シャッタ装置用のシール材
【課題】シャッタの揺れに伴う衝撃の緩和性を確保しつつ、シャッタの開閉時の摺動抵抗を低減することが可能なシャッタ装置用のシール材を提供する。
【解決手段】シール材20は、所定距離を隔てて平行に配置された一対の支持枠12と、該各支持枠12に該各支持枠12の長手方向に沿って往復動可能に両側部14cが支持されたシャッタ14とを備えたシャッタ装置におけるシャッタ14の両側部14cと各支持枠12との間に介装される。シール材20は、各支持枠12におけるシャッタ14の両側部14cとの対向面にそれぞれ取着される基材と、該基材上に立設された複数のパイル糸よりなる毛羽部22とを備えている。そして、毛羽部22は、基材上からの高さが異なる高パイル部22a及び低パイル部22bによって構成されている。
【解決手段】シール材20は、所定距離を隔てて平行に配置された一対の支持枠12と、該各支持枠12に該各支持枠12の長手方向に沿って往復動可能に両側部14cが支持されたシャッタ14とを備えたシャッタ装置におけるシャッタ14の両側部14cと各支持枠12との間に介装される。シール材20は、各支持枠12におけるシャッタ14の両側部14cとの対向面にそれぞれ取着される基材と、該基材上に立設された複数のパイル糸よりなる毛羽部22とを備えている。そして、毛羽部22は、基材上からの高さが異なる高パイル部22a及び低パイル部22bによって構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッタ装置におけるシャッタと該シャッタを支持する支持枠との間に介装されるシャッタ装置用のシール材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、シャッタ装置は、所定距離を隔てて平行に立設された一対の支持枠と、該各支持枠に支持されるシャッタとを有している。各支持枠における互いに対向する各対向面には、ガイド溝がそれぞれ上下方向に沿って延びるように凹設されている。シャッタは、開閉時の移動方向が支持枠の長手方向に沿った上下方向となるように構成され、その両側部が各ガイド溝内にそれぞれ挿入されている。
【0003】
各ガイド溝におけるシャッタの両側部と対向する内側面には、シャッタを滑らかに移動させるとともに、強風などによるシャッタの揺れに伴う衝撃を緩和するためのシール材が設けられている。そして、従来、こうしたシール材としては、帯状の基材上に多数のパイル糸を起毛したものが提案されている(例えば、特許文献1)。この特許文献1のシール材では、シャッタの揺れに伴う衝撃の緩和性を確保するべく、パイル糸に比較的太い糸が使用されるとともに、該パイル糸に捲縮加工が施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−116140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のシール材では、パイル糸に比較的太い糸が使用されているため、シャッタの揺れに伴う衝撃の緩和性を確保することはできるものの、シャッタの開閉時の摺動抵抗が大きくなってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、シャッタの揺れに伴う衝撃の緩和性を確保しつつ、シャッタの開閉時の摺動抵抗を低減することが可能なシャッタ装置用のシール材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、シャッタ装置用のシール材に係る請求項1に記載の発明は、所定距離を隔てて平行に配置された一対の支持枠と、該各支持枠に該各支持枠の長手方向に沿って往復動可能に両側部が支持されたシャッタとを備えたシャッタ装置における前記シャッタの両側部と前記各支持枠との間に介装されるシャッタ装置用のシール材であって、前記各支持枠における前記シャッタの両側部との対向面にそれぞれ取着される基材と、該基材上に立設された複数のパイル糸とを備え、前記各パイル糸のうち、一部のパイル糸の前記基材上からの高さを他のパイル糸の前記基材上からの高さよりも低くしたことを要旨とする。
【0008】
上記構成によれば、シャッタの開閉時の往復動に伴って該シャッタが小さく揺れる場合には、基材上からの高さが高い方のパイル糸のみが該シャッタに摺接するため、シャッタの摺動抵抗が低減される。一方、シャッタが閉じられた状態で非常に強い外力(例えば、台風などによる非常に強い風)を受けて大きく揺れる場合には、該シャッタの大きな揺れに伴う衝撃が基材上からの高さが高い方のパイル糸及び低い方のパイル糸の両方によって吸収されて緩和されるため、該シャッタの揺れが効果的に抑制される。したがって、シャッタの揺れに伴う衝撃の緩和性を確保しつつ、シャッタの開閉時の摺動抵抗を低減することが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記各パイル糸の中には、太さが異なるパイル糸が含まれていることを要旨とする。
上記構成によれば、シャッタの摺動性とシャッタの揺れに伴う衝撃の緩和性をバランスよく保つことが可能となる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記各パイル糸のうちの少なくとも一部のパイル糸には、捲縮加工が施されていることを要旨とする。
【0011】
上記構成によれば、シャッタの揺れに伴う衝撃の緩和性を向上させることが可能となる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の発明において、前記各パイル糸及び前記基材のうち少なくとも一方は、難燃性の材料によって構成されていることを要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、各パイル糸及び前記基材のうち少なくとも一方に耐火性を付与することが可能となる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の発明において、前記基材は、前記各支持枠の長手方向に沿うように帯状をなしており、前記基材上には、該基材の長手方向に沿って延びる帯状のフィルム部材がその短手方向を立設方向として立設され、前記フィルム部材は、前記各パイル糸よりも剛性が高く、且つ該各パイル糸のうち少なくとも前記基材上からの高さが高い方のパイル糸よりも高さが低いことを要旨とする。
【0013】
上記構成によれば、フィルム部材により、シャッタが大きい揺れに伴う衝撃を吸収することができるとともに、雨水の浸入や塵埃の侵入などを抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シャッタの揺れに伴う衝撃の緩和性を確保しつつ、シャッタの開閉時の摺動抵抗を低減することが可能なシャッタ装置用のシール材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態のシャッタ装置の一部破断正面図。
【図2】図1のシャッタ装置の要部を示す平断面図。
【図3】図1のシャッタ装置の要部を示す側断面図。
【図4】図1のシャッタ装置が備えるシール材の斜視図。
【図5】図4の5−5線に沿った断面図。
【図6】図4のシール材の作用を説明するための断面図。
【図7】図4のシール材の作用を説明するための断面図。
【図8】第2実施形態のシャッタ装置の要部拡大断面図。
【図9】第2実施形態のシャッタ装置において、(a)は2つのシール材の両方を低パイル部が下側となるように配置した状態を示す断面模式図、(b)は2つのシール材の両方を低パイル部が上側となるように配置した状態を示す断面模式図、(c)は2つのシール材のうち一方を低パイル部が上側となるように配置するとともに他方を低パイル部が下側となるように配置した状態を示す断面模式図。
【図10】変更例のシール材の断面図。
【図11】別の変更例のシール材の断面図。
【図12】実施例1のシール材の圧縮反発力を測定するときの状態を示す断面図。
【図13】比較例1のシール材の断面図。
【図14】各温度における実施例1及び比較例1のシール材の圧縮反発力の測定結果を示す表。
【図15】実施例1のシール材の摺動抵抗値を測定するときの状態を示す断面図。
【図16】図15の16−16線断面図。
【図17】各温度における実施例1及び比較例1のシール材の摺動抵抗値の測定結果を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。なお、特に説明がない限り、以下の記載における前後方向、上下方向及び左右方向は、図1において紙面に対して手前側を前方としたときの前後方向、上下方向及び左右方向と一致するものとする。
【0017】
図1に示すように、シャッタ装置10は、床面11上に所定距離を隔てて平行に立設された一対の支持枠12と、該各支持枠12の上端部間に架設されたハウジング13と、該ハウジング13と床面11と各支持枠12とにより囲まれた空間域に配設されたシャッタ14とを備えている。シャッタ14は、左右方向に延びる複数枚の羽根板15によって構成されている。そして、シャッタ14は、上下方向において隣接する羽根板15同士が互いに回動可能に連結されることにより、渦巻き状に巻回された形態と図1に示すように平板状に展開された形態とを取り得るように構成されている。
【0018】
ハウジング13は、下側が開口した有底長四角箱状に形成されるとともに、その内部には円筒状のドラム(図示略)が回転可能に支持されている。このドラムの外周面上には、シャッタ14の上端部が連結されている。そして、シャッタ装置10は、このドラムをハウジング13内で正方向に回転させてシャッタ14をドラムの外周面上に巻取ることにより、ハウジング13内にシャッタ14が収容された開放状態とされる。一方、シャッタ装置10は、その開放状態において上記ドラムを逆方向に回転させて該ドラムの外周面上からシャッタ14を巻出してハウジング13内から下方に繰り出すことにより、ハウジング13と床面11との間にシャッタ14が展開された閉塞状態とされる。
【0019】
図2及び図3に示すように、金属により四角筒状に形成された一対の支持枠12の互いに対向する各内側面12aには、該各支持枠12の長手方向に沿って延びるガイド溝16がそれぞれ形成されている。各支持枠12のガイド溝16内には、シャッタ14の左右の両側部14cがそれぞれ挿入されている。そして、シャッタ14は、シャッタ装置10を開放状態または閉塞状態とするための開閉操作を行う場合に、各支持枠12のガイド溝16により、左右方向及び前後方向への移動が制限された状態で上下方向へ往復動するように支持されている。
【0020】
シャッタ14の前面14a及び後面14bと前後方向において対向する各ガイド溝16の前後の各内側面(対向面)16a,16bには、シャッタ14の前面14a及び後面14bに向かって開口する蟻溝状の収容凹溝17が各支持枠12の長手方向に沿って延びるようにそれぞれ形成されている。また、シャッタ14の両側部14cが各ガイド溝16内に挿入された状態において、該各ガイド溝16の各内側面16a,16bとシャッタ14の前面14a及び後面14bとの間には、隙間がそれぞれ形成されている。そして、これらの隙間を塞ぐように、シャッタ14における両側部14cの前面14a及び後面14bと各支持枠12におけるガイド溝16の各内側面16a,16bとの間には、シール材20が介装されている。
【0021】
次に、シール材20の構成について詳述する。
図4及び図5に示すように、シール材20は、熱可塑性樹脂材料であるポリプロピレンによって構成されている。すなわち、シール材20は、ポリプロピレンの成型品により構成された長尺帯状の基材21と、該基材21上に立設された複数のポリプロピレン製のパイル糸23よりなる毛羽部22とを備えている。本実施形態においては、基材21及び各パイル糸23(毛羽部22)の両方に難燃処方が施されている。この場合、難燃処方としては、難燃剤を素材に練り込む方式が採用されている。この難燃剤としては、一般的に利用されるものが用いられ、例えば、臭素化合物やリン化合物などの有機系難燃剤、あるいはアンチモン化合物や金属水酸化物などの無機系難燃剤が用いられる。
【0022】
基材21上において該基材21の短手方向に所定距離を隔てた位置には、一対の凸条21aが基材21の長手方向に沿って延設されている。そして、基材21上における各凸条21aの内側の領域は、毛羽部22を構成する各パイル糸23が立設される立設領域とされている。また、シール材20は、断面略U字状に折り曲げた状態で束ねた各パイル糸23を基材21上に超音波溶着(熱溶着)することで形成される。このとき、基材21上の各凸条21aが、基材21上に各パイル糸23を超音波溶着する際の位置決め手段として機能する。
【0023】
毛羽部22を構成する各パイル糸23は、フィラメント当たりの繊径が33デシテックスの糸と、捲縮加工を施したフィラメント当たりの繊径が21デシテックスの糸とを含んでいる。すなわち、毛羽部22は、太さの異なる2種類のパイル糸23によって構成されている。また、毛羽部22を構成する各パイル糸23における基材21の短手方向の一方側半分は他方側半分よりも基材21上からの高さよりも低くなっている。したがって、毛羽部22における基材21の短手方向の中央部には、基材21の長手方向に沿って延びる段差が形成されている。
【0024】
そして、毛羽部22における基材21上からのパイル糸23の高さが高い方の部分は高パイル部22aとされる一方、毛羽部22における基材21上からのパイル糸23の高さが低い方の部分は低パイル部22bとされている。本実施形態では、高パイル部22aの基材21上からの高さは約5mmに設定されるとともに、低パイル部22bの基材21上からの高さは約4mmに設定されている。したがって、高パイル部22aと低パイル部22bとの基材21上からの高さの差は約1mmになっている。
【0025】
そして、図2及び図3に示すように、シャッタ装置10の各収容凹溝17内にシール材20の基材21をそれぞれ装着した状態では、各ガイド溝16の各内側面16a,16bよりもシャッタ14の前面14a側及び後面14b側へ毛羽部22(高パイル部22a及び低パイル部22b)がそれぞれ突出するようになっている。この場合、各シール材20の毛羽部22において、高パイル部22aの先端は、シャッタ14の前面14a及び後面14bにそれぞれ軽く摺接する一方、低パイル部22bの先端は、シャッタ14の前面14a及び後面14bに対してそれぞれ離間している。
【0026】
次に、シール材20の作用について説明する。
さて、図6に示すように、シャッタ装置10を開放状態または閉塞状態とするための開閉操作を行うべくシャッタ14を往復動する場合には、該シャッタ14にシール材20の低パイル部22bが接触することなく高パイル部22aのみが軽く摺接する。このため、低パイル部22bがシャッタ14を往復動する際の摺動抵抗にならないので、シャッタ14の摺動抵抗が低減されるとともに、シャッタ14の摺動音も低減される。
【0027】
また、図7に示すように、シャッタ装置10の閉塞状態においてシャッタ14が台風などによる非常に強い風を受けて大きく前後方向に揺れる場合には、このシャッタ14の揺れに伴う衝撃によって高パイル部22aが押し潰されるものの、該衝撃が高パイル部22a及び低パイル部22bの両方によって緩和される。すなわち、前後方向に大きく揺れるシャッタ14が高パイル部22a及び低パイル部22bの両方によって受け止められる。この結果、シャッタ14の揺れ(がたつき)が効果的に抑制されるとともに、該シャッタ14が揺れることによる衝撃音も効果的に低減される。
【0028】
以上詳述した第1実施形態によれば次のような効果が発揮される。
(1)シール材20の毛羽部22は、高パイル部22aと低パイル部22bとを備えているため、シャッタ14の開閉時の往復動に伴って該シャッタ14が小さく揺れる場合には、高パイル部22aのみが該シャッタ14に摺接するため、シャッタ14の摺動抵抗を低減することができる。一方、シャッタ装置10の閉塞状態において、シャッタ14が台風などによる非常に強い風を受けて大きく揺れる場合には、該シャッタ14の大きな揺れに伴う衝撃を高パイル部22a及び低パイル部22bの両方によって吸収して緩和することができるので、該シャッタ14の揺れ(がたつき)を効果的に抑制することができる。したがって、シャッタ14の揺れに伴う衝撃の緩和性を確保しつつ、シャッタ14の開閉時の摺動抵抗を低減することができる。
【0029】
(2)シール材20の毛羽部22を構成する各パイル糸23の中には、太さが異なる2種類のパイル糸が含まれているため、シャッタ14の摺動性とシャッタ14の揺れに伴う衝撃の緩和性をバランスよく保つことができる。
【0030】
(3)また、通常、各パイル糸23が太い糸だけで構成されていると、シャッタ14の開閉時に各パイル糸23が倒れにくくなるため、各パイル糸23によるシャッタ14に対する摺動抵抗が大きくなってしまう。この点、本実施形態では、シール材20の毛羽部22を構成する各パイル糸23の中には、太い糸(フィラメント当たりの繊径が33デシテックスの糸)で構成されたものと細い糸(フィラメント当たりの繊径が21デシテックスの糸)で構成されたものとの2種類の糸が含まれている。このため、シャッタ14の開閉時に、細い糸が撓ることで、太い糸がシャッタ14の移動方向に倒れ易くなるので、各パイル糸23によるシャッタ14に対する摺動抵抗を低減することができる。加えて、シャッタ装置10の閉塞状態においてシャッタ14が台風などによる非常に強い風を受けて大きく前後方向に揺れたときでも、太い糸によってシール材20の毛羽部22の強度を維持することができるので、シャッタ14の揺れ(がたつき)を十分に抑制することができる。なお、各パイル糸23を太い糸と細い糸との中間の太さの糸だけで構成すると、上述のようなシャッタ14に対する摺動抵抗低減効果やシャッタ14の揺れ(がたつき)抑制効果が、中途半端なものとなってしまう。
【0031】
(4)シール材20の毛羽部22を構成する各パイル糸23の中には、捲縮加工を施した糸が含まれているため、毛羽部22のクッション性を高めることができる。したがって、シール材20によるシャッタ14の揺れに伴う衝撃の緩和性を向上させることができる。
【0032】
(5)シール材20の毛羽部22を構成する各パイル糸23及び基材21は、共に難燃性を付与したポリプロピレンによって構成されているため、シール材20に耐火性を付与することができる。
【0033】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
この第2実施形態は、図8に示すように、上記第1実施形態のシャッタ装置10において、ハウジング13の下側の開口部にシャッタ14を前後から挟むように2つのシール材20を設けて、ハウジング13におけるシャッタ14の開口部(出没位置)でのシャッタ14との隙間をシールするようにしたものである。
【0034】
図8に示すように、ハウジング13は、その内部に各支持枠12の上端部を収容した状態でシャッタ装置10における上部に左右方向に水平に延びるように配置されている。ハウジング13内における上寄りの位置には、左右方向に延びる支軸60が架設されている。支軸18には、円筒状のドラム61が該支軸18と一体回転可能に支持されている。すなわち、ドラム61は、その中心の貫通孔61aに支軸60が挿嵌された状態で支持されている。ドラム61の外周面には、左右方向に長い矩形板状をなす4枚の板部材62が、該ドラム61の周方向に等間隔となるように固着されている。各板部材62のうちの1つには、シャッタ14を構成する各羽根板15のうちの最も上端に位置する羽根板15が固定されている。
【0035】
そして、シャッタ装置10は、このドラム61をハウジング13内で正方向(図8における時計方向)に回転させてシャッタ14をドラム61の外周面上に巻取ることにより、ハウジング13内にシャッタ14が収容された開放状態とされる。一方、シャッタ装置10は、その開放状態においてドラム61を逆方向(図8における反時計方向)に回転させて該ドラム61の外周面上からシャッタ14を巻出してハウジング13内から下方に繰り出すことにより、ハウジング13と床面11との間にシャッタ14が展開された閉塞状態とされる。
【0036】
ハウジング13内の下端部には、シャッタ14の幅方向である左右方向に延びる前後一対の凹溝63が互いに対向するように形成されている。各凹溝63のうちの一方は、ハウジング13の前壁から延出された底壁の内端部に形成されるとともに、後方側に開口している。各凹溝63のうちの他方は、各支持枠12間に架設された架橋体64に設けられるとともに、前方側に開口している。そして、各凹溝63内には、左右方向に延びるシール材20がそれぞれ装着されている。この場合、各シール材20は、それらの高パイル部22aの先端部がシャッタ14の前後両面にそれぞれ接触している。
【0037】
さらに、この場合、前後一対のシール材20の配置形態としては、図9(a)〜(c)に示した3つのうちから適宜選択することができるが、本実施形態では、図9(a)に示すように、両方のシール材20を、高パイル部22aよりも低パイル部22bの方が下側に位置するように、配置している。このため、シャッタ14を開ける(上げる)ときには、両方のシール材20の高パイル部22aのみが抵抗となる一方、シャッタ14を閉める(下げる)ときには、両方のシール材20の高パイル部22aが各低パイル部22bによってそれぞれ支えられるため、両方のシール材20の高パイル部22a及び低パイル部22bが抵抗となる。
【0038】
したがって、シャッタ14を閉めるときの各シール材20による抵抗よりも、シャッタ14を開けるときの各シール材20による抵抗の方が小さくなる。このようにすることで、シャッタ装置10が手動式のものである場合に、ユーザへの負担が軽減される。なぜなら、シャッタ14を閉めるときに必要とする力よりもシャッタ14を開けるときに必要とする力の方がシャッタ14の荷重分だけ大きくなるからである。
【0039】
また、図9(b)に示すように、両方のシール材20を、高パイル部22aよりも低パイル部22bの方が上側に位置するように配置すると、シャッタ14を閉めるときには、両方のシール材20の高パイル部22aのみが抵抗となる一方、シャッタ14を開けるときには、両方のシール材20の高パイル部22aが各低パイル部22bによってそれぞれ支えられるため、両方のシール材20の高パイル部22a及び低パイル部22bが抵抗となる。したがって、シャッタ14を開けるときの各シール材20による抵抗よりも、シャッタ14を閉めるときの各シール材20による抵抗の方が小さくなる。
【0040】
さらに、図9(c)に示すように、両方のシール材20のうち、一方を高パイル部22aよりも低パイル部22bの方が上側に位置するように配置するとともに、他方を高パイル部22aよりも低パイル部22bの方が下側に位置するように配置すると、シャッタ14を開けるときの各シール材20による抵抗と、シャッタ14を閉めるときの各シール材20による抵抗とがほぼ同じになる。
【0041】
そして、例えば、シャッタ装置10が自動式のものである場合には、モータの負荷などを考慮して、各シール材20の配置態様を、図9(a)〜(c)のうちのいずれかから適宜選択することができる。なお、シャッタ装置10が手動式のものであっても、各シール材20の配置態様を、状況に応じて、図9(a)〜(c)のうちのいずれかから適宜選択してもよい。
【0042】
以上詳述した第2実施形態によれば、上記(1)〜(5)の作用効果に加えて、次のような効果が発揮される。
(6)ハウジング13の下側の開口部におけるシャッタ14との隙間を、シール材20によってシールすることができるので、ハウジング13内へ異物などが侵入することを抑制することができる。
【0043】
(変更例)
なお、上記各実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・図10に示すように、シール材20は、基材21上における高パイル部22aと低パイル部22bとの間に、基材21の長手方向に沿って延びる帯状のフィルム部材30をその短手方向を立設方向として立設するようにしてもよい。この場合、フィルム部材30は基材21上に毛羽部22とともに超音波溶着されるとともに、フィルム部材30の基材21上からの高さは高パイル部22aよりも低く且つ低パイル部22bよりも高くなるように設定されている。なお、フィルム部材30は、ポリプロピレン製の不織布の一側面にコーティング処理を施して補強することで得られるとともに、毛羽部22よりも剛性が高くなっている。このようにすれば、フィルム部材30により、シャッタ14の大きい揺れに伴う衝撃を吸収することができるとともに、雨水の浸入や塵埃の侵入などを抑制することができる。
【0044】
・上記図10に示すシール材20において、フィルム部材30の基材21上からの高さは、高パイル部22aよりも低ければ、低パイル部22bと同じ高さであってもよいし、低パイル部22bよりも低くしてもよい。
【0045】
・上記図10に示すシール材20において、フィルム部材30は、高パイル部22aの外側や低パイル部22bの外側、あるいは外側両面に配置してもよい。
・上記図10に示すシール材20において、フィルム部材30は、例えばゴム成分を配合することで、柔軟性が付与された熱可塑性エラストマーの押出成型品によって構成してもよい。
【0046】
・図11に示すように、シール材20を、帯状の基布31と、該基布31の長手方向に沿って延びるように該基布31上に立毛された高パイル部22a及び低パイル部22bとからなるベロア材によって構成してもよい。この場合、ベロア材を構成する基布31は、ポリプロピレン製の繊維よりなるタテ糸31a及びヨコ糸31bを織り上げることにより形成された織布を用いて形成されるとともに、毛羽部22は基布31上に複数本のパイル糸23をパイル織りして形成される。このパイル織りは、毛羽部22を形成する各パイル糸23をそれぞれ基布31のヨコ糸31bに絡ませるようにして織り込む方法である。さらに、基布31における毛羽部22が形成されている面とは反対側の面には、硬質のポリプロピレンよりなるコーティング層32が溶着されている。そして、このコーティング層32により、各パイル糸23(毛羽部22)の根元と基布31とが強固に接合される。なお、この場合、基布31とコーティング層32とによって基材が構成される。
【0047】
・シール材20の材質は、ポリプロピレンに限らない。例えば、シール材20全体の材質をポリアミドとしてもよい。このようにすれば、ポリアミド繊維の優れた復元力及び耐摩耗性により、耐久性や緩衝性に一層優れたシール材20を提供することができる。
【0048】
・シール材20において、基材21上にフィルム部材30を、該基材21の長手方向に沿って断続的に延設するようにしてもよい。
・シャッタ装置10は、開閉時に、上記各実施形態のようにシャッタ14を巻出し及び巻取りを行うタイプのものではなく、開閉時に、単にシャッタを昇降させるタイプのものであってもよい。
【0049】
・シール材20は、必ずしも難燃性の材料によって構成する必要はない。すなわち、シール材20において、基材21及び各パイル糸23のうちいずれか一方を難燃性の材料によって構成しなくてもよいし、基材21及び各パイル糸23の両方を難燃性の材料によって構成しなくてもよい。
【0050】
・シール材20の毛羽部22を構成する各パイル糸23は、全て同じ太さであってもよい。
・シール材20の毛羽部22を構成する各パイル糸23には、必ずしも捲縮加工を施したパイル糸23を含ませる必要はない。
【0051】
・上記各実施形態ではシール材20の毛羽部22を1列ずつの高パイル部22a及び低パイル部22bによって構成したが、毛羽部22を2列ずつ以上の高パイル部22a及び低パイル部22bによって構成してもよい。この場合、基材21上に、該基材21の短手方向に沿って高パイル部22a及び低パイル部22bを交互に配置してもよい。
【0052】
・シール材20の毛羽部22を3種類上の高さのパイル糸23によって構成してもよい。例えば、基材21上に、高パイル部22aよりも低くて低パイル部22bよりも高い複数のパイル糸23によって構成された中パイル部を立設してもよい。
【0053】
・上記各実施形態ではシール材20の毛羽部22を、基材21上に半々で立設された高パイル部22a及び低パイル部22bによって構成したが、高パイル部22aと低パイル部22bとの割合を任意に変更してもよい。
【0054】
・シール材20の毛羽部22は、基材21の長手方向に沿って交互にまたはランダムに高パイル部22aと低パイル部22bとを配置してもよい。
・シール材20は、摺動性とがたつき抑制との両方の機能が必要な用途であれば、例えば、雨戸の収納口部分のシール材などとして用いてもよい。
【実施例】
【0055】
以下、上記各実施形態をさらに具体化した実施例及び比較例について説明する。
(実施例1)
図12に示すように、上記各実施形態のシール材20の高さAを5.0mm、高パイル部22aと低パイル部22bとの段差Bを0.3mmに設定したものを実施例1とした。また、実施例1のシール材20の毛羽部22は、太さが21デシテックスのパイル糸23と太さが33デシテックスのパイル糸23とを混毛したものによって構成されている。なお、この実施例1のシール材20の長手方向の長さは、33mmに設定されている。
【0056】
(比較例1)
図13に示すように、実施例1のシール材20の高さAを5.5mmにするとともに高パイル部22aと低パイル部22bとの段差をなくしたものを比較例1とした。また、比較例1のシール材の毛羽部22は、太さが23デシテックスのパイル糸23のみによって構成されている。なお、この比較例1のシール材の長手方向の長さは、実施例1のシール材20と同様に、33mmに設定されている。
【0057】
<圧縮反発力の測定>
図12に示すように、圧縮反発力測定装置40を用いて、上記実施例1及び比較例1について、それぞれの圧縮反発力を以下のように測定した。
【0058】
まず、上記実施例1のシール材20を平らな台座41上に載置し、該シール材20を毛羽部22側から圧縮反発力測定装置40により毎分50mmの圧縮速度でシール材20の高さAが2.3mm(最大圧縮量)になるまで圧縮したときの圧縮反発力を、雰囲気温度が−15℃、0℃、20℃、40℃、60℃の場合において、それぞれ測定した。結果を図14の表に示す。
【0059】
続いて、実施例1と同様に、比較例1の圧縮反発力を雰囲気温度が−15℃、0℃、20℃、40℃、60℃の場合において、それぞれ測定した。結果を図14の表に示す。
圧縮反発力の測定結果は、図14の表に示すように、全ての雰囲気温度において、実施例1の圧縮反発力が比較例1の圧縮反発力を上回った。
【0060】
<摺動抵抗値の測定>
図15及び図16に示すように、摺動抵抗値測定装置51を用いて、上記実施例1及び比較例1について、それぞれの摺動抵抗値を以下のように測定した。
【0061】
まず、矩形状の平板50を、矩形筒状の摺動抵抗値測定装置51の内部の下端部まで挿入されるように、天井からワイヤ52で吊り下げる。そして、摺動抵抗値測定装置51内に、平板50の両側部をそれぞれ挟むように、4つの実施例1のシール材20をそれぞれ取着する。このとき、各シール材20の毛羽部22の平板50に対するニップ量(摺接代)は、0.3mmに設定する。そして、摺動抵抗値測定装置51を毎分50mmの速度で真下に移動させたときの摺動抵抗値を、雰囲気温度が−15℃、0℃、20℃、40℃、60℃の場合において、それぞれ測定した。結果を図17の表に示す。
【0062】
続いて、実施例1と同様に、比較例1の摺動抵抗値を雰囲気温度が−15℃、0℃、20℃、40℃、60℃の場合において、それぞれ測定した。この場合、比較例1の各シール材の毛羽部22の平板50に対するニップ量(摺接代)は、0.8mmに設定した。結果を図17の表に示す。
【0063】
摺動抵抗値の測定結果は、図17の表に示すように、全ての雰囲気温度において、実施例1の摺動抵抗値が比較例1の摺動抵抗値を下回った。
<考察>
以上の結果より、実施例1の方が、雰囲気温度にかかわらず、比較例1よりも圧縮反発力が大きく且つ摺動抵抗値が小さい。したがって、実施例1の方が比較例1よりも衝撃の緩和性(反発性)及び摺動性に優れていることが示された。
【符号の説明】
【0064】
10…シャッタ装置、12…支持枠、14…シャッタ、14c…シャッタの両側部、20…シール材、21…基材、23…パイル糸、30…フィルム部材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッタ装置におけるシャッタと該シャッタを支持する支持枠との間に介装されるシャッタ装置用のシール材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、シャッタ装置は、所定距離を隔てて平行に立設された一対の支持枠と、該各支持枠に支持されるシャッタとを有している。各支持枠における互いに対向する各対向面には、ガイド溝がそれぞれ上下方向に沿って延びるように凹設されている。シャッタは、開閉時の移動方向が支持枠の長手方向に沿った上下方向となるように構成され、その両側部が各ガイド溝内にそれぞれ挿入されている。
【0003】
各ガイド溝におけるシャッタの両側部と対向する内側面には、シャッタを滑らかに移動させるとともに、強風などによるシャッタの揺れに伴う衝撃を緩和するためのシール材が設けられている。そして、従来、こうしたシール材としては、帯状の基材上に多数のパイル糸を起毛したものが提案されている(例えば、特許文献1)。この特許文献1のシール材では、シャッタの揺れに伴う衝撃の緩和性を確保するべく、パイル糸に比較的太い糸が使用されるとともに、該パイル糸に捲縮加工が施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−116140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のシール材では、パイル糸に比較的太い糸が使用されているため、シャッタの揺れに伴う衝撃の緩和性を確保することはできるものの、シャッタの開閉時の摺動抵抗が大きくなってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、シャッタの揺れに伴う衝撃の緩和性を確保しつつ、シャッタの開閉時の摺動抵抗を低減することが可能なシャッタ装置用のシール材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、シャッタ装置用のシール材に係る請求項1に記載の発明は、所定距離を隔てて平行に配置された一対の支持枠と、該各支持枠に該各支持枠の長手方向に沿って往復動可能に両側部が支持されたシャッタとを備えたシャッタ装置における前記シャッタの両側部と前記各支持枠との間に介装されるシャッタ装置用のシール材であって、前記各支持枠における前記シャッタの両側部との対向面にそれぞれ取着される基材と、該基材上に立設された複数のパイル糸とを備え、前記各パイル糸のうち、一部のパイル糸の前記基材上からの高さを他のパイル糸の前記基材上からの高さよりも低くしたことを要旨とする。
【0008】
上記構成によれば、シャッタの開閉時の往復動に伴って該シャッタが小さく揺れる場合には、基材上からの高さが高い方のパイル糸のみが該シャッタに摺接するため、シャッタの摺動抵抗が低減される。一方、シャッタが閉じられた状態で非常に強い外力(例えば、台風などによる非常に強い風)を受けて大きく揺れる場合には、該シャッタの大きな揺れに伴う衝撃が基材上からの高さが高い方のパイル糸及び低い方のパイル糸の両方によって吸収されて緩和されるため、該シャッタの揺れが効果的に抑制される。したがって、シャッタの揺れに伴う衝撃の緩和性を確保しつつ、シャッタの開閉時の摺動抵抗を低減することが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記各パイル糸の中には、太さが異なるパイル糸が含まれていることを要旨とする。
上記構成によれば、シャッタの摺動性とシャッタの揺れに伴う衝撃の緩和性をバランスよく保つことが可能となる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記各パイル糸のうちの少なくとも一部のパイル糸には、捲縮加工が施されていることを要旨とする。
【0011】
上記構成によれば、シャッタの揺れに伴う衝撃の緩和性を向上させることが可能となる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の発明において、前記各パイル糸及び前記基材のうち少なくとも一方は、難燃性の材料によって構成されていることを要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、各パイル糸及び前記基材のうち少なくとも一方に耐火性を付与することが可能となる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の発明において、前記基材は、前記各支持枠の長手方向に沿うように帯状をなしており、前記基材上には、該基材の長手方向に沿って延びる帯状のフィルム部材がその短手方向を立設方向として立設され、前記フィルム部材は、前記各パイル糸よりも剛性が高く、且つ該各パイル糸のうち少なくとも前記基材上からの高さが高い方のパイル糸よりも高さが低いことを要旨とする。
【0013】
上記構成によれば、フィルム部材により、シャッタが大きい揺れに伴う衝撃を吸収することができるとともに、雨水の浸入や塵埃の侵入などを抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シャッタの揺れに伴う衝撃の緩和性を確保しつつ、シャッタの開閉時の摺動抵抗を低減することが可能なシャッタ装置用のシール材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態のシャッタ装置の一部破断正面図。
【図2】図1のシャッタ装置の要部を示す平断面図。
【図3】図1のシャッタ装置の要部を示す側断面図。
【図4】図1のシャッタ装置が備えるシール材の斜視図。
【図5】図4の5−5線に沿った断面図。
【図6】図4のシール材の作用を説明するための断面図。
【図7】図4のシール材の作用を説明するための断面図。
【図8】第2実施形態のシャッタ装置の要部拡大断面図。
【図9】第2実施形態のシャッタ装置において、(a)は2つのシール材の両方を低パイル部が下側となるように配置した状態を示す断面模式図、(b)は2つのシール材の両方を低パイル部が上側となるように配置した状態を示す断面模式図、(c)は2つのシール材のうち一方を低パイル部が上側となるように配置するとともに他方を低パイル部が下側となるように配置した状態を示す断面模式図。
【図10】変更例のシール材の断面図。
【図11】別の変更例のシール材の断面図。
【図12】実施例1のシール材の圧縮反発力を測定するときの状態を示す断面図。
【図13】比較例1のシール材の断面図。
【図14】各温度における実施例1及び比較例1のシール材の圧縮反発力の測定結果を示す表。
【図15】実施例1のシール材の摺動抵抗値を測定するときの状態を示す断面図。
【図16】図15の16−16線断面図。
【図17】各温度における実施例1及び比較例1のシール材の摺動抵抗値の測定結果を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。なお、特に説明がない限り、以下の記載における前後方向、上下方向及び左右方向は、図1において紙面に対して手前側を前方としたときの前後方向、上下方向及び左右方向と一致するものとする。
【0017】
図1に示すように、シャッタ装置10は、床面11上に所定距離を隔てて平行に立設された一対の支持枠12と、該各支持枠12の上端部間に架設されたハウジング13と、該ハウジング13と床面11と各支持枠12とにより囲まれた空間域に配設されたシャッタ14とを備えている。シャッタ14は、左右方向に延びる複数枚の羽根板15によって構成されている。そして、シャッタ14は、上下方向において隣接する羽根板15同士が互いに回動可能に連結されることにより、渦巻き状に巻回された形態と図1に示すように平板状に展開された形態とを取り得るように構成されている。
【0018】
ハウジング13は、下側が開口した有底長四角箱状に形成されるとともに、その内部には円筒状のドラム(図示略)が回転可能に支持されている。このドラムの外周面上には、シャッタ14の上端部が連結されている。そして、シャッタ装置10は、このドラムをハウジング13内で正方向に回転させてシャッタ14をドラムの外周面上に巻取ることにより、ハウジング13内にシャッタ14が収容された開放状態とされる。一方、シャッタ装置10は、その開放状態において上記ドラムを逆方向に回転させて該ドラムの外周面上からシャッタ14を巻出してハウジング13内から下方に繰り出すことにより、ハウジング13と床面11との間にシャッタ14が展開された閉塞状態とされる。
【0019】
図2及び図3に示すように、金属により四角筒状に形成された一対の支持枠12の互いに対向する各内側面12aには、該各支持枠12の長手方向に沿って延びるガイド溝16がそれぞれ形成されている。各支持枠12のガイド溝16内には、シャッタ14の左右の両側部14cがそれぞれ挿入されている。そして、シャッタ14は、シャッタ装置10を開放状態または閉塞状態とするための開閉操作を行う場合に、各支持枠12のガイド溝16により、左右方向及び前後方向への移動が制限された状態で上下方向へ往復動するように支持されている。
【0020】
シャッタ14の前面14a及び後面14bと前後方向において対向する各ガイド溝16の前後の各内側面(対向面)16a,16bには、シャッタ14の前面14a及び後面14bに向かって開口する蟻溝状の収容凹溝17が各支持枠12の長手方向に沿って延びるようにそれぞれ形成されている。また、シャッタ14の両側部14cが各ガイド溝16内に挿入された状態において、該各ガイド溝16の各内側面16a,16bとシャッタ14の前面14a及び後面14bとの間には、隙間がそれぞれ形成されている。そして、これらの隙間を塞ぐように、シャッタ14における両側部14cの前面14a及び後面14bと各支持枠12におけるガイド溝16の各内側面16a,16bとの間には、シール材20が介装されている。
【0021】
次に、シール材20の構成について詳述する。
図4及び図5に示すように、シール材20は、熱可塑性樹脂材料であるポリプロピレンによって構成されている。すなわち、シール材20は、ポリプロピレンの成型品により構成された長尺帯状の基材21と、該基材21上に立設された複数のポリプロピレン製のパイル糸23よりなる毛羽部22とを備えている。本実施形態においては、基材21及び各パイル糸23(毛羽部22)の両方に難燃処方が施されている。この場合、難燃処方としては、難燃剤を素材に練り込む方式が採用されている。この難燃剤としては、一般的に利用されるものが用いられ、例えば、臭素化合物やリン化合物などの有機系難燃剤、あるいはアンチモン化合物や金属水酸化物などの無機系難燃剤が用いられる。
【0022】
基材21上において該基材21の短手方向に所定距離を隔てた位置には、一対の凸条21aが基材21の長手方向に沿って延設されている。そして、基材21上における各凸条21aの内側の領域は、毛羽部22を構成する各パイル糸23が立設される立設領域とされている。また、シール材20は、断面略U字状に折り曲げた状態で束ねた各パイル糸23を基材21上に超音波溶着(熱溶着)することで形成される。このとき、基材21上の各凸条21aが、基材21上に各パイル糸23を超音波溶着する際の位置決め手段として機能する。
【0023】
毛羽部22を構成する各パイル糸23は、フィラメント当たりの繊径が33デシテックスの糸と、捲縮加工を施したフィラメント当たりの繊径が21デシテックスの糸とを含んでいる。すなわち、毛羽部22は、太さの異なる2種類のパイル糸23によって構成されている。また、毛羽部22を構成する各パイル糸23における基材21の短手方向の一方側半分は他方側半分よりも基材21上からの高さよりも低くなっている。したがって、毛羽部22における基材21の短手方向の中央部には、基材21の長手方向に沿って延びる段差が形成されている。
【0024】
そして、毛羽部22における基材21上からのパイル糸23の高さが高い方の部分は高パイル部22aとされる一方、毛羽部22における基材21上からのパイル糸23の高さが低い方の部分は低パイル部22bとされている。本実施形態では、高パイル部22aの基材21上からの高さは約5mmに設定されるとともに、低パイル部22bの基材21上からの高さは約4mmに設定されている。したがって、高パイル部22aと低パイル部22bとの基材21上からの高さの差は約1mmになっている。
【0025】
そして、図2及び図3に示すように、シャッタ装置10の各収容凹溝17内にシール材20の基材21をそれぞれ装着した状態では、各ガイド溝16の各内側面16a,16bよりもシャッタ14の前面14a側及び後面14b側へ毛羽部22(高パイル部22a及び低パイル部22b)がそれぞれ突出するようになっている。この場合、各シール材20の毛羽部22において、高パイル部22aの先端は、シャッタ14の前面14a及び後面14bにそれぞれ軽く摺接する一方、低パイル部22bの先端は、シャッタ14の前面14a及び後面14bに対してそれぞれ離間している。
【0026】
次に、シール材20の作用について説明する。
さて、図6に示すように、シャッタ装置10を開放状態または閉塞状態とするための開閉操作を行うべくシャッタ14を往復動する場合には、該シャッタ14にシール材20の低パイル部22bが接触することなく高パイル部22aのみが軽く摺接する。このため、低パイル部22bがシャッタ14を往復動する際の摺動抵抗にならないので、シャッタ14の摺動抵抗が低減されるとともに、シャッタ14の摺動音も低減される。
【0027】
また、図7に示すように、シャッタ装置10の閉塞状態においてシャッタ14が台風などによる非常に強い風を受けて大きく前後方向に揺れる場合には、このシャッタ14の揺れに伴う衝撃によって高パイル部22aが押し潰されるものの、該衝撃が高パイル部22a及び低パイル部22bの両方によって緩和される。すなわち、前後方向に大きく揺れるシャッタ14が高パイル部22a及び低パイル部22bの両方によって受け止められる。この結果、シャッタ14の揺れ(がたつき)が効果的に抑制されるとともに、該シャッタ14が揺れることによる衝撃音も効果的に低減される。
【0028】
以上詳述した第1実施形態によれば次のような効果が発揮される。
(1)シール材20の毛羽部22は、高パイル部22aと低パイル部22bとを備えているため、シャッタ14の開閉時の往復動に伴って該シャッタ14が小さく揺れる場合には、高パイル部22aのみが該シャッタ14に摺接するため、シャッタ14の摺動抵抗を低減することができる。一方、シャッタ装置10の閉塞状態において、シャッタ14が台風などによる非常に強い風を受けて大きく揺れる場合には、該シャッタ14の大きな揺れに伴う衝撃を高パイル部22a及び低パイル部22bの両方によって吸収して緩和することができるので、該シャッタ14の揺れ(がたつき)を効果的に抑制することができる。したがって、シャッタ14の揺れに伴う衝撃の緩和性を確保しつつ、シャッタ14の開閉時の摺動抵抗を低減することができる。
【0029】
(2)シール材20の毛羽部22を構成する各パイル糸23の中には、太さが異なる2種類のパイル糸が含まれているため、シャッタ14の摺動性とシャッタ14の揺れに伴う衝撃の緩和性をバランスよく保つことができる。
【0030】
(3)また、通常、各パイル糸23が太い糸だけで構成されていると、シャッタ14の開閉時に各パイル糸23が倒れにくくなるため、各パイル糸23によるシャッタ14に対する摺動抵抗が大きくなってしまう。この点、本実施形態では、シール材20の毛羽部22を構成する各パイル糸23の中には、太い糸(フィラメント当たりの繊径が33デシテックスの糸)で構成されたものと細い糸(フィラメント当たりの繊径が21デシテックスの糸)で構成されたものとの2種類の糸が含まれている。このため、シャッタ14の開閉時に、細い糸が撓ることで、太い糸がシャッタ14の移動方向に倒れ易くなるので、各パイル糸23によるシャッタ14に対する摺動抵抗を低減することができる。加えて、シャッタ装置10の閉塞状態においてシャッタ14が台風などによる非常に強い風を受けて大きく前後方向に揺れたときでも、太い糸によってシール材20の毛羽部22の強度を維持することができるので、シャッタ14の揺れ(がたつき)を十分に抑制することができる。なお、各パイル糸23を太い糸と細い糸との中間の太さの糸だけで構成すると、上述のようなシャッタ14に対する摺動抵抗低減効果やシャッタ14の揺れ(がたつき)抑制効果が、中途半端なものとなってしまう。
【0031】
(4)シール材20の毛羽部22を構成する各パイル糸23の中には、捲縮加工を施した糸が含まれているため、毛羽部22のクッション性を高めることができる。したがって、シール材20によるシャッタ14の揺れに伴う衝撃の緩和性を向上させることができる。
【0032】
(5)シール材20の毛羽部22を構成する各パイル糸23及び基材21は、共に難燃性を付与したポリプロピレンによって構成されているため、シール材20に耐火性を付与することができる。
【0033】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
この第2実施形態は、図8に示すように、上記第1実施形態のシャッタ装置10において、ハウジング13の下側の開口部にシャッタ14を前後から挟むように2つのシール材20を設けて、ハウジング13におけるシャッタ14の開口部(出没位置)でのシャッタ14との隙間をシールするようにしたものである。
【0034】
図8に示すように、ハウジング13は、その内部に各支持枠12の上端部を収容した状態でシャッタ装置10における上部に左右方向に水平に延びるように配置されている。ハウジング13内における上寄りの位置には、左右方向に延びる支軸60が架設されている。支軸18には、円筒状のドラム61が該支軸18と一体回転可能に支持されている。すなわち、ドラム61は、その中心の貫通孔61aに支軸60が挿嵌された状態で支持されている。ドラム61の外周面には、左右方向に長い矩形板状をなす4枚の板部材62が、該ドラム61の周方向に等間隔となるように固着されている。各板部材62のうちの1つには、シャッタ14を構成する各羽根板15のうちの最も上端に位置する羽根板15が固定されている。
【0035】
そして、シャッタ装置10は、このドラム61をハウジング13内で正方向(図8における時計方向)に回転させてシャッタ14をドラム61の外周面上に巻取ることにより、ハウジング13内にシャッタ14が収容された開放状態とされる。一方、シャッタ装置10は、その開放状態においてドラム61を逆方向(図8における反時計方向)に回転させて該ドラム61の外周面上からシャッタ14を巻出してハウジング13内から下方に繰り出すことにより、ハウジング13と床面11との間にシャッタ14が展開された閉塞状態とされる。
【0036】
ハウジング13内の下端部には、シャッタ14の幅方向である左右方向に延びる前後一対の凹溝63が互いに対向するように形成されている。各凹溝63のうちの一方は、ハウジング13の前壁から延出された底壁の内端部に形成されるとともに、後方側に開口している。各凹溝63のうちの他方は、各支持枠12間に架設された架橋体64に設けられるとともに、前方側に開口している。そして、各凹溝63内には、左右方向に延びるシール材20がそれぞれ装着されている。この場合、各シール材20は、それらの高パイル部22aの先端部がシャッタ14の前後両面にそれぞれ接触している。
【0037】
さらに、この場合、前後一対のシール材20の配置形態としては、図9(a)〜(c)に示した3つのうちから適宜選択することができるが、本実施形態では、図9(a)に示すように、両方のシール材20を、高パイル部22aよりも低パイル部22bの方が下側に位置するように、配置している。このため、シャッタ14を開ける(上げる)ときには、両方のシール材20の高パイル部22aのみが抵抗となる一方、シャッタ14を閉める(下げる)ときには、両方のシール材20の高パイル部22aが各低パイル部22bによってそれぞれ支えられるため、両方のシール材20の高パイル部22a及び低パイル部22bが抵抗となる。
【0038】
したがって、シャッタ14を閉めるときの各シール材20による抵抗よりも、シャッタ14を開けるときの各シール材20による抵抗の方が小さくなる。このようにすることで、シャッタ装置10が手動式のものである場合に、ユーザへの負担が軽減される。なぜなら、シャッタ14を閉めるときに必要とする力よりもシャッタ14を開けるときに必要とする力の方がシャッタ14の荷重分だけ大きくなるからである。
【0039】
また、図9(b)に示すように、両方のシール材20を、高パイル部22aよりも低パイル部22bの方が上側に位置するように配置すると、シャッタ14を閉めるときには、両方のシール材20の高パイル部22aのみが抵抗となる一方、シャッタ14を開けるときには、両方のシール材20の高パイル部22aが各低パイル部22bによってそれぞれ支えられるため、両方のシール材20の高パイル部22a及び低パイル部22bが抵抗となる。したがって、シャッタ14を開けるときの各シール材20による抵抗よりも、シャッタ14を閉めるときの各シール材20による抵抗の方が小さくなる。
【0040】
さらに、図9(c)に示すように、両方のシール材20のうち、一方を高パイル部22aよりも低パイル部22bの方が上側に位置するように配置するとともに、他方を高パイル部22aよりも低パイル部22bの方が下側に位置するように配置すると、シャッタ14を開けるときの各シール材20による抵抗と、シャッタ14を閉めるときの各シール材20による抵抗とがほぼ同じになる。
【0041】
そして、例えば、シャッタ装置10が自動式のものである場合には、モータの負荷などを考慮して、各シール材20の配置態様を、図9(a)〜(c)のうちのいずれかから適宜選択することができる。なお、シャッタ装置10が手動式のものであっても、各シール材20の配置態様を、状況に応じて、図9(a)〜(c)のうちのいずれかから適宜選択してもよい。
【0042】
以上詳述した第2実施形態によれば、上記(1)〜(5)の作用効果に加えて、次のような効果が発揮される。
(6)ハウジング13の下側の開口部におけるシャッタ14との隙間を、シール材20によってシールすることができるので、ハウジング13内へ異物などが侵入することを抑制することができる。
【0043】
(変更例)
なお、上記各実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・図10に示すように、シール材20は、基材21上における高パイル部22aと低パイル部22bとの間に、基材21の長手方向に沿って延びる帯状のフィルム部材30をその短手方向を立設方向として立設するようにしてもよい。この場合、フィルム部材30は基材21上に毛羽部22とともに超音波溶着されるとともに、フィルム部材30の基材21上からの高さは高パイル部22aよりも低く且つ低パイル部22bよりも高くなるように設定されている。なお、フィルム部材30は、ポリプロピレン製の不織布の一側面にコーティング処理を施して補強することで得られるとともに、毛羽部22よりも剛性が高くなっている。このようにすれば、フィルム部材30により、シャッタ14の大きい揺れに伴う衝撃を吸収することができるとともに、雨水の浸入や塵埃の侵入などを抑制することができる。
【0044】
・上記図10に示すシール材20において、フィルム部材30の基材21上からの高さは、高パイル部22aよりも低ければ、低パイル部22bと同じ高さであってもよいし、低パイル部22bよりも低くしてもよい。
【0045】
・上記図10に示すシール材20において、フィルム部材30は、高パイル部22aの外側や低パイル部22bの外側、あるいは外側両面に配置してもよい。
・上記図10に示すシール材20において、フィルム部材30は、例えばゴム成分を配合することで、柔軟性が付与された熱可塑性エラストマーの押出成型品によって構成してもよい。
【0046】
・図11に示すように、シール材20を、帯状の基布31と、該基布31の長手方向に沿って延びるように該基布31上に立毛された高パイル部22a及び低パイル部22bとからなるベロア材によって構成してもよい。この場合、ベロア材を構成する基布31は、ポリプロピレン製の繊維よりなるタテ糸31a及びヨコ糸31bを織り上げることにより形成された織布を用いて形成されるとともに、毛羽部22は基布31上に複数本のパイル糸23をパイル織りして形成される。このパイル織りは、毛羽部22を形成する各パイル糸23をそれぞれ基布31のヨコ糸31bに絡ませるようにして織り込む方法である。さらに、基布31における毛羽部22が形成されている面とは反対側の面には、硬質のポリプロピレンよりなるコーティング層32が溶着されている。そして、このコーティング層32により、各パイル糸23(毛羽部22)の根元と基布31とが強固に接合される。なお、この場合、基布31とコーティング層32とによって基材が構成される。
【0047】
・シール材20の材質は、ポリプロピレンに限らない。例えば、シール材20全体の材質をポリアミドとしてもよい。このようにすれば、ポリアミド繊維の優れた復元力及び耐摩耗性により、耐久性や緩衝性に一層優れたシール材20を提供することができる。
【0048】
・シール材20において、基材21上にフィルム部材30を、該基材21の長手方向に沿って断続的に延設するようにしてもよい。
・シャッタ装置10は、開閉時に、上記各実施形態のようにシャッタ14を巻出し及び巻取りを行うタイプのものではなく、開閉時に、単にシャッタを昇降させるタイプのものであってもよい。
【0049】
・シール材20は、必ずしも難燃性の材料によって構成する必要はない。すなわち、シール材20において、基材21及び各パイル糸23のうちいずれか一方を難燃性の材料によって構成しなくてもよいし、基材21及び各パイル糸23の両方を難燃性の材料によって構成しなくてもよい。
【0050】
・シール材20の毛羽部22を構成する各パイル糸23は、全て同じ太さであってもよい。
・シール材20の毛羽部22を構成する各パイル糸23には、必ずしも捲縮加工を施したパイル糸23を含ませる必要はない。
【0051】
・上記各実施形態ではシール材20の毛羽部22を1列ずつの高パイル部22a及び低パイル部22bによって構成したが、毛羽部22を2列ずつ以上の高パイル部22a及び低パイル部22bによって構成してもよい。この場合、基材21上に、該基材21の短手方向に沿って高パイル部22a及び低パイル部22bを交互に配置してもよい。
【0052】
・シール材20の毛羽部22を3種類上の高さのパイル糸23によって構成してもよい。例えば、基材21上に、高パイル部22aよりも低くて低パイル部22bよりも高い複数のパイル糸23によって構成された中パイル部を立設してもよい。
【0053】
・上記各実施形態ではシール材20の毛羽部22を、基材21上に半々で立設された高パイル部22a及び低パイル部22bによって構成したが、高パイル部22aと低パイル部22bとの割合を任意に変更してもよい。
【0054】
・シール材20の毛羽部22は、基材21の長手方向に沿って交互にまたはランダムに高パイル部22aと低パイル部22bとを配置してもよい。
・シール材20は、摺動性とがたつき抑制との両方の機能が必要な用途であれば、例えば、雨戸の収納口部分のシール材などとして用いてもよい。
【実施例】
【0055】
以下、上記各実施形態をさらに具体化した実施例及び比較例について説明する。
(実施例1)
図12に示すように、上記各実施形態のシール材20の高さAを5.0mm、高パイル部22aと低パイル部22bとの段差Bを0.3mmに設定したものを実施例1とした。また、実施例1のシール材20の毛羽部22は、太さが21デシテックスのパイル糸23と太さが33デシテックスのパイル糸23とを混毛したものによって構成されている。なお、この実施例1のシール材20の長手方向の長さは、33mmに設定されている。
【0056】
(比較例1)
図13に示すように、実施例1のシール材20の高さAを5.5mmにするとともに高パイル部22aと低パイル部22bとの段差をなくしたものを比較例1とした。また、比較例1のシール材の毛羽部22は、太さが23デシテックスのパイル糸23のみによって構成されている。なお、この比較例1のシール材の長手方向の長さは、実施例1のシール材20と同様に、33mmに設定されている。
【0057】
<圧縮反発力の測定>
図12に示すように、圧縮反発力測定装置40を用いて、上記実施例1及び比較例1について、それぞれの圧縮反発力を以下のように測定した。
【0058】
まず、上記実施例1のシール材20を平らな台座41上に載置し、該シール材20を毛羽部22側から圧縮反発力測定装置40により毎分50mmの圧縮速度でシール材20の高さAが2.3mm(最大圧縮量)になるまで圧縮したときの圧縮反発力を、雰囲気温度が−15℃、0℃、20℃、40℃、60℃の場合において、それぞれ測定した。結果を図14の表に示す。
【0059】
続いて、実施例1と同様に、比較例1の圧縮反発力を雰囲気温度が−15℃、0℃、20℃、40℃、60℃の場合において、それぞれ測定した。結果を図14の表に示す。
圧縮反発力の測定結果は、図14の表に示すように、全ての雰囲気温度において、実施例1の圧縮反発力が比較例1の圧縮反発力を上回った。
【0060】
<摺動抵抗値の測定>
図15及び図16に示すように、摺動抵抗値測定装置51を用いて、上記実施例1及び比較例1について、それぞれの摺動抵抗値を以下のように測定した。
【0061】
まず、矩形状の平板50を、矩形筒状の摺動抵抗値測定装置51の内部の下端部まで挿入されるように、天井からワイヤ52で吊り下げる。そして、摺動抵抗値測定装置51内に、平板50の両側部をそれぞれ挟むように、4つの実施例1のシール材20をそれぞれ取着する。このとき、各シール材20の毛羽部22の平板50に対するニップ量(摺接代)は、0.3mmに設定する。そして、摺動抵抗値測定装置51を毎分50mmの速度で真下に移動させたときの摺動抵抗値を、雰囲気温度が−15℃、0℃、20℃、40℃、60℃の場合において、それぞれ測定した。結果を図17の表に示す。
【0062】
続いて、実施例1と同様に、比較例1の摺動抵抗値を雰囲気温度が−15℃、0℃、20℃、40℃、60℃の場合において、それぞれ測定した。この場合、比較例1の各シール材の毛羽部22の平板50に対するニップ量(摺接代)は、0.8mmに設定した。結果を図17の表に示す。
【0063】
摺動抵抗値の測定結果は、図17の表に示すように、全ての雰囲気温度において、実施例1の摺動抵抗値が比較例1の摺動抵抗値を下回った。
<考察>
以上の結果より、実施例1の方が、雰囲気温度にかかわらず、比較例1よりも圧縮反発力が大きく且つ摺動抵抗値が小さい。したがって、実施例1の方が比較例1よりも衝撃の緩和性(反発性)及び摺動性に優れていることが示された。
【符号の説明】
【0064】
10…シャッタ装置、12…支持枠、14…シャッタ、14c…シャッタの両側部、20…シール材、21…基材、23…パイル糸、30…フィルム部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定距離を隔てて平行に配置された一対の支持枠と、該各支持枠に該各支持枠の長手方向に沿って往復動可能に両側部が支持されたシャッタとを備えたシャッタ装置における前記シャッタの両側部と前記各支持枠との間に介装されるシャッタ装置用のシール材であって、
前記各支持枠における前記シャッタの両側部との対向面にそれぞれ取着される基材と、
該基材上に立設された複数のパイル糸と
を備え、
前記各パイル糸のうち、一部のパイル糸の前記基材上からの高さを他のパイル糸の前記基材上からの高さよりも低くしたことを特徴とするシャッタ装置用のシール材。
【請求項2】
前記各パイル糸の中には、太さが異なるパイル糸が含まれていることを特徴とする請求項1に記載のシャッタ装置用のシール材。
【請求項3】
前記各パイル糸のうちの少なくとも一部のパイル糸には、捲縮加工が施されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシャッタ装置用のシール材。
【請求項4】
前記各パイル糸及び前記基材のうち少なくとも一方は、難燃性の材料によって構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載のシャッタ装置用のシール材。
【請求項5】
前記基材は、前記各支持枠の長手方向に沿うように帯状をなしており、
前記基材上には、該基材の長手方向に沿って延びる帯状のフィルム部材がその短手方向を立設方向として立設され、
前記フィルム部材は、前記各パイル糸よりも剛性が高く、且つ該各パイル糸のうち少なくとも前記基材上からの高さが高い方のパイル糸よりも高さが低いことを特徴とする請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載のシャッタ装置用のシール材。
【請求項1】
所定距離を隔てて平行に配置された一対の支持枠と、該各支持枠に該各支持枠の長手方向に沿って往復動可能に両側部が支持されたシャッタとを備えたシャッタ装置における前記シャッタの両側部と前記各支持枠との間に介装されるシャッタ装置用のシール材であって、
前記各支持枠における前記シャッタの両側部との対向面にそれぞれ取着される基材と、
該基材上に立設された複数のパイル糸と
を備え、
前記各パイル糸のうち、一部のパイル糸の前記基材上からの高さを他のパイル糸の前記基材上からの高さよりも低くしたことを特徴とするシャッタ装置用のシール材。
【請求項2】
前記各パイル糸の中には、太さが異なるパイル糸が含まれていることを特徴とする請求項1に記載のシャッタ装置用のシール材。
【請求項3】
前記各パイル糸のうちの少なくとも一部のパイル糸には、捲縮加工が施されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシャッタ装置用のシール材。
【請求項4】
前記各パイル糸及び前記基材のうち少なくとも一方は、難燃性の材料によって構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載のシャッタ装置用のシール材。
【請求項5】
前記基材は、前記各支持枠の長手方向に沿うように帯状をなしており、
前記基材上には、該基材の長手方向に沿って延びる帯状のフィルム部材がその短手方向を立設方向として立設され、
前記フィルム部材は、前記各パイル糸よりも剛性が高く、且つ該各パイル糸のうち少なくとも前記基材上からの高さが高い方のパイル糸よりも高さが低いことを特徴とする請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載のシャッタ装置用のシール材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−188857(P2012−188857A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53095(P2011−53095)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(596024426)槌屋ティスコ株式会社 (47)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(596024426)槌屋ティスコ株式会社 (47)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
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