説明

シミュレーション方法、及びシミュレーション装置

【課題】シミュレーションの精度を低下させることなく演算時間を短縮するシミュレーション方法を提供する。
【解決手段】ステップS1では、タイヤモデルのタイヤ性能の項目が入力され、ステップS2では、ステップS1で入力された項目に応じて、タイヤの基本構造が有限個の要素に分割された第1タイヤモデル101,105と、同一のタイヤの基本構造の少なくとも一部の領域の要素の数が第1タイヤモデルの対応する領域における要素の数よりも多くなるように分割された第2タイヤモデル102,104とが、タイヤモデルの性能の項目に対応付けて予め用意されており、タイヤモデルの性能の項目が入力される入力ステップと、入力ステップで入力された性能の項目に対応する第1タイヤモデルまたは第2タイヤモデルの何れかを選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
タイヤを有限個の要素に分割したタイヤモデルの評価値を算出するシミュレーション方法、及びシミュレーション方法を実行するシミュレーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの開発において、有限要素法などの数値解析手法や計算機環境の発達により、実際にタイヤを製造し、自動車に装着して荷重試験や走行試験を行わなくても、新たに設計したタイヤの変形の様子を可視化したり、タイヤの性能の評価値を算出したりすることが可能になった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−76404号公報 第12図など
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、タイヤ性能を表す評価値は、例えば、摩耗、変形、騒音、振動、雪上性能、排水性能などのように多岐に亘っており、評価値ごとに演算量が異なる。そのため、算出する評価値に応じてタイヤモデルの要素分割の仕方を工夫したり、評価値に応じて特有の近似式を導入したりすることにより、シミュレーションの精度を落とさずに演算の効率化を図っているが、複数の評価値を算出する場合には、複数の評価値に都合のよいタイヤモデルを作成することが難しく、評価値を必ずしも効率よく算出できない場合があった。
【0005】
そこで、本発明は、タイヤ性能の多岐に亘る評価値を算出する場合に、効率よく算出するシミュレーション方法、及びシミュレーション方法を実行するシミュレーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明は、以下の特徴を備える。すなわち、少なくともタイヤの基本構造を有限個の要素に分割したタイヤモデルを用いて前記タイヤモデルの性能を表す複数の評価値を算出するシミュレーション方法であって、前記タイヤの基本構造が有限個の要素に分割された第1タイヤモデル(第1タイヤモデル101,105)と、前記タイヤと同一のタイヤの前記基本構造の少なくとも一部の領域の要素の数が前記第1タイヤモデルの対応する領域における要素の数よりも多くなるように分割された第2タイヤモデル(第2タイヤモデル102,104)とが、前記タイヤモデルの性能の項目に対応付けて予め用意されており、前記タイヤモデルの性能の項目が入力される入力ステップと、前記入力ステップで入力された性能の項目に対応する前記第1タイヤモデルまたは前記第2タイヤモデルの何れかを選択するタイヤモデル選択ステップとを有することを要旨とする。
【0007】
本発明の特徴によれば、同一のタイヤに要素数が異なる第1タイヤモデルと第2タイヤモデルとが用意されており、タイヤ性能の項目に応じて、少なくとも一部の領域の要素数が第1タイヤモデルよりも多い第2タイヤモデルが選択される。
【0008】
このように、本発明の特徴によれば、要素数を少なくしてもシミュレーションの精度への影響が少ない場合には、要素数が少ない第1タイヤモデルを設定して評価値を算出し、要素数を少なくするとシミュレーションの精度への影響が大きい場合には、要素数が多い第2タイヤモデルを設定して評価値を算出することにより、複数のタイヤ性能の評価値を連続して算出するときの効率をあげることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、タイヤ性能の多岐に亘る評価値を効率よく算出するシミュレーション方法、及びシミュレーション方法を実行するシミュレーション装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るシミュレーション方法を説明するフローチャートである。
【図2】図2は、本実施形態に係るシミュレーション方法において用意されるタイヤモデルの概略を説明する斜視図である。
【図3】図3は、本実施形態に係るシミュレーション方法において作成される路面モデルを説明する斜視図である。
【図4】図4(a)は、本実施形態に係るシミュレーション方法において用意されている第1タイヤモデルの幅方向及び断面図であり、図4(b)は、第2タイヤモデルの断面図。
【図5】図5(a)は、本実施形態に係るシミュレーション方法において用意されている第1タイヤモデルの斜視図であり、図5(b)は、第2タイヤモデルの斜視図である。
【図6】図6(a)は、本実施形態に係るシミュレーション方法において用意されている第1タイヤモデルの斜視図であり、図6(b)は、第2タイヤモデルの斜視図である。
【図7】図7は、本実施形態に係るシミュレーション方法を実行するシミュレーション装置の模式図である。
【図8】図8は、本実施形態のシミュレーション方法に係る演算時間と、従来のシミュレーション方法に係る演算時間とを比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るシミュレーション方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。具体的には、(1)シミュレーション方法の説明、(2)タイヤモデルの説明、(3)シミュレーション装置、(4)作用・効果、(5)その他の実施形態について説明する。
【0012】
なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なのものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることを留意すべきである。従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれる。
【0013】
(1)シミュレーション方法の説明
実施形態に係るシミュレーション方法は、例えば、新たなタイヤを設計したときに、設計したタイヤの複数のタイヤ性能の評価値を連続して算出する際に使用されうる。
【0014】
実施形態では、タイヤモデルを作成し、性能を評価するための数値解析手法として、有限要素法(FEM)を適用する。有限要素法は、例えば、変形、熱、粘弾性などの物理量の計算を、タイヤモデルを構成する全要素について個別に計算した後、全要素に対する計算結果を積算することによって、タイヤモデル全体の物理量を算出する方法である。
【0015】
タイヤモデルとは、実際のタイヤを数値的・解析的手法に基づいて作成されたコンピュータプログラムヘインプット可能なデータ形式に数値化したものである。実施形態では、タイヤモデルは、少なくともタイヤの形状及び構造が有限要素法(FEM)に基づいて複数の要素(メッシュともいう)に分割されたものである。
【0016】
図1は、実施形態に係るシミュレーション方法を説明するフローチャートである。ステップS1では、タイヤモデルのタイヤ性能の項目が入力される。タイヤ性能の項目とは、摩擦、タイヤの局所的な変形、音響、振動、雪上性能、排水性能、タイヤ全体の変形を含む。
【0017】
ステップS2では、ステップS1で入力された項目の種類を判別する。項目の種類に応じて、所定の要素数からなる第1タイヤモデルと、タイヤの基本構造の少なくとも一部の領域の要素の数が第1タイヤモデルよりも多い要素数からなる第2タイヤモデルとの何れかが選択される。
【0018】
具体的に、予め分類されたタイヤモデルの性能の項目と、第1タイヤモデルと、第2タイヤモデルとの対応関係に応じて、入力された項目に対応する第1タイヤモデルまたは第2タイヤモデルの何れかが選択される。ステップS2において、入力された項目が、例えば、雪上性能、排水性能、タイヤ全体の変形であった場合には、ステップS3に進む。ステップS3において、第1タイヤモデルが選択される。すなわち、要素数が第2タイヤモデルよりも少ないモデルが選択される。
【0019】
また、ステップS2において、入力された項目が、摩擦、タイヤの局所的な変形、音響、振動であった場合には、ステップS4に進む。ステップS4において、第2タイヤモデルが選択される。すなわち、要素数が第1タイヤモデルよりも多いモデルが選択される。
【0020】
第1タイヤモデルは、タイヤの基本構造が有限個の要素に分割されたものである。また、第2タイヤモデルは、第1タイヤモデルと同一のタイヤの基本構造の少なくとも一部の領域の要素の数が第1タイヤモデルの対応する領域における要素の数よりも多くなるように分割されたものである。第1タイヤモデル及び第2タイヤモデルは、予め作成されて用意されている。
【0021】
図2は、タイヤモデル20(第1タイヤモデル又は第2タイヤモデル)の概略を示す図である。タイヤモデル20(第1タイヤモデル又は第2タイヤモデル)は、N個の要素(…,要素Nk,要素Nk+1,要素Nk+2,…)から構成される。ステップS3及びステップS4において選択される第1タイヤモデル及び第2タイヤモデルの詳細は、後述する。なお、ステップS2,S3、S4は、タイヤモデル選択ステップを構成する。
【0022】
ステップS5では、路面モデル30を設定する路面モデル設定ステップが実行される。図3は、路面モデル30の概略を示す図である。路面モデル30は、N個の要素(…,要素Mk,要素Mk+1,要素Mk+2,…)から構成される。路面モデル設定ステップでは、摩擦係数μを選択することで、乾燥状態、ウェット状態、氷上、雪上、非舗装等の実際の路面状態を再現させることができる。
【0023】
次に、ステップS6において、タイヤモデル20と路面モデル30との間に境界条件が設定される。続いて、ステップS7において、タイヤモデル20のステップS1で入力された項目の評価値が算出される。
【0024】
ステップS8では、算出するタイヤ性能の項目が他にあるか否か判別される。他の項目についても評価値を算出する場合には(ステップS8)、ステップS1に戻ってステップS2〜ステップS8を繰り返し実行する。
【0025】
(2)タイヤモデルの説明
ステップS3又はステップS4で選択されるタイヤモデルの種類について説明する。実施形態では、同一のタイヤについて、複数のタイヤモデルが予め用意されている。用意されるタイヤモデルの一例を図4〜図6に示す。
【0026】
図4(a)は、本実施形態に係るシミュレーション方法において予め用意される第1タイヤモデル101の径方向及びトレッド幅方向の断面図であり、図4(b)は、第2タイヤモデル102の径方向及びトレッド幅方向の断面図である。径方向及びトレッド幅方向の断面視において、第1タイヤモデル101の要素数と第2タイヤモデル102の要素数とが異なる。
【0027】
実施形態では、タイヤモデル10のトレッド部Tにおける第1タイヤモデル101の要素数と第2タイヤモデル102の要素数とが異なる。実施形態では、第2タイヤモデル102の要素数は、第1タイヤモデル101の要素数よりも多い。径方向及びトレッド幅方向の断面において、第2タイヤモデル102の要素数は、第1タイヤモデル101の要素数の2倍になるように作成されている。
【0028】
図5(a)は、本実施形態に係るシミュレーション方法において予め用意される第1タイヤモデル103の回転軸に沿って見た側面図であり、図5(b)は、第2タイヤモデル104の回転軸に沿ってみた側面図である。回転軸に沿った側面視において、第1タイヤモデル103及び第2タイヤモデル104は、領域Taにおいて、タイヤ周方向の要素間隔が短く形成されている。特に、第2タイヤモデル104の領域Taにおけるタイヤ周方向の要素の密度は、第1タイヤモデル103の領域Taにおけるタイヤ周方向の要素の密度よりも高い。実施形態では、領域Taにおいて、タイヤ周方向の第2タイヤモデル104の要素数は、第1タイヤモデル103の要素数の2倍になるように作成されている。
【0029】
図6(a)は、本実施形態に係るシミュレーション方法において用意されている第1タイヤモデル105の斜視図であり、図6(b)は、第2タイヤモデル106の斜視図である。第1タイヤモデル105及び第2タイヤモデル106は、径方向及びトレッド幅方向の断面においても、周方向の領域Taにおいても同一の要素数で形成されているが、第1タイヤモデル105と路面モデル、第2タイヤモデル106と路面モデルの間に設定される接地領域Saの面積が異なる。
【0030】
すなわち、第1タイヤモデル105において路面モデル30と第1タイヤモデル105とが接する境界条件が与えられる接地領域Sa1は、第2タイヤモデルに106おいて路面モデル30と第2タイヤモデル106とが接する境界条件が与えられる接地領域Sa2よりも狭く設定される。
【0031】
上述したタイヤモデル101〜106は、以下のように作成される。まず、タイヤ径方向及びトレッド幅方向断面のモデル(タイヤ断面モデルという)が作成され、続いて、タイヤ断面モデルをタイヤ周方向に一周分展開したタイヤの3次元モデル(タイヤモデル10)が作成される。タイヤモデル10は、例えば、設計図面から採取したデータに基づいて作成される。或いは、タイヤの外形をレーザー形状測定器等で計測して採取したデータに基づいて作成される。また、タイヤの断面内のゴム、ベルト、プライ、鉄・有機繊維等でできた補強コードをシート状に束ねた補強材などのタイヤモデルにおけるタイヤ内部の構造が、設計図面から採取したデータ、或いは実際のタイヤから採取したデータに基づいて、それぞれ有限要素法に基づいてタイヤモデルが作成される。
【0032】
(3)シミュレーション装置
図7には、本発明の実施形態に係るタイヤ性能予測方法を実行するシミュレーション方法としてのコンピュータ300の概略が示されている。図7に示すように、コンピュータ300は、半導体メモリー、ハードディスクなどの記憶部(不図示)、処理部(不図示)などを備えた本体部310と、入力部320と、表示部330とを備える。処理部は、図1を用いて説明したシミュレーション方法を実行する。第1タイヤモデル101,103.105、及び第2タイヤモデル102,104,106は、上記(3)に示した方法により予め作成され、記憶部(不図示)などに格納されている。
【0033】
コンピュータ300は、図示しないが着脱可能な記憶媒体と、この記憶媒体に対して書き込み・読み出しを可能にするドライバが備えられていてもよい。図1を用いて説明したシミュレーション方法を実行するプログラムを予め記憶媒体に記録しておき、記憶媒体から読み出されたプログラムを実行してもよい。コンピュータ300の記憶部にプログラムを格納(インストール)して実行してもよい。コンピュータ300は、図示しないが、例えば、ネットワークに接続可能であってもよい。ネットワークを介して、シミュレーション方法を実行するプログラムを取得してもよい。
【0034】
(4)作用・効果
実施形態のシミュレーション方法によれば、同一のタイヤに要素数が異なる第1タイヤモデル101,103と、第2タイヤモデル102,104とが用意されており、摩擦、タイヤの局所的な変形、音響、振動、雪上性能、排水性能、タイヤ全体の変形などを含むタイヤ性能の項目に応じて、第1タイヤモデル101,103よりも要素数が多い第2タイヤモデル102,104が選択される。
【0035】
このように、実施形態のシミュレーション方法によれば、要素数を少なくしてもシミュレーションの精度への影響が少ない場合には、要素数が少ない第1タイヤモデル101,103を設定して評価値を算出し、要素数を少なくするとシミュレーションの精度への影響が大きい場合には、要素数が多い第2タイヤモデル102,104を設定して評価値を算出することにより、複数のタイヤ性能の評価値を連続して算出するときのシミュレーションの効率をあげることができる。
【0036】
また、実施形態では、第1タイヤモデル105において路面モデル30と第1タイヤモデル105とが接する境界条件が与えられる接地領域Sa1は、第2タイヤモデルに106おいて路面モデル30と第2タイヤモデル106とが接する境界条件が与えられる接地領域Sa2よりも狭く設定される。
【0037】
このように、第1タイヤモデル105,第2タイヤモデル106に与えられる境界条件を変更することによっても、演算量を削減できる。従って、シミュレーションの効率を上げることができる。
【0038】
(5)その他の実施形態
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例が明らかとなる。例えば、本発明の実施形態は、次のように変更することができる。
【0039】
本実施形態に係るシミュレーション方法では、数値解析手法として、有限要素法を用いた場合について説明したが、差分法や有限体積法を用いることもできる。
【0040】
実施形態の図1において、ステップS8に続いて、ステップS7において算出されたタイヤ性能が目標値を満たすか否かを判別し、タイヤモデルに合否をつける工程を備えていてもよい。
【0041】
実施形態では、第1タイヤモデルと第2タイヤモデルの2つのグループから選ばれると説明した。しかし、タイヤモデルは、2種類に限定されない。例えば、複数のタイヤモデルが用意されていてもよい。
【0042】
実施形態では、図4に示すように、径方向及びトレッド幅方向の断面において、第2タイヤモデル102の要素数が第1タイヤモデル101の要素数の2倍になるように作成されていると説明した。また、図5に示すように、領域Taにおいて、タイヤ周方向の第2タイヤモデル104の要素数は、第1タイヤモデル103の要素数の2倍になるように作成されていると説明した。しかし、第2タイヤモデルの要素数は、第1タイヤモデルの2倍に限定されない。
【0043】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【実施例】
【0044】
2枚のボディプライと、角度付きスチールベルトと、スチールベルトの外層に周方向に沿って配列された2層のナイロン補強層とを有する225/45R17のタイヤのタイヤモデルを作成し、摩耗性能を予測する演算に要した期間Ta、負荷荷重つき転動時における横力(操縦安定性)を予測する演算に要した期間Tb、転がり抵抗を予測する演算に要した期間Tcを比較した。
【0045】
従来例は、摩耗性能予測、横力予測、転がり抵抗の予測の全てにおいて、図4(b)、図4(d)に示すタイヤモデルが使用された。
【0046】
実施例1では、摩耗性能予測以外の横力、転がり抵抗の予測において、接地領域の境界条件を必要な領域のみに限定してモデルの境界条件の変更を行った。すなわち、図6(a)に示すタイヤモデルが使用された。3つの性能の計算期間の合計は、従来例に比べて12%削減された。
【0047】
実施例2では、摩耗性能予測以外の応力、転がり抵抗の予測において、摩耗性能予測に使用したタイヤモデルよりも粗い要素のモデルを使用した。すなわち、図4(a)(または図5(a))に示すタイヤモデルが使用された。3つの性能の計算時間の合計は、従来例に比べて36%削減された。
【0048】
従って、実施例のシミュレーション方法によれば、多岐に亘る複数のタイヤ性能の評価値を連続して算出するときの効率があがることが判った。
【符号の説明】
【0049】
20…タイヤモデル、 30…路面モデル、 101,103.105…第1タイヤモデル、 102,104,106…第2タイヤモデル、 300…コンピュータ、 310…本体部、 320…入力部、 330…表示部、 T…トレッド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともタイヤの基本構造を有限個の要素に分割したタイヤモデルを用いて前記タイヤモデルの性能を表す複数の評価値を算出するシミュレーション方法であって、
前記タイヤの基本構造が有限個の要素に分割された第1タイヤモデルと、前記タイヤと同一のタイヤの前記基本構造の少なくとも一部の領域の要素の数が前記第1タイヤモデルの対応する領域における要素の数よりも多くなるように分割された第2タイヤモデルとが、前記タイヤモデルの性能の項目に対応付けて予め用意されており、
前記タイヤモデルの性能の項目が入力される入力ステップと、
前記入力ステップで入力された性能の項目に対応する前記第1タイヤモデルまたは前記第2タイヤモデルの何れかを選択するタイヤモデル選択ステップと
を有するシミュレーション方法。
【請求項2】
前記タイヤが接地する路面を有限個の要素に分割した路面モデルを作成するステップを有し、
前記第1タイヤモデルにおいて前記路面モデルと前記第1タイヤモデルとが接する境界条件が与えられる領域は、前記第2タイヤモデルにおいて前記路面モデルと前記第2タイヤモデルとが接する境界条件が与えられる領域よりも狭い請求項1に記載のシミュレーション方法。
【請求項3】
前記性能の項目は、摩擦、タイヤの局所的な変形、音響、振動、雪上性能、排水性能、タイヤ全体の変形を含み、
前記タイヤモデル選択ステップでは、
前記項目が前記雪上性能、前記排水性能、前記タイヤ全体の変形の場合、前記第1タイヤモデルが選択され、
前記項目が前記摩擦、前記タイヤの局所的な変形、前記音響、前記振動の場合、前記第2タイヤモデルが選択される請求項1に記載のシミュレーション方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のシミュレーション方法を実行するシミュレーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−8650(P2012−8650A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141739(P2010−141739)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】