シトルリン化エピトープに対する抗炎症剤
本発明は、ヒトおよび動物における炎症の治療または予防の分野に関し、様々な炎症状態を治療または予防するための医薬組成物および方法に関する。特に、本発明は、シトルリン関連疾患、好ましくは炎症性疾患のような炎症状態を予防または治療するための組成物および方法に関する。本発明は、炎症状態の治療および予防に使用するための、シトルリン含有エピトープに対する特異的結合分子を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトおよび動物における炎症の治療または予防の分野に属し、様々な炎症状態を治療または予防するための医薬組成物および方法に関する。特に、本発明は、シトルリン関連疾患、好ましくは炎症性疾患、より好ましくは関節リウマチのような炎症性リウマチのような炎症状態を、予防または治療するための組成物および方法に関する。本発明は、炎症性リウマチ、好ましくは関節リウマチのような炎症状態の治療および予防に使用するための、シトルリン含有エピトープに対する、抗体のような特異的結合分子を提供する。
【背景技術】
【0002】
炎症状態は、慢性であろうと急性であろうと、医療業界における重大な問題を突き付ける。簡潔に述べるならば、慢性的な炎症は、活動性炎症、組織破壊および治癒の試行が同時に進行する、持続時間の長い(数週間または数ヶ月の)炎症であると考えられる(Robbins Pathological Basis of Disease by R.S. Cortran, V.Kumar and S.L.Robbins, W.B.Saunders Co., p.75, 1989)。慢性炎症は、急性炎症の発症後に続き得るが、たとえば、持続感染(たとえば、結核、梅毒、真菌症)の結果として、内因性(たとえば、血漿脂質)もしくは外因性(たとえば、シリカ、アスベスト、タバコのタール、手術用縫合糸)の毒素への遷延性の曝露、または体自身の組織に対する自己免疫反応(たとえば、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、乾癬)のような、時間経過とともに進行する潜行性のプロセスとしても生じ得る。
【0003】
炎症性関節炎は、特に高齢者の数が増加した先進国において深刻な健康問題である。たとえば、炎症性関節炎の一種である関節リウマチ(RA)は、世界の人口の1〜2%が侵されている多系統慢性の再発性炎症性疾患である。
【0004】
多くの器官が侵され得るが、RAは、基本的に、侵された関節の破壊および強直を導くこともある慢性滑膜炎症の重度の形態である(Robbins Pathological Basis of Disease, by R.S. Cotran, V.Kumar, and S.L. Robbins, W.B.Saunders Co., 1989)。疾患は、関節隙に拡張する様々な投射を形成する滑膜の顕著な厚化、滑膜ライニング(滑膜細胞増殖)の多層化、白血球細胞(マクロファージ、リンパ球、形質細胞およびリンパ濾胞)による滑膜の炎症(「炎症性滑膜炎」と称される)、ならびに滑膜内の細胞壊死によるフィブリンの沈着によって病理学的に特徴付けられる。この過程の結果として形成された組織はパンヌスと称され、パンヌスは最終的に関節隙を埋めるまで増殖する。パンヌスは、滑膜炎の進展に不可欠である血管新生の過程を通じて、新しい血管の広範なネットワークを発達させる。パンヌス組織の細胞に由来する、消化酵素(マトリックスメタロプロテアーゼ(たとえば、コラゲナーゼ、ストロメリシン))ならびに炎症性プロセスの他の修飾因子(たとえば、過酸化水素、スーパーオキサイド、リソソーム酵素およびアラキドン酸代謝の生産物)の放出は、軟骨組織の進行性破壊を導く。パンヌスは、関節軟骨に侵潤し、びらんおよび軟骨組織の断片化を導く。結果的に、関与する関節について、線維性強直を有する軟骨下骨びらんを生じ、最終的に骨性強直を生じる。
【0005】
RAは自己免疫疾患であり、その上、多くの異なる関節刺激が免疫遺伝学的に感受性である宿主における免疫応答を活性化すると一般的に考えられている。外因性感染性病原体(Epstein-Barrウイルス、風疹ウイルス、サイトメガロウイルス、ヘルペスウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、マイコプラズマなど)と、コラーゲン、プロテオグリカン、改変された免疫グロブリンおよびシトルリン化タンパク質のような翻訳後修飾されたタンパク質などの内因性タンパク質との両者は、不適切な宿主免疫応答を引き起こす病原体として関与している。誘発物質に関わらず、自己免疫は疾患の進行に影響を与える。特に、従来の抗原は、抗原提示細胞(滑膜における、マクロファージまたは樹状細胞)によって摂取され、処理され、Tリンパ球に提示される。T細胞は、細胞性免疫応答をイニシエートし、増殖を刺激し、Bリンパ球の形質細胞への分化を刺激する。最終的に、宿主組織に対する過剰の不適切な免疫応答(たとえば、II型コラーゲンに対する抗体、自己由来のIgGのFc部分に対する抗体(「リウマチ因子」と称する))、および異なるシトルリン化エピトープに対する抗体(抗CCP)が生じる。このことは、さらに免疫応答を増幅し、軟骨組織の破壊を早める。一度このカスケードがイニシエートされれば、軟骨破壊の多数の修飾因子が関節リウマチの進行に関与する。
【0006】
上述の抗CCP抗体は、RAに特異性が高いことが示された。最近の証拠は、これらの抗体についての血清反応陽性である各個人が、既にRAを有しているか、または将来この疾患が進展するであろうことを示す。抗CCP抗体の存在(特に、高力価が存在している場合)は、びらん性疾患の転帰の前兆である(Nijenhuis et al., Clin. Chim. Acta, vol 350, 17-34, 2004)。さらに、抗CCP抗体は、炎症の局所的な部位において産生されることが示された。RA患者に由来する滑膜物質において見出される総IgGに対する抗CCP抗体の割合は、同一患者の血清における当該割合よりも顕著に高いことが明らかである(Masson-Bessiet al., Clin Exp Immunol, vol 119, 544-552, 2000)(Reparon-Schuijt et al., Arthritis Rheum, vol 44、41-47、2001)。
【0007】
滑膜における抗CCP産生形質細胞の存在は、炎症部位におけるCCP特異的なB細胞の抗原駆動型成熟の指標である。抗CCP抗体が一度産生されれば、滑膜におけるシトルリン化タンパク質を有する免疫複合体の形成は、炎症過程の進行を引き起こし得る。これらのデータおよびその他のデータは、抗CCP抗体がRAの疾患症状の少なくとも一部を実際に引き起こすという仮説を支持する。RAの病因における抗CCP抗体の役割は、RA患者におけるBリンパ球減少実験の結果によって支持される(Cambridge et al., Arthritis Rheum, vol48, 2146-2154, 2003)。
【0008】
進行した関節リウマチを有する人々の死亡率は、数種のがんの死亡率を超えている。したがって、治療法は、不可逆的な関節破壊の可能性を減少させるために設計された積極的な早期の薬物療法に移行した。米国リウマチ学会の最近の推奨事項(Arthritis and Rheumatism 39(5): 713-722, 1996)は、診断が確定し、症状が進行中の全ての患者について病態修飾性抗リウマチ薬(DMARD)治療の早期開始を含む。抗がん剤は大半の患者について第1選択療法となり、化学療法薬メトトレキサートが60%〜70%のリウマチ専門医の第1選択薬である。重度疾患では、多くの場合、無期限にこの薬剤による毎週の治療を必要とし、メトトレキサート治療にも関わらず症状が進行する患者(患者の50%以上)には、シクロスポリンおよびアザチオプリン(単独または組み合わせ)のような第2化学療法薬が頻繁に採用される。
【0009】
特に、滑膜が関与する疾患およびシトルリン関連炎症性疾患などの炎症性疾患の病理発生を抑制することができる炎症性疾患の治療または予防のための化合物が、依然として必要である。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、炎症性疾患の治療または予防における使用のためのp15および/またはp17におけるシトルリン化エピトープと特異的に反応する結合分子を提供する。
【0011】
本明細書において、p15およびp17は、ヒトPAD4および/もしくはPAD2脱イミノ化ヒトヒストン2Aおよび/もしくはヒストン4、ならびに/またはヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH3と同定される。
【0012】
また、本発明は、炎症性疾患を治療または予防するための方法であって、p15および/またはp17におけるシトルリン化エピトープと特異的に反応する結合分子を含む、治療上有効な量の抗炎症組成物をそれが必要とされる患者に投与する工程を含む方法を提供する。
【0013】
本発明の組成物および方法は、シトルリン残基に反応する特異的結合分子の薬学的に受容可能な形態を含む。特に、結合分子は、本明細書においてp15およびp17と称されるような2つのポリペプチドにおけるシトルリン化されたエピトープに特異的に反応する。
【0014】
また、本発明は、本明細書において同定されたようなポリペプチドおよび核酸に関する。
【0015】
本発明のこれらの態様および他の態様は、以下の詳細な説明、図面および実施例を参照すれば明らかになるであろう。また、より詳細な具体的手順、装置または組成物を記載した様々な参考文献が本明細書に明記されており、その全体が参照によって組み込まれる。
【0016】
発明の詳細な説明
本発明は、炎症性疾患の治療または予防における使用のための、p15および/またはp17におけるシトルリン化エピトープと特異的に反応する結合分子を提供する。
【0017】
用語「特異的結合分子」は、特異的結合をすることができる分子、好ましくは小分子を示すために本明細書において用いられる。この点において、特異的結合は、分子が選択された標的分子に結合することができるが、同一条件下において標的分子に関連しない他のものには結合しないことを意味する。たとえば、結合分子が、血清アルブミンに結合し、その他、好ましくは血清中に見出される他の全てのタンパク質に、ほとんどまたは全く結合しない場合、血清アルブミンに特異的に結合すると表現する。好ましい特異的結合分子は、抗体である。
【0018】
本明細書において、用語「シトルリンに特異的に反応する」または「シトルリン化エピトープに反応する」または「シトルリンエピトープに反応する」は、特異的結合分子または抗体が、シトルリン残基を含むペプチドのような構造に反応するが、前記抗体が、シトルリン残基の換わりにアルギニン残基を含む同一の構造にほとんど反応しないか、または好ましくは全く反応しないことを意味する。用語ペプチドは、好ましくは人体または動物体に登場するような同一の文脈、好ましくは天然ポリペプチドの文脈において、本明細書に記載されたような特異的結合分子との免疫反応性についての正確な文脈において、シトルリン残基を提示することができる構造として解釈されるべきである。また、シトルリン残基は、細胞の活性化または補体結合のような免疫システムの他の要素を活性化しない、または引き起こさない、天然ポリペプチドの文脈において示されることが好ましい。
【0019】
「特異的結合分子」は分子であってもよく、好ましくは標的化合物に特異的に結合することができる、DNA、RNA、ペプチド、タンパク質ドメイン、タンパク質全体、またはそれらの組み合わせ、もしくはその一部であってもよい。特異的結合分子の好ましい例は、ペプチドまたは抗体である。
【0020】
天然の抗体(免疫グロブリンとしても知られる)は、脊椎動物の血液または他の体液に見出すことができ、細菌およびウイルスのような外来の異物を見分け、中和する免疫系によって使用されるガンマグロブリンタンパク質である。
【0021】
天然の抗体は、通常、基本的な構造ユニット(それぞれ、2つの大きな重鎖および2つの小さな軽鎖)からできており、たとえば、1ユニットを有するモノマー、2ユニットを有するダイマー、または5ユニットを有するペンタマーを形成する。抗体は、B細胞と称される種類の白血球によって生産される。重鎖のいくつかの異なる種類が存在し、異なる抗体をもたらす。抗体は、それらの有する重鎖に基づく異なるアイソタイプに分類できる。異なる役割を行う5種の異なる抗体アイソタイプが哺乳類で知られており、それらが遭遇した外来の異物の異なる種類のそれぞれについて適切な免疫応答を直接に補助する。ラクダ(たとえば、ラマ)およびサメのような数種の動物種は、異常な抗体構造を有し得る。
【0022】
全ての抗体の一般的な構造は非常によく似ているが、タンパク質の先端にある小さな領域は、非常に変化に富んでおり、わずかに異なる先端構造を有する数百万の抗体が存在することを可能にする。この領域は可変領域として知られている。これらの変異体のそれぞれは、抗原として知られる異なる標的に結合することができる。抗体のこの豊かな多様性によって、免疫系は同様に広範な抗原の多様性を認識することが可能となる。
【0023】
抗体によって認識される抗原の独特の部分は、エピトープと称される。これらのエピトープは、生物を構成する異なる数百万の分子中の独特な抗原のみを識別して結合することができる、特異性の高い相互作用でそれらの抗体に結合する。抗体タグによる抗原の認識は、免疫系の他の部分による攻撃のためである。また、抗体は、たとえば、感染症を引き起こす病原体の一部に結合することによって、直接に標的を中和することができる。
【0024】
抗体の多種多様な集団は、異なる抗原結合部位(またはパラトープ)をコードする一組の遺伝子セグメントのランダムな組み合わせ、その後の更なる多様性を生み出す抗体遺伝子のこの領域におけるランダムな突然変異によって作り出される。また、抗体遺伝子は、重鎖の基礎を他のものに変え、抗原特異的可変領域を保持する抗体の異なるアイソタイプを生み出す、クラススイッチングと称される過程において再構成される。このことは、単一抗体が、免疫系のいくつかの異なる部分によって、いくつかの異なるアイソタイプで用いられることを可能にする。
【0025】
本明細書において使用される、用語「抗体(antibodies)」または「抗体(antibody)」は、通常「抗原」と称される標的分子に特異的に結合することができる構造、好ましくはタンパク質またはポリペプチド構造を表す。
【0026】
抗体は、単一鎖抗体、一本鎖可変領域フラグメント(scFvs)、フラグメント抗原結合領域(Fabs)、リコンビナント抗体、モノクローナル抗体、天然抗体またはアプタマーの抗原結合ドメインを含む融合タンパク質、単一ドメイン抗体(sdabs)、VHH抗体としても知られるナノボディ(ラクダ由来の単一ドメイン抗体)、VNARと呼ばれるサメIgNAR由来単一ドメイン抗体フラグメント、アンチカリン、アプタマー(DNAまたはRNA)、およびそれらの活性成分または断片からなる群から選択されてもよい。
【0027】
他の好ましい実施形態において、抗体は、天然の抗体、またはDNAもしくはRNAの形態におけるアプタマーのようなアプタマーの抗原結合ドメインを含む融合タンパク質である。
【0028】
抗体または他の特異的結合分子の文脈において、用語「またはそれらの一部」または「それらの断片」は、抗体または特異的結合分子の特異的な結合部位を構成する、抗体または特異的結合分子の一部を表し、抗体全体または特異的結合分子全体と同一のエピトープに反応することができる、抗体または特異的結合分子の一部と解釈されてもよい。
【0029】
ヒト抗体またはそれらのフラグメントが、本発明の好ましい実施形態である。好ましくは、IgG1重鎖とラムダ軽鎖とを有するIgG1(たとえば、IgG1λ)抗体が有利に用いられてもよい。しかし、カッパまたはラムダ軽鎖に組み合わせた、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgAsec、IgDおよびIgEを含む、他のヒト抗体アイソタイプも本発明に包含される。また、動物に由来する抗体の多様なアイソタイプの全ては、本発明において用いることができる。抗体は、Fab、F(ab’)2、単鎖Fvフラグメント、または単一ドメインVHH、VHもしくはVLを含む、全長抗体または抗体の抗原結合フラグメントとすることができる。
【0030】
用語「シトルリン化エピトープに反応する特異的結合分子」は、ペプチドまたはペプチド核酸またはアプタマーまたは疑似ペプチド構造のような大きな構造の文脈において、シトルリン残基に特異的に反応する特異的結合分子として解釈される。
【0031】
シトルリンは、通常の翻訳の間にタンパク質に組み込まれないアミノ酸であるが、ペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD)によるアルギニン残基の翻訳後修飾によって生成されてもよい。
【0032】
シトルリン化は、アルギニン残基をシトルリン残基に翻訳後変換することであり、ペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD)によって触媒される。ペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD、EC3.5.3.15)酵素は、タンパク質においてアルギニン残基をシトルリン残基に変換することを触媒する。シトルリンについてのtRNAは存在せず、タンパク質中におけるシトルリン残基の存在は、全て翻訳後修飾の結果である。哺乳類(ヒト、マウスおよびラット)における5種のPADアイソタイプ(PAD1〜PAD6、「PAD4」および「PAD5」は同一のアイソタイプに用いられる)は、別個の遺伝子にコードされ、それぞれ同定された(Vossenaar, et al., Bioessays 25, 1106-1118, 2003)。全てのこれらの酵素は、活性についてCa2+の存在に強く依存しており、遊離のL−アルギニンを遊離のL−シトルリンに変換することはできない。遊離のL−アルギニンは、細菌真核生物においては一酸化窒素合成酵素(EC1.14.13.39)によって、または細菌においてはアルギニンデイミナーゼ(EC3.5.3.6)によって、遊離のL−シトルリンに変換することができる。これらの酵素は、Ca2+に依存していない。
【0033】
相同性の高いPAD酵素の間の最も顕著な相違は、それらの組織特異的な発現である。表皮におけるPAD1(同義語として、PADI、PADタイプI)は、角化エンベロープの再組織化のために重要である、ケラチノサイト分化の最終段階の間におけるケラチン繊維のシトルリン化に関与している。表皮におけるシトルリン化の他の部位は毛包であり、PAD3(同義語として、PADIII、PADタイプIII)およびその天然基質であるトリコヒアリンを(THH)を含む。THHは、毛包内毛根鞘細胞および毛包髄質層、ならびにそれほどではないにせよ他の特殊な上皮の髄質層の主要な構造タンパク質である。ごく最近同定されたPADアイソタイプ、PAD6(同義語としてePAD)は、初期胚発生に重要な役割を果たすマウス卵母細胞の細胞シートにおいて見出された。そのヒトオーソログの発現は、卵巣、精巣、末梢血白血球に制限されることが見出された(Chavanas et al., Gene vol 330; 19-27, 2004)。当初、このPADアイソタイプは、ePADと称されたが、他のPADの系統番号に基づいて、このアイソタイプはPAD6(Vossenaar et al., Bioessays vol 25 1106-1118, 2003)に改名された。最も広く発現するアイソタイプであるPAD2(同義語として、PADII、PADタイプII、PAD−H19)は、骨格筋、脳、脾臓、分泌腺およびマクロファージのような多くの異なる組織に存在する。この広範な発現パターンにも関わらず、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)およびビメンチンのみが天然基質として同定されている。多発性硬化症(MS)の患者では、MBPに対する自己免疫応答が発生する。MBPは、ミエリン鞘に豊富なタンパク質であり、そのシトルリン化は中枢神経系の発生中に生じる。ビメンチンのシトルリン化は、カルシウムイオノフォアに誘導される、ヒトおよびマウスにおけるマクロファージのアポトーシスの間に観察され、上述したように、シトルリン化されたビメンチンは、RA特異的な抗Sa自己抗体の標的であることが示された。全て主に細胞質に局在する上述したPADsとは対照的に、PAD4アイソタイプ(同義語として、PADIV、PADタイプIV、HL−60PAD、PAD V、PADタイプV、PADI4)は核内に存在する。PAD4の核局在化シグナルは、タンパク質のN末端領域で見出された。PAD4は、主に末梢血の顆粒球および単球に発現する。核内におけるPAD4の基質は、ヒストンコアタンパク質(H2A、H3およびH4)ならびにリボソームアセンブリ、核細胞質間輸送および中心体の複製に機能する核小体タンパク質であるヌクレオホスミン/B23である。
【0034】
本発明にかかる特異的結合分子は、それぞれ15kDaおよび17kDaであるそれらの分子量によって特徴付けられる2つのポリペプチドである、p15および/またはp17におけるシトルリン化エピトープを対象とする。
【0035】
このような特異的結合分子は、炎症性疾患の治療または予防に特に適していることが見出された。
【0036】
本明細書において用いられる、「炎症性条件」または「炎症性疾患」は、好中球の浮腫および浸潤(たとえば、急性炎症反応)、単核球による組織の浮腫、炎症細胞、結合組織細胞およびそれらの細胞性産物による組織破壊、ならびに結合性組織の置換による修復の試行(たとえば、慢性的な炎症反応)のような血管病変によって特徴付けられる任意の数の状態または疾患を表す。
【0037】
このような状態の代表的な例は、シトルリンに関連する炎症性疾患および自己免疫疾患を含む。シトルリン関連炎症性疾患は、シトルリンが疾患の発症に影響を与える疾患として本明細書において定義される。シトルリンが疾患の発症に影響を与えるか否かは、当分野において利用可能な常用試験を用いて当業者によって容易に決定されてもよい。たとえば、これらの疾患は、罹患した、または疾患に関連する組織におけるシトルリン化タンパク質の異常な量の存在によって特徴付けられてもよい。このことは、ウエスタンブロットまたはELISAのような免疫学的検査によって達成することができ、罹患した組織は抗原として用いられ、その抗原のシトルリン化は本明細書に記載されたような抗シトルリン抗体を用いて検出されてもよい。
【0038】
また、当業者は、罹患患者由来の患部組織と健康な組織とにおける、シトルリンの量および種類を比較するためのマススペック分析のようなプロテオミクスアプリケーションを用いることができる。
【0039】
また、疾患は、ペプチドまたはタンパク質を含むシトルリンに対する免疫応答の存在によって特徴付けられてもよい。これは、T細胞またはB細胞によって媒介される応答のような、体液性または細胞性免疫応答であってもよい。検査のための抗シトルリン抗体は、当分野で記述され、市販されている。
【0040】
したがって、本発明は、シトルリンに関連する炎症性疾患の、治療または予防における使用のための特異的結合分子に関する。
【0041】
このような疾患は、たとえば、関節リウマチおよび変形性関節症、多発性硬化症、乾癬性関節炎、乾癬、アルツハイマー病、自己免疫性肝炎、若年性特発性関節炎、脊椎関節症、ダウン症候群、多系統萎縮症、パーキンソン病、ならびにレビー小体型認知症を含む炎症性関節炎である。したがって、本発明は、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、多発性硬化症、乾癬性関節炎、乾癬、アルツハイマー病、自己免疫性肝炎、若年性特発性関節炎、脊椎関節症、ダウン症候群症候群、多系統萎縮症、パーキンソン病およびレビー小体型認知症からなる群から選択される疾患の治療または予防における使用のための特異的結合分子に関する。
【0042】
特に、本発明は、自己免疫疾患、より具体的には関節リウマチまたは変形性関節症の治療または予防のための特異的結合分子に関する。
【0043】
多発性硬化症またはMSは、ミエリン鞘の自己免疫性破壊によって特徴付けられる中枢神経系の慢性炎症性疾患である。ミエリン鞘の細胞は、約3:1の割合の脂質タンパク質複合体からなる軸索周囲の多重二分子層構造を形成する。2つの主要なタンパク質であるMBPおよびプロテオリピドタンパク質が、タンパク質画分の85%を占める。MBPは、高カチオン性タンパク質であり、ホスファチジルセリンのような負に帯電したリン脂質と強い相互作用を形成することができる。健康な成人におけるMBP分子の約18%では、6個(19個中)のアルギニンがシトルリン化される(Wood et al., J Biol Chem, vol264, 5121-5127, 1989, Wood et al., Ann Neurol, vol40, 18-24, 1996)。残りのMBP分子は、シトルリンを含んでいない。MS患者において、MBP−cit6の割合は全MBPの45%に増加する。MBP−cit6における正の実効電荷(net positive charge)の減少は、MBP分子の部分的なアンフォールディングを引き起こし、リン脂質とのそれらの相互作用を弱める(Boggs et al., J Neurosci Res, vol57, 529-535, 1999, Pritzker et al., Biochemistry, vol39, 5374-5381, 2000)。MBP−cit6は、非シトルリン化MBPよりも迅速に脂質複合体を形成することができるが、形成された複合体は、非シトルリン化MBPによって形成された複合体の充填された密度ほどではなく形成される(Boggs et al., J Neurosci Res, vol57, 529-535, 1999, Beniac et al., J Struct Biol, vol129, 80-95,2000)。MBP−cit6は、非シトルリン化MBPよりも4倍の速さでカテプシンDによって分解される(Cao et al., Biochemistry, vol38, 6157-6163, 1999)。急性劇症のMS(マールブルグ型)のまれなケースでは、MBPの分子の80%が重度にシトルリン化される(MBPcit18)(Wood et al., Ann Neurol, vol40, 18-24, 1996)。重度にアンフォールドされたMBP−cit18は、通常のMBPよりも45倍の速度でカテプシンDによって分解される(Cao et al., Biochemistry, vol38, 6157-6163, 1999)。抗がん剤タキソールの有効成分であるパクリタキセルの臨床試験が、進行中である(O'Connor et al., Ann Neurol, vol46, 470, 1999)。低用量のパクリタキセルは、in vitroにおいてPAD2によるMBPのシトルリン化を抑制することができる(Pritzker et al., Biochim Biophys Acta, vol1388, 154-160, 1998)。パクリタキセルによる治療は、臨床的な症状を和らげ、損傷した鞘の再ミエリン化を誘導し(Moscarello et al., Mult Scler, vol8, 130138, 2002)、脱ミエリン化疾患における候補因子としてPADの潜在的重要性を際立たせた(Moscarello et al., J Neurochem, vol81, 335-343, 2002)。
【0044】
乾癬では、ケラチノサイトが非常に急速に増殖し、約4日間で基底層から表面に移動する。これらの細胞は、厚く、乾燥したパッチまたはプラークに蓄積されるので、皮膚はそれらの細胞を充分に迅速に脱落させることができない。通常のケラチノサイトでは、ケラチンK1は、末端の分化の間にPAD1によってシトルリン化される。この過程は、表皮における通常の角化のプロセスに不可欠である、ケラチンフィラメントをコンパクト化する原因となる。乾癬性高増殖性プラークにおけるケラチノサイトは、シトルリン化ケラチンK1を含まない(Ishida-Yamamoto et al., J Invest Dermatol, vol114, 701-705, 2000)。細胞増殖の増加がPADによる適切なシトルリン化を予防するか、またはPADの不活性化がケラチノサイトの過剰増殖および蓄積を可能にするのかは明らかではない。メカニズムは不明であるが、乾癬表皮における異常なシトルリン化は明らかにPAD1に関する。
【0045】
好ましい実施形態では、本発明にかかる組成物は、水溶液、ゲル、ヒドロゲル、フィルム、ペースト、クリーム、スプレー、軟膏またはラップからなる群から選択される形態である。さらなる実施形態において、上述の方法は、関節内、腹膜内、腹腔内、局所、直腸、静脈内、経口、眼または腫瘍の周辺部の切除から選択される経路によって、本明細書に記載された組成物の投与のために用いられる。
【0046】
特定の実施形態において、薬学的に許容される担体は、共溶媒溶液、リポソーム、ミセル、液晶、ナノ結晶、ナノ粒子、エマルジョン、微粒子、微小球、ナノスフェア、ナノカプセル、ポリマーまたはポリマー担体、界面活性剤、懸濁化剤、シクロデキストリンまたはアルブミンのような吸着分子などの錯化剤、表面活性粒子およびキレート剤からなる群から選択される少なくとも1つの担体を含む。さらなる実施形態では、多糖類は、ヒアルロン酸およびその誘導体、デキストランおよびその誘導体、セルロースおよびその誘導体(たとえば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、コハク酸酢酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、キトサンおよびその誘導体、[ベータ]−グルカン、アラビノキシラン、カラギーナン、ペクチン、グリコーゲン、フコイダン、コンドロイチン、デルマタン、ヘパラン、ヘパリン、ペントサン、ケラタン、アルギン酸塩、シクロデキストリンならびにそれらのエステルおよび硫酸塩を含む塩および誘導体を含む。
【0047】
さらに別の態様において、本発明にかかる方法は、本発明にかかる組成物を標的部位、特に滑膜関節に送達することを含む。
【0048】
本発明のある特定の実施例では、特異的結合分子は、p15および/またはp17に結合するモノクローナル抗体である、RhmAb2.102、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111、RhmAb2.112およびRhmAb22.101に競合する。
【0049】
これらの抗体は、それらの重鎖および軽鎖の一次アミノ酸配列によって本明細書に開示される。表10を参照。
【0050】
【表10】
本明細書に開示されたようなモノクローナル抗体と競合する結合分子または抗体は、通常の手順によって選択されてもよい。要するに、本明細書に開示されたような抗原が固体支持体上に固定化されるELISAのような結合分析が、開発されてもよい。本明細書に開示されるようなモノクローナル抗体は、標識されてもよく、固定化された抗原へのそれらの結合の妨害は、通常の分析によって容易に決定されてもよい。これらの方法およびさらに洗練された他の方法が、当業者に知られており、通常の研究室で規定通りに行うことができる。
【0051】
特に、分析は、固体支持体上に固定化された配列番号21、配列番号24、配列番号26、配列番号37および配列番号38にかかる抗原性タンパク質の全てを用いて容易に開発されてもよい。RhmAb2.102、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111、RhmAb2.112およびRmmAb22.101からなる群から選択されたモノクローナル抗体は、標識されてもよく、試験抗体の存在下および非存在下において固定化抗原と接触させられてもよい。試験抗体が、結合を妨害する場合、すなわち標識された抗体で得られるいずれかのシグナルを低下させる場合、試験抗体は、標識された抗体の結合と競合すると結論付けてもよい。よって、そのような競合抗体は、本発明の方法における使用のために好適であろう。
【0052】
したがって、本発明は、配列番号21、配列番号24、配列番号26、配列番号37および配列番号38からなる群から選択されるペプチドに特異的に反応する、関節リウマチの治療または予防における使用のための抗体に関する。
【0053】
モノクローナル抗体RhmAb2.101の可変領域の一次mRNA配列が公開され、表1に示すような受入番号でEMBLデータベースに供託された。モノクローナル抗体RhmAb2.102、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112の可変領域の一次配列は、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号18、配列番号39、配列番号20、配列番号41、配列番号40、配列番号19、配列番号43および配列番号42として本明細書において開示される。
【0054】
マウスモノクローナル抗体であるRmm22.101およびRmmAb22.102は、DSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH, Inhoffenstra7B, 38124 Braunschweig, GERMANY)に供託されたハイブリドーマに由来し、受け入れられたDSMZ供託番号は、それぞれACC3031およびACC3032であった。シークエンス後、それらは、配列番号44および配列番号45に示される同一のDNA配列を有することが明らかになった。
【0055】
したがって、本発明は、配列番号18、配列番号17、配列番号20、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号19、配列番号43、配列番号42、配列番号44および配列番号45からなる群から選択される、可変重鎖または軽鎖を含むポリペプチドにも関する。また、本発明は、配列番号18、配列番号17、配列番号20、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号19、配列番号43、配列番号42、配列番号44および配列番号45からなる群から選択されるポリペプチドをコードする核酸に関する。また、本発明は、Rmm22.101およびRmmAb22.102に存在するような可変重鎖および軽鎖を含むポリペプチドに関する。
【0056】
また、本発明は、配列番号44および配列番号45に示される、RmmAb22.101およびRmmAb22.102に存在するような可変重鎖および軽鎖にかかるポリペプチドをコードする核酸に関する。
【0057】
別の好ましい実施形態では、特異的結合分子は、モノクローナル抗体RhmAb2.102、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112、RmmAb22.101、ならびにRmmAb22.102からなる群から選択される抗体である。
【0058】
別の好ましい実施形態では、特異的結合分子は、モノクローナル抗体RhmAb2.102、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112、RmmAb22.101、ならびにRmmAb22.102からなる群から選択される抗体に由来する、または前記モノクローナル抗体から得られるVHおよび/またはVLドメインを含む。
【0059】
この文脈において、用語「由来する」または「得られる」は、VHおよび/またはVLドメインの一次構造が本明細書に開示されるタンパク質および核酸配列から決定されてもよく、たとえばマウスVHまたはVLドメインを示すヒト抗体文脈のような、異なる文脈において複製され、再配列されてもよいことを意味する。より詳細には、この点について、用語「由来する」または「得られる」は、特定の抗体におけるVHおよび/またはVLドメインの特異的結合特性に関する必須の残基が同定され、これらの必須の残基またはそれらの構造的ホモログが他のペプチドの文脈に移されることを意味する。
【0060】
本発明にかかる特異的結合分子は、2つの方法で本質的に作り出されてもよい。第1に、それらは本明細書に示されるような、抗体およびその配列に由来してもよい。抗体の反応性は、部位特異的突然変異誘発、chainシャフリング、sexual PCR法、または当業者に知られる抗体の導出および最適化のための他の手段によって改良されてもよい。代替的に、特異的結合分子、特に抗体は、本明細書に記載されたような任意の特異的反応性エピトープ、特に、脱イミノ化ヒストン2A、ペプチド1(配列番号21)および他の特異的反応性ペプチドにパニングすることによって得られてもよい。
【0061】
当業者は、たとえば、以下の実施例に記載されたように、cDNAまたはゲノム配列をクローニングまたは作り出すために本明細書に記載された配列を用いてもよい。pcDNA3(In Vitrogen)またはそれらの誘導体のような適切な真核生物の発現ベクターにおけるこれらの配列のクローニング、続いて適切な軽鎖と重鎖との組み合せを含むベクターを用いた哺乳類細胞(たとえば、CHO細胞)のトランスフェクションは、記載された抗体である、RhmAb2.102、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112、RmmAb22.101、ならびにRmmAb22.102の発現および分泌をもたらすであろう。また、マウスモノクローナル抗体RmmAb22.101およびRmmAb22.102は、供託されたような、それぞれのハイブリドーマ細胞株(DSMZ番号ACC3031およびACC3032)によって、直接発現されてもよく、分泌されてもよい。
【0062】
また、当業者は、抗体配列の特異的結合ドメインを用いて本明細書に記載されたような特異的結合分子の類似体を作製し、融合タンパク質のようなポリペプチドなどの異なる状況でそれらを発現させてもよい。このことは、当分野でよく知られている。
【0063】
ヒトおよびマウスのリコンビナント抗シトルリンモノクローナル抗体は、実施例1、13および14に記載されたようにして得られた。モノクローナル抗体重鎖RhmAb2.102、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112は、マウスリーダー配列(配列番号12)およびヒトIgG1Fc領域(配列番号14)によって得られた。モノクローナル抗体軽鎖RhmAb2.102、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.111およびRhmAb2.112は、マウスリーダー配列(配列番号12)およびヒトラムダ定常領域(配列番号16)によって得られた。モノクローナル抗体RhmAb2.110は、マウスリーダー配列(配列番号12)およびヒトカッパ定常領域(配列番号11)によって得られた。
【0064】
マウス抗シトルリンペプチドモノクローナル抗体であるRmmAb13.101、RmmAb13.102およびRmmAb13.103は、商業的供給源から入手した(ModiQuest Research BV Nijmegen、The Netherlands、カタログ番号、MQ13.101、MQ13.102およびMQ13.103)。
【0065】
抗シトルリン抗体は、実験モデルにおいて試験され、炎症は、マウスに抗コラーゲン抗体を注入することによって誘導された。このモデルは、コラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)として知られている(Nandakumar and Holmdahl, J Immunol Methods, vol304, 126-136, 2005)。抗コラーゲン抗体は、商業的供給源(ModiQuest Research BV Nijmegen、The Netherlands、カタログ番号、MQ18.101)から入手した。
【0066】
マウス抗シトルリンモノクローナル抗体である、RmmAb13.101、RmmAb13.102およびRmmAb13.103は、Kuhnら(J.Clin. Invest, vol116, 961-871, 2006)、およびHillら(J Exp Med, vol 205, 967-979, 2008)によっても記載されたようにコラーゲン抗体に誘導される関節炎の重症度を増すことが確認された。このことは、図1aおよび1bに示す。
【0067】
さらに、ヒト患者におけるいくつかの研究は、シトルリン化エピトープに対する抗体がRAの発症を増加させることを示す(Masson-Bessiet al., J.immunol, vol166, 4177-4184, 2001、Vossenaar and van Venrooij, Arthritis Res Ther, vol6, 107-111, 2004)。このことは、同じ実験の「平均関節炎スコア」および「関節炎の発症率」をそれぞれ示す、図1aおよびbに示される。
【0068】
しかし、驚くべきことに、ヒトモノクローナル抗体RhmAb2.102は、CAIAモデル実験における関節炎の臨床症状を顕著に軽減させた。
【0069】
RhmAb2.102で得られた結果は、図1cおよび1dに示される。RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112で得られた結果は、図9に示されるように、RhmAb2.102に比較してさらに優れていた。
【0070】
ヒトモノクローナル抗体であるRhmAb2.101は、適用された用量において、関節炎の臨床症状に全く効果を有しなかった。市販の抗体であるRhmAb2.201は、本実験において不適切な抗体のコントロールとして用いられる(ModiQuest Research B.V., カタログ番号、MQR2.201)。この抗体は、シトルリン化エピトープを認識しない。
【0071】
また、同一の動物実験が、ヒト抗体RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112と同様のエピトープ集団を認識するマウスモノクローナル抗体である、RmmAb22.101およびRmmAb22.102を用いて行われた。
【0072】
ヒト抗体RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112と同様の結果が、CAIA動物実験において得られた。マウスモノクローナル抗体RmmAb22.101およびRmmAb22.102は、関節炎の臨床症状を消失させた(図10)。
【0073】
図1eおよび1fは、RhmAb2.102のための臨床用量を評価した独立のCAIA実験を示す。最大の抑制をもたらした最低用量は、0.5mgAb/マウスであり、これは腹腔内注入における28mg/kgに相当する。
【0074】
これらの実験から、RhmAb2.102、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112、RmmAb22.101、ならびにRmmAb22.102からなる群から選択されるモノクローナル抗体によって認識される特異的エピトープは、炎症性疾患の治療または予防に重要な役割を果たすと結論付けられる。したがって、これらのエピトープの特異的遮蔽は、特に関節リウマチのような炎症性疾患の効果的な治療となる可能性がある。
【0075】
これらのモノクローナル抗体によって認識される抗原(antigen)または抗原(antigens)をさらに解析するために、それらは、実施例3に記載されたように、ペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD酵素)を用いて脱イミノ化された細胞抽出物に対するそれらの反応性について試験された。hPAD2またはhPAD4をトランスフェクトされ、翻訳後に脱イミノ化されたCOS−1ライセートを含むウエスタンブロットは、モノクローナル抗体であるRhmAb2.101およびRhmAb2.102とともにインキュベートされた。RhmAb2.102とともにインキュベートされた細長い一片(strip)のみが、約15および17キロダルトンの分子量を有するタンパク質の二量体に反応を示した。
【0076】
WO2004/078098は、T細胞の活性化を阻害するための、シトルリン化ペプチド/MHCクラスII複合体に対する特異的な抗体を開示している。これらの抗体は、分離されたペプチドまたはMHCクラスII分子に結合しないが、ペプチドとMHCクラスII分子との複合体にのみに結合する。本明細書において開示された抗体は、本明細書に記載されたような個々のペプチドおよびタンパク質を認識するので、WO2004/078098に記載された抗体とは異なる。さらに、ペプチドとMHCクラスII分子との間の複合体はイムノブロットの手順において用いられるSDSゲルの還元条件において全く残存することができないので、抗体は、ペプチドとMHCクラスII分子との間で複合体を形成することができないウエスタンブロットにおいてポリペプチドを認識する。したがって、本明細書に開示されたような結合分子によって認識されるエピトープは、WO2004/078098に開示された抗体とは異なる。さらに、本明細書に記載されたような抗体は、ペプチドとMHCクラスII分子との複合体に特異的に反応しない。
【0077】
上述された実験および考察は、炎症性疾患の臨床症状を防ぐための能力と、p15およびp17におけるシトルリン化エピトープの反応性との間に明確な相関関係があるという結論に我々を導いた。
【0078】
実施例5に詳述したように、ヒトモノクローナル抗体RhmAb2.101およびRhmAb2.102を免疫沈降実験において用いた場合も同様のデータが得られた。
【0079】
ヒトPAD2およびPAD4の両者による脱イミノ化COS−1ライセートにおける、RhmAb2.102を用いた免疫沈降は、顕著なp15およびp17タンパク質のバンドを示した。
【0080】
したがって、p15およびp17タンパク質の認識強度は、これらの抗体の治療特性に深く関連していると思われる(図1a〜d)。
【0081】
抗体が、p15またはp17に反応するか否かは、実施例4および5で詳述されたように、免疫沈降またはウエスタンブロット分析を行うことによって容易に確立されてもよい。また、RhmAb2.102、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112、RmmAb22.101、ならびにRmmAb22.102を用いる競合実験は、脱イミノ化COS−1ライセートを含むウエスタンブロット、またはウエスタンブロットもしくはELISAにおける精製された脱イミノ化p15および/もしくはp17タンパク質を用いて行われてもよい。
【0082】
タンパク質p15およびp17は、実施例6に詳述されたように、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化時間飛行質量分析法(MALDI−TOF MS)によってさらに特徴付けられる。アフリカミドリザルのゲノムは完全に配列決定されていないので、我々は、MALDI−TOF MSを用いて見出されたペプチドと相同である他の全ての哺乳類ゲノムデータベースをスクリーニングした。高い相同性を有するタンパク質は、ヒストンであることが判明した。このことは、表3(実施例6)に示される。
【0083】
したがって、本発明は、炎症性疾患の治療または予防における使用のための、ヒストンにおけるシトルリン化エピトープに特異的に反応する結合分子にも関する。
【0084】
PADの酵素作用によるヒストンのシトルリン化は十分に実証されているので、シトルリン化ヒストンはin vitroにおいて非常に容易に作製されてもよい。このため、これらのシトルリン化ヒストンは、シトルリン化p15およびp17、すなわちヒストンにおけるエピトープに反応する、ペプチドおよび抗体のような他の特異的結合分子をスクリーニングおよび選択するための酵素結合アッセイにおける基質として用いられてもよい。好ましくは、特異的結合分子は、p15および/またはp17への結合について、抗体RhmAb2.102、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112、RmmAb22.101、ならびにRmmAb22.102に競合するものから選択される。
【0085】
この文書およびその特許請求の範囲において、動詞「含む」およびその語形変化は、以下に続く語が含まれる項目を意味するための非限定的な意味で用いられるが、具体的に記載されていない項目が除外されるものではない。また、不定冠詞「a」または「an」による要素表現は、文脈上明確に1つおよび1つの要素のみが存在することが要求される場合を除き、1つ以上の要素が存在している可能性を除外するものではない。このため、不定冠詞は、「a」または「an」は通常「少なくとも1つの」を意味する。
【0086】
脱イミノ化ヒストンまたはヒストンのいずれがRhmAb2.102、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112、RmmAb22.101、ならびにRmmAb22.102の治療効果に関与するかをさらに解析するために、市販のヒストン(H1、H2A、H2B、H3およびH4)をヒトペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD、EC3.5.3.15)酵素(huPAD2またはhuPAD4)で脱イミノ化した。脱イミノ化ヒストンと、脱イミノ化されていないヒストンとを、96ウェルELISAプレートに塗布し、RhmAb2.101およびRhmAb2.102の連続希釈液とともにインキュベートした。結果を、表6および図2に示す。
【0087】
図2に示される結果から、脱イミノ化ヒストン2A、ヒストン3およびヒストン4は、抗体医薬であるRhmAb2.102によって認識されるが、RhmAb2.101によって認識されず、または顕著に低い親和性であった(図2a、2b)。
【0088】
さらに、これらの結果は、RhmAb2.102と、RhmAb2.101との間の親和性におけるこの相違が、ヒトPAD2および/またはPAD4脱イミノ化H2Aと、ヒトPAD4脱イミノ化ヒストン3と、ヒトPAD4および/またはPAD2脱イミノ化ヒストン4とについて最も大きいことを示す。
【0089】
これらのデータは、RhmAb2.102が関節炎の臨床症状を完全に消滅させるが、RhmAb2.101が関節炎の臨床症状に全く効果がない、CAIAモデル実験における関節炎の臨床症状におけるこれらの抗体の効果とよく相関する(図1cおよび図1d)。
【0090】
したがって、我々は、H2A/p4およびH2A/p2またはその構造的模擬体における脱イミノ化エピトープは、RAの炎症カスケードに重要な役割を果たしていることを示した。H3/p2、H4/p2およびH4/p4における脱イミノ化エピトープについても同様である。なぜなら、RhmAb2.102は、RhmAb2.101に比較してこれらのヒストンに対する高い親和性を示すためである(図2a、2b)。
【0091】
模擬体は、たとえば、等価な活性の許容程度を有する分子であり、この場合、RhmAb2.101に比較してRhmAb2.102によって高い親和性で認識されるものを含む。
【0092】
したがって、本発明は、ヒトPAD4もしくはヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストン2Aもしくはヒストン4、またはヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH3におけるシトルリン化エピトープに反応する、上述したような特異的結合分子に関する。
【0093】
RhmAb2.102によって認識される、H2Aにおける正確なシトルリン化エピトープをさらに特定するために、ヒストン2Aの潜在的な脱イミノ化部位を含む、表4に示されるようなビオチン標識化ペプチドを合成した。これらのペプチドを、96ウェルニュートラアビジンELISAプレートに塗布し、RhmAb2.101およびRhmAb2.102の連続希釈液とともにインキュベートした。結果を図3に示す。
【0094】
【表6A】
【0095】
【表6B】
【0096】
【表7】
【0097】
【表8】
ペプチド1(AAASGXGKQGGK:配列番号21)は、抗体医薬であるRhmAb2.102によって認識されるが、RhmAb2.101によっては認識されないことが観察された(表4および図3a、3b)。ペプチド4および6における脱イミノ化エピトープについても同じことが当てはまる(表4)。なぜなら、RhmAb2.102は、RhmAb2.101よりも、これらのペプチドに対する高い親和性を示すためである(図3a、3b)。我々は、それとともに、ペプチド1、4および6における、脱イミノ化エピトープまたはそれらの構造的等価物もしくは模擬体がRAの炎症カスケードに重要な役割を果たしていることを示した。この抗体の認識パターンは、H2A/p4およびH2A/p2の認識パターンに非常に似ている。したがって、我々は、本発明にかかる特異的結合分子は、ペプチド1、4および6(それぞれ、配列番号21、配列番号24および配列番号26)に対するそれらの反応性によって定義されてもよいと結論付けた。これらの各シトルリン含有ペプチドもしくはそれらの誘導体、そのような個々のペプチドもしくはそのようなペプチドの組み合わせ、または1以上のそのようなペプチド配列を含む構造体は、本発明にかかる抗体のような特異的結合分子を作り出すために個々に用いられてもよい。そのうえ、そのような抗体は、適した反応性について本明細書に開示されたような、任意の他の抗原に対して選択されてもよい。
【0098】
【表4】
ビオチン標識され、シトルリンを含む、フィブリノゲンおよびビメンチンペプチド(表5)についても、抗体医薬との反応性について調べた。ペプチドを96ウェルニュートラアビジン−ELISAプレート上に塗布した。続いて、RhmAb2.101、RhmAb2.102の連続希釈液を塗布されたプレートに添加した。結果を表8および図4に示す。
【0099】
【表5】
マウスフィブリノゲンβペプチド(配列番号37)が、RhmAb2.101およびRhmAb2.102によって認識されることが観察された(図4a)。RhmAb2.102は、RhmAb2.101と比較して高い親和性を示した(図4a、4b)。さらに、RhmAb2.102のみが、マウスビメンチンペプチドを認識した(実施例9)。上述したペプチド以外でも、msFibβ(配列番号37)およびmsVim(配列番号38)ペプチドにおける脱イミノ化エピトープがRAの炎症カスケードに重要な役割を果たしている可能性が非常に高い。しかし、それとともに、我々の抗体医薬の抗炎症作用における重要な役割を果たす上で、フィブリノゲンおよびビメンチンにおける他のエピトープも除外されない。
【0100】
したがって、本発明は、ペプチドmsFibβまたはmsVim(配列番号37または配列番号38)におけるエピトープに特異的に反応する、上述したような特異的結合分子、およびそれらの使用にも関する。
【0101】
また、我々は、シトルリン化エピトープが炎症組織で新たに現れることを示した。関節リウマチの実験用マウスモデルにおいて、我々は、ヒトモノクローナル抗体102(RhmAb2.102)を用いて、罹患マウスの炎症を起こした前足からシトルリン化ペプチドを免疫沈降可能であることを示すことができた。
【0102】
したがって、通常のCAIA実験を、0日目に8つの抗コラーゲン抗体(2.8mg/マウス)の混合物を腹腔内注入したマウス(グループあたり3匹)において行った。3日後、マウスに25μgのLPSを含む別の腹腔内注入を行った。採点は上述したように行った。この実験の間、毎日1グループのマウスを犠牲し、足をウエスタンブロット解析および免疫組織化学的手法によってシトルリンの存在について分析した。
【0103】
各グループのマウスについて前足を集めて抽出した。免疫沈降(IP)を、IP毎に20マイクログラムのRhmAb2.102を用いてこれらの抽出を行った。沈殿物について、SDS−PAGE電気泳動を行い、ウエスタンブロット法によってニトロセルロース膜に転写した。前記ブロットを、第1に全タンパク質を検出するためにポンソーSで染色した。ポンソーS染色は、各IPについて同量の抗体が用いられたことを確かめるために行われる。明白な抗体の重鎖および軽鎖が同量で観察できた。
【0104】
続いて、ブロット上に存在するシトルリン残基を、Senshuらに従って化学的に修飾した(Senshu et al, Anal Biochem 203, 94〜100, 1992)。化学的修飾は、その後、シトルリン残基の化学修飾を認識する抗体を用いて可視化されることができる(Senshu et al, Anal Biochem 203, 94〜100, 1992)。脱イミノ化フィブリノゲンは、この実験においてポジティブコントロールとして用いられた。これらの実験のネガティブコントロールとして、抽出物を含まない免疫沈降を用いた。
【0105】
4日目からは、50、15および17キロダルトンの分子量を有するタンパク質に対応する位置のブロット上に顕著なバンドが現れた。これらのバンドは、5日目により顕著になり、6日目に最も濃くなった。
【0106】
通常の関節炎スコアを有するマウスにおける、実験での関節炎の発症率は100%であり、6日目に5+に達した(図5Aおよび5B)。沈殿するタンパク質の量は、時間経過にともなって増加し、4日目〜6日目に可視化される。RhmAb2.102のシトルリン特異性および抗化学修飾化シトルリン抗体を用いて得られたブロットにおけるシグナルの存在に基づいて、我々は、CAIAにさらされたマウスが、それらの炎症化関節において検出可能なシトルリン量を有すると結論付けることができる。
【0107】
上述されたCAIA実験において、マウスの足における炎症が、未だ存在しないか、非常に軽度のときに、抗シトルリン抗体を抗コラーゲン抗体注入後3日目に注入した。このことは、臨床症状の発生を予防したので、炎症の治療、特に予防処置において有用である。
【0108】
したがって、我々は、RhmAb2.102も一度生じた臨床症状を治すことができるのかについて実験を必要とした。このことは、全てのマウスの四足全ての平均関節炎スコアが約4の任意スコアに達した抗コラーゲン注射後7日目に動物を処置することによって行った。図6Aおよび6Bに示されるように、RhmAb2.102は、観察される腫脹を消滅させるのではなく、存在する炎症/腫脹を安定させた。動物を、偽薬およびRhmAb2.102で処置したマウスの間において炎症スコアが同程度であった後である35日目までの間追跡調査した(図6Bおよび実施例10)。図6Aは、各群の四足の全ての平均炎症スコアを示し、一方図6Bは、35日目において組織学的分析に用いられた動物の右後足の平均炎症スコアを示す。
【0109】
7日目におけるRhmAb2.102処置が、永久的な関節の損傷からマウスを保護することができるか否かについて調べるために、全ての動物における右後足の組織学的検査を行った(図7)。図7Aは、実験35日目における実験群の間の右後足の肉眼で確認できる炎症が類似していたことを示す。しかし、最も驚くべきことに、関節びらんについての既知パラメータの全てが低下した。RhmAb2.102を用いて7日目に処置された実験群において、炎症細胞の流入(D)、軟骨びらん(B)、軟骨PGの喪失(E)、軟骨細胞死(F)および骨のびらん(C)のスコアの著しい低下が観察された場合、RhmAb2.102は、炎症の間の関節損傷を予防することに関して強力な治療可能性を秘めていることが示される(実施例10)。したがって、本発明は、そのような処置を必要とする患者に対して、本明細書に記載されたような結合分子を投与することによって、関節の損傷を予防または治療するための方法に関する。
【0110】
さらに、5日目、6日目および7日目において、RhmAb2.102処置の各治療効果を調べるためにCAIA実験を行った(図8)。この実験において、RhmAb2.102は、炎症部位に迅速に抗体を送達するために静脈内に注入された。この実験には、3日目に予防処置を施した群およびコントロール群が含められた。実験手順は、実施例10のように行った。唯一の違いとして、3日目、5日目および6日目にマウスあたり1mgのRhmAb2.102を注入した。予期されたように、3日目におけるRhmAb2.102は、炎症反応を抑制した。5日目、6日目および7日目におけるRhmAb2.102の静脈内注入によるマウスの処置は、図6にも見られるように炎症を安定させた(図8)。炎症の徴候は減少しなかったが、関節びらんの全てのパラメータが低下したことは注目に値する。このことは、関節びらんと、炎症とが、別々に処置されてもよい2つの別の実体であることを示す。
【0111】
RhmAb2.102に優先的に結合する他の脱イミノ化タンパク質を質量分析によって同定した。さらに、RhmAb2.102に優先的に結合するが、RhmAb2.101に結合しないか、またはあまり結合しない脱イミノ化タンパク質も、追加の質量分析によって同定した。ヒトPAD4脱イミノ化ヒト胚性腎細胞(HEK293細胞)ライセートを、RhmAb2.101またはRhmAb2.102で免疫沈降し(実施例11)、high throughput nano-LC system coupled to an advanced, high-performance LTQ Fourier Transform Ion Cyclotron Resonance Mass spectrometer (nLC LTQ FTMS ULTRA)を行った(実施例12)。Exponentially Modified Protein Abundace Index (emPAI)と組み合わせた、その超高質量分解能、質量精度および感度の算出は、RhmAb2.102に(優先的に)結合する脱イミノ化タンパク質を同定することを可能にする。このことは、表7(実施例11および12)に示される。
【0112】
このため、本発明は、表7に示されるような任意のタンパク質またはポリペプチドに特異的に反応する、炎症性疾患の予防または治療における使用のための結合分子にも関する。
【0113】
要約すると、我々は、p15、p17からなる群から選択される分子におけるエピトープ、具体的には、ヒトPAD4および/またはPAD2脱イミノ化ヒトヒストン2Aにおけるシトルリン化エピトープ、ヒトPAD4脱イミノ化ヒトヒストン4、ヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH4、ヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH3、または表9のタンパク質からなる群から選択されるタンパク質におけるシトルリン化エピトープ、より具体的には、配列番号21、配列番号24、配列番号26、配列番号37および配列番号38にかかるペプチドに特異的に反応する、本明細書に明記されたような炎症性疾患の治療または予防における使用のための結合分子を本明細書に示した。所定の結合分子が、上述された分子に特異的に反応しているか否かは、p15もしくはp17におけるエピトープ、または上述された任意のシトルリン化エピトープへの結合について、RhmAb2.102、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112、RmmAb22.101、ならびにRmmAb22.102からなる群から選択される抗体と競合する結合分子の能力を分析することによって容易に決定されてもよい。
【0114】
本発明にかかる結合組成物の効果を示したことで、炎症性疾患は免疫応答を誘発することによっても治療または予防されてもよく、本発明にかかる特異的結合分子は患者自身の体において(in vivo)作り出されてもよいことが当業者に明らかである。このような免疫応答は、炎症性疾患の発症を防ぐため(予防、予防ワクチン)、または炎症性疾患の転帰を改善もしくは軽減、すなわち治療するために発生させられてもよい。
【0115】
したがって、本発明は、in vivoにおける免疫応答を誘発することによって炎症性疾患を予防または治療するための方法にも関し、p15、p17におけるシトルリン化エピトープ、ヒトPAD4および/またはPAD2脱イミノ化ヒトヒストン2Aにおけるシトルリン化エピトープ、ヒトPAD4および/またはPAD2脱イミノ化ヒトヒストン4、ヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH3におけるシトルリン化エピトープ、ならびに配列番号21、配列番号24、配列番号26、配列番号37および配列番号38にかかるペプチドからなる群から選択されるエピトープに反応する特異的結合分子が作り出される。
【0116】
本発明にかかるワクチンまたは治療は、本発明にかかる結合分子に特異的に反応するシトルリン化エピトープを効果的に含んでもよい。より詳細には、シトルリン化エピトープは、ヒトPAD4および/もしくはPAD2脱イミノ化ヒトヒストン2A、ヒトPAD4および/もしくはPAD2脱イミノ化ヒトヒストン4、ヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH3、または配列番号21、配列番号24、配列番号26、配列番号37および配列番号38からなる群から選択されるペプチドにおける、シトルリン化エピトープであってもよい。
【0117】
したがって、多数のシトルリン関連炎症性疾患が、治療または予防されてもよい。このため、本発明は、上述されたような方法にも関し、前記炎症性疾患は、自己免疫疾患、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、多発性硬化症、乾癬性関節炎、乾癬、アルツハイマー病、自己免疫性肝炎、若年性特発性関節炎、脊椎関節症、ダウン症候群、多系統萎縮症、パーキンソン病およびレビー小体型認知症からなる群から選択される。関節リウマチなどの自己免疫疾患の予防または治療が特に好ましい。
【0118】
本発明の実施形態は、in vivoにおける免疫応答に関するので、好ましい特異的結合分子は抗体である。
【0119】
当業者は、本発明において抗体を使用することがT細胞活性化または補体活性化のような免疫システムを活性化させない、または完全には活性化させないという利点があるという事実に気付くであろう。したがって、本発明がヒトに実行される場合、ヒトIgG4またはIgG2のFc部分を用いることが好ましい。
【0120】
また、本明細書において言及されるようなペプチドおよびタンパク質は、炎症性疾患、より好ましくは関節リウマチを診断するために、特異的な抗体の検出について抗原として用いられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】関節炎症状の重症度についてモノクローナル抗体の効果を検査するために、コラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)モデルを使用した。平均関節炎スコア(図1a、1c、および1e)および関節炎の発生率(図1b、1d、および1f)を示した。5〜6匹のマウス群について抗コラーゲン抗体を腹腔内注入することによって0日目に処置した。図1aおよび図1bに示される実験において使用されるマウスは、1.6mgの抗コラーゲン抗体混合物の投与を受け、一方、図1c−fに示される実験において使用されるマウスは、2.4mgの投与を受けた。抗シトルリン抗体またはコントロール抗体(RhmAb2.201)とともにLPS(25μg/マウス)を腹腔内投与によって3日目に投与した。グラフに記載されている場合を除いて、全ての抗体を1mg/マウスで投与した。13日目まで毎日動物を採点した。
【図2】huPAD2またはhuPAD4を用いて脱イミノ化したヒトリコンビナントヒストン(H1、H2A、H2B、H3およびH4)についてa)RhmAb2.101およびb)RhmAb2.102の親和性について検査するために、酵素標識免疫吸着測定法(ELISA)を使用した。脱イミノ化されたヒストンと同様に脱イミノ化されていないヒストンを96ウェルELISAプレート(0.3μg/ウェル)上に固定化した。CFC−1およびCFC−0を同じ濃度でコートし、特異的な抗シトルリン抗体の反応性について、それぞれ陽性コントロールおよび陰性コントロールとし、コーティングコントロールとした。コートされていないウェルを抗体の特異的結合について試験するために使用した。コートされたウェルを、10ug/ウェルから0.000128μg/ウェルに至るまでの範囲の連続抗体希釈液を用いて室温で1時間(Z軸)インキュベートした。結合した抗シトルリン抗体の検出は、ウサギ抗ヒトHRP(1:2000)を用いて室温で1時間インキュベートし、続いて、TMB基質とともにインキュベートすることによって行った。得られたOD(y軸)は、抗体結合の尺度である。H1=リコンビナントヒストン1、H1/p2=huPAD2リコンビナントヒストン1、H1/p4=huPAD4リコンビナントヒストン1など(x軸)。
【図3】ヒトヒストンH2Aに由来するペプチドを含むシトルリンに対する、a)RhmAb2.101およびb)RhmAb2.102の親和性試験に酵素標識免疫吸着測定法(ELISA)を用いた。ヒストン2Aに由来するペプチドを含む、ビオチンおよびシトルリンは、ニュートラアビジンでコートされた96ウェルELISAプレート(0.3μg/ウェル)上に固定化した。CFC−1およびCFC−0を、同じ濃度でコートし、特異的な抗シトルリン抗体の反応性について、それぞれ陽性コントロールおよび陰性コントロールとし、コーティングコントロールとした。コートされていないウェルを、各抗体の結合について試験するために使用した。コートされたウェルを、10ug/ウェルから0.000128μg/ウェルに至るまでの範囲の連続抗体希釈液を用いて室温で1時間(Z軸)インキュベートした。結合した抗シトルリン抗体の検出は、ウサギ抗ヒトHRP(1:2000)を用いて室温で1時間インキュベートし、続いて、TMB基質とともにインキュベートすることによって行った。得られたOD(y軸)は、抗体結合の尺度である。
【図4】フィブリノゲンおよびビメンチンに由来するペプチドを含むシトルリンに対する、a)RhmAb2.101およびb)RhmAb2.102の親和性試験に酵素標識免疫吸着測定法(ELISA)を用いた。フィブリノゲンおよびビメンチンに由来するペプチドを含む、ビオチンおよびシトルリンは、ニュートラアビジンでコートされた96ウェルELISAプレート(0.3μg/ウェル)上に固定化した。CFC−1およびCFC−0を同じ濃度でコートし、特異的な抗シトルリン抗体の反応性について、それぞれ陽性コントロールおよび陰性コントロールとし、コーティングコントロールとした。コートされていないウェルを、各抗体の結合について試験するために使用した。結合した抗シトルリン抗体の検出は、ウサギ抗ヒトHRP(1:2000)を用いて室温で1時間インキュベートし、続いて、TMB基質とともインキュベートすることによって行った。得られたOD(y軸)は、抗体結合の尺度である。
【図5】コラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)モデルを、足におけるシトルリンの出現を調べるために使用した。3匹のマウスの群について、0日目に腹腔内投与によって2.8mgの抗コラーゲン抗体を用いて処置し、続いて3日目にLPS(25μg/マウス)を追加で腹腔内に注入した。平均関節炎スコアおよび関節炎の発症率は、図5Aおよび5Bにそれぞれ示した。
【図6】抗コラーゲン抗体注入後7日目にRhmAb2.102を投与した場合のRhmAb2.102の治療効果を試験するために、コラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)モデルを使用した。全ての足の平均関節炎スコア(図6A)および右後足の平均関節炎スコア(図6B)を示す。5匹のマウスの群について、0日目に2.8mgの抗コラーゲン抗体を用いて腹腔内注入よって処置した。LPS(25μg/マウス)を、3日目に腹腔内注入によって投与し、RhmAb2.102(1mg/マウス)または偽薬を7日目に同一の経路によって注入した。動物について35日目まで毎日採点した。RhmAb2.102は存在する炎症を少なくとも安定化することが観察された。
【図7】ヘマトキシリン/エオシン染色およびサフラニンO染色された、RhmAb2.102または偽薬を用いて7日目に処置した全てのCAIA動物の右後足の組織スライドで組織学的分析を行った(図7)。軟骨びらん(B)、骨びらん(C)、炎症細胞の流入(D)、軟骨PGの喪失(E)、および軟骨細胞死(F)のパラメータは、染色された組織スライドにおいて採点された(0〜3の任意の尺度)。図7Aは、実験最終日(35日目)における実験群の間における右後足の肉眼で確認できる炎症を示す。各点は単一の動物を表す。水平な線は実験群内での平均スコアを示す。RhmAb2.102の注入は、永続的な関節の損傷からマウスを保護すると結論付けることができる。
【図8】抗コラーゲン抗体の注入後、3日後、5日後、6日後および7日後にRhmAb2.102を与えた場合のRhmAb2.102の治療効果を試験するために、コラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)モデルを用いた。5匹のマウスの群は、0日目に2.8mgの抗コラーゲン抗体を腹腔内に注入することによって処置した。LPS(25μg/マウス)を腹腔内注入によって3日目に投与した。RhmAb2.102(1mg/マウス)を、3日目、5日目、6日目または7日目に静脈内投与した。動物について19日目まで毎日採点した。グラフは、各実験群の平均関節炎スコアを示す。RhmAb2.102は、治療開始時のレベルに比較して炎症レベルを少なくとも安定化すると再度結論付けることができる。菱形:コントロール、丸:7日目、白丸:6日目、四角:5日目、および三角:3日目
【図9】抗コラーゲン抗体を注入した後、3日目に与えた場合におけるRhmAb2.102、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112の抗炎症作用を試験するために、コラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)モデルを使用した。全ての足の平均関節炎スコアを示した。3匹のマウスの群を、0日目に2.8mgの抗コラーゲン抗体を腹腔内注入することによって処置した。LPS(25μg/マウス)を、腹腔内注入によって3日目に投与し、RhmAb2.102、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112(1mg/マウス)または偽薬を同日に静脈内注入によって注入した。動物を、14日目まで毎日採点した。
【0122】
全ての新規の抗体RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112は、RhmAb2.102よりも高い抗炎症作用を示した。
【図10】RhmAb2.102、RmmAb22.101およびRmmAb22.102抗体の抗炎症作用を試験するために、コラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)モデルを使用した。3匹のマウスの群を、0日目に2.8mgの抗コラーゲン抗体を腹腔内に注入することによって処置した。LPS(25μg/マウス)と、RhmAb2.102、RmmAb22.101およびRmmAb22.102(6mg/マウス)、および偽薬とを腹腔内注入によって3日目に投与した。全ての動物について10日目まで毎日炎症について採点した。
【0123】
全ての試験された抗体RhmAb2.102、RmmAb22.101およびRmmAb22.102は、マウスの足における炎症からマウスを保護した。RhmAb2.102およびRmmAb22.101についてのみデータを示す。
【図11】huPAD2またはhuPAD4で脱イミノ化されたヒトリコンビナントヒストン(H1、H2A、H2B、H3およびH4)について、A)RhmAb2.102、B)RhmAb2.108、C)RhmAb2.109、D)RhmAb2.110、E)RhmAb2.111、F)RhmAb2.112、G)RmmAb22.101、およびH)RmmAb22.102の親和性を試験するために、酵素標識免疫吸着測定法(ELISA)を用いた。脱イミノ化されたヒストンおよびイミノ化されていないヒストンと、BSAとを96ウェルELISAプレート上に固定化した(0.3μg/ウェル)。CFC−1、CFC−0、配列番号21を、同一の濃度でコートし、特異的抗シトルリン反応性について、それぞれ陽性コントロールおよび陰性コントロールとして、ならびにコーティングコントロールとした。コートされていないウェルを、抗体の特異的結合を試験するために用いた。コートされたウェルを、2.5μg/ウェルから0.004μg/ウェルに至る範囲で抗体希釈系列とともに室温で1時間インキュベートした(Z軸)。抗シトルリン抗体結合の検出は、ウサギ抗ヒトHRP(1:2000)とともにウェルを室温で1時間インキュベートし、続いてTMB基質とともにインキュベートすることによって行なった。得られたOD(y軸)は、抗体結合の測定値である。H1=リコンビナントヒストン1、H1/p2=huPAD2リコンビナントヒストン1、H1/p4=huPAD4リコンビナントヒストン1など(x軸)。
【実施例】
【0124】
実施例1:ヒト型およびマウス型リコンビナントモノクローナル抗体。
RA患者のシトルリン化抗原に対するモノクローナル抗体は、記載されたようにファージディスプレイ法によって最初に選択した(Raats et al., J Reumatology, vol30, 1696-711,2003)。簡潔には、3人のRA患者の自己抗体レパートリを、B細胞レパートリから分離し、抗体フラグメントライブラリを作り出すために用いた。これらのライブラリについて、WO98/22503に記載されたように、シトルリン化環状ペプチドCFC1−cycに対する4段階の親和性選択を行った。抗体のクローンは、CFC1−cycへの強い反応性と、シトルリン化されていないCFC0−cycへの反応性の欠如とに基づいて選択した(WO98/22503)。
【0125】
Raatsらによって記載された配列をコードする抗体(J Reumatology, vol30、1696-711, 2003)を、Stemmerら(Gene, vol164, 49-53, 1995)に従って合成し、続いてヒト型およびマウス型抗体アイソタイプをコードする哺乳類発現ベクターにクローニングした。ヒト抗体は、アイソタイプIgG1ラムダであり、RhmAb2.101およびRhmAb2.102と命名した。
【0126】
RhmAb2.101をStemmerらのプロトコル(Gene, vol164, 49-53, 1995)に従って、クローンRa3の配列に基づいて(Raats et al., J Reumatology, vol30, 1696-711, 2003)合成した。RhmAb2.101は、生殖系列ファミリーλ1bに由来するVLを組み合わせた、生殖系列ファミリー3〜21に由来するVHから構成される。
【0127】
RhmAb2.102は、Stemmerら(Gene, vol164, 49-53, 1995)に従って合成した。RhmAb2.102は、配列番号9によってコードされる免疫グロブリン軽鎖に結合した、配列番号8によってコードされた免疫グロブリン重鎖を含む。配列番号8によってコードされる免疫グロブリン重鎖は、配列番号12にかかるマウスリーダーグロブリン、続いて配列番号13にかかる可変抗体重鎖、続いて配列番号14にかかる免疫グロブリン定常ドメインヒトIgG1を含む。配列番号9によってコードされる免疫グロブリン軽鎖は、配列番号12にかかるマウスリーダーグロブリン、続いて配列番号15にかかる可変抗体軽鎖、続いて配列番号16にかかる免疫グロブリンヒトラムダ定常ドメインを含む。
【0128】
モノクローナル抗体RhmAb2.101の可変ドメイン(VHおよびVL)の一次mRNA配列を公開し、表1に示されるような受入番号でEMBLデータベースに供託した。全長ヒト型抗体配列を、抗体RhmAb2.102について記載されたように、同一のリーダーおよび定常ヒトドメインを用いて作り出した。
【0129】
【表1】
【0130】
シトルリン化フィブリノゲンに対するコントロール抗体である、RmmAb13.101、RmmAb13.102およびRmmAb13.103、ならびにヒトU1−70kタンパク質のアポトーシス性の40kD切断産物に対するRhmAb2.201は、Modiquest Research BV, Schoutstraat 58, 6525 XV Nijmegen, The Netherlands から市販されている(カタログ番号MQ13.101、MQ13.102、MQ13.103およびMQR2.201)。
【0131】
実施例2:炎症の実験モデル
ModiQuest Research B.V. から市販されているコラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)マウスモデル(カタログ番号: MQ18.101)を、マウスに関節炎を誘導するために製造規格に従って、用いた(http://www.modiquestresearch.nl/shop/files/18.101-50MG_2007.08.22.pdf)。その目的のために、0日目に8つの抗コラーゲン抗体の混合物を8週齢のDBJ/J1マウス(5〜6マウス/群)に腹腔内投与した。(図1aおよび1bにおいて用いたマウスは、1.6mgの抗コラーゲン抗体混合物の投与を受け、一方、図1c〜fにおいて用いたマウスは2.4mgの投与を受けた)。3日目において、マウスは、1mgの抗シトルリン抗体を混合した25μgLPSを含む、他の腹腔内注入を受けた(特に記載のない限り)。LPSは、炎症を引き起こす。動物実験の13日目まで、マウスはそれらの足における炎症の兆候について毎日採点された。採点は、表2に従って行った。各動物の最大関節炎スコアは8である。
【0132】
マウスモノクローナル抗シトルリン抗体である、RmmAb13.101、RmmAb13.102およびRmmAb13.103について、コラーゲン抗体が誘発する関節炎の重症度を強化することができることを確認した。これらの抗体の混合物は、さらに顕著に応答した。このことは、本質的に抗シトルリン抗体が関節炎を強化/誘導することができる早期の結果を確立する(Kuhn et al,. J. Clin. Invest, vol116, 961-871, 2006; Hill et al., J Exp Med, vol205, 967-979, 2008)。これらの結果は、同一の実験でそれぞれ「平均関節炎スコア」および「関節炎の発症率」を示す、図1aおよびbに示される。
【0133】
ヒト型モノクローナル抗体RhmAb2.102は、実験的なCAIAモデルにおける関節炎の臨床症状を軽減または欠失させたが、RhmAb2.101は用量試験において全く効果が無かった(図1cおよび1d)。
【0134】
【表2】
【0135】
抗コラーゲン抗体注入後3日目における、抗シトルリン抗体を投与するための決定は、約4日目に実験的に誘導される関節炎を有するマウスの足にシトルリン化エピトープが現れることを示す、上述された実験データに基づく。
【0136】
実施例3:脱イミノ化細胞抽出物の調製、SDSページ電気泳動およびウエスタンブロッティング。
【0137】
COS−1細胞(8・105)を、V−kitとともにAMAXA nucleofection装置(プログラムD−005)を用いて、2μgのhuPAD2またはhuPAD4発現ベクターで一過性にトランスフェクトし、T75における20ml培地中に細胞を播種した。
【0138】
72時間後、細胞をPBSで2回洗浄し、トリプシン処理し、スピンダウンし、15μlの氷冷溶解バッファ(pH7.4の20mMトリス、10mMβ-メルカプトエタノール、100mM NaCl、10%グリセロール、プロテアーゼ阻害剤)に再懸濁した。
【0139】
細胞サンプルを氷上で15秒間に4回音波処理した。ライセートを5分間3.000rpmで遠心し、上清を清浄なチューブに移した。細胞ライセートを、それぞれ10mMおよび5mMの最終濃度で、CaCl2およびDTEを追加して37℃で30分〜2時間脱イミノ化した。脱イミノ化された細胞ライセートは、−20℃で保存した。
【0140】
10倍のサンプルバッファ(pH6.8の0.25Mトリス、8%SDS、35%グリセロール、2.5%β-メルカプトエタノール、ブロモフェノールブルー)を脱イミノ化された細胞ライセートに添加し、5分間ボイルした。約5・105細胞に対応するライセートを、SDS−PAGE(15%ゲル)の各レーンにロードして分離し、続いてHybond C extraニトロセルロース膜(Amersham Biosciences)にエレクトロブロッティングした。ブロッティングおよびローディングは、ポンソーS染色によって確認した。
【0141】
実施例4:治療用抗シトルリン抗体は、p15およびp17を認識する。
実施例3において作製されたようなブロットを、細長い形に切断し、全ての非特異的部位をブロックするために、室温で2時間、5%(w/v)低脂肪粉ミルクのPBS−Tween(洗浄液)でブロックした。それから、ブロットを、洗浄バッファで5回5分間洗浄し、細長い一片をさらに20μgの抗シトルリン抗体を含む4mlの洗浄バッファを用いて室温で1時間インキュベートした。その後、細長い一片を、洗浄バッファで10分間5回洗浄し、洗浄バッファ中のペルオキシダーゼ共役化ウサギ抗ヒトIgG(DAKO)(1:2000)とともにインキュベートした(室温で1時間)。その後、細長い一片を、洗浄バッファで10分間3回洗浄し、続いて全ての未結合抗体を洗浄するためにPBSで2回洗浄した。
【0142】
免疫反応性バンドは、化学発光基質(PIERCE)を用いて可視化し、Kodak BioMax XARオートラジオグラフィーフィルム(Eastman Kodak Company, Rochester, NY, USA)に感光させた。
【0143】
RhmAb2.102とともにインキュベートされた細長い一片は、約15および17キロダルトンの分子量を有する2量体タンパク質への反応性を示した。
【0144】
実施例5:抗原の免疫沈降
免疫沈降のために、30μLのプロテインA−セファロースファストフロー(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)を、330μLの細胞ライセートに添加し、4℃で2時間回転させながらインキュベートした。続いて、セファロースビーズに免疫結合したタンパク質を、IPP150(pH8の10mMトリス/HCl、150mM NaCl、0.1%NP40、0.1%Tween−20)で4回洗浄した。2倍のサンプルバッファ(100mmTris−HCl、pH6.8の200mmジチオスレイトール、4%SDS、0.2%ブロモフェノールブルー、20%グリセロール)をビーズに添加し、タンパク質について15%SDS−PAGEを行った。ゲルを、室温で一晩、染色溶液(10%w/v硫酸アンモニウム、2%w/vリン酸(85%)、0.1%w/vCBB G−250、20%v/vメタノール)中で穏やかに揺らしながら染色した。全ての染色トレイをメタノールの蒸発を防ぐためにパラフィルムで密封した。翌日、ゲルをミリQ水(milli-Q water)中で所望の染色が見えるまでインキュベートすることによって、染色されていないバックグラウンドを脱染色した。ゲルの画像を撮影後、脱染色液(ミリQ水)を2〜3回置換した。
【0145】
ヒトPAD2およびPAD4脱イミノ化COS-1ライセートの両者における、RhmAb2.102を用いた免疫沈降は、RhmAb2.101沈降において検出できないか、またはほとんど検出できない、p15およびp17タンパク質のバンドを表す。したがって、p15およびp17タンパク質の認識率は、これらの抗体の治療特性とよく相関する(図1a〜d)。
【0146】
実施例6:p15およびP17の質量分析。
実施例3のSDS−pageゲルのp15およびp17のバンドをゲルから切り出し、MALDI−TOF MSによって分析した。簡潔には、切り出したゲルの一部を、50μlの25mM重炭酸アンモニウムで2回洗浄し、各洗浄工程について30分間インキュベートした。上述したように、30%v/vアセトニトリルを添加して15分間の洗浄を繰り返した。全ての液体を取り除き、25μlの25mM重炭酸アンモニウム+25μlのアセトニトリルを添加し、15分間インキュベートした。再度、全ての液体を除去し、ゲルを50μlのアセトニトリルとともに30分間インキュベートした。全ての液体を取り除き、一部を37℃で2時間インキュベートした。脱水後、ゲル片を再度膨潤させるために、5μlのトリプシン溶液(25mM重炭酸アンモニウム/5mMn−オクチル−β−D−グルコピラノシド中における、〜15ngのトリプシン/μl)を添加し、氷上で1時間インキュベートした。余分なトリプシン溶液を除去し、ゲル片を5μlの25mM重炭酸アンモニウム/5mMn−オクチル−β−D−グルコピラノシドとともに37℃で14時間インキュベートした。ペプチドを、4μlの50%アセトニトリル/0.5%トリフルオロ酢酸(TFA)/nオクチル−β−D−グルコピラノシドとともに室温で1時間インキュベートすることによって抽出した。サンプルを、超音波水槽中において2分間超音波処理し、液体を新しいチューブに移し、抽出工程を繰り返した。サンプルを真空遠心機で乾燥させ、MALDI−TOF MSを行った。
【0147】
MALDI−TOF MS分析で同定された全ての断片は、ヒストンタンパク質(表3)に起因した。
【0148】
【表3】
【0149】
実施例7:治療用抗シトルリン抗体は、H2A/p4を認識する。
ヒト型リコンビナントヒストンH1、H2A、H2B、H3およびH4(100μg)を、53.4mUのhuPAD2またはhuPAD4とともに、またはこれらを含まずに37℃で3時間インキュベートした。脱イミノ化されたヒストンと、脱イミノ化されていないヒストンとを4℃で一晩インキュベートすることによって、96ウェルのELISAプレート上にコート(0.3μg/ウェル)した。ウェルをPBS−Tween20(PBS−T)で5回洗浄し、室温(RT)でPBS−T+1%ウシ血清アルブミン(BSA)とともに1時間インキュベートすることによってブロックした。PBS−Tでさらに5回洗浄後、PBS−T+1%BSA中のRhmAb2.101またはRhmAb2.102の10μg/ウェルの濃度から開始する連続希釈液とともに室温で1時間インキュベートした。ウェルをPBS−Tで5回洗浄し、ウサギ抗ヒト抗体HRP(1:2000)とともに室温で1時間インキュベートし、続いてPBS−Tで5回洗浄し、PBSで3回の洗浄工程を行った。2MH2SO4との反応を停止する前に、RhmAb2.101とともにインキュベートしたウェルを、TMB基質とともに15分間インキュベートし、RhmAb2.102とともにインキュベートしたウェルを、TMB基質とともに10分間インキュベートした。吸光度を450nmで測定し、使用された抗体の親和性の尺度とした。
【0150】
実施例8:治療用抗シトルリン抗体は、ペプチド1を認識する。
96ウェルELISAプレートを4℃で一晩インキュベートすることによってニュートラアビジンでコートした(0.1μg/ウェル)。ウェルをPBS−Tween20(PBS−T)とともに5回洗浄し、PBS−T+1%ウシ血清アルブミン(BSA)とともに室温で1時間インキュベートすることによってブロックした。PBS−Tでさらに5回洗浄した後、ウェルを、ヒストン由来シトルリンおよびビオチン含有ペプチド(0.3μg/ウェル)とともに室温で1時間インキュベートした。さらにPBS−Tで5回洗浄した後、ウェルを、PBS−T+1%BSA中の10μg/ウェルの濃度から開始するRhmAb2.101、RhmAb2.102またはRhmAb2.104の連続希釈液とともに1時間インキュベートした。ウェルをPBS−Tで5回洗浄し、PBS−Tで5回洗浄し、PBSで3回洗浄工程を行い、続いて、ウサギ抗ヒトHRP(1:2000)とともに室温で1時間インキュベートした。ウェルを、2MH2SO4を用いて反応を停止する前にTMB基質とともに5分間インキュベートした。吸光度を450nmで測定し、使用される抗体の親和性の尺度とした。
【0151】
実施例9:治療用抗シトルリン抗体は、フィブリノゲンおよびビメンチン由来シトルリンペプチドを認識する。
【0152】
96ウェルELISAプレートを、4℃で一晩インキュベートすることによってニュートラアビジンでコートした(0.1μg/ウェル)。ウェルをPBS-Tween(PBS−T)で5回洗浄し、PBS−T+1%ウシ血清アルブミン(BSA)を用いて室温で1時間インキュベートすることによってブロックした。PBS−Tでさらに5回洗浄した後、ウェルをフィブリノゲンおよびビメンチン由来シトルリンおよびビオチン含有ペプチド(0.3μg/ウェル)とともに室温で1時間インキュベートした。さらにPBS−Tで5回洗浄した後、ウェルを、PBS−T+1%BSA中の10μg/ウェルの濃度から開始するRhmAb2.101またはRhmAb2.102の連続希釈液とともに1時間インキュベートした。ウサギ抗ヒトHRP(1:2000)とともに室温で1時間インキュベートし、続いてウェルをPBS−Tで5回洗浄し、PBS−Tで5回洗浄し、PBSで3回洗浄工程を行った、。ウェルを、2MH2SO4を用いて反応を停止する前にTMB基質とともに5分間インキュベートした。吸光度を450nmで測定し、使用される抗体の親和性の尺度とした。
【0153】
実施例10:RhmAb2.102の治療可能性
ModiQuest Research B.V.から市販されているコラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)マウスモデル(カタログ番号: MQ18.101)を、マウスにおいて関節炎を誘導するため製造規格に従って用いた(http://www.modiquestresearch.nl/shop/files/18.101-50MG%20_2007.08.22.pdf)。その目的のために、0日目に8つの抗コラーゲン抗体の混合物を8週齢のDBJ/J1雄マウス(マウス5匹/群)の腹腔内に投与した(2.8mg/マウス)。3日目、マウスは25μgのLPSを含む、他の腹腔内投与を受けた。LPSは、炎症を引き起こす。平均関節炎スコアが約4になった7日目において(図6A)、1群について1mgのRhmAb2.102を含む静脈内注入を行った。一方、他の群は、偽薬を含む静脈内注入を受けた。
【0154】
動物の足における炎症症状について毎日採点した。採点は、表2に従って行った。動物あたりの最大関節炎スコアは8である。RhmAb2.102は炎症を安定させた(図6A)。
【0155】
全ての右後足を組織学的分析のために用いた。組織を4%ホルムアルデヒドで4日間固定し、5%ギ酸で脱灰し、続いて脱水し、パラフィン包埋した。7μmの標準正面セクションを、SuperFrostスライド(Menzel-Glaser, Braunschweig, Germany)にマウントした。ヘマトキシリンおよびエオジン(H&E)染色を関節の炎症を調べるために行った(細胞の流入、図7D)。関節における炎症の重症度を、0〜3のスケール(0=細胞なし、1=軽度の細胞充実性、2=中程度の細胞充実性、3=最大細胞充実性)で採点した。図7Aは、35日目における肉眼で確認できる炎症を示す。軟骨基質からのプロテオグリカン(PG)の喪失を検討するために(図7E)、サフラニンO(SO)染色し、続いてファストグリーンで対比染色しした。完全に軟骨が染色された(通常)から軟骨が染色されない(完全なPGs喪失)までの範囲である0〜3の任意のスケールを用いてPGの喪失を測定した。軟骨細胞死(図7F)を、軟骨細胞核の損失無しから完全に軟骨表面が空洞であるまでの0〜3の範囲のスケールで採点した。軟骨および骨びらん(図7BおよびC)を、損傷無しから軟骨または骨の構造の完全な損失までの、スケール0〜3の範囲で類別した。関節における病理組織学的変化を70μm離れた関節の5つの準連続切片において採点した。採点は、実験条件について既知の知識なしにブラインドで行った。
【0156】
群間における右後足の肉眼で観察できる炎症は35日目において同じであったが(図6Aおよび7A)、炎症性細胞流入(図7D)、軟骨の浸食(図7B)、軟骨PGの喪失(図7E)、軟骨細胞死(図7F)および骨の浸食(図7C)の関節炎についての任意のパラメータを調べた場合、コントロール群と比較してRhmAb2.102の投与を受けた実験群において著しい減少が観察された。この結果は、RhmAb2.102の治療可能性を強く支持する。
【0157】
実施例11:huPAD4脱イミノ化HEK293細胞抽出物の調製およびRhmAb2.101またはRhmAb2.102を用いた免疫沈降。
【0158】
HEK293細胞を回収し、PBSで1回洗浄し、スピンダウンし、5.105細胞を15μlの氷冷溶解バッファ(pH7.4の20mMトリス、10mMβ-メルカプトエタノール、100mM NaCl、10%グリセロール、プロテアーゼ阻害剤)中に再懸濁した。
【0159】
細胞サンプルを氷上で15秒間に4回音波処理した。ライセートを3.000rpmで5分間遠心し、上清を清浄なチューブに移した。細胞ライセートを2mgのタンパク質あたり1UのヒトPAD4(ModiQuestResearch B.V.;カタログ番号: MQ16.203)、10mM CaCl2、および5mM DTTを添加することにより37℃で2時間脱イミノ化した。
【0160】
脱イミノ化HEK293ライセートにSDS−Page(12.5%ゲル)電気泳動、続いてウエスタンブロッティングを行うことによって、ライセートの脱イミノ化を検証した。ウエスタンブロッティングは、抗体RhmAb2.101またはRhmAb2.102を用いて免疫染色し、陽性であった。無関係な抗体を用いて処理したブロットは、全く染色が認められなかった。
【0161】
その後、抗体RhmAb2.101またはRhmAb2.102を用いて脱イミノ化HEK293細胞ライセートについて免疫沈降(IP)を行った。簡潔には、30μlのプロテインAセファロースファストフローを、1mlのIPP500(pH8.0の10mMトリス/HCl、500mM NaCl、0.1%NP40および0.1%Tween20)で5回洗浄し、20μgのRhmAb2.101または20μgのRhmAb2.102に結合させ、結合させないものをネガティブコントロールとした。プロテインAセファロースビーズ/抗体混合物を一定の回転のもと室温で1時間インキュベートした。1mlのIPP500を用いてビーズを3回洗浄し、1mlのIPP150(pH8.0の10mMトリス/HCl、150mM NaCl、0.1%NP40、0.1%Tween−20)で1回洗浄し、続いて300μlの脱イミノ化HEK293細胞ライセートとともに一定の回転のもと、室温で2時間インキュベートした。HEK293細胞のIP手順が成功したか否か決定するために、少量のビーズをSDS−PAGE電気泳動に使用し、その後ビーズを1mlのIPP150で3回洗浄した。RhmAb2.101、RhmAb2.102およびコントロールビーズにおける免疫沈降タンパク質を、50μlの抽出バッファ(pH3.0の100mMナトリウムクエン酸)を用いて抽出し、pH9.04の1Mトリス/HClを10μl用いて中和し、nLC LTQ FTMS ULTRA質量分析法(実施例12)まで−20℃で保存した。
【0162】
実施例12:RhmAb2.101およびRhmAb2.102によって免疫沈降させたhuPAD4脱イミノ化HEK293細胞タンパク質の質量分析。
【0163】
免疫沈降されたタンパク質からPEGを取り除くために、それらを15%SDS−PAGEゲルにロードし、短時間泳動した。実施例6において記載されたように、タンパク質についてゲルの切り出し、およびゲル内トリプシン消化を行った。サンプルについてnLC LTQ FTMS ULTRA質量分析を実行する前にそれらを50倍に希釈した。
【0164】
ペプチドおよびタンパク質の同定は、ホモサピエンス分類のNCBInr_20081022データベースを用いて検索プログラムMascotによってデータから抽出した。以下の修飾を検索において許可した。システイン(C)のカルバミドメチル化(固定)、メチオニン(M)の酸化(可変)、ならにびアスパラギン(N)、アルギニン(R)およびグルタミン(Q)の脱アミノ化(可変)。脱イミノ化は、検索ツールとして使用することができなかった。脱アミノ化および脱イミノ化は、修飾されていないアルギニンと比較した場合に、両者は1ダルトンの質量差をもたらすのでこの問題は除去することができる。
【0165】
タンパク質の特性の検証を社内で開発したスクリプトによって行った。簡潔には、ソフトウェアは、独特に同定されたペプチド配列、ペプチドの同一の組を共有するクラスタタンパク質、および以下の条件を有するタンパク質の検証に基づいてタンパク質の特性を分類する。
【0166】
1本のペプチドを有するタンパク質は、>49のペプチドスコアを有していなければならない。
【0167】
1本以上のペプチドを有するタンパク質は、>29のペプチドスコアを有していなければならない。
【0168】
検証基準の使用について、ペプチドは3つの全てのサンプルで同定された(サンプル1:RhmAb2.101を用いて沈殿させたHEK293細胞、サンプル2:Rhm2.102を用いて沈殿させたHEK293細胞、サンプル3:空ビーズを用いて沈殿させたHEK293細胞)。
【0169】
emPAI(Exponentially Modified Protein Abundance Index)を全ての検証タンパク質について算出した。emPAIは、データベースの検索結果に一致するペプチドによるタンパク質範囲に基づいて、混合物中の、おおよその、標識のない、タンパク質の相対的定量を提供する。この手法は、(選択的に)RhmAb2.102に結合する脱イミノ化タンパク質を同定することを可能にする。このことを表9に示す。
【0170】
【表9−1】
【0171】
【表9−2】
【0172】
実施例13:抗炎症抗体のファミリー産出/選択
ヒト由来のscFvライブラリを、Raatsら(2003)に記載された方法と同様に、ヒトヒストン2A、ヒストン4、ペプチド1(AAASGXGKQGGK:配列番号21)、およびCFC−1ペプチドのPAD2−またはPAD4−脱イミノ化形態に対してパニングした(Raats, J.M.H., Wijnen, E.W, Pruijin, G.J.M., Van den Hoogen, F.H.M., and W.J. van Verooij. 2003. J.Rheum. 30, 1696-1711)。
【0173】
CFC−1ならびに/またはペプチド1(AAASGXGKQGGK:配列番号21)ならびに/またはPAD脱イミノ化ヒストン2aおよび/もしくはヒストン4とのシトルリン依存の反応性を示す、選択された抗体は、シトルリン化タンパク質および/もしくはそれらに由来するペプチドのアレイに対する反応性(実施例12、表9)と、PAD2およびPAD4脱イミノ化ヒトヒストンアイソフォームに対する反応性と、脱イミノ化ヒトヒストン由来ペプチドに対する反応性とについてスクリーニングした。付随して、RA患者に由来するPAD2およびPAD4脱イミノ化ヒト細胞抽出物および関節液に免疫沈降を行った。
【0174】
続いて、p15および/もしくはp17の免疫沈降されたバンドである抗体、ならびに/またはシトルリン化エピトープ(PAD2およびPAD4脱イミノ化ヒトヒストンアイソフォーム、および/もしくはCFC−1、および/またはペプチド1(AAASGXGKQGGK、配列番号21)、および/もしくは表9に挙げられたタンパク質に由来するシトルリン化エピトープ)に対するELISA反応性プロファイルを有する抗体を、ヒトIgG1フォーマットにクローン化した。本明細書に記載されたように、CAIAマウスモデルにおける、それらの予防的および治療的抗炎症可能性について全長のヒトIgG抗体を試験した。
【0175】
このスクリーニングの手順では、高頻度でCAIAマウスモデルにおける、予防的および/または治療的抗炎症可能性を有する抗体を得た。
【0176】
上述の方法に従って選択される新規抗体の例は、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112であり、本明細書において、配列番号17、配列番号18、配列番号39、配列番号20、配列番号41、配列番号40、配列番号19、配列番号43、配列番号42に開示される。配列番号10によってコードされるRhmAb2.110免疫グロブリン軽鎖は、配列番号12にかかるマウスリーダーグロブリン、続いて配列番号41にかかる可変抗体軽鎖、続いて配列番号11にかかる免疫グロブリンヒトカッパ定常ドメインを含む。
【0177】
その後、RhmAb2.102と比較して、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112の抗炎症性作用を試験するために、コラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)マウスモデルを用いた。この目的のために、全ての抗体は、HEK293細胞において一過性に産生させた。DBA/Jマウスの3匹の群を、0日目に2.8mgの抗コラーゲン抗体(MQ18.101)の腹腔内投与によって処置した。LPS(25μg/マウス)と、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111、RhmAb2.112およびRhmAb2.102(1mg/マウス)、ならびに偽薬とを、3日目に腹腔内注入によって投与した。全ての動物について、10日目まで毎日炎症について採点した。
【0178】
本実験における全ての新規に作り出された抗体は、RhmAb2.102、RhmAb2.1109、RhmAb2.110と比較して、より優れた抗炎症反応を示し、完全に炎症を消失させたが、MhmAb2.112は、ほぼ消失させ、RhmAb2.111と、rhmAb2.108とは、実験動物における炎症の兆候を強く減少させた。図9。
【0179】
実施例14:マウスモノクローナル抗体。
本発明にかかるペプチドを含む合成されたシトルリンに対する抗体は、DBA/J1マウスに産生させた。免疫工程開始後125日目に、血清試料を採取し、シトルリン特異的抗原反応を分析した。全てのマウスは、試験した時点において、特異的抗原特異的な血清価を示した。
【0180】
ハイブリドーマ細胞株を作製するために、最後の追加免疫後、脾臓を解剖し、脾臓から脾細胞を採取し、ModiQuest B.V.手順に従って、マウスミエローマ細胞株(NS−1)と融合させた。ハイブリドーマ上清における抗体特異性は、シトルリン含有抗原と、非シトルリン化等価物とにおいて評価した。
【0181】
このことによって、それぞれRmmAb22.101およびRmmAb22.102、配列番号44および配列番号45を産生する、ハイブリドーマクローン(DSMZ受理番号ACC3031およびACC3032)がもたらされた。
【0182】
続いて、RhmAb2.102と比較して、RmmAb22.101およびRmmAb22.102の抗炎症作用を試験するために、コラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)モデルを用いた。DBA/J1マウスの3匹の群を、2.8mgの抗コラーゲン抗体(MQ18.101)の腹腔内注入によって0日目に処置した。LPS(25μg/マウス)と、RmmAb22.101、RmmAb22.102およびRhmAb2.102(6mg/マウス)、ならびに偽薬とを、3日目に腹腔内注入によって投与した。全ての動物について、10日目まで毎日炎症について採点した。
【0183】
RhmAb2.102、RmmAb22.101およびRmmAb22.102抗体は、マウスの足における炎症からマウスを完全に保護した。図10。
【0184】
実施例15:新規の治療用抗シトルリン抗体は、RhmAb2.102と比較して、シトルリン化エピトープへの同様の認識パターンを示す。
【0185】
実施例7および8に記載された実験と同様に、新たに作り出された抗体RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111、RhmAb2.112、RmmAb22.101およびRmmAb22.102について、RhmAb2.102と比較した、様々な脱イミノ化標的における、それらの反応性をELISAで分析した。
【0186】
ヒト型リコンビナントヒストンH1、H2A、H2B、H3およびH4(100μg)を、実施例7に記載されたように脱イミノ化した。
【0187】
脱イミノ化されたヒストンと、脱イミノ化されていないヒストンとを、96ウェルELISAプレートにコートし(0.3μg/ウェル)、4℃で一晩インキュベートした。
【0188】
また、次に脱イミノ化ヒストン抗体を、一組のビオチン化ペプチドにおいて試験した。シトルリン化形態と、非シトルリン化形態との両者について試験した。ペプチドのコーティングは、実施例8に記載されたように行った。
【0189】
全てのコートしたウェルを、PBS-Tween20(PBS−T)で5回洗浄し、PBS−T+1%ウシ血清アルブミン(BSA)とともに室温(RT)で1時間インキュベートすることによってブロックした。さらにPBS−Tで5回洗浄した後、ウェルを、2.5μg/ウェルの濃度から開始する、PBS−T+1%BSA中の抗体の連続希釈液ととも室温で1時間インキュベートした。ウェルを、PBS-Tで5回洗浄し、ウサギ抗ヒトHRP(1:2000)とともに室温で1時間インキュベートし、続いてPBS-Tで5回洗浄し、PBSで3回洗浄工程を行った。2MH2SO4で反応を停止する前に、TMB基質で10分間染色した。450nmで吸光度を測定し、用いられる抗体の親和性の尺度とした。このことは、全ての治療用抗体が、治療用抗体RhmAb2.102と比較して、類似性の高い染色パターンを有することを明らかに示した。マウスモノクローナル抗体のみが、Cfc−1ペプチドに反応性を示さない。全ての治療用抗体は、配列番号21にかかるペプチドと、ヒストン2A/p2、ヒストン2A/p4およびヒストン4/p2との非常に高い反応性を有し、ヒストン3/p2との極めて小さい反応性を示す。
【図1−1】
【図1−2】
【図1−3】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6−1】
【図6−2】
【図7−1】
【図7−2】
【図7−3】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトおよび動物における炎症の治療または予防の分野に属し、様々な炎症状態を治療または予防するための医薬組成物および方法に関する。特に、本発明は、シトルリン関連疾患、好ましくは炎症性疾患、より好ましくは関節リウマチのような炎症性リウマチのような炎症状態を、予防または治療するための組成物および方法に関する。本発明は、炎症性リウマチ、好ましくは関節リウマチのような炎症状態の治療および予防に使用するための、シトルリン含有エピトープに対する、抗体のような特異的結合分子を提供する。
【背景技術】
【0002】
炎症状態は、慢性であろうと急性であろうと、医療業界における重大な問題を突き付ける。簡潔に述べるならば、慢性的な炎症は、活動性炎症、組織破壊および治癒の試行が同時に進行する、持続時間の長い(数週間または数ヶ月の)炎症であると考えられる(Robbins Pathological Basis of Disease by R.S. Cortran, V.Kumar and S.L.Robbins, W.B.Saunders Co., p.75, 1989)。慢性炎症は、急性炎症の発症後に続き得るが、たとえば、持続感染(たとえば、結核、梅毒、真菌症)の結果として、内因性(たとえば、血漿脂質)もしくは外因性(たとえば、シリカ、アスベスト、タバコのタール、手術用縫合糸)の毒素への遷延性の曝露、または体自身の組織に対する自己免疫反応(たとえば、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、乾癬)のような、時間経過とともに進行する潜行性のプロセスとしても生じ得る。
【0003】
炎症性関節炎は、特に高齢者の数が増加した先進国において深刻な健康問題である。たとえば、炎症性関節炎の一種である関節リウマチ(RA)は、世界の人口の1〜2%が侵されている多系統慢性の再発性炎症性疾患である。
【0004】
多くの器官が侵され得るが、RAは、基本的に、侵された関節の破壊および強直を導くこともある慢性滑膜炎症の重度の形態である(Robbins Pathological Basis of Disease, by R.S. Cotran, V.Kumar, and S.L. Robbins, W.B.Saunders Co., 1989)。疾患は、関節隙に拡張する様々な投射を形成する滑膜の顕著な厚化、滑膜ライニング(滑膜細胞増殖)の多層化、白血球細胞(マクロファージ、リンパ球、形質細胞およびリンパ濾胞)による滑膜の炎症(「炎症性滑膜炎」と称される)、ならびに滑膜内の細胞壊死によるフィブリンの沈着によって病理学的に特徴付けられる。この過程の結果として形成された組織はパンヌスと称され、パンヌスは最終的に関節隙を埋めるまで増殖する。パンヌスは、滑膜炎の進展に不可欠である血管新生の過程を通じて、新しい血管の広範なネットワークを発達させる。パンヌス組織の細胞に由来する、消化酵素(マトリックスメタロプロテアーゼ(たとえば、コラゲナーゼ、ストロメリシン))ならびに炎症性プロセスの他の修飾因子(たとえば、過酸化水素、スーパーオキサイド、リソソーム酵素およびアラキドン酸代謝の生産物)の放出は、軟骨組織の進行性破壊を導く。パンヌスは、関節軟骨に侵潤し、びらんおよび軟骨組織の断片化を導く。結果的に、関与する関節について、線維性強直を有する軟骨下骨びらんを生じ、最終的に骨性強直を生じる。
【0005】
RAは自己免疫疾患であり、その上、多くの異なる関節刺激が免疫遺伝学的に感受性である宿主における免疫応答を活性化すると一般的に考えられている。外因性感染性病原体(Epstein-Barrウイルス、風疹ウイルス、サイトメガロウイルス、ヘルペスウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、マイコプラズマなど)と、コラーゲン、プロテオグリカン、改変された免疫グロブリンおよびシトルリン化タンパク質のような翻訳後修飾されたタンパク質などの内因性タンパク質との両者は、不適切な宿主免疫応答を引き起こす病原体として関与している。誘発物質に関わらず、自己免疫は疾患の進行に影響を与える。特に、従来の抗原は、抗原提示細胞(滑膜における、マクロファージまたは樹状細胞)によって摂取され、処理され、Tリンパ球に提示される。T細胞は、細胞性免疫応答をイニシエートし、増殖を刺激し、Bリンパ球の形質細胞への分化を刺激する。最終的に、宿主組織に対する過剰の不適切な免疫応答(たとえば、II型コラーゲンに対する抗体、自己由来のIgGのFc部分に対する抗体(「リウマチ因子」と称する))、および異なるシトルリン化エピトープに対する抗体(抗CCP)が生じる。このことは、さらに免疫応答を増幅し、軟骨組織の破壊を早める。一度このカスケードがイニシエートされれば、軟骨破壊の多数の修飾因子が関節リウマチの進行に関与する。
【0006】
上述の抗CCP抗体は、RAに特異性が高いことが示された。最近の証拠は、これらの抗体についての血清反応陽性である各個人が、既にRAを有しているか、または将来この疾患が進展するであろうことを示す。抗CCP抗体の存在(特に、高力価が存在している場合)は、びらん性疾患の転帰の前兆である(Nijenhuis et al., Clin. Chim. Acta, vol 350, 17-34, 2004)。さらに、抗CCP抗体は、炎症の局所的な部位において産生されることが示された。RA患者に由来する滑膜物質において見出される総IgGに対する抗CCP抗体の割合は、同一患者の血清における当該割合よりも顕著に高いことが明らかである(Masson-Bessiet al., Clin Exp Immunol, vol 119, 544-552, 2000)(Reparon-Schuijt et al., Arthritis Rheum, vol 44、41-47、2001)。
【0007】
滑膜における抗CCP産生形質細胞の存在は、炎症部位におけるCCP特異的なB細胞の抗原駆動型成熟の指標である。抗CCP抗体が一度産生されれば、滑膜におけるシトルリン化タンパク質を有する免疫複合体の形成は、炎症過程の進行を引き起こし得る。これらのデータおよびその他のデータは、抗CCP抗体がRAの疾患症状の少なくとも一部を実際に引き起こすという仮説を支持する。RAの病因における抗CCP抗体の役割は、RA患者におけるBリンパ球減少実験の結果によって支持される(Cambridge et al., Arthritis Rheum, vol48, 2146-2154, 2003)。
【0008】
進行した関節リウマチを有する人々の死亡率は、数種のがんの死亡率を超えている。したがって、治療法は、不可逆的な関節破壊の可能性を減少させるために設計された積極的な早期の薬物療法に移行した。米国リウマチ学会の最近の推奨事項(Arthritis and Rheumatism 39(5): 713-722, 1996)は、診断が確定し、症状が進行中の全ての患者について病態修飾性抗リウマチ薬(DMARD)治療の早期開始を含む。抗がん剤は大半の患者について第1選択療法となり、化学療法薬メトトレキサートが60%〜70%のリウマチ専門医の第1選択薬である。重度疾患では、多くの場合、無期限にこの薬剤による毎週の治療を必要とし、メトトレキサート治療にも関わらず症状が進行する患者(患者の50%以上)には、シクロスポリンおよびアザチオプリン(単独または組み合わせ)のような第2化学療法薬が頻繁に採用される。
【0009】
特に、滑膜が関与する疾患およびシトルリン関連炎症性疾患などの炎症性疾患の病理発生を抑制することができる炎症性疾患の治療または予防のための化合物が、依然として必要である。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、炎症性疾患の治療または予防における使用のためのp15および/またはp17におけるシトルリン化エピトープと特異的に反応する結合分子を提供する。
【0011】
本明細書において、p15およびp17は、ヒトPAD4および/もしくはPAD2脱イミノ化ヒトヒストン2Aおよび/もしくはヒストン4、ならびに/またはヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH3と同定される。
【0012】
また、本発明は、炎症性疾患を治療または予防するための方法であって、p15および/またはp17におけるシトルリン化エピトープと特異的に反応する結合分子を含む、治療上有効な量の抗炎症組成物をそれが必要とされる患者に投与する工程を含む方法を提供する。
【0013】
本発明の組成物および方法は、シトルリン残基に反応する特異的結合分子の薬学的に受容可能な形態を含む。特に、結合分子は、本明細書においてp15およびp17と称されるような2つのポリペプチドにおけるシトルリン化されたエピトープに特異的に反応する。
【0014】
また、本発明は、本明細書において同定されたようなポリペプチドおよび核酸に関する。
【0015】
本発明のこれらの態様および他の態様は、以下の詳細な説明、図面および実施例を参照すれば明らかになるであろう。また、より詳細な具体的手順、装置または組成物を記載した様々な参考文献が本明細書に明記されており、その全体が参照によって組み込まれる。
【0016】
発明の詳細な説明
本発明は、炎症性疾患の治療または予防における使用のための、p15および/またはp17におけるシトルリン化エピトープと特異的に反応する結合分子を提供する。
【0017】
用語「特異的結合分子」は、特異的結合をすることができる分子、好ましくは小分子を示すために本明細書において用いられる。この点において、特異的結合は、分子が選択された標的分子に結合することができるが、同一条件下において標的分子に関連しない他のものには結合しないことを意味する。たとえば、結合分子が、血清アルブミンに結合し、その他、好ましくは血清中に見出される他の全てのタンパク質に、ほとんどまたは全く結合しない場合、血清アルブミンに特異的に結合すると表現する。好ましい特異的結合分子は、抗体である。
【0018】
本明細書において、用語「シトルリンに特異的に反応する」または「シトルリン化エピトープに反応する」または「シトルリンエピトープに反応する」は、特異的結合分子または抗体が、シトルリン残基を含むペプチドのような構造に反応するが、前記抗体が、シトルリン残基の換わりにアルギニン残基を含む同一の構造にほとんど反応しないか、または好ましくは全く反応しないことを意味する。用語ペプチドは、好ましくは人体または動物体に登場するような同一の文脈、好ましくは天然ポリペプチドの文脈において、本明細書に記載されたような特異的結合分子との免疫反応性についての正確な文脈において、シトルリン残基を提示することができる構造として解釈されるべきである。また、シトルリン残基は、細胞の活性化または補体結合のような免疫システムの他の要素を活性化しない、または引き起こさない、天然ポリペプチドの文脈において示されることが好ましい。
【0019】
「特異的結合分子」は分子であってもよく、好ましくは標的化合物に特異的に結合することができる、DNA、RNA、ペプチド、タンパク質ドメイン、タンパク質全体、またはそれらの組み合わせ、もしくはその一部であってもよい。特異的結合分子の好ましい例は、ペプチドまたは抗体である。
【0020】
天然の抗体(免疫グロブリンとしても知られる)は、脊椎動物の血液または他の体液に見出すことができ、細菌およびウイルスのような外来の異物を見分け、中和する免疫系によって使用されるガンマグロブリンタンパク質である。
【0021】
天然の抗体は、通常、基本的な構造ユニット(それぞれ、2つの大きな重鎖および2つの小さな軽鎖)からできており、たとえば、1ユニットを有するモノマー、2ユニットを有するダイマー、または5ユニットを有するペンタマーを形成する。抗体は、B細胞と称される種類の白血球によって生産される。重鎖のいくつかの異なる種類が存在し、異なる抗体をもたらす。抗体は、それらの有する重鎖に基づく異なるアイソタイプに分類できる。異なる役割を行う5種の異なる抗体アイソタイプが哺乳類で知られており、それらが遭遇した外来の異物の異なる種類のそれぞれについて適切な免疫応答を直接に補助する。ラクダ(たとえば、ラマ)およびサメのような数種の動物種は、異常な抗体構造を有し得る。
【0022】
全ての抗体の一般的な構造は非常によく似ているが、タンパク質の先端にある小さな領域は、非常に変化に富んでおり、わずかに異なる先端構造を有する数百万の抗体が存在することを可能にする。この領域は可変領域として知られている。これらの変異体のそれぞれは、抗原として知られる異なる標的に結合することができる。抗体のこの豊かな多様性によって、免疫系は同様に広範な抗原の多様性を認識することが可能となる。
【0023】
抗体によって認識される抗原の独特の部分は、エピトープと称される。これらのエピトープは、生物を構成する異なる数百万の分子中の独特な抗原のみを識別して結合することができる、特異性の高い相互作用でそれらの抗体に結合する。抗体タグによる抗原の認識は、免疫系の他の部分による攻撃のためである。また、抗体は、たとえば、感染症を引き起こす病原体の一部に結合することによって、直接に標的を中和することができる。
【0024】
抗体の多種多様な集団は、異なる抗原結合部位(またはパラトープ)をコードする一組の遺伝子セグメントのランダムな組み合わせ、その後の更なる多様性を生み出す抗体遺伝子のこの領域におけるランダムな突然変異によって作り出される。また、抗体遺伝子は、重鎖の基礎を他のものに変え、抗原特異的可変領域を保持する抗体の異なるアイソタイプを生み出す、クラススイッチングと称される過程において再構成される。このことは、単一抗体が、免疫系のいくつかの異なる部分によって、いくつかの異なるアイソタイプで用いられることを可能にする。
【0025】
本明細書において使用される、用語「抗体(antibodies)」または「抗体(antibody)」は、通常「抗原」と称される標的分子に特異的に結合することができる構造、好ましくはタンパク質またはポリペプチド構造を表す。
【0026】
抗体は、単一鎖抗体、一本鎖可変領域フラグメント(scFvs)、フラグメント抗原結合領域(Fabs)、リコンビナント抗体、モノクローナル抗体、天然抗体またはアプタマーの抗原結合ドメインを含む融合タンパク質、単一ドメイン抗体(sdabs)、VHH抗体としても知られるナノボディ(ラクダ由来の単一ドメイン抗体)、VNARと呼ばれるサメIgNAR由来単一ドメイン抗体フラグメント、アンチカリン、アプタマー(DNAまたはRNA)、およびそれらの活性成分または断片からなる群から選択されてもよい。
【0027】
他の好ましい実施形態において、抗体は、天然の抗体、またはDNAもしくはRNAの形態におけるアプタマーのようなアプタマーの抗原結合ドメインを含む融合タンパク質である。
【0028】
抗体または他の特異的結合分子の文脈において、用語「またはそれらの一部」または「それらの断片」は、抗体または特異的結合分子の特異的な結合部位を構成する、抗体または特異的結合分子の一部を表し、抗体全体または特異的結合分子全体と同一のエピトープに反応することができる、抗体または特異的結合分子の一部と解釈されてもよい。
【0029】
ヒト抗体またはそれらのフラグメントが、本発明の好ましい実施形態である。好ましくは、IgG1重鎖とラムダ軽鎖とを有するIgG1(たとえば、IgG1λ)抗体が有利に用いられてもよい。しかし、カッパまたはラムダ軽鎖に組み合わせた、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgAsec、IgDおよびIgEを含む、他のヒト抗体アイソタイプも本発明に包含される。また、動物に由来する抗体の多様なアイソタイプの全ては、本発明において用いることができる。抗体は、Fab、F(ab’)2、単鎖Fvフラグメント、または単一ドメインVHH、VHもしくはVLを含む、全長抗体または抗体の抗原結合フラグメントとすることができる。
【0030】
用語「シトルリン化エピトープに反応する特異的結合分子」は、ペプチドまたはペプチド核酸またはアプタマーまたは疑似ペプチド構造のような大きな構造の文脈において、シトルリン残基に特異的に反応する特異的結合分子として解釈される。
【0031】
シトルリンは、通常の翻訳の間にタンパク質に組み込まれないアミノ酸であるが、ペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD)によるアルギニン残基の翻訳後修飾によって生成されてもよい。
【0032】
シトルリン化は、アルギニン残基をシトルリン残基に翻訳後変換することであり、ペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD)によって触媒される。ペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD、EC3.5.3.15)酵素は、タンパク質においてアルギニン残基をシトルリン残基に変換することを触媒する。シトルリンについてのtRNAは存在せず、タンパク質中におけるシトルリン残基の存在は、全て翻訳後修飾の結果である。哺乳類(ヒト、マウスおよびラット)における5種のPADアイソタイプ(PAD1〜PAD6、「PAD4」および「PAD5」は同一のアイソタイプに用いられる)は、別個の遺伝子にコードされ、それぞれ同定された(Vossenaar, et al., Bioessays 25, 1106-1118, 2003)。全てのこれらの酵素は、活性についてCa2+の存在に強く依存しており、遊離のL−アルギニンを遊離のL−シトルリンに変換することはできない。遊離のL−アルギニンは、細菌真核生物においては一酸化窒素合成酵素(EC1.14.13.39)によって、または細菌においてはアルギニンデイミナーゼ(EC3.5.3.6)によって、遊離のL−シトルリンに変換することができる。これらの酵素は、Ca2+に依存していない。
【0033】
相同性の高いPAD酵素の間の最も顕著な相違は、それらの組織特異的な発現である。表皮におけるPAD1(同義語として、PADI、PADタイプI)は、角化エンベロープの再組織化のために重要である、ケラチノサイト分化の最終段階の間におけるケラチン繊維のシトルリン化に関与している。表皮におけるシトルリン化の他の部位は毛包であり、PAD3(同義語として、PADIII、PADタイプIII)およびその天然基質であるトリコヒアリンを(THH)を含む。THHは、毛包内毛根鞘細胞および毛包髄質層、ならびにそれほどではないにせよ他の特殊な上皮の髄質層の主要な構造タンパク質である。ごく最近同定されたPADアイソタイプ、PAD6(同義語としてePAD)は、初期胚発生に重要な役割を果たすマウス卵母細胞の細胞シートにおいて見出された。そのヒトオーソログの発現は、卵巣、精巣、末梢血白血球に制限されることが見出された(Chavanas et al., Gene vol 330; 19-27, 2004)。当初、このPADアイソタイプは、ePADと称されたが、他のPADの系統番号に基づいて、このアイソタイプはPAD6(Vossenaar et al., Bioessays vol 25 1106-1118, 2003)に改名された。最も広く発現するアイソタイプであるPAD2(同義語として、PADII、PADタイプII、PAD−H19)は、骨格筋、脳、脾臓、分泌腺およびマクロファージのような多くの異なる組織に存在する。この広範な発現パターンにも関わらず、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)およびビメンチンのみが天然基質として同定されている。多発性硬化症(MS)の患者では、MBPに対する自己免疫応答が発生する。MBPは、ミエリン鞘に豊富なタンパク質であり、そのシトルリン化は中枢神経系の発生中に生じる。ビメンチンのシトルリン化は、カルシウムイオノフォアに誘導される、ヒトおよびマウスにおけるマクロファージのアポトーシスの間に観察され、上述したように、シトルリン化されたビメンチンは、RA特異的な抗Sa自己抗体の標的であることが示された。全て主に細胞質に局在する上述したPADsとは対照的に、PAD4アイソタイプ(同義語として、PADIV、PADタイプIV、HL−60PAD、PAD V、PADタイプV、PADI4)は核内に存在する。PAD4の核局在化シグナルは、タンパク質のN末端領域で見出された。PAD4は、主に末梢血の顆粒球および単球に発現する。核内におけるPAD4の基質は、ヒストンコアタンパク質(H2A、H3およびH4)ならびにリボソームアセンブリ、核細胞質間輸送および中心体の複製に機能する核小体タンパク質であるヌクレオホスミン/B23である。
【0034】
本発明にかかる特異的結合分子は、それぞれ15kDaおよび17kDaであるそれらの分子量によって特徴付けられる2つのポリペプチドである、p15および/またはp17におけるシトルリン化エピトープを対象とする。
【0035】
このような特異的結合分子は、炎症性疾患の治療または予防に特に適していることが見出された。
【0036】
本明細書において用いられる、「炎症性条件」または「炎症性疾患」は、好中球の浮腫および浸潤(たとえば、急性炎症反応)、単核球による組織の浮腫、炎症細胞、結合組織細胞およびそれらの細胞性産物による組織破壊、ならびに結合性組織の置換による修復の試行(たとえば、慢性的な炎症反応)のような血管病変によって特徴付けられる任意の数の状態または疾患を表す。
【0037】
このような状態の代表的な例は、シトルリンに関連する炎症性疾患および自己免疫疾患を含む。シトルリン関連炎症性疾患は、シトルリンが疾患の発症に影響を与える疾患として本明細書において定義される。シトルリンが疾患の発症に影響を与えるか否かは、当分野において利用可能な常用試験を用いて当業者によって容易に決定されてもよい。たとえば、これらの疾患は、罹患した、または疾患に関連する組織におけるシトルリン化タンパク質の異常な量の存在によって特徴付けられてもよい。このことは、ウエスタンブロットまたはELISAのような免疫学的検査によって達成することができ、罹患した組織は抗原として用いられ、その抗原のシトルリン化は本明細書に記載されたような抗シトルリン抗体を用いて検出されてもよい。
【0038】
また、当業者は、罹患患者由来の患部組織と健康な組織とにおける、シトルリンの量および種類を比較するためのマススペック分析のようなプロテオミクスアプリケーションを用いることができる。
【0039】
また、疾患は、ペプチドまたはタンパク質を含むシトルリンに対する免疫応答の存在によって特徴付けられてもよい。これは、T細胞またはB細胞によって媒介される応答のような、体液性または細胞性免疫応答であってもよい。検査のための抗シトルリン抗体は、当分野で記述され、市販されている。
【0040】
したがって、本発明は、シトルリンに関連する炎症性疾患の、治療または予防における使用のための特異的結合分子に関する。
【0041】
このような疾患は、たとえば、関節リウマチおよび変形性関節症、多発性硬化症、乾癬性関節炎、乾癬、アルツハイマー病、自己免疫性肝炎、若年性特発性関節炎、脊椎関節症、ダウン症候群、多系統萎縮症、パーキンソン病、ならびにレビー小体型認知症を含む炎症性関節炎である。したがって、本発明は、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、多発性硬化症、乾癬性関節炎、乾癬、アルツハイマー病、自己免疫性肝炎、若年性特発性関節炎、脊椎関節症、ダウン症候群症候群、多系統萎縮症、パーキンソン病およびレビー小体型認知症からなる群から選択される疾患の治療または予防における使用のための特異的結合分子に関する。
【0042】
特に、本発明は、自己免疫疾患、より具体的には関節リウマチまたは変形性関節症の治療または予防のための特異的結合分子に関する。
【0043】
多発性硬化症またはMSは、ミエリン鞘の自己免疫性破壊によって特徴付けられる中枢神経系の慢性炎症性疾患である。ミエリン鞘の細胞は、約3:1の割合の脂質タンパク質複合体からなる軸索周囲の多重二分子層構造を形成する。2つの主要なタンパク質であるMBPおよびプロテオリピドタンパク質が、タンパク質画分の85%を占める。MBPは、高カチオン性タンパク質であり、ホスファチジルセリンのような負に帯電したリン脂質と強い相互作用を形成することができる。健康な成人におけるMBP分子の約18%では、6個(19個中)のアルギニンがシトルリン化される(Wood et al., J Biol Chem, vol264, 5121-5127, 1989, Wood et al., Ann Neurol, vol40, 18-24, 1996)。残りのMBP分子は、シトルリンを含んでいない。MS患者において、MBP−cit6の割合は全MBPの45%に増加する。MBP−cit6における正の実効電荷(net positive charge)の減少は、MBP分子の部分的なアンフォールディングを引き起こし、リン脂質とのそれらの相互作用を弱める(Boggs et al., J Neurosci Res, vol57, 529-535, 1999, Pritzker et al., Biochemistry, vol39, 5374-5381, 2000)。MBP−cit6は、非シトルリン化MBPよりも迅速に脂質複合体を形成することができるが、形成された複合体は、非シトルリン化MBPによって形成された複合体の充填された密度ほどではなく形成される(Boggs et al., J Neurosci Res, vol57, 529-535, 1999, Beniac et al., J Struct Biol, vol129, 80-95,2000)。MBP−cit6は、非シトルリン化MBPよりも4倍の速さでカテプシンDによって分解される(Cao et al., Biochemistry, vol38, 6157-6163, 1999)。急性劇症のMS(マールブルグ型)のまれなケースでは、MBPの分子の80%が重度にシトルリン化される(MBPcit18)(Wood et al., Ann Neurol, vol40, 18-24, 1996)。重度にアンフォールドされたMBP−cit18は、通常のMBPよりも45倍の速度でカテプシンDによって分解される(Cao et al., Biochemistry, vol38, 6157-6163, 1999)。抗がん剤タキソールの有効成分であるパクリタキセルの臨床試験が、進行中である(O'Connor et al., Ann Neurol, vol46, 470, 1999)。低用量のパクリタキセルは、in vitroにおいてPAD2によるMBPのシトルリン化を抑制することができる(Pritzker et al., Biochim Biophys Acta, vol1388, 154-160, 1998)。パクリタキセルによる治療は、臨床的な症状を和らげ、損傷した鞘の再ミエリン化を誘導し(Moscarello et al., Mult Scler, vol8, 130138, 2002)、脱ミエリン化疾患における候補因子としてPADの潜在的重要性を際立たせた(Moscarello et al., J Neurochem, vol81, 335-343, 2002)。
【0044】
乾癬では、ケラチノサイトが非常に急速に増殖し、約4日間で基底層から表面に移動する。これらの細胞は、厚く、乾燥したパッチまたはプラークに蓄積されるので、皮膚はそれらの細胞を充分に迅速に脱落させることができない。通常のケラチノサイトでは、ケラチンK1は、末端の分化の間にPAD1によってシトルリン化される。この過程は、表皮における通常の角化のプロセスに不可欠である、ケラチンフィラメントをコンパクト化する原因となる。乾癬性高増殖性プラークにおけるケラチノサイトは、シトルリン化ケラチンK1を含まない(Ishida-Yamamoto et al., J Invest Dermatol, vol114, 701-705, 2000)。細胞増殖の増加がPADによる適切なシトルリン化を予防するか、またはPADの不活性化がケラチノサイトの過剰増殖および蓄積を可能にするのかは明らかではない。メカニズムは不明であるが、乾癬表皮における異常なシトルリン化は明らかにPAD1に関する。
【0045】
好ましい実施形態では、本発明にかかる組成物は、水溶液、ゲル、ヒドロゲル、フィルム、ペースト、クリーム、スプレー、軟膏またはラップからなる群から選択される形態である。さらなる実施形態において、上述の方法は、関節内、腹膜内、腹腔内、局所、直腸、静脈内、経口、眼または腫瘍の周辺部の切除から選択される経路によって、本明細書に記載された組成物の投与のために用いられる。
【0046】
特定の実施形態において、薬学的に許容される担体は、共溶媒溶液、リポソーム、ミセル、液晶、ナノ結晶、ナノ粒子、エマルジョン、微粒子、微小球、ナノスフェア、ナノカプセル、ポリマーまたはポリマー担体、界面活性剤、懸濁化剤、シクロデキストリンまたはアルブミンのような吸着分子などの錯化剤、表面活性粒子およびキレート剤からなる群から選択される少なくとも1つの担体を含む。さらなる実施形態では、多糖類は、ヒアルロン酸およびその誘導体、デキストランおよびその誘導体、セルロースおよびその誘導体(たとえば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、コハク酸酢酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、キトサンおよびその誘導体、[ベータ]−グルカン、アラビノキシラン、カラギーナン、ペクチン、グリコーゲン、フコイダン、コンドロイチン、デルマタン、ヘパラン、ヘパリン、ペントサン、ケラタン、アルギン酸塩、シクロデキストリンならびにそれらのエステルおよび硫酸塩を含む塩および誘導体を含む。
【0047】
さらに別の態様において、本発明にかかる方法は、本発明にかかる組成物を標的部位、特に滑膜関節に送達することを含む。
【0048】
本発明のある特定の実施例では、特異的結合分子は、p15および/またはp17に結合するモノクローナル抗体である、RhmAb2.102、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111、RhmAb2.112およびRhmAb22.101に競合する。
【0049】
これらの抗体は、それらの重鎖および軽鎖の一次アミノ酸配列によって本明細書に開示される。表10を参照。
【0050】
【表10】
本明細書に開示されたようなモノクローナル抗体と競合する結合分子または抗体は、通常の手順によって選択されてもよい。要するに、本明細書に開示されたような抗原が固体支持体上に固定化されるELISAのような結合分析が、開発されてもよい。本明細書に開示されるようなモノクローナル抗体は、標識されてもよく、固定化された抗原へのそれらの結合の妨害は、通常の分析によって容易に決定されてもよい。これらの方法およびさらに洗練された他の方法が、当業者に知られており、通常の研究室で規定通りに行うことができる。
【0051】
特に、分析は、固体支持体上に固定化された配列番号21、配列番号24、配列番号26、配列番号37および配列番号38にかかる抗原性タンパク質の全てを用いて容易に開発されてもよい。RhmAb2.102、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111、RhmAb2.112およびRmmAb22.101からなる群から選択されたモノクローナル抗体は、標識されてもよく、試験抗体の存在下および非存在下において固定化抗原と接触させられてもよい。試験抗体が、結合を妨害する場合、すなわち標識された抗体で得られるいずれかのシグナルを低下させる場合、試験抗体は、標識された抗体の結合と競合すると結論付けてもよい。よって、そのような競合抗体は、本発明の方法における使用のために好適であろう。
【0052】
したがって、本発明は、配列番号21、配列番号24、配列番号26、配列番号37および配列番号38からなる群から選択されるペプチドに特異的に反応する、関節リウマチの治療または予防における使用のための抗体に関する。
【0053】
モノクローナル抗体RhmAb2.101の可変領域の一次mRNA配列が公開され、表1に示すような受入番号でEMBLデータベースに供託された。モノクローナル抗体RhmAb2.102、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112の可変領域の一次配列は、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号18、配列番号39、配列番号20、配列番号41、配列番号40、配列番号19、配列番号43および配列番号42として本明細書において開示される。
【0054】
マウスモノクローナル抗体であるRmm22.101およびRmmAb22.102は、DSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH, Inhoffenstra7B, 38124 Braunschweig, GERMANY)に供託されたハイブリドーマに由来し、受け入れられたDSMZ供託番号は、それぞれACC3031およびACC3032であった。シークエンス後、それらは、配列番号44および配列番号45に示される同一のDNA配列を有することが明らかになった。
【0055】
したがって、本発明は、配列番号18、配列番号17、配列番号20、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号19、配列番号43、配列番号42、配列番号44および配列番号45からなる群から選択される、可変重鎖または軽鎖を含むポリペプチドにも関する。また、本発明は、配列番号18、配列番号17、配列番号20、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号19、配列番号43、配列番号42、配列番号44および配列番号45からなる群から選択されるポリペプチドをコードする核酸に関する。また、本発明は、Rmm22.101およびRmmAb22.102に存在するような可変重鎖および軽鎖を含むポリペプチドに関する。
【0056】
また、本発明は、配列番号44および配列番号45に示される、RmmAb22.101およびRmmAb22.102に存在するような可変重鎖および軽鎖にかかるポリペプチドをコードする核酸に関する。
【0057】
別の好ましい実施形態では、特異的結合分子は、モノクローナル抗体RhmAb2.102、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112、RmmAb22.101、ならびにRmmAb22.102からなる群から選択される抗体である。
【0058】
別の好ましい実施形態では、特異的結合分子は、モノクローナル抗体RhmAb2.102、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112、RmmAb22.101、ならびにRmmAb22.102からなる群から選択される抗体に由来する、または前記モノクローナル抗体から得られるVHおよび/またはVLドメインを含む。
【0059】
この文脈において、用語「由来する」または「得られる」は、VHおよび/またはVLドメインの一次構造が本明細書に開示されるタンパク質および核酸配列から決定されてもよく、たとえばマウスVHまたはVLドメインを示すヒト抗体文脈のような、異なる文脈において複製され、再配列されてもよいことを意味する。より詳細には、この点について、用語「由来する」または「得られる」は、特定の抗体におけるVHおよび/またはVLドメインの特異的結合特性に関する必須の残基が同定され、これらの必須の残基またはそれらの構造的ホモログが他のペプチドの文脈に移されることを意味する。
【0060】
本発明にかかる特異的結合分子は、2つの方法で本質的に作り出されてもよい。第1に、それらは本明細書に示されるような、抗体およびその配列に由来してもよい。抗体の反応性は、部位特異的突然変異誘発、chainシャフリング、sexual PCR法、または当業者に知られる抗体の導出および最適化のための他の手段によって改良されてもよい。代替的に、特異的結合分子、特に抗体は、本明細書に記載されたような任意の特異的反応性エピトープ、特に、脱イミノ化ヒストン2A、ペプチド1(配列番号21)および他の特異的反応性ペプチドにパニングすることによって得られてもよい。
【0061】
当業者は、たとえば、以下の実施例に記載されたように、cDNAまたはゲノム配列をクローニングまたは作り出すために本明細書に記載された配列を用いてもよい。pcDNA3(In Vitrogen)またはそれらの誘導体のような適切な真核生物の発現ベクターにおけるこれらの配列のクローニング、続いて適切な軽鎖と重鎖との組み合せを含むベクターを用いた哺乳類細胞(たとえば、CHO細胞)のトランスフェクションは、記載された抗体である、RhmAb2.102、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112、RmmAb22.101、ならびにRmmAb22.102の発現および分泌をもたらすであろう。また、マウスモノクローナル抗体RmmAb22.101およびRmmAb22.102は、供託されたような、それぞれのハイブリドーマ細胞株(DSMZ番号ACC3031およびACC3032)によって、直接発現されてもよく、分泌されてもよい。
【0062】
また、当業者は、抗体配列の特異的結合ドメインを用いて本明細書に記載されたような特異的結合分子の類似体を作製し、融合タンパク質のようなポリペプチドなどの異なる状況でそれらを発現させてもよい。このことは、当分野でよく知られている。
【0063】
ヒトおよびマウスのリコンビナント抗シトルリンモノクローナル抗体は、実施例1、13および14に記載されたようにして得られた。モノクローナル抗体重鎖RhmAb2.102、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112は、マウスリーダー配列(配列番号12)およびヒトIgG1Fc領域(配列番号14)によって得られた。モノクローナル抗体軽鎖RhmAb2.102、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.111およびRhmAb2.112は、マウスリーダー配列(配列番号12)およびヒトラムダ定常領域(配列番号16)によって得られた。モノクローナル抗体RhmAb2.110は、マウスリーダー配列(配列番号12)およびヒトカッパ定常領域(配列番号11)によって得られた。
【0064】
マウス抗シトルリンペプチドモノクローナル抗体であるRmmAb13.101、RmmAb13.102およびRmmAb13.103は、商業的供給源から入手した(ModiQuest Research BV Nijmegen、The Netherlands、カタログ番号、MQ13.101、MQ13.102およびMQ13.103)。
【0065】
抗シトルリン抗体は、実験モデルにおいて試験され、炎症は、マウスに抗コラーゲン抗体を注入することによって誘導された。このモデルは、コラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)として知られている(Nandakumar and Holmdahl, J Immunol Methods, vol304, 126-136, 2005)。抗コラーゲン抗体は、商業的供給源(ModiQuest Research BV Nijmegen、The Netherlands、カタログ番号、MQ18.101)から入手した。
【0066】
マウス抗シトルリンモノクローナル抗体である、RmmAb13.101、RmmAb13.102およびRmmAb13.103は、Kuhnら(J.Clin. Invest, vol116, 961-871, 2006)、およびHillら(J Exp Med, vol 205, 967-979, 2008)によっても記載されたようにコラーゲン抗体に誘導される関節炎の重症度を増すことが確認された。このことは、図1aおよび1bに示す。
【0067】
さらに、ヒト患者におけるいくつかの研究は、シトルリン化エピトープに対する抗体がRAの発症を増加させることを示す(Masson-Bessiet al., J.immunol, vol166, 4177-4184, 2001、Vossenaar and van Venrooij, Arthritis Res Ther, vol6, 107-111, 2004)。このことは、同じ実験の「平均関節炎スコア」および「関節炎の発症率」をそれぞれ示す、図1aおよびbに示される。
【0068】
しかし、驚くべきことに、ヒトモノクローナル抗体RhmAb2.102は、CAIAモデル実験における関節炎の臨床症状を顕著に軽減させた。
【0069】
RhmAb2.102で得られた結果は、図1cおよび1dに示される。RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112で得られた結果は、図9に示されるように、RhmAb2.102に比較してさらに優れていた。
【0070】
ヒトモノクローナル抗体であるRhmAb2.101は、適用された用量において、関節炎の臨床症状に全く効果を有しなかった。市販の抗体であるRhmAb2.201は、本実験において不適切な抗体のコントロールとして用いられる(ModiQuest Research B.V., カタログ番号、MQR2.201)。この抗体は、シトルリン化エピトープを認識しない。
【0071】
また、同一の動物実験が、ヒト抗体RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112と同様のエピトープ集団を認識するマウスモノクローナル抗体である、RmmAb22.101およびRmmAb22.102を用いて行われた。
【0072】
ヒト抗体RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112と同様の結果が、CAIA動物実験において得られた。マウスモノクローナル抗体RmmAb22.101およびRmmAb22.102は、関節炎の臨床症状を消失させた(図10)。
【0073】
図1eおよび1fは、RhmAb2.102のための臨床用量を評価した独立のCAIA実験を示す。最大の抑制をもたらした最低用量は、0.5mgAb/マウスであり、これは腹腔内注入における28mg/kgに相当する。
【0074】
これらの実験から、RhmAb2.102、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112、RmmAb22.101、ならびにRmmAb22.102からなる群から選択されるモノクローナル抗体によって認識される特異的エピトープは、炎症性疾患の治療または予防に重要な役割を果たすと結論付けられる。したがって、これらのエピトープの特異的遮蔽は、特に関節リウマチのような炎症性疾患の効果的な治療となる可能性がある。
【0075】
これらのモノクローナル抗体によって認識される抗原(antigen)または抗原(antigens)をさらに解析するために、それらは、実施例3に記載されたように、ペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD酵素)を用いて脱イミノ化された細胞抽出物に対するそれらの反応性について試験された。hPAD2またはhPAD4をトランスフェクトされ、翻訳後に脱イミノ化されたCOS−1ライセートを含むウエスタンブロットは、モノクローナル抗体であるRhmAb2.101およびRhmAb2.102とともにインキュベートされた。RhmAb2.102とともにインキュベートされた細長い一片(strip)のみが、約15および17キロダルトンの分子量を有するタンパク質の二量体に反応を示した。
【0076】
WO2004/078098は、T細胞の活性化を阻害するための、シトルリン化ペプチド/MHCクラスII複合体に対する特異的な抗体を開示している。これらの抗体は、分離されたペプチドまたはMHCクラスII分子に結合しないが、ペプチドとMHCクラスII分子との複合体にのみに結合する。本明細書において開示された抗体は、本明細書に記載されたような個々のペプチドおよびタンパク質を認識するので、WO2004/078098に記載された抗体とは異なる。さらに、ペプチドとMHCクラスII分子との間の複合体はイムノブロットの手順において用いられるSDSゲルの還元条件において全く残存することができないので、抗体は、ペプチドとMHCクラスII分子との間で複合体を形成することができないウエスタンブロットにおいてポリペプチドを認識する。したがって、本明細書に開示されたような結合分子によって認識されるエピトープは、WO2004/078098に開示された抗体とは異なる。さらに、本明細書に記載されたような抗体は、ペプチドとMHCクラスII分子との複合体に特異的に反応しない。
【0077】
上述された実験および考察は、炎症性疾患の臨床症状を防ぐための能力と、p15およびp17におけるシトルリン化エピトープの反応性との間に明確な相関関係があるという結論に我々を導いた。
【0078】
実施例5に詳述したように、ヒトモノクローナル抗体RhmAb2.101およびRhmAb2.102を免疫沈降実験において用いた場合も同様のデータが得られた。
【0079】
ヒトPAD2およびPAD4の両者による脱イミノ化COS−1ライセートにおける、RhmAb2.102を用いた免疫沈降は、顕著なp15およびp17タンパク質のバンドを示した。
【0080】
したがって、p15およびp17タンパク質の認識強度は、これらの抗体の治療特性に深く関連していると思われる(図1a〜d)。
【0081】
抗体が、p15またはp17に反応するか否かは、実施例4および5で詳述されたように、免疫沈降またはウエスタンブロット分析を行うことによって容易に確立されてもよい。また、RhmAb2.102、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112、RmmAb22.101、ならびにRmmAb22.102を用いる競合実験は、脱イミノ化COS−1ライセートを含むウエスタンブロット、またはウエスタンブロットもしくはELISAにおける精製された脱イミノ化p15および/もしくはp17タンパク質を用いて行われてもよい。
【0082】
タンパク質p15およびp17は、実施例6に詳述されたように、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化時間飛行質量分析法(MALDI−TOF MS)によってさらに特徴付けられる。アフリカミドリザルのゲノムは完全に配列決定されていないので、我々は、MALDI−TOF MSを用いて見出されたペプチドと相同である他の全ての哺乳類ゲノムデータベースをスクリーニングした。高い相同性を有するタンパク質は、ヒストンであることが判明した。このことは、表3(実施例6)に示される。
【0083】
したがって、本発明は、炎症性疾患の治療または予防における使用のための、ヒストンにおけるシトルリン化エピトープに特異的に反応する結合分子にも関する。
【0084】
PADの酵素作用によるヒストンのシトルリン化は十分に実証されているので、シトルリン化ヒストンはin vitroにおいて非常に容易に作製されてもよい。このため、これらのシトルリン化ヒストンは、シトルリン化p15およびp17、すなわちヒストンにおけるエピトープに反応する、ペプチドおよび抗体のような他の特異的結合分子をスクリーニングおよび選択するための酵素結合アッセイにおける基質として用いられてもよい。好ましくは、特異的結合分子は、p15および/またはp17への結合について、抗体RhmAb2.102、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112、RmmAb22.101、ならびにRmmAb22.102に競合するものから選択される。
【0085】
この文書およびその特許請求の範囲において、動詞「含む」およびその語形変化は、以下に続く語が含まれる項目を意味するための非限定的な意味で用いられるが、具体的に記載されていない項目が除外されるものではない。また、不定冠詞「a」または「an」による要素表現は、文脈上明確に1つおよび1つの要素のみが存在することが要求される場合を除き、1つ以上の要素が存在している可能性を除外するものではない。このため、不定冠詞は、「a」または「an」は通常「少なくとも1つの」を意味する。
【0086】
脱イミノ化ヒストンまたはヒストンのいずれがRhmAb2.102、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112、RmmAb22.101、ならびにRmmAb22.102の治療効果に関与するかをさらに解析するために、市販のヒストン(H1、H2A、H2B、H3およびH4)をヒトペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD、EC3.5.3.15)酵素(huPAD2またはhuPAD4)で脱イミノ化した。脱イミノ化ヒストンと、脱イミノ化されていないヒストンとを、96ウェルELISAプレートに塗布し、RhmAb2.101およびRhmAb2.102の連続希釈液とともにインキュベートした。結果を、表6および図2に示す。
【0087】
図2に示される結果から、脱イミノ化ヒストン2A、ヒストン3およびヒストン4は、抗体医薬であるRhmAb2.102によって認識されるが、RhmAb2.101によって認識されず、または顕著に低い親和性であった(図2a、2b)。
【0088】
さらに、これらの結果は、RhmAb2.102と、RhmAb2.101との間の親和性におけるこの相違が、ヒトPAD2および/またはPAD4脱イミノ化H2Aと、ヒトPAD4脱イミノ化ヒストン3と、ヒトPAD4および/またはPAD2脱イミノ化ヒストン4とについて最も大きいことを示す。
【0089】
これらのデータは、RhmAb2.102が関節炎の臨床症状を完全に消滅させるが、RhmAb2.101が関節炎の臨床症状に全く効果がない、CAIAモデル実験における関節炎の臨床症状におけるこれらの抗体の効果とよく相関する(図1cおよび図1d)。
【0090】
したがって、我々は、H2A/p4およびH2A/p2またはその構造的模擬体における脱イミノ化エピトープは、RAの炎症カスケードに重要な役割を果たしていることを示した。H3/p2、H4/p2およびH4/p4における脱イミノ化エピトープについても同様である。なぜなら、RhmAb2.102は、RhmAb2.101に比較してこれらのヒストンに対する高い親和性を示すためである(図2a、2b)。
【0091】
模擬体は、たとえば、等価な活性の許容程度を有する分子であり、この場合、RhmAb2.101に比較してRhmAb2.102によって高い親和性で認識されるものを含む。
【0092】
したがって、本発明は、ヒトPAD4もしくはヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストン2Aもしくはヒストン4、またはヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH3におけるシトルリン化エピトープに反応する、上述したような特異的結合分子に関する。
【0093】
RhmAb2.102によって認識される、H2Aにおける正確なシトルリン化エピトープをさらに特定するために、ヒストン2Aの潜在的な脱イミノ化部位を含む、表4に示されるようなビオチン標識化ペプチドを合成した。これらのペプチドを、96ウェルニュートラアビジンELISAプレートに塗布し、RhmAb2.101およびRhmAb2.102の連続希釈液とともにインキュベートした。結果を図3に示す。
【0094】
【表6A】
【0095】
【表6B】
【0096】
【表7】
【0097】
【表8】
ペプチド1(AAASGXGKQGGK:配列番号21)は、抗体医薬であるRhmAb2.102によって認識されるが、RhmAb2.101によっては認識されないことが観察された(表4および図3a、3b)。ペプチド4および6における脱イミノ化エピトープについても同じことが当てはまる(表4)。なぜなら、RhmAb2.102は、RhmAb2.101よりも、これらのペプチドに対する高い親和性を示すためである(図3a、3b)。我々は、それとともに、ペプチド1、4および6における、脱イミノ化エピトープまたはそれらの構造的等価物もしくは模擬体がRAの炎症カスケードに重要な役割を果たしていることを示した。この抗体の認識パターンは、H2A/p4およびH2A/p2の認識パターンに非常に似ている。したがって、我々は、本発明にかかる特異的結合分子は、ペプチド1、4および6(それぞれ、配列番号21、配列番号24および配列番号26)に対するそれらの反応性によって定義されてもよいと結論付けた。これらの各シトルリン含有ペプチドもしくはそれらの誘導体、そのような個々のペプチドもしくはそのようなペプチドの組み合わせ、または1以上のそのようなペプチド配列を含む構造体は、本発明にかかる抗体のような特異的結合分子を作り出すために個々に用いられてもよい。そのうえ、そのような抗体は、適した反応性について本明細書に開示されたような、任意の他の抗原に対して選択されてもよい。
【0098】
【表4】
ビオチン標識され、シトルリンを含む、フィブリノゲンおよびビメンチンペプチド(表5)についても、抗体医薬との反応性について調べた。ペプチドを96ウェルニュートラアビジン−ELISAプレート上に塗布した。続いて、RhmAb2.101、RhmAb2.102の連続希釈液を塗布されたプレートに添加した。結果を表8および図4に示す。
【0099】
【表5】
マウスフィブリノゲンβペプチド(配列番号37)が、RhmAb2.101およびRhmAb2.102によって認識されることが観察された(図4a)。RhmAb2.102は、RhmAb2.101と比較して高い親和性を示した(図4a、4b)。さらに、RhmAb2.102のみが、マウスビメンチンペプチドを認識した(実施例9)。上述したペプチド以外でも、msFibβ(配列番号37)およびmsVim(配列番号38)ペプチドにおける脱イミノ化エピトープがRAの炎症カスケードに重要な役割を果たしている可能性が非常に高い。しかし、それとともに、我々の抗体医薬の抗炎症作用における重要な役割を果たす上で、フィブリノゲンおよびビメンチンにおける他のエピトープも除外されない。
【0100】
したがって、本発明は、ペプチドmsFibβまたはmsVim(配列番号37または配列番号38)におけるエピトープに特異的に反応する、上述したような特異的結合分子、およびそれらの使用にも関する。
【0101】
また、我々は、シトルリン化エピトープが炎症組織で新たに現れることを示した。関節リウマチの実験用マウスモデルにおいて、我々は、ヒトモノクローナル抗体102(RhmAb2.102)を用いて、罹患マウスの炎症を起こした前足からシトルリン化ペプチドを免疫沈降可能であることを示すことができた。
【0102】
したがって、通常のCAIA実験を、0日目に8つの抗コラーゲン抗体(2.8mg/マウス)の混合物を腹腔内注入したマウス(グループあたり3匹)において行った。3日後、マウスに25μgのLPSを含む別の腹腔内注入を行った。採点は上述したように行った。この実験の間、毎日1グループのマウスを犠牲し、足をウエスタンブロット解析および免疫組織化学的手法によってシトルリンの存在について分析した。
【0103】
各グループのマウスについて前足を集めて抽出した。免疫沈降(IP)を、IP毎に20マイクログラムのRhmAb2.102を用いてこれらの抽出を行った。沈殿物について、SDS−PAGE電気泳動を行い、ウエスタンブロット法によってニトロセルロース膜に転写した。前記ブロットを、第1に全タンパク質を検出するためにポンソーSで染色した。ポンソーS染色は、各IPについて同量の抗体が用いられたことを確かめるために行われる。明白な抗体の重鎖および軽鎖が同量で観察できた。
【0104】
続いて、ブロット上に存在するシトルリン残基を、Senshuらに従って化学的に修飾した(Senshu et al, Anal Biochem 203, 94〜100, 1992)。化学的修飾は、その後、シトルリン残基の化学修飾を認識する抗体を用いて可視化されることができる(Senshu et al, Anal Biochem 203, 94〜100, 1992)。脱イミノ化フィブリノゲンは、この実験においてポジティブコントロールとして用いられた。これらの実験のネガティブコントロールとして、抽出物を含まない免疫沈降を用いた。
【0105】
4日目からは、50、15および17キロダルトンの分子量を有するタンパク質に対応する位置のブロット上に顕著なバンドが現れた。これらのバンドは、5日目により顕著になり、6日目に最も濃くなった。
【0106】
通常の関節炎スコアを有するマウスにおける、実験での関節炎の発症率は100%であり、6日目に5+に達した(図5Aおよび5B)。沈殿するタンパク質の量は、時間経過にともなって増加し、4日目〜6日目に可視化される。RhmAb2.102のシトルリン特異性および抗化学修飾化シトルリン抗体を用いて得られたブロットにおけるシグナルの存在に基づいて、我々は、CAIAにさらされたマウスが、それらの炎症化関節において検出可能なシトルリン量を有すると結論付けることができる。
【0107】
上述されたCAIA実験において、マウスの足における炎症が、未だ存在しないか、非常に軽度のときに、抗シトルリン抗体を抗コラーゲン抗体注入後3日目に注入した。このことは、臨床症状の発生を予防したので、炎症の治療、特に予防処置において有用である。
【0108】
したがって、我々は、RhmAb2.102も一度生じた臨床症状を治すことができるのかについて実験を必要とした。このことは、全てのマウスの四足全ての平均関節炎スコアが約4の任意スコアに達した抗コラーゲン注射後7日目に動物を処置することによって行った。図6Aおよび6Bに示されるように、RhmAb2.102は、観察される腫脹を消滅させるのではなく、存在する炎症/腫脹を安定させた。動物を、偽薬およびRhmAb2.102で処置したマウスの間において炎症スコアが同程度であった後である35日目までの間追跡調査した(図6Bおよび実施例10)。図6Aは、各群の四足の全ての平均炎症スコアを示し、一方図6Bは、35日目において組織学的分析に用いられた動物の右後足の平均炎症スコアを示す。
【0109】
7日目におけるRhmAb2.102処置が、永久的な関節の損傷からマウスを保護することができるか否かについて調べるために、全ての動物における右後足の組織学的検査を行った(図7)。図7Aは、実験35日目における実験群の間の右後足の肉眼で確認できる炎症が類似していたことを示す。しかし、最も驚くべきことに、関節びらんについての既知パラメータの全てが低下した。RhmAb2.102を用いて7日目に処置された実験群において、炎症細胞の流入(D)、軟骨びらん(B)、軟骨PGの喪失(E)、軟骨細胞死(F)および骨のびらん(C)のスコアの著しい低下が観察された場合、RhmAb2.102は、炎症の間の関節損傷を予防することに関して強力な治療可能性を秘めていることが示される(実施例10)。したがって、本発明は、そのような処置を必要とする患者に対して、本明細書に記載されたような結合分子を投与することによって、関節の損傷を予防または治療するための方法に関する。
【0110】
さらに、5日目、6日目および7日目において、RhmAb2.102処置の各治療効果を調べるためにCAIA実験を行った(図8)。この実験において、RhmAb2.102は、炎症部位に迅速に抗体を送達するために静脈内に注入された。この実験には、3日目に予防処置を施した群およびコントロール群が含められた。実験手順は、実施例10のように行った。唯一の違いとして、3日目、5日目および6日目にマウスあたり1mgのRhmAb2.102を注入した。予期されたように、3日目におけるRhmAb2.102は、炎症反応を抑制した。5日目、6日目および7日目におけるRhmAb2.102の静脈内注入によるマウスの処置は、図6にも見られるように炎症を安定させた(図8)。炎症の徴候は減少しなかったが、関節びらんの全てのパラメータが低下したことは注目に値する。このことは、関節びらんと、炎症とが、別々に処置されてもよい2つの別の実体であることを示す。
【0111】
RhmAb2.102に優先的に結合する他の脱イミノ化タンパク質を質量分析によって同定した。さらに、RhmAb2.102に優先的に結合するが、RhmAb2.101に結合しないか、またはあまり結合しない脱イミノ化タンパク質も、追加の質量分析によって同定した。ヒトPAD4脱イミノ化ヒト胚性腎細胞(HEK293細胞)ライセートを、RhmAb2.101またはRhmAb2.102で免疫沈降し(実施例11)、high throughput nano-LC system coupled to an advanced, high-performance LTQ Fourier Transform Ion Cyclotron Resonance Mass spectrometer (nLC LTQ FTMS ULTRA)を行った(実施例12)。Exponentially Modified Protein Abundace Index (emPAI)と組み合わせた、その超高質量分解能、質量精度および感度の算出は、RhmAb2.102に(優先的に)結合する脱イミノ化タンパク質を同定することを可能にする。このことは、表7(実施例11および12)に示される。
【0112】
このため、本発明は、表7に示されるような任意のタンパク質またはポリペプチドに特異的に反応する、炎症性疾患の予防または治療における使用のための結合分子にも関する。
【0113】
要約すると、我々は、p15、p17からなる群から選択される分子におけるエピトープ、具体的には、ヒトPAD4および/またはPAD2脱イミノ化ヒトヒストン2Aにおけるシトルリン化エピトープ、ヒトPAD4脱イミノ化ヒトヒストン4、ヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH4、ヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH3、または表9のタンパク質からなる群から選択されるタンパク質におけるシトルリン化エピトープ、より具体的には、配列番号21、配列番号24、配列番号26、配列番号37および配列番号38にかかるペプチドに特異的に反応する、本明細書に明記されたような炎症性疾患の治療または予防における使用のための結合分子を本明細書に示した。所定の結合分子が、上述された分子に特異的に反応しているか否かは、p15もしくはp17におけるエピトープ、または上述された任意のシトルリン化エピトープへの結合について、RhmAb2.102、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112、RmmAb22.101、ならびにRmmAb22.102からなる群から選択される抗体と競合する結合分子の能力を分析することによって容易に決定されてもよい。
【0114】
本発明にかかる結合組成物の効果を示したことで、炎症性疾患は免疫応答を誘発することによっても治療または予防されてもよく、本発明にかかる特異的結合分子は患者自身の体において(in vivo)作り出されてもよいことが当業者に明らかである。このような免疫応答は、炎症性疾患の発症を防ぐため(予防、予防ワクチン)、または炎症性疾患の転帰を改善もしくは軽減、すなわち治療するために発生させられてもよい。
【0115】
したがって、本発明は、in vivoにおける免疫応答を誘発することによって炎症性疾患を予防または治療するための方法にも関し、p15、p17におけるシトルリン化エピトープ、ヒトPAD4および/またはPAD2脱イミノ化ヒトヒストン2Aにおけるシトルリン化エピトープ、ヒトPAD4および/またはPAD2脱イミノ化ヒトヒストン4、ヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH3におけるシトルリン化エピトープ、ならびに配列番号21、配列番号24、配列番号26、配列番号37および配列番号38にかかるペプチドからなる群から選択されるエピトープに反応する特異的結合分子が作り出される。
【0116】
本発明にかかるワクチンまたは治療は、本発明にかかる結合分子に特異的に反応するシトルリン化エピトープを効果的に含んでもよい。より詳細には、シトルリン化エピトープは、ヒトPAD4および/もしくはPAD2脱イミノ化ヒトヒストン2A、ヒトPAD4および/もしくはPAD2脱イミノ化ヒトヒストン4、ヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH3、または配列番号21、配列番号24、配列番号26、配列番号37および配列番号38からなる群から選択されるペプチドにおける、シトルリン化エピトープであってもよい。
【0117】
したがって、多数のシトルリン関連炎症性疾患が、治療または予防されてもよい。このため、本発明は、上述されたような方法にも関し、前記炎症性疾患は、自己免疫疾患、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、多発性硬化症、乾癬性関節炎、乾癬、アルツハイマー病、自己免疫性肝炎、若年性特発性関節炎、脊椎関節症、ダウン症候群、多系統萎縮症、パーキンソン病およびレビー小体型認知症からなる群から選択される。関節リウマチなどの自己免疫疾患の予防または治療が特に好ましい。
【0118】
本発明の実施形態は、in vivoにおける免疫応答に関するので、好ましい特異的結合分子は抗体である。
【0119】
当業者は、本発明において抗体を使用することがT細胞活性化または補体活性化のような免疫システムを活性化させない、または完全には活性化させないという利点があるという事実に気付くであろう。したがって、本発明がヒトに実行される場合、ヒトIgG4またはIgG2のFc部分を用いることが好ましい。
【0120】
また、本明細書において言及されるようなペプチドおよびタンパク質は、炎症性疾患、より好ましくは関節リウマチを診断するために、特異的な抗体の検出について抗原として用いられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】関節炎症状の重症度についてモノクローナル抗体の効果を検査するために、コラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)モデルを使用した。平均関節炎スコア(図1a、1c、および1e)および関節炎の発生率(図1b、1d、および1f)を示した。5〜6匹のマウス群について抗コラーゲン抗体を腹腔内注入することによって0日目に処置した。図1aおよび図1bに示される実験において使用されるマウスは、1.6mgの抗コラーゲン抗体混合物の投与を受け、一方、図1c−fに示される実験において使用されるマウスは、2.4mgの投与を受けた。抗シトルリン抗体またはコントロール抗体(RhmAb2.201)とともにLPS(25μg/マウス)を腹腔内投与によって3日目に投与した。グラフに記載されている場合を除いて、全ての抗体を1mg/マウスで投与した。13日目まで毎日動物を採点した。
【図2】huPAD2またはhuPAD4を用いて脱イミノ化したヒトリコンビナントヒストン(H1、H2A、H2B、H3およびH4)についてa)RhmAb2.101およびb)RhmAb2.102の親和性について検査するために、酵素標識免疫吸着測定法(ELISA)を使用した。脱イミノ化されたヒストンと同様に脱イミノ化されていないヒストンを96ウェルELISAプレート(0.3μg/ウェル)上に固定化した。CFC−1およびCFC−0を同じ濃度でコートし、特異的な抗シトルリン抗体の反応性について、それぞれ陽性コントロールおよび陰性コントロールとし、コーティングコントロールとした。コートされていないウェルを抗体の特異的結合について試験するために使用した。コートされたウェルを、10ug/ウェルから0.000128μg/ウェルに至るまでの範囲の連続抗体希釈液を用いて室温で1時間(Z軸)インキュベートした。結合した抗シトルリン抗体の検出は、ウサギ抗ヒトHRP(1:2000)を用いて室温で1時間インキュベートし、続いて、TMB基質とともにインキュベートすることによって行った。得られたOD(y軸)は、抗体結合の尺度である。H1=リコンビナントヒストン1、H1/p2=huPAD2リコンビナントヒストン1、H1/p4=huPAD4リコンビナントヒストン1など(x軸)。
【図3】ヒトヒストンH2Aに由来するペプチドを含むシトルリンに対する、a)RhmAb2.101およびb)RhmAb2.102の親和性試験に酵素標識免疫吸着測定法(ELISA)を用いた。ヒストン2Aに由来するペプチドを含む、ビオチンおよびシトルリンは、ニュートラアビジンでコートされた96ウェルELISAプレート(0.3μg/ウェル)上に固定化した。CFC−1およびCFC−0を、同じ濃度でコートし、特異的な抗シトルリン抗体の反応性について、それぞれ陽性コントロールおよび陰性コントロールとし、コーティングコントロールとした。コートされていないウェルを、各抗体の結合について試験するために使用した。コートされたウェルを、10ug/ウェルから0.000128μg/ウェルに至るまでの範囲の連続抗体希釈液を用いて室温で1時間(Z軸)インキュベートした。結合した抗シトルリン抗体の検出は、ウサギ抗ヒトHRP(1:2000)を用いて室温で1時間インキュベートし、続いて、TMB基質とともにインキュベートすることによって行った。得られたOD(y軸)は、抗体結合の尺度である。
【図4】フィブリノゲンおよびビメンチンに由来するペプチドを含むシトルリンに対する、a)RhmAb2.101およびb)RhmAb2.102の親和性試験に酵素標識免疫吸着測定法(ELISA)を用いた。フィブリノゲンおよびビメンチンに由来するペプチドを含む、ビオチンおよびシトルリンは、ニュートラアビジンでコートされた96ウェルELISAプレート(0.3μg/ウェル)上に固定化した。CFC−1およびCFC−0を同じ濃度でコートし、特異的な抗シトルリン抗体の反応性について、それぞれ陽性コントロールおよび陰性コントロールとし、コーティングコントロールとした。コートされていないウェルを、各抗体の結合について試験するために使用した。結合した抗シトルリン抗体の検出は、ウサギ抗ヒトHRP(1:2000)を用いて室温で1時間インキュベートし、続いて、TMB基質とともインキュベートすることによって行った。得られたOD(y軸)は、抗体結合の尺度である。
【図5】コラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)モデルを、足におけるシトルリンの出現を調べるために使用した。3匹のマウスの群について、0日目に腹腔内投与によって2.8mgの抗コラーゲン抗体を用いて処置し、続いて3日目にLPS(25μg/マウス)を追加で腹腔内に注入した。平均関節炎スコアおよび関節炎の発症率は、図5Aおよび5Bにそれぞれ示した。
【図6】抗コラーゲン抗体注入後7日目にRhmAb2.102を投与した場合のRhmAb2.102の治療効果を試験するために、コラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)モデルを使用した。全ての足の平均関節炎スコア(図6A)および右後足の平均関節炎スコア(図6B)を示す。5匹のマウスの群について、0日目に2.8mgの抗コラーゲン抗体を用いて腹腔内注入よって処置した。LPS(25μg/マウス)を、3日目に腹腔内注入によって投与し、RhmAb2.102(1mg/マウス)または偽薬を7日目に同一の経路によって注入した。動物について35日目まで毎日採点した。RhmAb2.102は存在する炎症を少なくとも安定化することが観察された。
【図7】ヘマトキシリン/エオシン染色およびサフラニンO染色された、RhmAb2.102または偽薬を用いて7日目に処置した全てのCAIA動物の右後足の組織スライドで組織学的分析を行った(図7)。軟骨びらん(B)、骨びらん(C)、炎症細胞の流入(D)、軟骨PGの喪失(E)、および軟骨細胞死(F)のパラメータは、染色された組織スライドにおいて採点された(0〜3の任意の尺度)。図7Aは、実験最終日(35日目)における実験群の間における右後足の肉眼で確認できる炎症を示す。各点は単一の動物を表す。水平な線は実験群内での平均スコアを示す。RhmAb2.102の注入は、永続的な関節の損傷からマウスを保護すると結論付けることができる。
【図8】抗コラーゲン抗体の注入後、3日後、5日後、6日後および7日後にRhmAb2.102を与えた場合のRhmAb2.102の治療効果を試験するために、コラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)モデルを用いた。5匹のマウスの群は、0日目に2.8mgの抗コラーゲン抗体を腹腔内に注入することによって処置した。LPS(25μg/マウス)を腹腔内注入によって3日目に投与した。RhmAb2.102(1mg/マウス)を、3日目、5日目、6日目または7日目に静脈内投与した。動物について19日目まで毎日採点した。グラフは、各実験群の平均関節炎スコアを示す。RhmAb2.102は、治療開始時のレベルに比較して炎症レベルを少なくとも安定化すると再度結論付けることができる。菱形:コントロール、丸:7日目、白丸:6日目、四角:5日目、および三角:3日目
【図9】抗コラーゲン抗体を注入した後、3日目に与えた場合におけるRhmAb2.102、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112の抗炎症作用を試験するために、コラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)モデルを使用した。全ての足の平均関節炎スコアを示した。3匹のマウスの群を、0日目に2.8mgの抗コラーゲン抗体を腹腔内注入することによって処置した。LPS(25μg/マウス)を、腹腔内注入によって3日目に投与し、RhmAb2.102、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112(1mg/マウス)または偽薬を同日に静脈内注入によって注入した。動物を、14日目まで毎日採点した。
【0122】
全ての新規の抗体RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112は、RhmAb2.102よりも高い抗炎症作用を示した。
【図10】RhmAb2.102、RmmAb22.101およびRmmAb22.102抗体の抗炎症作用を試験するために、コラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)モデルを使用した。3匹のマウスの群を、0日目に2.8mgの抗コラーゲン抗体を腹腔内に注入することによって処置した。LPS(25μg/マウス)と、RhmAb2.102、RmmAb22.101およびRmmAb22.102(6mg/マウス)、および偽薬とを腹腔内注入によって3日目に投与した。全ての動物について10日目まで毎日炎症について採点した。
【0123】
全ての試験された抗体RhmAb2.102、RmmAb22.101およびRmmAb22.102は、マウスの足における炎症からマウスを保護した。RhmAb2.102およびRmmAb22.101についてのみデータを示す。
【図11】huPAD2またはhuPAD4で脱イミノ化されたヒトリコンビナントヒストン(H1、H2A、H2B、H3およびH4)について、A)RhmAb2.102、B)RhmAb2.108、C)RhmAb2.109、D)RhmAb2.110、E)RhmAb2.111、F)RhmAb2.112、G)RmmAb22.101、およびH)RmmAb22.102の親和性を試験するために、酵素標識免疫吸着測定法(ELISA)を用いた。脱イミノ化されたヒストンおよびイミノ化されていないヒストンと、BSAとを96ウェルELISAプレート上に固定化した(0.3μg/ウェル)。CFC−1、CFC−0、配列番号21を、同一の濃度でコートし、特異的抗シトルリン反応性について、それぞれ陽性コントロールおよび陰性コントロールとして、ならびにコーティングコントロールとした。コートされていないウェルを、抗体の特異的結合を試験するために用いた。コートされたウェルを、2.5μg/ウェルから0.004μg/ウェルに至る範囲で抗体希釈系列とともに室温で1時間インキュベートした(Z軸)。抗シトルリン抗体結合の検出は、ウサギ抗ヒトHRP(1:2000)とともにウェルを室温で1時間インキュベートし、続いてTMB基質とともにインキュベートすることによって行なった。得られたOD(y軸)は、抗体結合の測定値である。H1=リコンビナントヒストン1、H1/p2=huPAD2リコンビナントヒストン1、H1/p4=huPAD4リコンビナントヒストン1など(x軸)。
【実施例】
【0124】
実施例1:ヒト型およびマウス型リコンビナントモノクローナル抗体。
RA患者のシトルリン化抗原に対するモノクローナル抗体は、記載されたようにファージディスプレイ法によって最初に選択した(Raats et al., J Reumatology, vol30, 1696-711,2003)。簡潔には、3人のRA患者の自己抗体レパートリを、B細胞レパートリから分離し、抗体フラグメントライブラリを作り出すために用いた。これらのライブラリについて、WO98/22503に記載されたように、シトルリン化環状ペプチドCFC1−cycに対する4段階の親和性選択を行った。抗体のクローンは、CFC1−cycへの強い反応性と、シトルリン化されていないCFC0−cycへの反応性の欠如とに基づいて選択した(WO98/22503)。
【0125】
Raatsらによって記載された配列をコードする抗体(J Reumatology, vol30、1696-711, 2003)を、Stemmerら(Gene, vol164, 49-53, 1995)に従って合成し、続いてヒト型およびマウス型抗体アイソタイプをコードする哺乳類発現ベクターにクローニングした。ヒト抗体は、アイソタイプIgG1ラムダであり、RhmAb2.101およびRhmAb2.102と命名した。
【0126】
RhmAb2.101をStemmerらのプロトコル(Gene, vol164, 49-53, 1995)に従って、クローンRa3の配列に基づいて(Raats et al., J Reumatology, vol30, 1696-711, 2003)合成した。RhmAb2.101は、生殖系列ファミリーλ1bに由来するVLを組み合わせた、生殖系列ファミリー3〜21に由来するVHから構成される。
【0127】
RhmAb2.102は、Stemmerら(Gene, vol164, 49-53, 1995)に従って合成した。RhmAb2.102は、配列番号9によってコードされる免疫グロブリン軽鎖に結合した、配列番号8によってコードされた免疫グロブリン重鎖を含む。配列番号8によってコードされる免疫グロブリン重鎖は、配列番号12にかかるマウスリーダーグロブリン、続いて配列番号13にかかる可変抗体重鎖、続いて配列番号14にかかる免疫グロブリン定常ドメインヒトIgG1を含む。配列番号9によってコードされる免疫グロブリン軽鎖は、配列番号12にかかるマウスリーダーグロブリン、続いて配列番号15にかかる可変抗体軽鎖、続いて配列番号16にかかる免疫グロブリンヒトラムダ定常ドメインを含む。
【0128】
モノクローナル抗体RhmAb2.101の可変ドメイン(VHおよびVL)の一次mRNA配列を公開し、表1に示されるような受入番号でEMBLデータベースに供託した。全長ヒト型抗体配列を、抗体RhmAb2.102について記載されたように、同一のリーダーおよび定常ヒトドメインを用いて作り出した。
【0129】
【表1】
【0130】
シトルリン化フィブリノゲンに対するコントロール抗体である、RmmAb13.101、RmmAb13.102およびRmmAb13.103、ならびにヒトU1−70kタンパク質のアポトーシス性の40kD切断産物に対するRhmAb2.201は、Modiquest Research BV, Schoutstraat 58, 6525 XV Nijmegen, The Netherlands から市販されている(カタログ番号MQ13.101、MQ13.102、MQ13.103およびMQR2.201)。
【0131】
実施例2:炎症の実験モデル
ModiQuest Research B.V. から市販されているコラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)マウスモデル(カタログ番号: MQ18.101)を、マウスに関節炎を誘導するために製造規格に従って、用いた(http://www.modiquestresearch.nl/shop/files/18.101-50MG_2007.08.22.pdf)。その目的のために、0日目に8つの抗コラーゲン抗体の混合物を8週齢のDBJ/J1マウス(5〜6マウス/群)に腹腔内投与した。(図1aおよび1bにおいて用いたマウスは、1.6mgの抗コラーゲン抗体混合物の投与を受け、一方、図1c〜fにおいて用いたマウスは2.4mgの投与を受けた)。3日目において、マウスは、1mgの抗シトルリン抗体を混合した25μgLPSを含む、他の腹腔内注入を受けた(特に記載のない限り)。LPSは、炎症を引き起こす。動物実験の13日目まで、マウスはそれらの足における炎症の兆候について毎日採点された。採点は、表2に従って行った。各動物の最大関節炎スコアは8である。
【0132】
マウスモノクローナル抗シトルリン抗体である、RmmAb13.101、RmmAb13.102およびRmmAb13.103について、コラーゲン抗体が誘発する関節炎の重症度を強化することができることを確認した。これらの抗体の混合物は、さらに顕著に応答した。このことは、本質的に抗シトルリン抗体が関節炎を強化/誘導することができる早期の結果を確立する(Kuhn et al,. J. Clin. Invest, vol116, 961-871, 2006; Hill et al., J Exp Med, vol205, 967-979, 2008)。これらの結果は、同一の実験でそれぞれ「平均関節炎スコア」および「関節炎の発症率」を示す、図1aおよびbに示される。
【0133】
ヒト型モノクローナル抗体RhmAb2.102は、実験的なCAIAモデルにおける関節炎の臨床症状を軽減または欠失させたが、RhmAb2.101は用量試験において全く効果が無かった(図1cおよび1d)。
【0134】
【表2】
【0135】
抗コラーゲン抗体注入後3日目における、抗シトルリン抗体を投与するための決定は、約4日目に実験的に誘導される関節炎を有するマウスの足にシトルリン化エピトープが現れることを示す、上述された実験データに基づく。
【0136】
実施例3:脱イミノ化細胞抽出物の調製、SDSページ電気泳動およびウエスタンブロッティング。
【0137】
COS−1細胞(8・105)を、V−kitとともにAMAXA nucleofection装置(プログラムD−005)を用いて、2μgのhuPAD2またはhuPAD4発現ベクターで一過性にトランスフェクトし、T75における20ml培地中に細胞を播種した。
【0138】
72時間後、細胞をPBSで2回洗浄し、トリプシン処理し、スピンダウンし、15μlの氷冷溶解バッファ(pH7.4の20mMトリス、10mMβ-メルカプトエタノール、100mM NaCl、10%グリセロール、プロテアーゼ阻害剤)に再懸濁した。
【0139】
細胞サンプルを氷上で15秒間に4回音波処理した。ライセートを5分間3.000rpmで遠心し、上清を清浄なチューブに移した。細胞ライセートを、それぞれ10mMおよび5mMの最終濃度で、CaCl2およびDTEを追加して37℃で30分〜2時間脱イミノ化した。脱イミノ化された細胞ライセートは、−20℃で保存した。
【0140】
10倍のサンプルバッファ(pH6.8の0.25Mトリス、8%SDS、35%グリセロール、2.5%β-メルカプトエタノール、ブロモフェノールブルー)を脱イミノ化された細胞ライセートに添加し、5分間ボイルした。約5・105細胞に対応するライセートを、SDS−PAGE(15%ゲル)の各レーンにロードして分離し、続いてHybond C extraニトロセルロース膜(Amersham Biosciences)にエレクトロブロッティングした。ブロッティングおよびローディングは、ポンソーS染色によって確認した。
【0141】
実施例4:治療用抗シトルリン抗体は、p15およびp17を認識する。
実施例3において作製されたようなブロットを、細長い形に切断し、全ての非特異的部位をブロックするために、室温で2時間、5%(w/v)低脂肪粉ミルクのPBS−Tween(洗浄液)でブロックした。それから、ブロットを、洗浄バッファで5回5分間洗浄し、細長い一片をさらに20μgの抗シトルリン抗体を含む4mlの洗浄バッファを用いて室温で1時間インキュベートした。その後、細長い一片を、洗浄バッファで10分間5回洗浄し、洗浄バッファ中のペルオキシダーゼ共役化ウサギ抗ヒトIgG(DAKO)(1:2000)とともにインキュベートした(室温で1時間)。その後、細長い一片を、洗浄バッファで10分間3回洗浄し、続いて全ての未結合抗体を洗浄するためにPBSで2回洗浄した。
【0142】
免疫反応性バンドは、化学発光基質(PIERCE)を用いて可視化し、Kodak BioMax XARオートラジオグラフィーフィルム(Eastman Kodak Company, Rochester, NY, USA)に感光させた。
【0143】
RhmAb2.102とともにインキュベートされた細長い一片は、約15および17キロダルトンの分子量を有する2量体タンパク質への反応性を示した。
【0144】
実施例5:抗原の免疫沈降
免疫沈降のために、30μLのプロテインA−セファロースファストフロー(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)を、330μLの細胞ライセートに添加し、4℃で2時間回転させながらインキュベートした。続いて、セファロースビーズに免疫結合したタンパク質を、IPP150(pH8の10mMトリス/HCl、150mM NaCl、0.1%NP40、0.1%Tween−20)で4回洗浄した。2倍のサンプルバッファ(100mmTris−HCl、pH6.8の200mmジチオスレイトール、4%SDS、0.2%ブロモフェノールブルー、20%グリセロール)をビーズに添加し、タンパク質について15%SDS−PAGEを行った。ゲルを、室温で一晩、染色溶液(10%w/v硫酸アンモニウム、2%w/vリン酸(85%)、0.1%w/vCBB G−250、20%v/vメタノール)中で穏やかに揺らしながら染色した。全ての染色トレイをメタノールの蒸発を防ぐためにパラフィルムで密封した。翌日、ゲルをミリQ水(milli-Q water)中で所望の染色が見えるまでインキュベートすることによって、染色されていないバックグラウンドを脱染色した。ゲルの画像を撮影後、脱染色液(ミリQ水)を2〜3回置換した。
【0145】
ヒトPAD2およびPAD4脱イミノ化COS-1ライセートの両者における、RhmAb2.102を用いた免疫沈降は、RhmAb2.101沈降において検出できないか、またはほとんど検出できない、p15およびp17タンパク質のバンドを表す。したがって、p15およびp17タンパク質の認識率は、これらの抗体の治療特性とよく相関する(図1a〜d)。
【0146】
実施例6:p15およびP17の質量分析。
実施例3のSDS−pageゲルのp15およびp17のバンドをゲルから切り出し、MALDI−TOF MSによって分析した。簡潔には、切り出したゲルの一部を、50μlの25mM重炭酸アンモニウムで2回洗浄し、各洗浄工程について30分間インキュベートした。上述したように、30%v/vアセトニトリルを添加して15分間の洗浄を繰り返した。全ての液体を取り除き、25μlの25mM重炭酸アンモニウム+25μlのアセトニトリルを添加し、15分間インキュベートした。再度、全ての液体を除去し、ゲルを50μlのアセトニトリルとともに30分間インキュベートした。全ての液体を取り除き、一部を37℃で2時間インキュベートした。脱水後、ゲル片を再度膨潤させるために、5μlのトリプシン溶液(25mM重炭酸アンモニウム/5mMn−オクチル−β−D−グルコピラノシド中における、〜15ngのトリプシン/μl)を添加し、氷上で1時間インキュベートした。余分なトリプシン溶液を除去し、ゲル片を5μlの25mM重炭酸アンモニウム/5mMn−オクチル−β−D−グルコピラノシドとともに37℃で14時間インキュベートした。ペプチドを、4μlの50%アセトニトリル/0.5%トリフルオロ酢酸(TFA)/nオクチル−β−D−グルコピラノシドとともに室温で1時間インキュベートすることによって抽出した。サンプルを、超音波水槽中において2分間超音波処理し、液体を新しいチューブに移し、抽出工程を繰り返した。サンプルを真空遠心機で乾燥させ、MALDI−TOF MSを行った。
【0147】
MALDI−TOF MS分析で同定された全ての断片は、ヒストンタンパク質(表3)に起因した。
【0148】
【表3】
【0149】
実施例7:治療用抗シトルリン抗体は、H2A/p4を認識する。
ヒト型リコンビナントヒストンH1、H2A、H2B、H3およびH4(100μg)を、53.4mUのhuPAD2またはhuPAD4とともに、またはこれらを含まずに37℃で3時間インキュベートした。脱イミノ化されたヒストンと、脱イミノ化されていないヒストンとを4℃で一晩インキュベートすることによって、96ウェルのELISAプレート上にコート(0.3μg/ウェル)した。ウェルをPBS−Tween20(PBS−T)で5回洗浄し、室温(RT)でPBS−T+1%ウシ血清アルブミン(BSA)とともに1時間インキュベートすることによってブロックした。PBS−Tでさらに5回洗浄後、PBS−T+1%BSA中のRhmAb2.101またはRhmAb2.102の10μg/ウェルの濃度から開始する連続希釈液とともに室温で1時間インキュベートした。ウェルをPBS−Tで5回洗浄し、ウサギ抗ヒト抗体HRP(1:2000)とともに室温で1時間インキュベートし、続いてPBS−Tで5回洗浄し、PBSで3回の洗浄工程を行った。2MH2SO4との反応を停止する前に、RhmAb2.101とともにインキュベートしたウェルを、TMB基質とともに15分間インキュベートし、RhmAb2.102とともにインキュベートしたウェルを、TMB基質とともに10分間インキュベートした。吸光度を450nmで測定し、使用された抗体の親和性の尺度とした。
【0150】
実施例8:治療用抗シトルリン抗体は、ペプチド1を認識する。
96ウェルELISAプレートを4℃で一晩インキュベートすることによってニュートラアビジンでコートした(0.1μg/ウェル)。ウェルをPBS−Tween20(PBS−T)とともに5回洗浄し、PBS−T+1%ウシ血清アルブミン(BSA)とともに室温で1時間インキュベートすることによってブロックした。PBS−Tでさらに5回洗浄した後、ウェルを、ヒストン由来シトルリンおよびビオチン含有ペプチド(0.3μg/ウェル)とともに室温で1時間インキュベートした。さらにPBS−Tで5回洗浄した後、ウェルを、PBS−T+1%BSA中の10μg/ウェルの濃度から開始するRhmAb2.101、RhmAb2.102またはRhmAb2.104の連続希釈液とともに1時間インキュベートした。ウェルをPBS−Tで5回洗浄し、PBS−Tで5回洗浄し、PBSで3回洗浄工程を行い、続いて、ウサギ抗ヒトHRP(1:2000)とともに室温で1時間インキュベートした。ウェルを、2MH2SO4を用いて反応を停止する前にTMB基質とともに5分間インキュベートした。吸光度を450nmで測定し、使用される抗体の親和性の尺度とした。
【0151】
実施例9:治療用抗シトルリン抗体は、フィブリノゲンおよびビメンチン由来シトルリンペプチドを認識する。
【0152】
96ウェルELISAプレートを、4℃で一晩インキュベートすることによってニュートラアビジンでコートした(0.1μg/ウェル)。ウェルをPBS-Tween(PBS−T)で5回洗浄し、PBS−T+1%ウシ血清アルブミン(BSA)を用いて室温で1時間インキュベートすることによってブロックした。PBS−Tでさらに5回洗浄した後、ウェルをフィブリノゲンおよびビメンチン由来シトルリンおよびビオチン含有ペプチド(0.3μg/ウェル)とともに室温で1時間インキュベートした。さらにPBS−Tで5回洗浄した後、ウェルを、PBS−T+1%BSA中の10μg/ウェルの濃度から開始するRhmAb2.101またはRhmAb2.102の連続希釈液とともに1時間インキュベートした。ウサギ抗ヒトHRP(1:2000)とともに室温で1時間インキュベートし、続いてウェルをPBS−Tで5回洗浄し、PBS−Tで5回洗浄し、PBSで3回洗浄工程を行った、。ウェルを、2MH2SO4を用いて反応を停止する前にTMB基質とともに5分間インキュベートした。吸光度を450nmで測定し、使用される抗体の親和性の尺度とした。
【0153】
実施例10:RhmAb2.102の治療可能性
ModiQuest Research B.V.から市販されているコラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)マウスモデル(カタログ番号: MQ18.101)を、マウスにおいて関節炎を誘導するため製造規格に従って用いた(http://www.modiquestresearch.nl/shop/files/18.101-50MG%20_2007.08.22.pdf)。その目的のために、0日目に8つの抗コラーゲン抗体の混合物を8週齢のDBJ/J1雄マウス(マウス5匹/群)の腹腔内に投与した(2.8mg/マウス)。3日目、マウスは25μgのLPSを含む、他の腹腔内投与を受けた。LPSは、炎症を引き起こす。平均関節炎スコアが約4になった7日目において(図6A)、1群について1mgのRhmAb2.102を含む静脈内注入を行った。一方、他の群は、偽薬を含む静脈内注入を受けた。
【0154】
動物の足における炎症症状について毎日採点した。採点は、表2に従って行った。動物あたりの最大関節炎スコアは8である。RhmAb2.102は炎症を安定させた(図6A)。
【0155】
全ての右後足を組織学的分析のために用いた。組織を4%ホルムアルデヒドで4日間固定し、5%ギ酸で脱灰し、続いて脱水し、パラフィン包埋した。7μmの標準正面セクションを、SuperFrostスライド(Menzel-Glaser, Braunschweig, Germany)にマウントした。ヘマトキシリンおよびエオジン(H&E)染色を関節の炎症を調べるために行った(細胞の流入、図7D)。関節における炎症の重症度を、0〜3のスケール(0=細胞なし、1=軽度の細胞充実性、2=中程度の細胞充実性、3=最大細胞充実性)で採点した。図7Aは、35日目における肉眼で確認できる炎症を示す。軟骨基質からのプロテオグリカン(PG)の喪失を検討するために(図7E)、サフラニンO(SO)染色し、続いてファストグリーンで対比染色しした。完全に軟骨が染色された(通常)から軟骨が染色されない(完全なPGs喪失)までの範囲である0〜3の任意のスケールを用いてPGの喪失を測定した。軟骨細胞死(図7F)を、軟骨細胞核の損失無しから完全に軟骨表面が空洞であるまでの0〜3の範囲のスケールで採点した。軟骨および骨びらん(図7BおよびC)を、損傷無しから軟骨または骨の構造の完全な損失までの、スケール0〜3の範囲で類別した。関節における病理組織学的変化を70μm離れた関節の5つの準連続切片において採点した。採点は、実験条件について既知の知識なしにブラインドで行った。
【0156】
群間における右後足の肉眼で観察できる炎症は35日目において同じであったが(図6Aおよび7A)、炎症性細胞流入(図7D)、軟骨の浸食(図7B)、軟骨PGの喪失(図7E)、軟骨細胞死(図7F)および骨の浸食(図7C)の関節炎についての任意のパラメータを調べた場合、コントロール群と比較してRhmAb2.102の投与を受けた実験群において著しい減少が観察された。この結果は、RhmAb2.102の治療可能性を強く支持する。
【0157】
実施例11:huPAD4脱イミノ化HEK293細胞抽出物の調製およびRhmAb2.101またはRhmAb2.102を用いた免疫沈降。
【0158】
HEK293細胞を回収し、PBSで1回洗浄し、スピンダウンし、5.105細胞を15μlの氷冷溶解バッファ(pH7.4の20mMトリス、10mMβ-メルカプトエタノール、100mM NaCl、10%グリセロール、プロテアーゼ阻害剤)中に再懸濁した。
【0159】
細胞サンプルを氷上で15秒間に4回音波処理した。ライセートを3.000rpmで5分間遠心し、上清を清浄なチューブに移した。細胞ライセートを2mgのタンパク質あたり1UのヒトPAD4(ModiQuestResearch B.V.;カタログ番号: MQ16.203)、10mM CaCl2、および5mM DTTを添加することにより37℃で2時間脱イミノ化した。
【0160】
脱イミノ化HEK293ライセートにSDS−Page(12.5%ゲル)電気泳動、続いてウエスタンブロッティングを行うことによって、ライセートの脱イミノ化を検証した。ウエスタンブロッティングは、抗体RhmAb2.101またはRhmAb2.102を用いて免疫染色し、陽性であった。無関係な抗体を用いて処理したブロットは、全く染色が認められなかった。
【0161】
その後、抗体RhmAb2.101またはRhmAb2.102を用いて脱イミノ化HEK293細胞ライセートについて免疫沈降(IP)を行った。簡潔には、30μlのプロテインAセファロースファストフローを、1mlのIPP500(pH8.0の10mMトリス/HCl、500mM NaCl、0.1%NP40および0.1%Tween20)で5回洗浄し、20μgのRhmAb2.101または20μgのRhmAb2.102に結合させ、結合させないものをネガティブコントロールとした。プロテインAセファロースビーズ/抗体混合物を一定の回転のもと室温で1時間インキュベートした。1mlのIPP500を用いてビーズを3回洗浄し、1mlのIPP150(pH8.0の10mMトリス/HCl、150mM NaCl、0.1%NP40、0.1%Tween−20)で1回洗浄し、続いて300μlの脱イミノ化HEK293細胞ライセートとともに一定の回転のもと、室温で2時間インキュベートした。HEK293細胞のIP手順が成功したか否か決定するために、少量のビーズをSDS−PAGE電気泳動に使用し、その後ビーズを1mlのIPP150で3回洗浄した。RhmAb2.101、RhmAb2.102およびコントロールビーズにおける免疫沈降タンパク質を、50μlの抽出バッファ(pH3.0の100mMナトリウムクエン酸)を用いて抽出し、pH9.04の1Mトリス/HClを10μl用いて中和し、nLC LTQ FTMS ULTRA質量分析法(実施例12)まで−20℃で保存した。
【0162】
実施例12:RhmAb2.101およびRhmAb2.102によって免疫沈降させたhuPAD4脱イミノ化HEK293細胞タンパク質の質量分析。
【0163】
免疫沈降されたタンパク質からPEGを取り除くために、それらを15%SDS−PAGEゲルにロードし、短時間泳動した。実施例6において記載されたように、タンパク質についてゲルの切り出し、およびゲル内トリプシン消化を行った。サンプルについてnLC LTQ FTMS ULTRA質量分析を実行する前にそれらを50倍に希釈した。
【0164】
ペプチドおよびタンパク質の同定は、ホモサピエンス分類のNCBInr_20081022データベースを用いて検索プログラムMascotによってデータから抽出した。以下の修飾を検索において許可した。システイン(C)のカルバミドメチル化(固定)、メチオニン(M)の酸化(可変)、ならにびアスパラギン(N)、アルギニン(R)およびグルタミン(Q)の脱アミノ化(可変)。脱イミノ化は、検索ツールとして使用することができなかった。脱アミノ化および脱イミノ化は、修飾されていないアルギニンと比較した場合に、両者は1ダルトンの質量差をもたらすのでこの問題は除去することができる。
【0165】
タンパク質の特性の検証を社内で開発したスクリプトによって行った。簡潔には、ソフトウェアは、独特に同定されたペプチド配列、ペプチドの同一の組を共有するクラスタタンパク質、および以下の条件を有するタンパク質の検証に基づいてタンパク質の特性を分類する。
【0166】
1本のペプチドを有するタンパク質は、>49のペプチドスコアを有していなければならない。
【0167】
1本以上のペプチドを有するタンパク質は、>29のペプチドスコアを有していなければならない。
【0168】
検証基準の使用について、ペプチドは3つの全てのサンプルで同定された(サンプル1:RhmAb2.101を用いて沈殿させたHEK293細胞、サンプル2:Rhm2.102を用いて沈殿させたHEK293細胞、サンプル3:空ビーズを用いて沈殿させたHEK293細胞)。
【0169】
emPAI(Exponentially Modified Protein Abundance Index)を全ての検証タンパク質について算出した。emPAIは、データベースの検索結果に一致するペプチドによるタンパク質範囲に基づいて、混合物中の、おおよその、標識のない、タンパク質の相対的定量を提供する。この手法は、(選択的に)RhmAb2.102に結合する脱イミノ化タンパク質を同定することを可能にする。このことを表9に示す。
【0170】
【表9−1】
【0171】
【表9−2】
【0172】
実施例13:抗炎症抗体のファミリー産出/選択
ヒト由来のscFvライブラリを、Raatsら(2003)に記載された方法と同様に、ヒトヒストン2A、ヒストン4、ペプチド1(AAASGXGKQGGK:配列番号21)、およびCFC−1ペプチドのPAD2−またはPAD4−脱イミノ化形態に対してパニングした(Raats, J.M.H., Wijnen, E.W, Pruijin, G.J.M., Van den Hoogen, F.H.M., and W.J. van Verooij. 2003. J.Rheum. 30, 1696-1711)。
【0173】
CFC−1ならびに/またはペプチド1(AAASGXGKQGGK:配列番号21)ならびに/またはPAD脱イミノ化ヒストン2aおよび/もしくはヒストン4とのシトルリン依存の反応性を示す、選択された抗体は、シトルリン化タンパク質および/もしくはそれらに由来するペプチドのアレイに対する反応性(実施例12、表9)と、PAD2およびPAD4脱イミノ化ヒトヒストンアイソフォームに対する反応性と、脱イミノ化ヒトヒストン由来ペプチドに対する反応性とについてスクリーニングした。付随して、RA患者に由来するPAD2およびPAD4脱イミノ化ヒト細胞抽出物および関節液に免疫沈降を行った。
【0174】
続いて、p15および/もしくはp17の免疫沈降されたバンドである抗体、ならびに/またはシトルリン化エピトープ(PAD2およびPAD4脱イミノ化ヒトヒストンアイソフォーム、および/もしくはCFC−1、および/またはペプチド1(AAASGXGKQGGK、配列番号21)、および/もしくは表9に挙げられたタンパク質に由来するシトルリン化エピトープ)に対するELISA反応性プロファイルを有する抗体を、ヒトIgG1フォーマットにクローン化した。本明細書に記載されたように、CAIAマウスモデルにおける、それらの予防的および治療的抗炎症可能性について全長のヒトIgG抗体を試験した。
【0175】
このスクリーニングの手順では、高頻度でCAIAマウスモデルにおける、予防的および/または治療的抗炎症可能性を有する抗体を得た。
【0176】
上述の方法に従って選択される新規抗体の例は、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112であり、本明細書において、配列番号17、配列番号18、配列番号39、配列番号20、配列番号41、配列番号40、配列番号19、配列番号43、配列番号42に開示される。配列番号10によってコードされるRhmAb2.110免疫グロブリン軽鎖は、配列番号12にかかるマウスリーダーグロブリン、続いて配列番号41にかかる可変抗体軽鎖、続いて配列番号11にかかる免疫グロブリンヒトカッパ定常ドメインを含む。
【0177】
その後、RhmAb2.102と比較して、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112の抗炎症性作用を試験するために、コラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)マウスモデルを用いた。この目的のために、全ての抗体は、HEK293細胞において一過性に産生させた。DBA/Jマウスの3匹の群を、0日目に2.8mgの抗コラーゲン抗体(MQ18.101)の腹腔内投与によって処置した。LPS(25μg/マウス)と、RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111、RhmAb2.112およびRhmAb2.102(1mg/マウス)、ならびに偽薬とを、3日目に腹腔内注入によって投与した。全ての動物について、10日目まで毎日炎症について採点した。
【0178】
本実験における全ての新規に作り出された抗体は、RhmAb2.102、RhmAb2.1109、RhmAb2.110と比較して、より優れた抗炎症反応を示し、完全に炎症を消失させたが、MhmAb2.112は、ほぼ消失させ、RhmAb2.111と、rhmAb2.108とは、実験動物における炎症の兆候を強く減少させた。図9。
【0179】
実施例14:マウスモノクローナル抗体。
本発明にかかるペプチドを含む合成されたシトルリンに対する抗体は、DBA/J1マウスに産生させた。免疫工程開始後125日目に、血清試料を採取し、シトルリン特異的抗原反応を分析した。全てのマウスは、試験した時点において、特異的抗原特異的な血清価を示した。
【0180】
ハイブリドーマ細胞株を作製するために、最後の追加免疫後、脾臓を解剖し、脾臓から脾細胞を採取し、ModiQuest B.V.手順に従って、マウスミエローマ細胞株(NS−1)と融合させた。ハイブリドーマ上清における抗体特異性は、シトルリン含有抗原と、非シトルリン化等価物とにおいて評価した。
【0181】
このことによって、それぞれRmmAb22.101およびRmmAb22.102、配列番号44および配列番号45を産生する、ハイブリドーマクローン(DSMZ受理番号ACC3031およびACC3032)がもたらされた。
【0182】
続いて、RhmAb2.102と比較して、RmmAb22.101およびRmmAb22.102の抗炎症作用を試験するために、コラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)モデルを用いた。DBA/J1マウスの3匹の群を、2.8mgの抗コラーゲン抗体(MQ18.101)の腹腔内注入によって0日目に処置した。LPS(25μg/マウス)と、RmmAb22.101、RmmAb22.102およびRhmAb2.102(6mg/マウス)、ならびに偽薬とを、3日目に腹腔内注入によって投与した。全ての動物について、10日目まで毎日炎症について採点した。
【0183】
RhmAb2.102、RmmAb22.101およびRmmAb22.102抗体は、マウスの足における炎症からマウスを完全に保護した。図10。
【0184】
実施例15:新規の治療用抗シトルリン抗体は、RhmAb2.102と比較して、シトルリン化エピトープへの同様の認識パターンを示す。
【0185】
実施例7および8に記載された実験と同様に、新たに作り出された抗体RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111、RhmAb2.112、RmmAb22.101およびRmmAb22.102について、RhmAb2.102と比較した、様々な脱イミノ化標的における、それらの反応性をELISAで分析した。
【0186】
ヒト型リコンビナントヒストンH1、H2A、H2B、H3およびH4(100μg)を、実施例7に記載されたように脱イミノ化した。
【0187】
脱イミノ化されたヒストンと、脱イミノ化されていないヒストンとを、96ウェルELISAプレートにコートし(0.3μg/ウェル)、4℃で一晩インキュベートした。
【0188】
また、次に脱イミノ化ヒストン抗体を、一組のビオチン化ペプチドにおいて試験した。シトルリン化形態と、非シトルリン化形態との両者について試験した。ペプチドのコーティングは、実施例8に記載されたように行った。
【0189】
全てのコートしたウェルを、PBS-Tween20(PBS−T)で5回洗浄し、PBS−T+1%ウシ血清アルブミン(BSA)とともに室温(RT)で1時間インキュベートすることによってブロックした。さらにPBS−Tで5回洗浄した後、ウェルを、2.5μg/ウェルの濃度から開始する、PBS−T+1%BSA中の抗体の連続希釈液ととも室温で1時間インキュベートした。ウェルを、PBS-Tで5回洗浄し、ウサギ抗ヒトHRP(1:2000)とともに室温で1時間インキュベートし、続いてPBS-Tで5回洗浄し、PBSで3回洗浄工程を行った。2MH2SO4で反応を停止する前に、TMB基質で10分間染色した。450nmで吸光度を測定し、用いられる抗体の親和性の尺度とした。このことは、全ての治療用抗体が、治療用抗体RhmAb2.102と比較して、類似性の高い染色パターンを有することを明らかに示した。マウスモノクローナル抗体のみが、Cfc−1ペプチドに反応性を示さない。全ての治療用抗体は、配列番号21にかかるペプチドと、ヒストン2A/p2、ヒストン2A/p4およびヒストン4/p2との非常に高い反応性を有し、ヒストン3/p2との極めて小さい反応性を示す。
【図1−1】
【図1−2】
【図1−3】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6−1】
【図6−2】
【図7−1】
【図7−2】
【図7−3】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトPAD4および/もしくはPAD2脱イミノ化ヒトヒストン2Aおよび/もしくはヒストン4における、ならびに/またはヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH3におけるシトルリン化エピトープに特異的に反応する、関節リウマチの予防または治療における使用のための抗体であって、
配列番号18、配列番号17、配列番号20、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号19、配列番号43、配列番号42、配列番号44および配列番号45からなる群から選択される核酸配列から得ることができる特異的結合ドメインを含むことを特徴とする抗体。
【請求項2】
配列番号21、配列番号24、配列番号26、配列番号37および配列番号38からなる群から選択されるペプチドに特異的に反応することを特徴とする請求項1に記載の使用のための抗体。
【請求項3】
リコンビナント抗体、単一鎖抗体、一本鎖可変フラグメント(scFvs)、フラグメント抗原結合領域(Fabs)、単一ドメイン抗体(sdabs)、VHH抗体、ナノボディ、ラクダ由来の単一ドメイン抗体、サメIgNAR由来の単一ドメイン抗体フラグメント(VNAR)、アンチカリンおよびアプタマーからなる群から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の使用のための抗体。
【請求項4】
RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112、RmmAb22.101、ならびにRmmAb22.102からなる群から選択されるモノクローナル抗体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用のための抗体。
【請求項5】
関節リウマチを予防または治療するための方法であって、
配列番号18、配列番号17、配列番号20、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号19、配列番号43、配列番号42、配列番号44および配列番号45からなる群から選択される抗原結合領域の少なくとも1つを含む抗体を含む抗炎症組成物の治療上有効な量を、それを必要とする患者に投与する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
前記抗体は、配列番号18、配列番号20、配列番号40、配列番号42および配列番号44からなる群から選択される重鎖ドメインの少なくとも1つを、配列番号17、配列番号39、配列番号41、配列番号19、配列番号43および配列番号45からなる群から選択される軽鎖ドメインと組み合わせて含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
配列番号18、配列番号20、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号17、配列番号39、配列番号41、配列番号19、配列番号43および配列番号45からなる群から選択される可変重鎖または軽鎖ドメインによってコードされるアミノ酸配列を含むことを特徴とするポリペプチド。
【請求項8】
請求項7に記載のポリペプチドをコードすることを特徴とする核酸。
【請求項9】
配列番号18、配列番号20、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号17、配列番号39、配列番号41、配列番号19、配列番号43および配列番号45からなる群から選択される核酸配列を含むことを特徴とする請求項8に記載の核酸。
【請求項1】
ヒトPAD4および/もしくはPAD2脱イミノ化ヒトヒストン2Aおよび/もしくはヒストン4における、ならびに/またはヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH3におけるシトルリン化エピトープに特異的に反応する、関節リウマチの予防または治療における使用のための抗体であって、
配列番号18、配列番号17、配列番号20、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号19、配列番号43、配列番号42、配列番号44および配列番号45からなる群から選択される核酸配列から得ることができる特異的結合ドメインを含むことを特徴とする抗体。
【請求項2】
配列番号21、配列番号24、配列番号26、配列番号37および配列番号38からなる群から選択されるペプチドに特異的に反応することを特徴とする請求項1に記載の使用のための抗体。
【請求項3】
リコンビナント抗体、単一鎖抗体、一本鎖可変フラグメント(scFvs)、フラグメント抗原結合領域(Fabs)、単一ドメイン抗体(sdabs)、VHH抗体、ナノボディ、ラクダ由来の単一ドメイン抗体、サメIgNAR由来の単一ドメイン抗体フラグメント(VNAR)、アンチカリンおよびアプタマーからなる群から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の使用のための抗体。
【請求項4】
RhmAb2.108、RhmAb2.109、RhmAb2.110、RhmAb2.111およびRhmAb2.112、RmmAb22.101、ならびにRmmAb22.102からなる群から選択されるモノクローナル抗体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用のための抗体。
【請求項5】
関節リウマチを予防または治療するための方法であって、
配列番号18、配列番号17、配列番号20、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号19、配列番号43、配列番号42、配列番号44および配列番号45からなる群から選択される抗原結合領域の少なくとも1つを含む抗体を含む抗炎症組成物の治療上有効な量を、それを必要とする患者に投与する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
前記抗体は、配列番号18、配列番号20、配列番号40、配列番号42および配列番号44からなる群から選択される重鎖ドメインの少なくとも1つを、配列番号17、配列番号39、配列番号41、配列番号19、配列番号43および配列番号45からなる群から選択される軽鎖ドメインと組み合わせて含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
配列番号18、配列番号20、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号17、配列番号39、配列番号41、配列番号19、配列番号43および配列番号45からなる群から選択される可変重鎖または軽鎖ドメインによってコードされるアミノ酸配列を含むことを特徴とするポリペプチド。
【請求項8】
請求項7に記載のポリペプチドをコードすることを特徴とする核酸。
【請求項9】
配列番号18、配列番号20、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号17、配列番号39、配列番号41、配列番号19、配列番号43および配列番号45からなる群から選択される核酸配列を含むことを特徴とする請求項8に記載の核酸。
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図11F】
【図11G】
【図11H】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図11F】
【図11G】
【図11H】
【公表番号】特表2013−513374(P2013−513374A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542572(P2012−542572)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069431
【国際公開番号】WO2011/070172
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(512151311)
【氏名又は名称原語表記】MODIQUEST B.V.
【住所又は居所原語表記】LSP−Oss Molenweg 79 Oss Netherlands
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069431
【国際公開番号】WO2011/070172
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(512151311)
【氏名又は名称原語表記】MODIQUEST B.V.
【住所又は居所原語表記】LSP−Oss Molenweg 79 Oss Netherlands
【Fターム(参考)】
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