説明

シャッター装置及びこのシャッター装置を備えた液滴吐出装置

【課題】非動作時のノズル内のインクの乾燥を防止することを課題とする。
【解決手段】インクジェット記録装置110の非動作時には、シャッター92をスライドさせて、ノズル列23をシャッター92のスリット94以外の部分で覆う。これにより、ノズル22内のインクが外気にさらされにくくなるので、ノズル22内のインクの水分の蒸発を防ぐことができる。したがって、ノズル22の目詰まりが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液滴を吐出する液滴吐出ヘッドに設けられるシャッター装置及び、このシャッター装置を備えた液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録ヘッドからインク滴を吐出して記録媒体に印字を行うインクジェット記録装置では、ノズルプレートに形成された複数のノズルからインクを噴射させ、このインクを用紙等の記録媒体に付着させて印字を行っている。
【0003】
このようなインクジェット記録装置では、非動作時のインクの乾燥、増粘によって、ノズルの目詰まりが引き起こされることがある。これにより、印字時にドット抜けが発生し、印字品位が低下したり、印字が不可能になるという問題が発生する。特に、印字品位確保のため、顔料系や樹脂添加剤を含むインクを使用した場合には、メンテナンス時にインクの乾燥、増粘が顕著に発生する恐れがある。
【0004】
インク増粘が進行するメカニズムは、実験的にまたシミュレーションによる解析が行われ、インク供給側からの気体透過及び、ノズル側からの大気乾燥、の両側からの進行モデルが考えられている。ヘッド構造にもよるが、ノズルは直接大気に開放され且つ多数であること、さらに吐出口でもあることからインク増粘の影響を受けやすく、ノズル側からのインク増粘の進行が支配的であり、また深刻であるとの結果が得られている。
【0005】
このため、ノズルのインクを吸引するためのキャップを、インクジェット記録装置の非動作時にノズルプレートに押し当てることで、ノズル内のインクの乾燥を防止している。しかし、キャップの開口部の周囲に取り付けられたシーリング部材(例えば、Oリング)等をノズルプレートに押し当てているだけなので、このシーリング部材からキャップの中に空気が入り込み、ノズル内のインクの水分が蒸発してしまうことがある。
【0006】
また、インク室とノズルとの間にシャッターを設けたものがある(特許文献1参照)。特許文献1の構成では、シャッターを閉めることによって、インク室内のインクが外気にさらされるのを防止できるが、ノズル内のインクは外気にさらされたままであるため、ノズル内でインクが乾燥して、ノズルの目詰まりを引き起こす恐れがある。また、微細なイジェクター内に可動機構を設けることは、インク漏れ、吐出圧力リーク等の問題が懸念され現実的でない。
【特許文献1】特許第2746703号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題を考慮し、非動作時のノズル内のインクの乾燥を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の本発明は、ノズルから液滴を吐出する液滴吐出ヘッドに用いられ、前記ノズルが複数形成されたノズルプレートにスライド可能に取付けられ、前記ノズルを露出させる開口部が形成されたシャッターと、前記シャッターをスライドさせ、前記ノズルを覆い又はノズルを露出させるスライド手段と、を有して構成されていることを特徴としている。
【0009】
請求項1に記載の発明では、スライド手段によって、ノズルプレートにスライド可能に取り付けられたシャッターがスライドし、シャッターに形成された開口部がノズルの位置に至るとノズルは露出し、開口部以外の部分がノズルの位置に至るとノズルがシャッターで覆われる。
【0010】
例えば、装置の動作時には、シャッターをスライドさせてノズルを露出させることで、ノズルから液滴が吐出可能とされる。また、装置の非動作時には、シャッターをスライドさせてノズルを覆うことで、ノズル内の液滴が外気にさらされにくくなる。これにより、ノズル内の液滴の水分の蒸発を防ぐことができるので、ノズル詰まりが防止される。したがって、ノズル内の乾燥した液滴を吸引するための液滴吸引手段が必要なくなるので、装置全体の構成が簡略化される。
【0011】
また、シャッターはノズルプレート上をスライドするので、シャッターをスライドさせてノズルを覆う際に、ノズル内にゴミ等の異物が押し込まれることがない。
【0012】
さらに、シャッターはノズルと密着するため、シャッターとノズルの間に空気層がない。このため、ノズル内のインクは乾燥しづらくなる。
【0013】
請求項2に記載の本発明は、前記シャッターは、前記ノズルプレートに積層され前記ノズルを保護するザグリプレートへ、スライド可能に取付けられていることを特徴としている。
【0014】
請求項2に記載の発明では、ノズルプレートには、ノズルを保護するザグリプレートが積層されており、このザグリプレートにシャッターがスライド可能に取り付けられている。
【0015】
つまり、シャッターはノズルプレート上をスライドしないで、ザグリプレート上をスライドするので、シャッターをスライドさせることによって、ノズルプレートに傷が付かない。したがって、ノズルの液滴吐出口が損傷する恐れがない。
【0016】
請求項3に記載の本発明は、前記シャッターは、前記ザグリプレートに磁力でスライド可能に取付けられていることを特徴としている。
【0017】
請求項3に記載の発明では、磁力によって、シャッターがザグリプレートにスライド可能に取り付けられている。これにより、簡単な構成でシャッターがザグリプレートに密着した状態で取り付けられる。また、シャッターとザグリプレートは密着するので、シャッターとザグリプレートの間から、ゴミ等の異物が侵入しにくくなる。
【0018】
請求項4に記載の本発明は、前記シャッターに磁石を取り付けたときは前記ザグリプレートを磁性を有するプレートとし、前記ザグリプレートに磁石を取り付けたときは前記シャッターを磁性を有するプレートとすることを特徴としている。
【0019】
請求項4に記載の発明では、ザグリプレートを磁性を有するプレートとして、シャッターに磁石を取り付ける。また、シャッターを磁性を有するプレートとして、ザグリプレートに磁石を取り付ける。つまり、ザグリプレート及びシャッターの少なくとも一方を、磁性を有するプレートとして、他方のプレートに磁石を取り付けることで、シャッターはザグリプレートに、磁力によってスライド可能に取り付けられる。
【0020】
請求項5に記載の本発明は、前記シャッターの開口部は、一方向に配列された前記ノズルの列を露出可能なスリットであり、前記スリットが配置されるピッチは、前記ノズルの列のピッチと同一であることを特徴としている。
【0021】
請求項5に記載の発明では、一方向に配列されたノズルの列のピッチと同一のピッチで、シャッターにスリットが設けられており、このスリットから、ノズルの列が露出可能とされている。これにより、ノズルの列のピッチの半分の移動量でシャッターをスライドさせれば、ノズルを露出させたり覆ったりすることができる。
【0022】
請求項6に記載の本発明は、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のシャッター装置を備えた液滴吐出装置であって、液滴吐出中は前記シャッターの開口部から前記ノズルを露出させ、吐出終了後は前記シャッターで前記ノズルを覆うことを特徴としている。
【0023】
請求項6に記載の発明では、ノズルから液滴を吐出する際には、シャッターの開口部からノズルを露出させ、ノズルから液滴を吐出可能とする。また、ノズルから液滴を吐出しないときは、シャッターによってノズルを覆い、ノズル内の液滴が空気にさらされにくくする。これにより、ノズルから液滴を吐出しない、非液滴吐出時において、ノズル内の液滴中の水分が蒸発しにくくなり、ノズル内で液滴が乾燥するのが防止される。したがって、ノズル詰まりが発生しない。
【発明の効果】
【0024】
本発明は上記構成としたので、非動作時のノズル内のインクの乾燥が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、インクジェット記録装置110を示す概略図である。
【0026】
図1に示すように、インクジェット記録装置110の筐体114内の下部には給紙トレイ116が備えられており、給紙トレイ116内に積層された用紙Pがピックアップローラ118で1枚ずつ取り出される。取り出された用紙Pは、所定の搬送経路122を構成する複数の搬送ローラ対120で搬送される。
【0027】
給紙トレイ116の上方には、駆動ローラ124および従動ローラ126に張架された無端状の搬送ベルト128が配置されている。搬送ベルト128の上方には記録ヘッドアレイ130が配置されており、搬送ベルト128の平坦部分128Fに対向している。この対向した領域が、記録ヘッドアレイ130からインク滴が吐出される吐出領域SEとなっている。搬送経路122を搬送された用紙Pは、搬送ベルト128で保持されてこの搬送領域SEに至り、記録ヘッドアレイ130に対向した状態で、記録ヘッドアレイ130から画像情報に応じたインク滴が付着される。
【0028】
記録ヘッドアレイ130内には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、および黒(K)の4色の夫々に対応した4つの長尺型のインクジェット記録ヘッド10が搬送方向に沿って配置されており、フルカラーの画像が記録可能とされている。
【0029】
記録ヘッドアレイ130の近傍(本実施形態では搬送方向の両側)には、それぞれのインクジェット記録ヘッド10に対応した4つのメンテナンスユニット134が配置されている。このメンテナンスユニット134は、所定のメンテナンス動作(バキューム、ダミージェット、ワイピング等)を行う。
【0030】
記録ヘッドアレイ130の上流側には、帯電ロール136が配置されている。帯電ロール136は、従動ローラ126との間で搬送ベルト128及び用紙Pを挟みつつ従動し、用紙Pを搬送ベルト128に押圧する押圧位置と、搬送ベルト128から離間した離間位置との間を移動可能とされている。押圧位置では、接地された従動ローラ126との間に所定の電位差が生じるため、用紙Pに電荷を与えて搬送ベルト128に静電吸着させることができる。
【0031】
記録ヘッドアレイ130の下流側には、図示しない剥離プレートが配置されており、用紙Pを搬送ベルト128から剥離するようになっている。剥離された用紙Pは、排出経路144を構成する複数の排出ローラ対142で搬送され、筐体114の上部に設けられた排紙トレイ146に排出される。
【0032】
給紙トレイ116と搬送ベルト128の間には、複数の反転用ローラ対150で構成された反転経路152が設けられており、片面に画像記録された用紙Pを反転させて搬送ベルト128に保持させることで、用紙Pの両面への画像記録を容易に行えるようになっている。
【0033】
搬送ベルト128と排紙トレイ146の間には、4色の各インクをそれぞれ貯留するインクタンク154が設けられている。インクタンク154のインクは、図示しないインク供給配管によって、記録ヘッドアレイ130に供給される。
【0034】
このようなインクジェット記録装置110では、4色のインクが収容された4台のインクジェット記録ヘッド10を備えているので、用紙Pの搬送方向におけるヘッド幅の小型化が可能であり、小型の記録ヘッドアレイ130を実現することができる。
【0035】
次に、インクジェット記録ヘッド10について説明する。図2は、インクジェット記録ヘッド10を示す概略斜視図である。
【0036】
図2に示すように、インクジェット記録ヘッド10は、記録媒体Pの最大幅に対応する長さに設定された図示しないヘッドバーを備えている。このヘッドバーは、インクジェット記録装置110(図1参照)内の図示しない支持体によって固定支持されている。
【0037】
ヘッドバーには、複数のヘッドユニット14が一列に繋ぎ合わせて設けられている。そして、各ヘッドユニット14で、図中の矢印A方向に所定のピッチで搬送される用紙Pに、印字する構成とされている。つまり、ヘッドユニット14の下方を一回通過することで、インクジェット記録ヘッド10を走査させることなく用紙Pの全幅を印字することが可能とされている。
【0038】
ここで、ヘッドユニット14の構成について説明する。図3には、ヘッドユニット14の断面図が示されている。
【0039】
図3に示すように、ヘッドユニット14は、ノズルプレート30を有しており、ノズルプレート30の上方には、連通孔プレート32と、ダンパ部材34が積層されている。ダンパ部材34の上方には、プールプレート36、38、40と、連通孔プレート42と、流路プレート44と、連通孔プレート46と、圧力室プレート48と、振動板50とが位置合わせして積層され、接着剤などの接合手段によって接合されている。
【0040】
図4に示すように、ノズルプレート30には、インク滴を吐出するノズル22が、所定のピッチで形成され、ノズル列23を形成している。このノズル列23は、用紙Pの搬送方向に対して斜めに、所定のピッチで配列されている。これにより、用紙Pの搬送方向と直交する方向に沿って、高密度にインクを吐出できる。
【0041】
図3に示すように、連通孔プレート32には、ノズル22と通じる連通孔54が形成され、ダンパ部材34には連通孔56が形成されている。プールプレート36、38、40には、連通孔58、60、62がそれぞれ形成され、連通孔プレート42には連通孔64が形成されている。さらに、流路プレート44には連通孔66が形成され、連通孔プレート46には連通孔68が形成されている。これらのノズル22、連通孔54、56、58、60、62、64、66、68はそれぞれ連通し、圧力室プレート48に形成された圧力室70に繋がっている。
【0042】
一方、連通孔プレート32には、ダンパ部材34の下部に空洞部72が形成されており、ダンパ部材34の変形が可能となっている。プールプレート36、38、40には、それぞれインクプール74、76、78が形成され、これらが互いに繋がって1つの空間となっている。これらのインクプール74、76、78には、図示しないインク供給孔から供給されたインクが貯留されている。また、連通孔プレート42には、インクプール78と連結するように供給孔80が形成され、流路プレート44には供給孔80と連通するインク流路82が形成されている。さらに、連通孔プレート46には、供給孔80の反対側でインク流路82と連結するように供給孔84が形成されている。これらのインクプール74、76、78と、供給孔80と、インク流路82と、供給孔84及び圧力室70は互いに連通しており、インクプール74、76、78から圧力室70内へインクが供給される。
【0043】
また、振動板50の上部には、圧力室70の上方に圧力発生手段としての圧電素子86が取り付けられている。圧電素子86には電極87が設けられており、図示しないフレキシブル配線基板から駆動電圧が印加されるように構成されている。これらの圧電素子86は、個々のノズル22と連通する各圧力室70の上方にそれぞれ設けられており、多数の圧電素子86によって構成される圧電素子群が図2に示す素子基板16、18となっている。
【0044】
図3及び図4に示すように、ノズルプレート30のインク吐出面側には、ザグリプレート88が取り付けられている。なお、図4は、ノズル列23と後述するシャッター92のスリット94との位置関係を示したものであり、ノズル列23を簡略化して表現している。
【0045】
ザグリプレート88には、ノズル22より一回り大きい円状の開口部90が各ノズル22に対応して列状に形成されており、この開口部90からノズル22が露出している。つまり、各ノズル22の周囲には、開口部90が形成されたザグリプレート88が設けられることで、段差が設けられた状態とされ、印字時に浮き上がった用紙Pが、ノズル22や、ノズルプレート30のノズル面に接触するのを防ぐ構成とされている。これにより、紙ジャム等によるノズル22の損傷が防止される。
【0046】
ザグリプレート88の表面(インク滴が吐出される側の面)には、シャッター92が設けられている。シャッター92は磁性を有する部材で形成されており、図2及び図5に示すように、ヘッドユニット14全域に渡るサイズとされた板状とされている。
【0047】
シャッター92の長手方向の一方の端部には、ソレノイド95の可動鉄心95Aが取り付けられている。ソレノイド95は図示しない制御装置に接続されており、制御装置からの信号によってソレノイド95に通電されると、可動鉄心95Aが突出してシャッター92が用紙Pの搬送方向と直交する方向(図の矢印B方向と反対方向)にスライドする構成とされている。
【0048】
シャッター92の長手方向の他方の端部には、薄板状の板材96が、シャッター92の板厚方向に対して垂直方向に延設されている。この板材96には、コイルスプリング98の一端が取り付けられている。コイルスプリング98の他端は、図示しない装置本体のフレームに取り付けられており、シャッター92は、図の矢印B方向に付勢されている。
【0049】
また、シャッター92の他方の端部近傍の側面は、フレームに設けられたプレート97に支持されている。このような構成により、ソレノイド95に通電されて可動鉄心95Aが突出すると、シャッター92はプレート97に支持されながら、用紙Pの搬送方向と直交する方向にスライドする。そして、ソレノイド95の通電が停止されると、コイルスプリング98の付勢力によって、図の矢印B方向にスライドする。
【0050】
また、シャッター92は、ヘッドユニット14間の隙間に設けられた複数の磁石93の磁力によって、ザグリプレート88の表面に密着されている。なお、磁石93の磁力は、ソレノイド95の可動鉄心95Aが突出したとき、シャッター92が可動鉄心95Aによって押し出され、また、ソレノイド95の通電がストップされたとき、コイルスプリング98の付勢力によって、待機位置(可動鉄心95Aによって押し出される前の位置)にスライド可能とされる大きさのものが用いられる。
【0051】
シャッター92には、用紙Pの搬送方向に沿ってスリット94が形成されている。スリット94は、ノズル列23及びザグリプレート88に形成された列状の開口部90が露出可能なサイズとされ、ノズル列23のピッチと同ピッチで複数形成されている。
【0052】
これにより、ノズル列23のピッチの半分の移動量でシャッター92をスライドさせれば、ノズル22を露出させたり覆ったりすることができる。つまり、インク吐出時等の動作時には図4(A)に示すように、スリット94をノズル列23の位置に至るまでシャッター92を移動させ、ノズル22をスリット94から露出させる。また、非動作時には図4(B)に示すように、スリット94以外の部分がノズル列23の位置に至るまでシャッター92を移動させ、ノズル22をシャッター92で覆う。
【0053】
次に、本発明の実施形態の作用について説明する。
【0054】
インクジェット記録装置110の動作時には、用紙Pの搬送方向と直交する方向に、シャッター92をノズル列23のピッチの半分の移動量でスライドさせる。これにより、シャッター92に形成されたスリット94からノズル列23を露出され、ノズル22からインクが吐出可能となる。
【0055】
また、インクジェット記録装置110の非動作時には、シャッター92をノズル列23のピッチの半分の移動量でスライドさせる。これにより、ノズル列23はシャッター92のスリット94以外の部分で覆われ、ノズル22内のインクが外気にさらされにくくなるので、ノズル22内のインクの水分の蒸発を防ぐことができる。したがって、ノズル22の目詰まりが防止されるので、メンテナンスユニット134(図1参照)を作動させてノズル22内の乾燥したインクを吸引する必要がない。
【0056】
また、シャッター92を用紙Pの搬送方向と直交する方向にスライドさせることによって、ノズル列23をシャッター92で覆うため、ノズル22内にゴミ等の異物が押し込まれる恐れがない。
【0057】
さらに、シャッター92はザグリプレート88に磁力によって密着された状態で設けられるため、シャッター92とザグリプレート88の間から、ゴミ等の異物が侵入しにくくなると共に、シャッター92とノズル22の間には、ザグリプレート厚み分の微小な空間しかないため、ノズル22内のインクは乾燥しづらくなる。
【0058】
なお、本実施形態では、シャッター92を磁性を有する部材で形成し、ヘッドユニット14間の隙間に設けられた磁石93の磁力によって、ザグリプレート88にシャッター92を密着させる構成としたが、磁石93は必ずしもヘッドユニット14間の隙間に設ける必要はなく、ザグリプレート88に埋め込んでもよい。また、ザグリプレート88を磁性を有する部材で形成し、シャッター92側に磁石を埋め込む構成としても、ザグリプレート88をシャッター92を磁力によって密着させることができる。また、シャッター92を密着させる方法としても、磁力によらず、ヘッドユニット14間の隙間に密閉空間を作り、この中を負圧にして吸いつける構成としてもよい。
【0059】
さらに、本実施形態では、メンテナンスユニット134を用いて、ノズル22をワイピングする構成としたが、シャッター92のスリット94の開口縁にワイパーブレードやブラシを取り付けて、シャッター92をスライドさせたときに、ワイパーブレードやブラシでノズル22をワイピングし、ノズル22に付着したインクを除去する構成としてもよい。
【0060】
また、本実施形態では、ノズルプレート30のインク吐出面側にザグリプレート88を設け、このザグリプレート88の表面にシャッター92を配置する構成で説明したが、ザグリプレートを設けずに、ノズルプレート30のインク吐出面側に、直にシャッター92を配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成図である。
【図2】インクジェット記録装置に搭載されたインクジェット記録ヘッドを示す斜視図である。
【図3】インクジェット記録ヘッドのヘッドユニットを示す部分断面図である。
【図4】ヘッドユニットのノズルプレート、ザグリプレート及びシャッターを、ノズル側から見た部分斜視図であり、(A)はインク吐出時の状態が示されており、(B)は非インク吐出時の状態が示されている。
【図5】インクジェット記録ヘッドをノズル側から見た部分上面図である。
【符号の説明】
【0062】
10 インクジェット記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)
22 ノズル
23 ノズル列(ノズルの列)
30 ノズルプレート
88 ザグリプレート
90 開口部
92 シャッター(シャッター装置)
93 磁石
94 スリット(開口部)
95 ソレノイド(シャッター装置、スライド手段)
110 インクジェット記録装置(液滴吐出装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから液滴を吐出する液滴吐出ヘッドに用いられ、
前記ノズルが複数形成されたノズルプレートにスライド可能に取付けられ、前記ノズルを露出させる開口部が形成されたシャッターと、
前記シャッターをスライドさせ、前記ノズルを覆い又はノズルを露出させるスライド手段と、
を有して構成されていることを特徴とするシャッター装置。
【請求項2】
前記シャッターは、前記ノズルプレートに積層され前記ノズルを保護するザグリプレートへ、スライド可能に取付けられていることを特徴とする請求項1に記載のシャッター装置。
【請求項3】
前記シャッターは、前記ザグリプレートに磁力でスライド可能に取付けられていることを特徴とする請求項2に記載のシャッター装置。
【請求項4】
前記シャッターに磁石を取り付けたときは前記ザグリプレートを磁性を有するプレートとし、前記ザグリプレートに磁石を取り付けたときは前記シャッターを磁性を有するプレートとすることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のシャッター装置。
【請求項5】
前記シャッターの開口部は、一方向に配列された前記ノズルの列を露出可能なスリットであり、前記スリットが配置されるピッチは、前記ノズルの列のピッチと同一であることを特徴とする請求項2〜請求項4の何れか1項に記載のシャッター装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のシャッター装置を備えた液滴吐出装置であって、液滴吐出中は前記シャッターの開口部から前記ノズルを露出させ、吐出終了後は前記シャッターで前記ノズルを覆うことを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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