) XDB−C8カラム 4.6×50mm;流速 1.5mL/分;移動相A=0.1%TFA水溶液;移動相B=0.1%TFAアセトニトリル溶液;10μL注入;40℃カラム温度;検出波長=215nm(全種類)。化合物(II−a)の保持時間(R=Cbz:S−(II−a)=6.0分;R−(II−a)=6.1分)。

HPLC方法3における勾配

【0227】
一般的な実験方法
方法A
化合物(I−a)、リン酸ナトリウム緩衝液溶液、1mMピリドキサールリン酸(PLP)、アミンアミノ基転移酵素、アミノドナー分子、PRM−102、及び、任意に、共溶媒をバイアルに加えた。バイアルに蓋をして、反応物を30℃で72時間撹拌した。続いて、反応混合物を凍結乾燥し、残渣をメタノール(2mL)に再懸濁した。100μLに分画したメタノール溶液をフィルタろ過し、HPLCによって分析した。方法Aを使用する実験1〜8の結果を、表6に概説する。
【0228】
方法B
化合物(I−a)、リン酸ナトリウムで緩衝した溶液、1mMピリドキサールリン酸(PLP)、アミンアミノ基転移酵素、D−アラニン、アンモニウムホルマ−ト(NHCOH)、L−アラニン脱水素酵素(LADH)溶液(8.05U/mL)、ギ酸脱水素酵素(FDH)溶液(10U/mL)、NAD(1mM)、及び、共溶媒をバイアルに加えた。バイアルに蓋をして、反応物を30℃で72時間撹拌した。続いて、反応混合物を凍結乾燥し、残渣をメタノール(2mL)に再懸濁した。100μLに分画したメタノール溶液をフィルタろ過し、HPLCによって分析した。方法Bを使用する実験1〜10の結果を、表7に概説する。
【0229】
方法C
化合物(I−a)、リン酸ナトリウムで緩衝した溶液、ピリドキサールリン酸(PLP)(0.5mMから1mM)、アミンアミノ基転移酵素、アミノドナー分子、そして、任意に、共溶媒及びPRM−102をバイアルに加えた。バイアルに蓋をして、反応物を37℃で24時間から約6日間(144時間)撹拌した。続いて、反応混合物を凍結乾燥し、残渣をメタノール(2mL)に再懸濁した。100μLに分画したメタノール溶液をフィルタろ過し、HPLCによって分析した。方法Cを使用する実験1〜28の結果を、表8に概説する。
【0230】
方法D
化合物(I−a)、リン酸ナトリウムで緩衝した溶液、ピリドキサールリン酸(PLP)(0.5mM)、アミンアミノ基転移酵素、アミノドナー分子(5当量)、PRM−102、及び、任意に、共溶媒をバイアルに加えた。バイアルに蓋をして、反応物を37℃で24時間から約7日間(168時間)撹拌した。100μLに分画した反応混合物を1容量(volume)のメタノールで希釈し、HPLCによって分析した。方法Dを使用する実験1〜13の結果を、表9に概説する。
【0231】
方法E
化合物(I−a)、リン酸ナトリウムで緩衝した溶液、ピリドキサールリン酸(PLP)(0.5mM)、アミンアミノ基転移酵素、L−アラニン(5当量)、PRM−102、及び、メタノール(10%v/v)をバイアルに加えた。バイアルに蓋をして、反応物を37℃で24時間から約7日間(168時間)撹拌した。100μLに分画した反応混合物を1容量のメタノールで希釈し、HPLCによって分析した。方法Eを使用する実験1−5の結果を、表10に概説する。
【0232】
方法F
化合物(I−a)、リン酸ナトリウムで緩衝した溶液(pH=7.5)、ピリドキサールリン酸(PLP)(0.5mM)、アミンアミノ基転移酵素、L−アラニン(5当量)、PRM−102、及び、メタノール(10%v/v)をバイアルに加えた。バイアルに蓋をして、反応物を37℃で24時間から約7日間(168時間)撹拌した。水層のpHを、反応開始時と反応中とにおいて測定し、必要に応じて、0.1MNaOH溶液を使用してpHを7.5まで再調節した。100μLに分画した反応混合物を、1容量のメタノールで希釈し、HPLCによって分析した。方法Fを使用する実験1−9の結果を、表11に概説する。
【0233】
方法G
化合物(I−a)、リン酸ナトリウムで緩衝した溶液(pH=7.5)、ピリドキサールリン酸(PLP)(0.5mM)、アミンアミノ基転移酵素、L−アラニン(5当量)、PRM−102、添加剤(100%wt/wt)、及び、メタノール(10%v/v)をバイアルに加えた。バイアルに蓋をして、反応物を37℃で24時間から約7日間(168時間)撹拌した。100μLに分画した反応混合物を、1容量のメタノールで希釈し、HPLCによって分析した。方法Gを使用する実験1−5の結果を、表12に概説する。
【0234】
方法H
化合物(I−a)、リン酸ナトリウムで緩衝した溶液(pH=7.5)、ピリドキサールリン酸(PLP)(0.5mM)、アミンアミノ基転移酵素、L−アラニン(5当量)、PRM−102、共溶媒(10から20%v/v)をバイアルに加えた。バイアルに蓋をして、反応物を37℃で24時間から約7日間(168時間)撹拌した。100μLに分画した反応混合物を、1容量のメタノールで希釈し、HPLCによって分析した。方法Hを使用する実験1−12の結果を、表13に概説する。





































表の説明

【0235】
実施例1:アミノ基転移酵素の候補の評価
アミノ基転移酵素の候補は、上述の方法Aに記載される反応条件を使用して評価した(表6参照)。これらの実験は、PRM‐102(粉末状)を補酵素システムとして使用し、D‐アラニン又はL‐アラニンをアミノドナー分子として使用して実行した。2つの実験を除く全ての実験において、水溶性(ないし、水混和性)の共溶媒(メタノール又はトリフルオロエタノール(CFCHOH))を採用した。表6に示すように、アミノ基転移がオメガアミンアミノ基転移酵素ATA‐113の存在下で実行した場合には、5%及び15%の変換%が観察され、オメガアミンアミノ基転移酵素ATA‐117の存在下で実行した場合には、2%及び3%の変換%が観察された。(R)‐選択性アミノ基転移酵素として一般的に知られるオメガアミンアミノ基転移酵素ATA‐117は、化合物(R)‐(II‐a)よりもむしろ化合物(S)‐(II‐a)を生成した。(S)‐選択性アミノ基転移酵素として一般的に知られるATA‐113は、化合物(S)‐(II‐a)を生成した。記号「n/a」は、反応混合物において、アミノ基転移による生成物(II‐a)が、HPLCで検出されなかったことを示す。
【0236】
実施例2:FDH/LADH/NAD補酵素混合物の評価
補酵素FDH、LADH及びNADの候補混合物は、上述の方法Bに記載の反応条件を使用して評価した(表7参照)。これらの実験は、ATA‐117及びATA‐113を、アミンアミノ基転移酵素として使用し、D‐アラニンをアミノドナー分子として使用し、DMSO、メタノール又はトリフルオロエタノールを共溶媒として使用して実行した。表7に示すように、1%から37%の変換%が、この補酵素システムを使用して観察された。更に、アミノ基転移は、ATA‐117又はATA‐113のいずれかを、アミノ基転移酵素酵素として使用して達成した。記号「n/a」は、反応混合物において、アミノ基転移による生成物(II‐a)が、HPLCで検出されなかったことを示す。
【0237】
実施例3:ビブリオ・フルビアリス由来のオメガアミノ基転移酵素と、ATA‐117及びATA‐113との比較
ビブリオ・フルビアリス由来のオメガアミノ基転移酵素の活性は、上述の方法Cに記載された反応条件を使用して、ATA‐117及びATA‐113の活性と比較した(表8参照)。これらの実験は、PRM‐102を補酵素システムとして使用し、以下のアミノドナー分子の1つを使用して実行した:D‐アラニン、L‐アラニン、(S)‐メチルベンジルアミン、及び、(R)‐メチルベンジルアミン。ATA‐117又はATA‐113をアミノ基転移酵素として採用した場合には、化合物(S)‐(II-a)が生成された。表8に示すように、この生成物の立体化学(S)は、アミノドナー分子であるD‐アラニン、L‐アラニン、及び、(S)‐メチルベンジルアミンを使用して得られた。対照的に、ビブリオ・フルビアリス由来のオメガアミンアミノ基転移酵素がアミンアミノ基転移酵素として用いられた場合には、化合物(R)‐(II-a)が生成された。表8に示すように、(R)又は(S)‐メチルベンジルアミンのいずれかをアミノドナー分子として使用することで、この生成物の立体化学性が得られた。記号「n/a」は、反応混合物において、アミノ基転移による生成物(II‐a)が、HPLCで検出されなかったことを示す。
【0238】
実施例4:アミノドナー分子の候補の評価
アミノドナー分子の候補は、上記の方法Dに記載された反応条件を使用して評価した(表9参照)。これら実験は、ビブリオ・フルビアリス由来のオメガアミノ基転移酵素、20mMリン酸緩衝液(pH=7.0)、及び、共溶媒としてメタノールを使用して実行した。L−アラニン、D−アラニン、(R)‐メチルベンジルアミン、(S)‐メチルベンジルアミン、2‐アミノインダン、(R)‐1‐アミノインダン、(R)‐2‐アミノ‐1‐プロパノール、(S)‐2‐アミノ‐1‐プロパノール、(1R,2S)‐シス‐1‐アミノ‐2‐インダノール、(1R,2R)‐トランス‐1‐アミノ‐2‐インダノール、1‐(R)‐アミノ‐6‐ヒドロキシインダンアミン及びイソプロピルアミンをテストした。表9に示すように、化合物(R)‐(II‐a)のみが観察された。アミノドナー分子としてのL‐アラニンは、7日間経過後、16.1%の変換%をもたらした。記号「n/a」は、反応混合物において、アミノ基転移による生成物(II‐a)が、HPLCで検出されなかったことを示す。
【0239】
実施例5:反応pH及び緩衝液強度の候補の評価
反応pH及び緩衝液強度の候補は、上記の方法Eに記載された反応条件を使用して評価した(表10参照)。これら実験は、異なるpH及びモル濃度の緩衝液を使用して実行した。表10に示すように、20mMリン酸緩衝液(pH=8.0に維持する)が14.9%の変換%をもたらすことが確認された。緩衝液のモル濃度(100mM)を増加することによって、出発材料(I‐a)の沈殿が生じ、そして、生成物(R)‐(II‐a)の変換率が減少することが解った。記号「n/a」は、反応混合物において、アミノ基転移による生成物(II‐a)が、HPLCで検出されなかったことを示す。
【0240】
表11は、pH=7.5において実行したアミノ基転移反応の結果を表す。これら反応ではpHの変化をモニターし、反応混合物におけるpHの変化は、0.1Nの水酸化ナトリウム溶液を使用して調節した(方法F)。しかしながら、変換率は、酵素の齢ないしは保存期間(age)に依存することもわかった。新鮮ないしフレッシュなボトルの酵素は、L‐アラニン及び2ユニット/mgの基質化合物(I‐a)を使用すると、7日間経過後、変換%を31%まで増加させることが解った。6日目の終わりに、反応混合物に追加的ユニットの新鮮な酵素をチャージした場合には、変換率は、48.7%に改善された。記号「n/a」は、アミノ基転移による生成物(II‐a)が、反応混合物において、HPLCで検出されなかったことを示す。
【0241】
実施例6:添加剤の候補の評価
添加剤の候補は、上述の方法Gに記載される反応条件を使用して評価した(表12参照)。これら実験は、樹脂、シクロデキストリンやサルファイト(sulfites)のような添加剤を使用して実行した。生成化合物(II‐a)及び出発材料(I‐a)を吸着することが可能な樹脂をスクリーニングした。更に、可溶化有機化合物として知られているβ‐シクロデキストリン及びγ‐シクロデキストリンも、テストした(14.0%及び11.4%の変換%が、β‐シクロデキストリン及びγ‐シクロデキストリンにそれぞれ観察された)。記号「n/a」は、反応混合物において、アミノ基転移による生成物(II‐a)が、HPLCで検出されなかったことを示す。
【0242】
実施例7:共溶媒の評価
共溶媒の候補は、上述の方法Hに記載された反応条件を使用して評価した(表13参照)。単相性のシステムに関しては、メタノールを共溶媒として使用すると、テストした共溶媒の中で最も高い変換%をもたらすことが解った。二相性のシステムに関しては、酢酸エチルを共溶媒として使用すると、テストした共溶媒の中で最も高い変換%をもたらすことが解った。記号「n/a」は、反応混合物において、アミノ基転移による生成物(II‐a)が、HPLCで検出されなかったことを示す。
【0243】
式(II)の化合物のスルホニル化の例


Tremblay et al., "Discovery of a Potent and Orally Active Hedgehog Pathway Antagonist (IPI-926)" J Med. Chem. (2009) 52:4400-4418に開示の手順は、引用によって本願に組み込まれる。
【0244】
アミン(R=CBz)(5.10g、9.09mmol、1当量)のジクロロメタン溶液(60mL)を、ジイソプロピルエチルアミン(5.88g、45.5mmol、5.0当量)で処理し、0℃に冷却して、メタンスルホニルクロリド(2.08g、18.2mmol、2.0当量)で処理した。反応混合物を30分間撹拌し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と、酢酸エチルとの間で分画した。有機層を分画し、硫酸ナトリウムで乾燥し、そして、乾燥状態まで濃縮して粗残渣を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(10−30%EtOAc/ヘキサン)を使用して残渣を精製して、N−Cbzスルホニル化生成物を得た。単離した生成物、及び、炭素に担持された10%パラジウム(1.0g)の2−プロパノール懸濁液(50mL)を水素雰囲気下に置いて、室温で4時間撹拌した。続いて、反応混合物をセライトでろ過し、ろ液を乾燥状態まで濃縮した。続いて、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0‐5%DCM/MeOH)を使用して精製し、IPI-926を得た(4.06g、8.05mmol、2段階で95%)。NMR δH (400 MHz, CDC13) 6.90 (br s, 1H), 3.31 (dt, J= 10.6, 3.8 Hz, 1H), 3.20 (br s, 1H), 3.10 (dd, J=13.7, 4.5 Hz, 1H), 2.91 (s, 3H), 2.62 (dd, J=9.9, 7.6 Hz, 1H), 2.33 (br d, J=14.5 Hz1,1H), 2.27-2.15 (m, 1H), 2.10 (dd, J=14.5, 6.9 Hz, 1H), 1.99-1.17 (m, 28H), 1.05 (q, J=11.6 Hz, 1H), 0.93 (d, J=7.4 Hz, 3H), 0.88 (d, J=6.6 Hz, 3H), 0.86 (s, 3H); NMR δC (100 MHz, CDC13) 140.47, 124.53, 82.48, 76.97, 63.73, 54.08, 53.87, 50.12, 49.98, 47.19, 44.73, 42.27, 42.10, 40.24, 37.55, 37.44, 36.04, 34.44, 31.87, 31.33, 30.46, 29.79, 28.37, 27.94, 26.26, 24.19, 22.70, 18.92, 10.19; m/z=505.29 [M+H]+; HPLC 99.1 a/a% at 215 nm。
【0245】
均等物
当業者は、多くの実施形態を本願に記載の特別な実施形態として認識するだろうし、ルーチン的な実験を実施することで確認することもできるだろう。そのような均等物は、特許請求の範囲に包含されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物又はその塩から、式(II)の化合物又はその塩を調製するプロセスであって、溶液中で、式(I)の化合物又はその塩と、アミノドナー分子と、アミンアミノ基転移酵素とを接触させて式(II)の化合物又はその塩を提供することを含むプロセス:


なお、式(I)、式(II)において、
は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、ハロアルキル、−OR16、−C(O)R16、−CO16、−SO16、−C(O)N(R17)(R17)、−[C(R16−R16、−[(W)−N(R17)C(O)]16、−[(W)−C(O)]16、−[(W)−C(O)O]16、−[(W)−OC(O)]16、−[(W)−SO16、−[(W)−N(R17)SO16、−[(W)−C(O)N(R17)]17、−[(W)−O]16、−[(W)−N(R17)]16、又は、−[(W)−S]16であり(Rにおいて、Wはジラジカルであり、qは1、2、3、4、5、又は6である)、
各R及びRは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、ハロアルキル、ハロ、−OR16、−OR16、−N(R17、又は、−SR16であるか、あるいは、R及びRは、一緒になって、二重結合を形成するか又は下記の基(下記の基において、Zは、NR17、O、又はC(R18である)を形成し、


は、独立して、H、ハロ、−OR16、−N(R17、又は、−SR16であり、
各R及びRは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、ハロ、−OR16、−N(R17、又は、−SR16であるか、あるいは、R及びRは、それらが結合する炭素と一緒になって、C=O、C=S、C=N−OR17、C=N−R17、C=N−N(R17を形成するか、又は、任意に置換された3−8員環を形成し、
各R、R、R、R10、R11、R12及びR13は、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、ハロ、−OR16、−N(R17、又は、−SR16であるか、あるいは、R10及びR11が一緒になるか、もしくは、R11及びR12が一緒になって二重結合を形成するか又は下記の基(下記の基において、Zは、NR17、O、又はC(R18である)を形成し、


各R14及びR15は、独立して、H、ハロ、−OR16、−N(R17又は−SR16であるか、あるいは、R14及びR15は、それらが結合する炭素と一緒になってC=O又はC=Sを形成し、
Xは、結合であるか、基−C(R19−であり(該基において、各R19は、独立して、H、アルキル、アラルキル、ハロ、−CN、−OR16、又は、−N(R17である)、
16は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、又は、−[C(R20−R21(pは0−6である)であるか、あるいは、同一置換基上の任意の2つのR16は、一緒になって、4−8員の任意に置換される環を形成し、
17は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、−C(=O)R20、−C(=O)OR20、−SO20、−C(=O)N(R20、又は、−[C(R20−R21(pは0−6である)であるか、あるいは、同一置換基上の任意の2つのR17は、一緒になって、4−8員の任意に置換される環を形成し、
18は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、ハロ、−CN、−OR20、−OSi(R20、−C(=O)R20、−C(=O)OR20、−SO20、又は、−C(=O)N(R20であり、
20は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、又は、ヘテロアラルキルであるか、あるいは、同一置換基上の任意の2つのR20は、一緒になって、4−8員の任意に置換される環を形成し、
21は、−OR22、−N(R22)C(=O)R22、−N(R22)C(=O)OR22、−N(R22)SO(R22)、−C(=O)R22N(R22、−OC(=O)R22N(R22)(R22)、−SON(R22)(R22)、−N(R22)(R22)、−C(=O)OR22、−C(=O)N(OH)(R22)、−OS(O)OR22、−S(O)OR22、−OP(=O)(OR22)(OR22)、−N(R22)P(O)(OR22)(OR22)、又は、−P(=O)(OR22)(OR22)であり、
22は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルであるか、あるいは、同一置換基上の任意の2つのR22は、一緒になって、4−8員の任意に置換される環を形成する。
【請求項2】
前記溶液に補因子を添加することを更に含む請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記補因子が、ピリドキサールリン酸(PLP)であることを特徴とする請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記補因子が、補酵素であることを特徴とする請求項2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記補酵素が、L−アラニン脱水素酵素(LADH)、乳酸脱水素酵素(LDH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、ギ酸脱水素酵素(FDH)、及び、グルコース脱水素酵素(GDH)から選択されることを特徴とする請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記溶液にピルビン酸還元酵素ミックスを添加することを更に含む請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記酵素が、式(II)の化合物又はその塩を優先的に生成し、新たに形成されるアミノ基が(R)立体化学性又は(S)立体化学性を有することを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記酵素が、鏡像異性体的に純粋な式(II)の化合物又はその塩を優先的に生成することを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
酵素が、オメガアミンアミノ基転移酵素、ブロードレンジアミノ基転移酵素、グルタミン酸−ピルビン酸アミノ基転移酵素、又は、グルタミン酸−オキサロ酢酸アミノ基転移酵素であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記酵素が、オメガアミンアミノ基転移酵素であることを特徴とする請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
オメガアミンアミノ基転移酵素が、ATA−101、ATA−102、ATA−103、ATA−104、ATA−105、ATA−106、ATA−107、ATA−108、ATA−109、ATA−110、ATA−113、ATA−114、ATA−115、ATA−116、ATA−117、ATA−124、クロモバクテリウム・ビオラセウム由来のオメガアミンアミノ基転移酵素、アルカリゲネス・デニトリフィカンス由来のオメガアミンアミノ基転移酵素、アルスロバクター・シトレウス由来のオメガアミンアミノ基転移酵素、クレブシエラ・ニューモニエ由来のオメガアミンアミノ基転移酵素、バチルス・チューリンギエンシス由来のオメガアミンアミノ基転移酵素、バチルス・セレウス由来のオメガアミンアミノ基転移酵素、及び、ビブリオ・フルビアリス由来のオメガアミンアミノ基転移酵素から成る群から選択されることを特徴とする請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
アミノドナー分子が、アミン又はその塩であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
アミノドナー分子が、アミノ酸、そのポリペプチド、及び/又は、その塩であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
アミノドナー分子が、ピリドキサミン、メチルベンジルアミン、2−アミノブタン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、1,1,1−トリフルオロプロパン−2−アミン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−アミン、ベンジルアミン、2−アミノ−1−ブタノール、1−アミノ−1−フェニルエタン、1−アミノ−1−(2−メトキシ−5−フルオロフェニル)エタン、1−アミノ−1−フェニルプロパン、1−アミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1−アミノ−1−(4−ブロモフェニル)プロパン、1−アミノ−1−(4−ニトロフェニル)プロパン、1−フェニル−2−アミノプロパン、1−(3−トリフルオロメチルフェニル)−2−アミノプロパン、2−アミノプロパノール、1−アミノ−1−フェニルブタン、1−フェニル−2−アミノブタン、1−(2,5−ジメトキシ−4−メチルフェニル)−2−アミノブタン、1−フェニル−3−アミノブタン、1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−アミノブタン、1−アミノ−1−(2−ナフチル)エタン、シス−2−メチルシクロペンタンアミン、トランス−2−メチルシクロペンタンアミン、シス−3−メチルシクロペンタンアミン、トランス−3−メチルシクロペンタンアミン、シス−2−エチルシクロペンタンアミン、トランス−2−エチルシクロペンタンアミン、シス−3−エチルシクロペンタンアミン、トランス−3−エチルシクロペンタンアミン、シス−2−メチルシクロヘキサンアミン、トランス−2−メチルシクロヘキサンアミン、シス−3−メチルシクロヘキサンアミン、トランス−3−メチルシクロヘキサンアミン、シス−2−エチルシクロヘキサンアミン、トランス−2−エチルシクロヘキサンアミン、シス−3−エチルシクロヘキサンアミン、トランス−3−エチルシクロヘキサンアミン、1−アミノテトラリン、2−アミノテトラリン、2−アミノ−5−メトキシテトラリン、1−アミノインダン、2−アミノインダン、2−アミノ−1−プロパノール、シス−1−アミノ−2−インダノール、トランス−1−アミノ−2−インダノール、1−アミノ−6−ヒドロキシインダンアミン、タウリン、及び、それらの塩から選択されることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項15】
アミノドナー分子が、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、2−アミノペンタン二酸、3−アミノブチラート、γ−アミノブチラート、β−アラニン、アスパラギン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、プロリン、セレノシステイン、セリン、チロシン、アルギニン、ヒスチジン、オルニチン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、スレオニン、トリプトファン、バリン、及び、それらのポリペプチド、及び/又は、それらの塩から選択されることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項16】
アミノドナー分子が、キラルアミノドナー分子であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
前記溶液が緩衝された溶液であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
前記溶液のpHが、約5及び約9の間であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
が、H、アラルキル、又は−CO16であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項20】
及びRが、一緒になって、二重結合を形成するか又は下記の基(下記の基において、Zは、NR17、O、又はC(R18である)を形成することを特徴とする請求項1に記載のプロセス

【請求項21】
及びRが、一緒になって、二重結合を形成することを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項22】
Xが、結合であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項23】
Xが、基−C(R19−であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項24】
が、Hであることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項25】
及びRの各々が、独立して、Hであるか、あるいは、R及びRが、一緒になってそれらが結合する炭素とC=Oを形成することを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項26】
及びRが、各々、Hであることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項27】
及びR10が、各々、Hであることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項28】
11が、Hであることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項29】
12及びR13が、各々、Hであることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項30】
がHであり、かつ、R10及びR11が一緒になって二重結合を形成することを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項31】
13がHであり、かつ、R11及びR12が一緒になって二重結合を形成することを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項32】
、R10、R11、R12及びR13の各々がHであることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項33】
14及びR15が、各々、Hであることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項34】
式(I)の化合物又はその塩、及び、式(II)の化合物又はその塩が、表1、2、3、4又は5に示された化合物から選択されることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項35】
式(I)の化合物が、式(I−a)の化合物又はその塩


であり、
式(II)の化合物が、式(R)−(II−a)の化合物又はその塩


であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項36】
式(II)の化合物又はその塩と、スルホニル化剤とを接触させて、式(III)の化合物又はその塩を提供することをさらに含む請求項1に記載のプロセス:


なお、式(III)において、R23は、アルキル又はアリールである。
【請求項37】
スルホニル化剤が、ベンゼンスルホン酸クロリド、ベンゼンスルホン酸無水物、p−トルエンスルホン酸クロリド、p−トルエンスルホン酸無水物、メタンスルホン酸クロリド、及び、メタンスルホン酸無水物から選択されることを特徴とする請求項39に記載のプロセス。
【請求項38】
スルホニル化剤が、メタンスルホン酸クロリド又はメタンスルホン酸無水物であり、かつ、R23が−CHであることを特徴とする請求項40に記載のプロセス。
【請求項39】
溶液中で、式(I)の化合物又はその塩と、アミノドナー分子と、アミンアミノ基転移酵素とを接触させて式(II)の化合物又はその塩を提供することを含む請求項1に記載のプロセスによって作製された式(II)の化合物又はその塩:


なお、式(I)、式(II)において、
は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、ハロアルキル、−OR16、−C(O)R16、−CO16、−SO16、−C(O)N(R17)(R17)、−[C(R16−R16、−[(W)−N(R17)C(O)]16、−[(W)−C(O)]16、−[(W−C(O)O]16、−[(W)−OC(O)]16、−[(W)−SO16、−[(W)−N(R17)SO16、−[(W)−C(O)N(R17)]17、−[(W)−O]16、−[(W)−N(R17)]16、又は、−[(W)−S]16であり(Rにおいて、Wはジラジカルであり、qは1、2、3、4、5、又は6である)、
各R及びRは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、ハロアルキル、ハロ、−OR16、−OR16、−N(R17、又は、−SR16であるか、あるいは、R及びRは、一緒になって、二重結合を形成するか又は下記の基(下記の基において、Zは、NR17、O、又はC(R18である)を形成し、


は、独立して、H、ハロ、−OR16、−N(R17、又は、−SR16であり、
各R及びRは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、ハロ、−OR16、−N(R17、又は、−SR16であるか、あるいは、R及びRは、それらが結合する炭素と一緒になって、C=O、C=S、C=N−OR17、C=N−R17、C=N−N(R17を形成するか、又は、任意に置換された3−8員環を形成し、
各R、R、R、R10、R11、R12及びR13は、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、ハロ、−OR16、−N(R17、又は、−SR16であるか、あるいは、R10及びR11が一緒になるか、もしくは、R11及びR12が一緒になって二重結合を形成するか又は下記の基(下記の基において、Zは、NR17、O、又はC(R18である)を形成し、


各R14及びR15は、独立して、H、ハロ、−OR16、−N(R17又は−SR16であるか、あるいは、R14及びR15は、それらが結合する炭素と一緒になってC=O又はC=Sを形成し、
Xは、結合であるか、基−C(R19−であり(該基において、各R19は、独立して、H、アルキル、アラルキル、ハロ、−CN、−OR16、又は、−N(R17である)、
16は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、又は、−[C(R20−R21(pは0−6である)であるか、あるいは、同一置換基上の任意の2つのR16は、一緒になって、4−8員の任意に置換される環を形成し、
17は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、−C(=O)R20、−C(=O)OR20、−SO20、−C(=O)N(R20、又は、−[C(R20−R21(pは0−6である)であるか、あるいは、同一置換基上の任意の2つのR17は、一緒になって、4−8員の任意に置換される環を形成し、
18は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、ハロ、−CN、−OR20、−OSi(R20,−C(=O)R20、−C(=O)OR20、−SO20、又は、−C(=O)N(R20であり、
20は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、又は、ヘテロアラルキルであるか、あるいは、同一置換基上の任意の2つのR20は、一緒になって、4−8員の任意に置換される環を形成し、
21は、−OR22、−N(R22)C(=O)R22、−N(R22)C(=O)OR22、−N(R22)SO(R22)、−C(=O)R22N(R22、−OC(=O)R22N(R22)(R22)、−SON(R22)(R22)、−N(R22)(R22)、−C(=O)OR22、−C(=O)N(OH)(R22)、−OS(O)OR22、−S(O)OR22、−OP(=O)(OR22)(OR22)、−N(R22)p(O)(OR22)(OR22)、又は、−P(=O)(OR22)(OR22)であり、
22は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルであるか、あるいは、同一置換基上の任意の2つのR22は、一緒になって、4−8員の任意に置換される環を形成する。
【請求項40】
溶液中で、式(I)の化合物又はその塩と、アミノドナー分子と、アミンアミノ基転移酵素とを接触させて式(II)の化合物又はその塩を提供することを含む請求項38に記載のプロセスと、
更に、式(II)の化合物又はその塩と、スルホニル化剤とを接触させて式(III)の化合物又はその塩を提供することによって作製された式(III)の化合物又はその塩:




なお、式(I)、式(II)、式(III)において、
は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、ハロアルキル、−OR16、−C(O)R16、−CO16、−SO16、−C(O)N(R17)(R17)、−[C(R16−R16、−[(W)−N(R17)C(O)]16、−[(W)−C(O)]16、−[(W−C(O)O]16、−[(W)−OC(O)]16、−[(W)−SO16、−[(W)−N(R17)SO16、−[(W)−C(O)N(R17)]17、−[(W)−O]16、−[(W)−N(R17)]16、又は、−[(W)−S]16であり(Rにおいて、Wはジラジカルであり、qは1、2、3、4、5、又は6である)、
各R及びRは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、ハロアルキル、ハロ、−OR16、−OR16、−N(R17、又は、−SR16であるか、あるいは、R及びRは、一緒になって、二重結合を形成するか又は下記の基(下記の基において、Zは、NR17、O、又はC(R18である)を形成し、


は、独立して、H、ハロ、−OR16、−N(R17、又は、−SR16であり、
各R及びRは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、ハロ、−OR16、−N(R17、又は、−SR16であるか、あるいは、R及びRは、それらが結合する炭素と一緒になって、C=O、C=S、C=N−OR17、C=N−R17、C=N−N(R17を形成するか、又は、任意に置換された3−8員環を形成し、
各R、R、R、R10、R11、R12及びR13は、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、ハロ、−OR16、−N(R17、又は、−SR16であるか、あるいは、R10及びR11が一緒になるか、もしくは、R11及びR12が一緒になって二重結合を形成するか又は下記の基(下記の基において、Zは、NR17、O、又はC(R18である)を形成し、


各R14及びR15は、独立して、H、ハロ、−OR16、−N(R17又は−SR16であるか、あるいは、R14及びR15は、それらが結合する炭素と一緒になってC=O又はC=Sを形成し、
Xは、結合であるか、基−C(R19−であり(該基において、各R19は、独立して、H、アルキル、アラルキル、ハロ、−CN、−OR16、又は、−N(R17である)、
16は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、又は、−[C(R20−R21(pは0−6である)であるか、あるいは、同一置換基上の任意の2つのR16は、一緒になって、4−8員の任意に置換される環を形成し、
17は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、−C(=O)R20、−C(=O)OR20、−SO20、−C(=O)N(R20、又は、−[C(R20−R21(pは0−6である)であるか、あるいは、同一置換基上の任意の2つのR17は、一緒になって、4−8員の任意に置換される環を形成し、
18は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、ハロ、−CN、−OR20、−OSi(R20,−C(=O)R20、−C(=O)OR20、−SO20、又は、−C(=O)N(R20であり、
20は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、又は、ヘテロアラルキルであるか、あるいは、同一置換基上の任意の2つのR20は、一緒になって、4−8員の任意に置換される環を形成し、
21は、−OR22、−N(R22)C(=O)R22、−N(R22)C(=O)OR22、−N(R22)SO(R22)、−C(=O)R22N(R22、−OC(=O)R22N(R22)(R22)、−SON(R22)(R22)、−N(R22)(R22)、−C(=O)OR22、−C(=O)N(OH)(R22)、−OS(O)OR22、−S(O)OR22、−OP(=O)(OR22)(OR22)、−N(R22)P(O)(OR22)(OR22)、又は、−P(=O)(OR22)(OR22)であり、
22は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルであるか、あるいは、同一置換基上の任意の2つのR22は、一緒になって、4−8員の任意に置換される環を形成し、
23は、アルキル又はアリールである。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2013−501073(P2013−501073A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523957(P2012−523957)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/044597
【国際公開番号】WO2011/017551
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(507063584)インフィニティ ファーマスーティカルズ、インク. (6)
【Fターム(参考)】