説明

シューズの緊締構造

【課題】 着用者の足に対するフィット性を向上でき、様々な足の形状に対応できるシューズ用緊締構造を提供する。
【解決手段】 甲被3の内側面3A,3Bに沿って配設され、実質的に上方に延びるとともに、下端40b,41bがシューズ1の底部に固着されかつ上端40a,41aが甲被上部に固着された帯状の緊締部材40,41を設ける。緊締部材40,41は、それぞれ甲被3との間でループ構造4を形成しており、靴紐42がループ構造4の上端の折返し部に挿通されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シューズの緊締構造に関し、詳細には、着用者の足に対するフィット性を向上させるための構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
シューズのフィット性を向上させるために、これまで種々の緊締構造が提案されている。たとえば、実開昭59−128202号公報に示すものは、甲被の内側において内甲側および外甲側にそれぞれ配設された左右一対の締付バンドを有している。各締付バンドの下端は底部に固着され、上端は靴紐挿通用のハトメ孔を有している。この場合には、各締付バンド上端のハトメ孔に挿入された靴紐を締め付けることにより、締付バンドがシューズ着用者の足を締め付けるようになっている。
【0003】
国際公開第01/82735号パンフレットの第10図に示すものは、甲被の内側に配設された左右一対のベルト部材を有している。各ベルト部材の下端は底部に固着され、上端は甲被上部を挿通して靴紐に連結されている。この場合には、靴紐を締め付けることにより、各ベルト部材が着用者の足を締め付けるようになっている。
【0004】
実公平2−3291号公報に示すものは、甲被の内側に配設されたインナーベルトを有している。インナーベルトは、甲被上部に形成されたベルト挿通孔を挿通して上方に延びており、インナーベルトの上部には、面ファスナおよびリングからなる締結具が設けられている。この場合には、インナーベルトを締め付けることにより、インナーベルトが着用者の足を締め付けるようになっている。
【0005】
特開平9−65908号公報に示すものは、甲被の内側に配設された帯状の補強部材を有している。補強部材の下端は底部に固着されている。補強部材は、甲被上部の内甲側および外甲側においてそれぞれ折返し部を形成してこれらを縫合することにより形成された左右一対の靴紐通し部を有している。各靴紐通し部は甲被上部の開孔から甲被外側に覗いている。この場合には、各靴紐通し部を通した靴紐を締め付けることにより、各補強部材が着用者の足を締め付けるようになっている。
【0006】
前記各公報に記載のものでは、いずれも甲被の内側に配設された各ベルト部材を着用者の足の回りに締付固定することにより、シューズのフィット性を向上させようとしている。しかしながら、実開昭59−128202号公報に記載のものでは、各ベルト部材および甲被が直接連係された関係にはなく、各ベルト部材の締付けが直接甲被を足の回りに締め付けるようには構成されていない。また、国際公開第01/82735号パンフレット、実公平2−3291号公報および特開平9−65908号公報に記載のものでは、いずれも甲被上部の開孔を介して各ベルト部材が甲被に係止されてはいるが、各ベルト部材の締付けにより各ベルト部材に作用する張力がそのまま甲被に作用するようには構成されていない。このため、様々な足の形状に対応することができず、甲被と着用者の足とのフィット性を向上させるにも限界があった。
【0007】
その一方、特開2001−211903号公報に示すものでは、甲被の外側において内甲側および外甲側にそれぞれ内甲側緊締部材および外甲側緊締部材が配設されている。各緊締部材の中央部は、底部のスリットを挿通して該スリットに係止されており、上部は各緊締部材を緊締するための面ファスナなどの締着具を有している。この場合には、内甲側および外甲側緊締部材を締め付けることにより、各緊締部材からの締付力が甲被の表面側から着用者の足に作用するようになっている。
【0008】
特許2832684公報に示すものでは、甲被の外側において内甲側および外甲側に帯状の締付材がそれぞれジグザグに配設されている。この締付材においては、上側の折返し部に靴紐が係止されており、下側の折返し部はソールに形成されたスリットに係止されている。この場合には、靴紐を締め付けることにより、各締付材からの締付力が甲被の表面側から着用者の足に作用するようになっている。
【0009】
しかしながら、これらの公報に記載のものでは、各ベルト部材の締付けにより各ベルト部材に作用する張力がそのまま甲被に作用するようには構成されておらず、このため、様々な足の形状に対応することができず、甲被と着用者の足とのフィット性を向上させるにも限界があった。
【0010】
また、登録実用新案第3038156号公報には、甲被の外側において内甲側および外甲側にそれぞれベルト材を縫合するとともに、各ベルト材の上端を折り返して紐通し部を形成し、これらの紐通し部に靴紐を通したものが示されている。この場合には、折返し部を除くベルト材全体が甲被に縫合されているため、靴紐を締め付けることにより、各ベルト材が縫合されている甲被部位ごと着用者の足を締め付けるようになっている。
【0011】
しかしながら、この場合には、ベルト材全体が甲被に縫合されていることによって、ベルト材を引っ張った際にベルト材の動きが甲被によって阻害され、その結果、ベルト材に十分な張力を作用させることができず、甲被と着用者の足とのフィット性を向上させるにも限界があった。
【特許文献1】実開昭59−128202号公報(第3図参照)
【特許文献2】国際公開第01/82735号パンフレット(第10図参照)
【特許文献3】実公平2−3291号公報(第1図ないし第3図参照)
【特許文献4】特開平9−65908号公報(図1および図3参照)
【特許文献5】特開2001−211903号公報(図1および図2参照)
【特許文献6】特許2832684公報(図1参照)
【特許文献7】登録実用新案第3038156号公報(図1および図3参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、着用者の足に対するフィット性を向上でき、様々な足の形状に対応できるシューズ用緊締構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明に係るシューズ用緊締構造は、甲被に沿って配設され、実質的に上方に延びる緊締部材を備えている。緊締部材の下端はシューズの底部に固着され、上端は甲被上部に固着されており、緊締部材が甲被との間でループ構造を形成している。靴紐は、ループ構造の上端の折返し部に挿通されている。
【0014】
請求項1の発明によれば、靴紐を締め付けると、ループ構造の上端の折返し部を介して、緊締部材および甲被の双方に均等に張力が作用する。しかも、この場合には、緊締部材の上端のみが甲被上部に固着されているので、緊締部材の動きが甲被によって阻害されることはなく、緊締部材に十分な張力を発生させることが可能である。これにより、緊締部材に発生した張力のみならず、甲被に発生した張力によって、着用者の足を十分に締め付けることができるようになり、その結果、甲被と着用者の足とのフィット性を向上できる。このようにして、様々な形状の足に対応できるようになり、足の個体差に係らず、最適なフィット感を提供できる。
【0015】
請求項2の発明においては、緊締部材が、その上端および下端を除いて甲被に固着されることなく、甲被の内側面に沿って配設されている。
【0016】
この場合には、靴紐を締め付けると、甲被の内側に配設された緊締部材が直接着用者の足を締め付けるので、着用者の足に対して強固な締付力を確保できる。
【0017】
請求項3の発明においては、緊締部材が、その上端および下端を除いて甲被に固着されることなく、甲被の外側面に沿って配設されている。
【0018】
この場合には、靴紐を締め付けると、甲被の外側に配設された緊締部材が甲被を介して着用者の足を締め付けるので、請求項2の発明と比較すると、着用者の足に対する締付力をよりソフトなものにすることができる。
【0019】
請求項4の発明においては、緊締部材が、その下端から上端にかけて帯状に延びるベルト状部材である。
【0020】
この場合には、緊締部材による締付圧が帯状のベルト状部材から作用するため、着用者の足に対する緊締部材の締付圧を高くすることができ、これにより、足に対するフィット感を向上できる。
【0021】
請求項5の発明においては、緊締部材が、その下端から上端にかけてシューズの中足部領域に延在する幅広の部材であって、その上端は、前後方向の間隔を隔てて配置された複数のベルトを介して甲被上部に固着されている。
【0022】
この場合には、緊締部材による締付圧が幅広の部材全体から足に作用するため、緊締部材による締付圧を足の締付個所に対してよりソフトに作用させることができ、足の局所に対する過度の締付けを回避できる。
【0023】
請求項6の発明においては、緊締部材の下端がシューズの底部の踵部領域または中足部領域に固着されている。
【0024】
請求項7の発明においては、緊締部材が、甲被の内甲側および外甲側にそれぞれ設けられた一対の部材から構成されている。
【発明の効果】
【0025】
以上のように本発明によれば、下端がシューズ底部に固着されかつ上端が甲被上部に固着されて甲被との間でループ構造を形成する緊締部材を甲被に沿って配設するとともに、ループ構造の上端の折返し部に靴紐を挿通するようにしたので、靴紐を締め付けた際に、ループ構造の上端の折返し部を介して緊締部材および甲被の双方に均等かつ十分な大きさの張力を作用させることができる。これにより、緊締部材および甲被の双方によって、着用者の足を十分に締め付けることができるようになり、甲被と着用者の足とのフィット性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
<第1の実施例>
図1ないし図4は、本発明の第1の実施例によるシューズ用緊締構造を説明するための図であって、図1はシューズの外甲側側面図、図2は図1の一部縦断面図、図3は図2のIII-III線断面図、図4は本実施例による緊締構造の作用効果を従来構造と比較したグラフである。
【0027】
図1に示すように、シューズ1は、ソール2と、その上部に固着された甲被3と、甲被3を緊締するための緊締構造4とを備えている。
【0028】
緊締構造4は、図2および図3に示すように、シューズ1の内甲側において甲被3の内側面3Aに沿って配設された緊締部材40と、シューズ1の外甲側において甲被3の内側面3Bに沿って配設された緊締部材41とを備えている。緊締部材40,41は実質的に上方に延びており、この例ではいずれも帯状のベルト状部材である。
【0029】
各緊締部材40,41の下端40b,41bは、シューズ1の底部、ここでは、ソール2の踵部領域2Aにおいて中底5の側縁部および甲被3の下部に縫合されて固着されている。また、各緊締部材40,41の上端40a,41aは、甲被3の外側面側に折り返されて甲被3の上部に固着されている。各緊締部材40,41は、その上端40a,41aおよび下端40b,41bを除いて甲被3に固着されることなく、甲被3から遊離しており、甲被3との間でループ構造を形成している。靴紐42は、このループ構造の上端の折返し部に挿通している(図3参照)。
【0030】
次に、本実施例の作用効果について説明する。
着用者がシューズ1を着用した状態で靴紐42を締め付けると、靴紐42からの引張力は、ループ構造4の上端の各折返し部に対して、シューズ内方(図3矢印S方向)に作用する。このとき、靴紐42がループ構造上端の各折返し部内を移動可能に設けられていることにより、靴紐42からの引張力は、内甲側および外甲側の双方において、着用者の足の様々な形状に容易に対応して緊締部材および甲被3の双方に均等に張力を作用させる。
【0031】
さらに、この場合には、緊締部材40,41の上端のみが甲被上部に固着されていることにより、靴紐42からの引張力により生じる緊締部材40,41全体のシューズ内方への動きが甲被3の内側面3A,3Bによって阻害されることはなく、靴紐42からの引張力に見合った十分な大きさの張力が緊締部材40,41に発生する。
【0032】
これにより、緊締部材40,41に発生した張力のみならず、甲被3に発生した張力によって、着用者の足を十分に締め付けることができるようになり、その結果、甲被3と着用者の足とのフィット性を向上できる。このようにして、様々な形状の足に対応できるようになり、足の個体差に係らず、最適なフィット感を提供できる。
【0033】
しかも、この場合には、緊締部材40,41が甲被3の内側に配設されているので、靴紐42を締め付けた際には、緊締部材40,41が直接着用者の足を締め付けるようになっており、これにより、着用者の足に対して強固な締付力を確保できる。また、この場合、緊締部材40,41が帯状のベルト状部材であることにより、足に対する緊締部材40,41の締付圧を高くすることができ、これにより、着用者の足に対するフィット感を向上できる。
【0034】
ここで、フィット性の官能評価実験を行った結果を図4に示す。
この実験においては、まず、本発明品(当該第1の実施例のような内側ベルトループ構造のシューズ)と、従来品A(甲被に鳩目を形成してこれに靴紐を通した鳩目タイプのシューズ)と、従来品B(前記特許文献2の第10図に記載されたような内側ベルト独立構造のシューズ)との3種類のシューズを用意した。そして、5人の被験者にそれぞれ3種類のシューズを履き比べてもらって、フィット性の順位を付けてもらった。その際、第1位のものを3点、第2位のものを2点、第3位のものを1点として、各シューズの獲得ポイントを比較した。
【0035】
図4のグラフから分かるように、従来品Aは獲得ポイントが7ポイントで3者のうち最も低く、また従来品Bは、従来品Aよりもわずかに優れていて獲得ポイントが9ポイントであった。これに対して、本発明品は、満点15ポイントのうちの14ポイントを獲得しており、他の2者と比べてもずば抜けて評価が高く、フィット性が飛躍的に向上していることが裏付けられた。
【0036】
<第2の実施例>
図5ないし図7は、本発明の第2の実施例によるシューズ用緊締構造を説明するための図であって、図5はシューズの外甲側側面図、図6は図5の一部縦断面図、図7は図6のVII-VII線断面図である。なお、これらの図において、前記第1の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0037】
これらの図に示すように、この緊締構造4は、シューズ1’の内甲側において甲被3の内側面3Aに沿って配設された緊締部材40’と、シューズ1の外甲側において甲被3の内側面3Bに沿って配設された緊締部材41’とを備えている。緊締部材40’,41’は実質的に上方に延びており、この例では、前記第1の実施例と異なり、いずれもシューズ前後方向に延在する幅広の部材である。
【0038】
各緊締部材40’,41’の下端40’b,41’bは、シューズ1’の底部、ここでは、ソール2の中足部(土踏まず部)領域2Bにおいて中底5の側縁部および甲被3の下部に縫合されて固着されている。また、緊締部材40’の上端40’aは、シューズ前後方向に間隔を隔てて配設された複数のベルト部材45,46,47を介して甲被3の上部に固着されている。同様に、緊締部材41’の上端41’aは、シューズ前後方向に間隔を隔てて配設された複数のベルト部材45’,46’,47’を介して甲被3の上部に固着されている。
【0039】
図7に示す例では、各ベルト部材は、甲被3の内側面3A,3B側から外側面側にかけて延設されている。すなわち、ベルト部材45,46,47は、甲被内側において各下端が中底5の側縁部および甲被3の下部に縫合されて固着されるとともに、甲被3の内側面3Aに沿って配設されて上方に延び、甲被上端で甲被3の外側面側に折り返されるとともに、外側面に沿って配設されて下方に延びている。ベルト部材45は、甲被外側における下端がソール2に固着されている。ベルト部材46,47は、甲被外側において甲被3と一体化されてソール2に固着されている。ベルト部材45,46,47は、甲被内側においては、その下端を除いて甲被3の内側面3Aから遊離しており、緊締部材40’に縫合されている。
【0040】
ベルト部材45,46,47は、甲被外側においては、E点から下方の領域において、甲被3に縫合されている。したがって、緊締部材40’は、ベルト部材45,46,47を介して、甲被3との間でループ構造を形成している。靴紐42は、各ベルト部材45,46,47の折返し部の内側に挿通されている。
【0041】
同様に、ベルト部材45’,46’,47’は、甲被内側において各下端が中底5の側縁部および甲被3の下部に縫合されて固着されるとともに、甲被3の内側面3Bに沿って配設されて上方に延び、甲被上端で甲被3の外側面側に折り返されるとともに、外側面に沿って配設されて下方に延びている。ベルト部材45’は、甲被外側における下端がソール2に固着されている。ベルト部材46’,47’は、甲被外側において甲被3と一体化されてソール2に固着されている(図5参照)。ベルト部材45’,46’,47’は、甲被内側においては、その下端を除いて甲被3の内側面3Bから遊離しており、緊締部材41’に縫合されている。
【0042】
ベルト部材45’,46’,47’は、甲被外側においては、F点から下方の領域において、甲被3に縫合されている。したがって、緊締部材41’は、ベルト部材45’,46’,47’を介して、甲被3との間でループ構造を形成している。靴紐42は、各ベルト部材45’,46’,47’の折返し部の内側に挿通されている。
【0043】
次に、本実施例の作用効果について説明する。
着用者がシューズ1’を着用した状態で靴紐42を締め付けると、靴紐42からの引張力は、各ベルト部材の折返し部に対して、シューズ内方(図7矢印S方向)に作用する。この引張力は、内甲側においては、各ベルト部材45,46,47を介して緊締部材40’および甲被3の双方に均等に張力を発生させる。同様に、外甲側においては、各ベルト部材45’,46’,47’を介して緊締部材41’および甲被3の双方に均等に張力を発生させる。
【0044】
このとき、緊締部材40’,41’は、甲被内部においてその下端40’b,41’bを除いて内側面3A,3Bから遊離しているので、靴紐42からの引張力により生じる緊締部材40’,41’全体のシューズ内方への動きが甲被3の内側面3A,3Bによって阻害されることはなく、靴紐42からの引張力に見合った十分な大きさの張力が緊締部材40’,41’に発生する。
【0045】
これにより、緊締部材40’,41’に発生した張力のみならず、甲被3に発生した張力によって、着用者の足を十分に締め付けることができるようになり、その結果、甲被3と着用者の足とのフィット性を向上できる。このようにして、様々な形状の足に対応できるようになり、足の個体差に係らず、最適なフィット感を提供できる。
【0046】
しかも、この場合には、緊締部材40’,41’が甲被3の内側に配設されているので、靴紐42を締め付けた際には、緊締部材40’,41’が直接着用者の足を締め付けるようになっており、これにより、着用者の足に対して強固な締付力を確保できる。また、この場合、緊締部材40’,41’による締付圧が幅広の部材全体から足に作用するため、緊締部材40’,41’による締付圧を足の締付個所に対してよりソフトに作用させることができ、足の局所に対する過度の締付けを回避できる。
【0047】
<第3の実施例>
図8は、本発明の第3の実施例による緊締構造が採用されたシューズの横断面図である。なお、同図において、前記第1の実施例の図3と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0048】
この第3の実施例では、緊締部材が甲被の外側に配設されている点が前記第1の実施例と異なっている。すなわち、図8に示す緊締構造4は、シューズ1”の内甲側において甲被3の外側面3Cに沿って配設された緊締部材40”と、シューズ1”の外甲側において甲被3の外側面3Dに沿って配設された緊締部材41”とを備えている。緊締部材40”,41”は実質的に上方に延びている。
【0049】
各緊締部材40”,41”の下端40”b,41”bは、シューズ1”の底部に固着されている。また、各緊締部材40”,41”の上端40”a,41”aは、甲被3の内側面側に折り返されて甲被3の上部に固着されている。各緊締部材40”,41”は、その上端40”a,41”aおよび下端40”b,41”bを除いて甲被3に固着されることなく、甲被3から遊離しており、甲被3との間でループ構造を形成している。なお、各緊締部材40”,41”の長さは、当該緊締部材40”,41”のそれぞれがオーバラップする甲被部分の長さよりも長くなっている。靴紐42は、このループ構造の上端の折返し部に挿通している。
【0050】
次に、本実施例の作用効果について説明する。
着用者がシューズ1”を着用した状態で靴紐42を締め付けると、靴紐42からの引張力は、ループ構造4の上端の各折返し部に対して、シューズ内方(図8矢印S方向)に作用する。このとき、靴紐42がループ構造上端の各折返し部内を移動可能に設けられていることにより、靴紐42からの引張力は、内甲側および外甲側の双方において、着用者の足の様々な形状に容易に対応して緊締部材および甲被3の双方に均等に張力を作用させる。
【0051】
また、この場合には、緊締部材40”,41”の上端のみが甲被上部に固着されていることにより、靴紐42からの引張力により生じる緊締部材40”,41”全体のシューズ内方への動きが甲被3の外側面3C,3Dによって阻害されることはなく、靴紐42からの引張力に見合った十分な大きさの張力が緊締部材40”,41”に発生する。
【0052】
これにより、緊締部材40”,41”に発生した張力のみならず、甲被3に発生した張力によって、着用者の足を十分に締め付けることができるようになり、その結果、甲被3と着用者の足とのフィット性を向上できる。このようにして、様々な形状の足に対応できるようになり、足の個体差に係らず、最適なフィット感を提供できる。
【0053】
なお、前記各実施例では、テニスシューズを例にとって説明したが、本発明は、ランニングシューズやバスケットボールシューズなどのその他のスポーツシューズにも同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施例による緊締構造が採用されたシューズの外甲側側面図である。
【図2】図1の一部縦断面図である。
【図3】図2のIII-III線断面図である。
【図4】本発明の第1の実施例による緊締構造の作用効果を従来構造と比較して示すグラフである。
【図5】本発明の第2の実施例による緊締構造が採用されたシューズの外甲側側面図である。
【図6】図5の一部縦断面図である。
【図7】図6のVII-VII線断面図である。
【図8】本発明の第3の実施例による緊締構造が採用されたシューズの横断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1: シューズ

2: ソール
2A: 踵部領域
2B: 中足部領域

3: 甲被
3A,3B: 内側面
3C,3D: 外側面

4: 緊締構造
40,41: 緊締部材
40a,41a: 上端
40b,41b: 下端
42: 靴紐

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シューズの緊締構造であって、
甲被に沿って配設され、実質的に上方に延びる緊締部材を備え、
前記緊締部材の下端がシューズの底部に固着されかつ上端が甲被上部に固着されることにより、前記緊締部材が甲被との間でループ構造を形成しており、
靴紐が前記ループ構造の上端の折返し部に挿通されている、
ことを特徴とするシューズの緊締構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記緊締部材が、その上端および下端を除いて甲被に固着されることなく、甲被の内側面に沿って配設されている、
ことを特徴とするシューズの緊締構造。
【請求項3】
請求項1において、
前記緊締部材が、その上端および下端を除いて甲被に固着されることなく、甲被の外側面に沿って配設されている、
ことを特徴とするシューズの緊締構造。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記緊締部材が、その下端から上端にかけて帯状に延びるベルト状部材である、
ことを特徴とするシューズの緊締構造。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記緊締部材が、その下端から上端にかけてシューズの中足部領域に延在する幅広の部材であって、その上端は、前後方向の間隔を隔てて配置された複数のベルトを介して甲被上部に固着されている、
ことを特徴とするシューズの緊締構造。
【請求項6】
請求項4または5において、
前記緊締部材の下端がシューズの底部の踵部領域または中足部領域に固着されている、
ことを特徴とするシューズの緊締構造。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記緊締部材が、甲被の内甲側および外甲側にそれぞれ設けられた一対の部材から構成されている、
ことを特徴とするシューズの緊締構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−346316(P2006−346316A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−178703(P2005−178703)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)
【Fターム(参考)】