説明

シラン変性コポリマーの製造方法

本発明は、モノマーMを実質的に、遷移金属塩、少なくとも2座のリガンド、原子移動重合開始剤、還元剤およびモノマーMを含有する混合物中でラジカル原子移動重合により反応させる第一の重合工程、およびシリル基置換されたモノマーSを、第一の重合工程から生じた混合物に添加して、シリル基置換されたモノマーSを、第一の重合工程から生じた混合物中で、ラジカル原子移動重合により反応させる第二の重合工程を有するポリマー混合物の製造方法に関する。得られたポリマー混合物は、シーラントのための結合剤添加剤として使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー混合物の製造方法、ポリマー混合物、コポリマーおよびポリマー混合物の使用に関する。
【0002】
US−A−2006/0089431は、ラジカル重合により製造されたシラン変性ポリ(メタ)アクリレートが、機械的特性が、特に伸び率および付着性に関して不十分であるという欠点を有することを記載している。というのも、得られるシリル基は、アンカー基として実質的にポリマーと鉱物質表面(たとえばコンクリート表面)との間の付着をもたらすものであるが、得られたポリマー中にランダムに分散しているからである。ラジカル重合による製造によって、これらの特性の改善はほとんど達成されない。というのも、この重合技術はポリマー構造の適切な形成のためにほとんど余地を有していないからである。しかし、末端の、もしくは主として末端のシリル基を有するポリマー、つまりそれぞれのポリマー鎖の末端に、少なくともほぼ1つの(または複数の)シリル基を有するポリマーは、特に弾性および鉱物質の支持体表面に対する付着性に関して、実質的により良好な適用特性を有している。
【0003】
WO−A−2003091291によれば、シラン変性末端を有するポリマーは、比較的高価な方法を用いて複数の工程で製造され、その際、第一工程では、いわゆる原子移動ラジカル重合(tom ransfer adikal olymerisation(ATRP))によって、シラン変性可能なアルケニルプレポリマーが製造されている。
【0004】
この原子移動ラジカル重合(ATRP)は、いわばリビング重合(シュードリビング重合)と、もしくは制御されたラジカル重合とみなすことができ、(「従来の」)ラジカル重合からは実質的に、移動反応または連鎖中断反応が、反応試薬および反応条件の特別な選択によって高度に抑制されることによって区別される。しかしこの抑制は、一般に完全には行われない。というのも、さもないとリビング重合の場合が存在するからである。シュードリビング重合によれば、リビング重合の欠点(モノマーの限定された選択可能性、複雑な方法技術、不純物に対する敏感さ等)を回避することができ、それにもかかわらずリビング重合の本質的な利点(比較的緩和な反応条件、制御可能なポリマー構造(たとえばブロックポリマーが製造可能)、狭い分子量分布を有するポリマー)を有している。
【0005】
ATRPの原理は、以下の一般的な図式によって記載される:
【化1】

G−(X)m:原子移動重合開始剤(ATRP開始剤)
G:移動可能な基を有していないATRP開始剤の断片
(X)m:数mの移動可能な基(Xはたとえばハロゲン、たとえばBr)
tk−Xk/リガンド:ATRP触媒(酸化状態kにおける触媒活性形)
tk+1−Xk+1/リガンド:ATRP触媒(酸化された触媒不活性形)
M:モノマー
G−(X)m-1:(マクロ)ラジカル
(X)m-1−G−(M)−G−(X)m-1:連鎖停止の反応生成物
a、kda、kp、kt:活性化(A)、失活(D)、連鎖の成長(P)および連鎖の中断(T)の速度の定数。
【0006】
決定的なことは、原子移動重合開始剤G−(X)mは、短時間でラジカルが発生し、このラジカルがその後ふたたび「捕捉」されるように、ATRP触媒(Mtk−Xk/リガンド)と相互作用することである。原子移動重合開始剤G−(X)mは、有機ハロゲン化合物(X=(シュード)ハロゲン、たとえばBrまたはCl)の形で存在していてもよく、その際、Gは、適切な有機基を表す。Mtk−Xk/リガンドは、リガンドを有する遷移金属Mtの配位化合物を表し、これによりレドックス反応によってラジカル形成が可能になる。その際、原子移動重合開始剤は、可逆的な方法で(平衡)ラジカル種G°−(X)m-1および触媒(Mtk+1−Xk+1/リガンド)の相応する酸化形を生じながら、前記のレドックス反応において配位化合物(Mtk−Xk/リガンド)と反応する。生じたラジカル種G°−(X)m-1は、モノマーMの重合を開始し、G°−(X)m-1+Mを生じ、これはG°−(X)m-1と同様に平衡状態で存在する。後者は活性化kaおよび失活kdaの平衡定数により決定されるが、原子移動重合開始剤種(これは「ドーマント種(schlafende Spezies)」との適切な別名も有する)の側に存在する。
【0007】
成長する鎖の平均寿命は、(「従来の」)ラジカル重合の場合には、ATRPとは異なって極めて短い(秒単位の範囲)。というのも、連鎖が開始されると、成長反応は極めて迅速に行われ、次いでこれは連鎖の中断によって終了される。これに対してATRPの場合、反応性の(マクロ)ラジカル種は、「ドーマント種」と平衡状態にあり、「ドーマント種」は、平衡状態で有利である。従ってポリマー鎖は、(マクロ)ラジカル種の形成後に、モノマーの重合によって「わずかに」成長し、次いでふたたび「ドーマント種」の状態に戻り、その際、この過程は連続的に繰り返される。従って、ドーマント種と平衡状態にある成長する鎖は、長い平均寿命を有する(数時間〜数年)。この成長する鎖の、および該鎖と平衡状態にある「ドーマント種」の平均寿命が、実質的に比較的(「従来の」)ラジカル重合における場合よりも長いので、種々のモノマーの適切な、時間をずらした添加によってポリマー中でのモノマー単位の分布を適切に制御することが可能である。たとえばATRPを用いると、時間的に前後して行われる種々のモノマーの添加により、ブロックポリマーを合成することが可能である。たとえばS−M−Sの構造タイプのブロックポリマーを製造するための可能性は、2つの移動可能な基G−(X)2を有する原子移動重合開始剤を使用し、まずタイプMのモノマーを重合を行い、引き続きタイプSのモノマーを添加することにより重合を終了する。しかし、Sブロック中にさらにタイプMの残留モノマーが組み込まれていることも可能である。
【0008】
(「従来の」)ラジカル重合に対して、G°−(X)m-1+Mの濃度が低いという条件によって、関連する副反応、特に停止反応、たとえば連鎖中断反応および連鎖移動反応が著しく抑制されるが、ただし完全に抑制されるわけではない。停止反応によって、連鎖開始のために必要とされる配位化合物Mtk−Xk/リガンドが、酸化された形であるMtk+1−Xk+1/リガンドの方向への平衡状態の不可逆的な推移によって系から除去される。換言すればこの場合、触媒作用を有する配位化合物の不可逆的な酸化が行われ、これは次いで触媒反応にはもはや利用されないため、還元された形が低減することによって極端な場合には、重合が停止する。これに対抗するために、ATRPの場合には、配位化合物Mtk−Xk/リガンドが、使用されるモノマーMに対する比率において、比較的高い量で使用される。しかしこのことは、得られるポリマー生成物の品質劣化(たとえば不所望の変色、これによりコストのかかる精製工程が必要になる)を意味する。
【0009】
従って、前記の、原子移動ラジカル重合(ATRP)により製造されるシラン変性可能なアルケニルプレポリマーは、前記の配位化合物をなお著量で含有している。その後の方法工程において、ヒドロシリル化は白金触媒の使用下に行われ、その後にさらに精製工程が続く。このヒドロシリル化工程は、約70〜80%の収率を有するのみであり、かつ得られたポリマー鎖のわずか20〜30%が、2より少ないシリル基を有する。方法が多工程であること、およびポリマー生成物の必要とされる高価な後処理措置(特に前記の配位化合物を除去するため)により、経済的な魅力は低減する。さらに、配位化合物を除去することにより、意図せずにシラン基が破壊されうる危険が存在する。というのも、たとえばこれらは湿分に対して敏感だからである。
【0010】
得られたプレポリマー(たとえばカネカ社のXMAP(登録商標))はその他のプレポリマーおよびエポキシ含有調製物、たとえばエポキシ樹脂、エポキシ化ポリスルフィド等と一緒に適用することができる。
【0011】
従って本発明の根底に存在する課題は、特に良好にシーラントおよび接着剤のための添加剤として適切なシラン変性末端封鎖ポリマーを経済的な方法で製造することである。
【0012】
前記課題の解決手段は、ポリマー混合物の製造方法であって、
(i)モノマーMを実質的に、遷移金属カチオン、少なくとも2座のリガンド、原子移動重合開始剤、還元剤およびモノマーMを含有する混合物中でラジカル原子移動重合により反応させる第一の重合工程、
(ii)シリル基置換されたモノマーSを、第一の重合工程から生じた混合物に添加して、シリル基置換されたモノマーSを、第一の重合工程から生じた混合物中で、ラジカル原子移動重合により反応させる第二の重合工程
を有し、第二の重合工程は、第一の重合工程で使用されたモノマーMの合計の少なくとも50モル%が予めラジカル原子移動重合により反応してから初めて開始され、ならびに使用されるモノマーMおよびSは、第一の重合工程においてモノマーMは、第二の重合工程でラジカル原子移動重合により反応するモノマーSの比較量の1〜1000倍モル量が反応するように供給され、モノマーMは、シリル基を有していない、ラジカル原子移動重合可能なエチレン性不飽和化合物を含み、かつモノマーSは、それぞれが少なくとも1のシリル基を有する、ラジカル原子移動重合可能なエチレン性不飽和化合物を含む、ポリマー混合物の製造方法である。
【0013】
本発明による方法ではいわゆる電子移動原子移動ラジカル重合により(再)発生された活性化剤(ctivator (e)enerated by lectron ransfer tom ransfer adical olymerization(A(R)GET ATRP)が使用される(これはWO−A−2005/087819、Shen等、Polymer Preprints 2006、47(1)、156、Macromolecules 2006、39、39〜45、ならびにMacromolecules 2005、38、4139〜4146に記載されている)。前記のATRPに対して、高いMtk−Xk/リガンド濃度を回避するために、A(R)GET ATRPの場合には、さらに還元剤を使用する。還元剤は酸化された種(Mtk+1−Xk+1/リガンド)を、重合の維持のために必要な還元された形(Mtk−Xk/リガンド)に変換する。このことにより、Mtk−Xk/リガンド種の低い濃度(たとえば数ppm)を使用するのみで十分である。
【0014】
ATRPの使用に対して、A(R)GET ATRPを適用することのもう1つの利点は、酸素(たとえば空気からの)に対するA(R)GET ATRPの感受性が比較的低いことである。不利な場合では、重合の「開始」の遅延が懸念される。これに対して、ATRPの場合、すでに少量の酸素を適用することにより、触媒(Mtk−Xk/リガンド)の不可逆的な酸化が行われ、重合が排除される。通常は、それにもかかわらず、A(R)GET ATRPの場合、空気酸素が慣用の方法、たとえば(繰り返される)窒素もしくは他の不活性ガスによる洗浄によって、またはドライアイスの使用によって大まかに除去される(場合により真空も適用)。その他には、A(R)GET−ATRPの場合には、使用される遷移金属カチオンを、問題なく高い酸化状態で使用することができる。というのも、遷移金属カチオンは、還元剤によって還元されるからである。より高い酸化状態では、遷移金属カチオンは酸素に対してより安定しており、かつしばしばより安価である。
【0015】
要すれば、本発明による方法によって、シラン変性されたポリ(メタ)アクリレートを含有するポリマー混合物を、一段階で、ひいては特に安価に合成することができるということができる。触媒錯体の量は、その高価な除去が不要であり、特に生成物の着色を懸念する必要がないほどわずかである。
【0016】
重合が行われうる反応条件に関して、以下に記載する。重合は、1もしくは複数の溶剤の存在下に行われる。付加的な補助溶剤または界面活性剤、たとえばグリコールまたは脂肪酸のアンモニウム塩はしばしば存在する。本発明による方法の多くの実施態様は、溶剤を使用しないか、またはできる限り少ない。適切な有機溶剤または溶剤の混合物は、純粋なアルカン(ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタンなど)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン等)、エステル(酢酸エチルエステル、酢酸プロピルエステル、酢酸ブチルエステルまたは酢酸ヘキシルエステル、脂肪酸エステル等)、およびエーテル(ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等)、またはこれらの混合物である。水性媒体中での重合の場合には、反応混合物が重合の間に、均質な相の形で存在していることを保証するために、水と混和可能な、または親水性の補助溶剤を添加することができる。本発明による方法のために有利に使用可能な補助溶剤は、脂肪族エーテル、グリコールエーテル、ピロリジン、N−アルキルピロリジノン、N−アルキルピロリドン、アミド、カルボン酸、およびこれらの塩の群から、エステル、有機スルフィド、スルホキシド、スルホン、アルコール誘導体、ヒドロキシエーテル誘導体、ケトンなどから、ならびにこれらの誘導体および混合物から選択される。その他の実施法として、重合を塊状で実施することもできる。この場合、反応の実施および反応器は、重合の間に生じる重合熱を除去することができるように構成する。有利な重合温度に関しては、室温〜約150℃が適切であり、有利には50〜120℃、および特に有利には60〜100℃が適切である。通常は重合を標準圧力で実施する。有利に第一の重合工程も第二の重合工程も、実質的に溶剤を使用せず(しばしば少量の補助溶剤のみ)、かつ使用されるモノマーMとモノマーSとの合計が、使用される成分の少なくとも80質量%を含む塊状重合の形で実施することを確認する必要がある。
【0017】
本発明による方法にとって特に好適なモノマーMは、(メタ)アクリル酸および/またはこれらの誘導体である。従って通常は、使用されるモノマーMの少なくとも70質量%が、メタクリレートおよび/またはアクリレートの形で存在する。このことは、有利には少なくとも70質量%の一般式
【化2】

[上記の一般式中、Rは、同じであるか、または異なっており、かつ水素を表すか、1〜30個の炭素原子を有する線状もしくは分枝鎖状の、脂肪族もしくは芳香族の側鎖を表すことができる]の(メタ)アクリルモノマーを含有するモノマー混合物を使用することを意味している。この側鎖は、その官能基に関して特に限定されず、たとえばアルキル基、アルケニル基(ビニル基も)、アルキニル基(アセチレニル基も)、フェニル基、アミノ基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基および/またはシアノ基のような官能基を有していてよい。モノマーMを選択する際には、基本的に、プロトン性官能基、たとえばヒドロキシ、カルボン酸、スルホン酸等が、モノマー混合物中に含有されていないか、またはわずかに含有されているにすぎないことに注意すべきである。プロトン性モノマーの割合は、モノマーMの全割合に対して15モル%未満、有利には5モル%未満である。
【0018】
特に有利なモノマーMは、メチルアクリレート(MA)、メチルメタクリレート(MMA)、エチルアクリレート(EA)、n−ブチルアクリレート(n−BA)、n−ブチルメタクリレート(n−BMA)、t−ブチルアクリレート(t−BA)、t−ブチルメタクリレート(t−BMA)、2−エチルヘキシルアクリレート(EHA)、2−エチルヘキシルメタクリレート(EHMA)、イソ−デシルアクリレート(i−DA)、イソ−デシルメタクリレート(i−DMA)、ラウリルアクリレート(LA)、ラウリルメタクリレート(LMA)、ステアリルアクリレート(SA)、ステアリルメタクリレート(SMA)、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、シアノアクリレート、シトラコン酸エステル、イタコン酸エステルおよびこれらの誘導体である。
【0019】
上記の(メタ)アクリル酸誘導体以外に、有利には最大で30質量%の割合でジエニル化合物またはビニル化合物、特にビニルアセテート、ビニルケトン、N−ビニルホルムアミド、ビニルピリジン、ビニルN−アルキルピロール、ビニルオキサゾール、ビニルチアゾール、ビニルピリミジン、ビニルイミダゾール、エチルビニルエーテル、アクリルアミド、フマル酸、マレイン酸無水物、スチレンおよびこれらの誘導体の群から選択される1もしくは複数のビニル化合物を使用することができる。
【0020】
第一の重合工程は、複数の部分工程からなっていてもよく、これらの工程においてそのつど異なったモノマーMをラジカル原子移動重合により反応させると、ブロックコポリマー状の鎖セグメントが形成される。
【0021】
シリル基置換されたモノマーSは、有利には一般式L−(CH2nSiR3p43-pにより記載され、この式中で、Lは、CH=CH2、O−CO−C(CH3)=CH2またはO−CO−CH=CH2を表し、R3は、同じであるか、または異なっており、1〜18個の炭素原子を有する分枝鎖状もしくは非分枝鎖状のアルキル基、1〜18個の炭素原子を有する環式アルキル基、1〜18個の炭素原子を有するアリール基、および/または1〜18個の炭素原子を有するアリールアルキル基を表し、R4は、同じであるか、または異なっており、−(CH2−CH2−O)m−R3、−(CH2−CHR3−O)m−R3、−NR33、−O−N=CR33、−O−COR3および/または−NH−COR3を表し、その際、n=0〜10の整数であり、m=1〜50の整数であり、かつp=0、1、2または3である。
【0022】
水性媒体中での重合の場合には、使用されるモノマーSが、水に対して安定したシリル基、たとえばSi(O−イソプロピル)3を有するべきであることに注意すべきである。
【0023】
本発明の有利な実施態様では、第二の重合工程においてラジカル原子移動重合で反応するモノマーSの少なくとも20モル%がトリメトキシ置換および/またはトリエトキシ置換されたシリル基を有する。この種の特に有利なモノマーSは、たとえば(3−メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−メタクリルオキシプロピル)トリエトキシシランまたは(メタクリルオキシメチル)トリメトキシシランである。このことにより得られるコポリマーもしくは得られるポリマー混合物の付着性ならびに弾性がさらに改善される。
【0024】
モノマーSの構造(特に二重結合の化学的環境)は、モノマーSの重合特性に本質的な影響を与える。1のシラン基をポリマーのそれぞれの末端に有する、いわゆるテレケリックコポリマーと、複数のシラン基をポリマー末端の近くに有するいわゆるシュードテレケリックポリマーとが区別される。テレケリック誘導性モノマーSは、モノマー単位Sがコポリマー鎖に組み込まれた後に重合を停止するので、そのつどモノマーSの1の構造単位のみが、コポリマー末端に組み込まれる。シュードテレケリックなコポリマーの場合には、その条件に応じて、モノマーSの1もしくは複数の構造単位が組み込まれる。系中でなお利用可能である残留モノマーMが組み込まれることもある。これを以下では例に基づいて図式的に説明する:
a)テレケリック
S−(M)d−S
b)シュードテレケリック(例)
SS−(M)d−S
SS−(M)d−SS
SS−(M)d−SMS
MSS−(M)d−SMS
【0025】
テレケリックなコポリマーを生じるモノマーSの例は、アリル誘導体(たとえばCH2=CH−CH2−SiR3p43-p)である。(メタ)アクリル誘導体(たとえばCH2=CH−COO−(CH23−SiR3p43-pまたはCH2=CMe−COO−(CH23−SiR3p43-p)は、シュードテレケリックなコポリマーの形成を誘導する。
【0026】
従って特に有利な実施態様では、使用されるモノマーSは、その反応後にラジカル原子移動重合によって、シュードテレケリックおよび/またはテレケリックな鎖の発生が誘導されるように選択する。
【0027】
通常、本発明による方法において第二の重合工程は、予め第一の重合工程において使用されるモノマーMの合計の少なくとも70モル%、有利には少なくとも90モル%が、ラジカル原子移動重合によって反応してから初めて開始されるように行う。さらに、多くの場合、第一の重合工程において、第二の重合工程におけるラジカル重合によるモノマーSの比較的なモルよりも、2〜100倍、有利には10〜50倍モルのモノマーMが、ラジカル原子移動重合によって反応するように方法を実施する。
【0028】
すでに前記で説明したように、重合を実施するために触媒として遷移金属カチオンを使用する。
【0029】
通常は、Cu、Fe、Ru、Cr、Co、Ni、Sm、Mn、Mo、Pd、Pt、Re、Rh、Ir、Sbおよび/またはTiの群からの少なくとも1の遷移金属カチオン、有利にはCu、FeまたはRuを使用する。
【0030】
これらの遷移金属カチオンは、単独で使用することも、混合物として使用することもできる。遷移金属カチオンが、重合のレドックスサイクルを触媒することが推定され、その際、レドックス対のCu2+/Cu+またはFe3+/Fe2+が有効である。遷移金属カチオンの供給源として、たいていの遷移金属塩を使用することができ、これはしばしばハロゲン化物、たとえば塩化物、または臭化物として、アルコキシド、水酸化物、酸化物、硫酸塩、リン酸塩またはヘキサフルオロリン酸塩として、および/またはトリフルオロメタン硫酸塩として存在する。有利な種には、高い酸化状態の遷移金属塩、たとえばCuO、CuBr2、CuCl2、Cu(SCN)2、Fe23、FeBr3、RuBr3、CrCl3およびNiBr3が含まれる(使用される還元剤は、適切な酸化状態への還元をもたらす)。遷移金属塩は、より低い酸化状態で添加することもできる。しかしこのような種は不安定であり、かつコスト面でより不利である。
【0031】
遷移金属カチオンの相対的な割合については、有利に遷移金属カチオンに対してモノマーMが、102〜108、有利には104〜106、特に有利には105〜106のモル比で使用されるということができる。
【0032】
重合は、遷移金属カチオンと共に配位化合物(錯体)を形成することができる2座もしくは多座のリガンドの存在下で行われる。これらのリガンドは、特に遷移金属化合物の溶解度の向上のために役立つ。リガンドのもう1つの重要な機能は、安定した有機金属化合物の形成が回避されることである。このことは特に重要である。というのも、これらの安定した化合物は、選択された反応条件で重合触媒として適切ではないからである。さらに、リガンドが、移動可能な原子基の引き抜きを容易にすることが推測される。適切な本発明によるリガンドは一般に、1もしくは複数の窒素原子、酸素原子、リン原子および/または硫黄原子を有しており、これらを介して遷移金属カチオンは配位して結合されることができる。
【0033】
特に有利なリガンドは、N原子を含有するキレートリガンドである。これらには特に2,2′−ビピリジン、アルキル−2,2′−ビピリジン、たとえば4,4′−ジ−(5−ノニル)−2,2′−ビピリジン、4,4′−ジ−(5−ヘプチル)−2,2′−ビピリジン、ヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミン(Me6TREN)、N,N,N′,N″,N″−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン(HMTETA)、N,N,N′,N′−テトラ[(2−ピリダール)メチル]エチレンジアミン(TPEN)および/またはテトラメチルエチレンジアミンである。リガンドは単独で使用することも、混合物として使用することもできる。
【0034】
リガンドは、インサイチュー反応により遷移金属塩(ハロゲン化物、酸化物、硫酸塩、リン酸塩等)と共に配位化合物を形成することができるか、または配位化合物をまず合成し、かつ引き続き反応混合物に添加することができる。リガンド対遷移金属カチオンの比は、リガンドの座の数および遷移金属の配位数に依存する。
【0035】
有利には少なくとも2座のリガンドに対する遷移金属カチオンは、0.01〜10、有利には0.1〜8、特に有利には0.3〜3のモル比で使用する。有利には使用される原子移動重合開始剤は、一般式
G−(X)m
により記載され、前記式中で、Xは、同じであるか、または異なっており、かつハロゲン原子、有利にはClおよびBrを表すか、かつ/またはシュードハロゲン基、有利にはSCNを表し、mは整数であり、有利には1〜6、特に有利には2である。
【0036】
mが高い数である場合、これは樹状ポリマーを生じる。mは、移動可能な基、または「ポリマーの手」の数であり、(シュード)ハロゲン基の数ではない。m=1の場合には、原子移動重合開始剤は、単官能性であり、ポリマー鎖は、1つの方向にのみ成長する。m=2の場合、有利には二官能性の原子移動重合開始剤が存在する。この場合、官能化は両方のポリマー末端において可能である。CHCl3はたとえば単官能性の開始剤であり、かつ図式的にG−(X)として記載される。ジメチル−2,6−ジブロモヘプタンジオエート
【化3】

は、二官能性の原子移動重合開始剤であり、図式的にはG−(X)2として記載される。
【0037】
Gは、ラジカルの安定化のために貢献する分子断片として存在しており、これは移動可能な基を有していない。
【0038】
換言すれば、Gは、移動可能な基を有していない開始剤の断片であり、これは重合の開始剤としてラジカルの形成下に作用し、エチレン性不飽和化合物に付加し、かつポリマー中に組み込まれる。Gに関する特別な限定は存在しないが、しかし基Gは、有利にはラジカルを安定化することができる置換基を有しているべきである。このような置換基はしばしば−CN、−COR′、−CO2R′である(R′はアルキル基、アリール基および/またはヘテロアリール基を表す)。適切なアルキル基は、1〜40個の炭素原子を有する飽和または不飽和の、分枝鎖状または線状の炭化水素基、たとえばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、2−メチルブチル、ペンテニル、シクロヘキシル、ヘプチル、2−メチルヘプテニル、3−メチルヘプチル、オクチル、ノニル、3−エチルノニル、デシル、ウンデシル、4−プロペニルウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、セチルエイコシル、ドコシルおよび/またはエイコシルテトラトリアコンチルである。問題になっているアリール基は、芳香族環中に6〜14個の炭素原子を有し、置換されていてもよい芳香族基である。置換基はたとえば1〜6個の炭素原子を有する線状および分枝鎖状のアルキル基、たとえばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、2−メチルブチルまたはヘキシル、シクロアルキル基、たとえばシクロペンチル基およびシクロヘキシル、芳香族基、たとえばフェニルまたはナフチル、アミノ基、エーテル基、エステル基、ならびにハロゲン化物である。芳香族基の例は、フェニル、キシリル、トルイル、ナフチルまたはビフェニルである。適切なヘテロアリール基は、少なくとも1のCH基がNにより、または2つの隣接するCH基がS、OまたはNHにより置換されているヘテロ芳香族環構造、たとえばチオフェン、フラン、ピロール、チアゾール、オキサゾール、ピリジン、ピリミジンおよびベンゾフランの基であり、これらは同様に前記の置換基を有していてもよい。
【0039】
移動可能な原子Xは、特に有利にはBrおよび/またはClの形で存在している。原子移動重合開始剤の例は、アルキルハロゲン化物(たとえばCHCl3、CCl4、CBr4、CBrCl3)、ベンジルハロゲン化物(たとえばPh2CHCl、Ph2CCl2、PhCCl3)、(エチルブロモイソブチレート(EBIB)、CCl3CO2CH3、CHCl2CO2CH3、エチレングリコールジブロモイソブチレート(EGBIB)、ブタンジオールジブロモイソブチレート(BDBIB)、CCl3COCH3、CHCl2COPh、2−ブロモプロピオニトリル、スルホニルハロゲニド(たとえばメシルクロリド(CH3SO2Cl)、トシルクロリド(CH3PhSO2Cl)ならびにクロロスルホニルイソシアネート(Cl−SO2−N=C=O)誘導体)である。最終的に、少なくとも2つのポリマー末端にシリル基を有するポリマーを得るために、通常は二官能性の原子移動重合開始剤が必要とされる。この特に有利な例は、CCl4、ジメチル−2,6−ジブロモヘプタンジオエート(DMDBHD)
【化4】

またはジエチル−メソ−2,5−ジブロモアジペート(DEDBA)
【化5】

である。
【0040】
有利には遷移金属塩を原子移動重合開始剤に対して、10-4〜0.5、有利には10-3〜0.1、特に有利には10-3〜10-2のモル比で使用する。
【0041】
還元剤を選択するための本質的な基準は、還元剤が、酸化された種の遷移金属カチオン/リガンド(Mtk+1−Xk+1/リガンド)を還元して、その際にできる限りラジカルを発生しないか、またはその際に常に遷移金属カチオン/リガンド(Mtk+1−Xk+1/リガンド)が存在しているようにすることができることである。従ってこれは、A(R)GET ATRPメカニズムによらないで進行する重合を回避するために望ましい。適切な還元剤を選択する場合には、さらに、できる限り、そのつどの重合系中で還元剤の十分な溶解度が存在するように注意すべきである。
【0042】
還元剤として、有機もしくは無機の反応試薬、たとえば第3級アミン、特にトリエチルアミンまたはトリブチルアミン、スズ化合物、たとえばスズ2−エチルヘキサノエート(Sn(2EH)2)またはシュウ酸スズ、亜硫酸ナトリウム、低い酸化状態のその他の硫黄化合物、アスコルビン酸、アスコルビン酸−6−パルミテート、無機鉄塩、ヒドラジン水和物、アルキルチオール、メルカプトアルコール、エノール化可能なカルボニル化合物、アセチルアセトネート、カンファースルホン酸、ヒドロキシアセトン、還元糖、グルコースおよび類似の糖類、単糖類、テトラヒドロフラン、ジヒドロアントラセン、シラン、2,3−ジメチルブタジエン、アミン、ポリアミン、ヒドラジン誘導体、ホルムアミジンスルホン酸、ボラン、アルデヒドおよび/またはこれらの誘導体を使用することができる。
【0043】
還元剤の定量的な割合については、通常は還元剤を遷移金属カチオンに対して1〜107、有利には1〜105、特に有利には1〜103のモル比で使用するということができる。
【0044】
本発明は、前記の方法により製造可能であり、かつトリメトキシ置換および/またはトリエトキシ置換されたシリル基を有するコポリマーを含有するポリマー混合物にも関する。
【0045】
最後に挙げたコポリマーもまた、本発明によるものであるとみなされる。
【0046】
前記のポリマー混合物は、本発明によれば、シーラントまたは接着剤(フリース接着剤)のための結合剤添加剤として使用される。
【0047】
以下では実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0048】
例1(B1):塊状のシュードテレケリックなシラン変性されたコポリ(n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート)
機械的な攪拌装置、窒素/真空導入部、過圧弁、および熱電素子を備えた、500mLのガラスフラスコ中に、n−ブチルアクリレート(Chemical Abstracts Service(CAS)141−32−2)400.00gおよびn−ブチルメタクリレート(CAS97−88−1)50.00gを添加する。引き続き、少量のN−エチルピロリドン(CAS2687−91−4)中、遷移金属塩の臭化銅(II)(CAS7789−45−9)90mgおよびリガンドのTPEN(N,N,N′,N′−テトラ[(2−ピリダール)メチル]エチレンジアミン、CAS16858−02−9)180mgからなる混合物を添加する。撹拌下に、窒素/真空で大まかに不活性化する。引き続き、還元剤のSn(2EH)2(スズジ−2−エチルヘキサノエート、CAS301−10−0)250mgを添加する。混合物を80℃に加熱する。15分後に二官能性の開始剤DMDBHD(ジメチルジブロモヘプタンジオエート、CAS868−73−5)4.0gを添加し、重合を開始する。4時間後に、Dynasilan(登録商標)MEMO(3−メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、CAS2530−85−0)30.0gを添加する。2時間後に、真空下で残留モノマーを沸騰させ、かつプレポリマーを瓶詰めする。
【0049】
結果:
触媒錯体の量は少なく、その高価な除去は不要である。プロセスは1段階であり、かつ慣用の反応器中で、特別な不活性化を行わなくても実施され、このことによりプロセスは高い経済的な魅力を有している。
【0050】
例2(B2):可塑剤を含有するシュードテレケリックなシラン変性コポリアクリレート
機械的な攪拌装置、窒素/真空導入部、過圧弁、および熱電素子を備えた、250mLのガラスフラスコ中に、アクリレート混合物(n−ブチルアクリレート(CAS141−32−2)50g、エチルアクリレート(CAS140−88−5)20g、およびエチルジグリコールアクリレート(CAS32002−24−7)20g)90.00g、および可塑剤DIUP(ジイソウンデシルフタレート、CAS85507−79−5)30gを添加する。引き続き、n−ブチルアクリレート10g中、遷移金属塩の臭化銅(II)(CAS7789−45−9)10mgおよびリガンドのTPEN(N,N,N′,N′−テトラ[(2−ピリダール)メチル]エチレンジアミン、CAS16858−02−9)30mgからなる混合物を添加する。撹拌下に、ドライアイス/窒素/真空で大まかに不活性化する。還元剤のSn(2EH)2(スズジ−2−エチルヘキサノエート、CAS301−10−0)55mgを添加する。混合物を80℃に加熱する。15分後に二官能性の開始剤DEDBHD(ジエチルジブロモヘプタンジオエート、CAS868−68−8)0.50gを添加し、重合を開始する。4時間後に、Silquest A−174(3−メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、CAS2530−85−0)4.0gを添加する。2時間後に、真空下で残留モノマーを沸騰させ、かつプレポリマーを瓶詰めする。触媒錯体の量は少なく、高価な除去は不要である。
【0051】
結果:
この方法は1段階であり、慣用の反応器中で、特別な不活性化を行わなくても実施され、従って特に安価である。
【0052】
比較例1(VB1):ランダムなシラン変性ポリ(n−ブチルアクリレート)
機械的な攪拌装置、窒素/真空導入部、過圧弁、および熱電素子を備えた、500mLのガラスフラスコ中に、可塑剤DIUP(ジイソウンデシルフタレート、CAS85507−79−5)50.00gを装入し、かつ160℃に加熱する。窒素下に、n−ブチルアクリレート(CAS141−32−2)450.00g、KBM−503(3−メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、CAS2530−85−0)9.0g、およびジアゾ開始剤VAZO 52(CAS4419−11−8)1.0gからなる混合物を4時間で計量供給する。2時間後に、真空下で残留モノマーを沸騰させ、無色のプレポリマーを瓶詰めする。
【0053】
比較例2(VB2):還元剤なし
機械的な攪拌装置、窒素/真空導入部、過圧弁、および熱電素子を備えた、250mLのガラスフラスコ中に、アクリレート混合物(n−ブチルアクリレート(CAS141−32−2)50g、エチルアクリレート(CAS140−88−5)20g、およびエチルジグリコールアクリレート(CAS32002−24−7)20g)90.00gおよび可塑剤DIUP(ジイソウンデシルフタレート、CAS85507−79−5)30gを添加する。引き続き、n−ブチルアクリレート(CAS141−32−2)10g中、遷移金属塩の臭化銅(II)10mgおよびリガンドのTPEN(N,N,N′,N′−テトラ[(2−ピリダール)メチル]エチレンジアミン、CAS16858−02−9)30mgからなる混合物を添加する。撹拌下に、ドライアイス/窒素/真空で大まかに不活性化する。混合物を80℃に加熱する。15分後に二官能性の開始剤DEDBHD(ジエチルジブロモヘプタンジオエート、CAS868−68−8)0.50gを添加し、重合を開始する。10時間後に反応剤は依然として全く液状である。つまり重合は行われなかった。シリル化モノマーは添加されなかった。
【0054】
比較例3(VB3):ATRPを用いたシュードテレケリックなシラン変性ポリ(n−ブチルアクリレート)
機械的な攪拌装置、窒素/真空導入部、過圧弁、および熱電素子を備えた、500mLのガラスフラスコ中に、アセトニトリル(CAS75−05−8)44gおよびn−ブチルアクリレート(CAS141−32−2)100.00gを添加する。引き続き、臭化銅(I)(CAS7789−70−4)4.2gおよびPMDETA(ペンタメチルジエチレントリアミン、CAS3030−47−5)0.17gを添加する。撹拌下に、窒素/真空で不活性化する。混合物を70℃に加熱する。引き続き、二官能性の開始剤DEDBA(ジエチル−メソ−2,5−ジブロモアジペート、CAS869−10−3)8.8gを添加して重合を開始する。連続的にn−ブチルアクリレート400.00gを少量ずつ、トリエチルアミン0.68gと共に添加する。6時間後にDynasilan(登録商標)MEMO(3−メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、CAS2530−85−0)11.0gを添加する。2時間後に真空下で残留モノマー、アクリロニトリルおよびトリエチルアミンを沸騰させる。
【0055】
結果:
触媒錯体の量は、プレポリマーが著しく変色するほどの高さである。高価な除去が必要である。プロセスは多段階であり、かつ安価であるとみなすことはできない。その他の試験の場合と同様に、架橋したプレポリマーが存在する。
【0056】
公知のプレポリマーの慣用の調製物:
原料 質量%
シュードテレケリックなシリル化ポリアクリレート 結合剤 30
Jayflex DIUP 可塑剤 15.0
Socal U1S2 炭酸カルシウム 38.2
Omyacarb VP OM 510 沈降炭酸カルシウム 7.5
Tronox 435 顔料 4.0
Dynasylan VTMO 脱水剤 3.0
Dynasylan AMMO 定着剤 1.0
Dispalon 6500 チキソトロープ剤 0.6
Sanol LS765 光安定剤 0.3
Tinuvin 213 UV吸収剤 0.3
BNT−CAT 440 スズ触媒 0.1
可塑剤は、調整の間に、またはプレポリマー合成の間に添加することができる。
【0057】
引張強さおよび伸び率:
B1 B2 B3
50%弾性率(MPa) 0.3 0.2 0.6
100%弾性率(MPa) 0.4 0.3 0.9
引張強さ(MPa) 0.4 0.3 1.1
伸び率(%) 60 50 190
【0058】
VB3以外の全ての調製物は白色である。VB3は、著しい変色のため不適切である。VB2は、重合が行われなかったために、同様に不適切である。例VB1は、公知のランダムにシリル化されたポリアクリレートが、特に良好な機械的特性を有していないことを示している。明らかな改善は、例B2によって、安価で着色の少ない、シュードテレケリックなシリル化ポリアクリレートの形で示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー混合物の製造方法であって、
(i)モノマーMを実質的に、遷移金属カチオン、少なくとも2座のリガンド、原子移動重合開始剤、還元剤およびモノマーMを含有する混合物中でラジカル原子移動重合により反応させる第一の重合工程、
(ii)シリル基置換されたモノマーSを、第一の重合工程から生じた混合物に添加して、シリル基置換されたモノマーSを、第一の重合工程から生じた混合物中で、ラジカル原子移動重合により反応させる第二の重合工程
を有し、第二の重合工程は、第一の重合工程で使用されたモノマーMの合計の少なくとも50モル%が予めラジカル原子移動重合により反応してから初めて開始され、ならびに使用されるモノマーMおよびSは、第一の重合工程においてモノマーMが、第二の重合工程でラジカル原子移動重合によりモノマーSが反応する比較量の1〜1000倍モル反応するように供給され、モノマーMは、シリル基を有していない、ラジカル原子移動重合可能なエチレン性不飽和化合物を含み、かつモノマーSは、それぞれが少なくとも1のシリル基を有する、ラジカル原子移動重合可能なエチレン性不飽和化合物を含む、ポリマー混合物の製造方法。
【請求項2】
第二の重合工程は、第一の重合工程で使用されるモノマーMの全量の少なくとも70モル%、有利には少なくとも90モル%が、予めラジカル原子移動重合によって反応してから初めて開始されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第一の重合工程において、モノマーMは、モノマーSが第二の重合工程でラジカル原子移動重合により反応する比較量の2〜100倍、有利には10〜50倍モルが反応することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
モノマーMを、遷移金属カチオンに対して、102〜108、有利には104〜106、特に有利には105〜106のモル比で使用することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
遷移金属カチオンを、少なくとも2座のリガンドに対して、0.01〜10、有利には0.1〜8、特に有利には0.3〜3のモル比で使用することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
遷移金属カチオンを、原子移動重合開始剤に対して、10-4〜0.5、有利には10-3〜0.1、特に有利には10-3〜10-2のモル比で使用することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
還元剤を、遷移金属カチオンに対して、1〜107、有利には1〜105、特に有利には1〜103のモル比で使用することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
第一および第二の重合工程を、実質的に溶剤を使用しない塊状重合の形で実施し、かつ合計して使用されるモノマーMおよびモノマーSの合計は、使用される成分の少なくとも80質量%を含むことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
使用されるモノマーMの少なくとも70質量%が、メタクリレートおよび/またはアクリレートの形で存在していることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
シリル基置換されたモノマーSが、一般式
L−(CH2nSiR3p43-p
[式中、
Lは、CH=CH2、O−CO−C(CH3)=CH2またはO−CO−CH=CH2を表し、
3は、同じであるか、または異なっており、かつ1〜18個の炭素原子を有する分枝鎖状もしくは非分枝鎖状のアルキル基、1〜18個の炭素原子を有する環式アルキル基、1〜18個の炭素原子を有するアリール基および/または1〜18個の炭素原子を有するアリールアルキル基を表し、
4は、同じであるか、または異なっており、かつ−(CH2−CH2−O)m−R3、−(CH2−CHR3−O)m−R3、−OR3、−NR33、−O−N=CR33、−O−COR3および/または−NH−COR3を表し、
n=0〜10の整数、
m=1〜50の整数、および
p=0、1、2または3である]により記載されるものであることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
使用されるモノマーSは、モノマーSのラジカル原子移動重合による反応後に、シュードテレケリック鎖および/またはテレケリック鎖の発生が誘導されるように選択されていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
使用される遷移金属カチオンが、Cu、Fe、Ru、Cr、Co、Ni、Sm、Mn、Mo、Pd、Pt、Re、Rh、Ir、Sbおよび/またはTiの群から選択されており、有利にはCu、FeまたはRuであることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
使用される原子移動重合開始剤が、一般式
G−(X)m.
[式中、Xは、同じであるか、または異なっており、ハロゲン原子、有利にはClまたはBr、および/またはシュードハロゲン基、有利にはSCNを表し、mは整数、有利には1〜6、特に有利には2であり、かつGは、移動可能な基を有さず、ラジカルの安定化に寄与する分子断片として存在する]により記載されるものであることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
使用される還元剤は、第一の重合および第二の重合工程の間に、ラジカルが発生しないように選択されていることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
第一の重合工程が複数の部分工程からなり、これらの部分工程においてそのつど異なったモノマーMがラジカル原子移動重合により反応されて、ブロックコポリマー状の鎖セグメントが形成されることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
第二の重合工程においてラジカル原子移動重合により反応するモノマーSの少なくとも20モル%が、トリメトキシ置換および/またはトリエトキシ置換されたシリル基を有することを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
請求項16記載の方法により製造することができるポリマー混合物。
【請求項18】
請求項17記載のポリマー混合物中に存在し、かつトリメトキシ置換および/またはトリエトキシ置換されたシリル基を有するコポリマー。
【請求項19】
シーラントまたは接着剤のための結合剤添加剤としての請求項17記載のポリマー混合物の使用。

【公表番号】特表2010−539265(P2010−539265A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524449(P2010−524449)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【国際出願番号】PCT/EP2008/061493
【国際公開番号】WO2009/033974
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(503343336)コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー (139)
【氏名又は名称原語表記】Construction Research & Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.−Albert−Frank−Strasse 32, D−83308 Trostberg, Germany
【Fターム(参考)】