説明

シャックル

【課題】 従来に比べて搬送物の搬送効率を高めることができるシャックルの提供。
【解決手段】 リンクチェーンに搬送器具が連結されてなるチェーンコンベヤにおいて、前記リンクチェーンと前記搬送器具とを連結させるために使用されるシャックルであって、互いに平行に向き合う2本の脚部3,3と、これら脚部の長さ方向後端部から前記脚部3,3に対して垂設され、全体として略楕円環状に形成されることで前記2本の脚部を連結する環状部2とを備え、前記2本の脚部3,3には、前記シャックルの側面から見て前記環状部2の真下にボルト挿通用の第1貫通孔31が対向する脚部同士で軸心を一致させて形成されるとともに、前記脚部の長さ方向手前側にボルト挿通用の第2貫通孔32が対向する脚部同士で軸心を一致させて形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チェーンコンベヤを構成するリンクチェーンと搬送器具とを連結させるために使用されるシャックルに関する。
【背景技術】
【0002】
工場やごみ焼却場などで発生する搬送物を低所の投入部から高所の排出部まで搬出する場合等に使用されるチェーンコンベヤとしては、例えば、長円環状に形成されたリンクを連結した無端状のリンクチェーン2本を平行に配設し、搬送物の搬送中に搬送物を保持する搬送器具が前記リンクチェーン間に所定間隔で並列に架け渡して連結されてなるものが使用されている。
【0003】
図9に示すように、搬送器具として平板状のフライト42を用いた場合、モーター43により駆動用スプロケット44,44が矢印方向に回転駆動され、図中紙面手前側と奥側に配設された平行する左右2本のリンクチェーン45,45がそれぞれ他のスプロケット46,46,・・・に噛み合ってチェーンコンベヤ41の往路(図9では上方向)と復路(図9では下方向)を循環して走行する。これによりベルトコンベヤ47で運ばれた搬送物48が供給部49を介して低所の水平部50へ供給され、水平部50を図中右方向へ走行するフライト42,42・・・が前記供給された搬送物48を順次保持する。続いて、搬送物48を保持したフライト42は、スプロケット46,46により走行方向を垂直方向へと変えられる。そして、フライト42は垂直部51を上昇し、スプロケット46,46により走行方向を水平方向に変えられて高所の水平部52を走行し、搬送物48は水平部52の途中にある排出部53へ排出される。
【0004】
搬送物48として泥岩及び半固結粘土や固結シルト等の土丹、水分の多い土・小石若しくは粘度質の土を搬出する場合、搬送物48を排出したフライト42の搬送物保持面には通常搬送物が付着している。このため、水平部52に沿って配設された、フライト42よりやや細幅の残留物除去装置54(例えば、鉄板)をフライト42に当接させつつ上方から下方にスライドさせることによりにフライト42に付着した残量物を掻き取って除去するようにしている。掻き取り終了後に前記残留物除去装置54は上方へ移動して次のフライト42が近づくと下方へ移動し、上記と同様の掻き取り動作を繰り返す。そして、掻き取りが終了したフライト42はスプロケット44,44を介して復路における垂直部55、それに続く低所の水平部56を走行することで、往路と復路を繰り返し循環して搬送物48を低所から高所へと搬送する。
【0005】
上記のようなチェーンコンベヤ41においては、フライト42とリンクチェーン45とを連結させるためにシャックルが使用される。例えば図10に示すように、従来のシャックル61としては、略楕円環状の環状部62と、この環状部62に連続して、環状部62の径方向外側に突出して平行に設けられた2本の脚部63,63とを備え、前記脚部63には、対向する脚部同士で軸心が一致するように各2個のボルト挿通孔64が形成されているものが用いられている(特許文献1参照)。
【0006】
上記シャックル61の使用方法としては、図11及び図12に示すように、リンクチェーン45を構成するリンク45a間に前記シャックル61を所定間隔ごとに組み込んで全体として1本の無端状リンクチェーン45を構成し、かかるリンクチェーン45を2本用いて対向する各シャックル61,61を平行に配設する。そして、フライト42の両端縁部を対向する2つのシャックル61,61で連結させる。シャックル61とフライト42との連結は、あらかじめフライト42の両端縁部にボルト通し孔(図示せず)をそれぞれ2個ずつ形成しておき、前記ボルト通し孔と前記ボルト挿通孔64とが重なるように、各シャックル61の脚部63をフライト42の縁部に挟み込み、ボルト65を前記ボルト挿通孔64とボルト通し孔に挿通してナット(図示せず)で締め付けることにより行う。
【0007】
しかしながら、フライト42の両端縁部に連結された2個のシャックル61,61は、その脚部63,63が互いに向い合っているため、上記した残留物除去装置54でフライト42に付着した残留物を除去する場合、掻き取り幅として最大W2しか確保することができない。このため、フライト42の残留物支持面のうち、シャックル61の脚部63の上側部分または下側部分に付着した残留物は掻き取られることなく、結果として排出部53に排出されずにチェーンコンベヤ41を循環してしまい、所定時間で搬送物48を排出部53へ排出できる量が少なくなる、すなわち搬送物48の搬送効率が低くなるという問題点があった。
【特許文献1】登録実用新案第3003387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来に比べて搬送物の搬送効率を高めることができるシャックルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、リンクチェーンに搬送器具が連結されてなるチェーンコンベヤにおいて、前記リンクチェーンと前記搬送器具とを連結させるために使用されるシャックルであって、互いに平行に向き合う2本の脚部と、これら脚部の長さ方向後端部から前記脚部に対して垂設され、全体として略楕円環状に形成されることで前記2本の脚部を連結する環状部とを備え、前記2本の脚部には、前記シャックルの側面から見て前記環状部の真下にボルト挿通用の第1貫通孔が対向する脚部同士で軸心を一致させて形成されるとともに、前記脚部の長さ方向手前側にボルト挿通用の第2貫通孔が対向する脚部同士で軸心を一致させて形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載のシャックルにおいて、前記リンクチェーンと前記搬送器具としての平板状のフライトとを連結させるために使用されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシャックルによれば、例えば、平行に配設された2本のリンクチェーンに搬送器具が架け渡して連結されてなるチェーンコンベヤに適用した場合、対向する各シャックルの脚部を互いに平行に配置した状態で、搬送器具の両端縁部に沿ってシャックルを連結させることができる。このため、例えば搬送器具として平板状のフライトを用いた場合、残留物除去装置による掻き取り幅を従来に比べて広げることができる。よって、従来のシャックルに比べてフライトに付着した残留物をより多く掻き取り除去して排出部へ排出することができるので搬送物の搬送効率を高めることができる。また、例えば搬送器具として搬送物の収納部を有するバケットを用いた場合、本発明のシャックルと連結させるバケットの両端縁部に形成されたフランジの幅を従来に比べて狭くすることができる。このため、搬送物の収納容量を従来のバケットに比べて多くすることができるので、従来のシャックルに比べて搬送物の搬送効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、添付図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。図1は本発明の一実施例を示すシャックル1の外観斜視図であり、図2と図3は、それぞれ図1のシャックル1の正面図と右側面図である。シャックル1は、一般汎用鋼材を鍛造して、熱処理(焼入・焼戻)を施して製造されるものであり、互いに平行に向き合う2本の脚部3,3と、これら脚部3の長さ方向後端部から前記脚部3に対して垂設され、全体として略楕円環状に形成された環状部2を備えており、この環状部2により前記2本の脚部3,3が連結されている。
【0013】
環状部2は、半円環状に形成された左右2つの湾曲部21,21と、これらの各湾曲部21,21と連続する直線棒状の直線部22とからなる。脚部3,3は、全体として角柱棒状とされており、前記湾曲部21の下部に連続して、該湾曲部21に対して略直角方向に突設されており、各々が平行に配置されている。2本の脚部3,3には、図3に示すように、シャックル1の側面から見て環状部2の真下にボルト挿通用の第1貫通孔31,31が対向する脚部3,3同士で軸心を一致させて形成されるとともに、前記脚部3の長さ方向手前側(図中、矢印Xと反対方向)にボルト挿通用の第2貫通孔32,32が対向する脚部3,3同士で軸心を一致させて形成されている。また、前記環状部2の下部後側には、前記脚部3に近づくにしたがって前記脚部3の後端へ向けて幅広となる傾斜部23が形成されている。
【0014】
シャックル1の使用方法を説明すると、図4と図5に示すように、リンクチェーン45を構成するリンク45a間にシャックル1の環状部2を所定間隔ごとに組み込んで全体として1本の無端状リンクチェーン45を構成し、かかるリンクチェーン45を2本用いて対向する各シャックル1,1を平行に配設する。そして、各シャックル1,1の脚部3,3が搬送容器としてのフライト42の両端縁部に沿うように配置してシャックル1,1をフライト42に連結させる。シャックル1とフライト42との連結は、あらかじめフライト42の両端縁部に沿ってボルト通し孔(図示せず)をそれぞれ2個ずつ形成しておき、前記各ボルト通し孔と前記各貫通孔31,32とが重なるように、シャックル1の脚部3をフライト42の縁部に挟み込み、ボルト34を前記貫通孔31,32と前記各ボルト通し孔に挿通してナット35で締め付けることにより行う。
【0015】
上記のように構成されるシャックル1によれば、対向する各シャックル1,1の脚部3,3を互いに平行に配置した状態で、フライト42の両端縁部に沿ってシャックル1,1を連結させることができる。このため、前記残留物除去装置54による掻き取り幅W1を従来のシャックルを用いた場合の掻き取り幅W2に比べて広げることがきる。よって、従来のシャックルに比べてフライト42の保持面に付着した残留物をより多く掻き取り除去してチェーンコンベヤの高所にある排出部へ排出することができるので、搬送物の搬送効率を高めることができる。
【0016】
また、シャックル1の脚部3は環状部2と直交してフライト42に連結されている。このため、環状部2と脚部3の連結部分にかかる加重が軽減され、従来のシャックルに比べて破断加重を増加させることができる。さらに、シャックル1は、環状部2の下部後側に、脚部3に近づくにしたがって前記脚部3の後端へ向けて幅広となる傾斜部23が形成されており、かかる傾斜部23を設けることによっても破断加重を増加させることに寄与している。
【0017】
なお、本発明は図示の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲でシャックルの各部材の形状・大きさ・位置等は適宜変更することができる。例えば、図1〜5では、脚部3に第1貫通孔31と第2貫通孔32が形成されたシャックル1を示したが、掻き取り幅W1が確保できれば貫通孔の個数は必ずしも2個に限定されるものではなく3個若しくはそれ以上でもよい。脚部3に貫通孔を3個形成する場合、シャックルの側面から見て環状部の真下に第1貫通孔を形成し、この貫通孔の手前側に貫通孔を2個形成してもよいし、図6に示すように、前記第1貫通孔31の前後に第2貫通孔32と第3貫通孔33をそれぞれ形成してもよい。
【0018】
また、シャックル1が連結される搬送器具についても、図示例及び従来から公知のフライトに限定されず、搬送物の収納部を有するバケットに対しても同様に適用することができる。前記バケットに本発明のシャックルを連結する場合、シャックルと連結させるバケットの両端縁部に形成されたフランジの幅を従来に比べて狭くすることができる。このため、搬送物の収納容量を従来に比べて多くすることができるので、フライトに適用した場合と同様にして、従来のシャックルに比べて搬送物の搬送効率を高めることができる。
【0019】
さらに、上記の説明では、シャックル1を図9に示したダブルチェーンコンベヤ41に適用した場合におけるシャックル1の使用方法と作用効果について主として説明したが、本発明のシャックル1は種々の形式によるコンベヤについてももちろん適用可能である。例えば、水平から斜め上方に向けて搬送物を搬送する場合には、斜め上方に傾斜して平行に配設された一ないし複数本(例えば、1〜4本程度)の無端状リンクチェーンに搬送器具が連結されてなるチェーンコンベヤが用いられるが、本発明のシャックル1はかかるチェーンコンベヤに対しても適用することができる。
【0020】
例えば、図7に示すように、斜め上方に傾斜して延びる搬送物の搬送面(図示せず)上に沿って斜め上方に傾斜して平行に配設された3本の無端状リンクチェーン45を備えたチェーンコンベヤに対しては、各リンクチェーン45を構成するリンク45a間にシャックル1を所定間隔ごとに組み込み、隣接するリンクチェーン45間に搬送器具(図示例ではフライト42)を架け渡すようにして連結することができる。また、図8に示すように、斜め上方に傾斜して延びる搬送物の搬送面(図示せず)上に沿って斜め上方に傾斜して配設された1本の無端状リンクチェーン45を備えたチェーンコンベヤ(通常このようなコンベヤを「片持ちコンベヤ」という)に対しては、各リンクチェーン45を構成するリンク45a間にシャックル1を所定間隔ごとに組み込み、搬送器具(図示例ではフライト42)の縁部を片側だけで支持するように連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例を示すシャックルの外観斜視図である。
【図2】図1のシャックルの正面図である。
【図3】図1のシャックルの右側面図である。
【図4】図1のシャックルの使用状態を示す説明図であり、ダブルチェーンコンベヤに適用した例である。
【図5】図4を上方から見た説明図である。
【図6】本発明の他の実施例を示すシャックルの外観斜視図である。
【図7】チェーン3本を平行に配設したチェーンコンベヤにシャックル1を適用した場合の説明図であり、(a)はシャックル1とフライト42の連結状態を示す説明図、(b)は前記コンベヤを上方から見た説明図である。
【図8】チェーン1本を配設したチェーンコンベヤにシャックル1を適用した場合の説明図であり、(a)はシャックル1とフライト42の連結状態を示す説明図、(b)は前記コンベヤを上方から見た説明図である。
【図9】搬送器具としてフライトを用いたダブルチェーンコンベヤの概略構成図である。
【図10】従来のシャックルを示す外観斜視図である。
【図11】図10のシャックルの使用状態を示す説明図であり、ダブルチェーンコンベヤに適用した例である。
【図12】図11を上方から見た説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1 シャックル
2 環状部
21 湾曲部
22 直線部
23 傾斜部
3 脚部
31 第1貫通孔
32 第2貫通孔
33 第3貫通孔
34 ボルト
35 ナット
41 チェーンコンベヤ
42 フライト
43 モーター
44 駆動用スプロケット
45 リンクチェーン
45a リンク
46 スプロケット
47 ベルトコンベヤ
48 搬送物
49 供給部
50 水平部
51 垂直部
52 水平部
53 排出部
54 残留物除去装置
55 垂直部
56 水平部
61 シャックル
62 環状部
63 脚部
64 ボルト挿通孔
65 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンクチェーンに搬送器具が連結されてなるチェーンコンベヤにおいて、前記リンクチェーンと前記搬送器具とを連結させるために使用されるシャックルであって、
互いに平行に向き合う2本の脚部と、これら脚部の長さ方向後端部から前記脚部に対して垂設され、全体として略楕円環状に形成されることで前記2本の脚部を連結する環状部とを備え、
前記2本の脚部には、前記シャックルの側面から見て前記環状部の真下にボルト挿通用の第1貫通孔が対向する脚部同士で軸心を一致させて形成されるとともに、前記脚部の長さ方向手前側にボルト挿通用の第2貫通孔が対向する脚部同士で軸心を一致させて形成されていることを特徴とするシャックル。
【請求項2】
前記リンクチェーンと前記搬送器具としての平板状のフライトとを連結させるために使用されることを特徴とする請求項1に記載のシャックル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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