説明

シャープペンシル

【課題】軸筒を上下動させて先端から芯を繰り出す形式のシャープペンシルにおいて、構成部品の点数を少なくし、組立が容易なシャープペンシルを提供する。
【解決手段】軸筒1内に移動可能に芯タンク4を収納し、この芯タンク4の周囲に重量体19を軸方向に移動可能に嵌める。この芯タンクの前部と軸筒内面間にはノックスプリング9が設けられている。この芯タンクの前部には、チャック29を有するチャックガイド20が軸方向に移動可能に設けられ、軸筒の内面間に設けた弱いチャックスプリング26で後方に押されている。このチャックガイド20は、芯タンクをノックした際芯タンク4と共に前進するし、重量体19が当たった際には、芯タンク4から独立して移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒を上下に振ることにより芯を繰り出すことができるようにしたシャープペンシルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
軸筒内に収納した重量体を上下動させてチャック部を前方(軸筒の先端方向)へ移動させたり、ノック操作によってチャック部を前進させて芯を繰り出すようにしたシャープペンシルが広く用いられている(例えば特許文献1参照)。一般的に、このようなシャープペンシルは、軸筒内に軸方向に移動可能に収納した芯タンクの前端にチャックを固着し、チャックスプリングで該芯タンクを後方に付勢し、この芯タンクに取り付けたコネクターに突部を形成しこの突部に当るよう芯タンクの外周に重量体を摺動可能に嵌挿してある。一方、この芯タンクの後方には、芯タンクと別に形成したクリップホルダーを挿入固定し、このクリップホルダーに消しゴム支えを軸方向に移動可能に設け、この消しゴム支えに消しゴム及びノブを取り付け、消しゴム支えのフランジ部とクリップホルダー間にノックスプリングを設けて消しゴム支えを後方に付勢している。
【0003】
上記の構成により、軸筒を上下動すると重量体が芯タンクの突起に当って該芯タンクを前進させ、芯を繰り出すことができる。また、ノブを介して消しゴム支えをノックすると、該消しゴム支えの内端が芯タンクの後端に当って該芯タンクを前進させ、芯を繰り出すことができる。このように、従来のこの種のシャープペンシルでは、芯の繰り出しに際し、常に芯タンク全体を前進させることにより芯を繰り出すよう構成されている。
【0004】
上記のような構成のため、従来のシャープペンシルでは、芯タンクの他に別体にクリップホルダーや消しゴム支え等を形成しなければならないから、部品点数が多くなり、また軸筒の前端側からチャックやチャックスプリング、コネクター等を組み込んだメカ部を挿入し、後端側から消しゴム支えやノックスプリングを組み込んだクリップホルダー部を軸筒に挿入固定しなければならないので、組立も面倒であり、複雑で経済的に得にくいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4293803号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の解決課題は、軸筒を上下に振ったり、軸筒の後端から突出する芯タンクをノックすることにより芯を繰り出すようにしたシャープペンシルにおいて、部品点数を少なくし、組立工程も殆ど軸筒の後端から挿入固定して簡単に組立できるようにしたシャープペンシルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、軸筒内に軸方向に移動可能に収納した芯タンクと、該芯タンクを後方に付勢するよう芯タンクの前部と軸筒の内面間に設けたノックスプリングと、該芯タンクの周囲に軸方向に移動可能に遊嵌した重量体と、上記芯タンクにより移動するよう該芯タンクの前部に保持され芯を把持するチャックを固着したチャックガイドと、該チャックガイドを弱い力で後方に付勢するようチャックガイドの前部と軸筒の内面間に設けたチャックスプリングと、該芯タンクに設けられ芯タンクの後退動を制限するよう軸筒に形成した窓に係合する係止突起を具備し、上記チャックガイドは、上記重量体が前進した際該重量体が当接可能にかつ該重量体により芯タンクから独立して前方に移動するよう軸方向に移動可能に上記芯タンクに連結されていることを特徴とするシャープペンシルが提供され、上記課題が解決される。
【0008】
また、本発明によれば、上記チャックガイドは芯タンク壁が入り込む挿入間隙を開けて対向する内筒と外筒および該内筒、外筒を連結する連結片を有し、上記芯タンクには上記連結片が入り込む受溝が形成され、該受溝と該チャックガイドの連結片の間には、芯タンクが後退しているとき遊び間隙が形成され、上記芯タンクは衝撃吸収片を有している上記シャープペンシルが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記のように構成され、軸筒内に軸方向に移動可能に収納した芯タンクと、該芯タンクを後方に付勢するよう芯タンクの前部と軸筒の内面間に設けたノックスプリングと、該芯タンクの周囲に軸方向に移動可能に遊嵌した重量体と、上記芯タンクにより移動するよう該芯タンクの前部に保持され芯を把持するチャックを固着したチャックガイドと、該チャックガイドを弱い力で後方に付勢するようチャックガイドの前部と軸筒の内面間に設けたチャックスプリングと、該芯タンクに設けられ芯タンクの後退動を制限するよう軸筒に形成した窓に係合する係止突起を具備し、上記重量体が前進した際該重量体が上記チャックガイドに当接しかつ該重量体により芯タンクから独立してチャックガイドが前方に移動するよう軸方向に移動可能に上記芯タンクにチャックガイドを連結したから、軸筒を上下動させるとチャックガイドが前進して芯を繰り出すことができ、組立の際、チャックガイドや重量体を組み込んだ芯タンクを軸筒の後端から挿入組み付けするだけで簡単に組立でき、従来のこの種のシャープペンシルのように、芯タンクの他に別体にクリップホルダーや消しゴム支えを用意したり、軸筒の前部からメカ部を組み込んだ後、軸筒の後部からクリップホルダー部を組み込んだりしなくてもよいので、構成が著しく簡素化され、組立も容易で経済的に得ることができる。
【0010】
また、上記チャックガイドに芯タンク壁が入り込む挿入間隙をあけて対向する内筒と外筒および該内筒、外筒を連結する連結片を設け、上記芯タンクに上記連結片が入り込む受溝を形成し、該受溝と該チャックガイドの連結片の間に、芯タンクが後退しているとき遊び間隙を存するように構成すると、芯タンクの後部に取り付けた消しゴム等を使用する際、芯タンクが多少前方に押圧されても、チャックガイドが移動されず、芯が不用意に突出しないようにできる。その上、上記芯タンクに衝撃吸収片を設け、該衝撃吸収片として芯タンクの外面に起立片を立ち上げると、衝撃吸収片の構成が簡単であり、別部品や組み込み工程が不要となって、より経済的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例を示す、一部を半断面した正面図。
【図2】芯タンクを示し、(A)は一部を半断面した正面図、(B)は芯タンクの前端側からみた側面図、(C)は係止突起部分の断面図、(D)は衝撃吸収片部分の断面図。
【図3】芯タンクを軸筒に取り付ける場合を示し、(A)は芯タンクを軸筒に挿入した状態、(B)は軸筒の窓に係止突起が係合する位置まで芯タンクを挿入した状態の各説明図。
【図4】チャックガイドを示し、(A)は一部を半断面した正面図、(B)は(A)の位置から90度回転した部分の一部を半断面した正面図、(C)は(A)の状態の右側面図、(D)は連結片部分の断面図。
【図5】チャックガイド部分の分解斜視図。
【図6】ノック操作で芯を繰り出す場合の説明図。
【図7】上下動操作で芯を繰り出す場合の説明図。
【図8】消しゴムユニットを取り付けた一実施例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明のシャープペンシルの一実施例を示し、軸筒1の前端にはブレーカーゴム、弾性保持片等の芯仮保持機構2を設けたテーパー3が連結され、該軸筒1内には、軸方向に移動可能に筒状の芯タンク4が収納されている。該芯タンク4の前部には、図2(A)に示すように、受溝(割り溝)5を対向して設けることにより二つの挿入片6が形成され、該挿入片6の先端に設けたスプリング受7と軸筒の内面に形成した段部8の間に、芯タンク4を後方に付勢するノックスプリング9が設けられる。上記スプリング受は、図に示す実施例では小さな突片に形成してあるが、凹み部であってもよく、挿入片の数は適宜に形成することができる。なお、ノックスプリングの荷重は、例えば500g程度の高荷重に設定されている。
【0013】
上記芯タンク4の後部に形成した拡径部10には係止突起11が設けられている。該係止突起11は、図3に示すように、芯タンクを軸筒に挿入する際、軸筒内に入り込んで該軸筒に形成した軸方向に延びる窓12内に容易に突出するよう前端に傾斜面13が形成され、芯タンクが後退するとき、該窓12の縁部14に確実に係合して後退動を制限するよう後端に起立面15が形成されている。また、該芯タンクを軸筒の後端から挿入して軸筒に装着する際、芯タンク4が内方にたわんで上記係止突起11を容易に上記窓12内に突出させることができるよう芯タンク4のたわみを許容するための逃げ孔16が上記拡径部10に形成され、該拡径部の少し前方の芯タンクの中間部には衝撃吸収片17として芯タンクと一体的に形成された起立片が突出している。なお、該芯タンク4の拡径部10の後端には消しゴム18が嵌着されている。
【0014】
上記芯タンク4の周囲には、軸筒1を上下動した際、軸方向に移動するよう筒状の金属パイプ等で構成した重量体19が遊嵌されている。上記芯タンク4の拡径部10の手前には、重量体19が当接したとき衝撃を吸収、緩和できるよう上記起立片のような衝撃吸収片17が設けられているが、起立片に代えて、ゴム材料、エラストマー材料等の弾性材料で芯タンクとは別体に形成した部材を芯タンクに取り付けて衝撃を吸収することもできる。図2に示すように芯タンクの外面から一体的に立ち上がる形状の上記起立片を設けると、重量体が該起立片に当ったときに該起立片の先端が少し弾性的に傾斜して衝撃を吸収することができるので、部品点数が減少され、組立も容易となり、一層好ましい。
【0015】
上記芯タンク4の前部には、チャックガイド20が軸方向に移動可能に取り付けられている。図4を参照し、該チャックガイド20には、上記芯タンク4の内面に対向する内筒21と、該内筒21との間に芯タンク壁が入り込む挿入間隙22を存して芯タンクの外面に対向する外筒23と、該内筒21と外筒23を連結しかつ上記芯タンク4の受溝5内に入り込む幅の連結片24が形成され、上記挿入間隙22の前部には、上記芯タンク4の前部に形成した挿入片6が貫通するよう貫通孔25が設けられ、軸筒1の内面に形成した段部8との間にはチャックガイド20を後方に付勢するチャックスプリング26が設けられている。この構成により、該チャックガイド20は、挿入片6に沿って軸方向に移動可能であり、好ましくは、組立に際し、芯タンク4に装着後、重量体が自重でチャックガイドに軽く当る程度では芯タンクから簡単に抜け落ちない程度に貫通孔の縁部にかみ合うよう上記貫通孔を通って前方に延びる挿入片6の外周にはチャックガイドの貫通孔の縁部に当接可能な隆起部27が形成されている。このためには、該隆起部部分を内方に押し込んだ状態で挿入片を上記貫通孔に挿通し、貫通後、隆起部部分が弾性作用でもとに戻って上記のように係合できるようにすればよい。
【0016】
上記チャックガイド20の内筒21の前方内面には、クラッチ28を嵌着したチャック29の基端を挿入固定できるようチャック固定部30が形成されている。該クラッチ28はチャックガイド20が後退するとき、公知のように軸筒1の内方先端に係止され、チャック29を締め付ける。また、上記外筒23の前端部には支承面31が形成され、該支承面31には、上述したように軸筒の段部8との間に設けた上記チャックスプリング26が当接する。このチャックスプリング26は、上記ノックスプリング9より弱い力のスプリングであり、例えば、150g程度の低荷重に設定される。外筒23の後端部には、上記重量体19が当接するよう当接面32が形成されている。
【0017】
上記の構成により、チャックスプリング26、ノックスプリング9を軸筒の後端から軸筒内に挿入し、芯タンク4の中間部に重量体19を遊嵌するとともに前部に形成した挿入片6をチャックガイド20の貫通孔25に貫挿させてチャックガイド20を芯タンク4に装着し、この芯タンクの組立体を軸筒の後端から挿入し、係止突起11を窓12に係合させれば、組み付けが終了する。その後、軸筒の前方からチャック29をチャックガイド20に差し込んだり、消しゴム18やテーパー3を取り付ければよい。このように殆どの工程を軸筒の後端側からできるので、組み立てが簡単である。なお、組立状態で、芯タンクが後退しているとき、上記チャックガイド20の連結片24と芯タンク1の受溝5の底部33間には、図1に示すように若干の遊び間隙Sを生じるようにしてある。この遊び間隙Sは、芯タンク4の後端に設けた消しゴム18を通常のように使用した際、芯タンク4が前方に多少押し込まれる程度では、連結片24に受溝の底部33が当らないような寸法にするとよい。
【0018】
そして、ノック操作で芯34を繰り出すには、図6に示すように、通常のシャープペンシルと同じように芯タンク4の後端を前方にノックすると、ノックスプリング9に抗して芯タンク4が前進し、受溝の底部33がチャックガイド20の連結片24に当接し、該チャックガイド20がチャックスプリング26に抗して前進するから、該チャックガイド20に固着したチャック29が前進して公知のように芯34を繰り出すことができる。ノックを停止すると、芯タンクは後退するが、この後退動は係止突起11が窓12の縁部14に当ることにより制限される。芯34を後退させる場合は、公知のように芯タンク4をノックしながら芯34の先端をテーパー3内に押戻せばよい。
【0019】
上記軸筒1を上下動させると、図7に示すように、重量体19が前進して上記チャックガイド20の外筒23の後端部に設けた当接面32に当り、該チャックガイド20をチャックスプリング26に抗して前進させることができるから、上記ノック操作の場合と同様に芯34が繰り出される。なお、この場合、チャックガイド20は芯タンク4から独立しているので、芯タンク4は前進せずに、チャックガイド20だけが移動する。
【0020】
上記重量体19が芯タンク4の拡径部10に当るような位置まで軸筒1内で上下動すると、拡径部の手前に設けた衝撃吸収片17に当るから、芯タンク4に消しゴム18が外れてしまうような大きな衝撃を与えないようにすることができる。そのため、図8に示すように繰出形式の消しゴムユニット35やその他の適宜の部材を芯タンク4の後端部に装着しても、振動、衝撃等で該消しゴムユニット35等が外れないようにすることができる。
【符号の説明】
【0021】
1 軸筒
3 テーパー
4 芯タンク
5 受溝
6 挿入片
9 ノックスプリング
10 拡径部
11 係止突起
12 窓
17 衝撃吸収片
19 重量体
20 チャックガイド
21 内筒
22 挿入間隙
23 外筒
24 連結片
25 貫通孔
26 チャックスプリング
29 チャック
30 チャック固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒内に軸方向に移動可能に収納した芯タンクと、該芯タンクを後方に付勢するよう芯タンクの前部と軸筒の内面間に設けたノックスプリングと、該芯タンクの周囲に軸方向に移動可能に遊嵌した重量体と、上記芯タンクにより移動するよう該芯タンクの前部に保持され芯を把持するチャックを固着したチャックガイドと、該チャックガイドを弱い力で後方に付勢するようチャックガイドの前部と軸筒の内面間に設けたチャックスプリングと、該芯タンクに設けられ芯タンクの後退動を制限するよう軸筒に形成した窓に係合する係止突起を具備し、上記チャックガイドは、上記重量体が前進した際該重量体が当接可能にかつ該重量体により芯タンクから独立して前方に移動するよう軸方向に移動可能に上記芯タンクに連結されていることを特徴とするシャープペンシル。
【請求項2】
上記芯タンクの前部には挿入片が形成され、上記チャックガイドには該挿入片が移動可能に貫通する貫通孔が有り、該貫通孔を通って前方に延びている該挿入片の先端にはスプリング受部が形成され、該スプリング受部と軸筒の内面間に上記ノックスプリングが挿入されている請求項1に記載のシャープペンシル。
【請求項3】
上記芯タンクの挿入片は軸方向に延びる受溝により形成され、上記チャックガイドには芯タンクの内面に対向する内筒と、該内筒との間に芯タンク壁が入り込む挿入間隙を存して芯タンクの外面に対向する外筒と、該内筒及び外筒を連結し上記受溝内に入り込む幅を有する連結片が形成され、該挿入間隙の前部には上記貫通孔が形成されている請求項2に記載のシャープペンシル。
【請求項4】
上記芯タンクがノックスプリングにより後方に移動されているとき、上記受溝の底部と連結片の間には遊び間隙が形成されている請求項3に記載のシャープペンシル。
【請求項5】
上記チャックガイドの内筒には、上記チャックが固着され、上記外筒の後端部には上記重量体が当接する当接面が形成され、前端部には上記チャックスプリングが当接する支承面が形成されている請求項3または4に記載のシャープペンシル。
【請求項6】
上記芯タンクには、上記係止突起を窓に係止する際、芯タンクのたわみを許容するよう逃げ孔が形成されている請求項1に記載のシャープペンシル。
【請求項7】
上記芯タンクには、重量体が当接するよう衝撃吸収片が設けられている請求項1〜6のいずれかに記載のシャープペンシル。
【請求項8】
上記衝撃吸収片は、芯タンクの外面に起立させた起立片である請求項7に記載のシャープペンシル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−201199(P2011−201199A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71792(P2010−71792)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(392005126)ミクロ株式会社 (33)
【Fターム(参考)】