説明

シャワーヘッド

【課題】 噴射方向の俯き角度が調整可能であり、しかも調節範囲を大きく確保できるシャワーヘッドを提供する。
【解決手段】グリップ部1にアーム部5を設け、このアーム部に支持軸6を架設し、この支持軸に対し、散水板11を備えたヘッド部10を上記支持軸を中心として回動可能に取り付け、このヘッド部は散水板より放出されるシャワー水の噴射方向の俯き角が所定の角度α範囲で調節可能になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴射方向の俯き角を調節可能にしたシャワーヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、風呂場用シャワーヘッドは、浴場の壁面に取付けたフックに脱着可能に係止された状態で使用される。ヘッド部の散水板を前方に向けると、この散水板より噴射される温水シャワーは前方に散水される。
噴射(散水)方向を変えたい場合は、一旦シャワーヘッドをフックから外して水平方向の向きを調整し、再びフックに差し込めば、噴射方向を左右に変えることができる。
しかしこの場合、散水板の向きを左右方向に変化させることができるとしても俯き方向に変化させることはできない。このため、使用者は、体格やシャワーを浴びる位置により、自身が移動してシャワー水を浴びる位置に移動する必要がある。
このようなことから、従来、噴射方向を変更可能としたシャワーヘッドが、例えば実開平03−128441号公報などで提案されている。
しかしながら、上記公報に記載のシャワーヘッドは、構造が複雑で、俯き角度の調節範囲が小さく、使い勝手が良くないといった不具合がある。
【実用新案文献】
実開平03−128441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明の目的は、噴射方向の俯き角度が調整可能であり、しかも調節範囲を大きく確保できるシャワーヘッドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明では、グリップ部にアーム部を設け、このアーム部に支持軸を架設し、この支持軸に対し、一面に散水板を備えたヘッド部を該支持軸を中心として回動可能に取り付け、このヘッド部は散水板より放出されるシャワー水の噴射方向の俯き角が所定の角度範囲で調節可能になっていることである。
本発明の好ましい態様は、散水板が上記調節角度範囲を超えて前方に向かっていない位置まで回動された場合は、散水板から水が流出しないようにしたことである。
本発明の他の好ましい態様は、グリップ部から散水板に至る温水の供給経路が支持軸内を通るようにしたことである。
【発明の作用】
【0005】
本発明によれば、ヘッド部が、グリップ部に設けたアーム部に対し支持軸を中心として回動可能になっているのでヘッド部を回動することができ、かつヘッド部はシャワー水が前方に噴射されている状態で所定の角度範囲で噴射方向の俯き角を調節可能であるから、使用者の体格や姿勢、シャワー水を浴びる位置等に応じて噴射方向を調節することができる。この場合、ヘッド部は支持軸の周りに回動可能であるから、調整可能な角度範囲を大きく設定することができ、使用勝手が向上する。
また、散水板が前方に向かっていない場合は、散水孔から水が流出しないので、ヘッド部を回すだけで止水が可能であり、格別な止水スイッチが不要であるとともに、遠くにある給水栓に手を伸ばさなくても止水操作が簡単に行える。
グリップ部から散水板に至る温水の供給経路が支持軸内を通るようにしたので、供給通路を簡単に構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例】
【0006】
以下、本発明をハンド式シャワーヘッドに適用した一実施例について、図面にもとづき説明する。
図1はシャワーヘッドの側面図、図2はヘッド部の横断面図、図3はヘッド部の縦断面図である。
図において1は合成樹脂で形成されたシャワーヘッドのグリップ部であり、このグリップ部1は内部に通水路2を有する中空をなしている。グリップ部1の下端には、連結金具3を介してシャワーホース4が連結されるようになっている。したがって、このシャワーヘッドはシャワーホース4を通じて温水が供給される。なお、上記連結金具3は、浴場の壁面に取り付けた図示しないフックに脱着可能に止着されるようになっている。
【0007】
上記グリップ1の上端は二股状に形成されて一対のアーム部5を備えている。これらアーム部5内は、少なくとも一方が前記通水路2に連通しており、上記シャワーホース4から供給された温水が導入される。
これら一対のアーム部5間には、支持軸6が掛け渡されている。支持軸6は中空パイプからなり、両端が上記一対のアーム部5に貫挿されるとともにこれらアーム部5に対し気液密に固定されている。この中空支持軸6は、少なくとも一端が連通孔7を介してアーム部5の内部に連通しており、したがって支持軸6は前記通水路2に通じている。よって、前記ホース4を通じて送られてくる温水はアーム部5を経て中空支持軸6内に導かれるようになっている。
【0008】
上記中空支持軸6には、ヘッド部10が所定の角度だけ回動可能に取り付けられている。ヘッド部10は、本実施例においては一端面が開放された弾頭形をなしており、その開放端に、ステンレスまたは樹脂製の散水板11が取り付けられている。この散水板11には、多数の散水孔12が開口されている。
散水板11はヘッド部10に対し、押えリング13によって取り外し可能に取り付けられている。これら押えリング13はヘッド部10に対しねじ込み式に取着されている。なお、14はシール用パッキングである。
上記ヘッド部10内は噴射室15となっており、ここに流入してきた温水が上記散水板11の散水孔12より外に向かってシャワー水として噴射される。このヘッド部10には噴射室15を横断して挿入管16が設けられている。挿入管16は、ヘッド部10と一体又は一体的に形成されており、上記支持軸6が貫通されている。これにより、ヘッド部10は支持軸6を中心として回動可能になっている。なお、挿入管16と支持軸6は、シール材、たとえばOリング17,17により気液密が保たれている。このOリング17,17はヘッド部10が支持軸6の周りで自由に回転するのを阻止する抵抗部材となっており、ヘッド部10に所定の力以上の力を加えてないとヘッド部10が回動しないようになっている。
上記中空支持軸6には、その周壁の一箇所に供給孔18が形成されており、この支持軸6を摺動する挿入管16の周壁には弁孔19が形成されている。上記ヘッド部10を回すと挿入管16も一体に回動し、弁孔19が供給孔18と対向した場合に弁孔19が開口される。よって、この状態では、グリップ部1内の通水路2を介して支持軸6内に送られてきた温水がこれら供給孔18及び弁孔19を通じて噴射室15に送りこまれ、この噴射室15から散水板11を経て外に噴射される。
【0009】
上記供給孔18又は弁孔19のいずれか一方は、他方に比べて周方向に向かって大きく開口している。このため、ヘッド部10を角度αの範囲で回動移動させても、この範囲α内であれば供給孔18と弁孔19は連通し、よってこの範囲α内であればヘッド部10をどの位置に回してもシャワー水が放出される。
上記角度αは、本例の場合、水平に対して10度下向き方向から、垂直に対して5度上向き方向に亘る範囲に囲まれた領域であり、実質的に調整可能な俯仰角αは、75度となっている。したがって、散水板11の向き、すなわち散水板11の中心を通る中心線が上記角度αの範囲内であれば、シャワー水が放出され、かつその噴射方向を自由に調節することができる。
上記角度αの設定は、供給孔18と弁孔19との連通範囲を設定することで決めることができる。
なお、ヘッド部10を支持軸6の周りを回す場合、Oリング17,17の弾性摩擦抵抗がヘッド部10の回転を阻止する抵抗部材となっているので、ヘッド部10に所定以上の力を加えないとヘッド部10は回転しない。そして、所望の位置でヘッド部10から手を離すと、上記摩擦抵抗でヘッド部10の回動が防止され、例えばシャワー水の噴射による反動でヘッド部10が回転するなどの不具合が防止される。
【0010】
また、ヘッド部10を時計回り又は反時計回りに回して散水板11の向きが上記調節角度αの領域より外れた位置まで回動すると、供給孔18と弁孔19の連通が断たれ、弁孔19が閉じられるのでシャワー水の噴射が停止される。すなわち、ヘッド部10を回して噴射面が角度αの領域を過ぎると、シャワー水の噴射が停止される。よって、シャワーを使用中にシャワーを止めたいときはヘッド部10を角度α領域より外れた位置まで回せばよく、この回動は手元スイッチとして機能し、手を延ばして給水栓を閉めるなどの必要がなくなる。
【0011】
このような構成に係る上記実施例によれば、シャワーホース4から供給される温水は、グリップ部1内の通水路2を通り、連通孔7より中空の支持軸6内に送られる。ヘッド部10は支持軸6の周りに回転可能であるから、ヘッド部10を回して供給孔18と弁孔19が連通する位置に回すと、上記温水はこれら供給孔18と弁孔19を経て噴射室15に送りこまれる。よって、この温水は噴射室15から散水板11の各散水孔12を通過するときにこれら散水孔12で分流され、シャワー水となって外に噴射される。
そして、ヘッド部10を回して散水板11の向きが角度αの範囲であれば、上記供給孔18と弁孔19が連通しているので、どこの位置であってもシャワー水の噴射がなされ、よってこの角度α内であれば噴射方向の俯き角を調整することができる。このため、体格や洗う姿勢に応じて噴射方向を調節することができる。
この場合、本例ではヘッド部10が、支持軸6の周りを回動可能になっているので、角度αを大きく設定することができ、俯き角の調整範囲が大きくなり、使い勝手が向上する。
また、ヘッド部10は、Oリング17,17の摩擦抵抗で回転を阻止されるので、どこの位置でも回動が停止可能であり、俯き角を無段階で調節することができる。よって、噴射方向の選択の自由度が大きい。
なお、この俯き角は、所定の回動角度ピッチをもって段階的に調節するようにしてもよい。
さらに、ヘッド部10を上記角度αの領域を超えて時計回り又は反時計回りの回動すると、シャワー水の放出が停止される。よって、ヘッド部10を回すだけの簡単な操作で噴射を停止することができ、給水栓に手を延ばして水栓を止めることなく、手元で散水(噴射)を止めることができる。
【0012】
ヘッド部10は支持軸6に回動可能に軸支され、この支持軸6はグリップ部1の先端に設けた一対のアーム部5間に架設されているので、ヘッド部10は機械的支持が堅固になされる。
そして、シャワーホース4より供給される温水は、グリップ部1内の通水路2より連通孔7を経て中空の支持軸6内に送られ、供給孔18および弁孔19より噴射室15に送られるので、温水の流通経路が簡素化し、シール構造も簡単になる。
【0013】
なお、ヘッド部10は支持軸6に対し、360度の範囲で自由に回転してもよいが、少なくとも上記調節可能な角度αと停止領域の範囲を回動可能であればよく、実施例の場合75度プラス20度=95度の範囲で回動可能であればよい。
また、支持軸6は一対のアーム部5,5間に架設され、この支持軸に対してヘッド部10を回動自在に取付けたが、支持軸とヘッド部を一体的に構成し、支持軸をアーム部に対して回動可能に取付けるようにしてもよい。この場合、連通孔7を利用して通水経路の開閉を構成することもできる。
そして本発明は、浴槽用のシャワーヘッドに限らず、洗面化粧台に設置されるシャワーヘッドに適用しても有効である。
【発明の効果】
【0014】
以上説明した通り本発明によれば、グリップ部に設けたアーム部に支持軸を掛け渡し、この支持軸に対してヘッド部を回動自在に取り付けて、このヘッド部を回すことで俯き角を調節可能にしたので、使用者の体格や姿勢、シャワー水を浴びる位置等に応じて噴射方向を調節することができる。この場合、ヘッド部は支持軸の周りに回動可能であるから、調整可能な角度範囲を大きく設定することができ、使用勝手が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】 本発明の一実施例を示し、シャワーヘッドの側面図
【図2】 ヘッド部の横断面図
【図3】 ヘッド部の縦断面図
【符号の説明】
【0016】
1…グリップ部
2…通水路
5…アーム部
6…支持軸
7…連通孔
10…ヘッド部
11…散水板
12…散水孔
15…噴射室
18…供給孔
19…弁孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリップ部にアーム部を設け、このアーム部に支持軸を架設し、この支持軸に対し、一面に散水板を備えたヘッド部を該支持軸を中心として回動可能に取り付け、このヘッド部は散水板より放出されるシャワー水の噴射方向の俯き角が所定の角度範囲で調節可能になっていることを特徴とするシャワーヘッド。
【請求項2】
散水板が上記調節角度範囲を超えた位置まで回動された場合は、シャワー水の放出が停止されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のシャワーヘッド。
【請求項3】
グリップ部から散水板に至る温水の供給経路は支持軸内を通るようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシャワーヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−130615(P2007−130615A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351181(P2005−351181)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(592104461)
【Fターム(参考)】