説明

シューズ

【課題】軽量で衝撃吸収性に優れ、かつ曲げ変形や捩れ変形に対する強度と復元力とに優れて、曲がり過ぎや捩れ過ぎを抑制し得る高強度でしなやかに変形する靴底を有した、軽量で履き心地が良く、疲労の可及的な軽減化が図れるシューズを提供すること。
【解決手段】合成樹脂製のアウターソール4の上面に軟質弾性体製のミッドソール6が貼り合わされた靴底8を有するシューズ2において、該ミッドソール6上面の土踏まず対応部分12には繊維強化樹脂シートからなる上部補強シート14が貼着されているとともに、該ミッドソール6とアウターソール4との間の土踏まず対応部分12にも繊維強化樹脂シートからなる下部補強シート16が貼着されて介在されている。下部補強シート16のつま先側端縁16aは、上部補強シート14のつま先側端縁14aよりもさらにつま先側に向けて延出されて、足指の第3関節から第4関節にかけての範囲に相当する部位に達している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軽量で衝撃吸収性に優れるとともに、曲げや捩れ等の変形に対する適度な強度と復元力とを具備して、曲がり過ぎや捩れ過ぎを抑制しつつしなやかに変形し得る履き心地に優れた靴底を有したシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
近年にあっては、軽量化と衝撃吸収性との向上を図るために、合成樹脂製のアウターソールの上面に軟質弾性体製のミッドソールを貼り合わせて形成した靴底を具備した各種のシューズが普及している。このような柔らかい靴底を具備したシューズにあっては、土踏まず対応部分の捻れ過ぎや曲がり過ぎを防止して疲労の軽減を図るために、当該土踏まず対応部分にはシャンクと呼ばれる補強部材を設けている。
【0003】
例えば、特開平9−238704号公報にて示されるシューズにあっては、2mm前後の厚みを有する繊維強化樹脂板を靴幅方向にアーチ状に湾曲させて立体的に形成したシャンクを土踏まず対応部分に埋設させている。
【0004】
また、上記のような板状のシャンクを埋設せずに、ミッドソール上面の土踏まず対応部分に繊維強化樹脂シートを貼着して当該部位の曲げ変形や捻れ変形を抑制する様にしたシューズも既に市販されている。
【特許文献1】特開平9−238704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した板状のシャンクを埋設したソール構造を有したシューズにあっては、土踏まず対応部分に十分な強度を与えて過度な曲げや捻れ変形が生じるのを抑制できるものの、硬くなり過ぎてしまう傾向があり、人間の足の動きに伴う関節部の屈曲変化に追随して変形し難くなってしまい、もって歩行時に踵の浮き上がりが生じる等、その歩行性が阻害されて歩き難くなってしまうという課題があった。
【0006】
一方、ミッドソール上面の土踏まず対応部分に繊維強化樹脂シートを貼着したソール構造を有したシューズにあっては、人間の足の動きに伴う関節部の屈曲変化に追随変形して足にフィットし易いものの、斜面や小さな不陸のある路面で捻れや曲げ等の過度な変形が生じるのを抑制するに十分な硬さが得づらく、足裏の土踏まずにたまる疲労の軽減性に改善が求められていた。
【0007】
また、上記各ソール構造を具備したそれぞれのシューズにあっては、双方ともに、砂利道や石畳路等の様な小さな凹凸が連続する路面を歩行もしくは走行すると、その凹凸による局所的な突き上げ力の緩衝性が低く、足裏の踏みつけ部分に当該突き上げ力が直接的に伝わりやすいという課題もあった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、軽量で衝撃吸収性に優れ、かつ曲げや捩れ等の変形に対する適度な強度と復元力とを具備して、曲がり過ぎや捩れ過ぎを抑制しつつしなやかに変形し得る靴底を有した、履き心地が良く疲労の可及的な軽減化が図れるシューズを提供することにある。また、路面の小さな凹凸による局所的な突き上げ力の緩衝性に優れた靴底を有した、履き心地が良く疲労の可及的な軽減化が図れるシューズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するためにこの発明にあっては、合成樹脂製のアウターソールの上面に軟質弾性体製のミッドソールが貼り合わされた靴底を有するシューズにおいて、該ミッドソール上面の土踏まず対応部分に繊維強化樹脂シートからなる上部補強シートを貼着するとともに、該ミッドソールとアウターソールとの間の土踏まず対応部分にも繊維強化樹脂シートからなる下部補強シートを介在させたことを特徴とする。
【0010】
ここで、前記下部補強シートはそのつま先側端縁が、前記上部補強シートのつま先側端縁よりも、さらにつま先側に向けて延出されて、足指の第3関節から第4関節にかけての範囲に相当する部位に達している構成となすのが望ましい。
【0011】
また、前記ミッドソールの上面側に、前記上部補強シートよりもつま先側と踵側との2箇所に位置させて、その踵部位と足指のボール部相当部分とに、該ミッドソールよりも軟質な発泡樹脂製のクッション材を配設することが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るシューズによれば、軟質弾性体製のミッドソール上面の土踏まず対応部分に繊維強化樹脂シートからなる上部補強シートを貼着して設けるばかりか、当該ミッドソールとアウターソールとの間の土踏まず対応部分にも繊維強化樹脂シートからなる下部補強シートを介在させて設けているので、ミッドソールの厚み方向の衝撃吸収性を維持しつつ、曲げ変形や捩れ変形時に生じる引っ張り力に対する上面側と下面側との強度を著しく向上させることができる。このため、衝撃吸収性を維持したまま、曲げ変形や捩れ変形に対する強度(耐力)と復元力とに優れて、曲がり過ぎや捩れ過ぎを抑制し得る適度な強度を有してしなやかに変形する靴底を具備した、軽量で履き心地が良く、疲労の可及的な軽減化が図れるシューズを提供できる。また、経時使用による土踏まず対応部分の永久変形(型くずれ)の発生を防止できるようになる。
【0013】
また、下部補強シートのつま先側端縁を、足指の第3関節から第4関節にかけての範囲に相当する部位までつま先側に向けて延出させれば、砂利路面や石畳路面等のような小さな凹凸がある路面で、当該凹凸による足裏踏み付け部への局所的な突き上げ力を下部補強シートによってその周囲に分散させて大きな面積で吸収することができ、もって疲労の軽減化を可及的に図れるようになる。また、下部補強シートの復元力により、爪先上がりの形状を元の状態に戻すことができ、経時使用による永久変形(型くずれ)の発生を防止できるようになる。
【0014】
さらに、ミッドソールの上面側に、前記上部補強シートよりもつま先側と踵側との2箇所に位置させて、その踵部位と足指のボール部相当部分とに、該ミッドソールよりも軟質な発泡樹脂製のクッション材を配設すれば、足裏の踏み付け部分形状により一層柔軟にフィットする、衝撃吸収性に優れて疲労度を可及的に軽減できる履き心地の良いシューズを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明に係るシューズの好適な実施の形態について、ウォーキングシューズを例示して添付図面に基づき詳述する。図1は本発明に係るシューズの靴底を示す裏面図であり、図2(a)は図1の左側面図、同図(b)は図1の右側面図、図3は本発明に係るシューズの靴底を示す平面図、図4は図1中のA−A線にて示す靴長方向の縦断面図、図5は図1中のB−B線にて示すつま先側踏み付け部分の靴幅方向の縦断面図、図6は図1中のC−C線にて示すつま先側踏み付け部分の靴幅方向の縦断面図、図7は図1中のD−D線にて示す土踏まず対応部分の靴幅方向の縦断面図、図8は図1中のE−E線にて示す土踏まず対応部分の靴幅方向の縦断面図、図9は図1中のF−F線にて示す踵部の靴幅方向の縦断面図である。
【0016】
図1、図2に示すように、このウォーキングシューズ2の底面、つまり接地時の踏み面にはアウターソール4が設けられている。このアウターソール4には軟質な合成樹脂材料が使用されている。合成樹脂材料としては、ゴム、ウレタンなどである。そして、図3〜図9の各図に示すように、この軟質な合成樹脂製のアウターソール4の上面には、発泡ポリウレタンやEVA等の衝撃吸収性に優れた軟質弾性体製のミッドソール6が張り合わされて靴底8が形成されている。そして、当該アウターソール4の周縁には、上方に立ち上がってミッドソール6の上面よりも上方に突出する立ち上がり部4aが形成されており、この立ち上り部4aに図外のアッパー部材の下縁部が一体的に貼り付けられてシューズ2が形成されるようになっている。
【0017】
ここで、図3、図4、図5、図6の各図から分かるように、上記ミッドソール6の上面には、つま先側に位置する足指の第3関節部周辺のボール部相当部分(踏みつけ部分)に凹部9aが形成されており、この凹部9aには当該ミッドソール6よりも軟質な発泡樹脂製のクッション材10aが設けられている。
【0018】
また、図3、図4、図9の各図から分かるように、上記ミッドソール6の上面には、踵側に位置する踵相当部分に凹部9bが形成されており、この凹部9bにも当該ミッドソール6よりも軟質な発泡樹脂製のクッション材10bが設けられている。
【0019】
また、図2と図4とから分かるように、ミッドソール6とアウターソール4とからなる靴底8の土踏まず対応部分12は、下面側が上方に凹まされてアーチ状に湾曲形成されている。そして、このアーチ状の土踏まず対応部分12におけるミッドソール6の上面には、図3、図4、図7、図8に示すように、繊維強化樹脂シートからなる上部補強シート14が貼着されている。即ち、この実施形態では、当該上部補強シート14は、図3と図4とに示すように、土踏まず対応部分12のつま先側端部から踵側端部にかけての範囲にのみ配設されており、上記クッション材10aは上部補強シート14よりもつま先側と踵側との2箇所に位置されて、踵部位と足指のボール部相当部分との足裏の踏み付け部分に配設されている。
【0020】
ここで、本実施の形態では、当該繊維強化シートにはカーボン繊維強化シート、具体的には、炭素繊維の織布(クロス)を強化材とし、熱可塑性のアクリル樹脂をマトリックスとして0.3mm程の厚みで形成された炭素繊維複合材料材である三菱レイヨン株式会社製の「パイロフィルシート(TR3110)」を用いている。なお、この実施形態では炭素繊維強化樹脂シートを採用しているが、ガラス繊維やアラミド繊維、ケブラー繊維等を用いた繊維強化樹脂シートも採用し得る。また、マトリックスは熱硬化性のエポキシなどでも良い。
【0021】
また、図3〜図8の各図から分かるように、ミッドソール6とアウターソール4との間の土踏まず対応部分12にも上記繊維強化樹脂シートと同材料からなる下部補強シート16が貼着されて介在されている。つまり、図4と図7と図8とに示されているように、ミッドソール6の土踏まず対応部分12は、その上下面が上部補強シート14と下部補強シート16との2枚の繊維強化樹脂シートで挟まれたサンドイッチ構造となっている。なお、この実施形態では上部補強シート14と下部補強シート16とには同一材料の繊維強化樹脂シートを用いているが、異種材料からなる繊維強化樹脂シートを組み合わせて用いる様にしても良い。
【0022】
そして、この下部補強シート16は、図3と図4とに示されるように、そのつま先側端縁16aが上部補強シート14のつま先側端縁14aよりもさらにつま先側に向けて延出されていて、足指の第2指の第3関節から第4関節にかけての範囲、つまり基節骨のつま先側端と踵側端との両端にある2つの関節部間に亘った範囲に相当した、踏み付け部位にまで達っせられている。
【0023】
ここで、図3に示してあるように、当該第3関節から第4関節にかけての範囲に相当する踏み付け部位は、各種の靴サイズのものにおいて、それぞれの基準足長をlとすれば、この足長lに対してその踵側端部を基準点として75〜90%の長さ(0.75l〜0.9l)の範囲に相当し、当該範囲内に下部補強シート16のつま先側端縁14aが位置する様に設定される。また、下部補強シート16の踵側端縁16bは、同じく踵側端部を基準点として30〜45%の長さ(0.3l〜0.45l)の範囲内に位置する様に設定される。そして、当該範囲は横断面視でみると、踵骨のつま先側約1/3に当たる部分と、これよりもややつま先側に当たる部分との範囲に相当する。なお、下部補強シート16と上部補強シート14とは共にその足幅方向の寸法は、それらが貼着される部位における各部幅寸法の35%以上に、もしくは、踏み付け部対応部分は50%以上で土踏まず対応部分12は35%以上に設定される。
【0024】
また、本実施形態では、図1に示すように、アウターソール4の土踏まず対応部分12には、下部補強シート16を視認できるように窓部18が開口形成されており、この窓部18には下部補強シート16の表面を覆う透明な保護カバー部材20が貼着されている。
【0025】
従って、以上のように構成される本実施形態のシューズ2にあっては、図3と図4とに示すように、軟質弾性体製のミッドソール6上面の土踏まず対応部分に繊維強化樹脂シートからなる上部補強シート14を貼着して設けるばかりか、当該ミッドソール6とアウターソール4との間の土踏まず対応部分12にも繊維強化樹脂シートからなる下部補強シート16を介在させて設けているので、ミッドソール6の厚み方向の衝撃吸収性を維持しつつ、当該ミッドソール6の曲げ変形や捩れ変形時に生じる引っ張り力に対する上面側と下面側との強度を著しく向上させることができる。このため、衝撃吸収性を維持したまま、曲げ変形や捩れ変形に対する強度(耐力)と復元力とを向上させることができ、もって曲がり過ぎや捩れ過ぎを抑制し得る適度な強度を有してしなやかに変形する靴底が得られる。これ故、軽量で履き心地が良く、疲労の可及的な軽減化が図れるシューズ2を提供できるようになる。また、経時使用による土踏まず対応部分12の永久変形(型くずれ)の発生を防止できるようになる。
【0026】
また、図3と図4とに示すように、下部補強シート16のつま先側端縁16aを、足指の第3関節から第4関節にかけての範囲に相当する足裏踏み付け部位までつま先側に向けて延出させているので、砂利路面や石畳路面等のような小さな凹凸がある路面で、当該凹凸による足裏踏み付け部位への局所的な突き上げ力を下部補強シート16によってその周囲に分散させて大きな面積で吸収することができる。このため疲労の軽減化を可及的に図れるようになる。また、下部補強シート16の復元力により、爪先上がりに大きく変形してもその形状を元の状態に戻すことができ、経時使用による永久変形(型くずれ)の発生を防止できるようになる。更には、歩行時等の蹴り出しの際に、足のつま先側の踏み付け部分が土踏まず対応部分12に対して90°近くまで曲げられても、その足裏の屈曲形状変化に追随させてしなやかに靴底8を変形させられるばかりか、その変形の復元力を前進方向への蹴り出し力として利用して、歩行のサポートを行わせることができる。
【0027】
さらに、図3と図4とに示すように、ミッドソール6の上面側に、前記上部補強シート14よりもつま先側と踵側との2箇所に位置させて、その踵部位と足指のボール部相当部分とに、ミッドソール6よりも軟質な発泡樹脂製のクッション材10a,10bを配設しているので、足裏の踏み付け部分の形状にミッドソール6をより一層柔軟にフィットさせて、衝撃吸収性の更なる向上と疲労度の可及的な軽減化を図ることができ、履き心地の良いシューズ2となすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は上記実施例にて説明したウォーキングシューズだけでなく、日常のタウンユースのシューズやジョギングシューズの他、多種のいかなるスポーツ種目のシューズ、たとえばゴルフシューズ、テニスシューズ、バドミントンシューズにも適用することができ、その利用範囲は広い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るシューズの靴底を示す裏面図。
【図2】(a)は図1の左側面図、(b)は図1の右側面図。
【図3】本発明に係るシューズの靴底を示す平面図。
【図4】図1中のA−A線にて示す靴長方向の縦断面図。
【図5】図1中のB−B線にて示すつま先側踏み付け部分の靴幅方向の縦断面図。
【図6】図1中のC−C線にて示すつま先側踏み付け部分の靴幅方向の縦断面図。
【図7】図1中のD−D線にて示す土踏まず対応部分の靴幅方向の縦断面図。
【図8】図1中のE−E線にて示す土踏まず対応部分の靴幅方向の縦断面図。
【図9】図1中のF−F線にて示す踵部の靴幅方向の縦断面図。
【符号の説明】
【0030】
2 シューズ
4 アウターソール
6 ミッドソール
8 靴底
10a クッション材(つま先側)
10b クッション材(踵側)
12 土踏まず対応部分
14 上部補強シート
14a つま先側端縁
14b 踵側端縁
16 下部補強シート
16a つま先側端縁
16b 踵側端縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製のアウターソールの上面に軟質弾性体製のミッドソールが貼り合わされた靴底を有するシューズであって、該ミッドソールの上面には繊維強化樹脂シートからなる上部補強シートが貼着されているとともに、該ミッドソールとアウターソールとの間の土踏まず対応部分にも繊維強化樹脂シートからなる下部補強シートが介在されていることを特徴とするシューズ。
【請求項2】
前記下部補強シートのつま先側端縁が、前記上部補強シートのつま先側端縁よりもさらにつま先側に向けて延出されて、足指の第3関節から第4関節にかけての範囲に相当する部位に達していることを特徴とする請求項1に記載のシューズ。
【請求項3】
前記ミッドソールの上面側に、前記上部補強シートよりもつま先側と踵側との2箇所に位置させて、その踵部位と足指のボール部相当部分とに、該ミッドソールよりもさらに軟質な発泡樹脂製のクッション材を配設したことを特徴とする請求項1また2のいずれかに記載のシューズ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−18167(P2008−18167A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194400(P2006−194400)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(390010917)ヨネックス株式会社 (31)
【Fターム(参考)】