説明

シャワー装置

【課題】シャワーヘッド自体の重量やシャワーヘッドに加わる外力による給水接続管や給水配管の損傷あるいは給水接続管と給水配管とのネジ接合部の緩みを防止する。
【解決手段】シャワー装置10は、壁面Wに埋設された給水配管11に基端部12bが接続された給水接続管12と、給水接続管12の先端部12aに接続されたシャワーヘッド13と、を備え、給水接続管12の基端部12bにある雄ネジ部を給水配管11の開口部11aにある雌ネジ部に螺着し、給水接続管12を壁面Wに対して略垂直に固定されている。給水接続管12の基端部12bが挿入可能な管状部14pとその基端側に設けられたフランジ部14fとを有する取付座14を、給水接続管12の基端部12bを管状部14pに挿入し、フランジ部14fを壁面Wに固定し、取付座14の管状部14pと給水接続管12の基端部12bとの間隙にリング状補強部材を圧入している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室あるいはシャワー室などの壁面に設置される固定式のシャワー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室などの壁面に設置される固定式のシャワー装置においては、湯水を吐出するシャワーヘッドを壁面に設けられた給水配管へ接続する構造として、従来、シャワーヘッドへの湯水供給部材である給水接続管の基端部に雄ネジ部を形成し、この雄ネジ部を、給水配管の開口部に設けられた継手内に形成された雌ねじ部へ螺合させる構造が採用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】実開昭63−32660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、シャワー装置は、意匠性の向上や使用感(シャワーの浴び心地)を向上させることを目的として、大型化した金属製のシャワーヘッドを備えた固定式のシャワー装置が採用されている。このように、シャワーヘッドが大型化されると、シャワーヘッド自体の重量が給水接続管に負荷されるようになる。また、シャワーヘッドを引っ張ったり、傾けたりする、といった使われ方をすることにより、シャワーヘッドを伝達して過度の荷重や回転力が給水接続管に負荷されることがある。このため、給水接続管と給水配管とのネジ接続部に応力が集中して、給水接続管が損傷したり、ネジ接合部分が緩んだりすることがある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、シャワーヘッド自体の重量やシャワーヘッドに加わる外力による給水接続管や給水配管の損傷あるいは給水接続管と給水配管とのネジ接合部の緩みを防止することのできるシャワー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシャワー装置は、壁面に埋設された給水配管に、前記壁面に対して略垂直をなすように基端部が接続された給水接続管と、前記給水接続管の先端部に接続されたシャワーヘッドと、を備えたシャワー装置であって、
前記給水接続管の基端部が挿入可能な管状部とその基端側に設けられたフランジ部とを有する取付座を、前記給水接続管の基端部を前記管状部に挿入するとともに前記フランジ部を壁面に固定した状態で配置し、
前記取付座の管状部と前記給水接続管の基端部との間隙に、当該間隙を閉塞する補強部材を介在させたことを特徴とする。
【0007】
このような構成とすれば、給水接続管の基端部と壁面との間に取付座が介在した構造となるため、給水接続管に加わる過度な荷重は、給水接続管の基端部から補強部材を経由して取付座の管状部に伝達され、取付座のフランジ部から壁面に分散される。このため、給水接続管と給水配管との接続部分であるネジ部への応力集中を回避することができ、給水接続管や給水配管の損傷を防止することができる。
【0008】
ここで、前記補強部材として、リング状補強部材を前記取付座の管状部の先端開口部から前記間隙に圧入すれば、簡素な形状で、給水接続管に容易に取り付けができ、シャワーヘッドの施工を容易にすることができる。
【0009】
この場合、前記リング状補強部材に、その軸方向の片端部から他端部に向かって肉厚が連続的に増大した雄テーパ部を設け、前記取付座の管状部の先端開口部寄りの内周に前記先端開口部に向かって連続的に拡径した雌テーパ部を設け、前記リング状補強部材の雄テーパ部を前記取付座の雌テーパ部に当接させた状態で圧入することが望ましい。このような構成とすれば、リング状補強部材の雄テーパ部を、給水接続管の基端部と、取付座の管状部の雌テーパ部との間隙へ圧入するだけで、雄雌テーパ部同士の楔作用により、リング状補強部材は間隙内に強固に保持されるため、確実な応力分散作用を得ることができる。
【0010】
一方、前記取付座の管状部に挿入された前記給水接続管の基端部に対し、前記取付座の管状部を貫通して圧接される止めネジを設けることができる。このような構成とすれば、シャワーヘッドを首振りさせようとする外力により給水接続管にその軸心周りの回転力が加わった場合における当該給水接続管の回転を阻止することができる。このため、勘違いなどによってシャワーヘッドに首振り方向の力が加えられたときの、シャワーヘッドの傾きや、接続管と給水配管との接続部分であるネジ部の緩みを防止することができる。
【0011】
この場合、前記給水接続管の基端部の外周に、前記止めネジの先端部が当接する平面部または凹部を設けることが望ましい。このような構成とすれば、止めネジの先端部が、取付座の管状部内に位置する給水接続管の基端部の平面部または凹部に当接することにより、給水接続管の外周は止めネジの先端部を滑動し難くなるため、給水接続管の回転防止機能をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、シャワーヘッド自体の重量やシャワーヘッドに加わる外力による給水接続管や給水配管の損傷あるいは給水接続管と給水配管とのネジ接合部の緩みを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の実施の形態であるシャワー装置が壁面に設置された状態を示す斜視図、図2は図1に示すシャワー装置の拡大斜視図、図3は図2に示すシャワー装置の平面図、図4は図2に示すシャワー装置の側面図、図5は図3におけるA−A線断面図、図6は図5の一部拡大図、図7は図4におけるB−B線断面図、図8は図4におけるC−C線断面図、図9は図8の一部拡大図である。また、図10は図2に示すシャワー装置を構成する給水接続管の斜視図、図11は図2に示すシャワー装置を構成するリング状補強部材の斜視図である。
【0014】
図1〜図7に示すように、本実施形態のシャワー装置10は、湯水を供給するため壁面Wに埋設された給水配管11の開口部11aに基端部12bが接続されたL字形状の給水接続管12(図10参照)と、給水配管11から給水接続管12を経由して供給される湯水を吐出するため給水接続管12の先端部12aに接続されたシャワーヘッド13と、を備えている。給水接続管12は、その基端部12bに形成された雄ネジ部12mを、給水配管11の開口部11aの内周面に形成された雌ネジ部11fに螺着することによって壁面Wに対して略垂直をなすように固定されている。
【0015】
給水接続管12の基端部12bと給水配管11の開口部11aとの接続部分およびその周囲の壁面Wを覆うように取付座14が取り付けられている。取付座14は、給水接続管12の基端部12bが挿入可能な管状部14pと、その基端側に設けられた円形のフランジ部14fとを有する。取付座14は、給水接続管12の基端部12bを管状部14pに挿入するとともに、複数のボルトN1を用いてフランジ部14fを壁面Wに固定した状態で配置されている。そして、取付座14の管状部14pと、給水接続管12の基端部12bとの間隙Sに、当該間隙Sを閉塞するリング状補強部材15(図11参照)を圧入させている。
【0016】
取付座14の管状部14pに挿入された給水接続管12の基端部12bは、取付座14の管状部14pを貫通して螺着された複数の止めネジ18によって圧接されている。図7,図9および図10に示すように、給水接続管12の基端部12bの外周には、180度間隔で配置された複数の止めネジ18の先端部がそれぞれ当接する平面部12pが同じく180度間隔で設けられている。
【0017】
また、取付座14の表面および外周面を覆うように略ドーナツ形状の化粧カバー16が装着され、取付座14の管状部14pが化粧カバー16の中央にある貫通孔16hから突出する。そして、取付座14の管状部14pの外周および先端部を覆うように略円筒状の化粧キャップ17が装着されている。このとき、化粧カバー16は、取付座14に設けられた溝部14dに収まるように配置されたゴム製のOリング19を圧縮させることによって取付座14に固定されている。そして、化粧キャップ17は、その基端部17bを、化粧カバー16の貫通孔16hに嵌入し、その先端部内周に形成された雌ネジ部17fを、取付座14の管状部14pの先端部外周に形成された雄ネジ部14mに螺合させることによって取付座14に固定されている。また、化粧キャップ17の先端部には、その軸心に向かってリブ17aが突設されている。
【0018】
取付座14の管状部14pの雄ネジ部14mに、化粧キャップ17の雌ネジ部17fを螺合させて締め込んでいくと、化粧キャップ17全体が取付座14のフランジ部14fに向かって進む。このとき、リング状補強部材15は、化粧キャップ17全体が取付座14のフランジ部14fに向かって進む際にリブ17aに当接し、給水接続管12の基端部12bとの間隙Sに圧入される。
【0019】
図11に示すように、リング状補強部材15は、横断面が円形をした短管部材の一部に切欠部15aを設けた形状であり、その軸方向Xの片端部から他端部に向かって肉厚が連続的に増大した雄テーパ部15mが設けられている。一方、図6,図9に示すように、取付座14の管状部14pの先端開口部14s寄りの内周には、先端開口部14sに向かって連続的に拡径した雌テーパ部14gが設けられている。そして、リング状補強部材15は、その雄テーパ部15mを、取付座14の雌テーパ部14gに当接させた状態で圧入されている。
【0020】
次に、図12,図13に基づいて、図2に示すシャワー装置10を構成する止めネジ18および化粧キャップ17の組立手順について説明する。図12は図2に示すシャワー装置の一部分解斜視図、図13は図12の一部拡大図である。
【0021】
図12,図13に示すように、給水接続管12、取付座14を取り付け、化粧カバー16を装着した後、取付座14の管状部14pの外周に180度間隔で開設された複数のネジ孔14hにそれぞれ止めネジ18を螺合させて締め付けると、前述した図9に示すように、止めネジ18の先端が、給水接続管12の基端部12bの外周にある平面部12pに当接した状態で螺着される。この後、取付座14の管状部14pの先端開口部14sと給水接続管12との間隙S(図6参照)に、リング状補強部材15を、その雄テーパ部15m(図11参照)を壁面W側(図1参照)に向けて挿入する。そして、化粧キャップ17の基端部17bを、化粧カバー16の貫通孔16hに差し込み、化粧キャップ17内周の雌ネジ部17fを、取付座14の管状部14pの雄ネジ部14mに螺合させて締め付けると、組み立てが完了する。なお、化粧キャップ17の外周に設けられた略六角柱状の工具係止部17tにスパナなどを係合させて締め付け作業を行うことができる。
【0022】
化粧キャップ17を締め付けていくと、化粧キャップ17全体が取付座14のフランジ部14f(図9参照)に向かって進んでいくが、このとき、前述したように、化粧キャップ17の先端にあるリブ17aが、給水接続管12の基端部12bとの間隙Sにリング状補強部材15を圧入する作用を生じるため、リング状補強部材15を間隙S内に強固に固定することができる。
【0023】
本実施形態のシャワー装置10は、図6、図9に示したように、給水接続管12の基端部12bと壁面Wとの間に取付座14が介在した構造が形成されているため、給水接続管12に加わる過度な荷重は、給水接続管12の基端部12bからリング状補強部材15を経由して取付座14の管状部14pに伝達され、取付座14のフランジ部14fから壁面Wに分散される。このため、給水接続管12と給水配管11との接続部分である雄ネジ部12mおよび雌ネジ部11fへの応力集中を回避することができる。これにより、給水接続管12や給水配管11の損傷を防止することができる。
【0024】
また、図6に示すように、リング状補強部材15を取付座14の管状部14pの先端開口部14sから間隙Sに圧入しているため、給水接続管12に加えられた荷重は、その基端部12bからリング状補強部材15を介して取付座14の管状部14pへ分散して伝達される。このため、給水接続管12や給水配管11の損傷を防止する上で有効である。
【0025】
また、図11に示すように、リング状補強部材15には雄テーパ部15mを設け、図6に示すように、取付座14の管状部14pの先端開口部14s寄りの内周には雌テーパ部14gを設け、リング状補強部材15の雄テーパ部15mを取付座14の雌テーパ部14gに当接させた状態で圧入している。従って、リング状補強部材15の雄テーパ部15mを、給水接続管12の基端部12bと、取付座14の管状部14pの雌テーパ部14gとの間隙S(図6参照)へ圧入すれば、雄テーパ部15mと雌テーパ部14gとの楔作用によりリング状補強部材15は間隙S内に強固に保持され、確実な応力分散作用を得ることができる。
【0026】
一方、図7,図9に示すように、取付座14の管状部14pに挿入された給水接続管12の基端部12bに対し、取付座14の管状部14pを貫通して圧接される複数の止めネジ18を設けている。このため、シャワーヘッド13(図1参照)を首振りさせようとする外力により給水接続管12にその軸心周りの回転力が加わった場合における当該給水接続管12の回転を阻止することができる。従って、使用者の勘違いなどによってシャワーヘッド13に首振り方向の力が加えられたとき、シャワーヘッド13が傾いたり、給水接続管12と給水配管11との接続部分であるネジ部が緩んだりするのを防止することができる。
【0027】
さらに、図7に示すように、給水接続管12の基端部12bの外周に平面部12pを設けたことにより、ネジ孔14hに螺着された止めネジ18の先端部がそれぞれ平面部12pに当接し、給水接続管12の基端部12b外周は止めネジ18の先端部を滑動し難くなるため、給水接続管12の回転防止機能をさらに高めることができる。なお、給水接続管12の基端部12b外周に、平面部12pの代わりに、止めネジ18の先端部が嵌入可能な凹部を設けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態であるシャワー装置が壁面に設置された状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示すシャワー装置の拡大斜視図である。
【図3】図2に示すシャワー装置の平面図である。
【図4】図2に示すシャワー装置の側面図である。
【図5】図3におけるA−A線断面図である。
【図6】図5の一部拡大図である。
【図7】図4におけるB−B線断面図である。
【図8】図4におけるC−C線断面図である。
【図9】図8の一部拡大図である。
【図10】図2に示すシャワー装置を構成する給水接続管の斜視図である。
【図11】図2に示すシャワー装置を構成するリング状補強部材の斜視図である。
【図12】図2に示すシャワー装置の一部分解斜視図である。
【図13】図12の一部拡大図である。
【符号の説明】
【0029】
10 シャワー装置
11 給水配管
11a 開口部
11f,17f 雌ネジ部
12 給水接続管
12a 先端部
12b,17b 基端部
12m,14m 雄ネジ部
12p 平面部
13 シャワーヘッド
14 取付座
14d 溝部
14f フランジ部
14g 雌テーパ部
14p 管状部
14s 先端開口部
15 リング状補強部材
15a 切欠部
15m 雄テーパ部
16 化粧カバー
16h 貫通孔
17 化粧キャップ
17a リブ
17t 工具係止部
18 止めネジ
19 Oリング
N1 ボルト
S 間隙
W 壁面
X 軸方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に埋設された給水配管に、前記壁面に対して略垂直をなすように基端部が接続された給水接続管と、前記給水接続管の先端部に接続されたシャワーヘッドと、を備えたシャワー装置であって、
前記給水接続管の基端部が挿入可能な管状部とその基端側に設けられたフランジ部とを有する取付座を、前記給水接続管の基端部を前記管状部に挿入するとともに前記フランジ部を壁面に固定した状態で配置し、
前記取付座の管状部と前記給水接続管の基端部との間隙に、当該間隙を閉塞する補強部材を介在させたことを特徴とするシャワー装置。
【請求項2】
前記補強部材として、リング状補強部材を前記取付座の管状部の先端開口部から前記間隙に圧入したことを特徴とする請求項1記載のシャワー装置。
【請求項3】
前記リング状補強部材に、その軸方向の片端部から他端部に向かって肉厚が連続的に増大した雄テーパ部を設け、前記取付座の管状部の先端開口部寄りの内周に前記先端開口部に向かって連続的に拡径した雌テーパ部を設け、前記リング状補強部材の雄テーパ部を前記取付座の雌テーパ部に当接させた状態で圧入したことを特徴とする請求項2記載のシャワー装置。
【請求項4】
前記取付座の管状部に挿入された前記給水接続管の基端部に対し、前記取付座の管状部を貫通して圧接される止めネジを設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシャワー装置。
【請求項5】
前記給水接続管の基端部の外周に、前記止めネジの先端部が当接する平面部または凹部を設けたことを特徴とする請求項4記載のシャワー装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2008−86490(P2008−86490A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269601(P2006−269601)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】