説明

シフトレバー装置

【課題】極めて簡単な構造で、内装の開口部との隙間に侵入した液体から電気部品を守ることができるシフトレバー装置を提供する。
【解決手段】シフトレバー装置は、シフトレバーの移動を案内するための開口部12を有する車両に、液体が前記開口部から侵入する隙間X1を持って取り付けられ、開口部を介して車両の運転席側に配設するシフトレバー2と、車両の電気系統に接続される電気部品4a、4b、4cと、これらを支持する本体部3とを備える。本発明に係るシフトレバー装置の本体部は、シフトレバー装置の内部を第1の領域と第2の領域に仕切るための側板3aを備え、側板は、第1の領域に前記電気部品を配置するとともに、上方に、液体が前記隙間から侵入した際、第2の領域側に前記液体を案内するためのガイド部3cを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシフトレバー装置に関し、より詳しくは飲料水等の液体をこぼしても、その液体から内部に配置された電気部品を守ることができる防水を施したシフトレバー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シフトレバー装置は、車両の電気系統に接続される様々な電気部品を備えており、車両のインストルメントパネルや運転席周りの内装(以下、単に「内装」という。)とは別体として、その内装に開口部(案内孔)を設けて取り付けられることが一般的である。このシフトレバー装置と内装の開口部との間には隙間を有しているため、運転席側で飲料水等の液体をこぼすと、その隙間から液体が内部に侵入してシフトレバー装置の電気部品がショート等により故障する恐れがあった。そのため、従来のシフトレバー装置では、防水を施した電気部品を備えることや液体から電気部品を守る様々な技術が開発されている。
【0003】
図3及び図4は、いずれも従来のシフトレバー装置を示す図であり、図3は、正面から見た図であり、図4は、図3のV2の方向から見た図である。例えば、図3及び図4に示すように、従来のシフトレバー装置51は、内装41の開口部42を介してシフトレバー32の先端に設けられたシフトノブ31を運転席側に配設するように取り付けられている。このとき、シフトレバー装置51は、開口部42との間に隙間を有するが、液体が隙間X2から侵入した場合、液体は、例えば、矢印F2の方向に沿って流れるような構造となっている。すなわち、シフトレバー装置51では、シフトレバー32を本体部33に挿入している部分はカバー35で、電気部品34a、34b、34cはその上方を覆うリブ33cで、液体からそれぞれ守られている。
【0004】
また、その他の技術として、特許文献1は、案内孔(本明細書における「開口部」)とシフトレバーとの隙間から侵入する液体により「各部の機能や作動が阻害されることがない」ように、シフトレバーに「傘部」を設けたシフトレバー装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−220944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、リブ等の部材で内部の電気部品を覆う構造を有する従来のシフトレバー装置は、内装の開口部との隙間に侵入する液体から電気部品を守るためにリブ等の部材を電気部品よりも大きくして配置する必要があるため、全体として大きな設置スペースを必要としていた。このような電気部品を覆うリブ等の部材は、当然ながら、電気部品の大きさ、形状や配置場所等にその仕様が大きく左右されるものであり、電気部品に応じてその都度設計を変更する必要もあった。
【0007】
また、シフトレバー装置に液体の対策を施した電気部品を用いることもできるが、大幅なコストアップに繋がる原因となっていた。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、極めて簡単な構造で、内装の開口部との隙間に侵入した液体から電気部品を守ることができるシフトレバー装置を提供することを主たる技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るシフトレバー装置は、シフトレバーの移動を案内するための開口部12を有する車両に、液体が前記開口部から侵入しうる隙間X1を介して取り付けられ、開口部を介して車両の運転席側に配設するシフトレバー2と、車両の電気系統に接続される電気部品4a、4b、4cと、これらを支持する本体部3とを備える。本発明に係るシフトレバー装置の本体部は、シフトレバー装置の内部を第1の領域と第2の領域に仕切るための側板3aを備え、側板は、第1の領域に前記電気部品を配置するとともに、上方に、液体が前記隙間から侵入した際、第2の領域側に前記液体を案内するためのガイド部3cを備えることを特徴とする。
【0010】
このような構成にすると、電気部品4a、4b、4cを側板3aの一方の片側だけに配置し、さらに、隙間X1に侵入する液体をガイド部3cで側板3aの他方の片側に案内するため、電気部品4a、4b、4cの大きさや形状等によらず、簡単に液体から電気部品4a、4b、4cを守ることができる。また、ガイド部3cは電気部品4a、4b、4cを覆う部材よりも配置場所や大きさ等を柔軟に設計することができるため、シフトレバー装置21は、電気部品4a、4b、4cを覆う部材を用いる場合よりも小型にすることができる。なお、側板3aは、液体を主に両側で遮断するものとして役割を担うことはいうまでもない。また、シフトロック機構等の機械的構造を有する部品についても電気部品と同様にして配置することにより、液体から守ることができる。
【0011】
本発明に係るシフトレバー装置のガイド部3cは、具体的に、開口部12から侵入する液体を側板3aの外周に沿って案内する第1のリブ3cと、第1のリブから流出する液体を電気部品から遠ざける方向に案内する第2のリブ3cとを備えてもよい。
【0012】
本発明に係るシフトレバー装置の本体部3は、さらに、ガイド部3cの下方に側板3aの外周に沿ってリブ3eを設けることが好ましい。このような構成にすると、シフトレバー装置の本体部3は、リブ3eにより耐久性を向上させるとともに、ガイド部3cを乗り越える液体から電気部品4a、4b、4cを守ることができる。
【0013】
本発明に係るシフトレバー装置の本体部3は、生産性や各部の接合強度の観点から一体成形されていることが好ましい。本発明に係るシフトレバー装置の本体部3は、樹脂で構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るシフトレバー装置は、電気部品を側板の一方の片側だけに配置し、さらに、隙間に侵入する液体をガイド部で側板の他方の片側に案内するため、電気部品の大きさや形状等によらず、簡単に液体から電気部品を守ることができる。また、本発明に係るシフトレバー装置は、ガイド部が電気部品を覆う必要がないため、電気部品を覆う部材を用いる場合よりも小型にすることができる。さらに、本発明に係るシフトレバー装置は、ガイド部を本体部の一部として一体成形できるため、液体対策を施された電気部品を用いるよりも低コスト化を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態のシフトレバー装置を示す図。
【図2】図1のシフトレバー装置をV1の方向から見た図。
【図3】従来のシフトレバー装置を示す図。
【図4】図3のシフトレバー装置をV2の方向から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態では、構成の一例として、自動車のインストルメントパネルに取り付けられるシフトレバー装置について以下に説明する。シフトレバー装置は、その取り付けられるインストルメントパネルと別体であるため、その間に密閉処理等をしない限り、隙間を有することが一般的である。本発明者らは、シフトレバー装置に関して、そのような隙間を埋める作業を不要とし、電気部品の防水性を考慮しなくても従来よりもコンパクトでその隙間に侵入する液体からシフトレバー装置の電気部品を守ることができる構造を着想した。
【0017】
(実施形態)
図1は、実施形態のシフトレバー装置を示す図であり、インストルメントパネル11を境にしてその内外側を前方から見た図である。なお、インストルメントパネル11の外側、すなわち、図1においてインストルメントパネル11よりも上方側は、自動車の運転席側となる。また、図1においてインストルメントパネル11よりも下方側は、実施形態のシフトレバー装置が取り付けられるインストルメントパネル11の内側となる。また、図1の実施形態のシフトレバー装置は、説明を簡単にするために、特に、隙間X1だけに着目した構造を有しており、本実施形態によって何ら制限を与えるものではない。
【0018】
シフトレバー装置21は、シフトノブ1を先端に有するシフトレバー2と、自動車の電気系統に接続される電気部品4a、4b、4cと、カバー5と、それらとシフト機構等とを支持する本体部3とを有する。シフトレバー装置21は、図1に示すように、インストルメントパネル11に設けられた開口部12の近傍に隙間X1を介して取り付けられている。ここで、シフトレバー2は、開口部12を介してノブボタン1aを有するシフトノブ1を自動車の運転席側にして配設されている。なお、ノブボタン1aは、所定のレンジ間でシフト操作を規制するディテント機構を解除するためのものである。
【0019】
本体部3は、側板3a、3bと、ガイド部3cと、固定部3dと、リブ3eとを有する。側板3aは、軸孔、ネジ穴、開口部や様々な凹凸部等を有しているが、主に左右両側を分離するものであり、両側にシフト機構が配置され、電気部品4a、4b、4cが一方側、図1では、向かって左側だけに配置されている。なお、側板3aは、両側で液体を通さない壁としての役割も有しているが、一部に液体を通すための孔を設けていてもよい。電気部品は、側板3aの一方側において、分散させて配置してもよく、一箇所に集中させて配置してもよい。
【0020】
本体部3は、上方に、平行に並べた側板3aと側板3bとでシフトレバー2を支持している。なお、側板3bは、側板3aと同様に軸孔、ネジ穴、開口部や様々な凹凸部等を有している。また、本体部3は、上方に、その側板3aと側板3bとの両端をそれぞれ接続する前面部(図示無し)と後面部(図示無し)とを有し、側板3aと側板3bと前面部と後面部とによりシフトレバー2を挿通させるとともに、シフトレバー2の可動領域となる挿通孔(図示無し)を形成している。
【0021】
カバー5は、挿通孔を保護するためのものであり、主に本体部3の上方から、図1では開口部12からの物体の侵入を防止するためのものである。ここで、液体が開口部12から侵入すると、液体は、カバー5により挿通孔には流れず、開口部12とシフトレバー装置21との隙間(隙間X1を含む)から下方向に流れていくこととなる。
【0022】
したがって、本体部3は、電気部品4a、4b、4cを液体から守るために、図1に示すように、上方に、ガイド部3cを隙間X1の近傍に設けている。ガイド部3cは、隙間X1から侵入する液体を側板3aの電気部品が配置されている側、図1では向かって左側に流れないようにするためのリブ3c、3cと、液体が流れる底部3cbとを有している。
【0023】
リブ3cは、隙間X1から侵入する液体を底部3cbに沿って下方向に案内し、リブ3cは、リブ3cで案内された液体を電気部品4a、4b、4cが配置されていない側、図1では向かって右側に案内するように設けられている。底部3cbは、側板3aの外周に沿って側板3aと垂直に設けられている。これにより、シフトレバー装置21は、隙間X1から侵入した液体を、図1に示すように、矢印F1に沿って電気部品の配置されていない側に流すことができる。なお、図1のシフトレバー装置21は、リブを2つ配置しているが、それよりも多く配置して液体を電気部品が配置されていない様々な方向に案内してもよい。底部3cbは、側板3aの外周に沿って電気部品が配置されていない側に傾斜させて設けてもよい。
【0024】
リブ3c、3cや底部3cbは、任意の位置で任意の寸法で設けることができるが、リブ3cがインストルメントパネル11に近い程、液体がリブ3cを越える可能性が低くなるため好ましい。
【0025】
ガイド部3cは、隙間の大きさや隙間の方向等に応じてシフトレバー装置21の周囲に任意に設けてもよく、側板3aの両側に依存することなく電気部品のない方向であれば液体をどの方向に案内してもよい。また、電気部品も同様に側板3aの両側に依存することなく所定の位置に集合や分散させて配置し、ガイド部3cはその電気部品毎にそれぞれ設けてもよい。
【0026】
いずれにしても、ガイド部3cは、インストルメントパネル11とシフトレバー装置21との間以外では、インストルメントパネル11の内側のシフトレバー装置21全体の横、縦、奥行きの最大寸法程に収めるように設けることが好ましい。このようにすると、シフトレバー装置21の設置に必要なスペースがガイド部3cの有無でほとんど変わらない。ガイド部3cは、図1に示すように、側板3aの外周の一部に、横や縦の最大寸法に収まるように設けることができる。
【0027】
固定部3dは、シフトレバー装置21をインストルメントパネル11の内部にボルト等の留め具で固定するものである。リブ3eは、側板3aの両側に設けられ、側板3aの補強とともに、前方からの物体に対して電気部品4a、4b、4cやシフト機構6等を保護している。リブ3eは、上方前方からの、すなわち、リブ3cを乗り越える液体の侵入を防止することもできる。リブ3eは、図1では、適宜大きさや形状を変更してもよい。
【0028】
本体部3は、予め金型を製造しておくことにより射出成形等の一体成形で簡単に大量生産することができる。そのときの本体部3を成形する材料は、樹脂を用いることができる。
【0029】
図2は、図1のV1の方向から見たシフトレバー装置を示す図である。なお、図1と同じものには、同じ符号を付けて一部説明を省略する。本体部3は、シフトレバー2の軸部2を側板3aに設けられた支軸部3fで支持している。カバー5は、開口部5aを本体部3の係合部3hに係止させて取り付けられている。シフトロック機構6は、側板3aの上方に電気部品4a、4b、4cと同じ側に設けられている。そのため、シフトロック機構6は、電気部品4a、4b、4cと同様にガイド3cで隙間X1から侵入した液体から守ることができる。また、シフトロック機構6のような機械的な構造を有する部品や部位であっても、電気部品4a、4b、4cと同様にして配置することでガイド3cにより隙間X1から侵入した液体から守ることができ、液体によるそれらの作動不良を防止することができる。なお、シフトロック機構6によるシフトレバー2のロックは、ブレーキ(図示無し)を踏むことや解除ボタン(図示無し)を押すことで解除される。固定部3gは、固定部3dと同様にシフトレバー装置21をインストルメントパネル11の内部にボルト等の留め具で固定するものである。
【0030】
シフトレバー装置21は、図2に示すように、ガイド部3cを側板3aの外周の一部に沿って設けることで、隙間X1から侵入した液体を、矢印F1に沿って電気部品の配置されていない方向に流すことができる。また、シフトレバー装置21は、たとえ液体がガイド部3cのリブ3cを乗り越えたとしても、リブ3eにより液体の侵入から電気部品4a、4b、4cを守ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、液体からコンパクトな構造で内部に配置された電気部品を守ることができるため、従来よりも、省スペースで、かつ、液体に対する信頼性を高める目的で様々な車両に用いられることが期待される。したがって、産業上の利用可能性は大きい。
【符号の説明】
【0032】
1 シフトノブ
2 シフトレバー
3 本体部
3a、3b 側板
3c ガイド部
3c、3c リブ
3cb 底部
3d 固定部
3e リブ
4a、4b、4c 電気部品
5 カバー
6 シフトロック機構
11 インストルメントパネル(内装)
12 開口部(案内孔)
21 シフトレバー装置
X1 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シフトレバーの移動を案内するための開口部(12)を有する車両に、
液体が前記開口部から侵入しうる隙間(X1)を介して取り付けられるシフトレバー装置(21)であって、
前記シフトレバー装置は、
前記開口部を介して前記車両の運転席側に配設するシフトレバー(2)と、
前記車両の電気系統に接続される電気部品(4a、4b、4c)と、
これらを支持する本体部(3)とを備え、
前記本体部は、
前記シフトレバー装置の内部を第1の領域と第2の領域に仕切るための側板(3a)を備え、
前記側板は、
前記第1の領域に前記電気部品を配置するとともに、
上方に、液体が前記隙間から侵入した際、
前記第2の領域側に前記液体を案内するためのガイド部(3c)を備える
ことを特徴とするシフトレバー装置。
【請求項2】
前記ガイド部は、
前記開口部から侵入する液体を
下方向に案内する第1のリブ(3c)と、
前記第1のリブから流出する液体を
前記電気部品から遠ざける方向に案内する第2のリブ(3c)とを備える
ことを特徴とする請求項1記載のシフトレバー装置。
【請求項3】
前記本体部は、さらに、前記ガイド部の下方に
側板の外周に沿ってリブ(3e)を設けている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシフトレバー装置。
【請求項4】
前記本体部は、一体成形されている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシフトレバー装置。
【請求項5】
前記本体部は、樹脂で構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシフトレバー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−76715(P2012−76715A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226492(P2010−226492)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000192914)株式会社神菱 (6)
【Fターム(参考)】