説明

シメジの人工栽培用培養基

【課題】 シメジを従来方法よりも高収量かつ短期間で栽培することのできる、商業的生産が可能なシメジの人工栽培方法を提供する。
【解決手段】 椰子の実繊維塊を含有することを特徴とするシメジの人工栽培用培養基及び栽培法であって、具体的には、ポリプロピレン製のヒラタケ培養ビン(850ml)に、押し麦と椰子の実繊維塊を乾物体積比で2:3に混合し培地の水分が最終的に60%になるように水を加えて十分にかくはん、混合したものを圧詰し、中央に直径3cm程度の穴を開けたのち打栓し、110℃で60分間高圧蒸気殺菌を行い放冷した後、別に、PDA(ポテトデキストロース)培地でホンシメジを25℃で30日間前培養して得た寒天培地種菌を接種する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シメジの人工栽培用培養基及びシメジの人工栽培法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シメジとは、「香りマツタケ、味シメジ」と古くから言われる様に食用きのこである。味、歯切れ、舌ざわりともによく、天然ものは、高級日本料理に珍重されるほど貴重なきのことして珍重されている。一般にシメジと呼ばれるものは、シメジ属に属するホンシメジ、シャカシメジ等を指す。
【0003】
ところで、シイタケ、ナメコ、ヒラタケ、ブナシメジ、エリンギ等のきのこは腐生菌であり一年を通じて工業的に栽培することが可能である。しかし、ホンシメジ、シャカシメジは前述の腐生菌のキノコと異なり植物との共生関係のライフサイクルを持つきのこであるため、永い間人工栽培が困難であるとされてきたが、マツタケと同様に美味な食用キノコであるため、古くから人工栽培が望まれていた。
【0004】
中でもホンシメジについてはいくつかの栽培方法が検討されており、麦類とオガクズを用いたホンシメジの人工栽培方法が開示されており(例えば、特許文献1参照)、また麦類と木粉を用いた培地基材でのホンシメジ子実体の発生実験が報告されている(例えば、非特許文献1、2参照)。また、近年では、イネ科に属するキビ亜科の実類と木粉を用いた栽培方法も報告されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
一方、ココナッツの中果皮を形成する部分(ハスクとも呼ばれる)は、繊維を多く含み、主な用途して、マットレスやソファ、クッション材、タワシ、ホウキ等又は、土壌改良剤として用いられている(例えば、非特許文献3、4参照)。
【特許文献1】特公平8−4427号公報
【非特許文献1】日本菌学会報、日本菌学会発行、第39巻、第13〜20頁(1998)
【非特許文献2】「きのこ年鑑」プランツワールド出版 2004年4月1日 P202
【特許文献2】特開2000−106752号公報
【非特許文献3】「ココヤシの恵み」裳華房出版 1998年11月20日発行 P28
【非特許文献4】「ヤシの実のアジア学」コモンズ 1996年11月10日発行 P10
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ホンシメジについての従来の栽培法では、培養中に雑菌汚染が発生し、良質な子実体を得ることが困難であるという問題があった。また、シメジ属の中でもホンシメジ、シャカシメジは、培養中に高い酸素要求性があるために、木粉等の密度の低い培地基材では、培養に60日以上を必要とし、接種から収穫までに90日から120日を経過するため全栽培期間の延滞が起こるという問題があった。
【0007】
一方、従来、ココナッツから得られる繊維塊を用いてキノコを栽培することについては全く知られていなかった。
【0008】
本発明は、安価で通気性の高い培地基材を用いた培養基を提供すること及びその培養基を用いて、シメジが良好な子実体形成能を有し雑菌汚染が起こらず栽培の日数を短縮できる商業的人工栽培法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、このような課題を解決するために、鋭意検討した結果、培地基材として安価な椰子の実繊維塊を用いることにより、木粉よりも短期間に栽培でき、雑菌汚染を防ぐという事実を見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち本発明の第一は、椰子の実繊維塊を含有することを特徴とするシメジの人工栽培用培養基を要旨とするものであり、好ましくは椰子の実繊維塊が、長径が3〜15mmの粒径を有する粒状体である前記の培養基である。
【0011】
また本発明の第二は、前記した培養基にシメジを接種し、子実体を発生させることを特徴とするシメジの人工栽培法を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、繊維が充分な隙間を保って固形化している椰子の実繊維塊を用いているため通気性が高く、シメジの良好な子実体がより短い栽培日数で大量に収穫することができる。さらに安価な培地基材を用いた培養基であるため、産業上の可能性において極めて価値を高くしたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明でいうところのシメジは、シメジ属に属するホンシメジ、シャカシメジ、スミゾメシメジ等を指す。
【0014】
本発明において用いられる椰子の実繊維塊とは、ヤシ科(ARECACEAE)に属する植物の果実の繊維塊をいう。ヤシ科に属する代表的な植物として、ココヤシ(Cocos nucifera L.)、ニッパヤシ(Nypa fruticans Wurmb)、サゴヤシ(Metroxylon sagu Roxb.)、ナツメヤシ(Phoenix dactylifera L.)等が挙げられるが、これらの中でココヤシ(Cocos nucifera L.)が好ましい。また上記のヤシ科植物が2種類以上併用されていてもよい。
【0015】
このような植物の果実の繊維塊とは、果実から内果皮に包まれた種子を取除いた部分、すなわち中果皮の部分を所定の大きさになるように粉砕したものをいう。
【0016】
本発明において用いられる椰子の実繊維塊の形状としては、立方体、直方体、円柱、球状、ラグビーボール状、顆粒状、ペレット状、フレーク状等特に限定されるものではない。また、椰子の実繊維塊の大きさとしては、キノコの栽培容器に入る程度の大きさに粉砕されていれば特に限定されないが、好ましくは、長径として3〜15mm、さらに好ましくは長径が3〜10mmの粒径を有する粒状体であることが好ましい。
【0017】
本発明において用いられる椰子の実繊維塊は、上記のような果実から粉砕して得られたそのままの新鮮物であってもよいが、好ましくは、所定の時間乾燥して得られる水分含量10〜40質量%、より好ましくは10〜25質量%、最も好ましくは10〜20質量%の乾燥状態が望ましい。さらに、本発明において用いられる椰子の実繊維塊は、種々の加工を施した加工物であってもよい。椰子の実繊維塊の加工物としては、椰子の実繊維塊を粉砕した上で篩分けして繊維の長さ調整したもの、あるいは顆粒状やペレット状に成型したもの等が挙げられるが、本発明では椰子の実繊維塊の加工方法や加工物の形状、粒度等は問わず使用でき、また2種類以上の加工物を併用してもよく、椰子の実繊維塊全体のものと加工物とを併用してもよい。
【0018】
本発明における椰子の実繊維塊の具体例について、ココヤシの場合で説明する。ココヤシの実は外果皮、中果皮、内果皮、胚、胚乳、胚乳液からなり、椰子の実繊維塊は外果皮、中果皮の部分から得られ、粗い繊維質の部分から構成される。本発明ではココヤシの実の繊維の一部分だけでも用いることができる。ココヤシの実を収穫後、水槽、池等で沈降させ、繊維を軟化させたのち実を粉砕し、繊維塊と繊維屑に分別して繊維塊を得ることができる。繊維を軟化させる際に化学的な処理を施してもよい。また、繊維の細断についても方法は問わない。
【0019】
特に、ココヤシの椰子の実繊維塊は、ココヤシのスポンジ状繊維を指し、産業上の慣用用語として、ハスクと呼ばれている。取り出した繊維をコイア、ココナッツファイバー、コヤファイバーともいうが、本発明では上記の加工によって得られた産物や副産物のいずれも使用することができ、またこれらを混合して使用してもよい。
【0020】
本発明で用いられる椰子の実繊維塊は、市販されているものが好適に使用でき、例えば、トミタテクノロジー(株)、(有)エムアンドケイ、セキスイエクステリア(株)、クリエイトインターナショナル(株)等から販売されている。
【0021】
本発明の人工栽培用培養基は、上記した椰子の実繊維塊を培地基材として含有することに特徴を有するものであり、培地基材の全部をこの椰子の実繊維塊としてもよく、あるいは他に従来一般的な食用キノコの菌床栽培に用いられている培地基材を含んでいてもよい。そのような培地基材としては、木粉、サトウキビ絞り粕(バガス)、コーンコブ等が挙げられる。培地基材全体に占める椰子の実繊維塊の割合としては、乾燥体積比で、椰子の実繊維塊:従来の培地基材=1:0〜1:1が好ましく、より好ましくは、椰子の実繊維塊:従来の培地基材=1:0.1〜1:0.9、最も好ましくは、椰子の実繊維塊:従来の培地基材=1:0.2〜1:0.8が好ましい。前記の割合は、培地基材の粒径の違いによって影響を受けるものではない。なお、従来の培地基材の水分含量は5〜40質量%、より好ましくは5〜25質量%、最も好ましくは5〜20質量%の乾燥状態が望ましい。
【0022】
本発明の人工栽培培養基に含まれる栄養分としては、特に限定されるものではないが、穀粒を由来としたデンプン類及びその他栄養分を含ませるのが好ましい。穀粒を由来としたデンプン類とは、生物学上イネ科に分類される、オオムギ(Hordeum vulgare L. var. hexastlchon Aschers.)、コムギ(Triticum aestivum L.)、ライムギ(Secale cereale L.)、ビールムギ(Hordeum distichum L.)等であり、より好ましくはオオムギ(Hordeum vulgare L. var. hexastlchon Aschers.)から得られるものである。
【0023】
その他の栄養分としては、一般的な食用キノコの菌床栽培に用いられる栄養分として知られているフスマ、オカラ、大豆かす、ビール粕、海藻類等が挙げられるが、特にホンシメジにおいては、グルコース、キシロース、マンノース、フルクトース、スクロース、グリコーゲン、可溶性デンプン、ペクチン、デキストリンを使用することができ、米ヌカ、キビ亜科植物の実類等も好適に用いられる。上記した栄養分の添加量としては、体積比で、椰子の実繊維塊:栄養分=1:0.1〜1:0.5が好ましいが、より好ましくは、椰子の実繊維塊:栄養分=1:0.1〜1:0.4、最も好ましくは、椰子の実繊維塊:栄養分=1:0.1〜1:0.2が望ましい。前記の割合は、椰子の実繊維塊の粒径の違い及び栄養分の形状が液状、固形状等であることの違いによって影響を受けるものではない。また、上記した栄養分の水分含量は、5〜40質量%、より好ましくは5〜25質量%、最も好ましくは5〜20質量%の乾燥状態が望ましい。
【0024】
次に本発明の第二の人工栽培法について説明する。本発明の人工栽培法は、上記した本発明の第一の人工栽培用培養基を用いる以外は、従来からのシメジの人工栽培法を採用することができる。
【0025】
栽培方法としては、ビン栽培、袋栽培、トロ箱栽培等を適用することができる。一例としてビン栽培について述べると、培地の調製、ビン詰め、殺菌、接種、培養、芽出し、生育、収穫の各工程からなる。次にこれらを具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
培地の調製とは、人工栽培に用いる各種培地基材及び栄養分を計量、攪拌し、加水して水分調整することにより、培養基の内容物となる培地を調製する工程をいう。本発明で用いられるシメジの人工栽培用培養基は、培地基材として椰子の実繊維塊を含み、さらに栄養分として穀粒を由来としたデンプン類その他の栄養分を混合して培地を調製する。
【0027】
ビン詰めとは、培地をビンに詰めることにより人工栽培用培養基とする工程であり、通常400〜2300ml容の耐熱性広口培養ビンに、調製した培地を例えば850mlビンの場合は500〜800g、好ましくは600〜750g圧詰し、中央に1〜3cm程度の穴を開け打栓する工程をいう。本発明において、培養基に開ける穴は中央に1つでも、2つ以上の複数であってもよい。より好ましくは、3つ以上である。
【0028】
殺菌とは、蒸気により培養基中のすべての微生物を死滅させる工程であればよく、通常常圧殺菌では98〜100℃、4〜12時間、高圧殺菌では101〜125℃、好ましくは118℃、30〜90分間行われる。
【0029】
接種とは、殺菌後放冷された培養基に種菌を植え付ける工程であり、通常種菌としてはシメジ菌糸をPDA(ポテトデキストロース)寒天培地等の寒天培地で25℃、30〜60日前培養し、それをブナ鋸屑を体積比で3、押し麦を体積比で2の割合で混合し、上記方法で殺菌し、無菌的に植え付け、25℃で60〜150日間培養後、菌廻りしたものを種菌として用いる。これを1ビン当り15gほど無菌的に植え付ける。
【0030】
培養とは、菌糸を生育、熟成させる工程で、通常接種済みの培養基を温度20〜25℃、湿度40〜70%において菌糸をまん延させ、更に熟成をさせる。熟成は省くこともできる。培養工程は、850mlビンの場合は通常60〜150日間、好ましくは100日間前後行われる。
【0031】
芽出しとは、培養工程を終了した後に栓を外し、子実体原基を形成させる工程で、通常10〜20℃、好ましくは15℃前後、湿度80%以上、照度1000ルクス以下で10〜20日間行う。この際、菌床面に適当な素材で覆土を施してもよい。。覆土素材の例としては、赤玉土、鹿沼土等の園芸用土、天然土壌、パーライト、バーミキュライト等の無機鉱物用土、籾殻、ミズゴケ等の植物由来素材等が好ましく、本発明に覆土材の素材や粒径に限定されることはない。
【0032】
これらの覆土材は単独でも混合して使用してもよい。更に、覆土材をあらかじめ適当な含水率になるように吸水させておいてから使用してもよい。また栓を外した後、種菌部分と培養基表面に傷をつける、ぶっかき・菌押し、まんじゅう型菌掻き等の操作を行ってもよい。また、芽出し工程中は加湿で結露水が発生しやすいため、濡れを防ぐ目的で菌床面を新聞紙、不織布等で覆ってもよい。
【0033】
生育とは、子実体原基から成熟子実体を形成させる工程で、通常芽出し工程とほぼ同じ条件で5〜15日間行う。以上の工程により成熟子実体を得ることができ、収穫を行って栽培の全工程を終了する。
【0034】
以上、本発明をビン栽培方法により説明したが、袋栽培、トロ箱栽培においても上記の方法により実施することが可能である。また、以上、培養基から収穫までを詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0035】
次に本発明の人工栽培法に好適なシメジの菌株について説明する。
【0036】
シメジの菌株としては、生物分類学上シメジ属(Lyophyllum)が挙げられ、日本で標準和名で認識されるホンシメジ(L.shimeji)、オシロイシメジ(L.connatum)、カクミノシメジ(L.sykosporum)、スミゾメシメジ(L.semitale)、シャカシメジ(L.fumosum)、ヤケノシメジ(L.anthracophilum)、イバリシメジ(L.tylicolor)、ハタケシメジ(L.decastes)のほかシメジ属に属するすべてのキノコが含まれる。これらの株は、野生子実体よりの分離株、種菌メーカーによる市販の菌株、公的機関の保存菌株等が挙げられ、またこれら菌株の変異株、交配株、細胞融合株等、子実体形成能を有しているシメジ属の菌株が挙げられる。
【0037】
具体的には、ホンシメジとしては、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)にて微生物標本株として保存されているNBRC100035、シャカシメジとしては、同じくNBRC32776、NBRC30662、NBRC-32792、スミゾメシメジとしては、ATCC(American Type Culture Collection )にて微生物標本株として保存されているATCC90762等が挙げられる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では、椰子の実繊維塊として、クリエイトインターナショナル(株)から購入した椰子の実繊維塊(商品名「ココハスクチップ」、粒度M、S)のMサイズ(縦×横×高さ=13.9±4.9×7.4±3.4×11.0±2.8(mm))とSサイズ(縦×横×高さ=7.7±3.4×4.8±2.9×10.3±3.3(mm))を同じ比率で混合したものを用いた。なお、粒径の測定は、30片の椰子の実繊維塊をデジタルノギスを用いて計測し、平均±標準偏差を求めた。
【0039】
実施例1
PDA(ポテトデキストロース)培地基材でホンシメジ(NBRC100035)の菌糸を接種し、25℃で30日間前培養し、寒天培地を種菌とした。一方、ポリプロピレン製のヒラタケ培養ビン(850ml)に、押し麦(京都やましろ農業協同組合)と椰子の実繊維塊を乾物体積比で2:3に混合し培地の水分が最終的に60%になるように水を加えて十分にかくはん・混合したものを圧詰し、中央に直径3cm程度の穴を開けたのち打栓し、110℃で60分間高圧蒸気殺菌を行い、放冷して本発明の人工栽培用培養基を作製した。試験は32本実施した。この人工栽培用培養基に上記の寒天培地種菌を接種し、暗所にて温度23℃、湿度60〜70%の条件下で30日間菌糸を培養し、培地基材全体に菌糸をまん延させた。次いで栓を外しビン口をオートクレーブ滅菌した土で覆土した後、温度15℃、加湿を85〜100%となるように制御した発生室に移動し、1500ルクス以下の照明下、培養を続け、成熟子実体を得た。得られた成熟子実体の1ビン当りの平均収量は89.5gであった。発生室移動後収穫までに要した平均日数は、81日であった。
【0040】
比較例1
人工栽培用培養基の組成を、押麦(京都やましろ農業協同組合)とブナ鋸屑(有限会社新井商店)が乾物体積比で2:3とした以外は実施例1と同様にして実施例1に記載された菌株を用いて栽培を行い、成熟子実体を得た。得られた子実体の1ビン当り平均収量は得られた成熟子実体の1ビン当りの平均収量は、81gであった。発生室移動後収穫までに要した平均日数は、95日であった。
【0041】
実施例2
ポリプロピレン製のシイタケ広口培養ビン(1400ml)を使用した以外は実施例1に記載された当該方法同様にして、実施例1に記載された菌株を用いて栽培を行い、成熟子実体を得た。得られた子実体の1ビン当り平均収量は得られた成熟子実体の1ビン当りの平均収量は、125gであった。発生室移動後収穫までに要した平均日数は、90日であった。
【0042】
比較例2
ポリプロピレン製のシイタケ広口培養ビン(1400ml)を使用した以外は比較例1に記載された当該方法同様にして、実施例1に記載された菌株を用いて栽培を行い、成熟子実体を得た。得られた子実体の1ビン当り平均収量は得られた成熟子実体の1ビン当りの平均収量は、105gであった。発生室移動後収穫までに要した平均日数は、102日であった。
【0043】
実施例3
ポリプロピレン製のナメコ広口培養ビン(800ml)を使用した以外は実施例1に記載された当該方法同様にして、実施例1に記載された菌株を用いて栽培を行い、成熟子実体を得た。得られた子実体の1ビン当り平均収量は得られた成熟子実体の1ビン当りの平均収量は、87gであった。発生室移動後収穫までに要した平均日数は、80日であった。
【0044】
比較例3
ポリプロピレン製のナメコ広口培養ビン(800ml)を使用した以外は比較例1に記載された当該方法同様にして、実施例1に記載された菌株を用いて栽培を行い、成熟子実体を得た。得られた子実体の1ビン当り平均収量は得られた成熟子実体の1ビン当りの平均収量は、81gであった。発生室移動後収穫までに要した平均日数は、95日であった。
【0045】
実施例4
実施例1に記載された当該方法と同様にしてシャカシメジ(NBRC32776)(NBRC30662)(NBRC32792)の栽培を行い、成熟子実体を得た。得られた子実体の1ビン当り平均収量は得られた成熟子実体の1ビン当りの平均収量は、(NBRC32776)で54g、(NBRC30662)で59g、(NBRC32792)で65gであった。発生室移動後収穫までに要した平均日数は、(NBRC32776)で93日、(NBRC30662)で93日、(NBRC32792)で91日であった。
【0046】
比較例4
比較例1に記載された当該方法と同様にして、シャカシメジ(NBRC32776)(NBRC30662)(NBRC32792)の栽培を行い、成熟子実体を得た。得られた子実体の1ビン当り平均収量は得られた成熟子実体の1ビン当りの平均収量は、(NBRC32776)で47g、(NBRC30662)で25g、(NBRC32792)で55gであった。発生室移動後収穫までに要した平均日数は、(NBRC32776)で113日、(NBRC30662)で105日、(NBRC32792)で108日であった。
【0047】
実施例5
ポリプロピレン製のシイタケ広口培養ビン(1400ml)を使用した以外は実施例1に記載された当該方法同様にして、実施例4に記載されたシャカシメジ(NBRC32776)(NBRC30662)(NBRC32792)の栽培を行い、成熟子実体を得た。得られた子実体の1ビン当り平均収量は得られた成熟子実体の1ビン当りの平均収量は、(NBRC32776)で96g、(NBRC30662)で67g、(NBRC32792)で92gであった。発生室移動後収穫までに要した平均日数は、(NBRC32776)で103日、(NBRC30662)で109日、(NBRC32792)で110日であった。
【0048】
比較例5
ポリプロピレン製のシイタケ広口培養ビン(1400ml)を使用した以外は比較例1に記載された当該方法同様にして、シャカシメジ(NBRC32776)(NBRC30662)(NBRC32792)の栽培を行い、成熟子実体を得た。得られた子実体の1ビン当り平均収量は得られた成熟子実体の1ビン当りの平均収量は、(NBRC32776)で77g、(NBRC30662)で44g、(NBRC32792)で85gであった。発生室移動後収穫までに要した平均日数は、(NBRC32776)で134日、(NBRC30662)で128日、(NBRC32792)で131日であった。
【0049】
実施例6
実施例1に記載された当該方法と同様にしてスミゾメシメジ(ATCC-90762)の栽培を行い、成熟子実体を得た。得られた子実体の1ビン当り平均収量は得られた成熟子実体の1ビン当りの平均収量は、51gであった。発生室移動後収穫までに要した平均日数は、111日であった。
【0050】
比較例6
比較例1に記載された当該方法と同様にしてスミゾメシメジ(ATCC-90762)の栽培を行い、成熟子実体を得た。得られた子実体の1ビン当り平均収量は得られた成熟子実体の1ビン当りの平均収量は、33gであった。発生室移動後収穫までに要した平均日数は、160日であった。
【0051】
以上、このように椰子の実繊維塊を含有する人工栽培用培養基を用いることで、良好な子実体形成能を有するシメジを得ることができる。このようにして得られた結果を表1に示す。
【0052】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
椰子の実繊維塊を含有することを特徴とするシメジの人工栽培用培養基。
【請求項2】
椰子の実繊維塊が、長径3〜15mmの粒径を有する粒状体である請求項1記載のシメジの人工栽培用培養基。
【請求項3】
請求項1又は2記載の培養基にシメジを接種し、子実体を発生させることを特徴とするシメジの人工栽培法。


【公開番号】特開2007−54017(P2007−54017A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−246003(P2005−246003)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】