説明

シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)白金(II)錯体及び高純度オキサリプラチンの調製方法

本発明は、純粋なシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体、及びその調製方法に関する。本発明はさらに、前記シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を用いてのオキサリプラチンの調製に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
オキサリプラチン、すなわちシス−オキサレート−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)−白金(II)錯体は、次の構造式:
【0002】
【化1】

を有する。
【0003】
オキサリプラチンは、6mg/mlで水にわずかに可溶性であり、メタノールにおいて非常にわずかに可溶性であり、そしてエタノール及びアセトンにおいて実質的に不溶性である。
オキサリプラチンは、再構成のために無菌の保存剤を含まない凍結乾燥された粉末(PDR(商標);注入のためのEloxatin−Complete Monograph)として、50mg又は100mgのオキサリプラチンを含むバイアルに供給されるELOXATINTM(注入のためのオキサリプラチン)として市販されている。
【0004】
オキサリプラチンは、シスプラチンに類似する抗腫瘍剤である。それは、転移性結腸直腸癌の処理において及び第III 段階(DukesC)結腸癌のアジュバント処理においてフルオロウラシル及びフォリン酸と共に与えられる。
【0005】
アメリカ特許第4,169,846号は、オキサリプラチン自体、及び非常に低い量でそれを生成する方法によるその調製を請求した。オキサリプラチンのトランス−D−及びトランス−L−異性体の混合物を生成するための改良された方法が、特許文献、例えばJP09132583号, EP0625523号, EP0801070号, アメリカ特許第5,290,961号, アメリカ特許第5,298,642号, アメリカ特許第5,338,874号及びEP0567438号に開示されている。それらの方法は、下記式(4):
【0006】
【化2】

【0007】
で表わされる1,2−ジアミノシクロヘキサンのジハロゲンシス−白金(II)錯体(ジハロゲンはCl, Br又はIである)の調製、そして下記式(3):
【0008】
【化3】

【0009】
で表わされるシス−ジアクオ−1,2−ジアミノシクロヘキサン白金(II)錯体に転換され、そして
シュウ酸又はシュウ酸カリウムと反応せしめられ、オキサリプラチンのトランス−D−及びトランス−L−異性体の混合物が得られる。
【0010】
EP567438号においては、この方法はワン−ポット方法として記載され、ここで式(4)の化合物がその単離を伴わないで、式(3)の化合物に直接的に転換される。
EP0625523号に開示される他の合成路は、式(4)の1,2−ジアミノシクロヘキサンのジハロゲンシス−白金(II)錯体(ここで、ジハロゲンはCl又はBrである)と、シュウ酸銀との反応、形成される塩化銀の続く除去を通してである。
EP0567438号はさらに、オキサリプラチンを得るために高純度工程を提供し、ここでシス−オキサラト−(トランス−D, L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)のD−異性体及びL−異性体の光学的分解がHPLC方法により行われる。
【0011】
オキサリプラチンを得るためのもう1つの方法が、WO2005/035544号に記載されている。この合成路は、高純度で所望するオキサリプラチンを得るために退屈な作業を必要とする、長い工程での式(3)のジアクオ−(1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)を通る。
改良された及び産業的な方法で光学的に純粋なオキサプラチンを生成する、オキサプラチンの調製方法についての必要性がまだ存在する。
【0012】
発明の要約
本発明の1つの観点は、下記式(2):
【化4】

【0013】
で表わされる単離されたシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体に関する。
本発明のシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体は、約275℃〜約300℃の範囲の融点により特徴づけられる。本発明のシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体は、光化学的に純粋であり、ここで前記シス−ジヨード−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体異性体のレベルは、HPLCによれば約3%以下の面積、好ましくはHPLCによれば約2%以下の面積、より好ましくはHPLCによれば約1%以下の面積、及び最も好ましくはHPLCによれば約0.1%以下の面積である。
【0014】
本発明のもう1つの観点は、光学的に純粋なシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体に関して、ここで前記シス−ジヨード−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体異性体のレベルは、HPLCによれば約3%以下の面積、好ましくはHPLCによれば約2%以下の面積、より好ましくはHPLCによれば約1%以下の面積、及び最も好ましくはHPLCによれば約0.1%以下の面積である。
【0015】
本発明のさらなる観点は、トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミンとカリウム四クロロプラチネート及びヨウ化カリウムとを水中において反応せしめることによる、シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体の調製方法に関する。好ましくは、使用されるトランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミンは光学的に純粋であり、ここで前記シス−ジヨード−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体異性体のレベルは、HPLCによれば約3%以下の面積、好ましくはHPLCによれば約2%以下の面積、より好ましくはHPLCによれば約1%以下の面積、及び最も好ましくはHPLCによれば約0.1%以下の面積であり;従って、得られるシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体はまた、上記のように光学的に純粋である。
【0016】
さらにもう1つの観点においては、本発明は、シュウ酸銀とのその反応を通して、シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を用いてのオキサリプラチンの調製方法に関する。好ましくは、使用されるシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体は、上記のように光学的に純粋であり、従ってこの方法により得られるオキサリプラチンを光学的に純粋にする。
【0017】
もう1つの観点においては、本発明は、好ましくは、上記のように光学的に純粋なシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を調製し、そしてそれをオキサリプラチンに転換することによる、オキサリプラチンの調製方法に関する。
【0018】
1つの観点においては、本発明は、好ましくは光学的に純粋な下記式(2):
【化5】

【0019】
で表わされるシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を調製し、
それとAgNO3とを反応せしめ、下記式(3):
【0020】
【化6】

【0021】
で表わされるシス−ジアクオ−1,2−ジアミノクロロヘキサン白金(II)錯体を得、そして
前記式(3)の化合物とシュウ酸カリウムとを反応せしめ、オキサリプラチンを得る段階を含んで成るオキサリプラチンの調製方法に関する。
【0022】
もう1つの観点においては、本発明は、上記のようなシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体からシス−ジアクオ−1,2−ジアミノシクロヘキサン白金(II)錯体を調製し、そしてそれをオキサリプラチンに転換することによるオキサリプラチンの調製方法に関する。
【0023】
発明の特定の記載
用語“光学的純度”とは、問題の化合物に存在する所望する異性体の量に関する。
本明細書において使用される場合、オキサリプラチン、シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体及びトランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミンに関する用語“光学的に純粋な”とは、HPLCによれば、約3%以下の面積、好ましくはHPLCによれば、約2%以下の面積、より好ましくはHPLCによれば、約1%以下の面積、及び最も好ましくはHPLCによれば、約0.1%以下の面積の所望しないトランス異性体のレベルに関する。
【0024】
オキサリプラチンの所望しない異性体は、シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体である。シス−ジヨード−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体の所望しない異性体は、シス−ジヨード−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体である。トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミンの所望しない異性体は、トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミンである。オキサリプラチンの光学純度は、ヨーロッパ薬局方の標準の方法により決定される。
【0025】
用語“粗”とは、いずれかの既知の方法、例えば適切な溶媒からの結晶化又はそれにおける懸濁により、追加の精製を受けていない化合物を言及する。
【0026】
本発明は、下記式(2):
【化7】

【0027】
で表わされる単離されたシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を提供する。
本発明のシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体は、約275℃〜約300℃の範囲の融点により特徴づけられる。本発明のシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体は、その光化学的純度により特徴づけられ、ここで前記シス−ジヨード−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体異性体のレベルは、HPLCによれば約3%以下の面積、好ましくはHPLCによれば約2%以下の面積、より好ましくはHPLCによれば約1%以下の面積、及び最も好ましくはHPLCによれば約0.1%以下の面積である。
【0028】
本発明のシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体は、次の通りに、Brucher 300MHz上に記録されるNMRスペクトルにより特徴づけられ得る:
C13 NMR, DMSO(ppm): 64.45; 61.13; 32.67; 32.09; 24.91; 24.65;
H1NMR, DMSO (δppm): 2.35, 広いシングレット、2H; 1.95, dd, 2H; 1.45, 広いシングレット、2H; 1.30, 広いシングレット、2H; 1.00, 広いシングレット, 2H; 6.17マルチプレット、(NH2);
Pt 195 NMR, DMSO: -3543s.
【0029】
本発明はさらに、光学的に純粋なシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を提供し、ここで前記シス−ジヨード−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体異性体のレベルは、HPLCによれば約3%以下の面積、好ましくはHPLCによれば約2%以下の面積、より好ましくはHPLCによれば約1%以下の面積、及び最も好ましくはHPLCによれば約0.1%以下の面積である。
【0030】
本発明はさらに、シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体の調製方法を提供する。この方法は、
a)下記式(5):
【0031】
【化8】

【0032】
で表わされるトランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミンと、M2PtX4及びKI(式中、MはLi、Na又はKであり、そしてXはI, Cl又はBrである)とを一緒にして、混合物を得;
b)前記混合物を室温で維持し;そして
c)シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を回収することを含んで成る。
【0033】
好ましくは、段階a)に使用されるトランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミンは光学的に純粋である。そのような光学的純粋な出発材料の使用は、退屈な光学的分解方法、例えばHPLCを必要としないで、光学的に純粋である生成物の形成をもたらす。トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミンは市販されている。
最も好ましくは、MはKである。最も好ましくは、XはIである。
【0034】
シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体は、当業界において知られているはずの方法、例えば反応溶解及び存在するいずれかの不純物を濾過し、得られる材料を洗浄し、そしていずれかの従来の方法により乾燥することを含んで成る方法により回収され得る。この場合、得られる材料は、ハロゲンイオンを処理するために、洗浄され、そして水に懸濁され得る。
【0035】
KIの使用は、反応混合物から除去されるヨウ素化合物を生成することが、アメリカ特許第5,290,961号及びWO03/004505号に開示されている。本発明においては、KIは、オキサリプラチンの調製のためのキー中間としてのシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を生成するために使用される。
シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体をさらに精製するために、段階c)の生成物は、アミド、C1-4アルキルエステル、ケトン、ハロゲン化された炭化水素、水及びそれらの混合物から成る群から選択された溶媒に懸濁され、続いて、上記方法により、前記精製された材料が回収され得る。
【0036】
精製方法は、さらに精製されたシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を得るために反復され得る。
アミドは、メチルホルムアミド又はジメチルホルムアミド、好ましくはジメチルホルムアミドであり得る。好ましいC1-4アルキルエステルは、酢酸エチル及び酢酸メチルである。好ましくは、ケトンはアセトンである。ハロゲン化された炭化水素は好ましくは四塩化炭素、クロロホルム又はジクロロメタンである。
最も好ましくは、溶媒はジメチルホルムアミドである。
【0037】
本発明はさらに、シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体及びシュウ酸銀を包含する、シス−オキサレート−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体、すなわちオキサリプラチンの調製方法を提供し、ここで前記方法は、
(i)本発明に従ってシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を調製するための方法を実施することにより、好ましくは光学的に純粋(HPLCによれば、シス−ジヨード−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体の約3%以下の面積を有する)なシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)白金(II)錯体を供給し;
(ii)シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体と、シュウ酸銀とを反応し、反応混合物を得;
(iii)前記反応混合物と、KX形(KCl、KBr又はKIである)のカリウム塩とを混合し、オキサリプラチンを形成し;そして
(iv)前記オキサリプラチンを回収する;
ことを含んで成る。
【0038】
本発明に従って、シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体及びシュウ酸銀を包含するオキサリプラチンのこの調製方法においては、段階(ii)は、
A)シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体と、シュウ酸銀の塩基性水溶液とを組合し、反応混合物を得;そして
B)前記反応混合物を、約55℃〜約75℃の温度に少なくとも3時間、加熱する;
ことにより行われ;
そして段階(iii)及び(iv)は、
C)段階B)からの反応混合物を、KX形のカリウム塩と組合し;
D)段階C)からの反応混合物を、少なくとも4時間、維持し;そして
E)段階D)において得られた反応混合物からオキサリプラチンを回収する;
ことにより行われる。
【0039】
本発明に従ってのシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体及びシュウ酸銀を包含するオキサリプラチンのこの調製方法の1つの態様は、
a)シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体と、シュウ酸銀の塩基性水溶液とを組合し、反応混合物を得;そして
b)前記反応混合物を、約55℃〜約75℃、好ましくは約55℃〜約60℃の温度に少なくとも3時間、加熱し;
c)段階b)からの反応混合物と、KX形(式中、KXはKCl、KBr又はKIである)のハロゲン化されたカリウム塩とを組合し;
d)前記反応混合物を、少なくとも4時間、維持し;そして
e)前記反応混合物からオキサリプラチンを回収する;
ことを含んで成る。
【0040】
本発明に従ってのシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体及びシュウ酸銀を包含するオキサリプラチンのこの調製方法においては、シュウ酸銀の塩基性溶液は、約4.5〜約5.0のpHを有する。好ましくは、シュウ酸銀の塩基性溶液は、アルカリ水酸化物、例えばNaOH又はKOHの溶液にシュウ酸銀を溶解することにより得られる。好ましくは、KX形のカリウム塩はKIである。
【0041】
オキサリプラチンは、本発明のシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を包含する分離工程から回収され得る。好ましくは、反応混合物は、いずれかの不純物、例えば反応混合物に存在するハロゲンイオンと銀イオンとの反応により得られる沈殿されたハロゲン化銀化合物を除去するために、濾過される。得られる濾液を、約0℃〜約5℃の温度に冷却し、この温度で、粗オキサリプラチンが形成される。粗オキサリプラチンは、当業界において知られているいずれかの方法により、濾過され、洗浄され、そして乾燥され得る。
【0042】
好ましくは、本発明に従って本発明に従ってのシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体及びシュウ酸銀を包含するオキサリプラチンのこの調製方法に使用されるシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)白金(II)錯体は、HPLCによれば約3%以下の面積、好ましくはHPLCによれば約2%以下の面積、より好ましくはHPLCによれば約1%以下の面積、及び最も好ましくはHPLCによれば約0.1%以下の面積の所望しない異性体を有し、そして従って、得られるオキサリプラチンは、また、低いレベル、例えばHPLCによれば約3%以下の面積、好ましくはHPLCによれば約2%以下の面積、より好ましくはHPLCによれば約1%以下の面積、及び最も好ましくはHPLCによれば約0.1%以下の面積のそのそれぞれの所望しない異性体を含む。
【0043】
得られる粗オキサリプラチンは好ましくは、それを水に、約55℃〜約70℃の温度で溶解し、そして得られる溶液を約0℃〜約5℃の温度に冷却することにより結晶化され得る。水における結晶化は、多くの回数、反復され、組合され、そして反応混合物からの残存する銀イオンが除去される。銀イオンは好ましくは、水中、オキサリプラチンの溶液に、ハロゲン化されたカリウム塩、例えばKI、KCl又はKBr、好ましくはKIを添加し、その結果、過剰のAg+がハロゲンイオンと反応し、ハロゲン化銀の沈殿物が形成し、それにより排除され得る。形成されるハロゲン化銀化合物は、従来の方法、例えば膜を用いての濾過により、溶液から除去され得る。
【0044】
銀イオンを排除するためのもう1つの手段は、キレート化剤、例えばEDTAを用いることによる。銀イオンの排除のためのもう1つの手段は、カチオン交換樹脂を用いることによる。
得られるオキサリプラチンはさらに、アミド、C1-4アルキルエステル、ケトン、ハロゲン化された炭化水素、水及びそれらの混合物から成る群から選択された溶媒から再結晶化され、続いて、上記方法により、精製された材料が回収される。
【0045】
アミドは、メチルホルムアミド又はジメチルホルムアミド、好ましくは、ジメチルホルムアミドであり得る。好ましくは、ケトンはアセトンである。ハロゲン化された炭化水素は好ましくは、四塩化炭素、クロロホルム又はジクロロメタンである。
最も好ましくは、溶媒は、ジメチルホルムアミドである。
上記再結晶化工程の後に回収されるオキサリプラチンは光学的に純粋であり、ここでシス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体異性体のレベルは、HPLCによれば約3%以下の面積である。好ましくは、シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体異性体のレベルは、HPLCによれば約2%以下の面積、より好ましくはHPLCによれば約1%以下の面積、及び最も好ましくはHPLCによれば約0.1%以下の面積である。
【0046】
オキサリンプラチンを調製するための中間体としてのシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)白金(II)錯体の使用は、下記式(3):
【0047】
【化9】

【0048】
で表わされるシス−ジアクオ−1,2−ジアミノシクロヘキサン白金(II)錯体を得るための追加の段階を回避する。
【0049】
本発明はまた、シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を包含するオキサリプラチンの調製方法を提供し、ここで前記方法は、
a)下記式(5):
【0050】
【化10】

【0051】
で表わされるトランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミンの水溶液と、M2PtX4及びKI(式中、MはLi、Na又はKであり、そしてXはI, Cl又はBrである)とを一緒にして、混合物を得;
b)前記混合物を室温で維持し;そして
c)シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を回収し;
d)シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体と水とを組合し、そしてその得られる溶液とシュウ酸銀の塩基性溶液とを組合し、反応混合物を得;
e)前記反応混合物を、約55℃〜約75℃の温度に少なくとも3時間、加熱し;
f)段階e)の反応混合物とKX形のハロゲン化されたカリウム塩とを組合し;
g)前記反応混合物を少なくとも4時間、維持し;そして
h)前記反応混合物からオキサリプラチンを回収する;
ことを含んで成り、ここでMはLi、Na又はKであり、XはI、Cl又はBrであり、そしてKX型のカリウム塩はKCl、KBr又はKIである。
【0052】
好ましくは、段階a)で使用されるトランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミンは、光学的に純粋であり、これは光学的に純粋なオキサリプラチンをもたらす。
シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)白金(II)錯体はまた、下記式(3):
【0053】
【化11】

【0054】
で表わされるシス−ジアクオ−1,2−ジアミンシクロヘキサン白金(II)錯体を通してオキサリプラチンに転換され得る。
【0055】
本発明は、シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体及びシス−ジアクオ−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を包含するオキサリプラチンの調製方法を提供し、ここで前記方法は、
(i)例えば、本発明のシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を調製するための方法を行うことにより、シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体、好ましくは光学的に純粋なシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体(HPLCによれば、シス−ジヨード−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)白金(II)錯体異性体の約3%以下の面積を有する)を供給し;
【0056】
(ii)シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体と硝酸銀とを反応し、反応混合物におけるシス−ジアクオ−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を得;
(iii)前記反応混合物から銀イオンを除去し;
(iv)シス−ジアクオ−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を回収し;
(v)シス−ジアクオ−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を、オキサリプラチンに転換し;そして
(vi)前記オキサリプラチンを回収する;
ことを含んで成る。
【0057】
本発明のシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体及びシス−ジアクオ−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を包含するオキサリプラチンの調製方法においては、段階(ii)は、
I)シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体と、硝酸銀の水溶液とを組合し、反応混合物を得;
II)前記反応混合物を、約45℃〜約60℃、好ましくは約45℃〜55℃の温度に加熱し、シス−ジアクオ−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体の懸濁液を得;そして任意には、さらに
III )前記懸濁液を約20℃〜約30℃の温度に冷却することにより行われ得る。
【0058】
本発明のシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体及びシス−ジアクオ−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を包含するオキサリプラチンの調製方法においては、銀イオンは、KIの添加から得られるヨウ化銀の沈殿により反応混合物から除去され得る。
【0059】
本発明のシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体及びシス−ジアクオ−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を包含するオキサリプラチンの調製方法においては、シス−ジアクオ−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体は、それとシュウ酸カリウムとを組合し;そのpHを約4.5〜約5.0に調節し;冷却し、シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体の懸濁液を得;そして前記懸濁液からシス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を回収することにより、オキサリプラチンに転換され得る。
【0060】
本発明のシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体及びシス−ジアクオ−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を包含するオキサリプラチンの調製方法の態様は、
a)シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体の水溶液と、硝酸銀の水溶液とを組合し、反応混合物を得;
b)前記反応混合物を、約45℃〜約60℃の温度に加熱し、シス−ジアクオ−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体の懸濁液を得;
c)前記懸濁液を、約20℃〜約30℃の温度に冷却し;
d)前記反応混合物から銀イオンを除去し;
e)シス−ジアクオ−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を回収し;そして
f)シス−ジアクオ−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を、オキサプラチンに転換する;
ことを含んで成る。
【0061】
好ましくは、段階b)における反応混合物は、約45℃〜約55℃の温度に加熱される。好ましくは、銀イオンは、KIの添加により、ヨウ化銀を沈殿し、そして反応混合物から、例えば濾過により除去することにより、反応混合物から除去される。
好ましくは、段階a)において使用されるシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体は、光学的に純粋であり、従って得られるシス−ジアクオ−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体をまた、光学的に純粋にする。
【0062】
シス−ジアクオ−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体は、当業界において知られている方法、例えばアメリカ特許第5,338,874号に記載される方法に従って、オキサリプラチンに転換され得る。
好ましい態様においては、シス−ジアクオ−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体は、それとシュウ酸カリウムとを組合し;そのpHを約4.5〜約5.0にアルカリ水酸化物の水溶液により調節し;冷却し、シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を得;そして前記懸濁液からシス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を回収することにより、オキサリプラチンに転換される。
シュウ酸カリウムは、好ましくはシュウ酸及び水酸化カリウムからの調製され得る。
【0063】
本発明の1つの態様の完全な合成路は下記に示される:
【化12】

【0064】
AgCl及びAgBrに比較してAgIの低い溶解性は、非常に良好な性質のシス−ジアクオ−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体の形成を可能にする。さらに、従来技術に記載される方法におけるシス−ジハロ−(トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン)白金(II)錯体(ここで、ハロはBr又はClである)とAgHO3との反応は、24〜72時間の反応時間を要する。しかしながら、本発明の方法においては、シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体が、シス−ジアクオ−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体に2時間以下で転換される。
【0065】
本発明は、オキサリプラチンの調製方法を提供し、ここで前記方法は、
a)下記式(5):
【0066】
【化13】

【0067】
で表わされるトランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミンの水溶液と、M2PtX4及びKI(式中、MはLi、Na又はKであり、そしてXはI, Cl又はBrである)とを組合し、混合物を得;
b)前記混合物を室温で維持し;そして
c)シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を回収し;そして
(d)前記シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を、オキサリプラチンに転換する;
段階を含んで成る。
【0068】
一定の好ましい態様に関して本発明を説明する場合、他の態様も本明細書の考慮から当業者に明らかに成るであろう。本発明はさらに、本発明の組成物の調製及びその使用方法を詳細に記載する次の例により定義される。多くの修飾(材料及び方法の両者)が本発明の範囲内で行われ得ることは、当業者に明らかであろう。
【実施例】
【0069】
例1:シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体の調製
この工程は、窒素雰囲気下で行われた。
34.4gのカリウム四クロロプラチネートを、275mlの水に溶解した。140mlの水中、80.1gのKIの溶液を調製した。両溶液を15分間、混合し、混合された溶液を得、次にこれを、30mlの水中、HPLCにより少なくとも99.9%の面積の光学純度を有する10gのトランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミンにより前もって調製された水溶液に添加した。その反応溶液を、室温で10時間、攪拌し、粗シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を形成し、これを沈殿物として反応溶液から濾過し、そして55mlの水により3度、洗浄した。
【0070】
次に沈殿物を220mlの水に15分間、再懸濁し、そしてその懸濁液から濾過し、そしてハロゲンイオンが検出されなくなるまで、水により洗浄した。洗浄された沈殿物を、45mlのジメチルホルムアミドに15分間、懸濁した。その懸濁された沈殿物を、懸濁液から濾過し、10mlのジメチルホルムアミドに15分間、懸濁した。その懸濁された沈殿物を、懸濁液から濾過し、10mlのジメチルホルムアミドにより3度、洗浄し、次に30mlの水により3度、洗浄し、そして最終的に、20mlのアセトンにより3度、洗浄し、シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を得、これを真空下で25℃〜30℃で12時間、乾燥し、275℃〜300℃の融点、HPLCによる少なくとも99.5%の面積の光学純度、及び40.0gの重量を有する純粋なシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を得た。
【0071】
例2:シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体の調製
100gのカリウム四クロロプラチネートを、1000mlの水に、15〜20℃で溶解し、そして20分間、攪拌し、次に、前記溶液を、濾紙を備えたブフナー漏斗を通して濾過した。別のフラスコに、80.0gのKI及び150mlの水を室温で充填し;次にKI及びK2PtCl4の溶液を混合し、そして20〜30℃で20分間、攪拌した。得られる溶液に、トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン(DACH)(29.5g)及び水(70ml)の混合物をゆっくりと添加した。その反応混合物を20〜30℃で3時間、攪拌した。固体生成物を真空下でブフナー漏斗上で濾過し、そして水(3×300ml)により洗浄した。生成物を真空オーブンにおいて65℃で少なくとも12時間、乾燥した。シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体生成物は、HPLCによる少なくとも99.5%の面積の光学純度を有した。
【0072】
例3:シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体の調製
この工程は、窒素雰囲気下で行われた。
34.4gのカリウム四クロロプラチネートを、275mlの水に溶解した。140mlの水中、80.1gのKIの溶液を調製した。両溶液を15分間、混合し、混合された溶液を得、次にこれを、30mlの水中、HPLCにより少なくとも99.9%の面積の光学純度を有する10gのトランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミンにより前もって調製された水溶液に添加した。その反応溶液を、室温で10時間、攪拌し、粗シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を形成し、これを沈殿物として反応溶液から濾過し、そして55mlの水により3度、洗浄した。次に沈殿物を220mlの水に15分間、再懸濁し、そしてその懸濁液から濾過し、そしてハロゲンイオンが検出されなくなるまで、水により洗浄した。
【0073】
洗浄された沈殿物を、50%のジメチルホルムアミド及び50%の水により前もって調製された溶液45mlに15分間、懸濁した。その懸濁された沈殿物を、懸濁液から濾過し、50%のジメチルホルムアミ/水の溶液10mlにより3度、洗浄し、次に30mlの水により3度、洗浄し、そして最終的に、20mlのアセトンにより3度、洗浄し、シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を得、これを真空下で25℃〜30℃で12時間、乾燥し、純粋なシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を得た。この純粋な、得られたシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体は、275℃〜300℃の融点、HPLCによる少なくとも99.5%の面積の光学純度、及び37.0gの重量を有した。
【0074】
例4:シス−ジアクオ−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体の調製
100gの白金シス−ジアクオ−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体及び400mlの水を、20〜30℃で充填し、そして20分間、攪拌した。前記溶液に、AgNO3(69.3g)及び水(100〜130ml)により調製された混合物を添加した。その混合物を20〜30℃で60分間、攪拌し、次に45〜50℃に加熱し、そして10分間、攪拌した。次に、その懸濁液を20〜30℃に冷却し、そして20mlの水中、8gのKIを添加し、そしてその懸濁液を、20分間、攪拌した。得られるヨウ化銀を真空下で濾過し、そして水(2×100ml)により洗浄した。得られる溶液を、次の段階において容易に使用されるよう、暗室下で保持した。
【0075】
例5:シュウ酸カリウムの調製
攪拌下で、35.66gの水酸化カリウムを、300mlのメタノール溶解し、そして36.45gのシュウ酸を室温で前記溶液に充填した。その混合物を3時間、攪拌した。溶媒を、合計体積が100mlになるまで、大気圧下で蒸留した。塩を真空下で濾過し、メタノール(3×20ml)により洗浄し、そして室温で少なくとも12時間、真空下で乾燥した。
【0076】
例6:シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体の調製
シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体(1)の調製を、窒素雰囲気及び薄暗い光下で行った。なぜならば、シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体(1)は感光性であるからである。10gのシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体(2)を、800mlの水に溶解した。
【0077】
次に、5.4gのシュウ酸銀を前記溶液に添加し、そしてpHを、0.1Nの水酸化ナトリウム溶液により4.5〜5.0に調節した。その反応溶液を、55〜60℃で3時間、加熱し、そして0.05gのKIを添加し、そして同じ温度で4時間、攪拌した。次に、0.1gの木炭を添加し、そして0.2μmの膜により、AgIと一緒に55〜60℃で濾過した。濾液を真空下で55〜60℃で70mlの体積に濃縮し、そして0〜5℃で30分間、冷却し、粗シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体構造体(1)を形成した。その粗シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体構造体(1)を、前記溶液から濾過し、そして10mlの冷却された水により2度、洗浄した。
【0078】
次に洗浄されたシス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体構造体(1)を、真空下で25〜30℃で12時間、乾燥し、5.6gの粗生成物(1)を得た。粗シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体生成物(1)を、55〜60℃での450mlの水への溶解、この温度での0.05gの木炭の添加及び0.2μmの膜を通しての濾過を通して結晶化し;そして次に、濾液を、55〜60℃で真空下で40mlの体積に濃縮し、そして0〜5℃で30分間、冷却し、沈殿物を形成した。沈殿物を濾過し、そして5.0mlの水により3度、洗浄した。シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体生成物(1)を、真空下で45〜50℃で24時間、乾燥した。
【0079】
シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体生成物(1)を、55〜60℃での水450mlへのシス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体生成物(1)の再溶解及び4時間の攪拌を伴っての同じ温度での0.05gのKIの添加、続く微量の銀イオンの除去を通して精製した。0.05gの木炭の添加及び0.2μmの膜を通しての濾過の後、濾液を55〜60℃で40mlの最終体積に濃縮し、0〜5℃で30分間、冷却し、沈殿物を形成した。沈殿物を濾過し、そして5.0mlの水により3度、洗浄した。シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体生成物(1)を、25〜30℃で12時間、乾燥した。
【0080】
乾燥されたシス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体生成物(1)を、30mlのジメチルホルムアミドに懸濁し、15分間、攪拌し、その懸濁液から濾過し、そして5.0mlのジメチルホルムアミドにより3度、洗浄した。最終的に、シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体生成物(1)を、20mlの水に室温で15分間、再懸濁し、その懸濁液から濾過し、そして5.0mlの冷却水により3度、洗浄し、ジメチルホルムアミドを排除した。シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体生成物(1)を、真空下で45〜50℃で20時間、乾燥した。5.0gの重量及びHPLCによれば少なくとも99.9%の面積の光学純度を有するシス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体(1)の純粋な結晶を得た。
【0081】
例7:シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体の調製
シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体(1)の調製を、窒素雰囲気及び薄暗い光下で行った。なぜならば、シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体(1)は感光性であるからである。10gのシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体(2)を、800mlの水に溶解した。次に、5.4gのシュウ酸銀を前記溶液に添加し、そしてpHを、0.1Nの水酸化ナトリウム溶液により4.5〜5.0に調節した(必要とされる場合のみ)。
【0082】
その反応溶液を、55〜60℃で3時間、加熱し、そして0.05gのKIを添加し、そして同じ温度で4時間、攪拌した。次に、0.1gの木炭を添加し、そして0.2μmの膜により、AgIと一緒に55〜60℃で濾過した。濾液を真空下で55〜60℃で70mlの体積に濃縮し、そして0〜5℃で30分間、冷却し、粗シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体構造体(1)を形成した。その粗シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体構造体(1)を、前記溶液から濾過し、そして10mlの冷却された水により2度、洗浄した。次に洗浄されたシス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体構造体(1)を、真空下で25〜30℃で12時間、乾燥し、5.6gの粗シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体生成物(1)を得た。
【0083】
粗シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体生成物(1)を、55〜60℃での450mlの水への溶解、この温度での0.05gの木炭の添加及び0.2μmの膜を通しての濾過を通して結晶化し;そして次に、濾液を、55〜60℃で真空下で40mlの体積に濃縮し、そして0〜5℃で30分間、冷却し、沈殿物を形成した。沈殿物を濾過し、そして5.0mlの水により3度、洗浄した。シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体生成物(1)を、真空下で45〜50℃で24時間、乾燥した。シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体生成物(1)を、55〜60℃での水450mlへのシス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体生成物(1)の再溶解及び4時間の攪拌を伴っての同じ温度での0.05gのKIの添加、続く微量の銀イオンの除去を通して精製した。
【0084】
0.05gの木炭の添加及び0.2μmの膜を通しての濾過の後、濾液を55〜60℃で40mlの最終体積に濃縮し、0〜5℃で30分間、冷却し、沈殿物を形成した。沈殿物を濾過し、そして5.0mlの水により3度、洗浄した。シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体生成物(1)を、25〜30℃で12時間、乾燥した。乾燥されたシス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体生成物(1)を、50%のジメチルホルムアミド及び50%の水の溶液30mlに懸濁し、15分間、攪拌し、その懸濁液から濾過し、そして50%のジメチルホルムアミド/水溶液5.0mlにより3度、洗浄した。
【0085】
最終的に、シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体生成物(1)を、30mlの水に室温で15分間、再懸濁し、その懸濁液から濾過し、そして5.0mlの冷却水により3度、洗浄し、ジメチルホルムアミドを排除した。シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体生成物(1)を、真空下で45〜50℃で20時間、乾燥した。5.4gの重量及びHPLCによれば少なくとも99.9%の面積の光学純度を有するシス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体(1)の純粋な結晶を得た。
【0086】
例8:シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体の調製
シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体(1)の調製を、窒素雰囲気及び薄暗い光下で行った。なぜならば、シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体(1)は感光性であるからである。10gのシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体(2)を、800mlの水に溶解した。次に、5.4gのシュウ酸銀を前記溶液に添加し、そしてpHを、0.1Nの水酸化ナトリウム溶液により4.5〜5.0に調節した(必要とされる場合のみ)。
【0087】
その反応溶液を、70〜75℃で3時間、加熱し、そして0.05gのKIを添加し、そして同じ温度で4時間、攪拌した。次に、0.1gの木炭を添加し、そして0.2μmの膜により、AgIと一緒に70〜75℃で濾過した。濾液を真空下で70〜75℃で70mlの体積に濃縮し、そして0〜5℃で30分間、冷却し、粗シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体構造体(1)を形成した。その粗シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体構造体(1)を、前記溶液から濾過し、そして10mlの冷却された水により2度、洗浄した。次に洗浄されたシス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体構造体(1)を、真空下で25〜30℃で12時間、乾燥し、5.6gの粗シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体生成物(1)を得た。
【0088】
粗シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体生成物(1)を、70〜75℃での450mlの水への溶解、この温度での0.05gの木炭の添加及び0.2μmの膜を通しての濾過を通して結晶化し;そして次に、濾液を、70〜75℃で真空下で40mlの体積に濃縮し、そして0〜5℃で30分間、冷却し、沈殿物を形成した。沈殿物を濾過し、そして5.0mlの水により3度、洗浄した。シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体生成物(1)を、真空下で45〜50℃で24時間、乾燥した。シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体生成物(1)を、70〜75℃での水450mlへのシス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体生成物(1)の再溶解及び4時間の攪拌を伴っての同じ温度での0.05gのKIの添加、続く微量の銀イオンの除去を通して精製した。
【0089】
0.05gの木炭の添加及び0.2μmの膜を通しての濾過の後、濾液を70〜75℃で40mlの最終体積に濃縮し、0〜5℃で30分間、冷却し、沈殿物を形成した。沈殿物を濾過し、そして5.0mlの水により3度、洗浄した。シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体生成物(1)を、25〜30℃で12時間、乾燥した。乾燥されたシス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体生成物(1)を、30mlのジメチルホルムアミドに懸濁し、15分間、攪拌し、その懸濁液から濾過し、そして5.0mlのジメチルホルムアミドにより3度、洗浄した。
【0090】
最終的に、シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体生成物(1)を、20mlの水に室温で15分間、再懸濁し、その懸濁液から濾過し、そして5.0mlの冷却水により3度、洗浄し、ジメチルホルムアミドを排除した。シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体生成物(1)を、真空下で45〜50℃で20時間、乾燥した。5.0gの重量及びHPLCによれば少なくとも99.9%の面積の光学純度を有するシス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体(1)の純粋な結晶を得た。
【0091】
例9:シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体の調製
シス−ジアクオ−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体の溶液に、約54gのシュウ酸カリウムを添加し、そしてpHを0.1MのKOHにより4.5〜5.0に調節した。その混合物を少なくとも2.5時間、攪拌した。反応混合物を5〜10℃に冷却し、そして得られた懸濁液を濾過し、そして固形物を、エタノール−水(9:1、v/v)により調製された冷混合物100mlにより洗浄した。次に、湿った生成物を、水(7.0L)に懸濁し、そして完全な溶液を得るまで暖めた。その温溶液を、不溶性不純物を排除するために、0.2mmの膜を通して真空下で濾過し、そして温水(100ml)により2度、洗浄した。
【0092】
水を、2Lの最終体積まで60℃で真空下で除去し、そして形成される沈殿物を真空下で除去し、そしてエタノール−水(9:1、v/v)により調製される冷混合物100ml、次に5℃での無水エタノール(100ml)により洗浄し、5℃での50mlのDMFにより2度、洗浄し、そして50mlのエタノールにより3度、洗浄した。次に、沈殿物を、真空下で60分間、漏斗上で乾燥した。生成物を室温で4.8Lの水により溶解し、0.2mmのフィルターを通して濾過し、そしてその溶液を約100mlまで濃縮し;次に、その溶液を0〜5℃に30分で冷却した。前記懸濁液を濾過し、そしてエタノール:水(9:1、v/v)の混合物50mlにより5℃で2度、洗浄し、30mlのDMFにより3度、及び50mlのエタノールにより2度、0〜5℃で洗浄した。固形物を、真空下で12時間、乾燥した。
【0093】
例10:シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体の特徴化
本発明のシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を、次の通りに、Brucher300MHz上で記録されるNMRスペクトルにより特徴づけられた:
C13 NMR, DMSO(ppm): 64.45; 61.13; 32.67; 32.09; 24.91; 24.65;
H1NMR, DMSO (δppm): 2.35, 広いシングレット、2H; 1.95, dd, 2H; 1.45, 広いシングレット、2H; 1.30, 広いシングレット、2H; 1.00, 広いシングレット, 2H; 6.17マルチプレット、(NH2);
Pt 195 NMR, DMSO: -3543s。
不純物に起因する有意なピークは、NMRスペクトルにおいては見出されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(2):
【化1】

で表わされる単離されたシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体。
【請求項2】
約275℃〜約300℃の範囲の融点を有する請求項1記載のシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体。
【請求項3】
前記シス−ジヨード−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体異性体のレベルが、HPLCによれば約3%以下の面積である請求項1記載のシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体。
【請求項4】
前記シス−ジヨード−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体異性体のレベルが、HPLCによれば約3%以下の面積である、シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体。
【請求項5】
前記シス−ジヨード−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体異性体のレベルが、HPLCによれば約2%以下の面積である請求項3又は4記載のシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体。
【請求項6】
前記シス−ジヨード−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体異性体のレベルが、HPLCによれば約1%以下の面積である請求項5記載のシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体。
【請求項7】
前記シス−ジヨード−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体異性体のレベルが、HPLCによれば約0.1%以下の面積である請求項5記載のシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体。
【請求項8】
シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体の調製方法であって、
a)下記式(5):
【化2】

で表わされるトランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミンと、M2PtX4及びKI(式中、MはLi、Na又はKであり、そしてXはI, Cl又はBrである)とを一緒にして混合物を得;
b)前記混合物を室温で維持し;そして
c)シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を回収する;
ことを含んで成る方法。
【請求項9】
段階a)におけるトランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミンが、HPLCによれば、トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン異性体の約3%以下の面積を有する請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体が、HPLCによれば、シス−ジヨード−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体異性体の約3%以下の面積を有する請求項9記載の方法。
【請求項11】
MがKである請求項8記載の方法。
【請求項12】
XがIである請求項8記載の方法。
【請求項13】
アミド、C1-4アルキルエステル、ケトン、ハロゲン化された炭化水素、水及びそれらの混合物から成る群から選択された溶媒に、段階c)のシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を懸濁することにより、それを精製することをさらに含んで成る請求項8記載の方法。
【請求項14】
前記溶媒が、メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、酢酸メチル、アセトン、四塩化炭素、クロロホルム及びジクロロメタンから成る群から選択される請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記有機溶媒が、ジメチルホルムアミドである請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記精製段階が反復される請求項13記載の方法。
【請求項17】
オキサリプラチンの調製方法であって、
(i)請求項8記載の方法を実施し;
(ii)段階c)において得られたシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体と、シュウ酸銀とを反応し、反応混合物を得;
(iii)前記反応混合物と、KX(式中、KXはKCl、KBr又はKIである)とを混合し;そして
(iv)オキサリプラチンを回収する;
ことを含んで成る方法。
【請求項18】
段階(ii)が、
d)段階c)において得られたシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体と、シュウ酸銀の塩基性水溶液とを組合し、反応混合物を得;そして
e)前記反応混合物を、約55℃〜約75℃の温度に少なくとも3時間、加熱する;
ことにより行われ;
段階(iii)及び(iv)が、
f)段階e)からの反応混合物を、KX(式中、KXはKCl、KBr又はKIである)と組合し;
g)段階f)からの反応混合物を、少なくとも4時間、維持し;そして
h)段階g)において得られた反応混合物からオキサリプラチンを回収する;
ことにより行われる請求項17記載の方法。
【請求項19】
段階d)のシュウ酸銀の塩基性溶液が、約4.5〜約5.0のpHを有する請求項18記載の方法。
【請求項20】
段階e)における反応混合物を、約55℃〜約60℃の温度に加熱する請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記KX形のカリウム塩が、KIである請求項18記載の方法。
【請求項22】
前記オキサリプラチンが、HPLCによれば、シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体異性体の約3%以下の面積を有する請求項18記載の方法。
【請求項23】
段階h)において得られたオキサプラチンを水に溶解し、前記反応混合物から残存する銀イオンを除去し、そしてオキサリプラチンを結晶化することにより、前記オキサプラチンを精製することをさらに含んで成る請求項18記載の方法。
【請求項24】
オキサリプラチンの結晶化の後、そのオキサリプラチンを、アミド、C1-4アルキルエステル、ケトン、ハロゲン化された炭化水素から成る群から選択された有機溶媒において結晶化することをさらに含んで成る請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記有機溶媒が、ジメチルホルムアミドである請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記銀イオンが、キレート化剤及びカチオン交換樹脂を用いて、水中、オキサリプラチンの溶液へのハロゲン化されたカリウム塩の添加によるハロゲン化銀の沈殿法から選択された方法により除去される請求項23記載の方法。
【請求項27】
オキサリプラチンの生成方法であって、
(i)請求項8記載の方法を実施し;
(ii)段階c)において得られたシス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体と硝酸銀とを反応し、反応混合物にシス−ジアクオ−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を得;
(iii)前記反応混合物から銀イオンを除去し;
(iv)シス−ジアクオ−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を回収し;
(v)シス−ジアクオ−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を、オキサリプラチンに転換し;そして
(vi)オキサリプラチンを回収する;
ことを含んで成る方法。
【請求項28】
段階(ii)が、
d)シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体と、硝酸銀の水溶液とを組合し、反応混合物を得;そして
e)前記反応混合物を、約45℃〜約60℃の温度に加熱し、シス−ジアクオ−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体の懸濁液を得ることにより行われ;そして
f)前記懸濁液を、約20℃〜約30℃の温度に冷却することにより行われる請求項27記載の方法。
【請求項29】
段階e)における反応混合物を、約45℃〜約55℃の温度に加熱する請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記銀イオンが、KIの添加から得られるヨウ化銀の沈殿により反応混合物から除去される請求項27記載の方法。
【請求項31】
シス−ジアクオ−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を、それとシュウ酸カリウムを組合し;そのpHを約4.5〜約5.0に調節し;冷却し、シス−オキサレート−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体の懸濁液を得;そして前記懸濁液からシス−オキサレート−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を回収することにより、オキサリプラチンに転換する請求項27記載の方法。
【請求項32】
前記オキサリプラチンが、HPLCによれば、シス−オキサレート−(トランス−D−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体異性体の約3%以下の面積を有する請求項27記載の方法。
【請求項33】
オキサリプラチンの調製方法であって、
a)下記式(5):
【化3】

で表わされるトランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミンの水溶液と、M2PtX4及びKI(式中、MはLi、Na又はKであり、そしてXはI, Cl又はBrである)とを一緒にして、混合物を得;
b)前記混合物を室温で維持し;そして
c)シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を回収し;そして
(d)前記シス−ジヨード−(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)Pt(II)錯体を、オキサリプラチンに転換する;
段階を含んで成る方法。

【公表番号】特表2007−505165(P2007−505165A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534483(P2006−534483)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/024493
【国際公開番号】WO2006/023154
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(505216117)シコール インコーポレイティド (35)
【Fターム(参考)】