説明

シフトレジスタ回路

【課題】シフトレジスタ回路において、外部からの初期化信号を必要とせずに各ノードのレベルを初期化でき、且つ、出力信号のレベル変化速度の低下を防止する。
【解決手段】シフトレジスタ回路は、クロック端子CKと出力端子OUTとの間に接続したトランジスタQ1、前段の出力信号Gk-1の活性化に応じてトランジスタQ1の制御電極(ノードN1)を充電するトランジスタQ3、ノードN1を放電するトランジスタQ5、トランジスタQ5の制御電極(ノードN2)を出力端とするインバータ、および、電源の遮断時にインバータの入力端(ノードN3)を放電し電源の投入後はオフするトランジスタQ8を備える。インバータの負荷素子であるトランジスタQ6は、電源の投入時にノードN2を充電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査線駆動回路に関するものであり、特に、例えば画像表示装置やイメージセンサなどの電気光学装置に使用される、同一導電型の電界効果トランジスタのみを用いて構成される走査線駆動回路を構成するシフトレジスタ回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等の画像表示装置(以下「表示装置」)では、複数の画素が行列状に配列された表示パネルの画素行(画素ライン)ごとにゲート線(走査線)が設けられ、表示信号の1水平期間(1H期間)の周期でそのゲート線を順次選択して駆動することにより表示画像の更新が行われる。そのように画素ラインすなわちゲート線を順次選択して駆動するためのゲート線駆動回路(走査線駆動回路)としては、表示信号の1フレーム期間で一巡するシフト動作を行うシフトレジスタを用いることができる。
【0003】
ゲート線駆動回路としてのシフトレジスタは、1つの画素ラインすなわち1つのゲート線ごとに設けられた複数のシフトレジスタ回路が縦続接続(カスケード接続)して構成される。本明細書では、ゲート線駆動回路を構成する複数のシフトレジスタ回路の各々を「単位シフトレジスタ」と称する。即ち、ゲート線駆動回路を構成する個々の単位シフトレジスタの出力端子は、対応するゲート線に接続されるだけでなく、その次段あるいは後段の単位シフトレジスタの入力端子に接続される。
【0004】
ゲート線駆動回路に使用されるシフトレジスタは、表示装置の製造プロセスにおける工程数を少なくするために、同一導電型の電界効果トランジスタのみを用いて構成されることが望ましい。このため、N型またはP型の電界効果トランジスタのみを用いて構成されたシフトレジスタ、およびそれを搭載する表示装置が種々提案されている(例えば、下記の特許文献1−10)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−35188号公報
【特許文献2】特開2006−60225号公報
【特許文献3】特開2004−157508号公報
【特許文献4】特開2006−24350号公報
【特許文献5】特開2004−295126号公報
【特許文献6】特開2002−133890号公報
【特許文献7】特開2007−250052号公報
【特許文献8】特開2006−277860号公報(図1、図2、図13)
【特許文献9】特開2004−246358号公報(図1)
【特許文献10】特開2006−344306号公報(図11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の図6に、P型MOSトランジスタのみを用いて構成した従来の単位シフトレジスタの回路図が示されている。当該単位シフトレジスタの出力信号(OUT)は、出力を活性レベル(ここではL(Low)レベル)にするトランジスタ(T2)(以下「プルアップトランジスタ」)を通してクロック信号(C1)が出力端子に供給されることによって活性化される。特にゲート線駆動回路に用いられる単位シフトレジスタは、出力信号を用いて大きな負荷容量となるゲート線を駆動するため、プルアップトランジスタには大きな駆動能力(電流を流す能力)が要求される。そのためプルアップトランジスタのオン抵抗は非常に低く設定される。
【0007】
シフトレジスタの通常動作(信号のシフト動作)では、縦続接続した複数の単位シフトレジスタの出力信号が1つずつ順番に活性化されるように、各段のプルアップトランジスタは順番にオンになる。しかし、例えば電源投入直後など、回路の各ノードの電位が不定の状態では、複数の単位シフトレジスタのプルアップトランジスタがオンしている場合があり、そのときクロック信号が活性化すると、オン抵抗の低い複数のプルアップトランジスタを通して、過大な電流が流れるため好ましくない。
【0008】
特許文献1の図6の単位シフトレジスタではその対策が図られている。即ち、当該単位シフトレジスタでは、プルアップトランジスタのゲートと非活性レベル(ここではH(High)レベル)の電源(VDD)との間に、初期化信号(SHUT)で制御されるトランジスタ(T7a)(以下「初期化トランジスタ」)が接続される。通常動作の前には、初期化信号を用いて全ての単位シフトレジスタの初期化トランジスタが一時的にオンにされる。それにより、全ての単位シフトレジスタにおいて、プルアップトランジスタのゲート電位が非活性レベルに初期化され、不定状態から脱する。その結果、全てのプルアップトランジスタがオフになるため、クロック信号が活性化しても、複数のプルアップトランジスタを通して過大な電流が流れることはない。
【0009】
しかしながら、特許文献1の図6の単位シフトレジスタでは、初期化トランジスタ(T7a)を設けたことにより生じる問題も考えられる。以下、この問題を説明する。
【0010】
当該単位シフトレジスタにおいて、出力信号(OUT)が活性化されるとき、プルアップトランジスタ(T2)のゲート・チャネル間容量(MOS容量)を介する結合により、プルアップトランジスタのゲート電位が降下する。これによりプルアップトランジスタのゲート・ソース間電圧の絶対値が大きく維持されるため、プルアップトランジスタのオン抵抗を低く維持でき、出力信号の活性レベルへの変化(ここでは出力信号の立ち下がり)速度の低下が防止される。この効果は、プルアップトランジスタのゲート電位の降下幅が大きいほど向上する。その下降幅はプルアップトランジスタのMOS容量とゲートが接続するノード(n2)の寄生容量との比に依存するため、プルアップトランジスタのゲートが接続するノードの寄生容量は小さいことが好ましい。
【0011】
しかし当該単位シフトレジスタでは、プルアップトランジスタのゲートに、上記の初期化トランジスタ(T7a)が接続されているため、プルアップトランジスタのゲートが接続するノードの寄生容量が、初期化トランジスタのドレイン・ゲート間容量分だけ大きくなる。その結果、出力信号の活性化時にプルアップトランジスタのゲート電位が充分に降下されなくなると、プルアップトランジスタの駆動能力が低下して、出力信号の立ち下がり速度が低下するという問題が生じる。
【0012】
また、特許文献1の図6の単位シフトレジスタのように、初期化信号(SHUT)を外部から入力する場合には、初期化信号の生成回路を外部回路として設ける必要があり、製造コストの上昇を招くという問題も考えられる。
【0013】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、各ノードのレベルを初期化する初期化機能を備え、且つ、出力信号の活性レベルへの変化速度の低下が防止されたシフトレジスタ回路を提供することを第1の目的とする。また初期化回路の制御信号(初期化信号)を外部から供給する必要のないシフトレジスタ回路を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の局面に係るシフトレジスタ回路は、入力端子、出力端子およびクロック端子と、前記クロック端子に入力されるクロック信号を前記出力端子に供給する第1トランジスタと、前記入力端子に入力される入力信号の活性化に応じて前記第1トランジスタの制御電極が接続する第1ノードを充電する第2トランジスタと、前記第1ノードを放電する第3トランジスタと、活性レベルの電源が供給され、前記第3トランジスタの制御電極が接続する第2ノードを出力端とするインバータと、前記電源の非活性時に前記インバータの入力端が接続する第3ノードを放電し、前記電源の活性時にはオフする第1の一方向性素子とを備え、前記インバータは、前記電源の活性時に前記第2ノードを充電する負荷素子を含むものである。
【0015】
本発明の第2の局面に係るシフトレジスタ回路は、入力端子、出力端子およびクロック端子と、前記クロック端子に入力されるクロック信号を前記出力端子に供給する第1トランジスタと、各々が前記出力端子を放電する第2および第3トランジスタと、第1制御信号の活性時には前記第2トランジスタを駆動し、第2制御信号の活性時には前記第3トランジスタを駆動する駆動回路とを備え、前記第1、第2および第3トランジスタの各制御電極が接続するノードをそれぞれ第1、第2および第3ノードとし、前記第2ノードに接続する制御電極を有し、前記第1ノードを放電する第4トランジスタと、前記第3ノードに接続する制御電極を有し、前記第1ノードを放電する第5トランジスタとを備え、電源の投入後、前記クロック信号が動作を開始する前に、前記第1および第2制御信号の少なくとも片方が所定時間だけ活性化されるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るシフトレジスタ回路は、電源投入に応じて第1ノードが非活性レベルに初期化される。よって第1トランジスタはオフ状態になり、通常動作の開始前にクロック信号が活性化しても、第1トランジスタを通して過大な電流が流れることを防止できる。さらに、電源投入により第1ノードの非活性化ができるので、外部からのリセット信号を必要としない。
【0017】
また第1ノードの初期化は、駆動回路が、電源投入に応じて第3トランジスタをオンにすることで実行される。第3トランジスタは、通常動作の非選択時に第1ノードを非活性レベルに固定するためのものであり、従来のシフトレジスタ回路も有していたものである。つまり本発明では、第1ノードに初期化のための回路素子を新たに接続させる必要が無い。よって第1ノードの寄生容量は、従来の単位シフトレジスタと同じである。従って、出力信号の活性化時における第1ノードの昇圧効果は低減されず、第1トランジスタのオン抵抗の上昇は伴わない。従って、出力信号の活性化の速度(出力端子の充電速度)の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1に係る液晶表示装置の概略ブロック図である。
【図2】実施の形態1に係るゲート線駆動回路の構成を示す図である。
【図3】実施の形態1に係る単位シフトレジスタの回路図である。
【図4】実施の形態1に係る単位シフトレジスタの動作を示す信号は系図である。
【図5】実施の形態1の第1の変更例に係る単位シフトレジスタの回路図である。
【図6】実施の形態1の第2の変更例に係る単位シフトレジスタの回路図である。
【図7】実施の形態1の第3の変更例に係る単位シフトレジスタの回路図である。
【図8】実施の形態1の第4の変更例に係るゲート線駆動回路の概略ブロック図である。
【図9】実施の形態1の第4の変更例に係る単位シフトレジスタの回路図である。
【図10】実施の形態1の第4の変更例に係る単位シフトレジスタの回路図である。
【図11】実施の形態2に係る単位シフトレジスタの構成を示す回路図である。
【図12】実施の形態2に係る単位シフトレジスタの通常動作を示す信号波形図である。
【図13】実施の形態2に係る単位シフトレジスタの初期リセット動作を説明するための信号波形図である。
【図14】実施の形態2の第1の変更例に係る単位シフトレジスタの初期リセット動作を説明するための信号波形図である。
【図15】実施の形態2の第2の変更例に係る単位シフトレジスタの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。なお、説明が重複して冗長になるのを避けるため、各図において同一または相当する機能を有する要素には同一符号を付してある。
【0020】
また、各実施の形態に用いられるトランジスタは、絶縁ゲート型電界効果トランジスタである。絶縁ゲート型電界効果トランジスタは、ゲート絶縁膜中の電界により半導体層内のドレイン領域とソース領域との間の電気伝導度が制御される。ドレイン領域およびソース領域が形成される半導体層の材料としては、ポリシリコン、アモルファスシリコン、ペンタセン等の有機半導体、単結晶シリコンあるいはIGZO(In-Ga-Zn-O)等の酸化物半導体などを用いることができる。
【0021】
よく知られているように、トランジスタは、それぞれ制御電極(狭義にはゲート(電極))と、一方の電流電極(狭義にはドレイン(電極)またはソース(電極))と、他方の電流電極(狭義にはソース(電極)またはドレイン(電極))とを含む少なくとも3つの電極を有する素子である。トランジスタはゲートに所定の電圧を印加することによりドレインとソース間にチャネルが形成されるスイッチング素子として機能する。トランジスタのドレインとソースは、基本的に同一の構造であり、印加される電圧条件によって互いにその呼称が入れ代わる。例えば、N型トランジスタであれば、相対的に電位の高い電極をドレイン、低い電極をソースと呼称する(P型トランジスタの場合はその逆となる)。
【0022】
特に示さない限り、それらのトランジスタは半導体基板上に形成されるものであってもよく、またガラスなどの絶縁性基板上に形成される薄膜トランジスタ(TFT)であってもよい。トランジスタが形成される基板としては、単結晶基板あるいはSOI、ガラス、樹脂などの絶縁性基板であってもよい。
【0023】
本発明のゲート線駆動回路は、単一導電型のトランジスタのみを用いて構成される。例えばN型トランジスタは、ゲート・ソース間電圧が当該トランジスタのしきい値電圧よりも高いH(ハイ)レベルになると活性状態(オン状態、導通状態)となり、同しきい値電圧よりも低いL(ロー)レベルで非活性状態(オフ状態、非導通状態)となる。そのためN型トランジスタを用いた回路においては信号のHレベルが「活性レベル」、Lレベルが「非活性レベル」となる。また、N型トランジスタを用いて構成した回路の各ノードは、充電されてHレベルになることで、非活性レベルから活性レベルへの変化が生じ、放電されてLレベルになることで、活性レベルから非活性レベルへの変化が生じる。
【0024】
逆にP型トランジスタは、ゲート・ソース間電圧がトランジスタのしきい値電圧(ソースを基準として負の値)よりも低いLレベルになると活性状態(オン状態、導通状態)となり、同しきい値電圧よりも高いHレベルで非活性状態(オフ状態、非導通状態)となる。そのためP型トランジスタを用いた回路においては信号のLレベルが「活性レベル」、Hレベルが「非活性レベル」となる。また、P型トランジスタを用いて構成した回路の各ノードは、充電・放電の関係がN型トランジスタの場合と逆になり、充電されてLレベルになることで、非活性レベルから活性レベルへの変化が生じ、放電されてHレベルになることで、活性レベルから非活性レベルへの変化が生じる。
【0025】
本明細書では、非活性レベルから活性レベルへの変化を「プルアップ」、活性レベルから非活性レベルへの変化「プルダウン」と定義する。つまり、N型トランジスタを用いた回路では、LレベルからHレベルへの変化が「プルアップ」、HレベルからLレベルの変化が「プルダウン」と定義され、P型トランジスタを用いた回路では、HレベルからLレベルへの変化が「プルアップ」、LレベルからHレベルの変化が「プルダウン」と定義される。
【0026】
また本明細書においては、二つの素子間、二つのノード間あるいは一の素子と一のノードとの間の「接続」とはその他の要素(素子やスイッチなど)を介しての接続であるが実質的に直接接続されているのと等価な状態を含むものとして説明する。例えば二つの素子がスイッチを介して接続している場合であっても、それらが直接接続されているときと同一に機能できるような場合には、その二つの素子が「接続している」と表現する。
【0027】
本発明においては、互いに位相の異なるクロック信号(多相クロック信号)が用いられる。以下では説明の簡単のため、一のクロック信号の活性期間とその次に活性化するクロック信号の活性期間との間に一定の間隔を設けている(例えば図4の時刻t5〜t6の間隔)。しかし本発明では各クロック信号の活性期間が実質的に重ならなければよく、上記の間隔は無くてもよい。例えば活性レベルをHレベルとすると、一のクロック信号の立ち下がりタイミングとその次に活性化するクロック信号の立ち上がりタイミングとが同時であってもよい。
【0028】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1に係る表示装置の構成を示す概略ブロック図であり、表示装置の代表例として液晶表示装置100の全体構成を示している。なお、本発明は、液晶表示装置への適用に限定されるものではなく、電気信号を光の輝度に変換する表示装置であるエレクトロルミネッセンス(EL)、有機EL、プラズマディスプレイ、電子ペーパ等、あるいは光の強度を電気信号に変換する撮像装置(画像センサ)などの電気光学装置に広く適用可能である。
【0029】
液晶表示装置100は、液晶アレイ部10と、ゲート線駆動回路(走査線駆動回路)30と、ソースドライバ40とを備える。後の説明により明らかになるが、本発明の実施の形態に係るゲート線駆動信号生成回路は、ゲート線駆動回路30に搭載される。
【0030】
液晶アレイ部10は、行列状に配設された複数の画素15を含む。画素の行(以下「画素ライン」とも称する)の各々にはそれぞれゲート線GL1,GL2…(総称「ゲート線GL」)が配設され、また、画素の列(以下「画素列」とも称する)の各々にはそれぞれデータ線DL1,DL2…(総称「データ線DL」)がそれぞれ設けられる。図1には、第1行の第1列および第2列の画素15、並びにこれに対応するゲート線GL1およびデータ線DL1,DL2が代表的に示されている。
【0031】
各画素15は、対応するデータ線DLと画素ノードNpとの間に設けられる画素スィッチ素子16と、画素ノードNpおよび共通電極ノードNCの間に並列に接続されるキャパシタ17および液晶表示素子18とを有している。画素ノードNpと共通電極ノードNCとの間の電圧差に応じて、液晶表示素子18中の液晶の配向性が変化し、これに応答して液晶表示素子18の表示輝度が変化する。これにより、データ線DLおよび画素スィッチ素子16を介して画素ノードNpへ伝達される表示電圧によって、各画素の輝度をコントロールすることが可能となる。即ち、最大輝度に対応する電圧差と最小輝度に対応する電圧差との間の中間的な電圧差を、画素ノードNpと共通電極ノードNCとの間に印加することによって、中間的な輝度を得ることができる。従って、上記表示電圧を段階的に設定することにより、階調的な輝度を得ることが可能となる。
【0032】
ゲート線駆動回路30は、所定の走査周期に基づき、ゲート線GLを順に選択して駆動する。画素スィッチ素子16のゲート電極は、それぞれ対応するゲート線GLと接続される。特定のゲート線GLが選択されている間は、それに接続する各画素において、画素スィッチ素子16が導通状態になり画素ノードNpが対応するデータ線DLと接続される。そして、画素ノードNpへ伝達された表示電圧がキャパシタ17によって保持される。一般的に、画素スィッチ素子16は、液晶表示素子18と同一の絶縁体基板(ガラス基板、樹脂基板等)上に形成されるTFTで構成される。
【0033】
ソースドライバ40は、Nビットのデジタル信号である表示信号SIGによって段階的に設定される表示電圧を、データ線DLへ出力するためのものである。ここでは一例として、表示信号SIGは6ビットの信号であり、表示信号ビットDB0〜DB5から構成されるものとする。6ビットの表示信号SIGに基づくと、各画素において、26=64段階の階調表示が可能となる。さらに、R(Red)、G(Green)およびB(Blue)の3つの画素により1つのカラー表示単位を形成すれば、約26万色のカラー表示が可能となる。
【0034】
また、図1に示すように、ソースドライバ40は、シフトレジスタ50と、データラッチ回路52,54と、階調電圧生成回路60と、デコード回路70と、アナログアンプ80とから構成されている。
【0035】
表示信号SIGにおいては、各々の画素15の表示輝度に対応する表示信号ビットDB0〜DB5がシリアルに生成される。すなわち、各タイミングにおける表示信号ビットDB0〜DB5は、液晶アレイ部10中のいずれか1つの画素15における表示輝度を示している。
【0036】
シフトレジスタ50は、表示信号SIGの設定が切り換わる周期に同期したタイミングで、データラッチ回路52に対して、表示信号ビットDB0〜DB5の取り込みを指示する。データラッチ回路52は、シリアルに生成される表示信号SIGを順に取り込み、1つの画素ライン分の表示信号SIGを保持する。
【0037】
データラッチ回路54に入力されるラッチ信号LTは、データラッチ回路52に1つの画素ライン分の表示信号SIGが取り込まれるタイミングで活性化する。データラッチ回路54はそれに応答して、そのときデータラッチ回路52に保持されている1つの画素ライン分の表示信号SIGを取り込む。
【0038】
階調電圧生成回路60は、高電圧VDHおよび低電圧VDLの間に直列に接続された63個の分圧抵抗で構成され、64段階の階調電圧V1〜V64をそれぞれ生成する。
【0039】
デコード回路70は、データラッチ回路54に保持されている表示信号SIGをデコードし、当該デコード結果に基づいて各デコード出力ノードNd1,Nd2…(総称「デコード出力ノードNd」)に出力する電圧を、階調電圧V1〜V64のうちから選択して出力する。
【0040】
その結果、デコード出力ノードNdには、データラッチ回路54に保持された1つの画素ライン分の表示信号SIGに対応した表示電圧(階調電圧V1〜V64のうちの1つ)が同時に(パラレルに)出力される。なお、図1においては、第1列目および第2列目のデータ線DL1,DL2に対応するデコード出力ノードNd1,Nd2が代表的に示されている。
【0041】
アナログアンプ80は、デコード回路70からデコード出力ノードNd1,Nd2…に出力された各表示電圧に対応したアナログ電圧を電流増幅して、それぞれデータ線DL1,DL2…に出力する。
【0042】
ソースドライバ40が、所定の走査周期に基づいて、一連の表示信号SIGに対応する表示電圧を1画素ライン分ずつデータ線DLへ繰り返し出力し、ゲート線駆動回路30がその走査周期に同期してゲート線GL1,GL2…を順に駆動することにより、液晶アレイ部10に表示信号SIGに基づいた画像の表示が成される。
【0043】
なお、図1には、ゲート線駆動回路30およびソースドライバ40が液晶アレイ部10と一体的に形成された液晶表示装置100の構成を例示したが、ゲート線駆動回路30と液晶アレイ部10とを一体的に形成し、ソースドライバ40については液晶アレイ部10の外部回路として設ける、あるいはゲート線駆動回路30およびソースドライバ40については、液晶アレイ部10の外部回路として設けることも可能である。
【0044】
図2は、実施の形態1に係るゲート線駆動回路30の構成を示す図である。ゲート線駆動回路30は、縦続接続(カスケード接続)した複数の単位シフトレジスタSR1,SR2,SR3,SR4…で構成されるシフトレジスタを含んでいる(説明の便宜上、シフトレジスタ回路SR1,SR2…のそれぞれを「単位シフトレジスタSR」と総称する)。単位シフトレジスタSRは、1つの画素ラインすなわち1つのゲート線GLごとに設けられる。
【0045】
また図2に示すクロック信号発生器31は、位相が互いに異なる(活性期間が重ならない)2相のクロック信号CLK,/CLKをゲート線駆動回路30の単位シフトレジスタSRに入力するものである。クロック信号CLK,/CLKは、表示装置の走査周期に同期したタイミングで、交互に活性化するよう制御されている。
【0046】
各単位シフトレジスタSRは、入力端子IN、出力端子OUT、クロック端子CKおよびリセット端子RSTを有している。図2のように、各単位シフトレジスタSRのクロック端子CKには、クロック信号CLK,/CLKのいずれかが供給される。具体的には、クロック信号CLKは奇数段の単位シフトレジスタSR1,SR3,SR5…に供給され、クロック信号/CLKは偶数段の単位シフトレジスタSR2,SR4,SR6…に供給される。図2の例では最後段である第n段目(第nステージ)の単位シフトレジスタSRnは偶数段であり、当該単位シフトレジスタSRnには、クロック信号/CLKが供給されている。
【0047】
スタート信号発生器32は、ゲート線駆動回路30に信号のシフト動作を開始させるためのスタートパルスSTを生成する。本実施の形態において、スタートパルスSTは画像信号の各フレーム期間の先頭に対応するタイミングで活性化される(Hレベルになる)信号である。
【0048】
スタートパルスSTは、第1段目(第1ステージ)である単位シフトレジスタSR1の入力端子INに入力される。第2段目以降の各単位シフトレジスタSRにおいては、入力端子INはその前段の単位シフトレジスタSRの出力端子OUTに接続される。
【0049】
各単位シフトレジスタSRのリセット端子RSTは、その次段の単位シフトレジスタSRの出力端子OUTに接続される。但し、最後段の単位シフトレジスタSRnのリセット端子RSTには、上記のスタートパルスSTが入力される。
【0050】
つまり各単位シフトレジスタSRの出力端子OUTから出力される出力信号Gは、垂直(又は水平)走査パルスとしてそれぞれ対応するゲート線GLへと供給されると共に、自己の次段の入力端子INおよび自己の前段のリセット端子RSTへと供給される。
【0051】
図2のゲート線駆動回路30において、単位シフトレジスタSRの各々は、クロック信号CLK,/CLKに同期して、入力端子INに入力される信号(スタートパルスSTあるいは自己の前段の出力信号)を時間的にシフトさせながら、対応するゲート線GL並びに自己の後段の単位シフトレジスタSRへと伝達する(単位シフトレジスタSRの動作の詳細は後述する)。その結果、一連の単位シフトレジスタSRは、所定の走査周期に基づいたタイミングでゲート線GLを順に活性化させる、いわゆるゲート線駆動ユニットとして機能する。
【0052】
本実施の形態の単位シフトレジスタSRは、自己の回路の各ノードの電位を特定のレベルに初期化する初期化機能(初期リセット機能)を有している。通常、電源投入直後などにはシフトレジスタの回路の各ノードの電位は不安定になるが、本実施の形態のゲート線駆動回路30では、電源が投入されると各単位シフトレジスタSRの各ノードの電位が所定のレベルに初期化され、不安定状態を脱する。
【0053】
図3は、本発明の実施の形態1に係る単位シフトレジスタの構成を示す回路図である。ゲート線駆動回路30を構成する各単位シフトレジスタSRは全て同様の構成を有しているため、ここでは代表的に、第k段目の単位シフトレジスタSRkを示している。
【0054】
本発明に係る単位シフトレジスタSRkを構成するトランジスタは全て同一導電型の電界効果トランジスタであるが、以下の実施の形態では、それらは全てN型TFTであるものとして説明する。またそれらトランジスタのしきい値電圧は全て等しいと仮定し、その値をVthとする。
【0055】
図3の如く、単位シフトレジスタSRkは、図2に示した入力端子IN、出力端子OUT、クロック端子CKおよびリセット端子RSTの他に、低電位側電源電位(ロー側電源電位)VSSが供給される第1電源端子S1、高電位側電源電位(ハイ側電源電位)VDDが供給される第2電源端子S2を有している。以下の説明ではロー側電源電位VSSを0Vとしてそれを回路の基準電位として定義しているが、実使用では、画素に書き込まれるデータの電圧を基準にして基準電位が設定され、例えばハイ側電源電位VDDは17V、ロー側電源電位VSSは−12Vなどと設定される。
【0056】
図3に示すように、単位シフトレジスタSRkは、出力回路部20、プルダウン駆動回路部21、プルアップ駆動回路部22および初期リセット回路部23とから構成されている。
【0057】
出力回路部20は、出力信号Gkの活性化および非活性化を行うものであり、ゲート線GLkの選択期間に出力信号Gkを活性レベル(Hレベル)にするトランジスタQ1(出力プルアップトランジスタ)と、ゲート線GLkの非選択期間に出力信号Gkを非活性レベル(Lレベル)に維持するためのトランジスタQ2(出力プルダウントランジスタ)とを含んでいる。
【0058】
トランジスタQ1は、出力端子OUTとクロック端子CKとの間に接続し、クロック端子CKに入力されるクロック信号を出力端子OUTに供給することによって出力信号Gkを活性化させる。出力信号Gkは、大きな容量負荷であるゲート線GLkを活性化させるのに用いられるため、トランジスタQ1には大きな駆動能力が要求される。よってトランジスタQ1のオン抵抗(インピーダンス)は充分小さく設定される。またトランジスタQ2は、出力端子OUTと第1電源端子S1との間に接続し、出力端子OUTを放電して電位VSSにすることで、出力信号Gkを非活性レベルに維持する。ここで、トランジスタQ1のゲート(制御電極)が接続するノードを「ノードN1」と定義する。
【0059】
トランジスタQ1のゲート・ソース間(即ち出力端子OUTとノードN1との間)には容量素子C1が接続される。この容量素子C1は、出力端子OUTのレベル上昇に伴うノードN1の昇圧効果を高めるためのものである。但し、容量素子C1は、トランジスタQ1のゲート・チャネル間容量が充分大きい場合にはそれで置き換えることができるので、そのような場合には省略してもよい。
【0060】
プルダウン駆動回路部21は、第2電源端子S2と第1電源端子S1との間に直列接続したトランジスタQ6,Q7から構成される。トランジスタQ6,Q7間の接続ノードを「ノードN2」と定義すると、トランジスタQ6は、ノードN2と第2電源端子S2との間に接続し、そのゲートは第2電源端子S2に接続される(即ちトランジスタQ6はダイオード接続されている)。またトランジスタQ7は、ノードN2と第1電源端子S1との間に接続される。トランジスタQ7のゲートが接続するノードを「ノードN3」と定義する。ノードN2は、プルダウン駆動回路部21の出力端であり、出力回路部20のトランジスタQ2のゲート、並びに、後述するプルアップ駆動回路部22のトランジスタQ5のゲートに接続される。
【0061】
トランジスタQ7のオン抵抗はトランジスタQ6のオン抵抗よりも充分小さく設定されており、これらトランジスタQ6,Q7により、ノードN3を入力端、ノードN2を出力端とするレシオ型インバータが構成される。当該インバータでは、トランジスタQ6が負荷素子、トランジスタQ7が駆動素子として機能する。このインバータの負荷素子は電流駆動素子であればよく、トランジスタQ6に代えて例えば抵抗素子や定電流素子を用いてもよい。このことは以下の実施の形態およびその変更例においても同様である。
【0062】
プルダウン駆動回路部21は、通常動作時にはノードN3のレベル変化に応じてトランジスタQ2,Q5を駆動する回路として機能する。即ち、通常動作時のプルダウン駆動回路部21は、トランジスタQ2,Q5を、ゲート線GLkの選択期間にはオフにし、非選択期間にはオンにする。但し、当該プルダウン駆動回路部21は、初期リセット時には、ノードN1のレベルを初期化する回路として機能する。
【0063】
プルアップ駆動回路部22は、トランジスタQ1(出力プルダウントランジスタ)を駆動する回路であり、トランジスタQ1を、ゲート線GLkの選択期間はオンにし、非選択期間はオフにする。当該プルアップ駆動回路部22は、入力端子INに入力される信号の活性化に応じてノードN1を充電するトランジスタQ3と、リセット端子RSTに入力される信号の活性化に応じてノードN1を放電するトランジスタQ4と、ゲート線GLkの非選択期間にノードN1をLレベルに維持するトランジスタQ5とを含んでいる。
【0064】
トランジスタQ3は、入力端子INに接続したゲートを有し、入力端子INとノードN1との間に接続される。トランジスタQ4は、リセット端子RSTに接続したゲートを有し、ノードN1と第1電源端子S1との間に接続される。トランジスタQ5は、ノードN2に接続したゲートを有し、ノードN1と第1電源端子S1との間に接続される。なお、トランジスタQ3のドレインは第2電源端子S2に接続させてもよい。
【0065】
ノードN1(トランジスタQ1のゲート)とノードN3(トランジスタQ7のゲート)との間に介在する初期リセット回路部23は、ダイオード接続された3つのトランジスタQ8〜Q10(一方向性素子)により構成されている。トランジスタQ8は、第2電源端子S2とノードN3との間に、ノードN3側がアノード、第2電源端子S2側がカソードとなるように接続される。またトランジスタQ9は、ノードN1とノードN3との間に、ノードN3側がアノード、ノードN1側がカソードとなるように接続される。トランジスタQ10は、入力端子INとノードN3との間に、入力端子IN側がアノード、ノードN3側がカソードとなるように接続される。なおトランジスタQ10は、ダイオード接続させずに、そのドレインを電源端子S2に接続させてもよい。
【0066】
詳細は後述するが、電源投入時の初期リセット回路部23は、ノードN2をしきい値電圧Vth以下にするように動作し、これにより、電源投入時に各ノードのレベルが初期化されるようになる。また通常動作時の初期リセット回路部23は、出力信号Gの活性化に伴ってノードN1が昇圧されるときに、ノードN3とノードN1とを分離してノードN1の寄生容量を小さくするように動作する。これによりノードN1の昇圧幅が小さくなることを防止している。
【0067】
以下、図3の単位シフトレジスタSRの動作を説明する。図4は、その動作を示す信号波形図である。説明の簡単のため、クロック信号CLK、/CLKおよびスタートパルスSTのHレベルは、全てハイ側電源電位VDDに等しいとする。またクロック信号CLK,/CLKおよびスタートパルスSTのLレベルの電位はロー側電源電位VSSと等しいものとし、その電位を0Vとする(VSS=0)。クロック信号CLK,/CLKは互いに1水平期間(1H)の位相差を持つ繰り返し信号である。なお初期リセットは、全ての単位シフトレジスタSRにおいて行われるが、図4では、代表的に単位シフトレジスタSR1のノードN1〜N3の信号波形を示している。
【0068】
図4の時刻t0は、ゲート線駆動回路30への電源投入時である。このときハイ側電源およびロー側電源がそれぞれ適切な電位に設定される。即ち、ハイ側電源(第2電源端子S2)の電位はVDDになり、ロー側電源(第1電源端子S1)の電位はVSSになる(ここではVSS=0であるので電源投入時に第1電源端子S1の電位の変動はない)。クロック信号発生器31、スタート信号発生器32の電源もこのとき投入される。時刻t0の直後は、ゲート線駆動回路30の出力信号G1,G2…のレベルは不定状態にある。
【0069】
この時点では、各単位シフトレジスタSRのノードN1(トランジスタQ1のゲート)のレベルも不定である。もし複数の単位シフトレジスタSRでノードN1がHレベルになっていると、それらのトランジスタQ1が同時にオン状態になるので、そのままクロック信号CLK,/CLKが活性化すると、オン抵抗の低い複数のトランジスタQ1を通して過大な電流が流れるため好ましくない。
【0070】
ここではあえて、各単位シフトレジスタSRのノードN1がHレベルになっていると仮定する。
【0071】
時刻t0以前では、電源は遮断されているので、ハイ側電源(第1電源端子S1)の電位はVSSレベルになっている。このときノードN3の電位がVth以上であったならば、トランジスタQ8がオンし、ノードN3は放電されてVthにまで下がる。またノードN3がVth以下であったならば、トランジスタQ8はオンせず、ノードN3はその電位に維持される。つまりノードN3のレベルは必ずVth以下になる。よってノードN3側がアノードとなるようにダイオード接続したトランジスタQ9は逆バイアス状態となり、ノードN1のHレベルは維持されることになる。
【0072】
時刻t0で電源が投入されると、第2電源端子S2(ハイ側電源)の電位がVDDになり、トランジスタQ6がオンになる。このときトランジスタQ8がオフするため、トランジスタQ7のゲート(ノードN3)の電位はVth以下に維持され、トランジスタQ7には最大でもサブスレッシュホールド電流しか流れない。つまりトランジスタQ7は実質的にオフ状態であり、ノードN2はトランジスタQ6によって充電されHレベル(VDD−Vth)になる。ノードN2がHレベルになると、トランジスタQ5がオンしてノードN1を放電するので、ノードN1はLレベル(VSS)に初期化される。
【0073】
この初期リセットの動作は、ゲート線駆動回路30の全ての単位シフトレジスタで行われる。このときトランジスタQ8はオフしているが、ノードN1の電位がVSSになったことで、今度はトランジスタQ9が、ノードN3をVth以下に維持する働きをする。つまりトランジスタQ9は、ノードN3の電位がVth以上になるとオンし、ノードN3をVthにまで下げる。またノードN3がVth以下であれば、トランジスタQ8はオンせず、ノードN3はその電位に維持される。
【0074】
初期リセットが行われた後は、全ての単位シフトレジスタSRにおいて、ノードN1がLレベル、ノードN2がHレベルの状態(以下、この状態を単位シフトレジスタSRの「セット状態」と称する)であり、トランジスタQ1がオフ、トランジスタQ2がオンになる。よって全ての単位シフトレジスタSRの出力端子OUT(出力信号G)は、低インピーダンスのLレベルに初期化される。またこのときクロック信号CLK,/CLKが活性化しても、全ての単位シフトレジスタSRのトランジスタQ1はオフしているため、複数のトランジスタQ1を通して過大な電流が流れることはない。
【0075】
この初期化後のリセット状態は、通常動作が開始されるまで維持される。トランジスタQ5,Q6,Q7,Q9はハーフラッチ回路を構成しており、それによってノードN1,N2,N3のレベルが保持されるからである。
【0076】
このようにゲート線駆動回路30は、各単位シフトレジスタSRが初期リセットされた後、スタートパルスSTおよびクロック信号CLK,/CLKが活性化されることによって、シフトレジスタとしての通常動作を開始する。なお、第2電源端子S2がVDDになった後は、トランジスタQ8は常時オフになるため、トランジスタQ8は通常動作には寄与しない。
【0077】
通常動作は、単位シフトレジスタSRの初期リセット動作が完了した後、即ちノードN1の電位がVSSまで下がる時刻t1以降に開始されることが好ましい。つまり図4の如く、スタートパルスSTおよびクロック信号CLK,/CLKは、少なくとも時刻t1までは非活性レベルに維持されることが好ましい。そうすることにより、初期リセット動作前の不安定状態にある単位シフトレジスタSRの誤動作の発生や、トランジスタQ1を電流が流れることをより確実に防止することができる。
【0078】
時刻t2で、スタートパルスSTがHレベル(VDD)になると、第1段目の単位シフトレジスタSR1において、トランジスタQ3がオンになる。このときトランジスタQ5もオン状態であるが、トランジスタQ3はトランジスタQ5よりも充分にオン抵抗が小さく設定されており、ノードN1はHレベル(VDD−Vth)になる。応じてトランジスタQ1がオンになるが、この時点ではクロック端子CKに入力されているクロック信号CLKは非活性レベル(Lレベル)であるので、出力端子OUTから出力される出力信号G1はLレベル(VSS)のままである。
【0079】
またスタートパルスSTがHレベルになったとき、単位シフトレジスタSR1ではトランジスタQ10がオンするため、ノードN3も充電されてHレベル(VDD−Vth)になる。応じてトランジスタQ7がオンになり、ノードN2は放電されてLレベルになる。よってトランジスタQ2,Q5がオフになる。このようにノードN1がHレベル、ノードN2がLレベルの状態、つまりトランジスタQ1がオン、トランジスタQ2がオフの状態を、以下では単位シフトレジスタSRの「セット状態」と称する。
【0080】
こうして単位シフトレジスタSR1がセット状態になった後、時刻t3で、スタートパルスSTがLレベルになる。単位シフトレジスタSR1では、トランジスタQ3がオフになるが、トランジスタQ5もオフしているため、ノードN1は高インピーダンス状態(フローティング状態)でHレベルに維持される。またこのときトランジスタQ10もオフするため、ノード3も高インピーダンス状態でHレベルに維持される。よってトランジスタQ7はオンに維持され、ノードN2はLレベルに維持される。即ち、単位シフトレジスタSR1のセット状態は維持される。
【0081】
時刻t4でクロック信号CLKがHレベル(VDD)に変化すると、単位シフトレジスタSR1では、オン状態のトランジスタQ1を通してそのレベル変化が出力端子OUTへと伝達され、出力信号G1がHレベルになる。出力信号G1のレベルが上昇するとき、容量素子C1およびトランジスタQ1のMOS容量を介する結合により、ノードN1が昇圧される。このノードN1の昇圧効果により、トランジスタQ1は非飽和領域で動作することができる。従って、出力信号G1のHレベル電位は、クロック信号CLKのHレベルと同じVDDにまで上昇する。これによりゲート線GL1が選択状態になる。
【0082】
なお、ダイオード接続したトランジスタQ9はノードN3側がアノードなので、ノードN1からノードN3への放電を阻止する一方向性素子として機能する。よってノードN1が昇圧されても、トランジスタQ9を通してノードN1からノードN3へ電荷は移動しない。またトランジスタQ9がノードN1とノードN3との間を分離するため、トランジスタQ7のゲート容量がノードN1の寄生容量に寄与しなくなり、その分だけノードN1の寄生容量が小さくなる。従って、出力信号G1の活性化時におけるノードN1の昇圧幅が大きくなる。よってそのときのトランジスタQ1のオン抵抗が下がり、出力信号G1の立ち上がり速度の低下が防止される。
【0083】
その後、時刻t5でクロック信号CLKがLレベル(VSS)に変化すると、オン状態のトランジスタQ1を通して出力端子OUTが放電され、出力信号G1はLレベル(VSS)になる。
【0084】
ここで、出力信号G1は第2段目の単位シフトレジスタSR2の入力端子INにも入力されているので、上記の時刻t3で出力信号G1がHレベルになったとき、単位シフトレジスタSR2はセット状態に移行している。よって時刻t6で、クロック信号/CLKがHレベルになると、第2段目の出力信号G2がHレベルになる。出力信号G2は単位シフトレジスタSR1のリセット端子RSTに入力されるので、単位シフトレジスタSR1では、トランジスタQ4がオンになり、ノードN1が放電されてLレベルになる。
【0085】
このときトランジスタQ9はオンになり、ノードN3も放電されて電位Vthになる。よってトランジスタQ7は実質的にオフ状態になり、ノードN2はトランジスタQ6により充電されてHレベル(VDD−Vth)になる。つまり単位シフトレジスタSR1は、トランジスタQ1がオフ、トランジスタQ2がオンのリセット状態に戻る。
【0086】
その後、単位シフトレジスタSR1は、次のフレーム期間でスタートパルスSTがHレベルになるまでリセット状態に維持される。ここでもトランジスタQ5,Q6,Q7,Q9から成るハーフラッチ回路によって、ノードN1,N2,N3のレベルが保持されるからである。またその間、トランジスタQ2がオンしているので、出力端子OUTは低インピーダンスでLレベルに維持される。
【0087】
以上、ゲート線駆動回路30の第1段目の単位シフトレジスタSR1の動作を説明したが、2段目以降の単位シフトレジスタSRもこれと同様に動作する。つまり2段目以降の単位シフトレジスタSRkは、前段の出力信号Gk-1の活性化に応じてセット状態になり、そのときクロック端子CKに入力されるクロック信号の活性化に応じて自己の出力信号Gkを活性化させ、その後、次段の出力信号Gk+1の活性化に応じてリセット状態に戻り出力信号GkをLレベルに維持する。なお図2の構成では、最後段の単位シフトレジスタSRnは、次のフレーム期間でスタートパルスSTよってリセット状態にされる。
【0088】
従って、ゲート線駆動回路30においては、単位シフトレジスタSR1に入力されるスタートパルスSTの活性化を切っ掛けにして、クロック信号CLK,/CLKに同期したタイミングで出力信号G1,G2,G3…が順に活性化される。それによって、ゲート線駆動回路30は、所定の走査周期でゲート線GL1,GL2,GL3…を順番に駆動することができる。
【0089】
以上のように、本実施の形態に係る単位シフトレジスタSRは、電源投入時に初期リセット回路部23がノードN3の電位をVth以下に維持することにより、ノードN1がLレベル、ノードN2がHレベルにそれぞれ初期化される。よって、通常動作の開始前にクロック信号CLK,/CLKが活性化しても、複数のトランジスタQ1を通して過大な電流が流れることはない。またこの初期リセット動作は、電源投入(第2電源端子S2の電位上昇)に応じて実行され、外部からの初期化信号を必要としない。つまり外部回路として初期化信号の生成回路を設ける必要がなく、製造コストの上昇を抑えることができる。
【0090】
また出力信号Gの活性化に伴いノードN1が昇圧されるとき、トランジスタQ9はオフになりノードN1とノードN3との間を分離する。よってこのときトランジスタQ7のゲート容量がノードN1の寄生容量に寄与しなくなり、ノードN1の寄生容量を小さくすることができる。従って、出力信号Gの活性化時におけるノードN1の昇圧幅を大きくでき、出力信号Gの立ち上がり速度の低下が防止される。
【0091】
またノードN1の初期化動作は、トランジスタQ5をオンにすることで実行される。このトランジスタQ5は、通常動作の非選択時にノードN1を非活性レベルに固定するために、従来の単位シフトレジスタSRにも設けられていたものである。つまり本実施の形態では、ノードN1を初期化(非活性化)させるための素子を新たに設けてはいない。この点からも、ノードN1の寄生容量は小さく抑えられている。
【0092】
[第1の変更例]
図5は、実施の形態1の第1の変更例に係る単位シフトレジスタの回路図である。当該単位シフトレジスタSRkは、図3の回路に対し、プルダウン駆動回路部21としてトランジスタQ6,Q71,Q72,Q11から構成されるシュミットトリガ型インバータを用いたものである。
【0093】
図5の如く、トランジスタQ6は、第2電源端子S2とノードN2との間に接続し、そのゲートは第2電源端子S2に接続している(つまりトランジスタQ6はダイオード接続している)。トランジスタQ71,Q72は、プルダウン駆動回路部21の出力端であるノードN2(トランジスタQ2,Q5のゲート)と第1電源端子S1との間に直列に接続し、それらのゲートは共にノードN3に接続される。トランジスタQ11は、第2電源端子S2とトランジスタQ71,Q72間の接続ノードとの間に接続し、そのゲートはノードN2に接続される。
【0094】
シュミットトリガ型インバータでは、その出力ノード(ノードN2)の電圧変化に応答して、駆動トランジスタ(トランジスタQ71,Q72)に流れる帰還電流が変化し、それによりしきい値電圧(反転電圧)が変化する。その結果、通常のレシオ型インバータ(図3のプルダウン駆動回路部21)よりもしきい値電圧が高くなる。よって、ノードN3の電位がVthのときでも、駆動トランジスタ(トランジスタQ71,Q72)は充分にオフしている(図3のトランジスタQ7のようにサブスレッシュホールド状態にはならない)。従って、図3の回路よりも、プルダウン駆動回路部21がノードN2を安定してHレベルに設定することができる。
【0095】
[第2の変更例]
図6は、実施の形態1の第2の変更例に係る単位シフトレジスタの回路図である。当該
単位シフトレジスタSRkは、図3の回路に対し、トランジスタQ8のバックゲートをゲート(ノードN3)に接続させたものである。
【0096】
電源遮断時に、第2電源端子S2の電位がVSS(=0V)となると、電位関係より、トランジスタQ8では第2電源端子S2側がソース、ノードN3側がドレインとなる。このときトランジスタQ8のバックゲートとソース間の電圧が仮にVthであったとすると、トランジスタQ8のバックゲートはソースに対し正バイアスされるため、トランジスタQ8のしきい値電圧は低下してVthより小さくなる。そのため電源遮断後には、ノードN3のレベルはVth以下になる。
【0097】
よって次の電源投入時には、トランジスタQ7のゲート電位はVth以下になっており、トランジスタQ7は確実にオフしている。従って初期リセット動作の際、ノードN2がより確実にHレベルに設定されるようになる。
【0098】
なお通常動作時は、第2電源端子S2の電位がVDDであるので、電位関係より、トランジスタQ8ではノードN3側がソース、第2電源端子S2側がドレインとなる。このときトランジスタQ8のバックゲートとソースは同電位となるので、しきい値電圧は一定の正電圧となり、トランジスタQ8はオフに維持される。よって単位シフトレジスタSRの動作には影響しない。
【0099】
本変更例においても、上記の第1の変更例を適用し、プルダウン駆動回路部21のトランジスタQ6,Q7から成るインバータに代えて、シュミットトリガ型インバータを用いてもよい。
【0100】
[第3の変更例]
図7は実施の形態1の第3の変更例に係る単位シフトレジスタSRkの回路図である。当該単位シフトレジスタSRkは、図3の回路と同様に出力回路部20、プルダウン駆動回路部21、プルアップ駆動回路部22および初期リセット回路部23から構成されているが、出力回路部20以外の構成が図3とは異なっている。
【0101】
プルダウン駆動回路部21は、図3と同様のトランジスタQ6,Q7から成るレシオ型インバータに加え、そのインバータの入力端であるノードQ3(トランジスタQ7のゲート)に適切な信号を供給するための入力回路が設けられる。入力回路は、トランジスタQ15〜Q17から成っている。
【0102】
トランジスタQ15は、入力端子INに接続したゲートを有し、第2電源端子S2とノードN3との間に接続される。トランジスタQ16,Q17は、共にノードN3と第1電源端子S1との間に接続するが、トランジスタQ16のゲートはリセット端子RSTに接続され、トランジスタQ17のゲートはノードN2に接続される。
【0103】
トランジスタQ15はトランジスタQ17よりもオン抵抗が充分小さく設定されている。よって通常動作時において、前段の出力信号Gk-1の活性化に応じてトランジスタQ15がオンすると、ノードN3は充電してHレベルになる。またトランジスタQ16は、次段の出力信号Gk+1の活性化に応じて、ノードN3を放電してLレベルに変化させる。従って通常動作時のプルダウン駆動回路部21は、ノードN2を、前段の出力信号Gk-1の活性化に応じてLレベルにし、次段の出力信号Gk+1の活性化に応じてHレベルにするように機能する。
【0104】
初期リセット回路部23は、第2電源端子S2とノードN3との間に接続し、そのゲートがノードN3に接続したトランジスタQ8のみから成る。トランジスタQ8は、電源が遮断されて第2電源端子S2が電位VSSのときは、ノードN3の電位をVth以下に維持する。また電源が投入されて第2電源端子S2が電位VDDになった後は、常時オフ状態になり、単位シフトレジスタSRの通常動作には寄与しない。
【0105】
一方、プルアップ駆動回路21は、入力端子INとノードN1(トランジスタQ1のゲート)との間に接続したトランジスタQ3と、当該トランジスタQ3のゲートとノードN2との間に接続したトランジスタQ14とから成っている。トランジスタQ14のゲートは、第2電源端子S2に接続される。ここで、トランジスタQ3のゲートが接続するノードを「ノードN6」と定義する。
【0106】
ここで、図7の単位シフトレジスタSRの電源投入時に行われる初期リセット動作について説明する。
【0107】
各単位シフトレジスタSRにおいて、電源が投入される前、すなわち第2電源端子S2の電位がVSSのときは、初期リセット回路部23のトランジスタQ8の作用によりノードN3の電位はVth以下になっている。このとき各単位シフトレジスタSRの出力端子OUTの電位は不定である。
【0108】
電源が投入されると、第2電源端子S2の電位がVDDなるが、トランジスタQ8はノードN3側がアノードになるようにダイオード接続されているため、ノードN3はVth以下に維持される。よってトランジスタQ7はオフ状態(またはサブスレッシュホールド状態)であり、ノードN2はトランジスタQ6により充電されてHレベル(VDD−Vth)に初期化される。応じてトランジスタQ2がオンし、出力端子OUTは低インピーダンスのLレベル(VSS)になる。またこのときトランジスタQ17がオンするため、ノードN3は電位VSSのLレベルになる。
【0109】
電源投入時には、プルアップ駆動回路部22のトランジスタQ14がオンするため、ノードN4がHレベルになるとノードN6もHレベル(VDD−Vth)になる。応じてトランジスタQ3がオンする。各単位シフトレジスタSRの入力端子INは、その前段の出力端子OUTに接続されているが、上記のように各単位シフトレジスタSRの出力端子OUTはLレベル(VSS)に初期化されるので(第1段目の単位シフトレジスタSR1の場合は、スタートパルスSTがLレベルになっている)、トランジスタQ3がオンするとノードN1はLレベル(VSS)に初期化される。よってトランジスタQ1はオフ状態になる。
【0110】
このように初期リセット動作が行われると、全ての単位シフトレジスタSRにおいて、ノードN1がLレベル、ノードN2がHレベルの状態(セット状態)になり、トランジスタQ1がオフ、トランジスタQ2がオンとなる。よって全ての単位シフトレジスタSRの出力信号Gは不定状態を脱してLレベルになる。またこのときクロック信号CLK,/CLKが活性化しても、全ての単位シフトレジスタSRのトランジスタQ1はオフしているため、複数のトランジスタQ1を通して過大な電流が流れることはない。
【0111】
このリセット状態は、通常動作が開始されるまで維持される。トランジスタQ6,Q7,Q17はハーフラッチ回路を構成しており、それによってノードN2,N3のレベルが保持されるからである。
【0112】
続いて、図7の単位シフトレジスタSRの通常動作について説明する。ここでは代表的に、第k段目の単位シフトレジスタSRkの動作を示す。単位シフトレジスタSRkのクロック端子CKには、クロック信号CLKが入力されていると仮定する(ゲート線駆動回路30の奇数段がこれに相当する)。
【0113】
リセット状態の単位シフトレジスタSRkにおいて、前段の出力信号Gk-1(第1段目の単位シフトレジスタSR1の場合にはスタートパルスST)が活性化したとする。プルアップ駆動回路21のトランジスタQ3はオン状態であるので、ノードN1のレベルが上昇する。
【0114】
このとき入力端子INおよびノードN1とノードN6との間は、トランジスタQ3の寄生容量(ゲート・チャネル間容量、ゲートとソース・ドレインとの間のオーバラップ容量など)により容量結合しており、入力端子INおよびノードN1のレベル上昇に伴ってノードN6のレベルも上昇する。ノードN6の電位は前段の出力信号Gk-1の振幅(VDD)よりも大きくなり、それがVDD+Vth以上になれば、トランジスタQ3は非飽和領域で動作する。その結果ノードN1は高速に充電(プリチャージ)され、電位VDDのHレベルになる。応じてトランジスタQ1がオンになる。
【0115】
他方、プルダウン駆動回路部21では、前段の出力信号Gk-1の立ち上がりに応じて、トランジスタQ15がオンし、ノードN3のレベルが上昇する。応じてトランジスタQ7がオンになり、ノードN2のレベルが低下し始める。ノードN2のレベルが低下すると、トランジスタQ14がオンしてノードN6からノードN2への方向に電流が流れる。よってノードN6のレベルは、ノードN2のレベル低下に伴って低下する。
【0116】
ノードN2,N6のレベルがLレベルになると、出力回路部20のトランジスタQ2がオフになる。つまり単位シフトレジスタSRkは、トランジスタQ1がオン、トランジスタQ2がオフのセット状態となるが、この時点ではクロック信号CLKはLレベルであるので、出力端子OUT(出力信号Gk)は低インピーダンスでLレベルに維持される。またトランジスタQ3がオフになるので、ノードN1はフローティング状態でHレベルに維持される。
【0117】
またプルダウン駆動回路部21では、ノードN2がLレベルになるとトランジスタQ17がオフになる。その結果ノードN3は電位VDD−VthのHレベルになる。
【0118】
ここでノードN1のプリチャージ時におけるトランジスタQ14の動作に注目する。ノードN1がプリチャージされる前は、ノードN2がHレベル(VDD−Vth)であり、またトランジスタQ14のゲート電位はVDDに固定されているので、トランジスタQ14はノードN2からノードN6へと電流を流し、ノードN6をHレベル(VDD−Vth)に充電する。
【0119】
前段の出力信号Gk-1が立ち上がってトランジスタQ3によるノードN1のプリチャージが開始されたとき、ノードN6が昇圧されるので、電位関係からノードN2側がトランジスタQ14のソースとなる。この時点ではノードN2の電位はVDD−Vthであるので、トランジスタQ14のゲート(第2電源端子S2)・ソース(ノードN2)間電圧はVthとなり、当該トランジスタQ14は実質的にオフ(サブスレッシュホールド状態)になる。よってトランジスタQ14にはノードN6からノードN2への方向にサブスレッシュホールド電流が流れるが、これは微小な電流なので、ノードN6が昇圧されている短い期間にノードN6から放出される電荷は無視できる程度である。
【0120】
そしてノードN1がプリチャージされてHレベル(VDD)になった後、ノードN2がLレベルになると、トランジスタQ14はオンになり、ノードN6からノードN2へと電流が流れ、ノードN6はLレベル(VSS)になる。その後も、ノードN2がLレベルの間はトランジスタQ14はオン状態であり、ノードN6はLレベルに維持される。
【0121】
このようにトランジスタQ14は、ノードN1のプリチャージ前、ノードN2がHレベルになっている段階では、ノードN2の電位をノードN6に伝達する抵抗素子として働き、ノードN1のプリチャージ開始時にノードN6が昇圧された段階では、ノードN6とノードN2との間を遮断する遮断素子として働く。またノードN1のプリチャージが進みノードN2のレベルが低下する段階およびそれ以降のノードN2がLレベルに維持されている段階では、トランジスタQ14はノードN6の電荷をノードN2に放電する抵抗素子として働く。つまりトランジスタQ14は、前段の出力信号Gk-1の活性化に先んじてノードN6を充電し、また前段の出力信号Gk-1の非活性化に先んじてノードN6を放電する充放電回路として機能する。
【0122】
単位シフトレジスタSRkにおいてノードN1のプリチャージが完了した後、前段の出力信号Gk-1はLレベルに戻る。このときプルアップ駆動回路部22のトランジスタQ3は既にオフ状態になっているので、ノードN1のレベルは変化しない。またプルダウン駆動回路部21のトランジスタQ15はオフになる。
【0123】
その後、クロック信号CLKが立ち上がると、そのレベル変化がオン状態のトランジスタQ1を通して出力端子OUTへと伝達され、出力信号Gkのレベルが上昇する。このとき容量素子C1を介する結合によりノードN1が昇圧され、トランジスタQ1を非飽和領域で動作させる。よって出力信号Gkは、クロック信号CLKのHレベルと同じ電位VDDのHレベルになる。
【0124】
クロック信号CLKが立ち下がると、オン状態のトランジスタQ1を通して出力端子OUTからクロック端子CKへと電流が流れ、出力端子OUTが放電される。その結果、出力信号GkはLレベルに戻る。このとき容量素子C1を介する結合により、ノードN1は昇圧される前のレベル(VDD)に戻る。
【0125】
ここで、出力信号Gkは、次段の単位シフトレジスタSRk+1の入力端子INにも入力されているので、出力信号GkがHレベルになったとき、次段の単位シフトレジスタSRk+1はセット状態に移行している。
【0126】
そのため次にクロック信号/CLKのレベルが立ち上がると、次段の出力信号Gk+1がHレベルになる。よって単位シフトレジスタSRkでは、トランジスタQ16がオンになり、ノードN3がLレベルになる。応じてトランジスタQ7がオフになるため、ノードN2がトランジスタQ6により充電されてHレベルになる。
【0127】
ノードN2がHレベルになると、オン状態のトランジスタQ14を通しノードN2からノードN6へと電流が流れ、ノードN6は電位VDD−VthのHベルになる。その結果トランジスタQ3がオンになり、ノードN1は放電され、低インピーダンスのLレベルになる。その結果単位シフトレジスタSRkは、トランジスタQ1がオフ、トランジスタQ2がオンのリセット状態に戻る。
【0128】
その後、次段の出力信号Gk+1はLレベルに戻るが、単位シフトレジスタSRkは、次のフレーム期間で前段の出力信号Gk-1が活性化されるまでリセット状態に維持される。トランジスタQ6,Q7,Q17から成るハーフラッチ回路が、ノードN2,N3のレベルを保持するからである。またその間、トランジスタQ2がオンしているので、出力端子OUTは低インピーダンスでLレベルに維持される。
【0129】
本変更例の単位シフトレジスタSRにおいては、トランジスタQ3の寄生容量がノードN6の昇圧手段として機能し、それがノードN1のプリチャージ時のトランジスタQ3のゲート電位を上昇させる。それによりトランジスタQ3は非飽和領域で動作するので、ノードN1のレベル上昇速度は従来よりも高速になる。よって、クロック信号の周波数が高くなり、入力端子INに入力される信号のパルス幅が狭くなった場合であっても、ノードN1を充分にプリチャージすることができる。そのため、トランジスタQ1の駆動能力の低下を防止できるという効果が得られる。
【0130】
以上の動作から分かるように、図7の単位シフトレジスタSRでは、トランジスタQ3は単位シフトレジスタSRkをセット状態にするノードN1の充電(プリチャージ)と、リセット状態にするためのノードN1の放電の両方を行う。つまり、当該トランジスタQ3は、図3におけるトランジスタQ3,Q5の両方の働きをしている。
【0131】
また図7の単位シフトレジスタSRでは、ノードN1(トランジスタQ1のゲート)とノードN3(トランジスタQ7のゲート)とが分離されており、またノードN3の放電はプルダウン駆動回路部21のトランジスタQ16が行うことができる。よって初期リセット回路部23には、図3のトランジスタQ9に相当するものを設ける必要はない。その分、ノードN1に接続するトランジスタが少なくなり、ノードN1の寄生容量は図3よりもさらに小さくなる。
【0132】
なお図7の単位シフトレジスタSRでは、ノードN3の充電はプルダウン駆動回路部21のトランジスタQ15が行っている。当該トランジスタQ15は、図3のトランジスタQ10と同じ働きをしている。
【0133】
本変更例においても、上記の第1の変更例を適用し、プルダウン駆動回路部21のトランジスタQ6,Q7から成るインバータに代えて、シュミットトリガ型インバータを用いてもよい。あるいは第2の変更例を適用し、初期リセット回路部23のトランジスタQ8のバックゲートをノードN3に接続させてもよい。
【0134】
[第4の変更例]
本変更例では、実施の形態1の初期リセット回路部23を、本発明者による特開2007−257813号公報に開示された単位シフトレジスタSRに適用する。
【0135】
図8は、実施の形態1の第4の変更例に係るゲート線駆動回路30の概略ブロック図である。同図に示すように、本変更例のクロック信号発生器31は、それぞれ位相の異なる(活性期間が重複しない)3相のクロック信号CLK1,CLK2,CLK3を生成する。これらは1水平走査期間(1H)ずつ位相がずれており、CLK1,CLK2,CLK3,CLK1,CLK2…の順に繰り返し活性化するものとする。
【0136】
また本変更例のスタート信号発生器32は、第1および第2スタートパルスST1,ST2を出力する。第1および第2スタートパルスST1,ST2は、共に画像信号の各フレーム期間の先頭に対応するタイミングでHレベルになる信号であるが、1水平走査期間(1H)だけ位相がずれており、活性期間が重ならない。第1スタートパルスST1は第2スタートパルスST2よりも先に活性化し、第2スタートパルスST2はその1水平走査期間後(スタートパルスST1が非活性化した後)に活性化する。
【0137】
図8に示すように、各単位シフトレジスタSRは、クロック端子CK、リセット端子RSTおよび出力端子OUT、第1入力端子IN1および第2入力端子IN2を有している。各単位シフトレジスタSRのクロック端子CKには、クロック信号CLK1,CLK2,CLK3のうち所定の1つが供給される。この例では、クロック信号CLK1は[3m−2]段目の単位シフトレジスタSR1,SR4,SR7…に供給され、クロック信号CLK2は[3m−1]段目の単位シフトレジスタSR2,SR5,SR8…に供給され、クロック信号CLK3は[3m]段目の単位シフトレジスタSR3,SR6,SR9…に供給している。
【0138】
第1段目の単位シフトレジスタSR1では、第1入力端子IN1に第1スタートパルスST1が入力され、第2入力端子IN2に第2スタートパルスST2が入力される。第2段目の単位シフトレジスタSR2では、第1入力端子IN1に第2スタートパルスST2が入力され、第2入力端子IN2には第1段目の単位シフトレジスタSR1の出力信号Gが入力される。第3段目以降の単位シフトレジスタSRkでは、第1入力端子IN1には前段(単位シフトレジスタSRk-1)の出力信号Gk-1が入力され、第2入力端子IN2にはその2段前(単位シフトレジスタSRk-2)の出力信号Gk-2が入力される。
【0139】
また、各単位シフトレジスタSRのリセット端子RSTには、その次段の単位シフトレジスタSRk+1が入力される。但し図8の例では、最後段(第n段目)の単位シフトレジスタSRnでは、リセット端子RSTに第1スタートパルスST1が入力される。
【0140】
図9は、本変更例に係る単位シフトレジスタSRの回路図である。ここでも代表的に第k段目の単位シフトレジスタSRkを示す。当該単位シフトレジスタSRkは、図3の回路に対し、プルアップ駆動回路部22の構成が異なっている。それに伴い、初期リセット回路部23では、トランジスタQ9がノードN1から分離され、トランジスタQ10のソースが第1入力端子IN1に接続される構成となっている。
【0141】
当該単位シフトレジスタSRのプルアップ駆動回路部22は、以下のトランジスタQ3〜Q5,Q12,Q13および容量素子C2とから構成される。トランジスタQ3は、ノードN1(トランジスタQ1のゲート)と第2電源端子S2との間に接続する。トランジスタQ3のゲートが接続するノードを「ノードN5」と定義すると、トランジスタQ4は、ノードN5と第1電源端子S1との間に接続し、そのゲートはリセット端子RSTに接続される。トランジスタQ5は、ノードN1と第1電源端子S1との間に接続し、そのゲートはノードN2(プルダウン駆動回路部21の出力端)に接続される。
【0142】
トランジスタQ12は、第2電源端子S2とノードN5との間に接続し、そのゲートは第1入力端子IN1に接続される。トランジスタQ13は、ノードN5と第1電源端子S1との間に接続し、そのゲートはノードN2に接続される。容量素子C2は、第2入力端子IN2とノードN5との間に接続される。
【0143】
本変更例の初期リセット回路部23は、図3と同じ回路構成であるが、上記のプルアップ駆動回路部22の構成変更に対応して、トランジスタQ9,Q10の接続関係を変更している。トランジスタQ9は、ノードN3(プルダウン駆動回路部21の入力端)とノードN5との間に接続される。またトランジスタQ10は、第1入力端子IN1とノードN3との間に接続される。
【0144】
以下、本変更例に係る単位シフトレジスタSRの動作を説明する。説明の簡単のため、クロック信号CLK1,CLK2,CLK3、第1および第2スタートパルスST1,ST2のHレベルは全てハイ側電源電位VDDに等しく、またそれらのLレベルはロー側電源電位VSSに等しいと仮定する。
【0145】
まず、当該単位シフトレジスタSRの電源投入時に行われる初期リセット動作について説明する。
【0146】
各単位シフトレジスタSRにおいて、電源が投入される前、すなわち第2電源端子S2の電位がVSSのときは、初期リセット回路部23のトランジスタQ8の作用によりノードN3の電位はVth以下になっている。このとき各単位シフトレジスタSRの出力端子OUTの電位は不定であるので、ノードN1,N2,N5の電位も不定状態である。
【0147】
電源が投入され、第2電源端子S2の電位がVDDになると、トランジスタQ6がオンする。ノードN3の電位はVth以下なのでトランジスタQ7はオフ(またはサブスレッシュホールド状態)しており、ノードN2は充電されてHレベル(VDD−Vth)になる。応じて、トランジスタQ5,Q13がオンになり、ノードN1,N5が共にLレベル(VSS)に初期化される。なお、このときトランジスタQ8はオフしているが、ノードN5の電位がVSSになったことで、今度はトランジスタQ9が、ノードN3をVth以下に維持する働きをする。
【0148】
初期リセットが行われた後は、全ての単位シフトレジスタSRにおいて、ノードN1がLレベル、ノードN2がHレベルの状態(リセット状態)であり、トランジスタQ1がオフ、トランジスタQ2がオンとなる。よって全ての単位シフトレジスタSRの出力端子OUT(出力信号G)は、低インピーダンスのLレベルに初期化される。またこのときクロック信号CLK1〜CLK3が活性化しても、全ての単位シフトレジスタSRのトランジスタQ1はオフしているため、複数のトランジスタQ1を通して過大な電流が流れることはない。
【0149】
この初期化後のリセット状態は、通常動作が開始されるまで維持される。トランジスタQ6,Q7,Q9,Q13はハーフラッチ回路を構成しており、それによってノードN2,N3のレベルが保持されるからである。
【0150】
続いて、図9の単位シフトレジスタSRの通常動作について説明する。ここでは代表的に、第k段目の単位シフトレジスタSRkの動作を示す。当該単位シフトレジスタSRkのクロック端子CKには、クロック信号CLK1が入力されているものとする(例えば図8の単位シフトレジスタSR1,SR4などがこれに該当する)。
【0151】
リセット状態の単位シフトレジスタSRkにおいて、2段前の出力信号Gk-2(第1段目の単位シフトレジスタSR1の場合には第1スタートパルスST1)がHレベルになると、プルアップ駆動回路部22のトランジスタQ12がオンする。このときトランジスタQ13もオンしているが、トランジスタQ12はトランジスタQ13よりもオン抵抗が充分小さく設定されており、ノードN5のレベルが上昇する。つまりトランジスタQ12は、第1入力端子IN1に入力される信号の活性化に応じてノードN5を充電する充電回路として機能する。
【0152】
一方、初期リセット回路部23では、トランジスタQ10がオンになり、ノードN3がHレベルになる。応じて、プルダウン駆動回路部21のトランジスタQ7がオンし、ノードN2は放電されてLレベルになる。するとトランジスタQ13はオフになるため、ノードN5のHレベル電位は充分高くなる。またこのときトランジスタQ2,Q5もオフになる。
【0153】
なお、トランジスタQ12は、ソースフォロアモードで動作してノードN5を充電するが、ノードN5の容量成分(主にトランジスタQ3のゲート容量と容量素子C2)は、ノードN1の容量成分(主にトランジスタQ1のゲート容量と容量素子C1)よりも充分小さいため、ノードN5は高速に充電されて、そのHレベル電位はほぼ理論値(VDD−Vth)になる。トランジスタQ1は大きな容量負荷であるゲート線GLkを充電するのでそのゲート幅を大きくする必要があるが、トランジスタQ5はその必要がないためである。
【0154】
ノードN5がHレベルになるとトランジスタQ3がオンし、ノードN1の充電を開始する。上記のようにノードN1の容量成分は大きく、またトランジスタQ3はソースフォロアモードで動作するため、ノードN1のレベル上昇速度は比較的速くない。従って、クロック信号CLK1〜CLK3の周波数が高く、2段前の出力信号Gk-2の活性期間(パルス幅)が短い場合、その間にはノードN1の電位は理論値(VDD−2×Vth)には達しない。
【0155】
2段前の出力信号Gk-2がLレベルに戻ると、トランジスタQ10,Q12がオフになるので、ノードN3,N5はフローティング状態でHレベルに維持される。
【0156】
次いで、前段の出力信号Gk-1(第1段目の単位シフトレジスタSR1の場合には第2スタートパルスST2)がHレベルになると、単位シフトレジスタSRkにおいて、容量素子C2を介する結合によりノードN5が昇圧される。即ち、容量素子C2は、第2入力端子IN2の信号の活性化に応じて、ノードN5を昇圧する昇圧回路として機能する。
【0157】
容量素子C2による昇圧後のノードN5の電位は、昇圧前に対し、前段の出力信号Gk-1の振幅(VDD)だけ上昇する。つまり昇圧後のノードN5の電位は、およそ2×VDD−Vthとなる。この状態では、トランジスタQ3がソースフォロワモードではなく非飽和領域で動作してノードN1を充電する。よってノードN1の充電速度が上がり、しかもしきい値電圧Vthの損失は生じないので、ノードN1は電位VDDのHレベルになる。
【0158】
こうして単位シフトレジスタSRkは、ノードN1がHレベル、ノードN2がLレベルの状態(セット状態)になり、トランジスタQ1がオン、トランジスタQ2がオフになる。但し、この時点ではクロック信号CLK1はLレベルなので、出力信号GkはLレベルから変化しない。
【0159】
その後、前段の出力信号Gk-1がLレベルに戻ると、容量素子C2を介する結合によりノードN5の電位が引き下げられ、昇圧前の電位(約VDD−Vth)に戻る。このときトランジスタQ3はオフになるが、ノードN1はフローティング状態でHレベル(VDD)に維持される。従って単位シフトレジスタSRkのセット状態も維持される。
【0160】
次いで、クロック信号CLK1がHレベルになると、オン状態のトランジスタQ1を通して出力端子OUTが充電され、出力信号GkがHレベルになる。このとき容量素子C1およびトランジスタQ1のゲート・チャネル間容量を介する結合により、ノードN1が昇圧される。その結果トランジスタQ1は非飽和領域で動作するため、出力信号GkのHレベル電位は、クロック信号CLK1のHレベルと同じVDDとなる。
【0161】
クロック信号CLK1がLレベルに戻ると、オン状態のトランジスタQ1を通して出力端子OUTが放電され、出力信号GkはLレベル(VSS)に戻る。このときノードN1の電位も、昇圧前のVDDに下降する。
【0162】
その後、次段の出力信号Gk+1がHレベルになると、トランジスタQ4がオンし、ノードN5は放電されてLレベル(VSS)になる。このときトランジスタQ9がオンになるため、ノードN3もノードN5と共に放電される。その結果ノードN3の電位はVthになり、トランジスタQ7は実質的にオフ(サブスレッシュホールド状態)になるので、ノードN2はHレベルになる。応じてトランジスタQ5,Q15がオンして、ノードN1がLレベルになる。その結果、単位シフトレジスタSRkは、トランジスタQ1がオフ、トランジスタQ2がオンのリセット状態に戻り、出力信号Gkは低インピーダンスのLレベルになる。
【0163】
次段の出力信号Gk+1がLレベルに戻った後も、トランジスタQ5,Q13はオンに維持されるため、ノードN1,N5はLレベルに維持される。よって単位シフトレジスタSRkのリセット状態は、次のフレームで再び2段前の出力信号Gk-2が活性化するまで継続する。
【0164】
本変更例に係る単位シフトレジスタSRkによれば、トランジスタQ12(充電回路)がノードN5を充電し、次いで容量素子C2(昇圧回路)がノードN5を昇圧するため、トランジスタQ3が非飽和領域で動作してノードN1の充電(プリチャージ)を行う。そのためノードN1を高速に、且つ高い電位にまで充電することができる。よって、クロック信号CLK1〜CLK3の周波数が高い場合でも、ノードN1を充分にプリチャージすることができ、トランジスタQ1のオン抵抗の上昇を防止できる。従って、ゲート線駆動回路30の動作の高速化を図ることができる。
【0165】
また図9の単位シフトレジスタSRkでは、前段の出力信号Gk-1の活性化に伴ってノードN5が昇圧されるとき、トランジスタQ9はオフになりノードN5とノードN3とを分離する。よってこのときトランジスタQ7のゲート容量がノードN5の寄生容量に寄与しなくなり、特開2007−257813号の単位シフトレジスタに対し、ノードN5の寄生容量を小さくすることができる。
【0166】
なお、図9の回路では、ダイオード接続されたトランジスタQ9のカソードをノードN5に接続させていたが、これを図10の如くノードN1に接続させてもよい。この場合には、次段の出力信号Gk+1の活性化に応じて単位シフトレジスタSRkがリセット状態になるように、リセット端子RSTに接続したゲートを有しノードN1を放電するトランジスタQ18を設ける必要がある。図10の構成では、トランジスタQ9は、ノードN1の昇圧時に、ノードN1とノードN3との間を分離して、当該ノードN1の寄生容量を小さくするように機能する。
【0167】
本変更例においても、上記の第1の変更例を適用し、プルダウン駆動回路部21のトランジスタQ6,Q7から成るインバータに代えて、シュミットトリガ型インバータを用いてもよい。あるいは第2の変更例を適用し、初期リセット回路部23のトランジスタQ8のバックゲートをノードN3に接続させてもよい。
【0168】
<実施の形態2>
図11は、本発明の実施の形態2に係る単位シフトレジスタSRの構成を示す回路図である。当該単位シフトレジスタは、本発明者による特開2008−130139号公報に開示された単位シフトレジスタと同様に、出力プルダウントランジスタを2つ有するものであり、その両者を交互に動作/休止させることによって、出力プルダウントランジスタのしきい値電圧のシフトを低減できるように構成されている。
【0169】
本実施の形態におけるゲート線駆動回路30は、図11の単位シフトレジスタSRが、図2と同様に複数個縦続接続して構成される。但し、図11に示すように、各単位シフトレジスタSRは、第1制御信号VFRが供給される第1制御端子CTAと、第2制御信号/VFRが供給される第2制御端子CTBを有している。第1および第2制御信号VFR,/VFRは互いに相補の信号であり、ゲート線駆動回路30の制御装置により生成される。この第1および第2制御信号VFR,/VFRは、表示画像のフレーム間のブランキング期間にレベルが切り替わる(交番する)よう制御されており、例えば、表示画像の1フレーム毎にレベルが切り替わるよう制御される。
【0170】
図11に示すように、当該単位シフトレジスタSRの出力段は、出力端子OUTとクロック端子CKとの間に接続するトランジスタQ1と、共に出力端子OUTと第1電源端子S1(ロー側電源電位VSS)との間に接続するトランジスタQ2A,Q2Bとにより構成されている。即ち、トランジスタQ1は、クロック端子CKに入力されるクロック信号を出力端子OUTに供給するものであり、トランジスタQ2A,Q2Bは、出力端子OUTを放電するものである。ここで、トランジスタQ1のゲートが接続するノードを「ノードN1」、トランジスタQ2Aのゲートが接続するノードを「ノードN2A」、トランジスタQ2Bのゲートが接続するノードを「ノードN2B」と定義する。
【0171】
トランジスタQ1のゲート・ソース間(ノードN1と出力端子OUTとの間)には容量素子C1が設けられている。この容量素子C1は、出力端子OUTのレベル上昇に伴うノードN1の昇圧効果を高めるためのものであるが、トランジスタQ1のゲート・チャネル間容量が充分に大きい場合にはそれで置き換えることができ、そのような場合には省略してもよい。
【0172】
第2電源端子S2(ハイ側電源電位VDD)とノードN1との間には、ゲートが入力端子INに接続するトランジスタQ3が接続される。またノードN1と第1電源端子S1との間には、ゲートが第1リセット端子RSTに接続したトランジスタQ4、ゲートがノードN2Aに接続したトランジスタQ5A、並びに、ゲートがノードN2Bに接続したトランジスタQ5Bが接続している。
【0173】
トランジスタQ8Aは、第1制御端子CTAとノードN2Aとの間に接続し、トランジスタQ8Bは第2制御端子CTBとノードN2Bとの間に接続する。トランジスタQ8AのゲートはトランジスタQ8Bのドレイン(ノードN2B)に接続し、トランジスタQ8BのゲートはトランジスタQ8Aのドレイン(ノードN2A)に接続する。即ち、トランジスタQ8AおよびトランジスタQ8Bは、その一の主電極(ここではドレイン)がたすき掛けに互いの制御電極(ゲート)に接続されており、いわゆるフリップフロップ回路を構成している。
【0174】
トランジスタQ6Aは、第1制御端子CTAとノードN2Aとの間に接続し、そのゲートは第1制御端子CTAに接続する(トランジスタQ6Aはダイオード接続されている)。トランジスタQ7Aは、ノードN2Aと第1電源端子S1との間に接続し、そのゲートはノードN1に接続する。トランジスタQ7AはトランジスタQ6Aよりもオン抵抗が充分低く設定されており、これらトランジスタQ6A,Q7Aで、ノードN1を入力端、ノードN2Aを出力端とするレシオ型インバータを構成している。但し、通常のインバータと異なり、その電源としては第1制御信号VFRが供給される。
【0175】
トランジスタQ6Bは、第2制御端子CTBとノードN2Bとの間に接続し、そのゲートは第2制御端子CTBに接続する(トランジスタQ6Bはダイオード接続されている)。トランジスタQ7Bは、ノードN2Bと第1電源端子S1との間に接続し、そのゲートはノードN1に接続する。トランジスタQ7BはトランジスタQ6Bよりもオン抵抗が充分低く設定されており、これらトランジスタQ6B,Q7Bで、ノードN1を入力端、ノードN2Bを出力端とするレシオ型インバータを構成している。但し、通常のインバータと異なり、その電源としては第2制御信号/VFRが供給される。
【0176】
つまり、トランジスタQ6A,Q7Aより成るインバータは、第1制御信号VFRがHレベルのときインバータとして機能するが、第1制御信号VFRがLレベルのときは電源が供給されずに休止状態となる。休止状態のインバータは、その出力端(ノードN2A)を活性化させることができない。同様に、トランジスタQ6B,Q7Bより成るインバータは、第2制御信号/VFRがHレベルのときインバータとして機能するが、第2制御信号/VFRがLレベルのときは休止状態となり、その出力端(ノードN2B)を活性化させることができない。以下、トランジスタQ6A,Q7Aより成るインバータを「第1インバータ」と称し、トランジスタQ6B,Q7Bより成るインバータを「第2インバータ」と称する。
【0177】
図11の単位シフトレジスタSRの動作を説明する。本実施の形態でも、図2と同様にゲート線駆動回路30は2相のクロック信号CLK,/CLKを用いて駆動されるものと仮定する。
【0178】
説明の簡単のため、クロック信号CLK,/CLK、並びに、第1および第2制御信号VFR,/VFRそれぞれのHレベルは全てハイ側電源電位VDDに等しいものとし、それらのLレベルは全てロー側電源電位VSSに等しいものとする。また第1および第2制御信号VFR,/VFRは、それぞれ表示画像の1フレーム毎に、ブランキング期間内のタイミングでレベルが切り替わるよう制御されているものとする。さらに単位シフトレジスタSRを構成する各トランジスタのしきい値電圧は全て等しいと仮定し、その値をVthとする。
【0179】
ここではまず、単位シフトレジスタSRの通常動作から説明する。図12は、その動作を示すタイミング図である。図12に示されている時刻t1は、2つのフレーム期間の間のブランキング期間(図示は省略)内のものである。当該時刻t1で、第1制御信号VFRがHレベル、第2制御信号/VFRがLレベルになったとする。
【0180】
すると全ての単位シフトレジスタSRにおいて、トランジスタQ6Aのドレインおよびゲートの電位がVSS(=0)からVDDへと変化し、当該トランジスタQ6Aがオンになる。即ち、トランジスタQ6A,Q7Aより成る第1インバータに電源が供給され、当該第1インバータが活性化される。この時点ではトランジスタQ5Bがオンしており、ノードN1がLレベル状態である。よってトランジスタQ7Aはオフしているので、トランジスタQ6Aのオンにより、ノードN2Aのレベルは上昇する。
【0181】
他方、トランジスタQ6Bのドレインおよびゲートの電位はVDDからVSSへ変化する。即ち、トランジスタQ6B,Q7Bより成る第2インバータは電源が供給されずに休止状態になる。トランジスタQ6Bは第2制御端子CTBからノードN2Bへの方向を順方向とするダイオードとして機能するため、ノードN2Bの電荷はトランジスタQ6を通しては放電されない。しかし上記のようにノードN2Aのレベルが上昇し、且つトランジスタQ8Bのソース(第2制御端子CTB)がVSSになっているので、トランジスタQ8Bがオンし、ノードN2Bを放電してLレベル(VSS)にする。
【0182】
従ってトランジスタQ8Aはオフとなり、ノードN2AはHレベル(VDD−Vth)となる。応じてトランジスタQ5Aがオンになる。
【0183】
このように第1制御信号VFRがHレベル、第2制御信号/VFRがLレベルになると、各単位シフトレジスタSRにおいて、第2インバータが休止状態になるため、ノードN2BはLレベルに固定される。よってその間のトランジスタQ2BおよびトランジスタQ5Bは、ゲートがバイアスされず休止状態(常時オフ)になる。つまりその期間、各シフトレジスタSRにおいては、トランジスタQ1,Q2A,Q3,Q4,Q5A,Q6A,Q7Aの組み合わせにより、通常の単位シフトレジスタ(特許文献9(特開2004−246358号)の図1の回路)と等価な回路が構成され、それと同様の動作が可能になる。
【0184】
第k段目の単位シフトレジスタSRkに注目する(当該単位シフトレジスタSRkのクロック端子CKには、クロック信号CLKが入力されているものとする)。時刻t1直後のフレーム期間内の時刻t2において、前段(単位シフトレジスタSRk-1)の出力信号Gk-1がHレベルになると、単位シフトレジスタSRkでは、トランジスタQ3がオンになる。このときトランジスタQ5Aもオンしているが、トランジスタQ3のオン抵抗はトランジスタQ5Aのオン抵抗に比べ充分低く設定されており、ノードN1はHレベル(VDD−Vth)となる。応じて、トランジスタQ1がオンとなる。
【0185】
またトランジスタQ6A、Q7Aより成る第1インバータがノードN2AをLレベルにするため、トランジスタQ2A、Q5Aがオフになる。以下、ノードN1がHレベルの状態(即ちトランジスタQ1がオンの状態)を「セット状態」と称する。
【0186】
その後、前段の出力信号Gk-1がLレベルに戻るとトランジスタQ3はオフするが、ノードN1はフローティング状態でHレベルに維持される。そのため時刻t3でクロック信号CLKがHレベルになると、オン状態のトランジスタQ1を通して出力端子OUTが充電され、出力信号GkがHレベルになる。つまりゲート線GLkが選択状態になる。
【0187】
このとき、容量素子C1およびトランジスタQ1のゲート・チャネル間容量を介した結合により、ノードN1が昇圧され、トランジスタQ1は非飽和領域で動作する。従って出力信号GkのHレベル電位はクロック信号CLKと同じVDDまで上昇する。
【0188】
クロック信号CLKがLレベルに戻ると、出力端子OUTがトランジスタQ1を通して放電され、出力信号GkはLレベル(VSS)に戻る。このとき容量素子C1およびトランジスタQ1のゲート・チャネル間容量を介した結合により、ノードN1の電位は引き下げられ、昇圧前の電位(VDD−Vth)に戻る。
【0189】
続く時刻t4で、次段(単位シフトレジスタSRk+1)の出力信号Gk+1がHレベルになると、当該単位シフトレジスタSRkにおいて、トランジスタQ4がオンとなる。応じてノードN1がLレベルになり、トランジスタQ1はオフに戻る。以下、ノードN1がLレベルの状態(即ちトランジスタQ1がオフの状態)を「リセット状態」と称する。
【0190】
このときトランジスタQ7Aがオフになり、ノードN2AはHレベル(VDD−Vth)になる。その結果トランジスタQ2Aがオンになり、出力端子OUTは低インピーダンスでLレベルに維持されるようになる。またトランジスタQ5Aもオンになる。トランジスタQ5Aは、ノードN2AがHレベルの間、ノードN1を低インピーダンスでLレベルに維持するためのものである。それにより、非選択期間にノイズの影響などによってノードN1のレベルが上昇することが防止され、単位シフトレジスタSRkの誤動作の発生が抑制される。
【0191】
その後、次のブランキング期間内の時刻t5で第1および第2制御信号VFR,/VFRのレベルが反転するまで、単位シフトレジスタSRkはリセット状態に維持される。
【0192】
そして時刻t5で、第1制御信号VFRがLレベル、第2制御信号/VFRがHレベルになると、各単位シフトレジスタSRにおいて、それまでとは逆にトランジスタQ6B,Q7Bより成る第2インバータが活性化され、ノードN2BがHレベルになる。応じてトランジスタQ8Aがオンになり、且つ第1インバータが休止状態になるため、ノードN2AはLレベル(VSS)になる。
【0193】
時刻t5の直後のフレーム期間では、トランジスタQ2A,Q5Aのゲートはバイアスされず、当該トランジスタQ2A,Q5Aは休止状態になる。また、第1インバータも、電源が供給されないため休止状態となる。その結果、当該単位シフトレジスタSRkにおいて、トランジスタQ1,Q2B,Q3,Q4,Q5B,Q6B,Q7Bの組み合わせにより、通常の単位シフトレジスタ(特許文献9(特開2004−246358号)の図1の回路)と等価な回路が構成され、それによって上記の時刻t2〜t5と同様の動作が行われる。
【0194】
このように、図11の単位シフトレジスタSRkは、通常の単位シフトレジスタと同様の動作を行うことができる。なお且つ、第1および第2制御信号VFR,/VFRが反転する毎に、トランジスタQ2A,Q5AのペアとトランジスタQ2B,Q5Bのペアとが交互に休止状態になるので、それらのゲートが直流的にバイアスされることが防止される。従って、a−SiTFTのしきい値電圧のシフトによる誤動作を防止でき、動作の信頼性が向上する。
【0195】
次に、本実施形態に係る単位シフトレジスタSRの、電源投入時の初期リセット動作について説明する。図13のその動作を示すタイミング図である。
【0196】
図13の時刻t0は、ゲート線駆動回路30への電源投入時である。このときハイ側電源(第2電源端子S2)の電位はVDDへと上昇する。同時にロー側電源はVSSになるが、ここではVSS=0と仮定しているので、電源投入時に第1電源端子S1の電位の変動はない。時刻t0の直後は、ゲート線駆動回路30の出力信号G1,G2…のレベルは不定状態にある。
【0197】
本実施の形態では、第1制御信号VFRは、クロック信号CLK,/CLKの動作が開始される前の時刻t1で、Hレベル(活性レベル)になるように制御される。時刻t1で第1制御信号VFRがHレベルになると、各単位シフトレジスタSRでは、トランジスタQ6Aがオンし、ノードN2AがHレベルに初期化される。応じてトランジスタQ5Aがオンし、ノードN1がLレベルに初期化される。よってトランジスタQ1Aがオフ、トランジスタQ2Aがオンとなり、出力端子OUT(出力信号G)が低インピーダンスでLレベルになる。
【0198】
なお、時刻t1では、第1制御信号VFRのみがHレベルになり、第2制御信号/VFRはLレベル(非活性レベル)に維持される。そのためトランジスタQ8Bがオンになり、ノードN2BはLレベルに初期化される。
【0199】
続く時刻t2からクロック信号CLK,/CLKが動作を開始する(交互に活性化し始める)。その後の時刻t3で第1段目の単位シフトレジスタSR1に供給されるスタートパルスSTが活性化されると、以降は、縦続接続した複数の単位シフトレジスタSRにおいて上記の通常動作が順番に行われる。
【0200】
このように本実施の形態では、クロック信号CLK,/CLKが交番を開始する前に第1制御信号VFRを活性化させることによって、単位シフトレジスタSRの初期リセットを行わせている。上の例では、初期リセットのために第1制御信号VFRを活性化させたが、第2制御信号/VFRの方を活性化させてもよい。
【0201】
仮に、第1および第2制御信号VFR,/VFRよりも先にクロック信号CLK,/CLKが交番を開始した場合、以下の誤動作が生じる可能性がある。
【0202】
電源投入直後では、第1および第2制御信号VFR,/VFRが共にVSS(=0V)であるので、各単位シフトレジスタSRのトランジスタQ6A,Q6Bは共にオフしており、トランジスタQ5A,Q5Bもオフしている。このためノードN1は高インピーダンス状態である。この状態でクロック信号CLK,/CLKが動作を開始すると、クロック信号CLK,/CLKの立ち上がり時に、トランジスタQ1のゲート・ドレイン間のオーバラップ容量を介した結合により、ノードN1のレベルが上昇しようとする。
【0203】
このノードN1のレベル上昇が大きい場合には、それによってトランジスタQ1がオンになり、クロック信号CLK,/CLKが活性化したときに、各単位シフトレジスタSRにおいて誤信号としての出力信号Gが活性化される。
【0204】
クロック端子CKにクロック信号CLKが入力された単位シフトレジスタSRkに注目すると、クロック信号/CLKが活性化したとき、その前段(単位シフトレジスタSRk-1)と次段(単位シフトレジスタSRk+1)の両方で同時に誤信号が生じる。つまり前段の出力信号Gk-1と、次段の出力信号Gk+1が同時に活性化される。このとき単位シフトレジスタSRkでは、トランジスタQ3,Q4の両方がオンするため、第2電源端子S2から第1電源端子S1へ流れる貫通電流が生じる。
【0205】
また、そのようにノードN1のレベル上昇が大きい状態で第1制御信号VFR(または第2制御信号/VFR)がHレベルになったとしても、トランジスタQ7A,Q7Bが共にオンしているため、トランジスタQ6A,Q7A(またはトランジスタQ6B,Q7B)を通して、第1制御端子CTA(または第2制御端子CTB)から第1電源端子VSSへと流れる貫通電流が生じ、誤動作が改善することなく続くことになる。
【0206】
これに対し、本実施の形態では第1制御信号VFR(または第2制御信号/VFR)を、クロック信号CLK,/CLKが動作を開始する前に活性化させている。よってクロック信号CLK,/CLKが動作を開始した時点で、ノードN2A(またはノードN2B)がHレベル、ノードN1がLレベルに初期化され、出力端子OUT(出力信号G)は低インピーダンスでLレベルになっている。従って、クロック信号CLK,/CLKが入力されてもノードN1および出力端子OUTのレベル上昇は生じず、誤信号としての出力信号Gnが活性化させるという上記の誤動作は発生しない。
【0207】
なお、第1制御信号VFR(または第2制御信号/VFR)を活性化させてから、クロック信号CLK,/CLKの動作を開始させるまでの間隔は、通常はクロック信号CLK,/CLKの1パルス幅以上あればよい。しかし、例えば電源を遮断した直後では、ノードN1が高インピーダンス状態でHレベルになっている場合があり、そのような場合が想定されるときは、上記間隔をより長く確保する必要がある。
【0208】
このことを図13のタイミング図を用いて説明する。電源を投入した時刻t0が、その前に電源を遮断した直後であり、時刻t1において各単位シフトレジスタSRのノードN1がHレベルであったと仮定する。この場合、時刻t1では第1制御信号VFRがHレベルになると、トランジスタQ6Aがオンするが、ノードN1がHレベルのためトランジスタQ7Aもオンしており、ノードN2Aの電位は上昇しない。これは、トランジスタQ6A,Q7Aがレシオ型インバータを構成しており、トランジスタのQ7Aのオン抵抗がトランジスタQ6Aのオン抵抗よりも低く設定されているためである。
【0209】
このときのノードN1の電位が高いほど、ノードN2Aの電位は低くなって、トランジスタQ5Aのインピーダンスが高くなる。そうなるとノードN1をLレベルに引き下げるのに時間が長くかかるようになる。よって、第1制御信号VFR(または第2制御信号/VFR)を活性化させてから、クロック信号CLK,/CLKの動作を開始させるまでの間隔をより長くする必要が生じる。
【0210】
[第1の変更例]
図14は、実施の形態2の第1の変更例に係る単位シフトレジスタSR(図11)における初期リセット動作を説明するための信号波形図である。本変更例では、ゲート線駆動回路30への電源投入後、クロック信号CLK,/CLKの動作が開始される前の一定期間(時刻t1〜t2)、第1および第2制御信号VFR,/VFRの両方をHレベルにする。
【0211】
上記のように、図11の単位シフトレジスタSRでは、電源投入時にノードN1が高インピーダンスでHレベルになる場合、図13の如く、電源投入後(時刻t1)に初期リセット動作のために第1制御信号VFRを活性化しても、トランジスタQ5Aのインピーダンスが高いため、ノードN1がLレベルに初期化されるまでの時間が長くなる。
【0212】
本変更例では、初期リセット動作の際に第1および第2制御信号VFR,/VFRの両方をHレベルにするため、トランジスタQ6A,Q6Bが共にオンする。このときノードN1が高インピーダンスでHレベルであると、トランジスタQ7A,Q7Bがオンしているため、ノードN2A,N2Bの電位が上昇しない。そのためトランジスタQ5A,Q5Bのインピーダンスは高くなるが、ノードN1はトランジスタQ5A,Q5Bの2つによって放電されるため、図13の場合よりも、ノードN1を速くLレベルに初期化することができる。
【0213】
よって本変更例によれば、初期リセット動作に要する時間(電源投入からクロック信号CLK,/CLKの動作を開始させるまでの時間)の短縮化を図ることができる。なお、第1および第2制御信号VFR,/VFRが共にHレベルに設定されるのは初期リセット動作時のみであり、通常動作時には、第1および第2制御信号VFR,/VFRは互いに相補な信号となる。
【0214】
[第2の変更例]
図15は、実施の形態2の第2の変更例に係る単位シフトレジスタSRの回路図である。本変更例では、図11の回路に対し、トランジスタQ8A,Q8Bの互いのゲートに接続する主電極をソースに変更したものである。またトランジスタQ8A,Q8Bのオン抵抗(インピーダンス)は、トランジスタQ6A,Q6Bのオン抵抗よりも比べ充分に低く、且つ、トランジスタQ7A,Q7Bのオン抵抗よりも低く設定される。
【0215】
図11の回路ではトランジスタQ8A,Q8Bのオン/オフの切り替えが、それぞれ第1および第2インバータの出力信号により行われていたが、本変更例の単位シフトレジスタSRでは、それが第1および第2制御信号VFR,/VFRによって行われる。このことを除いて、図15の単位シフトレジスタSRの動作は図11のものと同様である。
【0216】
本変更例によれば、上記の第2の変更例のように、初期リセット動作の際に第1および第2制御信号VFR,/VFRを共にHレベルにする場合、ノードN1をLレベルに初期化するのに要する期間をさらに短縮できる。このことを図14のタイミング図を用いて説明する。
【0217】
図15の単位シフトレジスタSRにおいて、電源投入後(時刻t1)に第1および第2制御信号VFR,/VFRが共にHレベルになると、トランジスタQ6A,Q6BのみならずトランジスタQ8A,Q8Bもオンする。上記のように、トランジスタQ8A,Q8Bのオン抵抗は、トランジスタQ6A,Q6Bのオン抵抗に比べ充分に低く、且つ、トランジスタQ7A,Q7Bのオン抵抗よりも低く設定されている。そのため、時刻t1でノードN1が高インピーダンス状態でHレベルでありトランジスタQ7A,Q7Bがオンしていても、トランジスタQ8A,Q8Bがオンすれば、ノードN2A,N2Bを素早くHレベルにすることができる。
【0218】
応じてトランジスタQ5A,Q5BがオンしてノードN1はLレベルに初期化される。その結果、トランジスタQ1がオフ、トランジスタQ2A,Q2Bがオンするため、出力端子OUTを低インピーダンスでLレベルに初期化される。従って、クロック信号CLK,/CLKの活性化に応じてノードN1の電位は上昇することが防止され、誤信号としての出力信号Gkが活性化させるという誤動作は発生しない。
【0219】
本変更例では、電源投入直後のノードN1が高インピーダンス状態でHレベルになっていても、第1および第2制御信号VFR,/VFRを活性化させてから、クロック信号CLK,/CLKの動作を開始させるまでの間隔は、クロック信号CLK,/CLKの1パルス幅以上あればよい。
【符号の説明】
【0220】
100 液晶表示装置、10 液晶アレイ部、30 ゲート線駆動回路、31 クロック信号発生器、32 スタート信号発生器、40 ソースドライバ、DL データ線、GL ゲート線、SR 単位シフトレジスタ、20 出力回路部、21 プルダウン駆動回路部、22 プルアップ駆動回路部、23 初期リセット回路部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子、出力端子およびクロック端子と、
前記クロック端子に入力されるクロック信号を前記出力端子に供給する第1トランジスタと、
前記入力端子に入力される入力信号の活性化に応じて前記第1トランジスタの制御電極が接続する第1ノードを充電する第2トランジスタと、
前記第1ノードを放電する第3トランジスタと、
活性レベルの電源が供給され、前記第3トランジスタの制御電極が接続する第2ノードを出力端とするインバータと、
前記電源の非活性時に前記インバータの入力端が接続する第3ノードを放電し、前記電源の活性時にはオフする第1の一方向性素子とを備え、
前記インバータは、
前記電源の活性時に前記第2ノードを充電する負荷素子を含む
ことを特徴とするシフトレジスタ回路。
【請求項2】
請求項1記載のシフトレジスタ回路であって、
前記入力信号の活性化に応じて、前記第3ノードを充電する第4トランジスタをさらに備える
ことを特徴とするシフトレジスタ回路。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のシフトレジスタ回路であって、
前記第1ノードと前記第3ノードとの間に接続され、前記第1ノードから前記第3ノードへの放電を阻止する第2の一方向性素子をさらに備える
ことを特徴とするシフトレジスタ回路。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか記載のシフトレジスタ回路であって、
前記第1の一方向性素子は、
前記第3ノードと前記電源との間に接続され、
前記インバータの前記負荷素子は、
前記第2ノードと前記電源との間に接続されている
ことを特徴とするシフトレジスタ回路。
【請求項5】
請求項1または請求項2記載のシフトレジスタ回路であって、
前記入力信号の活性化に応じて、前記第2トランジスタの制御電極が接続する第4ノードを、前記入力信号の振幅よりも大きな電圧に昇圧する昇圧手段をさらに備える
ことを特徴とするシフトレジスタ回路。
【請求項6】
請求項5記載のシフトレジスタ回路であって、
前記第2トランジスタは、前記入力端子と前記第1ノードとの間に接続しており、
前記昇圧手段は、
前記入力信号の活性化に先んじて前記第4ノードを充電し、前記入力信号の非活性化に先んじて前記第4ノードを放電する充放電回路を含み、
前記第4ノードの昇圧は、前記第2トランジスタの寄生容量により行われる
ことを特徴とするシフトレジスタ回路。
【請求項7】
請求項5記載のシフトレジスタ回路であって、
前記昇圧手段は、
前記入力信号の活性化に先んじて前記第4ノードを充電する充電回路と、
前記入力端子と前記第2トランジスタの制御電極との間に接続する容量素子とを含む
ことを特徴とするシフトレジスタ回路。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか記載のシフトレジスタ回路であって、
前記インバータは、シュミットトリガ型インバータである
ことを特徴とするシフトレジスタ回路。
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれか記載のシフトレジスタ回路であって、
前記第1の一方向性素子は、
前記第3ノードと前記電源との間に接続し、ゲートおよびバックゲートが前記3ノードに接続された第5トランジスタである
ことを特徴とするシフトレジスタ回路。
【請求項10】
入力端子、出力端子およびクロック端子と、
前記クロック端子に入力されるクロック信号を前記出力端子に供給する第1トランジスタと、
各々が前記出力端子を放電する第2および第3トランジスタと、
第1制御信号の活性時には前記第2トランジスタを駆動し、第2制御信号の活性時には前記第3トランジスタを駆動する駆動回路とを備え、
前記第1、第2および第3トランジスタの各制御電極が接続するノードをそれぞれ第1、第2および第3ノードとし、
前記第2ノードに接続する制御電極を有し、前記第1ノードを放電する第4トランジスタと、
前記第3ノードに接続する制御電極を有し、前記第1ノードを放電する第5トランジスタとを備え、
電源の投入後、前記クロック信号が動作を開始する前に、前記第1および第2制御信号の少なくとも片方が所定時間だけ活性化される
ことを特徴とするシフトレジスタ回路。
【請求項11】
請求項10記載のシフトレジスタ回路であって、
前記駆動回路は、
第1制御信号を電源とし、前記第1ノードを入力端、前記第2ノードを出力端とする第1インバータと、
第2制御信号を電源とし、前記第1ノードを入力端、前記第3ノードを出力端とする第2インバータとを含む
ことを特徴とするシフトレジスタ回路。
【請求項12】
前記所定時間が、前記クロック信号の1パルス幅以上である
請求項10または請求項11に記載のシフトレジスタ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−123963(P2011−123963A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281925(P2009−281925)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】