説明

シュウ酸エッチング廃液からのインジウムの回収方法

【課題】ITOをエッチングしたシュウ酸廃液からのインジウムを回収する方法、および同時に純度の高いシュウ酸も回収する方法を提供する。
【解決手段】インジウムを含んだシュウ酸廃液(ITOのシュウ酸エッチング液)または液晶パネルを1−10%シュウ酸でインジウムを溶出させた溶出液を、まず、アシッドリターデション機能を有するアニオン交換樹脂を使用することにより、まずオキサラトインジウムを樹脂に吸着させる。次に0.5から5モルの塩酸を樹脂に通し、樹脂に吸着されているシュウ酸は塩酸と置換されて脱離し回収再利用されオキサラトインジウムはインジウムアコ錯体としてアニオン樹脂にとどまる。その後、水を通液することにより、インジウムアコ錯体はインジウムカチオンとして脱離させ、インジウムを分離・濃縮回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
シュウ酸エッチング廃液からのインジウムの回収方法に関する分野
【背景技術】
【0002】
従来、透光性導電膜としてのITO膜のシュウ酸エッチング廃液からインジウムを分離回収する方法としてはアニオン交換樹脂によりインジウム、スズを吸着除去しシュウ酸を回収する方法が知られている。さらに、インジウムをアニオン交換樹脂から酸、アルカリを用いて脱離して回収することは困難で、樹脂を焼却する方法しかなかった。その為、回収コストがかかり実用的ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−325082
【特許文献2】特開2008−207976
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インジウムはレアメタルのひとつとして知られており、日本の用途別需要ではITO即ち透光性導電膜への需要が約70%(リサイクルを含めると80%近く)を占める状況である。
レアメタルは地球上で偏在しており、国際情勢により輸出規制などが生じ、レアメタル、レアアースのリサイクルが叫ばれ、インジウムリサイクルは経済性の上からも国際競争力の点からも重要な技術である。
既に、開発されている種々の技術がある。たとえばターゲット未使用分とかスパッタリング装置付着分のリサイクル技術や塩化第2鉄エッチング液からセメンテーション法で回収する技術である。そして、シュウ酸エッチング液から回収する技術としてはシュウ酸回収が中心で、インジウムを回収するには樹脂の焼却しかなく、その場合インジウムは融点が低いため大気中に放出され健康面からも安全な方法ではない。
本発明はITOをエッチングしたシュウ酸廃液中のインジウムや液晶パネルよりシュウ酸を用いて溶出させたインジウムを、アシッドリターデーション機能を有するアニオン交換樹脂を用いることにより高濃度な酸溶解インジウムとして分離・回収や水酸化物法、硫化物法を用いてインジウムを高純度に含有するスラッジもしくはできる。
また、純度の高いシュウ酸も同時に回収できる簡便かつ安全、安価な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
インジウムの分離・回収方法は、インジウムを含んだシュウ酸廃液(ITOのシュウ酸エッチング液)または液晶パネルを1−10%シュウ酸でインジウムを溶出させた溶出液中でインジウムはインジウムはオキサラトインジウムとして存在し、アシッドリターデション機能を有するアニオン交換樹脂に通液し、まずオキサラトインジウムを樹脂に吸着させる。
次に0.5から5モルの塩酸を樹脂に通すと、シュウ酸は塩酸と置換しアニオン交換樹脂より溶離し回収され、オキサラトインジウムはインジウムクロロアコ錯体アニオンとしてイオン交換樹脂に留まる。
その後、水を通液することにより、インジウムクロロアコ錯体はインジウムカチオンとして脱離して濃縮回収される。
脱離して得られ濃厚インジウム液として回収するか、水酸化物法や硫化物法で高純度のインジウムスラッジとして取り出し、シュウ酸は再利用する。
本発明により、アシッドリターデーション機能を有するアニオン交換樹脂を使用することにより、夾雑金属イオンはインジウムと分離され高純度インジウムを含有するスラッジを得ることが出来る。
成分を化学式で表現する:

【発明の効果】
【0006】
省エネルギー、簡便、安価な方法でシュウ酸インジウム溶液からインジウム並びにシュウ酸が分離・回収でき、現在資源リサイクルの必要性が重視されているレアメタルの回収を小規模でもできるため全世界で実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】インジウムとシュウ酸濃度の通液量との関係
【図2】インジウムの脱離と電気伝導度の関係
【図3】インジウムとシュウ酸の分離回収工程
【図4】溶出シュウ酸液濃度とインジウムの溶出量の関係
【図5】インジウムの溶出速度と溶出温度の関係
【図6】インジウムとシュウ酸の分離回収再利用工程
【実施例1】
【0008】
アシッドリターデーション機能を持つアニオン交換樹脂を85mLをカラムに充填し、まずインジウム濃度230mg/Lのシュウ酸エッチング液をカラム下部から10mL/minの速度で300mL通液を行い、初期200mLまでは100mLづつ分画、その後は20mLづつ分画し、インジウム、シュウ酸濃度、電気伝導度を測定した。次に、1Nの塩酸を10mL/minの速度で300mL通液し、20mLづつ分画、インジウム、シュウ酸濃度、電気伝導度を測定した。その後、蒸留水300mLを同一の速度で通液を行い、各分画のインジウム濃度、電気伝導度を測定した。
インジウムとシュウ酸濃度の通液量との関係を図−1に示す。図−1よりシュウ酸は通液260mLより破過し始めている。そして、1Nの塩酸を加えると460mL目にシュウ酸の脱離ピークを持ち、樹脂に吸着されたシュウ酸が塩酸と置換されていた。塩酸300mL通したときの脱離量の合計と吸着したシュウ酸量の収率は99.5%であった。濃厚シュウ酸を得るには380mLから540mLの分画部分を回収すればよい。そして、シュウ酸通液時や、1N塩酸通液時にはインジウムは脱離していない。次に、水を通液すると初期にはインジウムは脱離しないが、急激に脱離しはじめ720mL目にインジウムのピークが生じる。そこで、インジウムの脱離と電気伝導度の関係を図−2に示す。図−2より電気伝導度が下がり始めるとインジウムの脱離が行われ、このことよりインジウムはタイマーもしくは電気伝導度をモニターすることにより簡便に分離・回収される。
以上よりインジウムとシュウ酸の分離回収工程を示すと図−3になる。
【実施例2】
【0009】
実施例1で回収したシュウ酸を用いて液晶パネルのガラスカレットからのインジウムの溶出試験を行った。溶出条件としてはシュウ酸濃度(1.15、3.5、5%)、溶出温度(20、25、30、35、37,5、40、45、50℃)と変えて実験を行った。溶出シュウ酸液濃度とインジウムの溶出速度の関係を図−4に示した。シュウ酸濃度1.15%と3.5%では溶出速度は1,6倍違っていたがシュウ酸濃度5%ではほとんど変化がなく、最適シュウ酸濃度は3.5%前後であると考えられた。次にシュウ酸濃度3.5%で温度条件を変えたときのインジウムの溶出速度を図−5に示した。図−5よりインジウム溶出温度25℃のとき最大溶出速度となった。温度が上昇するとシュウ酸インジウムの結晶生成が目視され、インジウムの溶出速度は低下した。従って最適溶出温度としては20℃から35℃であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シュウ酸エッチング廃液中に含まれるインジウムをアシッドリターデション機能を有するアニオン交換樹脂に吸着させ、次に0.5から5モルの塩酸を通液してシュウ酸と塩酸を置換させ、その後水を通液することによりインジウムをカチオンとして脱離させ回収する方法。
【請求項2】
請求項1において塩酸と置換して脱離したシュウ酸を回収する方法並びに工程。
【請求項3】
請求項1において回収されたシュウ酸を用いて、生産工程よりの破材、市場から回収された液晶パネルからのインジウムの溶出に再利用する方法並びに工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−193443(P2012−193443A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80502(P2011−80502)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(510209487)株式会社アクアテック (4)
【Fターム(参考)】