説明

シャツ

【課題】襟構造を簡単にしてコストを削減でき、また、ネクタイの着用が要求される状況においても体裁を保持でき、さらに、寒い時季において保温効果を発揮して首周りの冷えを解消し、年間を通じて使用することが可能なシャツを提供する。
【解決手段】シャツ本体1に設けた襟部2に、吸湿機能および放湿機能を有するメッシュ生地8を配置する。メッシュ生地8は、襟部2の表布6の内側に配置されて、その外面が表布6で覆われる。メッシュ生地8の湾曲方向の長さを、首周りの少なくとも後半周囲を覆う長さに設定する。メッシュ生地8を、疎水性機能を有する吸湿層15と、吸水性機能を有する放湿層16と、これら両層15・16を連結して両層15・16の間に空気層を形成する中間層17とで三層立体構造に構成して、吸湿層15が首肌に接触する状態で配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイシャツやポロシャツなどの襟部を有するシャツに関する。
【背景技術】
【0002】
襟部を有するシャツを着用していると首周りに汗をかいて、べとつきなどの不快感を生じることがある。この種の不快感の解消を図った作業用上着が特許文献1に公知である。そこでは、着用者の首筋と対向する襟部の下方中央部が2重メッシュ布で構成してある。2重メッシュ布は、襟部の表布に縫い付けた穂先形の表メッシュ布と、襟部の裏布に縫い付けた横長長方形状の裏メッシュ布とで構成されている。表メッシュ布は、襟部の表布の下方中央部に形成した弓形状の切り欠き部に縫い付けてある。裏メッシュ布は表メッシュ布よりも小型であり、その左右両側に布片を縫い付けて、表メッシュ布と同様の穂先形に形成してある。この裏メッシュ布を含む穂先形の布片が、襟部の裏布の下方中央部に形成した弓形状の切り欠き部に縫い付けてある。また、外襟の下縁中央部分にもメッシュ地が縫い付けてあり、外襟を折り返したとき、メッシュ地が2重メッシュ布と内外に重合するようになっている。2重メッシュ布は吸汗速乾性の繊維素材からなり、肌面に接触して汗を吸収し、吸収した汗を肌面に戻さず、かつ速やかに乾燥する。また、外襟にメッシュ地を設けることで、2重メッシュ布を介した体熱の放散および外気の取り入れがより効果的に行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第3117762号公報(段落0018〜0022)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の作業用上着によれば、首周りの発汗が2重メッシュ布に吸収され、かつ2重メッシュ布が速やかに乾燥するので、暑い時季の作業時や運動時における肌のべとつきが抑えられる。しかし、表布と裏布、表メッシュ布と裏メッシュ布、および裏メッシュ布に縫い付ける左右一対の布片などで襟部を構成するので、襟部構造が複雑になり、生地の裁断から縫製に至る工数が増加し、コストが嵩むのを避けられない。また、着用状態においては、2重メッシュ布の裏メッシュ布と、外襟に設けたメッシュ地のいずれかが襟部の後面に露出する。そのため、特許文献1の襟構造をワイシャツに適用した場合には、ネクタイを締めた状態においてメッシュ地が襟部の後面に露出するのを避けられない。従って、ネクタイの着用が要求される公式の場、商談の場、フォーマルな状況などにおいて、体裁が損われるのを避けられない。また、特許文献1の襟構造は通気性に優れているため、冬季に使用する場合に、冷気がメッシュ地および2重メッシュ布を介して襟部内に侵入して、着用者の首周りが冷えるのを避けられず、従って冬季の使用には向かない。
【0005】
本発明の目的は、襟構造を簡単にしてコストを削減でき、また、ネクタイの着用が要求される状況においても体裁を保持でき、さらに、寒い時季において保温効果を発揮して首周りの冷えを解消し、年間を通じて使用することが可能なシャツを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、シャツ本体1に設けた襟部2に、吸湿機能および放湿機能を有するメッシュ生地8を配置したシャツに関する。メッシュ生地8は、襟部2の表布6の内側に配置されて、メッシュ生地8の外面が表布6で覆われる。メッシュ生地8の湾曲方向の長さを、首周りの少なくとも後半周囲を覆う長さに設定する。メッシュ生地8を、疎水性機能を有する吸湿層15と、吸水性機能を有する放湿層16と、これら両層15・16を連結して両層15・16の間に空気層を形成する中間層17とで三層立体構造に構成して、吸湿層15が首肌に接触する状態で配置する。
【0007】
襟部2を、台襟3と、台襟3の上端に縫合されて外向きに折り返される外襟4とで構成する。台襟3を、表布6と、表布6の内部に配置される襟芯地7と、表布6の内面に配置されるメッシュ生地8とで構成する。外襟4と、メッシュ生地8の上縁と、表布6の上縁との三者を同時に縫着する。シャツ本体1の上縁と、メッシュ生地8の下縁と、表布6の下縁との三者を同時に縫着する。
【0008】
メッシュ生地8の上下幅を、メッシュ生地8の湾曲方向両端から中央部にわたって徐々に大きく設定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、吸湿機能および放湿機能を有するメッシュ生地8を、襟部2の表布6の内側に配置するので、襟部を裁断して切り欠き部を形成し、そこにメッシュ布を縫い付ける従来構成に比べて、襟部構造を簡単にすることができ、従って、製造時の裁断および縫製の工数を減らしてコストを削減できる。メッシュ生地8を、吸湿層15と放湿層16とその間の中間層17との三層立体構造に構成すると、メッシュ生地8を一度に取り付けることができるので、2枚のメッシュ布を個別に縫い付ける従来構成に比べて、製造時の裁断および縫製の工数を減らしてコストを削減できる。また、メッシュ生地8の外面を表布6で覆うと、メッシュ生地8が外面に露出するのを避けて、ネクタイの着用が要求される状況においても体裁を保持することができる。
【0010】
また本発明では、メッシュ生地8の中間層17に形成した空気層の断熱作用により、寒い時季に着用者の首周りを温かい状態に保持でき、しかも、冷たい外気が吸湿層15まで到達するのを防ぐことができる。このように、寒い時季にはメッシュ生地8が保温効果を発揮して、首周りの冷えを解消できる。一方、汗をかきやすい暑い時季には、首肌に接触する吸湿層15で汗を速やかに吸着して、首肌を乾いた状態に保持できる。吸湿層15に吸着された汗は、中間層17を介して放湿層16へ移行するので、吸湿層15は汗を吸着した後速やかに乾燥する。放湿層16へ移行した汗は、表布6を介して大気中へ蒸散する。以上のメカニズムにより、着用者の首肌と、これに接する吸湿層15とを乾いた状態に保持して、汗のべとつきなどの不快感を軽減できる。以上のように、本発明に係るシャツは、寒い時季には首周りの冷えを解消でき、暑い時季には汗のべとつきなどの不快感を軽減でき、従って、年間を通じて使用することが可能である。またメッシュ生地8は、首周りの少なくとも後半周囲を覆う長さに設定してあるので、首周りの広い範囲を保温し、あるいは汗を吸着できる。
【0011】
襟部2を台襟3と外襟4とで構成し、台襟3を表布6と襟芯地7とメッシュ生地8とで構成する。そして、外襟4と、メッシュ生地8の上縁と、表布6の上縁との三者を同時に縫着する。これによれば、製造時の縫着工数を減らしてコストを削減できる。また、シャツ本体1の上縁と、メッシュ生地8の下縁と、表布6の下縁との三者を同時に縫着することによっても、縫着工数を減らしてコストを削減できる。表布6の内面にメッシュ生地8を配置すると、メッシュ生地8と表布6の間に裏布を配置する場合に比べて台襟3の厚み寸法を小さくすることができるので、台襟3の外径が大きくなるのを防ぐことができる。
【0012】
メッシュ生地8の上下幅を湾曲方向両端から中央部にわたって徐々に大きく設定すると、中央部を上下広幅にして、寒い時季には首の後部中央を的確に保温でき、暑い時季には首の後部中央に生じた汗をよく吸着できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例に係るワイシャツの襟部の正面図である。
【図2】襟部を展開した状態で示す正面図である。
【図3】図1におけるA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施例) 図1ないし図3は、本発明をワイシャツに適用した実施例を示す。図1に示すようにワイシャツは、シャツ本体1と、シャツ本体1の上端に設けられた襟部2とを備えている。シャツ本体1は、左右の前身頃と、後身頃、左右の袖などで構成してあり、前身頃から後身頃にわたって形成した襟ぐりに襟部2が設けてある。襟部2は、シャツ本体1の上端に縫合された台襟3と、台襟3の上端に縫合されて外向きに折り返された外襟4とで構成される。
【0015】
図2および図3に示すように台襟3は、表布6と、表布6の内部に配置される襟芯地7と、吸湿機能および放湿機能を有するメッシュ生地8とで構成される。表布6はシャツ本体1と同様の布生地からなり、襟芯地7は表布6よりも薄手の布生地からなる。これら両者6・7は、メッシュ生地8とともに、シャツ本体1の上縁に縫合される。
【0016】
メッシュ生地8の外面は表布6で覆われ、メッシュ生地8の内面は着用者の首肌に対向する。メッシュ生地8の上下幅は、左右方向(湾曲方向)両端から中央部にわたって徐々に大きく設定してあり、中央部において上下幅(H)が最大になっている。
【0017】
図3に示すように、表布6の上下の縫着縁11は、襟芯地7の上下縁を挟むように内側へ折り込まれており、メッシュ生地8の上下の縫着縁12は外側へ折り込まれている。つまり、表布6の縫着縁11と、メッシュ生地8の縫着縁12とは、互いに対向する向きに折り込まれている。表布6とメッシュ生地8の上側の縫着縁11・12の間に、外襟4の一端縁を挟み込んだ状態で、これら三者11・12・4が同時に縫着されている。また、表布6とメッシュ生地8の下側の縫着縁11・12の間に、シャツ本体1の上縁を挟み込んだ状態で、これら三者11・12・1が同時に縫着されている。
【0018】
メッシュ生地8は、網織状に形成された疎水性機能を有する内面の吸湿層15と、編地状に形成された吸水性機能を有する外面の放湿層16と、これら両層15・16を連結する中間層17とで三層立体構造(ダブルラッセル構造)のメッシュ生地として構成してある。吸湿層15には、丸穴状の網目開口18が斜め格子状に形成されている。放湿層16にも開口が形成されるが、その大きさは吸湿層15の網目開口18に比べて格段に小さい。中間層17を形成する連結糸は極細繊維で形成してあって、連結糸これ自体の毛細管現象によって吸湿層15で吸着の汗を放湿層16へ移行させ、さらに吸湿層15と放湿層16との間に空気層を形成する。上記のように三層立体構造としたメッシュ生地8は、それ自体がクッション性を備えており、この実施例では、生地厚みが1.5〜2mmのメッシュ地を裁断してメッシュ生地8を形成した。
【0019】
上記のように構成したシャツを着用すると、首周りに汗をかいても、その汗はメッシュ生地8の内面の吸湿層15によって速やかに吸着される。吸湿層15に吸着された汗は、中間層17の毛細管現象によって放湿層16へ不可逆的に移行するので、吸湿層15は汗を吸着した後速やかに乾燥する。放湿層16へ移行した汗は、放湿層16の外面側の空気や、中間層17の空気層を構成する空気と接触して蒸発し、図3に矢印で示すように、襟芯地7および表布6を介して台襟3と外襟4の間の空間へ蒸散する。以上のメカニズムにより、首周りに汗をかいても、首肌とこれに接する吸湿層15とを乾いた状態に保持することができるので、汗のべとつきなどの不快感を大きく軽減できる。
【0020】
一方、寒い時季には、中間層17に形成した空気層の断熱作用により、着用者の首周りを温かい状態に保持でき、しかも、冷たい外気が吸湿層15まで到達するのを防ぐことができる。このように、寒い時季にはメッシュ生地8が保温効果を発揮して、首周りの冷えを解消できる。従って、本実施例に係るシャツは、暑い時季には汗のべとつきなどの不快感を軽減でき、寒い時季には首周りの冷えを解消でき、従って、年間を通じて使用することが可能である。
【0021】
台襟3に設けたシャツの上端のボタンを留めない場合は、着用者の首周りとメッシュ生地8との間に隙間が形成されるので、ボタンを留める場合に比べてメッシュ生地8における通気が活発になって、放湿層16における汗の蒸散が促される。一方、上端のボタンを留め、あるいはネクタイを着用した状態では、着用者の首周りにメッシュ生地8がフィットして肌面が保温され、さらに、メッシュ生地8における通気量が少なくなり、中間層17の断熱効果が高まる。上記のようにメッシュ生地8はそれ自体がクッション性を備えているので、メッシュ生地8は首周りに心地よくフィットする。
【0022】
以上のように、本実施例では、吸湿機能および放湿機能を有するメッシュ生地8を表布6の内側に縫着するので、襟部を裁断して切り欠き部を形成し、そこにメッシュ布を縫い付ける従来構成に比べて、襟部構造を簡単にすることができ、従って、製造時の裁断および縫製の工数を減らしてコストを削減できる。メッシュ生地8を、吸湿層15と放湿層16とその間の中間層17との三層立体構造に構成すると、一度の縫着でメッシュ生地8を取り付けることができるので、2枚のメッシュ布を個別に縫い付ける従来構成に比べて、製造時の裁断および縫製の工数を減らしてコストを削減できる。また、メッシュ生地8の外面を表布6で覆うと、メッシュ生地8が外面に露出するのを避けることができるので、ネクタイの着用が要求される状況においても体裁を保持できる。
【0023】
その他、メッシュ生地8は、縫着以外に接着などで表布6の内側に取り付けることができる。表布6とメッシュ生地8との間に裏布を配置することができる。メッシュ生地8は台襟3の湾曲方向の全長にわたって配置する必要は無い。またメッシュ生地8は、1枚の生地で構成する必要は無く、複数枚の生地を湾曲方向に並べてメッシュ生地8を構成してもよい。その場合には、湾曲方向に隣接するメッシュ生地8の縫着縁の間に小さな隙間を形成して通気隙間とすることができる。本発明は、襟を有するワイシャツ以外の上衣、例えばポロシャツやパジャマのシャツ、あるいはスタンドカラー(立ち襟)の上衣にも適用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 シャツ本体
2 襟部
3 台襟
4 外襟
6 表布
7 襟芯地
8 メッシュ生地
15 吸湿層
16 放湿層
17 中間層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャツ本体(1)に設けた襟部(2)に、吸湿機能および放湿機能を有するメッシュ生地(8)が配置してあるシャツであって、
メッシュ生地(8)は、襟部(2)の表布(6)の内側に配置されて、メッシュ生地(8)の外面が表布(6)で覆われており、
メッシュ生地(8)の湾曲方向の長さが、首周りの少なくとも後半周囲を覆う長さに設定されており、
メッシュ生地(8)は、疎水性機能を有する吸湿層(15)と、吸水性機能を有する放湿層(16)と、これら両層(15・16)を連結して両層(15・16)の間に空気層を形成する中間層(17)とで三層立体構造に構成されて、吸湿層(15)が首肌に接触する状態で配置されているシャツ。
【請求項2】
襟部(2)が、台襟(3)と、台襟(3)の上端に縫合されて外向きに折り返される外襟(4)とで構成されており、
台襟(3)が、表布(6)と、表布(6)の内部に配置される襟芯地(7)と、表布(6)の内面に配置されるメッシュ生地(8)とで構成されており、
外襟(4)と、メッシュ生地(8)の上縁と、表布(6)の上縁との三者が同時に縫着されており、
シャツ本体(1)の上縁と、メッシュ生地(8)の下縁と、表布(6)の下縁との三者が同時に縫着されている請求項1に記載のシャツ。
【請求項3】
メッシュ生地(8)の上下幅が、メッシュ生地(8)の湾曲方向両端から中央部にわたって徐々に大きく設定してある請求項1または2に記載のシャツ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−40416(P2013−40416A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177600(P2011−177600)
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【出願人】(500053986)
【Fターム(参考)】