説明

シソ科植物加工品およびその製造法

【課題】風味成分や色素成分の損失や劣化を抑制したシソ科植物加工品とその製造方法、さらには該加工品を利用した食品を提供すること。
【解決手段】色差計で計測される色度aおよびbから算出される(−a)×(−a)/bが4〜15であり、且つポリフェノールオキシダーゼ活性が0.1unit/2.5mg以下(乾燥重量換算)であるシソ科植物加工品を作製し、それを用いて食品を作製すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風味成分や色素成分の損失や劣化を抑制したシソ科植物加工品とその製造方法、およびその加工品を利用した食品に関する。
【背景技術】
【0002】
シソ科植物は葉、穂、実、種と、殆どすべてと言って良いほど食用に向き、また、特有の精油成分を持つため芳香目的に利用されることも多い。しかし、生の状態では採取後数日間しか保存できず、工業的な利用は困難な状況にある。
【0003】
そこで、シソ科植物の有効な利用のために、ミキサー等を用いて機械的に磨砕して液状、ペースト状、粉末状加工品にする方法があるが、葉は磨砕し難かったり、磨砕時の熱やミキサーの金属刃により変色や風味の劣化が起こったり、また植物自身の持つ酵素により変色するといった問題がある。このため、バジルなどのシソ科植物を含む香味野菜をブランチングした後凍結し、凍結したまま粉砕する方法(特許文献1)がある。しかしこの方法をシソ科植物加工品の作製に応用すると、生の葉をブランチングすることで生のシソ科植物特有の好ましい風味が劣化してしまうなど、風味、色調の全てを満足させるシソ科植物加工品は存在しない。
【0004】
また、野菜や香辛料、茶葉の有効な利用法として、アルカリ性温水に浸漬した後磨砕する方法(特許文献2)、機械粉砕とペクチナーゼ、プロトペクチナーゼ、セルラーゼといった細胞間物質分解酵素を作用させることを併用して、植物を液状やペースト状、粉末状といった加工品にすることが行われている(特許文献3〜6)。しかしこれらの方法によってシソ科植物を加工すると、ブランチング処理により風味が劣化してしまったり、また機械粉砕の時に植物細胞が破壊され、細胞に含まれる風味成分や色素成分が損失したり劣化したりすることで、品質が低下してしまい、シソ科植物を加工する方法には応用できない。
【0005】
更に、植物を機械粉砕せずに加工する方法として、植物をアルカリ処理後ブランチングして酵素処理を行い、単細胞化を容易に行う方法(特許文献7)、植物を凍結させた後減圧下に置くことで、切断せずに植物内部に酵素液を導入する方法(特許文献8)、香辛料にプロトペクチナーゼを作用させることで香辛料を単細胞化する方法(特許文献9)などがある。しかしシソ科植物は、ブランチングや凍結することで酵素導入が非常に困難になり、酵素分解に長時間要したり、また長時間酵素処理を行うことにより細胞が破壊され、風味成分や色素成分の損失や劣化が起こるため、やはりシソ科植物を加工する方法には応用できない。
【0006】
そこで、風味成分や色素成分の損失や劣化を抑制されたシソ科植物加工品およびその製法の提供が期待されている。
【特許文献1】特開平6−7080号公報
【特許文献2】特開2007−135534号公報
【特許文献3】特開平6−105661号公報
【特許文献4】特開2008−17705号公報
【特許文献5】特開平6−62796号公報
【特許文献6】特開昭61−162150号公報
【特許文献7】特開平9−75026号公報
【特許文献8】特開2003−284522号公報
【特許文献9】特開平7−23732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、風味成分や色素成分の損失や劣化を抑制したシソ科植物加工品とその製造方法、さらには該加工品を利用した食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、酵素処理により、乾燥重量1g当たり相当数に単細胞化したシソ科植物加工品は、風味成分や色素成分の損失や劣化を抑制され、各種食品に利用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の第一は、色差計で計測される色度aおよびbから算出される(−a)×(−a)/bが4〜15であり、且つポリフェノールオキシダーゼ活性が0.1unit/2.5mg以下(乾燥重量換算)であるシソ科植物加工品に関する。好ましい実施態様は、酵素処理により乾燥重量1g当たり1万〜1000万個に単細胞化されている上記記載のシソ科植物加工品に関する。本発明の第二は、ポリフェノールオキシダーゼ活性を有する生の状態のシソ科植物を、脱酸素下で加熱処理してポリフェノールオキシダーゼを失活させることを特徴とするシソ科植物加工品の製造方法に関する。好ましい実施態様は、生の状態のシソ科植物の茎、芽部を取り除いた部分を原料とすることを特徴とする上記記載のシソ科植物加工品の製造方法に関する。より好ましくは、加熱処理を100〜130℃で45〜90秒間行うことを特徴とする上記記載のシソ科植物加工品の製造方法、更に好ましくは、加熱処理の前に、生の状態の植物を脱酸素下において酵素分解することを特徴とする上記記載のシソ科植物加工品の製造方法、特に好ましくは、シソ科植物の重量の0.2〜25倍量加水し、ペクチナーゼを主体とする細胞間物質分解酵素を減圧下酵素導入して酵素分解処理を行う上記記載のシソ科植物加工品の製造方法、極めて好ましくは、酵素分解処理温度が10〜50℃である上記記載のシソ科植物加工品の製造方法、最も好ましくは、細胞間物質分解酵素の使用量がシソ科植物100重量部に対して0.01〜1.0重量部である上記記載のシソ科植物加工品の製造方法、に関する。本発明の第三は、上記記載のシソ科植物加工品を利用した食品に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に従えば、風味成分や色素成分の損失や劣化を抑制したシソ科植物加工品とその製造方法、さらにはその加工品を利用した食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明のシソ科植物加工品は、色差計で計測される色度aおよびbから算出される(−a)×(−a)/b(鮮緑度)が4〜15で、且つポリフェノールオキシダーゼ活性が0.1unit/2.5mg以下(乾燥重量換算)であることが特徴である。そして該シソ科植物加工品を、風味成分や色素成分の損失や劣化をより抑制するためには、酵素処理により乾燥重量1g当たり1万〜1000万個に単細胞化しておくことが好ましい。
【0012】
本発明において使用するシソ科植物とは、例えば青シソ、スイートバジル、ローズマリー、セージ、エゴマ、レモンバーム、オレガノ、マジョラム、タイム等クロロフィルを含有するものに限定する。該シソ科植物は、生の状態のシソ科植物の茎、芽部を取り除いた部分を原料として用いることが好ましい。その理由は、茎、芽部にはポリフェノールオキシダーゼが多く、特に旬の時期ではより多くのポリフェノールオキシダーゼが含有し、これらを使用すると、ポリフェノールオキシダーゼを失活させるために過剰の加熱が必要になる場合があるからである。
【0013】
本発明のシソ科植物加工品とは、前記シソ科植物に対して、例えば加熱、切断、酵素処理、アルカリ処理、減圧処理、加圧処理等を施したものをいい、酵素処理により単細胞化した場合には、液状、ペースト、粉末状、凍結等、形態を変えても良い。
【0014】
本発明における(−a)×(−a)/bとは、シソ科植物加工品を色差計で計測した色度aおよびbから算出するもので、以下、鮮緑度ともいう。鮮緑度:(−a)×(−a)/bは4〜15が好ましく、より好ましくは4〜14、さらに好ましくは5〜14である。鮮緑度:(−a)×(−a)/bが4〜15であると視覚的に鮮やかな緑色である。4より小さいと褐色であり色素成分が損失や劣化している場合がある。また15より大きいと深緑色になり、視覚的に鮮やかな緑色ではない場合がある。
【0015】
本発明のシソ科植物加工品のポリフェノールオキシダーゼ活性は、0.1unit/2.5mg以下(乾燥重量換算)が好ましく、より好ましくは0〜0.1unit/2.5mg(乾燥重量換算)、さらに好ましくは0〜0.05unit/2.5mg(乾燥重量換算)、特に好ましくは0〜0.01unit/2.5mg(乾燥重量換算)である。ポリフェノールオキシダーゼ活性が0unit/2.5mg(乾燥重量換算)であると、シソ科植物自身が持つポリフェノール類の酸化重合が起こりにくく風味成分、色素成分の損失や劣化が少ない。ポリフェノールオキシダーゼ活性が0.1unit/2.5mg(乾燥重量換算)より大きいと、ポリフェノール類の酸化重合が起こり、風味成分や色素成分の損失や劣化が起こる場合がある。ここで、シソ科植物加工品のポリフェノールオキシダーゼ活性は、日本食品科学工学会誌15巻5号199〜206項(1968年)等に記載されている方法に準拠し、乾燥重量換算で測定することができる。
【0016】
本発明のシソ科植物加工品を、酵素処理して単細胞化する場合は、乾燥重量1g当たりに換算した時の単細胞数は1万〜1000万個が好ましく、より好ましくは10万〜1000万個、さらに好ましくは100万〜1000万個である。単細胞数が1万個より少ないと、細胞に含まれる風味成分や色素成分が損失や劣化が起こる場合がある。また、単細胞数は多ければ多いほど良いが、本工程により得られる最大の単細胞数は1000万個程度である。
【0017】
本発明において、シソ科植物加工品の製造方法に特に限定はないが、以下に例示する。
【0018】
<酵素処理による単細胞化を行わない場合>
まず、例えば三方パウチや密閉容器にシソ科植物を入れ、間隙やヘッドスペースを減圧、窒素ガス置換、混合ガス置換などで脱酸素状態にしたものをオイルバスなどで加熱すればよい。加熱処理は100℃〜130℃で45〜90秒間行うことが好ましい。加熱処理温度が100℃未満であると、ポリフェノールオキシダーゼを失活できず、ポリフェノール類の酸化重合が起こり、色素成分や風味成分の損失や劣化が起こる場合がある。130℃を超えると、色素成分が損失してしまう場合がある。また加熱時間は、植物によって45〜90秒間の間で任意に決めることができるが、45秒間より短いとポリフェノールオキシダーゼを失活できず、ポリフェノール類の酸化重合が起こり、色素成分や風味成分の損失や劣化が起こる場合があり、90秒間より長いと色素成分が損失してしまう場合がある。
【0019】
<酵素処理による単細胞化を行う場合>
まず、例えばシソ科植物と酵素液を三方パウチに入れ、真空包装機にてパウチ内の空気を脱気後密封するか、もしくはシソ科植物と酵素液を減圧ができる分散・混練装置に入れ、減圧にした後常圧に戻す工程を繰り返して酵素を導入する。減圧下におくことで、酵素液をシソ科植物の内部まで浸透させることができ、酵素分解に要する時間が大幅に短縮され、また機械磨砕等の粉砕工程が不要になり、単細胞化数を増加させることができる。前記減圧ができる分散・混練装置としては、プライミクス株式会社製「TKハイビスミックス」などが挙げられる。
【0020】
減圧下でシソ科植物に酵素を導入した後、分散・混練装置のヘッドスペースを、窒素ガス置換、混合ガス置換などによって脱酸素状態にしてから、アンカーミキサー等を用いて攪拌して酵素処理する。ヘッドスペースの窒素ガス置換、混合ガス置換を行わない場合は、シソ科植物が酵素液面から浮き出ないようにステンレス製のメッシュなどで重しをして酵素処理すればよい。攪拌する際は、穏やかに攪拌することで細胞の破壊を防ぎ、単細胞化数を増加させることができる。シソ科植物の種類にもよるが、通常25〜50rpmの条件で攪拌する。攪拌の際の温度は10〜50℃が好ましく、より好ましくは10〜40℃、さらに好ましくは20〜40℃である。酵素処理温度が10℃より低いと酵素活性が低くなり分解できなかったり、分解に長時間を要したりする場合がある。50℃より高いと、酵素が失活し、分解できない場合がある。
【0021】
前記酵素処理で得られた単細胞化シソ科植物を、脱酸素下で加熱処理を行うことでポリフェノールオキシダーゼを失活させ、単細胞化シソ科植物加工品を得ることができる。脱酸素下での加熱処理とは、前記の単細胞化を行わない場合と同様に脱酸素状態にしたものをオイルバスなどで加熱してもよいが、液状、ペースト状などの形態である場合は、熱交換器での加熱などを用いてもよい。この時、ヘッドスペースや間隙が発生する場合は減圧、窒素ガス置換、混合ガス置換などを行う。
【0022】
前記酵素処理に使用できる酵素としては、ペクチナーゼを主体とする細胞間物質分解酵素を用いることができる。シソ科植物を効率よく分解するためには、Trichosporon属、Rhizopus属及びBacillus属の何れかを起源とするものが好ましく、より好ましくはRhizopus属を起源とするものであり、例えばセルロシンME(Rhizopus属、エイチビィアイ(株))、マセロチームA(Rhizopus属、ヤクルト薬品工業(株))、スミチームMC(Rhizopus属、新日本化学工業(株))、Pectinase−GODO(Trichosporon属、合同酒精(株))、ペクチナーゼXP−534NEO(Bacillus属、ナガセケムデックス(株))などが挙げられる。また、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、フィターゼ、ガラクトシダーゼなどの酵素をペクチナーゼと組み合わせて用いることもできる。
【0023】
前記酵素処理において酵素は、シソ科植物100重量部に対して0.01〜1.0重量部使用することが好ましい。より好ましくは0.05〜0.5重量部、さらに好ましくは0.1〜0.3重量部である。酵素使用量が0.01重量部より少ないと、酵素分解できなかったり、分解に長時間を要したりする場合があり、1.0重量部より多いと、酵素そのものの味が出てしまう場合がある。酵素処理の際、シソ科植物の重量の0.2〜25倍量の水で酵素を溶解しておくことが好ましい。より好ましくは1〜10倍量、さらに好ましくは1〜5倍量の水で酵素を溶解しておく。加水量が0.2倍量より少ないとシソ科植物に均一に酵素導入できず、分解できない場合がある。また25倍量より多いと、酵素分解に長時間を要する場合がある。
【0024】
以上の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜製造方法は変更し得る。例えば、酸化防止目的でアスコルビン酸ナトリウムを添加したり、緑色の改善目的で水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウムなどのアルカリ剤を添加してもよい。また、使用する酵素の至適pHに調整するために酸性剤やアルカリ剤を添加してもよい。
【0025】
本発明のシソ科植物加工品を利用した食品に特に制限はないが、例えば野菜ジュースなどの飲料、パスタソース、シチュー、スープ等の調理食品、パン、ケーキ、クッキー、ゼリー等のパン・菓子として用いることができる。食品への使用量に制限はないが、0.5〜10重量%使用することができる。
【実施例】
【0026】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0027】
<シソ科植物加工品の鮮緑度の評価>
シソ科植物加工品の鮮緑度:(−a)×(−a)/bは、色差計(ミノルタカメラ株式会社製、色彩色差計「CR−200」)で計測した色度aおよびbより算出した。その際、色度の計測はシソ科植物加工品がホール状のものは直接計測し、液状、ペースト状、粉末状に形態を加工したものは、ガラス製フラットシャーレ(高さ15mm)に気泡が入らないように充填し、蓋の上から計測した。
【0028】
<ポリフェノールオキシダーゼ活性の測定方法>
日本食品科学工学会誌15巻5号199〜206項(1968年)等に記載されている方法に準拠して測定した。即ち、0.05Mリン酸緩衝液(pH6.6)に溶解した(−)−エピカテキン溶液(1.3mg/ml)2.5mlを基質とした。次にシソ科植物加工品を篩目の開き0.5mmの篩でろ過し、ろ液の乾燥重量が1.5〜3.0%になるように、即ち篩を通過したシソ科植物加工品の分量が乾燥重量換算で1〜3重量%になるように必要に応じて水で希釈し、反応液Aとした。次にこの反応液Aを、遠心分離機(日立工機(株)製、日立小型冷却遠心機CF7D)で3000rpm、15分間遠心分離処理し、上澄み液を採取し反応液Bとした。エピカテキン溶液2.5mlに対し、この反応液B0.1gを添加・混合して20℃、5分間反応させた後、10%(V/V)硫酸0.5mlを加え反応を停止し、420nmの吸光度を測定した。そして、反応液Aの乾燥重量換算で2.5mgのシソ科植物加工品の420nmの吸光度を5分間に1上昇させる活性を1単位(unit)とした。なお、シソ科植物加工品がホール形態のものはガラス式ホモジナイザーで磨砕してから使用した。
【0029】
<シソ科植物加工品の単細胞数の計測>
単細胞数の計測は細胞計数盤(株式会社ワンセル製)を用いて次のように行った。まず単細胞化植物食品素材の含有量が乾燥重量換算で1〜3重量%になるように任意に水で希釈した後、篩目0.5mmのメッシュでろ過し、ろ液を回収した。その後、残渣を水洗し、篩目0.5mmのメッシュで再びろ過し、洗浄液を回収した。洗浄、ろ過を3回繰り返した後、ろ液と洗浄液を合わせ試料(1)とし、単細胞数を計測した。試料(1)と洗浄した残渣を合わせ試料(2)とし、乾燥重量を測定した。得られた単細胞数を試料(2)の乾燥重量1g当たりに換算し、単細胞化植物食品素材の単細胞数とした。
【0030】
<風味評価>
実施例、比較例で得られたシソ科植物加工品を熟練したパネラー10名に試食してもらい、その風味を5点満点で評価した結果を平均化し、それを評価点とした。その際の評価基準は以下の通りであった。5点:フレッシュなシソ科植物の風味があり非常に良好、4点:フレッシュなシソ科植物の風味があり良好、3点:フレッシュなシソ科植物の風味が少し感じられる、2点:発酵臭や萎凋香が感じられる、1点:発酵臭や萎凋香が強く感じられる。
【0031】
<加熱による色調変化の測定方法>
色素成分の劣化や損失の度合いを比較するため、以下の測定を行った。実施例、比較例で得られたシソ科植物加工品の加熱による色調変化は、シソ科植物加工品を80℃で30分間湯煎にて温調した時のクロロフィルの残存率を測定した。本発明においてクロロフィルの含量は、クロロフィルaとクロロフィルbの合計量で評価し(「植物性食品の色素・香味・組織」、医歯薬出版(株)、昭和58年参照)、式:(加熱前クロロフィル含量−加熱後クロロフィル含量)/(加熱前クロロフィル含量)×100で計算される値を加熱後のクロロフィル残存率(%)とした。クロロフィルa、bの測定は、日本食品工業学会誌39巻10号926〜927項(1992)等に記載されている方法を参照して測定した。即ち、乾燥重量当たり0.06gのシソ科植物加工品を取り、抽出溶媒としてアセトン−ヘキサン(4:6)14.5mlを加え、ガラス式ホモジナイザーで均一になるまで磨砕抽出し、20分間静置した後の上層を試料溶液とした。試料溶液のA663、A645を(株)島津製作所製「紫外可視分光光度計UV−160A」で測定し、それらの値を式(1)に代入して試料溶液中の各色素濃度を算出した(ここで、A663、A645はそれぞれ663nm、645nmの吸光度)。式(1):クロロフィルaの濃度(mg/100ml)=0.999×A663−0.0989×A645、クロロフィルbの濃度(mg/100ml)=−0.328×A663+1.77×A645
【0032】
<酸による色調変化の測定方法>
実施例、比較例で得られたシソ科植物加工品の酸による色調変化は、シソ科植物加工品をpH4.0に調整し、5℃で1日保存した後のクロロフィルの残存率を測定した。本発明においてクロロフィルの含量はクロロフィルaとクロロフィルbの合計量で評価し(「植物性食品の色素・香味・組織」、医歯薬出版(株)、昭和58年参照)、式:(pH調整前のクロロフィル含量−pH調整後5℃で1日保存したクロロフィル含量)/(pH調整前のクロロフィル含量)×100で計算される値を酸によるクロロフィルの残存率(%)とした。クロロフィルa、bの測定法は上記加熱による色調変化の測定方法に従って行った。
【0033】
<耐酸化性の評価方法>
実施例、比較例で得られたシソ科植物加工品の耐酸化性の評価は、シソ科植物加工品をガラス製フラットシャーレ(高さ15mm)に気泡が入らないように入れ、蓋をせずに30分間静置した後、蓋をし、蓋の上から色差計(ミノルタカメラ株式会社製、色彩色差計「CR−200」)で計測した鮮緑度:(−a)×(−a)/bが4以上であるとき、耐酸化性があると評価した。
【0034】
(実施例1) ホール状スイートバジル加工品
茎、芽部を取り除いたホール状の大分産スイートバジル100重量部と25重量部の水を三方パウチに入れ、真空包装機にてパウチ内の空気を脱気後密封し、110℃オイルバスで60秒間加熱した後、ただちに25℃まで冷却し、シソ科植物加工品1を得た。シソ科植物加工品1の鮮緑度:(−a)×(−a)/b、シソ科植物加工品1を5℃で2日間保存した後の鮮緑度:(−a)×(−a)/bおよびポリフェノールオキシダーゼ活性(略称:PPO活性)、風味を評価し、それらの結果を表1に示した。
【0035】
【表1】

【0036】
(比較例1) ホール状スイートバジル加工品
茎、芽部を取り除いたホール状の大分産スイートバジルを、過熱水蒸気オーブンを用いて110℃で60秒間加熱した後、ただちに25℃まで冷却してシソ科植物加工品2を得た。得られたシソ科植物加工品2の評価を実施例1と同様にして行い、それらの結果を表1に示した。
【0037】
(比較例2) ホール状スイートバジル加工品
オイルバスでの加熱を60℃のウォーターバスで30分間にした以外は、実施例1と同様にしてシソ科植物加工品3を得た。得られたシソ科植物加工品3の評価を実施例1と同様にして行い、それらの結果を表1に示した。
【0038】
(比較例3) ホール状スイートバジル加工品
ホール状の大分産スイートバジル生葉をそのまま用いて実施例1と同様の評価を行い、それらの結果を表1に示した。
【0039】
実施例1で製造したスイートバジル加工品はポリフェノールオキシダーゼ活性が0.01unitであり、鮮緑度:(−a)×(−a)/bおよび5℃で2日間保存した後の鮮緑度:(−a)×(−a)/bは、何れも10以上で鮮やかな緑色を保っていた。また何れも、フレッシュなスイートバジルの良好な風味を呈していた。一方、比較例1で製造したスイートバジル加工品2は、ポリフェノールオキシダーゼ活性は0.01unitであったが、鮮緑度:(−a)×(−a)/bは4以下で緑褐色に変色しており、風味も発酵臭が感じられ、商品価値のないものであった。また、比較例2で製造したスイートバジル加工品3およびスイートバジル生葉のポリフェノールオキシダーゼ活性は、何れも0.1以上であった。また、5℃で2日間保存すると、スイートバジル加工品3は鮮緑度:(−a)×(−a)/bは2以下で完全に褐変しており、比較例3の生葉は茎、芽部が褐変し、萎凋香が感じられ、商品性価値のないものとなった。
【0040】
(実施例2) 単細胞化液状スイートバジル加工品
茎、芽部を取り除いた大分産スイートバジルと表2に記した割合で溶解した酵素液を撹拌・振とう・混合機(プライミックス株式会社製「T.K.ハイビスミックス」)に入れ、減圧(吸引圧力:2.5kPa)にした後5分間放置し、その後徐圧した。さらにもう4回減圧徐圧を繰り返して総計5回酵素導入を行った後、30℃で2時間攪拌し、酵素分解を行った。この時「T.K.ハイビスミックス」のヘッドスペースは窒素ガス置換を行い、脱酸素状態にした。2時間後、スイートバジルが単細胞化されていることを確認後、篩目0.5mmのメッシュにてろ過し、ろ液を回収した。このろ液を熱交換器にて110℃で60秒間加熱した後ただちに25℃まで冷却し、シソ科植物加工品加工品4を得た。得られたシソ科植物加工品4の鮮緑度:(−a)×(−a)/b、ポリフェノールオキシダーゼ活性、単細胞数、加熱による色調変化、風味を評価し、それらの結果を表2に示した。
【0041】
【表2】

【0042】
(比較例4) 単細胞化液状スイートバジル加工品
茎、芽部を取り除いた大分産スイートバジルと表2に記した割合で溶解した酵素水溶液を三方パウチに入れ、真空包装機にてパウチ内の空気を脱気後密封し減圧酵素導入を行った。30℃で2時間静置後ミキサーに移し変えスチール刃で粉砕した。この時ミキサーのヘッドスペースは窒素ガス置換を行い、脱酸素状態にした。粉砕物を篩目0.5mmのメッシュにてろ過し、ろ液を回収した。このろ液を熱交換器にて110℃で60秒間加熱した後ただちに冷却し、シソ科植物加工品5を得た。得られたシソ科植物加工品5の評価を実施例2と同様に行い、それらの結果を表2に示した。
【0043】
(比較例5) 単細胞化液状スイートバジル加工品
茎、芽部を取り除いた大分産スイートバジルと表2に記した割合の水をミキサーに入れ、スチール刃で粉砕した。この時ミキサーのヘッドスペースは窒素ガス置換を行い、脱酸素状態にした。粉砕物を篩目0.5mmのメッシュにてろ過し、ろ液を回収した。このろ液を熱交換器にて110℃で60秒間加熱した後ただちに25℃まで冷却し、シソ科植物加工品6を得た。得られたシソ科植物加工品6の評価を実施例2と同様に行い、それらの結果を表2に示した。
【0044】
実施例2で製造したシソ科植物加工品4は単細胞数が150万個であり、加熱によるクロロフィルの残存率および酸によるクロロフィルの残存率はそれぞれ83.60%、69.55%で色素成分の損失が抑えられていた。一方、比較例4、5で製造したシソ科植物加工品5、6は単細胞数がそれぞれ約8千個、6千個であり、加熱によるクロロフィルの残存率および酸によるクロロフィルの残存率はそれぞれシソ科植物加工品4に対して低く、色素成分が損失していた。
【0045】
(実施例3) 単細胞化ペーストスイートバジル加工品
シソ科植物加工品4を遠心分離して、上澄み部分を除去し、ペースト状のシソ科植物加工品7を得た。得られたシソ科植物加工品7の鮮緑度:(−a)×(−a)/b、風味を評価し、それらの結果を表3に示した。
【0046】
【表3】

【0047】
(比較例6)
シソ科植物加工品5を遠心分離して、上澄み部分を除去し、ペースト状のシソ科植物加工品8を得た。実施例3と同様に評価を行い、結果を表4に示した。得られたシソ科植物加工品8の評価を実施例3と同様に行い、それらの結果を表3に示した。
【0048】
(比較例7)
シソ科植物加工品6を遠心分離して、上澄み部分を除去し、ペースト状のシソ科植物加工品9を得た。得られたシソ科植物加工品9の評価を実施例3と同様に行い、それらの結果を表3に示した。
【0049】
実施例3で製造したスイートバジル加工品8の鮮緑度:(−a)×(−a)/bは12以上で非常に鮮やかな緑色であった。一方比較例6、7で製造したスイートバジル加工品8、9は緑褐色で商品価値のないものであった。
【0050】
(実施例4) 単細胞化粉末スイートバジル加工品
シソ科植物加工品4を凍結乾燥して、粉末状のシソ科植物加工品10を得た。得られたシソ科植物加工品10の鮮緑度:(−a)×(−a)/b、風味を評価し、それらの結果を表3に示した。
【0051】
(比較例8)
シソ科植物加工品5を凍結乾燥して、粉末状のシソ科植物加工品11を得た。得られたシソ科植物加工品11の評価を実施例4と同様に行い、それらの結果を表3に示した。
【0052】
(比較例9)
シソ科植物加工品6を凍結乾燥して、粉末状のシソ科植物加工品12を得た。得られたシソ科植物加工品12の評価を実施例4と同様に行い、それらの結果を表3に示した。
【0053】
実施例3で製造したシソ科植物加工品10の鮮緑度:(−a)×(−a)/bは4以上で緑色が保たれていた。一方比較例8、9で製造したシソ科植物加工品11、12は色褪せた緑色であり、商品価値のないものであった。
【0054】
(実施例5) 液状スイートバジル加工品
茎、芽部を取り除いた大分産スイートバジルと表4に記した割合で溶解した酵素水溶液を「T.K.ハイビスミックス」に入れ、減圧(吸引圧力:2.5kPa)にした後5分間放置し、その後徐圧した。さらにもう4回減圧徐圧を繰り返して総計5回酵素導入を行うと共に酵素液中の酸素を取り除いた後、25℃で2時間攪拌し、酵素分解を行った。この時スイートバジルがヘッドスペースの空気に触れない様にステンレス製のメッシュで重しをした。2時間後、スイートバジルが単細胞化されていることを確認後、篩目0.5mmのメッシュにてろ過し、ろ液を回収した。このろ液を熱交換器にて110℃で60秒間加熱した後ただちに冷却し、シソ科植物加工品13を得た。得られたシソ科植物加工品13の鮮緑度:(−a)×(−a)/b、ポリフェノールオキシダーゼ活性、耐酸化性、単細胞数、風味を評価し、それらの結果を表4に示した。
【0055】
【表4】

【0056】
(比較例10) 液状スイートバジル加工品
大分産スイートバジルの茎、芽部を使用すること以外は実施例5と同様にして、シソ科植物加工品14を得た。得られたシソ科植物加工品14の評価を実施例5と同様に行い、それらの結果を表4に示した。
【0057】
実施例5で製造したシソ科植物加工品13はポリフェノールオキシダーゼ活性が0.01で外観は鮮やかな緑色を呈していた。また、耐酸化性も有していた。一方比較例10で製造したシソ科植物加工品14はポリフェノールオキシダーゼ活性が0.1以上であり、概観は緑褐色であった。また、耐酸化性は有しておらず、商品価値のないものであった。
【0058】
(実施例6) 液状スイートバジル加工品
茎、芽部を取り除いた大分産スイートバジルと表5に記した割合で溶解した酵素液を「T.K.ハイビスミックス」に入れ、実施例2と同様に酵素導入を行った後、25℃で2時間攪拌し、酵素分解を行った。この時「T.K.ハイビスミックス」のヘッドスペースは窒素ガス置換を行い、脱酸素状態にした。2時間後、スイートバジルが単細胞化されていることを確認後、篩目0.5mmのメッシュにてろ過し、ろ液を回収した。このろ液を熱交換器にて100℃で45秒間加熱した後ただちに冷却し、シソ科植物加工品15を得た。得られたシソ科植物加工品15の鮮緑度:(−a)×(−a)/b、ポリフェノールオキシダーゼ活性、耐酸化性、単細胞数、風味を評価し、それらの結果を表5に示した。
【0059】
【表5】

【0060】
(実施例7)
熱交換器での加熱を100℃で90秒間加熱する以外は、実施例6と同様にしてシソ科植物加工品16を得た。得られたシソ科植物加工品16の評価を実施例6と同様に行い、それらの結果を表5に示した。
【0061】
(実施例8)
熱交換器での加熱を130℃で45秒間加熱する以外は、実施例6と同様にしてシソ科植物加工品17を得た。得られたシソ科植物加工品17の評価を実施例6と同様に行い、それらの結果を表5に示した。
【0062】
(実施例9)
熱交換器での加熱を130℃で90秒間加熱する以外は、実施例6と同様にしてシソ科植物加工品18を得た。得られたシソ科植物加工品18の評価を実施例6と同様に行い、それらの結果を表5に示した。
【0063】
(比較例11)
熱交換器での加熱を90℃で90秒間加熱する以外は、実施例6と同様にしてシソ科植物加工品19を得た。得られたシソ科植物加工品19の評価を実施例6と同様に行い、それらの結果を表5に示した。
【0064】
(比較例12)
熱交換器での加熱を90℃で120秒間加熱する以外は、実施例6と同様にしてシソ科植物加工品20を得た。得られたシソ科植物加工品20の評価を実施例6と同様に行い、それらの結果を表5に示した。
【0065】
(比較例13)
熱交換器での加熱を130℃で30秒間加熱する以外は、実施例6と同様にしてシソ科植物加工品21を得た。得られたシソ科植物加工品21の評価を実施例6と同様に行い、それらの結果を表5に示した。
【0066】
(比較例14)
熱交換器での加熱を140℃で30秒間加熱する以外は、実施例6と同様にしてシソ科植物加工品22を得た。得られたシソ科植物加工品22の評価を実施例6と同様に行い、それらの結果を表5に示した。
【0067】
(比較例15)
熱交換器での加熱を100℃で120秒間加熱する以外は、実施例6と同様にしてシソ科植物加工品23を得た。得られたシソ科植物加工品23の評価を実施例6と同様に行い、それらの結果を表5に示した。
【0068】
(比較例16)
熱交換器での加熱を140℃で45秒間加熱する以外は、実施例6と同様にしてシソ科植物加工品24を得た。得られたシソ科植物加工品24の評価を実施例6と同様に行い、それらの結果を表5に示した。
【0069】
実施例6〜9で製造したシソ科植物加工品15〜18は、ポリフェノールオキシダーゼ活性がそれぞれ0.1以下で外観は鮮やかな緑色を呈していた。また、耐酸化性も有していた。一方、比較例11〜14で製造したシソ科植物加工品19〜22は、ポリフェノールオキシダーゼ活性がいずれも0.1以上であり、概観は褐色であった。また、耐酸化性は有しておらず商品価値のないものであった。比較例15、16で製造したシソ科植物加工品23、24は、ポリフェノールオキシダーゼ活性は0.1以下であったが、鮮緑度:(−a)×(−a)/bは4以下で淡緑色を呈しており、商品価値のないものであった。
【0070】
(実施例10) 液状スイートバジル加工品
茎、芽部を取り除いた大分産スイートバジルと表6に記した割合で溶解した酵素液「T.K.ハイビスミックス」に入れ、実施例2と同様に酵素導入を行った後、25℃で2時間攪拌し、酵素分解を行った。この時「T.K.ハイビスミックス」のヘッドスペースは窒素ガス置換を行い、脱酸素状態にした。2時間後、スイートバジルが単細胞化されていることを確認後、篩目0.5mmのメッシュにてろ過し、ろ液を回収した。このろ液を熱交換器にて130℃で60秒間加熱した後ただちに25℃まで冷却し、シソ科植物加工品25を得た。得られたシソ科植物加工品25の鮮緑度:(−a)×(−a)/b、ポリフェノールオキシダーゼ活性、単細胞数、風味を評価し、それらの結果を表6に記した。
【0071】
【表6】

【0072】
(比較例17)
茎、芽部を取り除いた大分産スイートバジルと表6に記した割合で溶解した酵素液「T.K.ハイビスミックス」に入れ、実施例2と同様に酵素導入を行った後、25℃で2時間攪拌し酵素分解を行った。この時「T.K.ハイビスミックス」のヘッドスペースは窒素ガス置換を行わず有酸素状態にした。2時間後、スイートバジルが単細胞化されていることを確認後、実施例10と同様にしてシソ科植物加工品26を得た。得られたシソ科植物加工品26の評価を実施例10と同様に行い、それらの結果を表6に示した。
【0073】
(比較例18)
茎、芽部を取り除いた大分産スイートバジルと表6に記した割合で溶解した酵素液に入れ、ヘッドスペースの窒素ガス置換を行い脱酸素状態にした。このとき、減圧徐圧による酵素導入は行わなかった。その後、25℃で攪拌して酵素分解を行った。しかし、「T.K.ハイビスミックス」で10時間攪拌しても完全に単細胞化できなかった。
【0074】
実施例10で製造したシソ科植物加工品25のポリフェノールオキシダーゼ活性は0であり、鮮緑度:(−a)×(−a)/bは7以上と鮮やかな緑色を呈していた。一方比較例17で製造したシソ科植物加工品26のポリフェノールオキシダーゼ活性は0であったが、鮮緑度:(−a)×(−a)/bは3以下で外観は褐色であり、商品価値のないものであった。また比較例18においては、単細胞化が進まず、非常に淡い緑色の水溶液しか得られなかったため、評価は行わなかった。
【0075】
(実施例11) 液状青シソ加工品
茎、芽部を取り除いた愛知産青シソと表7に記した割合で溶解した酵素液を「T.K.ハイビスミックス」に入れ、実施例2と同様に酵素導入を行った後、35℃で2時間攪拌し、酵素分解を行った。この時「T.K.ハイビスミックス」のヘッドスペースは窒素ガス置換を行い、脱酸素状態にした。2時間後、青シソが単細胞化されていることを確認後、篩目0.5mmのメッシュにてろ過し、ろ液を回収した。このろ液を熱交換器にて130℃で60秒間加熱した後ただちに25℃まで冷却し、シソ科植物加工品27を得た。得られたシソ科植物加工品27の鮮緑度:(−a)×(−a)/b、ポリフェノールオキシダーゼ活性、風味を評価し、それらの結果を表7に示した。
【0076】
【表7】

【0077】
(実施例12)
酵素液の希釈水の量が異なること以外は、実施例11と同様にしてシソ科植物加工品28を得た。得られたシソ科植物加工品28の評価を実施例11と同様に行い、それらの結果を表7に示した。
【0078】
(比較例19)
酵素液の希釈水の量が異なること以外は、実施例11と同様にした。しかし酵素分解が困難であり、10時間「T.K.ハイビスミックス」で攪拌しても完全に単細胞化することができなかった。
【0079】
(比較例20)
酵素液の希釈水の量が異なること以外は、実施例11と同様にした。しかし、酵素分解が困難であり10時間「T.K.ハイビスミックス」で攪拌しても完全に単細胞化することができなかった。
【0080】
実施例11、12で製造したシソ科植物加工品27、28のポリフェノールオキシダーゼ活性がそれぞれ0.1以下で外観は鮮やかな緑色を呈していた。一方比較例19、20においては、単細胞化が進まず、非常に淡い緑色の水溶液しか得られなかったため、評価は行わなかった。
【0081】
(実施例13) 液状ローズマリー加工品
大分産ローズマリーと表8に記した割合で溶解した酵素液を「T.K.ハイビスミックス」に入れ、実施例2と同様に酵素導入を行った後、25℃で2時間攪拌し、酵素分解を行った。この時、「T.K.ハイビスミックス」のヘッドスペースは窒素ガス置換を行い、脱酸素状態にした。2時間後、ローズマリーが単細胞化されていることを確認後、篩目0.5mmのメッシュにてろ過し、ろ液を回収した。このろ液を熱交換器にて110℃で60秒間加熱した後ただちに25℃まで冷却し、シソ科植物加工品29を得た。得られたシソ科植物加工品29の鮮緑度:(−a)×(−a)/b、ポリフェノールオキシダーゼ活性、風味を評価し、それらの結果を表8に示した。
【0082】
【表8】

【0083】
(実施例14)
酵素分解を35℃で行うこと以外は、実施例13と同様にしてシソ科植物加工品30を得た。得られたシソ科植物加工品30の評価を実施例13と同様に行い、それらの結果を表8に示した。
【0084】
(比較例21)
酵素分解を5℃で行うこと以外は、実施例13と同様にした。しかし、酵素分解が困難であり、10時間「T.K.ハイビスミックス」で攪拌しても完全に単細胞化することができなかった。
【0085】
(比較例22)
酵素分解を60℃で行うこと以外は、実施例13と同様にした。しかし、酵素分解が困難であり、10時間「T.K.ハイビスミックス」で攪拌しても完全に単細胞化することができなかった。
【0086】
実施例13、14で製造したシソ科植物加工品29、30のポリフェノールオキシダーゼ活性はそれぞれ0.1程度で外観は鮮やかな緑色を呈していた。一方比較例21、22においては、単細胞化が進まず、非常に淡い緑色の水溶液しか得られなかったため、評価は行わなかった。
【0087】
(実施例15) ポタージュスープ評価
実施例2で得られたシソ科植物加工品4を用いて表9の配合に従い、以下のようにしてポタージュスープを作製した。ジューサーミキサーでペースト状にした玉ねぎを牛乳、水でのばし90℃まで加温した。固形スープを加え塩コショウで調味した後、シソ科植物加工品4を加えた。3方パウチに入れ、80℃で30分間加温してポタージュスープを作製し、鮮緑度:(−a)×(−a)/b、風味を評価し、それらの結果を表9に示した。
【0088】
【表9】

【0089】
(比較例23、24)
比較例4、5で得られたシソ科植物加工品5、6を用い、実施例15と同様にしてポタージュスープを作製し(比較例23、24)、得られたポタージュスープの評価を実施例15と同様に行い、それらの結果を表9に示した。
【0090】
シソ科植物加工品4を用いたポタージュスープは鮮やかな緑色であった。風味は4点以上でフレッシュなスイートバジルの良好な風味を呈していた。一方、シソ科植物加工品5、6を用いたポタージュスープは緑褐色や赤褐色になった。また、発酵臭が感じられた。
【0091】
(実施例16) ジェノベーゼソース評価
実施例3で得られたシソ科植物加工品7を用いて表10の配合に従い、以下のようにしてジェノベーゼソースを作製した。松の実、にんにく、パルメザンチーズ、オリーブオイルをフードプロセッサーでペースト状にし、シソ科植物加工品7を加え、塩コショウで調味し、ジェノベーゼソースを作製した。得られたジェノベーゼソースは、−20℃で30日間保存した。ジェノベーゼソースを解凍して鮮緑度:(−a)×(−a)/bを評価し、また解凍したソースを茹でたパスタに絡めて風味を評価し、それらの結果を表10に示した。
【0092】
【表10】

【0093】
(比較例25、26)
比較例6、7で得られたシソ科植物加工品8、9を用い、実施例16と同様にしてジェノベーゼソースを作製し(比較例25、26)、得られたジェノベーゼソースの評価を実施例16と同様に行い、それらの結果を表10に示した。
【0094】
シソ科植物加工品7を用いたジェノベーゼソースは鮮やかな緑色であった。風味は4点以上でフレッシュなスイートバジルの良好な風味を呈していた。一方、シソ科植物加工品8、9を用いたジェノベーゼソースは色褪せたように緑色が薄くなっていた。また、発酵臭が感じられた。
【0095】
(実施例17) マヨネーズソース評価
実施例3で得られたシソ科植物加工品7を用いて表11の配合に従い、キユーピーマヨネーズ、マスタード、シソ科植物加工品を混ぜ合わせマヨネーズソースを作製した。得られたマヨネーズソースを5℃で30日間保存した後、鮮緑度:(−a)×(−a)/b、風味を評価した。それらの評価結果は表11に示した。
【0096】
【表11】

【0097】
(比較例27、28)
比較例6、7で得られたシソ科植物加工品8、9を用い、実施例17と同様にしてマヨネーズソースを作製し(比較例27、28)、得られたマヨネーズソースの評価を実施例17と同様に行い、それらの結果を表11に示した。
【0098】
シソ科植物加工品7を用いたマヨネーズソースは鮮やかな緑色であった。風味は3点以上でフレッシュなスイートバジルの風味を呈していた。一方、シソ科植物加工品8、9を用いたマヨネーズソースは褐色になっていた。また、風味は弱く感じられた。
【0099】
(実施例18) シフォンケーキ評価
実施例4で得られたシソ科植物加工品10を用いて表12の配合に従い、以下のようにしてシフォンケーキを作製した。卵黄、上白糖をホバートミキサー低速でクリーム状になるまで攪拌した。ナタネ油を加え、ホバートミキサー中速で油分が抱き込まれるまで攪拌した。さらに薄力粉、水を加え、ゴムべらで均一になるまで混ぜ合わせ、生地1とした。
【0100】
卵白、上白糖(メレンゲ用)をホバートミキサーで低速1分間、中速1分間、高速3.5分間攪拌し、しっかりとしたメレンゲを作製した。メレンゲ、生地1、シソ科植物加工品10を加え混ぜ合わせ、生地2とした。生地2を型に流し込み、175℃のオーブンで17分間焼成し、シフォンケーキを作製した。得られたシフォンケーキは1/8にカットし、脱酸素剤と一緒に透明パウチに入れ、25℃の照射下で1日間保存した後、鮮緑度:(−a)×(−a)/b、風味を評価し、それらの結果を表12に示した。
【0101】
【表12】

【0102】
(比較例29、30)
比較例8、9で得られたシソ科植物加工品11、12を用い、実施例18と同様にしてシフォンケーキを作製し(比較例29、30)、得られたシフォンケーキの評価を実施例18と同様に行い、それらの結果を表12に示した。
【0103】
シソ科植物加工品10を用いたシフォンケーキはケーキカット面が鮮やかな緑色であった。風味は4点以上でフレッシュなスイートバジルの良好な風味を呈していた。一方、シソ科植物加工品11、12を用いたシフォンケーキのカット面は褐色になっていた。また、風味は弱く感じられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色差計で計測される色度aおよびbから算出される(−a)×(−a)/bが4〜15であり、且つポリフェノールオキシダーゼ活性が0.1unit/2.5mg以下(乾燥重量換算)であるシソ科植物加工品。
【請求項2】
酵素処理により乾燥重量1g当たり1万〜1000万個に単細胞化されている請求項1に記載のシソ科植物加工品。
【請求項3】
ポリフェノールオキシダーゼ活性を有する生の状態のシソ科植物を、脱酸素下で加熱処理してポリフェノールオキシダーゼを失活させることを特徴とするシソ科植物加工品の製造方法。
【請求項4】
生の状態のシソ科植物の茎、芽部を取り除いた部分を原料とすることを特徴とする請求項3に記載のシソ科植物加工品の製造方法。
【請求項5】
加熱処理を100〜130℃で45〜90秒間行うことを特徴とする請求項3又は4に記載のシソ科植物加工品の製造方法。
【請求項6】
加熱処理の前に、生の状態の植物を脱酸素下において酵素分解することを特徴とする請求項3〜5の何れかに記載のシソ科植物加工品の製造方法。
【請求項7】
シソ科植物の重量の0.2〜25倍量加水し、ペクチナーゼを主体とする細胞間物質分解酵素を減圧下酵素導入して酵素分解処理を行う請求項6に記載のシソ科植物加工品の製造方法。
【請求項8】
酵素分解処理温度が10〜50℃である請求項6又は7に記載のシソ科植物加工品の製造方法。
【請求項9】
細胞間物質分解酵素の使用量がシソ科植物100重量部に対して0.01〜1.0重量部である請求項7又は8に記載のシソ科植物加工品の製造方法。
【請求項10】
請求項1又は2に記載のシソ科植物加工品を利用した食品。

【公開番号】特開2010−130985(P2010−130985A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312270(P2008−312270)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】