説明

シャワー噴霧ノズル

【課題】簡単な機構で噴霧面積を無段階に調整できる噴霧ノズルを提供する。
【解決手段】シャワー噴霧ノズルにおいて、横長の領域内に形成した複数の吐水孔12を備えたシャワー噴霧壁11の内面側に、噴霧面積調節部材20を圧接保持する。噴霧面積調節部材20は、吐水孔12群のすべてとオーバーラップしうる面積的拡がりをもった長孔を備える。噴霧面積調節部材20に連結された操作部材40を操作して、噴霧面積調節部材20をシャワー噴霧壁11に対して相対回転させると、吐水孔12群と長孔とのオーバーラップ面積が変化し、これにより、噴霧面積を無段階で調整できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除草剤の散布に特に適したシャワー噴霧ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば野菜畑を例にとると、液体の除草剤を散布するにおいて、噴霧ノズルを利用することが多い。すなわち、ポンプを備えたタンクに除草剤を入れて、これに噴霧ノズルを装着する。作業者は、ポンプを背負って、噴霧ノズルを両手で操作しながら、散布作業を行う。
【0003】
除草剤は、野菜の周囲に生えた雑草を除去することを目的としており、栽培している野菜自体には触れないことが好ましい。このように、除草剤は、野菜自体には当たらないようにしつつ、その周囲にある雑草に向けて噴霧すべきであるため、噴霧作業は簡単ではない。
【0004】
ここで、野菜と野菜の距離、あるいは野菜とその周辺に生えた雑草との距離は、一定ではないので、噴霧ノズルからの噴霧面積(噴霧幅)を必要に応じて変化させることができれば好都合である。
【0005】
一方、浴室等で使用されるシャワーヘッドに関しては、吐水面積を調整可能なものが幾つか特許出願されている。
【0006】
特許文献1、2では、シャワーの吐出面積が変更できるものの、2段階あるいは3段階と固定的な調整ができるに止まり、無段階の調整はできない。
特許文献3のシャワーヘッドでは、リング状の操作部材を回転操作することで、吐水面積を無段階に調整できる。しかし、調整のために、カメラのシャッター機構のような多数の羽根部材を利用しているので、機構が複雑となっている。
【0007】
【特許文献1】特開平11-583号公報
【特許文献2】特開2000-37641号公報
【特許文献3】特開平11-33440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みて創案されたものであって、簡単な機構で噴霧面積を無段階に調整できる噴霧ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明により、以下の特徴を備えたシャワー噴霧ノズルが提供される。
本発明のシャワー噴霧ノズルは、「横長の領域内に配置された複数の吐水孔群を備えたシャワー噴霧壁」と「長孔を備え、シャワー噴霧壁の内面に圧接された噴霧面積調節部材」と「噴霧面積調節部材に連結されていて、当該噴霧面積調節部材のシャワー噴霧壁に対する相対角度位置を変更可能な操作部材」とを備える。
操作部材を操作して、噴霧面積調節部材をシャワー噴霧壁に対して相対回転させて、上記複数の吐水孔群と長孔とのオーバーラップ面積を代えることで、噴霧面積(噴霧幅)を無段階で調整することができる。
【発明の効果】
【0010】
上記構成を備えた本発明のシャワー噴霧ノズルにおいては、吐水孔を備えたシャワー噴霧壁に対する噴霧面積調節部材の相対角度位置を調節するだけで、噴霧面積を無段階に調節することができる。カメラのシャッター機構を構成するが如き多数の羽根部材を用いた複雑な構成ではなく、シンプルな機構で無段階調整を実現できる。
【0011】
また、本発明のシャワー噴霧ノズルでは、「横長の領域内に配置された複数の吐水孔群」からの噴霧幅を変更できるので、除草剤の散布に特に好適である。すなわち、野菜畑で使用する場合を考えると、野菜同士の間隔、あるいは野菜とその周囲の雑草との間隔に応じて噴霧幅を変えることで、野菜自体には除草剤が触れないようにしつつ、その周囲にある雑草だけに除草剤をかけるのに適している。
ただし、本発明のシャワー噴霧ノズルは、除草剤散布の場に限らず、あらゆる用途に適用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施形態を、添付の図面を参照して、以下に詳細に説明する。
【0013】
≪全体構成≫
図1は、本発明のシャワー噴霧ノズル10を装着した除草剤タンク60の全体を示す斜視図である。
タンク60の側面から引き出されたホース61の先端に操作部70が取り付けられており、さらに操作部70から延びるパイプ71の先端に、シャワー噴霧ノズル10が取り付けられる。
タンク60は吐出ポンプおよび電源(いずれも図示せず)を内蔵しており、操作部70設けたスイッチをオンすると、タンク60内の除草剤がシャワー噴霧ノズル10から噴霧される。作業者は、タンク60を背負い、操作部70を持って、噴霧作業を行う。
【0014】
図2は、シャワー噴霧ノズル10の前方斜視図である。連結分岐管16が図1中のパイプ71に連結される。すなわち、タンク60内の除草剤は、ホース61およびパイプ71を通り、連結分岐管16を経て、シャワー噴霧ノズル10内に入り、吐水孔12から噴霧される。
詳しくは後述するが、ダイヤル式の操作部材40を操作することによって、噴霧面積を無段階に調節することができる。
【0015】
≪シャワー噴霧ノズルの構造≫
図3は、シャワー噴霧ノズル10の構造を示す断面図である。漏斗状のノズル本体15の先端開口部を、半球ドーム状のシャワー噴霧壁11で塞ぎ、これをキャップ18で固定している。
ノズル本体15の側面には、連結分岐管16が分岐形成されている。
【0016】
シャワー噴霧壁11には、多数の吐水孔12が形成されていて、ここから除草剤が噴霧される。図3に示したように、シャワー噴霧壁11の内面側にはゴム製の噴霧面積調節部材20が配置されていて、この噴霧面積調節部材20は、コイルスプリング35によりシャワー噴霧壁11の内面に圧接されている。
噴霧面積調節部材20は、図6の斜視図に示したように、上面21が湾曲した背の低い円柱体であって、当該上面21を切り欠くようにして長孔22が形成されている。噴霧面積調節部材20の上面21は、半球ドーム状のシャワー噴霧壁11の内面にフィットする曲率とされている。
長孔22の中央に存在する円形の開口23は、噴霧面積調節部材20の底面にまで貫通していて、連結分岐管16から吐水孔12に至る流路を確保している。
【0017】
図3に示したように、噴霧面積調節部材20の底面側には、連結ロッド30が固定されている。連結ロッド30は、漏斗状のノズル本体15内を貫通して延在し、その後端部には、ダイヤル式操作部材40が固定されている。
すなわち、操作部材40を回転させると、噴霧面積調節部材20は、シャワー噴霧壁11の内面への圧接を維持したまま回転する。
なお、図5に最もよく示される通り、連結ロッド30は、少なくともその先端が十字状とされていて、連結分岐管16から、噴霧面積調節部材20の開口23を経て、吐水孔12に至る流路を確保している。
【0018】
≪噴霧面積(幅)を無段階で調整する原理≫
図2に示したように、吐水孔12は、シャワー噴霧壁11上に一点鎖線で示した長方形領域(A)内に形成されている。図示の例では、多数の吐水孔12の群が2列の長方形を形成しているが、具体的な配列は図示のものに限られない。例えば、吐水孔12の群が全体として細長い楕円形状に形成されている場合等、全体として横長の領域内に収まっていればよい。
一方、噴霧面積調節部材20は長孔22を備えているが、この長孔22は、吐水孔12の全てをカバーしうる面積範囲で延在している。
そして、噴霧面積調節部材20をシャワー噴霧壁11に対して相対回転させて、横長領域(A)内に存在する吐水孔12群と長孔22とのオーバーラップ面積を変更し、これにより、噴霧面積(幅)を無段階で調整することができる。
【0019】
≪最大開度→中間開度:図3、図4≫
図3は、最大開度にある状態を示している。すなわち、噴霧面積調節部材20の長孔22の向きと、横長領域(A)の長手方向とが一致していて、全ての吐水孔12が長孔22を介してノズル内空間と連通している。したがって、横長に点在する吐水孔12群の全てを利用して、最大の噴霧面積が達成される。
図3の状態から、ダイヤル式操作部材40を矢印B方向へ回転させると、図4の状態となる(中間開度)。このとき、横長領域(A)の長手方向に対して、長孔22の向きは一定角度をもって交差するので、吐水孔12群のうち、両端付近に存在する吐水孔は、噴霧面積調節部材20の湾曲面21で塞がれることとなる。この結果、噴霧面積(噴霧幅)が小さくなる。
【0020】
≪中間開度→最小開度:図4、図5≫
図4は、上述の通り中間開度にある状態を示している。ここからさらに、ダイヤル式操作部材40を矢印B方向へ回転させると、図5の最小開度状態となる。すなわち、図5の状態では、横長領域(A)の長手方向に対して、長孔22の向きは直交し、吐水孔12群のうち、中央付近に存在する吐水孔のみがノズル内空間と連通することとなり、噴霧面積(噴霧幅)は最小となる。
ここから、さらに矢印B方向、あるいはその逆方向にダイヤル式操作部材40を回転させると、今度は逆に、噴霧面積(噴霧幅)を大きくしていくことができる。
【0021】
≪噴霧幅を変更できることによるメリット≫
以上説明した通り、本願発明においては、「横長領域(A)内に配置した吐水孔12群」と「長孔22を備える噴霧面積調節部材20」を利用し、両者を相対回転させることでそのオーバーラップ面積を変更し、これにより、噴霧幅を変更(調整)している。
このように、噴霧幅を調整できると、野菜畑において、野菜同士の間隔や、野菜とその周辺の雑草との間隔に応じて、野菜自体には除草剤がかからなように噴霧作業をするのに極めて好適である。
【0022】
≪他の実施形態≫
本発明のシャワー噴霧ノズルの具体的な形態は、図示のものに限定されない。例えば、シャワー噴霧壁11は、ドーム状でなくフラットな平坦形状としてもよい。その場合は、噴霧面積調節部材20の形態も上面が平坦なものに変更すればよい。
また、噴霧面積調節部材20の材質についても、ゴム製品であることが好ましいが、吐水孔12を良好に塞いだり閉じたりできるものであれば、適宜の材質を採用することが可能である。
噴霧面積調節部材20をシャワー噴霧壁11の内面側に圧接させる機構についても、コイルスプリング35に限らず、適宜の構成を採用できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のシャワー噴霧ノズルを取り付けた除草剤タンクの全体を示す斜視図。
【図2】本発明の一実施形態に係るシャワー噴霧ノズルを示す前方斜視図。
【図3】図2のシャワー噴霧ノズルを最大開度で示す分解図。
【図4】図2のシャワー噴霧ノズルを中間開度で示す分解図。
【図5】図2のシャワー噴霧ノズルを最小開度で示す分解図。
【図6】図2のシャワー噴霧ノズルに使用されている噴霧面積調節部材を示す斜視図。
【符号の説明】
【0024】
10 シャワー噴霧ノズル
11 シャワー噴霧壁
12 吐水孔
15 ノズル本体
16 連結分岐管
18 キャップ
20 噴霧面積調節部材
21 湾曲面
22 長孔
23 開口
30 連結ロッド
31 十字状先端部
35 コイルスプリング
40 ダイヤル式操作部材
60 除草剤タンク
61 ホース
70 操作部
71 パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横長の領域内(A)に配置された複数の吐水孔(12)群を備えたシャワー噴霧壁(11)と、
長孔(22)を備え、シャワー噴霧壁(11)の内面に圧接された噴霧面積調節部材(20)と、
噴霧面積調節部材(20)に連結されていて、当該噴霧面積調節部材(20)のシャワー噴霧壁(11)に対する相対角度位置を変更可能な操作部材(40)と、を備え、
操作部材(40)を操作して、噴霧面積調節部材(20)をシャワー噴霧壁(11)に対して相対回転させて、上記複数の吐水孔(12)群と長孔(22)とのオーバーラップ面積を代えることで噴霧面積を無段階で調整する、シャワー噴霧ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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