説明

シャープペンシル

【課題】筆記による先部材12の往復動によって芯ホルダー16が一方向に回転し、この芯ホルダー16の回転に伴って芯14を回転させることができ、しかも、芯14の回転を示す表示を先部材12の窓部12Aより目視可能なシャープペンシルに適用できる。
【解決手段】筆記によるチャック5及び連結具9の前後動と連動してスライド部材3が前後動する。すると、摺動部材17の前カム17Aと回転部材13の前カム13B及び摺動部材17の後カム17Bと回転部材13の後カム13Cが前後して互いに当接し、回転部材13が一方向に回転する。この回転部材13と連動して芯ホルダー16を所定角度毎に回転させ、芯ホルダー16に適度の力で保持された芯14を回転させる。また、先部材12に透明性を有する窓部12Aを形成し、かつ、回転部材13に表示13Aを設け、先部材12の窓部12Aを通して回転部材13の表示13Aを目視可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記圧による先部材の往復動によって芯ホルダーが一方向に回転し、この芯ホルダーの回転に伴い芯を回転させるシャープペンシルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、筆記芯が受ける筆記圧による後退動作および筆記圧の解除による前進動作を受けて回転子を一方向に回転駆動させる回転駆動機構が備えられ、前記回転子もしくは当該回転子の回転に連動して回転駆動される軸筒内に収納された構成要素の一部に表示部が施され、前記表示部が透明素材により構成された前記軸筒を介して視認できるように構成されたシャープペンシルが知られている。(特許文献1参照)
【0003】
しかしながら、上記シャープペンシルは、軸筒を介して表示部を視認するので、筆記中は軸筒を把持する手で表示部が隠れてしまい、表示部を視認しにくいものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−56965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、軸筒を手で把持して筆記した時、表示部が手で隠れて視認しにくく、回転動作を確実に把握することができない点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、チャックの頭部に締具を外嵌し、前記チャックをチャックスプリングにより長手方向後方に付勢し、チャックに押圧された締具を受け止める連結具をスライド部材に対し回動可能に構成し、把持部材に対して前記スライド部材を長手方向に移動可能で回動不能に構成し、このスライド部材の前部に先部材を設け、かつ、スライド部材の前方にスライド部材に対して回動不能に摺動部材を構成し、更に、摺動部材に前カムと後カムを形成するとともに前記先部材内に内蔵された回転部材に前カムと後カムを形成し、前記摺動部材の前カムと回転部材の前カムを互いに当接可能に構成するとともに、摺動部材の後カムと回転部材の後カムを互いに当接可能に構成し、筆記によるチャック及び連結具の前後動と連動してスライド部材が前後動することにより、摺動部材と回転部材が互いに前後に移動し、摺動部材の前カムと回転部材の前カム及びカム部材の後カムと回転部材の後カムが前後して互いに当接することにより回転部材が一方向に回転し、この回転部材と連動して芯ホルダーを所定角度毎に回転させ、芯ホルダーの回転に伴って芯ホルダーに適度の力で保持された芯を回転させるとともに、先部材に透明性を有する窓部を形成し、かつ回転部材に表示を設け、先部材の窓部を通して回転部材の表示を目視可能に構成したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、筆記圧による先部材の往復動によって芯ホルダーが一方向に回転し、この芯ホルダーの回転に伴って芯を回転させ、かつ、芯の回転を示す表示を把持した手で隠す恐れがなく、容易に目視できる利点が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の実施例1のシャープペンシルにおいて、先部材の窓部と回転部材に形成された表示を示す主要部拡大平面図である。(実施例1)
【図2】図2は、本発明の実施例1のシャープペンシルを示す断面図である。(実施例1)
【図3】図3は、本発明の実施例1のシャープペンシルを示す主要部拡大断面図である。(実施例1)
【図4】図4は、図3のA−A線を示す拡大断面図である。(実施例1)
【図5】図5は、図3における摺動部材と回転部材による回転機構の展開状態を示す主要部拡大説明図である。(実施例1)
【図6】図6は、本発明の実施例1のシャープペンシルにおいて筆圧を加えた状態を示す主要部拡大断面図である。(実施例1)
【図7】図7は、図6における摺動部材と回転部材の回転機構の展開状態を示す主要部拡大説明図である。(実施例1)
【図8】図8は、図6の状態から筆圧を解除した状態における摺動部材と回転部材の回転機構の展開状態を示す主要部拡大説明図である。(実施例1)
【図9】図9は、本発明の実施例2のシャープペンシルを示す主要部拡大断面図である。(実施例2)
【図10】図10は、図9における摺動部材と回転部材の回転機構の展開状態を示す主要部拡大説明図である。(実施例2)
【図11】図11は、実施例2のシャープペンシルにおいて、筆圧を加えた状態を示す主要部拡大断面図である。(実施例2)
【図12】図12は、図11における摺動部材と回転部材の回転機構の展開状態を示す主要部拡大説明図である。(実施例2)
【図13】図13は、本発明の実施例3のシャープペンシルを示す主要部拡大断面図である。(実施例3)
【図14】図14は、本発明の実施例4のシャープペンシルを示す断面図である。(実施例4)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、筆記圧による先部材の往復動によって芯を回転し、この芯の回転を示す表示を先部材に形成した窓部を通して目視可能なシャープペンシルを実現した。
【実施例1】
【0010】
以下、図1、図2、図3、図4、図5、図6、図7及び図8に基づいて、本発明における実施例1のシャープペンシルを説明する。また、図1の左側を前方とし、右側を後方とする。先ず、シリコンゴム等の軟質材で構成された把持部材1を前軸2に固定して取り付ける。この前軸2に前方よりスライド部材3を挿入するとともに後方より固定駒4を挿入し、スライド部材3と固定駒4を圧入固着する。このスライド部材3の後端と固定駒4の外段4Aとの間に前軸2の内鍔2Aを位置させ、前記前軸2の内鍔2Aはスライド部材3の後端と固定駒4の外段4Aの間を適宜前後動可能に構成する。また、スライド部材3の前部には円周方向等間隔に4個貫通したキー溝3Aを形成し、このキー溝3Aに前軸2の前部内面に内方に突出して形成されたキー2Bが係合し、スライド部材3と前軸2は長手方向には適宜移動可能でかつ回動不能に構成される。更に、前軸2のキー2Bの一部はスライド部材3の貫通したキー溝3Aより内方に突出して構成される。
【0011】
シャープペンシルの機構部は、頭部5Aが数分割されたチャック5と、チャック5の頭部5Aに外嵌される締具6と、チャック5の後部に固着されるコネクター7と、コネクター7に圧入固着されるパイプ状の芯タンク8と、締具6を受け止める連結具9と、連結具9とコネクター7の間に取付時荷重が100g程度で取り付けられるチャックスプリング10とにより構成される。更に、芯タンク8の前部にゴム等の軟質材からなる前Oリング11をコネクター7の外鍔7Aと接触させて取り付ける。
【0012】
前記機構部をスライド部材3の前方より挿入し、スライド部材3の内鍔3Bを連結具9の後部外鍔9Aが挿通し、スライド部材3の内鍔3Bが連結具9の前部外鍔9Bと後部外鍔9Aの間に回動自在に係合される。
【0013】
更に、図1に示したように、先部材12を透明あるいは着色した透明性を有する合成樹脂で構成し、表面に梨地加工や不透明のインキで印刷を行うかあるいは転写を行うとともに、その一部に透明性を有する窓部12Aを形成する。この先部材12の後部に後端から切り欠かれて伸びたキー溝12Bを相対位置に形成する。また、回転部材13の周面に芯14の回転が目視できるように表示13Aが設けられる。この表示13Aは、印刷、転写あるいはシール等により構成する。前記回転部材13の前部に芯ガイドパイプ15を固定するとともに、回転部材13内に芯14を50g程度の摩擦力で保持するゴム製の芯ホルダー16を取り付ける。
【0014】
次に、前記回転部材13を回転させるための回転機構を説明すると、図5に示したように、回転部材13に前外鍔の後面に形成した前カム13Bと後外鍔の前面に形成した後カム13Cを構成する。この回転部材13の前カム13Bは、右回転方向に向かって後方に傾斜する多数の傾斜面13Dと、傾斜面13Dと傾斜面13Dの間に位置する垂直面13Eにより構成する。また、回転部材13の後カム13Cは、右回転方向に向かって前方に傾斜する多数の傾斜面13Fと、傾斜面13Fと傾斜面13Fの間に位置する垂直面13Gにより構成する。更に、摺動部材17の内側部に、前端面に形成した前カム17Aと後段面に形成した後カム17Bを構成する。この摺動部材17の前カム17Aは、左回転方向に向かって前方に傾斜する多数の傾斜面17Cと、傾斜面17Cと傾斜面17Cの間に位置する垂直面17Dにより構成する。また、摺動部材17の後カム17Bは、左回転方向に向かって後方に傾斜する多数の傾斜面17Eと、傾斜面17Eと傾斜面17Eの間に位置する垂直面17Fにより構成する。更に、摺動部材17の前カム17Aの傾斜面17Cと後カム17Bの傾斜面17Eは同数で、前カム17Aの垂直面17Dと後カム17Bの垂直面17Fが長手方向に合わされている。また、回転部材13の前カム13Bの傾斜面13Dと後カム13Cの傾斜面13Fも摺動部材17の前カム17Aの傾斜面17C及び後カム17Bの傾斜面17Eと同数で、前カム17Aの傾斜面17Cの略中心に後カム17Bの垂直面17Fが位置する。前記摺動部材17の内側部を前記回転部材13の前カム13Bと後カム13Cの間に取り付け、回転部材13の前カム13Bと摺動部材17の前カム17Aを対面させるとともに、回転部材13の後カム13Cと摺動部材17の後カム17Bを対面させて構成する。また、回転部材13に対し、摺動部材17は長手方向に適宜前後動可能に構成し、回転部材13の前カム13Bと摺動部材17の前カム17A及び回転部材13の後カム13Cと摺動部材17の後カム17Bは当接可能に構成される。
【0015】
この回転部材13及び摺動部材17は先部材12に内蔵されるが、先部材12のキー溝12Bに摺動部材17の相対位置に形成された突部17Gが挿入され、先部材12に対して摺動部材17は長手方向に移動可能で回動不能に構成される。また、摺動部材17の突部17Gは先部材12の後部周面より円周方向外方に突出する。この先部材12の内段12Cと摺動部材17の外段17Hとの間に前スプリング18を取り付け、摺動部材17を長手方向後方に付勢する。すると、回転部材13に設けられた表示13Aが先部材12の窓部12Aより目視可能となる。したがって、回転部材13が回転する状態を先部材12の窓部12Aより常時目視することができる。
【0016】
上記先部材12を前記スライド部材3に着脱可能に螺合し、先部材12の係止段12Dと連結具9の前端との間に回転部材13を回動可能に内蔵し、取付時荷重100g程度で取り付けられた前スプリング18により長手方向後方に付勢された摺動部材17の後カム17Bを回転部材13の後カム13Cに当接するとともに、摺動部材17の突部17Gを前軸2のキー2Bに当接させる。すると、前軸2の内鍔2Aが固定駒4の外段4Aに当接される。
【0017】
更に、前軸2の後方から円筒状の重量体19を挿入し、重量体19を芯タンク8の外面と固定駒4の内面の間に長手方向に摺動可能に遊嵌する。尚、芯タンク8の外面と重量体19の内面との隙間より重量体19の外面と固定駒4の内面との隙間を狭く構成する。
【0018】
後軸20にはクリップ21が一体に構成されるとともに、後軸20の前方より中子22を挿入する。この中子22には内鍔22A前端にゴム等の軟質材からなる後Oリング23を圧入固着する。また、後軸20の後方より押圧部材24を挿入し、中子22の開口窓22Bに押圧部材24の係止突起24Aを係止するとともに押圧部材24の前端を中子22の内鍔22Aに当接し、中子22と押圧部材24を連結する。更に、後軸20の内鍔20Aと押圧部材24の外段24Bとの間には取付時荷重300g程度でリターンスプリング25を取り付け、押圧部材24を長手方向後方に付勢する。この押圧部材24には内孔24Cが形成されて芯14が通過可能に構成されるとともに、押圧部材24の後部内側に消しゴム26が取り付けられる。また、押圧部材24の後部外側には消しゴム26を覆うためにノブ27が着脱可能に嵌合される。
【0019】
この後軸20を前記前軸2に着脱可能に螺合するとともに、芯タンク8内に予備の芯14を収納して振出式のシャープペンシルを構成する。
【0020】
前記シャープペンシルで筆記を行うと、芯14が紙面に押され図6に示したように、筆圧を受けるチャック5、締具6、連結具9、スライド部材3、固定駒4、先部材12及び回転部材13は停止しているが、スライド部材3に対し手で把持された前軸2及び把持部材1は前進し、前軸2のキー2Bに突部17Gが当接した摺動部材17も前軸2とともに前スプリング18を圧縮しながら前進する。すると、摺動部材17の前カム17Aが回転部材13の前カム13Bに当接し、摺動部材17の前カム17Aの傾斜面17Cが回転部材13の前カム13Bの傾斜面13Dに当接する。しかし、摺動部材17は突部17Gが先部材12のキー溝12Bに挿入されて回動不能となっているので、回転部材13の前カム13Bの傾斜面13Dが摺動部材17の前カム17Aの傾斜面17Cの略半分を滑って、図7に示したように回転部材13が前方に対して右回転する。回転部材13とともに回転部材13に取り付けられた芯ホルダー16が右回転すると芯14も右に回転する。この時、芯14を保持するチャック5も、締具6及び連結具9とともにスライド部材3に対して右に回転する。また、先部材12の窓部12Aより目視される回転部材13の表示13Aが右に回転する。
【0021】
次に、筆記を止め芯14を紙面より離すと、手で把持された前軸2及び把持部材1に対して、前スプリング18により前方に付勢された先部材12及びスライド部材3が前進する。すると、スライド部材3とともに、連結具9、締具6、チャック5、回転部材13、芯ホルダー16が芯14とともに前進する。そして、回転部材13の後カム13Cの傾斜面13Fが摺動部材17の後カム17Bの傾斜面17Eに当接し、回転部材13の後カム13Cの傾斜面13Fが摺動部材17の後カム17Bの傾斜面17Eの略半分を滑って図8に示したように回転部材13が前方に対して右回転する。また、固定駒4の外段4Aが前軸2の内鍔2Aに当接し、図2及び図3の状態に復帰する。すると、回転部材13の後カム13Cの傾斜面13Fは摺動部材17の後カム17Bの傾斜面17Eを1つ乗り越えて右隣りの傾斜面17Eに当接され、図8に示したように芯14は回転部材13の後カム13Cの1つの傾斜面寸法だけ右に回転する。尚、チャック5、コネクター7及び芯タンク8と押圧部材24が分離されているとともに、固定駒4と重量体19の隙間より重量体19と芯タンク8の隙間が大きく構成されているので、芯タンク8の回転を押圧部材24や重量体19によって妨げられる恐れはない。
【0022】
筆記を行うことによって芯14が摩耗した場合には、手で把持した把持部材1を振ると、重量体19が先ず後方に移動して後Oリング23に当接する。その反動で把持部材1を前方に振ると、重量体19は前方に移動して前Oリング11に当接する。この重量体19の慣性力によりチャック5、コネクター7、芯タンク8を前進させ、従来公知の振出式シャープペンシルと同様に一定量芯14を繰り出す。
【0023】
この実施例1のシャープペンシルの場合には、回転部材13を回転させる機構が先部材12の中に内蔵されているので、連結具9の後方は通常の振出式シャープペンシルと同様の構造となり、容易に振出式のシャープペンシルを構成できる利点がある。また、先部材12に回転部材13を回転させる機構が内蔵されるので、回転機構及び機構部の組立を容易に行える利点がある。更に、芯14をガイドする芯ガイドパイプ15も芯14とともに回転するので、芯14と芯ガイドパイプ15との間で摩擦力が発生する恐れは全くない。
【実施例2】
【0024】
以下、図9、図10、図11及び図12に基づいて本発明における実施例2のシャープペンシルを説明する。尚、図3と同一部材は同一の符号を付してその説明を省略する。先ず、図9において、前部に芯ガイドパイプ15を固定した回転部材113に筒状の表示部材28を圧入固着する。この表示部材28の周面に芯14の回転が目視できるように表示が設けられる。この表示は、印刷、転写あるいはシール等により構成する。前記回転部材113に芯14を50g程度の摩擦力で保持するゴム製の芯ホルダー16を取り付ける。
【0025】
次に、前記回転部材113を回転させるための回転機構を説明する。回転部材113に突部を形成し、この突部の前面に前カム113Bを形成するとともに、突部の後面に後カム113Cを形成する。この回転部材113の前カム113Bは、図10に示したように、右回転方向に向かって前方に傾斜する多数の傾斜面113Dと、傾斜面113Dと傾斜面113Dの間に位置する垂直面113Eにより構成する。また、回転部材113の後カム113Cは、右回転方向に向かって後方に傾斜する多数の傾斜面113Fと、傾斜面113Fと傾斜面113Fの間に位置する垂直面113Gにより構成する。更に、摺動部材117に、前内鍔の後面に形成した前カム117Aと後内鍔の前面に形成した後カム117Bを構成する。この摺動部材117の前カム117Aは、左回転方向に向かって後方に傾斜する多数の傾斜面117Cと、傾斜面117Cと傾斜面117Cの間に位置する垂直面117Dにより構成する。また、摺動部材117の後カム117Bは、左回転方向に向かって前方に傾斜する多数の傾斜面117Eと、傾斜面117Eと傾斜面117Eの間に位置する垂直面117Fにより構成する。更に、摺動部材117の前カム117Aの傾斜面117Cと後カム117Bの傾斜面117Eは同数で前カム117Aの傾斜面117Cの略中心に後カム117Bの垂直面117Fが位置する。また、回転部材113の前カム113Bの傾斜面113Dと後カム113Cの傾斜面113Fも摺動部材117の前カム117Aの傾斜面117C及び後カム117Bの傾斜面117Eと同数で、前カム113Bの垂直面113Eと後カム113Cの垂直面113Gが長手方向に合わされている。前記摺動部材117の前カム117Aと後カム117Bの間に回転部材113の突部を取り付け、回転部材113の前カム113Bと摺動部材117の前カム117Aを対面させるとともに、回転部材113の後カム113Cと摺動部材117の後カム117Bを対面させて構成する。また、回転部材113に対し摺動部材117は長手方向に適宜前後動可能に構成し、回転部材113の前カム113Bと摺動部材117の前カム117A及び回転部材113の後カム113Cと摺動部材117の後カム117Bは当接可能に構成する。
【0026】
この回転部材113及び摺動部材117は先部材12に内蔵されるが、先部材12のキー溝12Bに摺動部材117の相対位置に形成された突部117Gが挿入され、先部材12に対して摺動部材117は長手方向に移動可能で回動不能に構成される。また、摺動部材117の突部117Gは先部材12の後部表面より外方に突出する。更に、先部材12の内段12Cと摺動部材117の外段117Hとの間に前スプリング18を取り付け、摺動部材117を長手方向後方に付勢する。すると、回転部材113に取り付けられた表示部材28の表示が先部材12の窓部12Aより目視可能となる。したがって、回転部材113が回転する状態を先部材12の窓部12Aより常時目視することができる。
【0027】
上記先部材12をスライド部材3に着脱可能に螺合し、先部材12の係止段12Dと連結具9の前端との間に回転部材113を回動可能に内蔵し、取付時荷重100g程度で取り付けられた前スプリング18により長手方向後方に付勢された摺動部材117の前カム117Aを回転部材113の前カム113Bに当接するとともに、摺動部材117の突部117Gを前軸2のキー2Bに当接させる。すると、前軸2の内鍔2Aが固定駒4の外段4Aに当接され、振出式のシャープペンシルを構成する。
【0028】
前記シャープペンシルで筆記を行うと、芯14が紙面に押圧され図11に示したように、筆圧を受けるチャック5、締具6、連結具9、スライド部材3、固定駒4、先部材12及び回転部材113は停止しているが、スライド部材3に対し手で把持された前軸2及び把持部材1は前進し、前軸2のキー2Bに突部117Gが当接した摺動部材117も前軸2とともに前スプリング18を圧縮しながら前進する。すると、摺動部材117の後カム117Bが回転部材113の後カム113Cに当接し、摺動部材117の後カム117Bの傾斜面117Eが回転部材113の後カム113Cの傾斜面113Fに当接する。しかし、摺動部材117は突部117Gが先部材12のキー溝12Bに挿入されて回動不能となっているので、回転部材113の後カム113Cの傾斜面113Fが摺動部材117の後カム117Bの傾斜面117Eの略半分を滑って図12に示したように回転部材113が前方に対して右回転する。この回転部材113とともに、回転部材113に取り付けられた芯ホルダー16が右回転すると芯14も右に回転する。この時、芯14を保持するチャック5も、締具6及び連結具9とともにスライド部材3に対して右に回転する。また、回転部材113に取り付けられた表示部材28も右に回転し、先部材12の窓部12Aより目視される表示部材28の表示も右回転方向に移動する。
【0029】
次に、筆記を止め芯14を紙面より離すと、手で把持された前軸2及び把持部材1に対して、前スプリング18により前方に付勢された先部材12及びスライド部材3が前進する。すると、スライド部材3とともに、連結具9、締具6、チャック5、回転部材113、芯ホルダー16が芯14とともに前進する。そして、回転部材113に形成された前カム113Bの傾斜面113Dが摺動部材117に形成された前カム117Aの傾斜面117Cに当接し、回転部材113の前カム113Bの傾斜面113Dが摺動部材117の前カム117Aの傾斜面117Cの略半分を滑って回転部材113が前方に対して右回転する。また、固定駒4の外段4Aが前軸2の内鍔2Aに当接し、図9の状態に復帰する。すると、回転部材113の前カム113Bの傾斜面113Dは摺動部材117の前カム117Aの傾斜面117Cを1つ乗り越えて右隣りの傾斜面117Cに当接され、芯14は回転部材113の後カム113Cの1つの傾斜面113F寸法だけ右に回転する。また、表示部材28の表示も同様に右に回転する。尚、チャック5、コネクター7及び芯タンク8が回転する時、芯タンク8と押圧部材24が分離されているとともに、固定駒4と重量体19の隙間より重量体19と芯タンク8の隙間が大きく構成されているので、芯タンク8の回転を押圧部材24や重量体19によって妨げられる恐れはない。
【実施例3】
【0030】
以下、図13に基づいて本発明における実施例3のシャープペンシルを説明する。尚、図3と同一部材は同一の符号を付してその説明を省略する。先ず、表示部材128と基部材30により回転部材213を構成し、この回転部材213を構成する表示部材128の後面に前カム213Bを形成するとともに、後外鍔の前面に後カム213Cを形成する。この表示部材128と基部材30は圧入固着により一体に構成する。この回転部材213の前カム213Bは、右回転方向に向かって後方に傾斜する多数の傾斜面と、傾斜面と傾斜面の間に位置する垂直面により構成する。また、回転部材213の後カム213Cは、右回転方向に向かって前方に傾斜する多数の傾斜面と垂直面により構成する。また、回転部材213の前カム213Bの傾斜面及び後カム213Cの傾斜面は、摺動部材17の前カム17Aの傾斜面17Cと同数に形成する。更に、回転部材213の前カム213Bの傾斜面の略中心に後カム213Cの垂直面が位置する。そして、摺動部材17の内側部を前記回転部材213の前カム213Bと後カム213Cの間に取り付け、回転部材213の前カム213Bと摺動部材17の前カム17Aを対面させるとともに、回転部材213の後カム213Cと摺動部材17の後カム17Bを対面させて構成する。また、回転部材213に対し摺動部材17は長手方向に適宜前後動可能に構成し、回転部材213の前カム213Bと摺動部材17の前カム17A及び回転部材213の後カム213Cと摺動部材17の後カム17Bは当接可能に構成する。更に、表示部材128の周面に芯14の回転が目視できるように表示が設けられる。この表示は、印刷、転写あるいはシール等により構成する。
【0031】
更に、前記回転部材213の内面に後方から長手方向前方に伸びたキー溝213Hを相対位置に形成する。また、前部に芯ガイドパイプ15を固定した中駒29に芯ホルダー16を取り付ける。前記中駒29の外面の相対位置にキー29Aを形成する。この中駒29を回転部材213の後方から挿入し、中駒29のキー29Aを回転部材213のキー溝213Hに係合させることにより、回転部材213に対して中駒29及び芯ホルダー16を長手方向には摺動可能で回動不能に構成する。
【0032】
この回転部材213及び摺動部材17は先部材12に内蔵されるが、先部材12のキー溝12Bに摺動部材17の相対位置に形成された突部17Gが挿入され、先部材12に対して摺動部材17は長手方向に移動可能で回動不能に構成される。また、摺動部材17の突部17Gは先部材12の後部周面より円周方向外方に突出する。この先部材12の内段12Cと摺動部材17の外段17Hとの間に前スプリング18を取り付け、摺動部材17を長手方向後方に付勢する。すると、表示部材128に設けられた表示が先部材12の窓部12Aより目視可能となる。したがって、表示部材128が回転する状態を先部材12の窓部12Aより常時目視することができる。
【0033】
したがって、芯14が紙面に押圧され、回転部材213が前方に対して右回転すると、中駒29及び芯ホルダー16も右回転するために、芯14も右に回転する。
【0034】
この実施例3の場合には、携帯時に中駒29及び芯ガイドパイプ15を後退させれば、先部材12内に芯ガイドパイプ15を没入させることができる。
【実施例4】
【0035】
以下、図14に基づいて本発明における実施例4のシャープペンシルを説明する。尚、図1と同一部材は同一の符号を付してその説明を省略する。先ず、前軸2に前方よりスライド部材3を挿入するとともに後方より固定駒104を挿入し、スライド部材3と固定駒104を圧入固着する。このスライド部材3の後端と固定駒104の外段104Aとの間に前軸2の内鍔2Aを位置させ、前記前軸2の内鍔2Aはスライド部材3の後端と固定駒104の外段104Aとの間を適宜前後動可能に構成する。
【0036】
シャープペンシルの機構部は、頭部105Aが数分割されたチャック105と、チャック105の頭部105Aに外嵌される締具6と、チャック105の後部に固着されるパイプ状の芯タンク108と、締具6を受け止める連結具9と、連結具9と芯タンク108の間に取付時荷重が500g程度で取り付けられるチャックスプリング110とにより構成される。
【0037】
筆圧により芯14が回転する操作及び芯14の回転を表示する操作は実施例1と同様に行われる。尚、チャック105及び芯タンク108が回転する時、芯タンク108と押圧部材24が分離されているので、芯タンク108の回転を押圧部材24によって妨げられる恐れはない。
【0038】
筆記を行うことによって芯14が摩耗した場合には、ノブ27を押圧することにより押圧部材24を前進させ、押圧部材24が芯タンク108の後端に当接して芯タンク108及びチャック105を前進させれば、従来公知のノック式シャープペンシルと同様に一定量芯14を繰り出す。
【0039】
尚、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、把持部材、先部材、スライド部材、固定駒、回転部材、摺動部材、連結具といった部材は説明を簡略化するためにそれぞれ1個の部材として図示しているが、それぞれ2個以上の部材を螺合、圧入等により一体化すれば良い。また、回転部材、中駒、芯ガイドパイプに取り付けられる芯ホルダーは、ゴムに限定されるものではなく、金属の板を筒状に形成し、その一部に弾性部を形成したり、回転部材、中駒あるいは芯ガイドパイプ等の一部に弾性部を形成して一体に構成しても良い。更に、上記実施例は前カムの傾斜面の略中心に後カムの垂直面を位置させて構成しているが、これは説明を明確にするためであって、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、互いに当接する前カムの傾斜面同士が接触して合致した時、互いに当接可能な後カムの接触面同士は離間するとともに傾斜面寸法の略半分程度円周方向にずれて構成され、かつ、前カムの傾斜面と後カムの傾斜面が円周方向に対して逆向きに傾斜して構成されていれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0040】
筆記圧による先部材の往復動によって芯ホルダーが一方向に回転し、この芯ホルダーの回転に伴って芯を回転させることができ、しかも、芯の回転を示す表示を先部材の窓部より目視可能なシャープペンシルに適用できる。
【符号の説明】
【0041】
1 把持部材
3 スライド部材
5 チャック
5A チャック5の頭部
6 締具
9 連結具
10 チャックスプリング
12 先部材
12A 先部材12の窓部
13 回転部材
13B 回転部材13の前カム
13C 回転部材13の後カム
14 芯
16 芯ホルダー
17 摺動部材
17A 摺動部材17の前カム
17B 摺動部材17の後カム
105 チャック
105A チャック105の頭部
110 チャックスプリング
113 回転部材
113B 回転部材113の前カム
113C 回転部材113の後カム
117 摺動部材
117A 摺動部材117の前カム
117B 摺動部材117の後カム
213 回転部材
213B 回転部材213の前カム
213C 回転部材213の後カム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャックの頭部に締具を外嵌し、前記チャックをチャックスプリングにより長手方向後方に付勢し、チャックに押圧された締具を受け止める連結具をスライド部材に対し回動可能に構成し、把持部材に対して前記スライド部材を長手方向に移動可能で回動不能に構成し、このスライド部材の前部に先部材を設け、かつ、スライド部材の前方にスライド部材に対して回動不能に摺動部材を構成し、更に、摺動部材に前カムと後カムを形成するとともに前記先部材内に内蔵された回転部材に前カムと後カムを形成し、前記摺動部材の前カムと回転部材の前カムを互いに当接可能に構成するとともに、摺動部材の後カムと回転部材の後カムを互いに当接可能に構成し、筆記によるチャック及び連結具の前後動と連動してスライド部材が前後動することにより、摺動部材と回転部材が互いに前後に移動し、摺動部材の前カムと回転部材の前カム及びカム部材の後カムと回転部材の後カムが前後して互いに当接することにより回転部材が一方向に回転し、この回転部材と連動して芯ホルダーを所定角度毎に回転させ、芯ホルダーの回転に伴って芯ホルダーに適度の力で保持された芯を回転させるとともに、先部材に透明性を有する窓部を形成し、かつ回転部材に表示を設け、先部材の窓部を通して回転部材の表示を目視可能に構成したことを特徴とするシャープペンシル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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