説明

シナカルセトの製造方法

式(I)で表されるN−[(1R)−1−(1−ナフチル)エチル]−3−[3−(トリフルオロメチル)−フェニル]プロパン−1−アミン塩酸塩(即ち、シナカルセト・HCl)及び式(IX)で表されるその中間体の製造方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分であるシナカルセト、その中間体、及びその薬学的に許容される塩酸塩のそれぞれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シナカルセト(CNC)、即ち、N−[(1R)−1−(1−ナフチル)エチル]−3−[3−(トリフルオロメチル)−フェニル]プロパン−1−アミンは式(I):
【0003】

【0004】
で表される塩酸塩として治療に用いられる。
【0005】
欧州連合(EU)でMIMPARA(登録商標)として市販されているシナカルセト塩酸塩(CNC.HCl)は、カルシウム受容体を活性化することによって副甲状腺ホルモンの分泌を抑制するカルシウム擬態剤(calcimimetic agent)である。
【0006】
MIMPARA(登録商標)は、透析を受けている慢性腎疾患患者における続発性副甲状腺機能亢進症(SHPT)の治療用、及び副甲状腺摘出が臨床的に不適切又は禁忌である患者における原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT)の治療用に認可されている。
【0007】
特許文献1には、一般にシナカルセト及びその塩を含むアリールアルキルアミン類が開示されている。
【0008】
特許文献2には、シナカルセト又はその薬学的に許容される塩や複合体が化合物22Jとして具体的に記載されている。また、特許文献2には、適切な芳香族アルデヒドやケトンを好適なアリールアミンで縮合した後、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBH3CN)やトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムで還元する還元的アミノ化アプローチや、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL−H)を介在させて芳香族アミンをアリールニトリルで縮合した後、中間体のアルミニウム−イミン複合体をシアノ水素化ホウ素ナトリウムや水素化ホウ素ナトリウムで還元することによって、シナカルセトと類似の構造を有するようなカルシウム受容体活性分子を製造する合成方法も開示されている。水素化ジイソブチルアルミニウムの存在下でニトリルを1級アミンや2級アミンで縮合させて対応するイミンを生成する方法については、特許文献3に一般に開示されている。
【0009】
非特許文献1のスキーム1に記載のシナカルセトの製造には、次のスキーム1:
【0010】
スキーム1

【0011】
に示されるように、チタンテトライソプロポキシド(Ti(O−i−Pr)4)によって1(R)−(1−ナフチル)エチルアミン(R−NEA)を3−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]プロピオンアルデヒドと反応させて対応するイミンを得た後、最終的にエタノール中でシアノ水素化ホウ素ナトリウムを用いて還元することが含まれる。
【0012】
非特許文献2には、次のスキーム2:
【0013】
スキーム2

【0014】
に示されるように、3−(トリフルオロメチル)桂皮酸を対応するアルコールに還元した後、酸化して所望のアルデヒドを得ることによって、出発材料の3−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]プロピオンアルデヒドを製造することが開示されている。
【0015】
非特許文献3に記載のように、上述のシナカルセトの合成にはTi(O−i−Pr)4やDIBAL−H等の試薬が用いられるが、シナカルセトを商業規模で製造するためには該試薬を大量に扱う必要があり、このような感湿性で自然発火性の試薬を大量に取り扱うため合成がより困難になる。
【0016】
特許文献4には、3−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]プロパン−1−オールの酸化を含む、3−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]プロピオンアルデヒドの他の製造方法が開示されている。
【0017】
特許文献5には、次のスキーム3:
【0018】
スキーム3

【0019】
に記載のように、3−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]プロパノールの水酸基部分を良好な脱離基に変換することと、得られた化合物を、好ましくは塩基の存在下で(R)−(1−ナフチル)エチルアミンと結合させることを含む、他のシナカルセトの製造方法が開示されている。
【0020】
特許文献6によると、上述の特許文献5に記載のようにシナカルセトを合成する際に種々の溶媒を用いながら、様々な量のシナカルセトカルバメートを生成することができる。特許文献6には、クロマトグラフィー法による測定で約0.03面積%〜約0.15面積%の量のシナカルセトカルバメートを含有するシナカルセト塩酸塩の製造方法であって、次の段階:(a)クロマトグラフィー法による測定で約3面積%〜約6面積%の量のシナカルセトカルバメートを含有するシナカルセトをアセトン、直鎖又は分岐鎖C28エーテル、その混合物又は水に溶解する段階と、(b)塩化水素を添加して沈殿物を得る段階と、(c)シナカルセト塩酸塩を回収する段階とを含む方法が開示されている。
【0021】
特許文献7には、次のスキーム4:
【0022】
スキーム4

【0023】
に記載のように、3−(トリフルオロメチル)桂皮酸を還元して3−(3−トリフルオロメチルフェニル)−プロパン酸を得ることと、必要に応じて3−(3−トリフルオロメチルフェニル)−プロパン酸を好適な酸誘導体に変換することと、得られた3−(3−トリフルオロメチルフェニル)−プロパン酸、或いは変換を行った場合には前記酸誘導体を(R)−(1−ナフチル)エチルアミンと結合させて(R)−N−(1−(ナフタレン−1−イル)エチル)−3−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)プロパンアミドを得ることと、(R)−N−(1−(ナフタレン−1−イル)エチル)−3−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)プロパンアミドを還元してシナカルセトにすることとを含む、シナカルセトの製造方法が開示されている。
【0024】
非特許文献4には、水酸化パラジウムの存在下で3−(トリフルオロメチル)桂皮酸を還元して3−(3−トリフルオロメチルフェニル)−プロパン酸を得て、それを(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミンと結合させて対応するアミドを得ることを含む、シナカルセト塩酸塩への合成順序が開示されている。その後、還元剤としての三フッ化ホウ素−THF及び水素化ホウ素ナトリウムの存在下で該アミドを還元する。完全に変換した後、得られたアミン−ボラン複合体に水を添加して加水分解し、次のスキーム5:
【0025】
スキーム5

【0026】
に記載のように、トルエン中に抽出した粗シナカルセトを塩酸と反応させてシナカルセト塩酸塩を得る。
【0027】
特許文献8及び非特許文献3には、(R)−N−(1−(ナフタレン−1−イル)エチル)−3−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)プロパンアミドを経由させてシナカルセト塩酸塩を製造する他の方法が開示されている。
【0028】
特許文献9には、次のスキーム6:
【0029】
スキーム6

【0030】
に示すように、触媒及び少なくとも1種の塩基の存在下で3−ブロモトリフルオロトルエンをアリルアミン(R)−N−(1−(ナフタレン−1−イル)エチル)プロパ−2−エン−1−アミンに結合させて(R,E)−N−(1−(ナフタレン−1−イル)エチル)−3−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)プロパ−2−エン−1−アミン(CNC−エン)を得て、不飽和シナカルセトを還元してシナカルセトを得る、シナカルセトの製造方法が開示されている。
【0031】
特許文献10には、シナカルセト又はその塩及びシナカルセトの多形を製造する幾つかの方法が開示されている。
【0032】
特許文献11には、シナカルセトを対応するアルキンから製造する水素化方法が記載されている。
【0033】
特許文献12には、3−(トリフルオロメチルフェニル)プロピオン酸とクロロギ酸エチルから生成されるin situ中間体を(R)−(+)−1−(1−ナフチル)エチルアミンと反応させてアミド中間体を得た後、該中間体を還元してシナカルセトを得ることを含む多段階方法が開示されている。
【0034】
特許文献13には、シナカルセトフマル酸塩及びシナカルセトコハク酸塩の各結晶体と前記結晶体を製造する方法が開示されている。
【0035】
特許文献14には、シナカルセト塩酸塩の製造方法であって、シナカルセトカルボン酸塩を用意することと、アニオン交換反応によって前記シナカルセトカルボン酸塩(より好ましくはシナカルセト酢酸塩)をシナカルセト塩酸塩に変換することとを含む方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【特許文献1】米国特許第6,011,068号
【特許文献2】米国特許第6,211,244号
【特許文献3】米国特許第5,504,253号
【特許文献4】国際公開第2008/035212号
【特許文献5】米国特許第7,250,533号
【特許文献6】米国特許第7,294,735号
【特許文献7】米国特許出願第2007/259964号
【特許文献8】特許出願第2007MU00555号
【特許文献9】米国特許第7,393,967号
【特許文献10】国際公開第2009/002427号
【特許文献11】欧州特許第2022777号
【特許文献12】欧州特許第1990333号
【特許文献13】国際公開第2009/025792号
【特許文献14】国際公開第2009/039241号
【非特許文献】
【0037】
【非特許文献1】ドラッグズ・オブ・ザ・フューチャー 2002、27(9)、831〜836、(2002)
【非特許文献2】テトラヘドロン・レターズ、(45)、8355〜8358、(2004)、脚注12
【非特許文献3】シンセティック・コミュニケーションズ、38:1512〜1517(2008)
【非特許文献4】テトラヘドロン・レターズ、(49)、13〜15、(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0038】
本発明は、シナカルセト、その薬学的に許容される塩及びその中間体をもたらす新規で効率的な方法であって、工業的規模に好都合であり、所望の製品が高収率で得られる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0039】
即ち、本発明の目的は、シナカルセト塩酸塩及びその中間体の製造方法であって、大量生産に用いることのできる方法を提供することにある。
【0040】
本発明は、基本的に次のスキーム7:
【0041】
スキーム7

【0042】
に示されるように進行する、シナカルセト塩酸塩及びその中間体の製造方法を提供する。
【0043】
従って、本発明の目的は、式(X):
【0044】

【0045】
で表されるシナカルセト中間体の製造方法であって、
i)式(V):
【0046】

【0047】
で表される化合物を還元して式(IX):
【0048】

【0049】
で表される化合物を得ることと、
ii)式(IX)で表される化合物を塩素化剤で処理することとを含む方法を提供することにある。
【0050】
本発明の一態様においては、式(IX)で表される化合物は反応混合物から単離されない。
【0051】
本発明の他の態様においては、式(IX)で表される化合物は反応混合物から単離される。
【0052】
式(IX)で表される化合物は遊離塩基として存在してもよく、酸HZ(Zは薬学的に許容されるアニオン性対イオンである)の塩として存在してもよい。
【0053】
「薬学的に許容されるアニオン性対イオン」Zとは、正電荷を有するプロトン化シナカルセト中間体とバランスを取る負電荷を有する分子又は原子を意味する。薬学的に許容されるアニオン性対イオンは有機であっても無機であってもよい。例えば、代表的な薬学的に許容されるアニオン性対イオンとしては、塩化物イオンや臭化物イオン、重硫酸イオン(硫酸水素イオン)、メタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオン、シュウ酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、クエン酸イオン、酒石酸イオン、コハク酸イオン、マレイン酸イオン、マロン酸イオンが挙げられる。塩化物イオン、重硫酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、酒石酸イオン及びコハク酸イオンが好ましく、塩化物イオンがより好ましい。
【0054】
本発明の好ましい一態様においては、式(IX)で表される化合物を上述の塩として反応混合物から単離する。
【0055】
一例として、式(IX)で表される化合物は、Zが塩化物イオンの場合には、式(IXa):
【0056】

【0057】
で表される化合物である。
【0058】
段階i)における還元は、適切な還元剤(例えば、水素化ホウ素ナトリウムや水素化ホウ素リチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン)の存在下、ルイス酸(例えば、AlCl3やTCl4、FeCl3、ZnCl2)と組み合わせて行うことができる。段階i)における還元は、適切な還元触媒(例えば、Pd/CやPtO2(アダムス触媒)、ラネーニッケル、PdCl2)の存在下、ガス状水素を用いて行うことができる。
【0059】
段階i)における反応は、例えば、水や直鎖又は分岐鎖C1〜C5アルコール(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール又はtert−ブチルアルコール)、直鎖、分岐鎖又は環状C4〜C8エーテル(例えば、1,2−ジメトキシエタンや2−メトキシエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン)又はそれらの混合物から選択される溶媒中で行うことができるが、適切な溶媒は、当業者によく知られた標準的な手続きに従い、還元剤に応じて選択される。段階i)における反応は、−10℃〜40℃の温度で約0.5〜10時間に亘って行われ得る。触媒Pd/C、PtO2又はPdCl2を用いる場合、H2圧は通常101.325kPaである。ラネーニッケルを用いる場合、H2圧は適度に高い(6,894.757kPa)。通常、水素化は約5〜約24時間に亘って行われる。
【0060】
また、段階i)における還元は、接触移動水素化(CTH)によって行われ得る。還元がCTH条件下で行われる場合、例えば、ギ酸やギ酸アンモニウム、ギ酸ナトリウム等の適切な水素含有供給材料(好ましくは、ギ酸アンモニウム又はギ酸ナトリウム)が用いられる。水素供与体としての水素含有材料を活性化するため、上述の触媒を用いて水素含有供給材料から基質への水素移動を促進する。CTHは当業者に公知の如何なる方法によっても実施することができる。特に、CTH技術を段階i)における反応で用いる場合、式(V)で表される化合物を、例えば、トルエンや酢酸、上述のC1〜C5アルコール(好ましくは、エチルアルコール)から選択される溶媒に、ギ酸、ギ酸アンモニウム又はギ酸ナトリウム(好ましくは、ギ酸アンモニウム又はギ酸ナトリウム)の存在下、選択された溶媒の還流温度で約5〜48時間かけて溶解する。
【0061】
好ましくは、段階i)における還元は、メタノール中、−10℃〜10℃の温度で水素化ホウ素ナトリウムを用いて行うことができる。
【0062】
段階ii)における反応は、塩化チオニル(SOCl2)、五塩化リン(PCl5)、オキシ塩化リン(POCl3)、塩化オキサリル((ClCO)2)、ガス状塩酸、ホスゲン(Cl2CO)、及びin situでホスゲン源として作用するホスゲンの非ガス状オリゴマー同等物(例えば、クロロギ酸トリクロロメチル(ジホスゲン、液体)や炭酸ビス(トリクロロメチル)(トリホスゲン、BTC、固体))から成る群から選択される適切な塩素化剤を用いて行うことができる。段階ii)において用いることができる溶媒は、C3〜C7直鎖、分岐鎖及び環状脂肪族炭化水素溶媒(例えば、ヘキサンやヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、及びその混合物);芳香族炭化水素(例えば、ベンゼンやトルエン、キシレン(トルエンやキシレンが好ましく、トルエンが最も好ましい));直鎖、分岐鎖及び環状エーテル(例えば、メチルtert−ブチルエーテルやジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、THF、メチル−THF);非プロトン性溶媒(例えば、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)や1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU))から成る群から選択することができる。
【0063】
段階ii)における反応は、約0℃〜溶媒の沸点の温度で約1時間〜24時間に亘って行うことができる。段階ii)における反応は、塩素化剤として塩化チオニル又はオキシ塩化リン(POCl3)を用い、トルエン中、10℃〜50℃の温度で1時間〜12時間行うことが好ましい。最も好ましい一実施形態においては、段階ii)における反応を、塩化チオニルを用い、トルエン中、30℃で3時間行う。
【0064】
式(IX)で表される化合物を反応混合物から単離する(好ましくは、上述のように酸HZの塩として単離する)場合、段階ii)における反応は、好ましくは、例えば、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、THF又はヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)から選択される溶媒を用い、10℃〜選択した溶媒の沸点の温度で約1時間〜24時間に亘って行うことができる。式(IX)で表される化合物の塩は、塩酸塩であることが好ましい。
【0065】
式(IX)で表される化合物を反応混合物から単離しない場合、段階ii)における反応は、好ましくは、例えば、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、メチル−tert−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、THF、メチル−THF又はヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)から選択される溶媒を用い、0℃〜70℃の温度で約1時間〜24時間に亘って行うことができる。
【0066】
一実施形態においては、段階ii)における反応によって、式(X)で表される中間体を生成すると共に、式(XI):
【0067】

【0068】
で表される化合物を一定量生成する。
【0069】
次に、式(X)で表される化合物又は式(X)及び(XI)で表される化合物の混合物を、式(I)で表されるシナカルセト塩酸塩の製造に用いることができる。
【0070】
また、本発明は、上述のように式(X)で表されるシナカルセト中間体又は式(X)及び(XI)で表される化合物の混合物を製造し、それを式(I)で表されるシナカルセト塩酸塩に変換することによってシナカルセト塩酸塩を製造する方法も包含する。
【0071】
従って、本発明の更なる目的は、式(I):
【0072】

【0073】
で表されるシナカルセト塩酸塩の製造方法であって、次の各段階:
i)式(V):
【0074】

【0075】
で表される化合物を還元して式(IX):
【0076】

【0077】
で表される化合物を得る段階と、
ii)式(IX)で表される化合物を、塩素化剤で処理して式(X):
【0078】

【0079】
で表される化合物(これは式(XI):
【0080】

【0081】
で表される化合物と混合されていてもよい)を得る段階と、
iii)式(X)で表される化合物、又は場合によっては、(XI)で表される化合物と混合されている式(X)で表される化合物を、式(I)で表されるシナカルセト塩酸塩に変換する段階とを含む方法である。
【0082】
式(X)で表される化合物、又は場合によっては、式(XI)で表される化合物と混合されている式(X)で表される化合物の段階iii)における変換は、塩酸水溶液又は氷酢酸から選択される酸性プロトン源(好ましくは30%塩酸)とZn単体とを用いて行うことができる。段階iii)において0℃〜60℃の温度で用いることができる溶媒は、水;メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール及びtert−ブチルアルコールから成る群から選択される直鎖及び分岐鎖C1〜C4アルコール;及びメチルtert−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、THF、メチル−THF及びその混合物から成る群から選択される直鎖、分岐鎖及び環状エーテルから成る群から選択される。好ましくは、段階iii)における反応は、エタノール中又はTHF/水混合液中、約25℃の温度で行うことができる。
【0083】
或いは、段階iii)における変換は、接触水素化によって(即ち、Pd/C、PtO2、ラネーニッケル及びPdCl2から選択される触媒(好ましくはPd/C)の存在下で水素分子を用いて)行うことができる。接触水素化は、当業者に公知の如何なる方法によっても行うことができる。例えば、式(X)で表される化合物、又は場合によっては、式(XI)で表される化合物と混合されている式(X)で表される化合物を適切な溶媒に溶解し、触媒(例えば、Pd/CやPtO2(アダムス触媒)、ラネーニッケル、PdCl2等)の存在下、H2圧に曝露することができる。触媒がPd/C、PtO2、又はPdCl2から選択される場合、H2圧は50.66〜506.62kPaの範囲から選択し、触媒がラネーニッケルの場合、H2圧は405.3〜7092.75kPaのより高い範囲から選択する。適切な溶媒は、C2〜C5ニトリル(例えば、アセトニトリル等);直鎖又は分岐鎖C1〜C4アルコール(例えば、メチルアルコールやエチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等);直鎖又は分岐鎖C3〜C9ケトン(例えば、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトン等);直鎖又は分岐鎖C3〜C7エステル(例えば、酢酸エチルや酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル等);トルエン;及びそれらの混合物から成る群から選択することができる。好ましくは、溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル及びそれらの混合物から成る群から選択することができるが、溶媒はメタノールであることがより好ましい。通常、水素化は約1時間〜96時間に亘って行う。反応温度は0℃〜50℃とすることができるが、10℃〜30℃であることが好ましく、水素化は20℃で行うことが最も好ましい。
【0084】
好ましい一態様においては、段階iii)における変換は、化合物(X)、又は場合によっては、式(XI)で表される化合物と混合されている式(X)で表される化合物をメタノールに溶解し、得られる混合物を0.5%〜1%mol/molのPd/Cの存在下、20℃で100kPaの水素ガスに曝露して行う。
【0085】
式(X)で表される化合物が遊離塩基として存在する場合、段階iii)における変換を効率的に行うこともできる。
【0086】
本発明は、その特定の一態様において、式(X)で表される化合物をシナカルセト塩酸塩に変換する前に遊離塩基にすることを提供する。遊離塩基としての式(X)で表される化合物は、シナカルセト塩酸塩に変換する前に反応混合物から単離しないことが好ましい。
【0087】
従って、式(X)で表される化合物を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウムから成る群から選択される塩基の水溶液と反応させ、有機溶媒(例えば、トルエンや酢酸エチル、酢酸イソプロピル、MTBE等)に抽出して、対応する遊離塩基に変換し、その後、シナカルセト塩酸塩に変換する。或いは、式(X)で表される化合物を、無機塩基(例えば、炭酸ナトリウムや炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)の存在下、メタノールに溶解する。
【0088】
好ましい一実施形態においては、炭酸水素ナトリウム水溶液を用いて式(X)で表される化合物を遊離塩基にし、トルエンに抽出した後、Pd/Cの存在下、20℃の温度でトルエン/メタノール混合液又はトルエン/アセトン混合液中、100kPaの水素に曝露する。他の好ましい実施形態においては、式(X)で表される化合物をメタノールに溶解し、Pd/C及び化学量論量の炭酸水素ナトリウムの存在下、20℃の温度にて水素で100kPaまで加圧して反応を行う。
【0089】
また、本発明は、中間体の単離を行わずにシナカルセト塩酸塩を製造するワンポット方法も包含するが、詳細には、式(IX)で表される中間体を単離することなくin situで製造し用いる。
【0090】
上述の式(V)で表される化合物は、ザッハシステムの同時係属国際特許出願WO2010/049293に記載の方法(例えば、次の参照例1に記載の方法)に従って製造することができる。
【0091】
以下の実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は単に説明のためであって、これによって本発明の範囲が限定されるものではない。
【実施例】
【0092】
[参照例1]
(R)−3−(1−(ナフタレン−1−イル)エチルアミノ)−1−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)プロパン−1−オン塩酸塩(V)の合成
[方法A]
【0093】

【0094】
塩酸(R)−(1−ナフチル)エチルアミン(100.0g)、パラホルムアルデヒド(15.9g)、3−(トリフルオロメチル)アセトフェノン(135.7g)、30%w/w塩酸水溶液(5.6g)、エタノール(150.0g)及び水(10.0g)を反応器に投入し、十分な変換がHPLCによって確認されるまで、還流下で14時間攪拌した。次に、水(300.0g)及びトルエン(305.0g)を添加し、混合物を25℃で攪拌した。有機層と水層を分離し、沈殿を促すため、更に水(200.0g)を有機相に投入した。室温での濾過により標記化合物(95.6g)を単離し、水及びメチルtert−ブチルエーテルで洗浄し、50℃で乾燥した。
【0095】
R)−3−(1−(ナフタレン−1−イル)エチルアミノ)−1−(3−(トリフルオロメチル)−フェニル)−プロパン−1−オン塩酸塩(V)のNMR
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6), δ (ppm, TMS): 10.00 (1H, br s; -NH2+-), 9.24 (1H, br s; -NH2+-), 8.31 (1H, d, J = 8.4; ArH), 8.23 (1H, d, J = 8.0 Hz; ArH), 8.16 (1H, br s; ArH), 8.08-7.96 (4H, m; ArH), 7.82 (1H, t, J = 8.0 Hz; ArH), 7.69-7.58 (3H, m; ArH), 5.47-5.36 (1H, m; -CH(CH3)-), 3.70-3.54 (2H, m; -CH2-), 3.41-3.26 (2H, m; -CH2-), 1.72 (3H, m, J = 6.4 Hz; -CH(CH3)-).
【0096】
[方法B]
塩酸(R)−(1−ナフチル)エチルアミン(1.5g)、パラホルムアルデヒド(0.3g)、3−(トリフルオロメチル)アセトフェノン(1.8g)、30%w/w塩酸水溶液(0.1g)、エタノール(4.5g)及び水(1.5g)を攪拌下で反応器に投入し、十分な変換がHPLCによって確認されるまでマイクロ波照射(最大250W)下で5分間反応させた。次に、水(10.0g)及びトルエン(3.0g)を添加し、得られた懸濁液を25℃で攪拌した。室温での濾過により標記化合物(1.6g)を単離し、水及びメチル2−プロパノールで洗浄し、50℃で乾燥した。
[実施例1]
【0097】
(R)−3−(1−(ナフタレン−1−イル)エチルアミノ)−1−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)プロパン−1−オール塩酸塩(IXa)の合成
【0098】

【0099】
(R)−3−(1−(ナフタレン−1−イル)エチルアミノ)−1−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)プロパン−1−オン塩酸塩(V)(15.95g、39.104mmol)を−10℃で冷メタノール(50ml)に懸濁させた後、水素化ホウ素ナトリウム(0.75g、19.610mmol)、30%w/w水酸化ナトリウム水溶液(5.74g、43.014mmol)及び水(5ml)の溶液をゆっくりと添加して内部温度を0℃未満に保つ。反応混合物を0℃で0.5時間攪拌した後、pHが1になるまで30%w/w塩酸水溶液を添加してクエンチし、続いて水(40ml)を添加し、室温まで到達させる。このようにして形成される濃い懸濁液を50℃まで加熱し、20分間攪拌した後、5℃まで冷却する。沈殿物を濾過し、9:1vol/volの水/メタノール混合液(10ml)で洗浄し、真空下50℃で乾燥する。14.69g(35.841mmol)の高品質(R)−3−(1−(ナフタレン−1−イル)エチルアミノ)−1−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)プロパン−1−オール塩酸塩(IXa)が得られる(収率:91.7%、白色粉末)。
[実施例2]
【0100】
(R)−3−クロロ−N−(1−(ナフタレン−1−イル)エチル)−3−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)プロパン−1−アミン塩酸塩(X)の合成
【0101】

【0102】
(R)−3−(1−(ナフタレン−1−イル)エチルアミノ)−1−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)プロパン−1−オール塩酸塩(IXa)(20.0g、48.796mmol)をトルエン(140ml)に40℃で懸濁させ、塩化ホスホリル(4.3g、28.044mmol)を10分間に亘って滴下する。反応混合物を60℃で2時間攪拌した後、DMF(1.0g)を40℃で添加し、続いて更なる塩化ホスホリル(3.2g、20.870mmol)を添加する。混合物を40℃で一晩攪拌した後、MTBE(40ml)を添加する。真空下で蒸留を繰り返して揮発性物質を除去し、MTBEを再添加する。1:1vol/volのトルエン/MTBE溶液を得た後、70℃まで加熱し、15℃〜20℃までゆっくりと冷却させる。このようにして得られる沈殿物を室温で一晩熟成させた後、濾過し、1:1vol/volのトルエン/MTBE混合液で洗浄する(3×12ml)。真空下55℃で乾燥して、(R)−3−クロロ−N−(1−(ナフタレン−1−イル)エチル)−3−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)プロパン−1−アミン塩酸塩(X)を白色粉末として得る(6.0g、14.008mmol、収率:28.7%)。
[実施例3]
【0103】
(R)−3−クロロ−N−(1−(ナフタレン−1−イル)エチル)−3−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)プロパン−1−アミン塩酸塩(X)及び(R,E)−N−(1−(ナフタレン−1−イル)エチル)−3−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)プロパ−2−エン−1−アミン塩酸塩(XI)の合成
【0104】

【0105】
[方法A]
(R)−3−(1−(ナフタレン−1−イル)エチルアミノ)−1−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)プロパン−1−オール塩酸塩(IX)(35.0g、85.393mmol)をトルエン(150ml)に20℃で懸濁させ、塩化チオニル(11.2g、94.141mmol)をゆっくりと添加する。反応混合物を30℃〜40℃で4〜5時間攪拌した後、溶媒を真空下で留去する。蒸留/補充サイクルを数回行って、残ったトルエン性スラリーをイソプロパノールで洗い流す。得られるイソプロパノール溶液を1時間還流させた後、45℃まで冷却し、メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)(70ml)を添加する。このようにして得られる懸濁液を45℃で1時間攪拌した後、0℃まで冷却し、1時間熟成させる。濾過を行い、3:1vol/volのイソプロパノール/MTBE混合液で洗浄し(2×20ml)、真空下55℃で乾燥して、(R)−3−クロロ−N−(1−(ナフタレン−1−イル)エチル)−3−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)プロパン−1−アミン塩酸塩(X)と(R,E)−N−(1−(ナフタレン−1−イル)エチル)−3−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)プロパ−2−エン−1−アミン塩酸塩(XI)の95.8:4.2(HPLC面積%)混合物(29.6g)を白色粉末として得る。
【0106】
[方法B]
(R)−3−(1−(ナフタレン−1−イル)エチルアミノ)−1−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)プロパン−1−オール塩酸塩(IX)(50.0g、121.990mmol)をMTBE(200ml)及び水(80ml)に室温で懸濁させる。水酸化ナトリウム(30%w/w水溶液)を滴下(17.1g、128.250mmol)して発熱反応を制御し、出発固形物が完全に溶解するまで混合物を攪拌する。次に、有機層を分離し、中性pHとなるまで水で繰り返し洗浄する。MTBEをトルエンで洗い流し、得られるトルエン性溶液に塩化チオニル(16.7g、140.372mmol)をゆっくりと添加しながら、10℃〜20℃で維持する。反応混合物を60℃まで加熱し、4時間維持するか、又はIPCが正になるまで(HPLCによる)維持する。反応終了時にMTBEを投入し(170ml)、混合物を80℃〜85℃まで加熱し、微量の水を共沸除去する。混合物を60℃まで冷却し、MTBEを再添加した後、10℃まで冷却し、2時間熟成させる。濾過を行い、1:1vol/volのトルエン/MTBE混合液で洗浄し(3×40ml)、真空下55℃で乾燥して、(R)−3−クロロ−N−(1−(ナフタレン−1−イル)エチル)−3−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)プロパン−1−アミン塩酸塩(X)と(R,E)−N−(1−(ナフタレン−1−イル)エチル)−3−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)プロパ−2−エン−1−アミン塩酸塩(XI)の96.2:3.8(HPLC面積%)混合物(46.1g)を白色粉末として得る。
[実施例4]
【0107】
(R)−3−クロロ−N−(1−(ナフタレン−1−イル)エチル)−3−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)プロパン−1−アミン塩酸塩(X)及び(R,E)−N−(1−(ナフタレン−1−イル)エチル)−3−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)プロパ−2−エン−1−アミン塩酸塩(XI)のワンポット合成
【0108】

【0109】
(R)−3−(1−(ナフタレン−1−イル)エチルアミノ)−1−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)プロパン−1−オン塩酸塩(V)(100.0g、245.182mmol)を−10℃で冷メタノール(50ml)に懸濁させた後、水素化ホウ素ナトリウム(4.6g、121.597mmol)、30%w/w水酸化ナトリウム水溶液(35.5g、266.250mmol)及び水(30ml)の溶液をゆっくりと添加して内部温度を0℃未満に保つ。反応混合物を0℃で0.5時間攪拌した後、酢酸(36.7g、611.157mmol)を添加してクエンチし、室温まで到達させ、水(280ml)を添加する。揮発性溶媒を真空下40℃で留去した後、MTBEを投入する(400ml)。有機層を分離し、水で洗浄する(3×50ml)。次に、pHが12〜13になるまで水酸化ナトリウム(30%w/w水溶液、48.8g、366.0mmol)を添加して遊離塩基を遊離させ、有機層を水で洗浄する(3×50ml)。真空下でMTBEを留去し、トルエンで洗い流す。次に、反応混合物を20℃まで冷却し、塩化チオニル(30.5g、256.367mmol)のトルエン(60ml)溶液を2時間に亘って滴下する。次に、混合物を30℃で3時間攪拌し、一旦反応が終了した時点で、揮発性物質を真空下60℃で除去する。次に、トルエンを再添加し、反応混合物を20℃まで冷却する。ジイソプロピルエーテル(200ml)を添加し、反応混合物を80℃で1時間還流させた後、20℃まで冷却する。得られる濃い懸濁液を濾過し、固形物を2:1vol/volのトルエン/ジイソプロピルエーテル(60ml)で洗浄した後、MTBEで洗浄する(3×60ml)。このようにして形成される濃い懸濁液を50℃まで加熱し、20分間攪拌した後、5℃まで冷却する。真空下55℃で乾燥して、(R)−3−クロロ−N−(1−(ナフタレン−1−イル)エチル)−3−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)プロパン−1−アミン塩酸塩(X)と(R,E)−N−(1−(ナフタレン−1−イル)エチル)−3−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−プロパ−2−エン−1−アミン塩酸塩(XI)の98.4:1.6(HPLC面積%)混合物(65.0g)を白色粉末として得る。
[実施例5]
【0110】
(R)−N−(1−(ナフタレン−1−イル)エチル)−3−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)プロパン−1−アミン塩酸塩(I)(シナカルセト塩酸塩)の合成
【0111】

【0112】
[方法A]
(R)−3−クロロ−N−(1−(ナフタレン−1−イル)エチル)−3−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)プロパン−1−アミン塩酸塩(X)(15.0g、35.021mmol)、メタノール(150ml)、不均一系触媒、及び最後に添加剤をオートクレーブに投入し、不活性雰囲気に曝露した後、20℃で攪拌しながら100kPaの水素ガスで加圧する。一旦反応が終了(HPLCによるIPC)した時点で、セライト(登録商標)(Celite(登録商標))パッドによる濾過を行い、溶媒を除去し、最後に、添加剤を用いない場合には国際特許出願WO2010/094674の実施例13の教示に従って再結晶化を行って最終生成物(シナカルセト塩酸塩)を単離する。重炭酸ナトリウムを塩化水素失活剤(クエンチャー)として反応混合物で用いる場合には、水を添加した後、セライト(登録商標)(Celite(登録商標))パッドによって反応混合物を濾過する。メタノールを真空下で除去した後、酢酸イソプロピル(150ml)を添加し、出発懸濁液が完全に溶解するまで30%w/w水酸化ナトリウムを投入する。次に、有機層を分離し、中性pHになるまで水で洗浄し、pHが2〜3になるまで30%w/w塩酸水溶液で処理し、濃縮してシナカルセト塩酸塩を得るが、必要に応じて、エーテル、エステル溶媒、又はそれと少量のアルコール溶媒との混合物から再結晶化する(結果の詳細については次表参照)。
【0113】

(1)5%Pd/C エンゲルハード 5398(Engelhard 5398):N,O−脱ベンジル化反応に対して特異的に最適化された触媒
(2)5%Pd/C エンゲルハード 5016(Engelhard 5016)
【0114】
[方法B]
(R)−3−クロロ−N−(1−(ナフタレン−1−イル)エチル)−3−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)プロパン−1−アミン塩酸塩(X)(5.0g、11.674mmol)をアルコール溶媒又は水/THF混合液(40ml)に25℃で懸濁させる。プロトン源の酸性添加剤(7〜8当量)を投入した後、亜鉛粉末(2.5〜3.5当量)を部分的に添加する。ガス発生、発熱反応及び出発材料の溶解を確認し、亜鉛が完全に消費されるまで反応混合物を25℃で攪拌する。反応経過はHPLCによってモニターする(結果の詳細は次表参照)。
【0115】

【0116】
[方法C]
(R)−3−クロロ−N−(1−(ナフタレン−1−イル)エチル)−3−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)プロパン−1−アミン塩酸塩(X)(10.0g、23.347mmol)をメタノール(100ml)に溶解し、塩化パラジウム(0.124g、0.699mmol)を20℃で添加する。トリエチルシラン(7.4g、63.639mmol)を20分間に亘ってゆっくりと投入して発熱反応を制御した後、反応混合物を20℃で攪拌する。18時間後、HPLCによって94%の転化率を確認する。
【0117】
[方法D]
(R)−3−クロロ−N−(1−(ナフタレン−1−イル)エチル)−3−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)プロパン−1−アミン塩酸塩(X)(15.0g、35.021mmol)を15℃〜20℃でトルエン(90ml)に懸濁させ、激しく攪拌しながら、重炭酸ナトリウム飽和水溶液(75.6g、約72mmol)を水層のpHが8〜9になるまで段階的に投入する。混合物を数分間静置させて層状にした後、有機相を分離し、水で洗浄し(2×75ml)、オートクレーブに移す。5%炭素担持パラジウム(含水率50%)を添加(0.373g、0.088mmol)した後、メタノール(15ml)を添加し、混合物を不活性雰囲気に曝露した後、20℃で攪拌しながら100kPaの水素ガスで加圧する。IPCが正になるまで(HPCによる、約4〜5時間)水素圧を維持した後、反応混合物をセライト(登録商標)(Celite(登録商標))パッドによって濾過する。濾液からメタノールを留去し、酢酸イソプロピル(IPAC)(90ml)を添加する。得られる懸濁液を70℃まで加熱し、30分間攪拌した後、0℃までゆっくりと冷却する。濾過を行い、IPACで洗浄し(2×15ml)、真空下60℃〜65℃で乾燥し、シナカルセト塩酸塩を白色粉末として単離する(11.4g、28.944mmol、収率:82.6%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(X):

で表されるシナカルセト中間体。
【請求項2】
請求項1に記載の式(X)で表されるシナカルセト中間体の製造方法であって、次の各段階:
i)式(V):

で表される化合物を還元して式(IX):

で表される化合物を得る段階と、
ii)塩化チオニル(SOCl2)、五塩化リン(PCl5)、オキシ塩化リン(POCl3)、塩化オキサリル((ClCO)2)、ガス状塩酸、ホスゲン(Cl2CO)、及びクロロギ酸トリクロロメチル(ジホスゲン、液体)や炭酸ビス(トリクロロメチル)(トリホスゲン、BTC、固体)等、in situでホスゲン源として作用するホスゲンの非ガス状オリゴマー同等物から成る群から選択される塩素化剤を用いて式(IX)で表される化合物を処理する段階とを含む方法。
【請求項3】
塩素化剤を塩化チオニル(SOCl2)又はオキシ塩化リン(POCl3)とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
式(IX)で表される化合物を反応混合物から単離しない、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
式(IX)で表される化合物を、酸HZ(Zを塩化物イオン、臭化物イオン、重硫酸イオン(硫酸水素イオン)、メタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオン、シュウ酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、クエン酸イオン、酒石酸イオン、コハク酸イオン、マレイン酸イオン及びマロン酸イオンから成る群から選択する薬学的に許容されるアニオン性対イオンとする)の塩として反応混合物から単離する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
Zを塩化物イオンとする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
式(I)で表されるシナカルセト塩酸塩の製造方法であって、請求項2に記載の式(X)で表される化合物を製造する段階と、該化合物をシナカルセト塩酸塩に変換する段階とを含む方法。
【請求項8】
式(I):

で表されるシナカルセト塩酸塩の製造方法であって、次の各段階:
i)式(V):

で表される化合物を還元して式(IX):

で表される化合物を得る段階と、
ii)塩化チオニル(SOCl2)、五塩化リン(PCl5)、オキシ塩化リン(POCl3)、塩化オキサリル((ClCO)2)、ガス状塩酸、ホスゲン(Cl2CO)、及びクロロギ酸トリクロロメチル(ジホスゲン、液体)や炭酸ビス(トリクロロメチル)(トリホスゲン、BTC、固体)等、in situでホスゲン源として作用するホスゲンの非ガス状オリゴマー同等物から成る群から選択される塩素化剤を用いて式(IX)で表される化合物を処理して式(X):

で表される化合物(これは式(XI):

で表される化合物と混合されていてもよい)を得る段階と、
iii)式(X)で表される化合物、又は場合によっては、(XI)で表される化合物と混合されている式(X)で表される化合物を式(I)で表されるシナカルセト塩酸塩に変換する段階とを含む方法。
【請求項9】
段階iii)における変換を、塩酸水溶液及び氷酢酸から選択される酸性プロトン源とZnとを用いて行う、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
酸性プロトン源を塩酸とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
段階iii)における変換を触媒の存在下で水素分子を用いて行う、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
触媒をPd/C、PtO2、ラネーニッケル及びPdCl2から成る群から選択する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
触媒をPd/Cとする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
変換を添加剤の存在下で行う、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
添加剤をNaHCO3とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
式(X)で表される化合物を、段階iii)においてシナカルセト塩酸塩に変換する前に遊離塩基とする、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
遊離塩基としての式(X)で表される化合物を反応混合物から単離しない、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
式(IX)で表される中間体を単離せずにin situで製造し、用いる、請求項8に記載の方法。

【公表番号】特表2013−504535(P2013−504535A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528346(P2012−528346)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063154
【国際公開番号】WO2011/029833
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(307041023)
【氏名又は名称原語表記】ZaCh System S.p.A.
【Fターム(参考)】