説明

シャフトの構造

【課題】 強い強度を有するシャフトでありながら、シャフトのしなり、弾力、曲げ調子を使用目的に合わせて調整することができるシャフトを提供する。
【解決手段】 本発明のシャフトの構造は、繊維強化樹脂による筒状体(1)と、前記筒状体(1)の外側に複数本の繊維状の糸(2)を網状に編み込み、網状に編み込んだ複数本の繊維状の糸(2)の、網(3)の編み込み密度を筒状体(1)の長手方向の位置により適宜変化させることによりシャフトの弾力、しなり、曲げ調子をシャフトの長手方向の位置により変化させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴルフクラブや釣竿に使用されるシャフトの構造に関し、より詳しくは強い強度を有するシャフトでありながら、シャフトのしなり、弾力、曲げ調子を使用目的に合わせて調整することができるシャフトを提供することにある。
【背景技術】
【0002】
従来のシャフトの構造には、繊維強化樹脂から形成された管状の基層と、基層の長手方向の一部の範囲の外周面に形成されたクロス層とを備え、クロス層は、テープ状の繊維強化樹脂を基層の長手方向に対して左右両方向に傾斜するように螺旋状に巻回、左右両方向に傾斜したテープが相互に重なり合っているものがある。(例えば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−80956(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の特許文献1のように、シャフトの基層となる繊維強化樹脂の長手方向の一部の範囲の外周面にテープ状の繊維強化樹脂を長手方向に対して左右両方向に傾斜するように螺旋状に巻回し、左右両方向に傾斜したテープが相互に重なり合う構造では、シャフトの長手方向の一部の範囲にのみテープ状の繊維強化樹脂が巻かれているため、シャフト全体に強度を上げることができないといった課題を有する。
【0005】
又、前述の特許文献1の発明では、シャフトの長手方向の一部分の強度や弾力しか変化させることができず、シャフトの長手方向全体にわたって強度や弾力、しなり、曲げ調子といったものをシャフトの位置により自由に変化させることができないといった課題を有する。
【0006】
本発明はシャフトの長手方向全体にわたって強度や弾力、しなり、曲げ調子といったものを容易に変化させて使用目的に合ったシャフトの提供及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシャフトは、カーボン製等の繊維強化樹脂による筒状体1と、前記筒状体1の外側に複数本の繊維状の糸2を網状に編み込んだことを特徴とし、これによりシャフト全体の強度が強くなるのである。
【0008】
また、網状に編み込んだ複数本の繊維状の糸2の、網3の編み込み密度を筒状体1の長手方向の位置により適宜変化させたことを特徴とし、これによりシャフトの弾力、しなり、曲げ調子をシャフトの長手方向の位置により変化させることができる。
【0009】
さらに、筒状体1の外側に網状に編み込んだ繊維状の糸2の外側にグラスファイバー等のガラス繊維層4を有することを特徴とし、これにより筒状体1及び網状に編み込んだ繊維状の糸2を保護することができる。
【0010】
さらに、筒状体1の外側に網状に編み込んだ複数本の繊維状の糸2の色を2色以上に変化させたことを特徴とし、これにより網の色模様が表面に浮き出て美しい模様を形成することができる。
【0011】
さらに、筒状体1の外側に網状に編み込んだ繊維状の糸2の本数を偶数本としたことを特徴とし、奇数本に比較して網目を4辺が概等しい四辺形の形状の揃ったきれいな網目とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のシャフトによれば、繊維強化樹脂(カーボン製等)による筒状体1の長手方向全体にわたって前記筒状体1の外側に複数本の繊維状の糸2を網状に編み込んであるので、複数本の繊維状の糸2によりシャフトの長手方向全体の強度を上げることができるといった効果を有する。
【0013】
又、網状に編み込んだ複数本の繊維状の糸2の、網3の編み込み密度を筒状体1の長手方向の位置により適宜変化させたことにより、シャフトの長手方向全体にわたってその位置により強度や弾力、しなり具合、曲げ調子といったものを自由に変化させることができるのである。
【0014】
さらに、筒状体1の外側に網状に編み込んだ繊維状の糸2の外側に概透明なグラスファイバー等のガラス繊維層4で覆うことにより、筒状体1及び網状に編み込んだ繊維状の糸2を保護することができるのである。
【0015】
さらに、筒状体1の外側に網状に編み込んだ複数本の繊維状の糸2の色を2色以上に変化させることにより、網の色がシャフトの表面に浮き出てきれいな網目模様となり、美しいシャフトを得ることができるといった効果を有する。
【0016】
さらに、筒状体1の外側に網状に編み込んだ繊維状の糸2の本数を偶数本とすることにより、奇数本に比較して網目を4辺が概等しい四辺形の形状の揃ったきれいな網目とすることができるといった効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態としてゴルフクラブ用のシャフトを例に図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1はシャフトの構造を示す図である。
【0019】
図1において、繊維強化樹脂による筒状体1は通常カーボン樹脂と呼ばれる炭素繊維樹脂からなっており、この筒状体1の外側には炭素繊維やアラミド繊維、タングステン繊維、金属繊維等の高機能化学繊維による繊維状の糸2を複数本使用し、繊維状の糸2は筒状体1を締め付けるように網状に編み込まれている。
【0020】
網状に編み込まれた複数本の繊維状の糸2の編み込み密度は、筒状体1の長手方向の位置により適宜変化させており、図1においてA部は編み込み密度が濃く、B部は編み込み密度が薄く、C部は編み込み密度が濃くなるように編み込まれている。
【0021】
繊維状の糸2を編み込んだ筒状体1の外側にはグラスファイバーによるガラス繊維層4が設けられ、このガラス繊維層4は概透明であり、筒状体1及び網状に編み込んだ繊維状の糸2を保護すると共に、筒状体1及び繊維状の糸2の有する色あいを外側に透過させることができる。
【0022】
複数本の繊維状の糸2は全本数を一色の同じ色としても良いが、二色或いは三色又は全本数をそれぞれ異なる色とすることで、繊維状の糸2の色はガラス繊維層4を透過してシャフトの表面に浮き出て美しい網目の模様を形成することができる。
【0023】
筒状体1の外側に編み込んだ繊維状の糸2の編み込み本数を偶数本とすることにより、網目は4辺の長さが概等しい菱形や正方形といった四辺形になるので、形状の揃った美しい網目模様とすることができるのである。
【0024】
図2はシャフトの構造詳細図である。
【0025】
本発明のシャフトの構造は、芯棒10に筒状体1となるカーボンシート等の繊維強化樹脂シート11を巻き付け、繊維強化樹脂シート11の外側に炭素繊維やアラミド繊維、金属繊維といった複数本の繊維状の糸2に張力を与えながら網状に編み込み、その外側に概透明なグラスファイバーシート等のガラス繊維層4となるガラス繊維シート12を巻き付け、その外側に前記シート等を固定するポリプロピレン製等の固定用テープで繊維強化樹脂シート11やガラス繊維シート12を加圧するように巻き付けて繊維強化樹脂シート1及び繊維状の糸2、ガラス繊維シート12を芯棒10に固定し、加熱による熱処理を施して形状を固定した後に芯棒10を抜き取ってシャフトを形成することにより得られる。
【0026】
形成されたシャフトより固定用テープを剥がすと熱処理の影響で固定用テープを巻きつけた跡がガラス繊維シート12の表面に残るので、ガラス繊維シートの表面を薄く研磨することにより、固定用テープの跡が削り取られて概透明な美しいガラス繊維層4を得ることができるのである。
【0027】
さらにガラス繊維層4は概透明であるので表面処理を施さずに筒状体1の色や繊維状の糸2の色相を透過して出すことが可能であるが、ガラス繊維層4の表面を各種の塗装により仕上げることで強くて美しいシャフトを得ることもできるのである。
【0028】
図3は繊維状の糸の編み込み密度の説明図であり、図3(a)は編み込み密度の概要図でA部は編み込み密度が薄い部分であり、B部は編み込み密度が濃い部分である。
【0029】
図3(b)は図3(a)におけるA部の網形状拡大図であり、筒状体1の長手方向に対して網の形状は横長の菱形を形成しており、菱形の対角線の長さが菱形の頂点ac間よりbd間の方が短いとシャフトは曲げに対して強くなるのである。
【0030】
図3(c)は図3(a)におけるB部の網形状拡大図であり、筒状体1の長手方向に対して網の形状は縦長の菱形を形成しており、菱形の対角線の長さが菱形の頂点ac間よりbd間の方が長いとシャフトはつぶれに対して強くなるのである。
【0031】
図4は編み込み密度を変化させたシャフトの構造図であり、ゴルフクラブ用のシャフトの例である。
【0032】
図4において、筒状体1の長手方向に対して繊維状の糸2の編み込み密度は、A部とC部及びE部は編み込み密度が細かく、B部とD部は編み込み密度を荒く設定して編み込んである。
【0033】
図4で示すように編み込み密度を設定したゴルフクラブ用のシャフトを用いてスイングを行なえば、シャフトは概C部の位置で曲げることができ、この曲げる位置は編み込み密度が細かなC部の位置を筒状体1の長手方向に対して適宜変化させことにより曲げる位置を調節できると共に、編み込み密度を変えることにより曲がり具合を調整することができるのである。
【0034】
このように編み込み密度を細かくしたり荒くしたりと可変することによりゴルフクラブ用のシャフトの曲がる位置を調節できると共に、曲がり具合も調節できるため、本発明の構造によるシャフトを使用したゴルファーのスイングに合ったシャフトを提供することができるのである。
【0035】
以上、ゴルフクラブ用のシャフトを例に説明したが、この構造のシャフトは釣竿等のように強度が必要であると共にシャフトのしなりや弾力、曲げ調子を微妙に変化させたいような用途に用いられるシャフトに広く応用できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】シャフトの構造を示す図
【図2】シャフトの構造詳細図
【図3】繊維状の糸の編み込み密度の説明図 (a)編み込み密度の概要図 (b)図3(a)におけるA部の網形状拡大図 (c)図3(a)におけるB部の網形状拡大図
【図4】編み込み密度を変化させたシャフトの構造図
【符号の説明】
【0037】
1 筒状体
2 繊維状の糸
3 網
4 ガラス繊維層
10 芯棒
11 繊維強化樹脂シート
12 ガラス繊維シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化樹脂による筒状体1と、前記筒状体1の外側に複数本の繊維状の糸2を網状に編み込んだことを特徴とするシャフトの構造。
【請求項2】
網状に編み込んだ複数本の繊維状の糸2の、網3の編み込み密度を筒状体1の長手方向の位置により適宜変化させたことを特徴とする請求項1記載のシャフトの構造。
【請求項3】
筒状体1の外側に網状に編み込んだ繊維状の糸2の外側にガラス繊維層(4)を有することを特徴とする請求項1及び請求項2記載のシャフトの構造。
【請求項4】
筒状体1の外側に網状に編み込んだ複数本の繊維状の糸2の色を2色以上に変化させたことを特徴とする請求項1及び請求項2記載のシャフトの構造。
【請求項5】
筒状体1の外側に網状に編み込んだ繊維状の糸2の本数を偶数本としたことを特徴とする請求項1及び請求項2記載のシャフトの構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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