説明

シクロペンタジチオフェン誘導体

【課題】入手が容易な出発原料から製造されるものであって、その反応工程数が抑えられつつ高収率で安定的に得られる導電性材料として有力なシクロペンタジチオフェン誘導体を提供する。
【解決手段】シクロペンタジチオフェン誘導体は、下記化学式(1)
【化1】


(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基であって、R及びRが同時に水素原子である場合を除く)で示されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機導体材料として使用可能な有機高分子組成物を提供するための新規なシクロペンタジチオフェン誘導体およびその中間体、並びに製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ピロール、チオフェン等のヘテロ原子を含む五員環構造を有する化合物又はアニリン等の芳香環構造を有する化合物を重合して得られる重合体は導電性材料として好適なため、近年盛んに研究が進められている。また、これらの重合物は一般にドーピング量を変えることにより導電率を自在にコントロールすることができ、各種電極、各種センサ、一次電池、二次電池、固体電解コンデンサー、帯電防止剤、エレクトロクロミック材料等への用途が検討されている。中でも透明電極は、その適用製品の軽量化・低コストが可能なものであり、それを実現されるための有力な材料となる有機導電材料が着目されている。現在、実用化されている有機導電材料としてはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)とポリ(スチレンスルフォン酸)(PSS)との混合物であるPEDOT:PSSが挙げられる。しかし、PEDOT:PSSは無機材料と比較して低導電性である点、低溶解性であり水分散液としてしか用いることが出来ない点等の問題点が挙げられ、導電性と加工性との向上が未だ求められている。
【0003】
有機導電材料の重合体の構造としては、芳香環同士が単結合を介して連なる構造と複数の芳香環が辺共有して連なり縮合した構造を有するものとがある。後者の構造は前者よりも平面性が高く共役平面が広くなるため、高導電性を示す傾向にある。
【0004】
縮環型の重合体の中でもポリ(4H−シクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェン)誘導体は、高い導電性を有していることが知られており、4位のアルキル鎖長を変更した様々なポリ(4H−シクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェン)誘導体が報告されている(非特許文献1、特許文献1)。また、(4H−シクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェン)を一つ含み2,7−位に置換基(オリゴマー及びポリマー)を有する誘導体も報告されている(特許文献2)。このように、ポリ(4H−シクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェン)誘導体は導電性材料として非常に有用であり、大量生産が望まれる。
【0005】
4H−シクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェン誘導体の製造方法としては、市販されており比較的容易に入手可能である4−アルキル−3−ブロモチオフェンを出発原料とした5段階の反応工程により合成する方法がある(非特許文献1)。しかし、この反応は、5段階の反応工程を要するうえ得られる総収率が5%と非常に低収率である。一方、4段階の反応工程で総収率40%と比較的良好な収率を示す方法(非特許文献2)があるが、その出発原料として市販されていない4−アルキル−3−チオフェンカルバルデヒドを用いる必要があり、入手性に難がある。
【0006】
これらの製造方法として、入手が容易な出発原料を用いた製造方法により高収率を達成することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0017571号明細書
【特許文献2】国際公開第2009/115413号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】ジー ゾッティ(G. Zotti)ら,マクロモレキュールズ(Macromolecules),1994年,第27巻,第7号,pp.1938-1942.
【非特許文献2】ジャック ゼット ブレジンスキー(Jacek Z. Brzezinski), ジョーン アール レイノルズ(John R. Reynolds),シンセシス(Synthesis),2002年,第8巻,pp.1053-1056.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、入手が容易な出発原料から製造されるものであって、その反応工程数が抑えられつつ高収率で安定的に得られる導電性材料として有力なシクロペンタジチオフェン誘導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載された、シクロペンタジチオフェン誘導体は、下記化学式(1)
【化1】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基であって、R及びRが同時に水素原子である場合を除く)で示されることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載された物質は、下記化学式(2)
【化2】

(式中、Rは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Rは炭素数3〜20の第二級又は第三級炭化水素基である)で示されることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載された物質は、下記化学式(3)
【化3】

(式中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Rは炭素数3〜20の第二級又は第三級炭化水素基である)で示されることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載された物質は、下記化学式(4)
【化4】

(式中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基である)
で示されることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載された、下記化学式(8)
【化5】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基である)で示されるシクロペンタジチオフェン誘導体の製造方法は、下記化学式(5)
【化6】

(式中、Rは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である)で示される有機マグネシウムハロゲン化合物を、下記化学式(6)
【化7】

(式中、Rは炭素数1〜20の第一級炭化水素基であり、Rは炭素数3〜20の第二級又は第三級炭化水素基である)で示されるシュウ酸ジアルキルと反応させて、下記化学式(2)
【化8】

(式中、Rは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Rは炭素数3〜20の第二級又は第三級炭化水素基である)で示される第一中間体を得て、次いで下記化学式(7)
【化9】

(式中、Rは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である)で示される有機マグネシウムハロゲン化合物と反応させ、下記化学式(3)
【化10】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Rは炭素数3〜20の第二級又は第三級炭化水素基である)で示される第二中間体を得て、次いで分子内環化反応させると同時にカルボン酸へと変換させた下記化学式(4)
【化11】

(式中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基である)
で示される第三中間体を脱炭酸させることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載された、下記化学式(2)
【化12】

(式中、Rは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Rは炭素数3〜20の第二級又は第三級炭化水素基である)で示される第一中間体の製造方法は、シクロペンタジチオフェン誘導体を合成するための第一中間体の製造方法であって、下記化学式(5)
【化13】

(式中、Rは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である)で示される有機マグネシウムハロゲン化合物と、下記化学式(6)
【化14】

(式中、Rは炭素数1〜20の第一級炭化水素基であり、Rは炭素数3〜20の第二級又は第三級炭化水素基である)で示されるシュウ酸ジアルキルとを反応させることを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載された、下記化学式(3)
【化15】

(式中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Rは炭素数3〜20の第二級又は第三級炭化水素基である)で示される第二中間体の製造方法は、シクロペンタジチオフェン誘導体を合成するための第二中間体の製造方法であって、下記化学式(2)
【化16】

(式中、Rは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Rは炭素数3〜20の第二級又は第三級炭化水素基である)で示される第一中間体と、下記化学式(7)
【化17】

(式中、Rは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である)で示される有機マグネシウムハロゲン化合物とを反応させることを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載された、下記化学式(4)
【化18】

(式中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基である)
で示される第三中間体の製造方法は、シクロペンタジチオフェン誘導体を合成するための第三中間体の製造方法であって、下記化学式(3)
【化19】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Rは炭素数3〜20の第二級又は第三級炭化水素基である)で示される第二中間体を分子内環化反応させると同時にカルボン酸へと変換させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のシクロペンタジチオフェン誘導体は、電解重合又は化学酸化重合により高い導電性を有する重合体を形成することができる。また、このシクロペンタジチオフェン誘導体は、有機導体材料として使用可能な有機高分子組成物を効率よく提供する原料となる。
【0019】
本発明の物質は、シクロペンタジチオフェン誘導体を得るための中間体として用いることができる。
【0020】
本発明のシクロペンタジチオフェン誘導体の製造方法によれば、反応工程数を抑えつつ高収率でかつ安定的にシクロペンタジチオフェン誘導体を合成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための好ましい形態について詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0022】
本発明のシクロペンタジチオフェン誘導体は、前記化学式(1)で示されるR及びRが、それぞれ異なり、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、若しくは置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基から選ばれる基である化合物、又は前記化学式(1)で示されるR及びRが、同一であり、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、若しくは置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基である(即ち、共に水素原子であってはならない)化合物である。
【0023】
本発明のシクロペンタジチオフェン誘導体及びそれを合成するための中間体となる物質で示されるR及びRの炭素数1〜20の炭化水素基は、置換基を有してもよく、例えば、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいシクロアルキル基等が挙げられる。
【0024】
置換基を有してもよいアルキル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。
【0025】
置換基を有してもよいアルケニル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、メチルビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0026】
置換基を有してもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
【0027】
置換基を有してもよいシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプタニル基、シクロオクタニル基、シクロノナニル基、シクロデカニル基、シクロウンデカニル基、シクロドデカニル基等が挙げられる。
【0028】
本発明のシクロペンタジチオフェン誘導体及びそれを合成するための中間体となる物質で示される炭素数1〜20のアルコキシ基は、置換基を有してもよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基等が挙げられる。
【0029】
これらのかかる置換基としては、例えば、
メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等のアルキル基;
フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基等のアリール基;
メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、n−ヘキシル基、シクロヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、等のアルコキシ基;
メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等のアルキルチオ基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;
メチルスルフォキシド基、エチルスルフォキシド基、フェニルスルフォキシド基等のスルフォキシド基;
メチルスルフォニルオキシ基、エチルスルフォニルオキシ基、フェニルスルフォニルオキシ基、メトキシスルフォニル基、エトキシスルフォニル基、フェニルオキシスルフォニル基等のスルフォン酸エステル基;
ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基等の1級または2級のアミノ基;
アセチル基、ベンゾイル基、ベンゼンスルホニル基、tert−ブトキシカルボニル基等で置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、フェニル基等のアルキル基またはアリール基;
シアノ基;ニトロ基;等が挙げられる。
【0030】
本発明のシクロペンタジチオフェン誘導体を合成するための中間体となる物質で示されるRの第一級炭化水素基は、直鎖炭化水素基であると好ましい。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。
【0031】
本発明のシクロペンタジチオフェン誘導体を合成するための中間体となる物質で示されるRの第二級又は第三級炭化水素基は、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、tert−ヘキシル基、イソヘプチル基、tert−ヘプチル基、イソオクチル基、tert−オクチル基、イソノニル基、tert−ノニル基、イソデシル基、tert−デシル基等が挙げられる。
【0032】
このシクロペンタジチオフェン誘導体の製造方法の一例として、各反応工程及び製造方法を詳細に説明する。
【0033】
本発明のシクロペンタジチオフェン誘導体は、有機マグネシウムハロゲン化合物にシュウ酸ジアルキルを反応させて第一中間体を得る反応工程1と、その第一中間体に別の有機マグネシウムハロゲン化合物を反応させて第二中間体を得る反応工程2と、その第二中間体を分子内環化反応させると同時にカルボン酸へと変換させて第三中間体を得る反応工程3と、その第三中間体を脱炭酸させる反応工程4との4段階の反応工程で合成することができる。
【0034】
有機マグネシウムハロゲン化合物(5)とシュウ酸ジアルキル(6)とからシクロペンタジチオフェン誘導体の第一中間体(2)を得る反応工程1を下記反応式(I)に示す。
【0035】
【化20】

【0036】
式中、Rは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Rは炭素数1〜20の第一級炭化水素基であり、Rは炭素数3〜20の第二級又は第三級炭化水素基であり、Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である。
【0037】
反応工程1は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下において、溶媒にシュウ酸ジアルキル誘導体(6)を加え、次いで有機マグネシウムハロゲン化合物(5)を加え、それらを反応させることで第一中間体(2)を得る。
【0038】
反応工程1は、溶媒存在下で行われることが好ましい。かかる溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン等の飽和脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、キシレン、エチルトルエン等の芳香族炭化水素;ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ブチルメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル等が挙げられる。これらの中でも、エーテルを用いることが好ましく、具体的には、ジエチルエーテルやテトラヒドロフランを使用するのが好ましい。溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。かかる溶媒の使用量は、有機マグネシウムハロゲン化合物(5)の1質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましく、1〜50質量部であることがより好ましい。
【0039】
反応工程1において、有機マグネシウムハロゲン化合物(5)とシュウ酸ジアルキル誘導体(6)とを反応させる際の反応温度は、特に限定されず、−100〜100℃の範囲であると好ましい。反応温度が−100℃未満の場合、反応速度が極めて遅くなるおそれがあり、−80℃以上であることがより好ましい。一方、反応温度が100℃を超える場合、生成物の分解を促進するおそれがあり、50℃以下であることがより好ましく、0℃以下であることが更に好ましい。反応時間は、1分〜20時間であることが好ましく、0.5〜5時間であることがより好ましい。また、反応圧力は、0〜3MPa(ゲージ圧)であることが好ましい。
【0040】
得られた第一中間体(2)と別の有機マグネシウムハロゲン化合物(7)とを反応させ、シクロペンタジチオフェン誘導体の別な第二中間体(3)を得る反応工程2を下記反応式(II)に示す。
【0041】
【化21】

【0042】
式中、R、R及びXは前記と同様であり、Rは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基である。
【0043】
反応工程2は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下において、溶媒に有機マグネシウムハロゲン化合物(7)を加え、次いで反応工程1で得られた第一中間体(2)を加え、それらを反応させることで第二中間体(3)を得る。
【0044】
反応工程2は、溶媒存在下で行われることが好ましい。反応工程2における溶媒は、反応工程1に列挙したものを用いることができる。反応工程1の溶媒と反応工程2の溶媒とが、同一であってもよく、異なっていてもよい。かかる溶媒の使用量は、有機マグネシウムハロゲン化合物(7)の1質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましく、1〜50質量部であることがより好ましい。
【0045】
反応工程2において、第一中間体(2)と有機マグネシウムハロゲン化合物(7)とを反応させる際の反応温度は、特に限定されず、−100〜100℃の範囲であることが好ましい。反応温度が−100℃未満の場合、反応速度が極めて遅くなるおそれがあり、−80℃以上であることがより好ましい。一方、反応温度が100℃を超える場合、生成物の分解を促進するおそれがあり、50℃以下であることがより好ましく、0℃以下であることが更に好ましい。反応時間は、1分間〜20時間であることが好ましく、0.5〜5時間であることがより好ましい。また、反応圧力は、0〜3MPa(ゲージ圧)であることが好ましい。
【0046】
得られた第二中間体(3)を分子内環化反応させると同時にカルボン酸へと変換させ、第三中間体(4)である3,5−ジアルキル−4H−4−カルボキシシクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェンを得る反応工程3を下記化学式(III)に示す。
【0047】
【化22】

【0048】
式中R、R及びRは前記と同様である。
【0049】
反応工程3は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下において、溶媒に第二中間体(3)を加え、次いで塩化アルミニウム(III)を加えて、第二中間体(3)を分子内環化させ、水酸基を水素原子へと変換し、エステル基をカルボキシル基へと変換して、第三中間体(4)を得る。
【0050】
反応工程3は、溶媒存在下で行われることが好ましい。かかる溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン等の飽和脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、キシレン、エチルトルエン等の芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジブチルエーテル等のエーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等が挙げられる。これらの中でも、含ハロゲン溶媒を用いることが好ましく、具体的には、1,2−ジクロロエタン、塩化メチレンを使用するのが好ましい。溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。かかる溶媒の使用量は、第二中間体(3)の1質量部に対して、1〜100質量部の範囲であるのが好ましい。
【0051】
反応工程3において、第二中間体(3)と塩化アルミニウム(III)とを反応させる際の反応温度は、特に限定されず、−100〜100℃の範囲であると好ましい。反応温度が−100℃未満の場合、反応速度が極めて遅くなるおそれがあり、−80℃以上であることと好ましい。一方、反応温度が100℃を超える場合、生成物の分解を促進するおそれがあり、50℃以下であるとより好ましく、0℃以下であると更に好ましい。反応時間は、1分間〜20時間であると好ましく、0.5〜5時間であるとより好ましい。また、反応圧力は、0〜3MPa(ゲージ圧)であると好ましい。
【0052】
得られた第三中間体(4)を脱炭酸させることでシクロペンタジチオフェン誘導体(8)を得る反応工程4を下記反応式(IV)に示す。
【0053】
【化23】

【0054】
式中、R及びRは前記と同様である。
【0055】
反応工程4は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下において、溶媒に第三中間体(4)と、ヒドラジン水溶液と、塩基とを加え、反応させることで第三中間体(4)を脱炭酸させてシクロペンタジチオフェン誘導体(8)を得る。シクロペンタジチオフェン誘導体(8)におけるR及びRは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0056】
反応工程4は、溶媒存在下で行われることが好ましい。かかる溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン等の飽和脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、キシレン、エチルトルエン等の芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジブチルエーテル等のエーテル;メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルコールが挙げられる。これらの中でも、アルコール溶媒を使用するのが好ましく、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコールを使用するのが好ましい。溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。かかる溶媒の使用量は、第三中間体(4)の1質量部に対して、1〜100質量部の範囲であるのが好ましい。
【0057】
また、反応工程4は塩基を用いて行われることが好ましい。かかる塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。これらの中でも強塩基を用いることが好ましく、具体的には水酸化カリウムを使用するのが好ましい。
【0058】
反応工程4において、第三中間体(4)を脱炭酸させる際の反応温度は、特に限定されず、−100〜100℃の範囲であると好ましい。反応温度が−100℃未満の場合、反応速度が極めて遅くなるおそれがあり、−80℃以上であることがより好ましい。一方、反応温度が100℃を超える場合、生成物の分解を促進するおそれがあり、50℃以下であるとより好ましく、0℃以下であると更に好ましい。反応時間は、1分間〜20時間であると好ましく、0.5〜5時間であるとより好ましい。また、反応圧力は、0〜3MPa(ゲージ圧)であると好ましい。
【実施例】
【0059】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0060】
(実施例)
合成例1〜4に示す各反応工程により、シクロペンタジチオフェン誘導体を得た。
【0061】
(合成例1)
反応工程1で得られる第一中間体を下記化学式(10)に示す。式中、Buはt−ブチル基を示す。
【0062】
【化24】

【0063】
窒素雰囲気下、200mL三口フラスコにTHF(30mL)を加え、−70℃以下に冷却した。1.64Mのn−BuLiヘキサン溶液(11.8mL,19.4mmol,1.32eq)を加え、3−ブロモ−4−メチルチオフェン(3.12g,17.6mmol,1.2eq)を−70℃以下でゆっくり加えた。滴下終了後、−70℃以下で1時間攪拌し、−70℃でマグネシウムブロマイドエーテル錯体(11g,35.4mmol,1.5eq)のジエチルエーテル(30mL)溶液を−70℃以下でゆっくり加え、その温度で1時間攪拌した。シュウ酸t−ブチルメチル(2.36g,14.7mmol,1.0eq)を加えた後に、−70℃で1時間攪拌し、室温まで昇温して2時間攪拌した。水(50mL)を加え、溶液を酢酸エチル(50mL×3)で抽出し、食塩水(100mL)と水(50mL×2)とで洗浄した。減圧下で溶媒を留去することで黄色オイルを得た(3.92g)。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル500cc,酢酸エチル:ヘキサン=(1)1:50→(2)1:10,Rf=0.5)で精製することにより黄色オイルとして前記化学式(10)で示されるt−ブチル2−オキソ−2−(3−(4−メチルチエニル))グリコキシレートを得た(3.00g,90%)。
H−NMR(H核磁気共鳴):δ=8.42(s,1H)6.95(s,1H),2.49(s,6H),1.47(s,9H)
MS(GC−MS:ガスクロマトグラフ質量分析計)m/z=169(−Bu)
【0064】
(合成例2)
反応工程2で得られる第二中間体を下記化学式(11)に示す。
【0065】
【化25】

【0066】
窒素雰囲気下、100mL三口フラスコにTHF(15mL)を加え、−70℃以下に冷却した。1.64Mのn−BuLiヘキサン溶液(9.7mL,15.8mmol,1.32eq)を加え、3−ブロモ−4−メチルチオフェン(2.5g,14.1mmol,1.2eq)を−70℃以下でゆっくり加えた。滴下終了後、−70℃以下で1時間攪拌し、−70℃でマグネシウムブロマイドエーテル錯体(5.5g,17.7mmol,1.5eq)のジエチルエーテル(15mL)溶液を−70℃以下でゆっくり加え、その温度で1時間攪拌した。前記化学式(10)で示される第一中間体(2.66g,11.8mmol,1.0eq)を加えた後に、−70℃で1時間攪拌し、室温まで昇温して2時間攪拌した。水(25mL)を加え、溶液を酢酸エチル(25mL×3)で抽出し、食塩水(50mL)と水(25mL×2)とで洗浄した。減圧下で溶媒を留去することで黄色オイルを得た(3.92g)。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル250cc,酢酸エチル:ヘキサン=(1)1:50→(2)1:10,Rf=0.5)で精製することにより黄色オイルとして前記化学式(11)で示されるt−ブチル(3,3’−ビス(4−メチルチエニル)グリコレートを得た(3.01g,79%)。
H−NMR:δ=7.07(d,J=3.5Hz,2H),6.88(d,J=3.5Hz,2H),4.08(s,1H),2.03(s,6H),1.46(s,9H)
MS(GC−MS)m/z=224(−COOBu)
【0067】
(合成例3)
反応工程3で得られる第三中間体を下記化学式(12)に示す。
【0068】
【化26】

【0069】
窒素雰囲気下、200mL三口フラスコに前記化学式(11)で示される第二中間体(2.74g,8.4mmol,1.0eq)と1,2−ジクロロエタン(70mL)とを加え、氷塩浴を用いて冷却した。塩化アルミニウム(4.0g,29mmol,3.5eq)を加え、3.5時間還流した。還流終了後、2M塩酸(100mL)を加え、塩化メチレン(50mL×3)で抽出し、有機層に炭酸ナトリウム水溶液(200mL)を加えた。水層に酢酸を加え、酸性に調整し、塩化メチレン(50mL×3)で抽出した。減圧下で溶媒を留去することにより黒色の固体として前記化学式(12)で示される3,5−ジメチル−4H−4−カルボキシシクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]チオフェンを得た(1.90g,粗収率90%)。
H−NMR:δ=6.81(s,2H),4.42(s,1H),2.29(s,6H)
MS(GC−MS)m/z=206(−COOH)
【0070】
(合成例4)
反応工程4で得られるシクロペンタジチオフェン誘導体を下記化学式(13)に示す。
【0071】
【化27】

【0072】
窒素雰囲気下、100mL三口フラスコに前記化学式(12)で示される第三中間体(1.29g,5.2mmol,1.0eq)とキノリン(46mL)と銅粉末(1.01g,15.9mmol,2.9eq)とを加え4時間還流した。室温まで冷却し、氷と2M HCl(30mL)の混合物に注いだ後、トルエン(40mL×2)で抽出し、有機層を2M塩酸(30mL)と炭酸ナトリウム水溶液(30mL)とで洗浄し硫酸ナトリウムを用いて乾燥した。減圧下で溶媒を留去することにより黒色オイルを得た。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル300cc,バッチ,ヘキサン,Rf=0.4)で精製することにより黄色固体として前記化学式(13)で示される3,5−ジメチル−4H−シクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]チオフェンを得た(0.87g,82%)。
H−NMR:δ=6.77(d,J=1.1,2H),3.30(s,2H),2.27(d,J=1.1,6H)
MS(GC−MS)m/z=206
【0073】
以上の反応工程を下記反応式(V)に示す。
【0074】
【化28】

【0075】
前記反応式(V)で示した経路で合成を行った場合、合計4段階の反応工程により、全収率52%でシクロペンタジチオフェン誘導体(13)を得た。
(比較例)
【0076】
本発明のシクロペンタジチオフェン誘導体は、前記反応式(I)で示される反応工程1において用いるシュウ酸ジアルキルとしてR=Rとなる構造を有するものを用いて、反応を行うことでも合成することができる。本発明の適用外である製造方法により、シクロペンタジチオフェン誘導体を得た。
【0077】
(比較合成例1)
比較反応工程1で得られる化合物を下記化学式(14)に示す。式中、Etはエチル基を示す。
【化29】

窒素雰囲気下、200mL三口フラスコにTHF(50mL)を加え、−70℃以下に冷却した。1.64Mのn−BuLiヘキサン溶液(21.6mL,33.8mmol,1.2eq)を加え、3−ブロモ−4−メチルチオフェン(5.00g,28.2mmol,1.0eq)を−70℃以下でゆっくり加えた。滴下終了後、−70℃以下で1時間攪拌し、−70℃でマグネシウムブロマイドエーテル錯体(13.6g,52.2mmol,1.85eq)のジエチルエーテル(70mL)溶液を−70℃以下でゆっくり加え、その温度で1時間攪拌した。シュウ酸ジエチル(3.90g,26.8mmol,1.85eq)をエーテル(30mL)に溶解させた溶液を加えた後に、−70℃で1時間攪拌し、室温まで昇温して2時間攪拌した。1N塩酸(30mL)と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10mL)とを加え、溶液を酢酸エチル(50mL×3)で抽出し、食塩水(100mL)と水(50mL×2)とで洗浄した。減圧下で溶媒を留去することで黄色オイルを得た(5.50g)。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル500cc,酢酸エチル:ヘキサン=(1)1:50→(2)1:10,Rf=0.5)で精製することにより黄色オイルとして前記化学式(14)で示されるエチル2−オキソ−2−(3−(4−メチルチエニル))グリコキシレートを得た(4.48g,80%)。
H−NMR:δ=8.42(s,1H)6.95(s,1H),4.40(q,J=7.0Hz,2H),1.47(t,J=7.0Hz,3H)
MS(GC−MS)m/z=183(−Me)
【0078】
(比較合成例2)
比較反応工程2で得られる化合物を下記化学式(15)に示す。
【化30】

窒素雰囲気下、200mL三口フラスコにTHF(40mL)を加え、−70℃以下に冷却した。1.64Mのn−BuLiヘキサン溶液(13.7mL,21.1mmol,0.95eq)を加え、3−ブロモ−4−メチルチオフェン(4.4g,22.2mmol,1.0eq)をエーテル(18mL)に溶解した溶液を−70℃以下でゆっくり加えた。滴下終了後、−70℃以下で1時間攪拌し、前記化学式(14)で示される化合物(4,40g,22.2mmol,1.0eq)を加えた後に、−70℃で1時間攪拌し、室温まで昇温して2時間攪拌した。水(50mL)を加え、溶液を酢酸エチル(50mL×3)で抽出し、食塩水(100mL)と水(50mL×2)とで洗浄した。減圧下で溶媒を留去することで黄色オイルを得た(6.03g)。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル250cc,酢酸エチル:ヘキサン=1:20,Rf=0.5)で精製することにより黄色オイルとして前記化学式(15)で示されるエチル(3,3’−ビス(4−メチルチエニル)グリコレートを得た(4.71g,72%)。
H−NMR:δ=7.06(d,J=3.5Hz,2H),6.91(d,J=3.5Hz,2H),4.35(q,J=7.0Hz,2H),3.99(s,1H),2.04(s,6H),1.31(t,J=7.0Hz,3H)
MS(GC−MS)m/z=224(−COOEt)
【0079】
(比較合成例3)
比較反応工程3で得られる化合物を下記化学式(16)に示す。
【化31】

窒素雰囲気下、200mL三口フラスコに前記化学式(15)で示される化合物(4.5g,15.2mmol,1.0eq)とエタノール(30mL)、水(40mL)、水酸化カリウム(20g,356mmol)を加え室温で30分間攪拌した。減圧下でエタノールを留去した後に、溶液のpHが4になるまで酢酸を加えた。酢酸エチル(50mL×3)で抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去することによりオレンジ色の固体粗生成物(2.70g)を得た。粗生成物をトルエンから再結晶することにより黄色固体として前記化学式(16)で示される3,3’−ビス(4−メチルチエニル)グリコリックアシッドを得た(2.35g,58%)。
H−NMR:δ=7.06(d,J=3.5Hz,2H),6.91(d,J=3.5Hz,2H),3.99(s,1H),2.04(s,6H)
MS(GC−MS)m/z=206(−COOH)
【0080】
(比較合成例4)
比較反応工程4で得られる化合物を下記化学式(17)に示す。
【化32】

窒素雰囲気下、200mL三口フラスコに前記化学式(16)で示される化合物(2.35g,8.76mmol,1.0eq)と1,2−ジクロロエタン(74mL)とを加え、氷塩浴を用いて冷却した。塩化アルミニウム(3.5g,26.3mmol,3.0eq)を加え、2.5時間還流した。還流終了後、2M塩酸(100mL)を加え、塩化メチレン(50mL×3)で抽出し、有機層に炭酸ナトリウム水溶液(200mL)を加えた。水層に酢酸を加え、酸性に調整し、塩化メチレン(50mL×3)で抽出した。減圧下で溶媒を留去することにより黒色の固体として前記化学式(17)で示される3,5−ジメチル−4H−4−カルボキシシクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]チオフェンを得た(0.70g,32%)。
H−NMR:δ=6.81(s,2H),4.42(s,1H),2.29(s,6H)
MS(GC−MS)m/z=206(−COOH)
【0081】
(比較合成例5)
合成例4と同様の方法で反応を行い、前記化学式(13)で示される3,5−ジメチル−4H−シクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]チオフェンを得た(0.27g,47%)。
H−NMR:δ=6.77(d,J=1.1,2H),3.30(s,2H),2.27(d,J=1.1,6H)
MS(GC−MS)m/z=206
【0082】
以上の比較反応工程を下記反応式(VI)に示す。
【0083】
【化33】

【0084】
前記化学式(6)で示されるRとRとがR=Rあるシュウ酸ジアルキルを用いて合成を行った場合、合計5段階、全収率5%となり、本発明の製造方法と比較して反応段数も多く、収率も低い結果となった。
【0085】
【表1】

【0086】
表1から明らかなように、本発明の製造方法は、比較例に比べて反応工程数が少なく、高い収率でシクロペンタジチオフェン誘導体を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明のシクロペンタジチオフェン誘導体により、優れた導電性を示す重合体を形成することができ、各種電極、各種センサ、一次電池、二次電池、固体電解コンデンサー、帯電防止剤等の有機導体材料として用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)
【化1】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基であって、R及びRが同時に水素原子である場合を除く)
で示されることを特徴とするシクロペンタジチオフェン誘導体。
【請求項2】
下記化学式(2)
【化2】

(式中、Rは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Rは炭素数3〜20の第二級又は第三級炭化水素基である)
で示されることを特徴とする物質。
【請求項3】
下記化学式(3)
【化3】

(式中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Rは炭素数3〜20の第二級又は第三級炭化水素基である)
で示されることを特徴とする物質。
【請求項4】
下記化学式(4)
【化4】

(式中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基である)
で示されることを特徴とする物質。
【請求項5】
下記化学式(5)
【化5】

(式中、Rは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である)
で示される有機マグネシウムハロゲン化合物を、下記化学式(6)
【化6】

(式中、Rは炭素数1〜20の第一級炭化水素基であり、Rは炭素数3〜20の第二級又は第三級炭化水素基である)
で示されるシュウ酸ジアルキルと反応させて、下記化学式(2)
【化7】

(式中、Rは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Rは炭素数3〜20の第二級又は第三級炭化水素基である)
で示される第一中間体を得て、次いで下記化学式(7)
【化8】

(式中、Rは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である)
で示される有機マグネシウムハロゲン化合物と反応させ、下記化学式(3)
【化9】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Rは炭素数3〜20の第二級又は第三級炭化水素基である)
で示される第二中間体を得て、次いで分子内環化反応させると同時にカルボン酸へと変換させた下記化学式(4)
【化10】

(式中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基である)
で示される第三中間体を脱炭酸させることを特徴とする、下記化学式(8)
【化11】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基である)
で示されるシクロペンタジチオフェン誘導体の製造方法。
【請求項6】
シクロペンタジチオフェン誘導体を合成するための第一中間体の製造方法であって、
下記化学式(5)
【化12】

(式中、Rは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である)
で示される有機マグネシウムハロゲン化合物と、下記化学式(6)
【化13】

(式中、Rは炭素数1〜20の第一級炭化水素基であり、Rは炭素数3〜20の第二級又は第三級炭化水素基である)
で示されるシュウ酸ジアルキルとを反応させることを特徴とする、下記化学式(2)
【化14】

(式中、Rは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Rは炭素数3〜20の第二級又は第三級炭化水素基である)
で示される第一中間体の製造方法。
【請求項7】
シクロペンタジチオフェン誘導体を合成するための第二中間体の製造方法であって、
下記化学式(2)
【化15】

(式中、Rは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Rは炭素数3〜20の第二級又は第三級炭化水素基である)
で示される第一中間体と、下記化学式(7)
【化16】

(式中、Rは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である)
で示される有機マグネシウムハロゲン化合物とを反応させることを特徴とする、下記化学式(3)
【化17】

(式中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Rは炭素数3〜20の第二級又は第三級炭化水素基である)
で示される第二中間体の製造方法。
【請求項8】
シクロペンタジチオフェン誘導体を合成するための第三中間体の製造方法であって、
下記化学式(3)
【化18】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Rは炭素数3〜20の第二級又は第三級炭化水素基である)
で示される第二中間体を分子内環化反応させると同時にカルボン酸へと変換させることを特徴とする、下記化学式(4)
【化4】

(式中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基である)
で示される第三中間体の製造方法。

【公開番号】特開2012−116804(P2012−116804A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269545(P2010−269545)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】