説明

ショベルバケット

【課題】プレートの組付性を向上させる。
【解決手段】先端に掘削用の4本の爪22が設けられたバケット本体20に固定されるプレートとしての除貝用樹脂板30には、リブ32が設けられると共に4本の爪22にボルト24を用いて組み付けられるボルト穴が形成されてなるから、除貝用樹脂板30の補強用の部材を必要とすることなく、組付対象の部品数を抑えて除貝用樹脂板30を爪22に直接固定することができ、プレートとしての除貝用樹脂板30の組付性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設重機に取り付けられるショベルバケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、油圧ショベルなどの建設重機に取り付けられ、火力発電所の導水路などの壁面に付着する貝類を掻き落とすためのショベルバケットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このショベルバケットには、バケット本体に取付座がボルト締めにより取り付けられ、この取付座に除貝用の薄板状のプレートがボルト締めにより取り付けられている。そして、薄板状のプレートを壁面に押し付けながらショベルバケットを移動させることにより、壁面に付着した貝類を掻き取るものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−34481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したショベルバケットにおいては、取付座と共に薄板状のプレートを取り付ける必要があるため、取り付けに必要なボルトの数や部品数が増加して取り付けに時間を要するものとなる。一方で、薄板状のプレートをバケット本体に直接取り付けることも考えられるが、プレートは貝類を掻き取る際に壁面に押し付けられるため、その際に掛かる力によりプレートが割れてしまうおそれがある。
【0005】
本発明のショベルバケットは、プレートの組付性を向上させることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のショベルバケットは、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のショベルバケットは、
建設重機に取り付けられるショベルバケットであって、
先端に掘削用の複数の爪が設けられたバケット本体と、
一辺が平面に対して線接触するよう前記複数の爪の先端からはみ出た位置で前記バケット本体に固定されたプレートと
を備え、
前記プレートは、複数のリブが設けられると共に前記複数の爪に当接した状態で固定される固定部が形成されてなる
ことを特徴とする。
【0008】
この本発明のショベルバケットでは、先端に掘削用の複数の爪が設けられたバケット本体に固定されたプレートには、複数のリブが設けられると共に前記複数の爪に当接した状態で固定される固定部が形成されてなる。複数のリブを設けることにより、プレートの強度を向上させることができ、プレートが平面に押し付けられた際にプレートが割れるのを防止することができる。この結果、補強用の部品を取り付けることなく、バケット本体の爪にプレートを直接固定することができ、プレートの組付性を向上させることができる。
【0009】
こうした本発明のショベルバケットにおいて、前記プレートは、前記複数のリブとして、前記一辺に平行となるよう配置された第1のリブと、該第1のリブに直交するよう配置された複数の第2のリブとが設けられてなるものとすることもできる。こうすれば、一方向のみにリブが設けられるものに比してプレートの強度をより向上させることができ、プレートが割れるおそれをより低減させることができる。この態様の本発明のショベルバケットにおいて、前記複数の爪は、前記プレートとの当接面が矩形状に形成され、前記プレートは、前記第1のリブと前記第2のリブとが前記複数の爪の当接面がはまるよう配置されてなるものとすることもできる。こうすれば、爪に固定する際のプレートの位置決めが容易となるから、プレートの組付性をより向上させることができる。
【0010】
また、本発明のショベルバケットにおいて、回転軸が前記一辺に平行となるよう配置されたローラーと、該ローラーが初期位置で前記一辺からはみ出ると共に該一辺に直交する方向に回転可能な状態で前記プレートの面上をスライドするよう前記ローラーを付勢するスプリングとを有するローラー機構を備えるものとすることもできる。こうすれば、プレートが平面に押し付けられた際に、プレートに掛かる力をローラーで受けて分散させることができるから、プレートが割れるおそれをさらに低減させることができる。
【0011】
さらに、本発明のショベルバケットにおいて、前記複数の爪は、取付孔が形成され、前記プレートは、前記固定部として、前記複数の爪の取付孔に対応する位置に取付孔が形成され、前記両取付孔にボルトを通して固定されてなるものとすることができる。こうすれば、プレートの脱着が容易となるので、組付性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】除貝用樹脂板30が固定されたショベルバケット10の斜視図である。
【図2】ショベルバケット10の正面図である。
【図3】ショベルバケット10の側面図である。
【図4】除貝用樹脂板30の構成を示す構成図である。
【図5】本実施形態のショベルバケット10が取り付けられた油圧ショベル100による除貝作業の様子を示す説明図である。
【図6】変形例のショベルバケット10Aの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態である除貝用樹脂板30が固定されたショベルバケット10の斜視図であり、図2は、ショベルバケット10の正面図であり、図3は、ショベルバケット10の側面図であり、図4は、除貝用樹脂板30の構成を示す構成図である。
【0014】
実施例のショベルバケット10は、図示しない油圧ショベルなどの建設重機のアーム102に取り付けられるバケット本体20と、バケット本体20に固定される除貝用樹脂板30とを備える。バケット本体20は、先端側に4本の爪22が形成されると共に後端側に取付ピン28を用いてアーム102に取り付けられるためのブラケット26が形成されている。また、除貝用樹脂板30は、ボルト24とナット25,ワッシャーを用いてバケット本体20の4本の爪22にボルト締めにより組み付けられて固定されている。
【0015】
爪22は、それぞれ、根元から先端まで幅が略一定であって、先端に向かうほど厚み方向が先細りとなるようテーパ形状に形成され、また、除貝用樹脂板30に当接する当接面が矩形状に形成されている(図2,3参照)。また、爪22には、除貝用樹脂板30を組み付ける際のボルト24を通すためのボルト穴22aが形成されている。なお、除貝用樹脂板30が固定されていない状態では、爪22は通常の掘削用の爪として機能する。
【0016】
除貝用樹脂板30の構造について、図4に基づいて説明する。図4(a)は除貝用樹脂板30の上面図であり、図4(b)は除貝用樹脂板30の下面図であり、図4(c)は図4(b)のA−A断面図である。この除貝用樹脂板30は、本実施形態では外周縁付きの矩形状の樹脂製のプレートとして構成されている。除貝用樹脂板30は、その長辺の方向がバケット本体20の幅方向(図2,図4における横方向)に平行になると共に爪22の先端からはみ出た状態で組み付けられている。このため、除貝用樹脂板30の1つの長辺を平面に線接触させることが可能となっている。また、除貝用樹脂板30は、4つのボルト穴30aが形成されると共に下面に図4中縦横に延びるリブ32が設けられている。このリブ32は、長辺に平行となるよう設けられた2本の横リブ32aと、この横リブ32aに直交するよう設けられた8本の縦リブ32bとからなる。また、この横リブ32aと縦リブ32bとにより囲まれる矩形状の領域が爪22の矩形状の当接面がはまる大きさとなるよう、横リブ32aと縦リブ32bとが配置されている。このため、除貝用樹脂板30を下面を爪22への当接面としてバケット本体20に組み付けると、横リブ32a間および縦リブ32b間に各爪22がそれぞれはまり込んで、爪22のボルト穴22aに除貝用樹脂板30の4つのボルト穴30aが対向する位置となる。このようにリブ32が配置されることにより、除貝用樹脂板30をバケット本体20に組み付ける際の位置決めを容易に行なって、スムーズにボルト24を通すことができる。
【0017】
次に、こうして構成された本実施形態のショベルバケット10を用いた作業の一例として除貝作業について説明する。図5は、本実施形態のショベルバケット10が取り付けられた油圧ショベル100での除貝作業の様子を示す説明図である。この除貝作業は、例えば、発電所の導水路の壁面に付着したカワヒバリ貝などの貝を除去するために行なわれる。この除貝作業は、ショベルバケット10の先端に取り付けられた除貝用樹脂板30を除去したい部分より上方の壁面に当接させ、除貝用樹脂板30を壁面に押し付けながらアーム102を作動させてショベルバケット10を下方へ移動させることにより行なわれる。
【0018】
ここで、このような除貝作業時には、壁面への押付力に対する反力が除貝用樹脂板30に作用するため、押付力の程度によっては除貝用樹脂板30が割れるおそれがある。特に、ショベルバケット10の爪22の間となる部分や爪22の先端からはみ出た部分において割れが発生しやすいものとなる。そのような割れを防止するため、除貝用樹脂板30とは別に補強用の部材などを組み付けることも考えられる。ただし、組み付けの対象となる部品やボルト,ナットなどが増加することになるため、除貝用樹脂板30の組付性が低下することになる。このため、本実施形態では、除貝用樹脂板30に横リブ32aおよび縦リブ32bからなるリブ32を設けておき、除貝作業時における割れの発生を防止しているのである。これにより、割れ対策としての補強用の部材を必要とすることなく、組付対象の部品数を抑えて除貝用樹脂板30を爪22に直接固定することができるから、除貝用樹脂板30の組付性を向上させることができる。また、除貝用樹脂板30は、バケット本体20にボルト締めで組み付けられるから、容易に脱着することができる。これらのことから、ショベルバケット10を掘削用と除貝用とに用いる場合においては、両作業を速やかに切り替えることができる。除貝用樹脂板30にリブ32を設けてバケット本体20の爪22にボルト締めで固定するのはこうした理由による。
【0019】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のバケット本体20が本発明のバケット本体に相当し、除貝用樹脂板30がプレートに相当し、リブ32がリブに相当し、ボルト穴30aが固定部(プレートの取付孔)に相当する。また、横リブ32aが第1のリブに相当し、縦リブ32bが第2のリブに相当する。さらに、ローラー42がローラーに相当し、スプリング44がスプリングに相当し、ローラー機構40がローラー機構に相当し、ボルト穴22aが爪の取付孔に相当する。
【0020】
以上詳述した本実施形態のショベルバケット10によれば、先端に掘削用の4本の爪22が設けられたバケット本体20に固定される除貝用樹脂板30には、リブ32が設けられると共に4本の爪22にボルト24を用いて組み付けられるボルト穴30aが形成されてなるから、除貝用樹脂板30の補強用の部材を必要とすることなく組付対象の部品数を抑えて爪22に直接固定することができ、除貝用樹脂板30の組付性を向上させることができる。また、リブ32は、横リブ32aおよび縦リブ32bからなるため、一方向のみにリブが設けられるものに比して除貝用樹脂板30の強度をより向上させることができる。さらに、横リブ32aおよび縦リブ32bは、爪22の当接面がはまるよう配置されているから、除貝用樹脂板30の位置決めを容易に行なうことができる。
【0021】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0022】
上述した実施形態では、除貝用樹脂板30の下面にリブ32を設け上面にはリブ32を設けないものとしたが、上面にリブを設けるものとしてもよい。また、上面に除貝用樹脂板30に作用する力を緩和するためのローラー機構40を設けるものとしてもよい。その場合の変形例のショベルバケット10Aの側面図を図6に示す。なお、図6では、本実施形態と同じ構成要素には同じ図番を付し、その説明は省略する。図示するように、変形例のショベルバケット10Aは、ローラー機構40が取り付けられた除貝用樹脂板30Aがバケット本体20に固定されている。ローラー機構40は、回転軸42aが除貝用樹脂板30Aの長辺の方向に平行となるよう配置されたローラー42と、初期位置でローラー42の一部を除貝用樹脂板30Aの外方に配置すると共にローラー42を回転可能な状態で除貝用樹脂板30の面上を長辺に直交する方向にスライドするよう付勢するスプリング44と、スプリング44を受けるスプリング受け46とを備えている。これにより、除貝作業において、除貝用樹脂板30Aを壁面に当接させる際や壁面に押し付けながら下方へ向かって移動させる際に、壁面から除貝用樹脂板30Aに作用する力をローラー42(スプリング44)で受けることができ、除貝用樹脂板30Aに掛かる力を分散させることができる。このため、過大な力が除貝用樹脂板30Aに作用するのを防止することができ、除貝用樹脂板30Aが割れるおそれをさらに少ないものとすることができる。この結果、除貝用樹脂板30Aを補強用の部材を用いることなく爪22に組み付けて組付性を向上させるものとした場合に、割れなどの問題が発生するのをより確実に防止することができる。なお、ローラー42は、除貝用樹脂板30の長辺方向の全長に亘って取り付けられるものとしてもよいし、部分的に複数箇所に取り付けられるものとしてもよい。
【0023】
上述した実施形態では、バケット本体20に4本の爪22が設けられているものとしたが、これに限られず、2以上の複数であれば爪は何本であってもよい。
【0024】
上述した実施形態では、爪22の当接面がはまり込むようリブ32の配置を定めるものとしたが、これに限られず、等間隔となるよう配置を定めるものとしてもよい。また、除貝用樹脂板30の一部にバケット本体20の開口部の縁にはまり込むスリットを形成し、これにより除貝用樹脂板30の位置決めを行なうものなどとしてもよい。
【0025】
上述した実施形態では、除貝用樹脂板30は外周縁付きの樹脂製のプレートとしたが、これに限られず、外周に縁がないものとしてもよい。また、除貝用のプレートは、樹脂製に限られず、硬質ゴム製やプラスチック製,木製などとしてもよい。
【0026】
上述した実施形態では、除貝用樹脂板30が爪22にボルト締めにより固定されるものとしたが、これに限られず、爪22に固定されるものであればよく、接着や固定バンドなどにより固定されるものとしてもよい。ただし、除貝用樹脂板30の脱着を容易なものとするため、本実施形態のようにボルト締めにより固定するものが好ましい。
【0027】
上述した実施形態では、ショベルバケット10の使用例として導水路の壁面の除貝作業を例示したが、これに限られず、壁面に付着した何らかの付着物を除去する作業としてもよいし、壁面だけでなく底面に付着した付着物を除去する作業としてもよい。また、付着物に限られず、浸食や経年変化などにより生じた凹凸を平らにならす作業などに使用するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0028】
10,10A ショベルバケット、20 バケット本体、22 爪、22a ボルト穴、24 ボルト、25 ナット、26 ブラケット、28 取付ピン、30,30A 除貝用樹脂板、30a ボルト穴、32 リブ、32a 横リブ、32b 縦リブ、40 ローラー機構、42 ローラー、42a 回転軸、44 スプリング、46 スプリング受け、100 油圧ショベル、102 アーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設重機に取り付けられるショベルバケットであって、
先端に掘削用の複数の爪が設けられたバケット本体と、
一辺が平面に対して線接触するよう前記複数の爪の先端からはみ出た位置で前記バケット本体に固定されたプレートと
を備え、
前記プレートは、複数のリブが設けられると共に前記複数の爪に当接した状態で固定される固定部が形成されてなる
ことを特徴とするショベルバケット。
【請求項2】
前記プレートは、前記複数のリブとして、前記一辺に平行となるよう配置された第1のリブと、該第1のリブに直交するよう配置された複数の第2のリブとが設けられてなる請求項1記載のショベルバケット。
【請求項3】
請求項2記載のショベルバケットであって、
前記複数の爪は、前記プレートとの当接面が矩形状に形成され、
前記プレートは、前記第1のリブと前記第2のリブとが前記複数の爪の当接面がはまるよう配置されてなる
ショベルバケット。
【請求項4】
回転軸が前記一辺に平行となるよう配置されたローラーと、該ローラーが初期位置で前記一辺からはみ出ると共に該一辺に直交する方向に回転可能な状態で前記プレートの面上をスライドするよう前記ローラーを付勢するスプリングとを有するローラー機構を備える請求項1ないし3いずれか1項に記載のショベルバケット。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか1項に記載のショベルバケットであって、
前記複数の爪は、取付孔が形成され、
前記プレートは、前記固定部として、前記複数の爪の取付孔に対応する位置に取付孔が形成され、前記両取付孔にボルトを通して固定されてなる
ショベルバケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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