説明

シリカガラス体の製造方法およびシリカガラス体の製造装置

【課題】バーナの移動制御、回転テーブルの回転速度制御を容易になすと共に、より効率的に、より短時間で加熱処理ができるシリカガラス体の製造方法およびシリカガラス体の製造装置を提供する。
【解決手段】シリカガラス体Wが載置される回転テーブル1と、前記回転テーブル1を駆動制御する回転テーブル駆動制御部2,3と、前記シリカガラス体Wの外周部から中心に向かって加熱しながら移動する第1、第2のバーナ4,5と、前記第1、第2のバーナ4,5を駆動制御するバーナ駆動制御部3とを備え、前記第1のバーナ4がシリカガラス体Wに対して加熱、移動し、第1のバーナ4がシリカガラス体Wの中心に到達する前に、第2のバーナ5がシリカガラス体Wに対して加熱を開始し、加熱移動するように、前記第1、第2のバーナ4,5がバーナ駆動制御部によって駆動制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカガラス体の製造方法およびシリカガラス体の製造装置に関し、特にシリカガラス体の艶出しを効率的に行なうことができるシリカガラス体の製造方法およびシリカガラス体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリカガラス体は、種々の分野において用いられている。例えば、半導体製造分野においては、半導体ウエハを載置する保持具、反応炉(チャンバ)、ヒータの基体等、あるいは露光用マスク材等の各種部材に用いられている。そして、シリカガラス体を製造する場合は、例えば、特許文献1に示されるように、まずシリカガラス体を研削加工し、所定形状になす。このとき、研削によりシリカガラス体の表面は粗面化状態となるため、シリカガラス体の表面を加熱し透明化する、いわゆる艶出しという作業がなされる。
この艶出し処理は、一般的に、酸水素バーナを用い1700℃〜1800℃で加熱処理するものであって、この艶出し処理によってシリカガラス体は透明化し、光透過率を高く維持することができる。
【0003】
ところで、前記酸水素バーナで、シリカガラス体表面を加熱、溶融すると、シリカガラスが蒸発し、白色のシリカ粒子が溶融部の近傍に付着する。このシリカ粒子はシリカガラス体表面に付着状態にあるため、実際に半導体製造分野で使用すると、表面から剥がれ落ち、パーティクルとなる。このようにパーティクルが剥がれ落ち、ウエハ上に付着すると、半導体製造歩留まりの低下、あるいはシリカガラスマスク等の場合、露光不足、パターン不良の原因となるため、好ましくない。
これを解決するため、前記艶出し後にシリカ粒子を除去するために、シリカガラス体表面を再び加熱する、いわゆるシリカ粒子除去処理が行われる。
【0004】
この従来の艶出し処理をついて、円板状シリカガラス体を用いた場合について図4に基づいて更に詳述すると、まず、円板状のシリカガラス体を回転テーブル上に載置する。そして、前記シリカガラス体の外周側から中心に向かって、1本の酸水素バーナを移動させ、前記シリカガラス体を1700℃〜1800℃で加熱する。このT1時間〜T2時間の加熱により、シリカガラス体の表面は溶融し、透明化する。
【0005】
このとき、前記回転テーブルの回転速度は、前記バーナが中心部に行くに従って早くなる(回転速度がω1からω2に変化する)。これは、シリカガラス体に対するバーナの線速度を一定にするものであり、シリカガラス体の表面を一定に溶融するためである。
その後、シリカガラス体の中心に移動したバーナは、再びシリカガラス体の外周部に移動する。このとき適切な回転テーブルの回転速度は急激に減速され、即ち、初期の回転速度ω1まで減速される。そして、バーナの外周部から中心部に向かう移動にともなって、再び回転テーブルの回転速度はω1からω2へと速められる。
【特許文献1】特開2002−6125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように従来のシリカガラス体製造装置にあっては、1本のバーナを用いてシリカガラス体の外周部から中心へ移動させながら加熱処理(艶出し処理)し、その後中心から外周部に戻して、再び外周部から中心に向けて移動しながら加熱処理(シリカ粒子除去処理)を行っている。そのため、これら加熱処理について、より効率的に、より短時間でなさるよう望まれていた。
しかも、中心から外周部にバーナを移動させる際、回転テーブルの回転を急激に低下させなけれならず、バーナの移動制御、回転テーブルの回転速度制御を困難にしていた。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、バーナの移動制御、回転テーブルの回転速度制御を容易になすと共に、より効率的に、より短時間で加熱処理ができるシリカガラス体の製造方法およびシリカガラス体の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、本発明にかかるシリカガラス体の製造装置は、シリカガラス体が載置される回転テーブルと、前記回転テーブルを駆動制御する回転テーブル駆動制御部と、前記シリカガラス体の外周部から中心に向かって加熱しながら移動する第1、第2のバーナと、前記第1、第2のバーナを駆動制御するバーナ駆動制御部とを備え、前記第1のバーナが、シリカガラス体の外周側から中心に向けて加熱しながら移動し、第1のバーナがシリカガラス体の中心に到達する前に、第2のバーナがシリカガラス体の外周側から加熱を開始し、シリカガラス体の中心に向けて加熱しながら移動するように、前記第1、第2のバーナがバーナ駆動制御部によって駆動制御されることを特徴としている。
【0009】
このように、第1のバーナがシリカガラス体の中心に到達する前に、第2のバーナがシリカガラス体に対して加熱を開始し、加熱移動するように構成されているため、二度の加熱処理をより効率的に、より短時間に行なうことができる。
【0010】
ここで、前記回転テーブルの回転速度は、前記第1のバーナの線速度が一定になるように制御され、前記第1のバーナがシリカガラス体の中央に位置した後は、前記第1のバーナを基準として定められた回転速度曲線の延長曲線に基づいて制御されることが望ましい。
このように、第1のバーナがシリカガラス体の中央に位置した後は、前記第1のバーナを基準として定められた回転速度曲線の延長曲線に基づいて制御されるため、回転テーブルの回転速度制御を容易になすことができる。
【0011】
また、本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、本発明にかかるシリカガラス体の製造方法は、シリカガラス体を回転テーブルに載置し、第1のバーナをシリカガラス体の外周側から中心に向かて移動させると共に、回転テーブルの回転速度を第1のバーナの線速度が一定になるように制御しつつ、第1のバーナによってシリカガラス体の表面を加熱する工程と、前記第1のバーナの移動後、第1のバーナのシリカガラス体の中心に到達前に、第2のバーナをシリカガラス体の外周側から中心に向かって移動し、前記第1のバーナによって加熱処理されたシリカガラス体の表面を第2のバーナによって、前記第1のバーナの線速度より速い線速度で再加熱する工程とを含むことを特徴としている。
【0012】
このように、第1のバーナがシリカガラス体の中心に到達する前に、第2のバーナがシリカガラス体に対して加熱を開始し、第1のバーナの線速度より速い線速度で再加熱するように構成されているため、シリカガラス体の各部において1回目より受ける熱量が少ない2回目加熱でシリカ粒子の除去が確実に行なうことができ、艶出し工程をより効率的に、より短時間にシリカガラス全体の艶出しを行なうことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バーナの移動制御、回転テーブルの回転速度制御を容易になすと共に、より効率的に、より短時間で加熱処理ができるシリカガラス体の製造方法およびシリカガラス体の製造装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明にかかるシリカガラス体の製造方法およびシリカガラス体の製造装置の一実施形態を図1乃至図3に基づいて説明する。なお、以下の説明では、シリカガラス体としてシリカガラス体を例にとって説明する。
図1、図2において、符号1はシリカガラス体Wが載置される回転テーブルであり、この回転テーブル1はモータ2によって速度を可変して回転駆動されるように構成されている。また、符号4,5は、シリカガラス体Wを加熱処理する、第1のバーナ及び第2のバーナであって、従来同様に酸水素バーナが用いられている。この第1のバーナ及び第2のバーナは、図示しない駆動手段により、ガイドレール6上を速度可変してシリカガラス体Wの外周側から中心に向けて移動するように構成されている。
そして、第1のバーナ4及び第2のバーナ5が、シリカガラス体の外周部から中心に向かうにつれて、回転テーブル1は、前記モータ2及び制御部3によって回転速度が徐々に速くなるように駆動制御され、また第1のバーナ4及び第2のバーナ5も、図示しないモータ及び制御部によって移動速度が徐々に速くなるように駆動制御される。
【0015】
この艶出し処理をついて、円板状シリカガラス体を用いた場合について図3に基づいて更に詳述すると、まず、円板状のシリカガラス体Wを回転テーブル1上に載置する。そして、前記シリカガラス体Wの外周側から中心に向かって、t1時間に第1のバーナ4の移動を開始する。このときの回転テーブル1の回転速度Ω1であり、第1のバーナ4の移動と共に徐々に回転速度を速める。
この回転速度の変化は、回転するシリカガラス体Wに対する第1のバーナ4の線速度を一定になすためになされ、これによりシリカガラス体の表面全域にわたって、第1のバーナ4が一定の溶融をなすことができる。尚、第1のバーナ4によるシリカガラス体の加熱は、1900℃〜2000℃でなされ、この加熱(艶出し処理)により、シリカガラス体の表面は溶融し透明化する。
【0016】
そして、t2時間に達したとき、第2のバーナ5を点火し、前記シリカガラス体Wの外周側から中心に向かって、第1のバーナ4の後を追って移動を開始する。このときの回転速度はΩ2であり、回転速度Ω1よりも速い回転速度である。
尚、第2のバーナ4によるシリカガラス体の加熱は、第1のバーナの温度よりも低く、1600℃〜1800℃でなされ、この加熱により、シリカガラス体の表面のシリカ粒子は除去される。
【0017】
その後、前記回転テーブルの回転速度は速められ、第1のバーナ4が中心まで移動すると(t3時間に達すると)、第1のバーナ4は消火される。
更に、その後も前記回転テーブル1の回転速度は速められ、第2のバーナ5による加熱によりシリカ粒子除去がなされ、第2のバーナ5が中心まで移動すると(t4時間に達すると)、第2のバーナ5は消火される。
尚、第1のバーナ4が中心に位置した後は、回転テーブル1の回転速度は、前記第1のバーナの線速度を一定にする回転速度曲線を延長した曲線に基づいて変化する。
【0018】
このように、本発明によれば、モータ2の回転制御は、図3に示すように、第1のバーナ4の移動開始時から第2のバーナ5のシリカガラス体の中心部到達時まで、徐々に速度が増すように制御されるため、回転テーブルの回転速度制御を容易になすことができる。
また、第1のバーナがシリカガラス体の中心に到達する前に、第2のバーナがシリカガラス体に対して加熱を開始し、第1のバーナの線速度より速い線速度で再加熱するように構成されているため、シリカガラス体の各部において1回目より受ける熱量が少ない2回目加熱でシリカ粒子の除去が確実に行なうことができ、艶出し工程をより効率的に、より短時間にシリカガラス全体の艶出しを行なうことができる。
具体的には、図4に示された方法による場合に比べて、図3に示すt3−t2時間の短縮を図ることができる。
【実施例】
【0019】
次に、直径500mm、肉厚13mmのシリカガラス体を、図2に示した製造装置を用いて加熱処理し、検証を行った。
焦点距離110mm、焦点での艶出し範囲40mmの第1、第2バーナ4,5を、焦点の間隔が約60mmになるようにセットする。内周側の第1のバーナ4は水素18m3/hr、酸素5.5m3/hrとした。外周側の第2のバーナ5は、水素12m3/hr、酸素4m3/hrとした。
そして、図3に示すように、シリカガラス体を回転テーブルで回転させ、第1のバーナ4の線速度が1m/minになるように回転制御(回転速度アップ)した。また、第1のバーナ4は、半径方向の各部位が同等の熱量を受けるように、中心方向に移動速度が速くなるように制御した。
【0020】
そして、回転テーブルが3回目の回転が始まる時点で、第2のバーナ5に点火し、シリカガラス体の外周側から中心に向けて移動を開始した。また、第2のバーナ5は、第1のバーナと同様に制御した(実際は連動するように移動制御した)。
前記回転テーブルは、第1のバーナ4の線速度が1m/minになるように回転制御し続け、第1のバーナ4はシリカガラス体の中心に到達した時点で消火した。
その後の回転テーブルの回転速度は、前記第1のバーナを基準として定めた回転速度曲線の延長曲線に基づいて制御した。そして、第2のバーナ5がシリカガラス体の中心に到達した際、消火した。この加熱処理時間は12分であった。
【0021】
このようにして、加熱処理したシリカガラス体表面を目視観察したところ、透明で(白濁はなく)、シリカ微粒子が残存していないことが認められた。
【0022】
次に、直径500mm、肉厚13mmのシリカガラス体を、図4に示した加熱処理方法(従来の加熱方法)を行い、上記実施例との処理時間の比較を行った。
この比較例では、1本のバーナを用い、バーナの移動速度を上記実施例1と同一にした。また、回転テーブルの回転速度を、バーナの線速度が1m/minになるように回転制御した。また、バーナがシリカガラス体の中心から外周部に戻る際には、バーナの線速度2mm/minとした。更に、バーナの移動の際、回転テーブルは、前記場合と同様にバーナの線速度が1m/minになるように回転制御した。このような条件下で処理に要した時間は20分であった。
したがって、実施例では、この比較例よりも8分の時間の短縮が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、シリカガラス体の製造分野において、広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明にかかるシリカガラス体の製造装置の概略平面図である。
【図2】図2は、本発明にかかるシリカガラス体の製造装置の概略構成図である。
【図3】図3は、本発明にかかるシリカガラス体の製造方法を説明するための図である。
【図4】図4は、従来のシリカガラス体の製造方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0025】
1 回転テーブル
2 モータ
3 制御部
4 第1のバーナ
5 第2のバーナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカガラス体が載置される回転テーブルと、前記回転テーブルを駆動制御する回転テーブル駆動制御部と、前記シリカガラス体の外周部から中心に向かって加熱しながら移動する第1、第2のバーナと、前記第1、第2のバーナを駆動制御するバーナ駆動制御部とを備え、
前記第1のバーナが、シリカガラス体の外周側から中心に向けて加熱しながら移動し、第1のバーナがシリカガラス体の中心に到達する前に、第2のバーナがシリカガラス体の外周側から加熱を開始し、シリカガラス体の中心に向けて加熱しながら移動するように、
前記第1、第2のバーナがバーナ駆動制御部によって駆動制御されることを特徴とするシリカガラス体製造装置。
【請求項2】
前記回転テーブルの回転速度は、前記第1のバーナの線速度が一定になるように制御され、前記第1のバーナがシリカガラス体の中央に位置した後は、前記第1のバーナを基準として定められた回転速度曲線の延長曲線に基づいて制御されることを特徴とする請求項1記載のシリカガラス体の製造装置。
【請求項3】
シリカガラス体を回転テーブルに載置し、第1のバーナをシリカガラス体の外周側から中心に向かて移動させると共に、回転テーブルの回転速度を第1のバーナの線速度が一定になるように制御しつつ、第1のバーナによってシリカガラス体の表面を加熱する工程と、
前記第1のバーナの移動後、第1のバーナのシリカガラス体の中心に到達前に、第2のバーナをシリカガラス体の外周側から中心に向かって移動し、前記第1のバーナによって加熱処理されたシリカガラス体の表面を第2のバーナによって、前記第1のバーナの線速度より速い線速度で再加熱する工程とを含むことを特徴とするシリカガラス体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−81375(P2008−81375A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−265205(P2006−265205)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(507182807)コバレントマテリアル株式会社 (506)
【Fターム(参考)】