説明

シリカゲルの製造方法

【課題】 周囲の雰囲気に含まれる湿分を吸着して該雰囲気を所定の湿度に調整する、調湿剤用シリカゲルであって、高効率且つ高精度な調湿を実現でき、且つ、低コストで製造できるようにする。
【解決手段】 周囲の雰囲気に含まれる湿分を吸着して該雰囲気を所定の湿度に調整する、調湿剤用シリカゲルにおいて、(a)細孔容積が0.6〜2.0ml/gであり、(b)比表面積が300〜1000m2/gであり、(c)細孔の最頻直径(Dmax)が20nm未満であり、(d)直径がDmax±20%の範囲内にある細孔の総容積が全細孔の総容積の50%以上であり、(e)非晶質であり、(f)アルカリ金属及びアルカリ土類金属を除く不純物金属の総含有率が500ppm以下であり、(g)固体Si−NMRでのQ4ピークのケミカルシフトをδ(ppm)とした場合、δが下記式(I)を満足するようにする。
−0.0705×(Dmax)−110.36>δ ・・・式(I)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周囲の雰囲気に含まれる湿分を吸着して該雰囲気を所定の湿度に調整する、調湿剤用シリカゲルに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅や車室内などの居住空間には、近年になって特に快適性が要求されている。また、食料品の鮮度を維持する保存技術や、書物や絵画等を長期間保存する技術が必要とされている。このような要求を達成するに当たっては、温度以外に湿度を適切に調節することが重要である。
【0003】
従来は、エアコンディショナーによる除湿,加湿器による加湿,或いは除湿器と加湿器とを用い、これらを電気的に制御することにより、湿度を快適な湿度に調整することが行なわれていた。
一方、上記技術では、装置が複雑でコストが高く、また、電力を消費するのでランニングコストがかかってしまうため、多孔性材料を使用した調湿も行なわれている。
【0004】
このような多孔性材料としてはシリカゲルがある。従来、シリカゲルには、主として平均細孔径2nm程度のミクロ細孔を有するとともにブロードな細孔分布を示すA型シリカゲルと、2nm以上のメソ−マクロ孔領域に明確な細孔分布ピークを有するB型シリカゲルの2つがある。
一般的に、窒素や水蒸気などのガスは、シリカゲルの細孔径が小さいほどシリカゲルにより吸着されやすいため、系内を完全に脱湿して極低湿度にしたい場合(例えば食品や禁水薬品を保存する場合)にはA型シリカゲルが調湿剤として使用される。一方、上記のように生活空間の快適化等のようにある程度の湿度を残して調湿したい場合(例えば、写真やビデオなどの記録材料を保存する場合、史料や書類や美術品を保存する場合,布・革製品を保存する場合,住建材や壁紙への調湿機能を付加する場合,シリカゲルを袋詰めして住宅の床下に設置して住宅内を調湿する場合)にはB型シリカゲルが調湿剤として使用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のB型シリカゲルによる調湿のように、ある程度の湿度を残して調湿したい場合、即ち、系内を所定の湿度に保持したい場合、シリカゲルの細孔分布がシャープなほど(細孔径が揃っているほど)、環境湿度の微妙な変化に対する吸放湿応答性が高く、一定湿度に調湿する能力が高い。
【0006】
しかしながら、広く一般的に製造されているB型シリカゲルは、細孔分布が十分にシャープでなく、一定湿度に調湿するような高度な調湿機能は期待できなかった。例えば、住環境などにおいて快適な湿度(相対湿度40〜60%)に調湿するためには、3〜5nmの細孔径を中心とした十分にシャープな細孔分布を有するB型シリカゲルが望まれていたが、このような細孔径が高精度に制御されたシリカゲルを再現性良く製造することは、従来の水ガラス由来のシリカゲルでは困難だった。
【0007】
しかし、1992年以降、望まれていたシャープな細孔径分布を有するシリカゲルとして、細孔径を1〜10nmの範囲で高精度に制御可能なミセルテンプレートシリカが登場すると、シリカゲルの上記のような調湿用途が改めて注目され、上記ミセルテンプレートシリカを用いて調湿を行なう技術(例えば特開平6−304437号公報や特開2000−43179号公報に開示された技術)が種々提案されている。
【0008】
さらには、現在ではシリカゲルのこのような調湿性能を応用した吸着式ヒートポンプに関する研究が盛んに行われている。この技術においては、細孔径が2〜4nmであり且つ非常にシャープな細孔分布を有するシリカゲルが必要とされている。なお、この吸着式ヒートポンプとは、冷媒に水、吸着剤にシリカゲル等の多孔質材料が使用されるもので、次世代エアコンとしての使用が期待されている。
【0009】
この吸着式ヒートポンプでは、真空密閉系においてシリカゲルに水を吸着させると系内圧が下がって系内の水が蒸発しこの潜熱により冷却を行なえ、シリカゲルから水を脱着させると系内圧が上昇して系内で余剰の水が凝縮し、このときの凝縮熱により加熱を行なえる。
しかしミセルテンプレートシリカは、得られるシリカゲルの細孔分布がシャープであるが、有機テンプレートを使用して製造され、この有機テンプレートが高価であるために製造コストが高く、製造工程が複雑なために不要な不純物金属が混入しやすいという課題がある。加えて、細孔壁が非常に薄いので、構造的な強度が弱く、物性変化を起こし易い上に、生産性の悪さも課題となっている。
【0010】
ところで、アルカリ金属やアルカリ土類金属の塩は、水蒸気と非常に親和性が高いことが良く知られている。例えば塩化ナトリウムや塩化カリウムは潮解性の塩であり、塩化カルシウムは食品や衣類などの保存用乾燥剤として使用され、また、硫酸ナトリウムは有機合成用の溶媒乾燥剤として使用される。また、臭化リチウムや塩化リチウムやヨウ化リチウムなどのリチウム塩は、アルカリ金属やアルカリ土類金属の塩の中でも最も吸湿性能が高く、その水溶液は水蒸気に対する吸放出特性を示すことから、吸収式冷凍機用の吸収液や湿度調整用吸着剤などとして利用されている。
【0011】
これらリチウム塩は、通常は水に溶解させて液状で使用するので取り扱いが難しく、このため、シリカゲルのような各種多孔材料の細孔内に担持させた吸湿材料が開発されている。この吸湿材料は、上記水溶液と同様に水蒸気の吸放出特性を有しており、乾式除湿器やデシカント空調用の調湿材料などに使用されている。
【0012】
この場合、リチウム塩は担持された細孔内において、低湿度条件では固体状態となる一方、高湿度条件では水溶液として存在している。リチウム塩の吸収等温線や温度・濃度・水蒸気分圧の相関図は、冷凍機械工学ハンドブック P.1001−1003(朝倉書店)、冷凍空調便覧−基礎編 P.376(日本冷凍協会)、冷凍空調便覧−応用編 P.360−361(日本冷凍協会)などに記載されており、これらの資料から各湿度条件における理論的な吸収能力を知ることが出来る。
【0013】
しかしながら、従来シリカゲルでは細孔内においてリチウム塩を高分散に(均一に)保持できない。このため、低湿度条件下ではリチウム塩は細孔内において固体状で存在するが、その表面積が不十分となってリチウム塩本来の吸湿能力を発揮させることができない。一方、高湿度条件下ではリチウム塩は細孔内において水溶液状で存在するが、リチウム塩の水溶液は元々粘度が比較的高い上、細孔内に不均一に保持されることからその粘度や液膜の厚さに偏りが生じ、特に粘度が高目の部分や液膜の厚い部分においては吸湿した水分の細孔内拡散速度が不十分となり、塩化リチウム本来の吸湿能力を発揮できないことが多かった。このためリチウム塩を高分散に担持できる多孔材料が望まれていた。
【0014】
また、これに関連した技術としては、特開平11−114410号公報に、シリカゲルに降圧剤として例えばNaClを担持させた技術が開示されている。この技術では、降圧剤を用いることによりシリカゲルによる水分の吸放出が起きる蒸気圧を制御できるようにしている。しかしながら、この技術では上述したミセルテンプレートシリカを使用しているため、上記課題に加えて、製造コストが高い、不純物金属の含有量が多い、構造的な強度が弱い、物性変化を起こし易い、生産性が悪いなどの課題がある。
【0015】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、高効率且つ高精度な調湿を実現でき、且つ、低コストで製造できるようにした、調湿剤用シリカゲルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
そこで、本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、高比表面積かつ高細孔容積を有し、高純度かつ構造的な歪みの少ない均質で安定な構造であり、さらに細孔分布がシャープな調湿剤用シリカゲルを製造することに成功し、これが上記要望に効果的に応えることを見出して、本発明を完成させた。
【0017】
すなわち、本発明の要旨は、調湿剤用シリカゲルが、(a)細孔容積が0.6〜2.0ml/gであり、(b)比表面積が300〜1000m2/gであり、(c)細孔の最頻直径(Dmax)が20nm未満であり、(d)直径がDmax±20%の範囲内にある細孔の総容積が全細孔の総容積の50%以上であり、(e)非晶質であり、(f)アルカリ金属及びアルカリ土類金属を除く金属不純物の総含有率が500ppm以下であり、(g)固体Si−NMRでのQ4ピークのケミカルシフトをδ(ppm)とした場合にδが下記式(I)を満足することにある。
【0018】
−0.0705×(Dmax)−110.36>δ ・・・式(I)
また、本発明の別の要旨は、調湿剤用シリカゲルが、(a)細孔容積が0.3〜1.6ml/gであり、(b)比表面積が200〜900m2/gであり、
(c)細孔の最頻直径(Dmax)が20nm未満であり、(d)直径がDmax±20%の範囲内にある細孔の総容積が、全細孔の総容積の30%以上であり、(e)非晶質であり、(f)アルカリ金属及びアルカリ土類金属を除く不純物金属の総含有率が500ppm以下であり、(g)該湿分と親和性の高い調湿補助剤を含有し、該調湿補助剤の含有率が1〜80重量%の範囲であり、(h)固体Si−NMRでのQ4ピークのケミカルシフトをδ(ppm)とした場合に、δが上式(I)を満足することにある。
【発明の効果】
【0019】
本発明の調湿剤用シリカゲルによれば、シリカゲルの細孔径を、最頻細孔径を中心としたシャープな細孔分布で且つ精度良く制御することが可能であることから、周囲の湿度を所定湿度に迅速且つ精度良く調湿することが可能である。
さらに、本発明の調湿剤用シリカゲルでは、細孔径を任意の径に精度良く制御可能なので、このような細孔径制御に対応して、周囲の相対湿度を任意の湿度に精度良く調整できるという利点がある。
【0020】
また、本発明の調湿剤用シリカゲルは、不純物の含有率が非常に低く、さらに、シロキサン結合角の歪みの少ない均質で安定な構造であることから、過酷な環境化においても細孔特性などの物性変化が少ないといった利点がある。
さらに、本発明の調湿剤用シリカゲルは、同程度の細孔径を有する従来シリカゲルと比較して、比較的高細孔容積且つ高比表面積なので、同程度の細孔径を有する従来シリカゲルよりも、水蒸気の吸着能力に優れ、且つ、吸着容量が大きいので、効率的に調湿を行なえるという利点がある。
【0021】
そして、有機テンプレートを使用することなく高精度に細孔を制御できるので安価に製造できるという利点がある。
また、調湿補助剤を含有させることにより少量の使用量にて迅速に調湿を行なえるようになる。また、本発明の調湿剤用シリカゲルは、細孔径分布が非常にシャープであり、高純度であり、且つ、そのシロキサン結合の結合角の歪みが少なく均質な構造であるため、調湿補助剤を均一に細孔内に担持することが可能となり、従来よりも効率的に調湿補助剤による調湿を行なえるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の調湿剤用シリカゲル(以下、単にシリカゲルともいう)は、従来のシリカゲルと同様に多数の細孔を有する多孔質体であり、周囲雰囲気中の湿分(水蒸気)を細孔内に吸着して、この周囲雰囲気を所定湿度の調整するものである。
【0023】
先ず、本発明の第1実施形態としての調湿剤用担持シリカゲルについて詳細に説明すると、本発明の調湿剤用シリカゲルは、細孔容積及び比表面積が通常のものより大きい範囲にあることを特徴とする。具体的に、細孔容積の値は、通常0.6〜2.0ml/gの範囲、好ましくは0.8〜1.6ml/gの範囲に、また、比表面積の値は、通常300〜1000m2/gの範囲、好ましくは300〜900m2/gの範囲、更に好ましくは400〜900m2/gの範囲に存在する。これらの細孔容積及び比表面積の値は、窒素ガス吸脱着によるBET法で測定される。
【0024】
また、本実施形態の調湿剤用シリカゲルは、細孔の最頻直径(Dmax)が20nm未満であることを特徴とする。最頻直径(Dmax)は、気体や液体の吸着や吸収に関する特性であり、最頻直径(Dmax)が小さいほど吸着や吸収性能が高い。本シリカゲルの好ましい最頻直径(Dmax)は、中でも17nm以下、更には15nm以下である。また、下限は特に制限されないが、好ましくは2nm以上である。本実施形態の調湿剤用シリカゲルは、後述するように製造時に水熱処理するが、この水熱処理の温度条件を調整することにより、細孔径を2nm〜20nmの範囲で任意に調整する事ができるため、相対湿度を35〜90%の範囲で任意の湿度において各々調湿可能である(後述するが、シリカゲルにより調整される湿度はその細孔径に応じたものとなる)。
【0025】
なお、上記の最頻直径(Dmax)は、窒素ガス吸脱着によるBET法で測定した等温脱着曲線から、E. P. Barrett, L. G. Joyner, P. H. Haklenda, J. Amer. Chem. Soc., vol. 73, 373 (1951) に記載のBJH法により算出される細孔分布曲線をプロットして求められる。ここで、細孔分布曲線とは、微分細孔容積、すなわち、細孔直径d(nm)に対する微分窒素ガス吸着量(ΔV/Δ(logd))を言う。上記のVは、窒素ガス吸着容積を表す。
【0026】
更に、本実施形態の調湿剤用シリカゲルは、上記の最頻直径(Dmax)の値を中心として±20%の範囲にある細孔の総容積が、全細孔の総容積の通常50%以上、好ましくは60%以上であることを特徴とする。このことは、本調湿剤用シリカゲルが有する細孔の直径が、最頻直径(Dmax)付近の細孔で揃っていることを意味する。なお、上記の最頻直径(Dmax)の値の±20%の範囲にある細孔の総容積について、特に上限は無いが、通常は全細孔の総容積の90%以下である。
【0027】
かかる特徴に関連して、本実施形態の調湿剤用シリカゲルは、上記のBJH法により算出された最頻直径(Dmax)における微分細孔容積ΔV/Δ(logd)が、通常2〜20ml/g、特に5〜12ml/gであることが好ましい(なお、上式において、dは細孔直径(nm)であり、Vは窒素ガス吸着容積である)。微分細孔容積ΔV/Δ(logd)が前記範囲に含まれるものは、最頻直径(Dmax)の付近に揃っている細孔の絶対量が極めて多いものと言える。
【0028】
加えて、本シリカゲルは、その三次元構造を見るに、非晶質であること、即ち、結晶性構造が認められないことを特徴とする。このことは、本調湿剤用シリカゲルをX線回折で分析した場合に、結晶性ピークが実質的に認められないことを意味する。なお、本明細書において結晶質であるシリカゲルとは、X線回折パターンで6オングストローム(Å Units d−spacing)を越えた位置に、少なくとも一つの結晶構造のピークを示すものを指す。このようなシリカゲルの例としては有機テンプレートを用いて細孔を形成するミセルテンプレートシリカが挙げられる。非結晶質のシリカゲルは、結晶性のシリカゲルに較べて、極めて生産性に優れている。
【0029】
また、本シリカゲルは、金属不純物の含有率が非常に低く、極めて高純度であることを特徴とする。具体的には、シリカゲル中に存在することでその物性に影響を与えることが知られている、周期表の3A族,4A族及び5A族並びに遷移金属からなる群に属する金属元素(金属不純物)の合計の含有率が、通常500ppm以下、好ましくは100ppm以下、更に好ましくは50ppm以下、最も好ましくは30ppm以下である。このように不純物の影響が少ないことは、本実施形態の調湿剤用シリカゲルが高い耐熱性や耐水性などの優れた性質を発現できる大きな要因の一つである。
【0030】
ここで、本実施形態の調湿剤用シリカゲルには製造工程由来のアルカリ金属,アルカリ土類金属が微量ながら含まれることがあるが、アルカリ金属,アルカリ土類金属は、水蒸気と非常に親和性が高く吸湿性能の強化に繋がる。したがって、ここでいう金属不純物にはアルカリ金属,アルカリ土類金属を含めていない。
更に、本シリカゲルは、骨格を形成するシロキサン結合の結合角に歪みが少ないことを特徴とする。ここで、シリカゲルの構造的な歪みは、固体Si−NMR測定におけるQ4ピークのケミカルシフトの値によって表わすことができる。以下、シリカゲルの構造的な歪みと、前記のQ4ピークのケミカルシフトの値との関連について、詳しく説明する。
【0031】
本シリカゲルは非晶質ケイ酸の水和物であり、SiO2・nH2Oの示性式で表されるが、構造的には、Siの四面体の各頂点にOが結合され、これらのOに更にSiが結合して、ネット状に広がった構造を有する。そして、Si−O−Si−O−の繰り返し単位において、Oの一部が他の成員(例えば−H、−CH3など)で置換されているものもあり、一つのSiに注目した場合、下記式(A)に示す様に4個の−OSiを有するSi(Q4)や、下記式(B)に示す様に3個の−OSiを有するSi(Q3)等が存在する〔下記式(A)及び(B)では、上記の四面体構造を無視し、Si−Oのネット構造を平面的に表わしている〕。そして、固体Si−NMR測定において、上記の各Siに基づくピークは、順にQ4ピーク、Q3ピーク、・・と呼ばれる。
【0032】
【化1】

【0033】
本シリカゲルは、上記のQ4ピークのケミカルシフトをδ(ppm)とした場合に、δが下記式(I)
−0.0705×(Dmax)−110.36>δ ・・・式(I)
を満足する〔即ち、δの値が上記式(I)の左辺で表わされる値(−0.0705×(Dmax)−110.36)よりも小さい(よりマイナス側に存在する)〕ことを特徴とする。従来のシリカゲルでは、上記のQ4ピークのケミカルシフトの値δは、上記式(I)の左辺に基づいて計算した値よりも、一般に大きくなる(よりプラス側に存在する)。よって、本発明の調湿剤用シリカゲルは、従来のシリカゲルに比べて、Q4ピークのケミカルシフトがより小さな値を有することになる。これは、本発明の調湿剤用シリカゲルにおいて、Q4ピークのケミカルシフトがより高磁場に存在するということに他ならず、ひいては、Siに対して2個の−OSiで表される結合角がより均質であり、構造的な歪みがより少ないことを意味している。
【0034】
本発明の調湿剤用シリカゲルにおいて、Q4ピークのケミカルシフトδは、上記式(I)の左辺(−0.0705×(Dmax)−110.36)に基づき算出される値よりも、好ましくは0.05%以上小さい値であり、更に好ましくは0.1%、特に好ましくは0.15%以上小さい値である。通常、シリカゲルのQ4ピークの最小値は、−113ppmである。
【0035】
本シリカゲルは、優れた耐熱性や耐水性等を有しており、また、物性変化しにくい。したがって、高温・高湿度下でも長期間調湿機能が持続される。このような点と、上記の様な構造的歪みの関係については、必ずしも明らかではないが、次の様に推定される。すなわち、シリカゲルは大きさの異なる球状粒子の集合体で構成されているが、上記の様な構造的に歪みの少ない状態においては、球状粒子全体のミクロ構造的な高度の均質性が維持されるので、その結果、優れた耐熱性や耐水性等が発現されるものと考えられる。なお、Q3以下のピークは、Si−Oのネット構造の広がりに制限があるため、シリカゲルの構造的な歪みが現れにくい。
【0036】
上記の特徴に関連して、本シリカゲルは、固体Si−NMR測定によるQ4/Q3の値が、通常1.3以上、中でも1.5以上であることが好ましい。ここで、Q4/Q3の値とは、上述したシリカゲルの繰り返し単位の中で、−OSiが3個結合したSi(Q3)に対する−OSiが4個結合したSi(Q4)のモル比を意味する。一般に、この値が高い程、シリカゲルの熱安定性が高いことが知られており、ここから、本シリカゲルは、熱安定性に極めて優れていることが判る。一方、ミセルテンプレートシリカはQ4/Q3が1.3を下回ることが多く、熱安定性が低い。
【0037】
なお、Q4ピークのケミカルシフト及びQ4/Q3の値は、実施例の説明において後述する方法を用いて固体Si−NMR測定を行ない、その結果に基づいて算出することができる。また、測定データの解析(ピーク位置の決定)は、例えば、ガウス関数を使用した波形分離解析等により、各ピークを分割して抽出する方法で行なう。
【0038】
さて、本シリカゲルは、従来のゾル−ゲル法とは異なり、シリコンアルコキシドを加水分解する加水分解工程と共に得られたシリカヒドロゾルを縮合する縮合工程を経てシリカヒドロゲルを形成する加水分解・縮合工程と、当該加水分解・縮合工程に引き続き、シリカヒドロゲルを熟成することなく水熱処理することにより、所望の物性範囲のシリカゲルを得る物性調節工程とを、ともに包含する方法で製造することができる。
【0039】
本発明の調湿剤用シリカゲルの原料として使用されるシリコンアルコキシドとしては、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の炭素数1〜4の低級アルキル基を有するトリまたはテトラアルコキシシラン或いはそれらのオリゴマーが挙げられるが、好ましくはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン及びそれらのオリゴマーである。以上のシリコンアルコキシドは蒸留により容易に精製し得るので、高純度のシリカゲルの原料として好適である。
【0040】
シリコンアルコキシドの加水分解は、シリコンアルコキシド1モルに対して、通常2〜20モル、好ましくは3〜10モル、特に好ましくは4〜8モルの水を用いて行なう。シリコンアルコキシドの加水分解によりシリカのヒドロゲルとアルコールとが生成する。この加水分解反応は、通常、室温から100℃程度であるが、加圧下で液相を維持することで、より高い温度で行なうことも可能である。また、加水分解時には必要に応じて、水と相溶性のあるアルコール類等の溶媒を添加してもよい。具体的には、炭素数1〜3の低級アルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルセロルブ、エチルセロルブ、メチルエチルケトン、その他の水と任意に混合できる有機溶媒を任意に用いることができるが、中でも強い酸性や塩基性を示さないものが、均一なシリカヒドロゲルを生成できる理由から好ましい。
【0041】
これらの溶媒を使用しない場合、本実施形態の調湿剤用シリカゲルの製造のためには、特に加水分解の際の攪拌速度が重要である。すなわち、シリコンアルコキシドと加水分解用の水は初期には分液しているため、攪拌によりエマルジョン化し、反応を促進させる。この際の攪拌速度は通常30rpm以上、好ましくは50rpm以上である。斯かる条件を満足しない場合には、本実施形態の調湿剤用シリカゲルを得るのが困難になる。なお、加水分解によりアルコールが生成して液が均一液となり、発熱が収まった後には、均一なヒドロゲルを形成させるために攪拌を停止することが好ましい。
【0042】
結晶構造を有するシリカゲルは、水中熱安定性に乏しくなる傾向にあり、ゲル中に細孔を形成するのに用いられる界面活性剤等のテンプレートの存在下でシリコンアルコキシドを加水分解すると、ゲルは容易に結晶構造を含むものとなる。従って、本実施形態においては、界面活性剤等のテンプレートの非存在下で、即ち、これらがテンプレートとしての機能を発揮する程の量は存在しない条件下で、加水分解を行なうことが好ましい。
【0043】
反応時間は、反応液組成(シリコンアルコキシドの種類や、水とのモル比)並びに反応温度に依存し、ゲル化するまでの時間が異なるので、一概には規定されない。なお、反応系に触媒として、酸,アルカリなどを添加することで加水分解を促進させることができる。しかしながら、斯かる添加物の使用は、後述するように、生成したヒドロゲルの熟成を引き起こすことになるので、本シリカゲルの製造においてはあまり好ましくない。
【0044】
上記のシリコンアルコキシドの加水分解反応では、シリコンアルコキシドが加水分解してシリケートが生成するが、引き続いて該シリケートの縮合反応が起こり、反応液の粘度が上昇し、最終的にゲル化してシリカヒドロゲルとなる。本発明の調湿剤用シリカゲルを製造するためには、上記の加水分解により生成したシリカのヒドロゲルの硬さが上昇しないように、実質的に熟成することなく、直ちに水熱処理を行なうことが重要である。シリコンアルコキシドを加水分解すると、軟弱なシリカのヒドロゲルが生成するが、このヒドロゲルを安定した熟成、あるいは乾燥させ、更にこれに水熱処理を施し、最終的に細孔特性の制御されたシリカゲルとする従来の方法では、本発明で規定する物性範囲のシリカゲルを製造することができない。
【0045】
上記にある、加水分解により生成したシリカのヒドロゲルを、実質的に熟成することなく、直ちに水熱処理を行なうということは、シリカのヒドロゲルが生成した直後の軟弱な状態が維持されたままで、次の、水熱処理に供するようにするということを意味する。シリコンアルコキシドの加水分解反応系に酸、アルカリ、塩類等を添加すること、または該加水分解反応の温度を厳しくし過ぎることなどは、ヒドロゲルの熟成を進行させるため好ましくない。また、加水分解後の後処理における水洗,乾燥,放置などにおいて、必要以上に温度や時間をかけるべきではない。
【0046】
ヒドロゲルの熟成状態は、ヒドロゲルの硬度を参考することにより具体的に確認することができ、ヒドロゲルの硬度と相関するパラメータである破壊応力が、通常6MPa以下、好ましくは3MPa以下、更に好ましくは2MPa以下の柔らかい状態のヒドロゲルを水熱処理することで、本発明で規定する物性範囲のシリカゲルを得ることができる。
【0047】
この水熱処理の条件としては、水の状態が液体、気体のいずれでもよく、溶媒や他の気体によって希釈されていてもよいが、好ましくは液体の水が使われる。シリカのヒドロゲルに対して、通常0.1〜10重量倍、好ましくは0.5〜5重量倍、特に好ましくは1〜3重量倍の水を加えてスラリー状とし、通常40〜250℃、好ましくは50〜200℃の温度で、通常0.1〜100時間、好ましくは1〜10時間実施される。水熱処理に使用される水には低級アルコール類、メタノール、エタノール、プロパノールや、ジメチルホルムアミド(DMF)やジメチルスルホキシド(DMSO)、その他の有機溶媒などが含まれてもよい。
【0048】
なお、加水分解反応の反応器を用い、続けて温度条件変更により水熱処理を行なうことも可能であるが、加水分解反応とその後の水熱処理とでは通常、最適条件が異なっているため、この方法で本調湿剤用シリカゲルを得ることは一般的に難しい。
以上の水熱処理条件において温度を高くすると、得られるシリカゲルの細孔径、細孔容積が大きくなる傾向がある。水熱処理温度としては、100〜200℃の範囲であることが好ましい。また、処理時間とともに、得られるシリカゲルの比表面積は、一度極大に達した後、緩やかに減少する傾向がある。以上の傾向を踏まえて、所望の物性値に応じて条件を適宜選択する必要があるが、水熱処理は、シリカゲルの物性を変化させる目的なので、通常、前記の加水分解の反応条件より高温条件とすることが好ましい。
【0049】
水熱処理の温度、時間を上記範囲外に設定すると、本調湿剤用シリカゲルを得ることが困難となる。例えば、水熱処理の温度が高すぎると、シリカゲルの細孔径、細孔容積が大きくなりすぎ、また、細孔分布も広がる。逆に、水熱処理の温度が低過ぎると、生成するシリカゲルは、架橋度が低く、熱安定性に乏しくなり、細孔分布にピークが発現しなくなったり、前述した固体Si−NMRにおけるQ4/Q3値が極端に小さくなったりする。
【0050】
なお、水熱処理をアンモニア水中で行なうと、純水中で行なう場合よりも低温で同様の効果が得られる。また、アンモニア水中で水熱処理すると、純水中で処理する場合と比較して、最終的に得られるシリカゲルは一般に疎水性となるが、通常30〜250℃、好ましくは40〜200℃という比較的高温で水熱処理すると、特に疎水性が高くなる。ここでのアンモニア水のアンモニア濃度としては、好ましくは0.001〜10%、特に好ましくは0.005〜5%である。
【0051】
水熱処理されたシリカヒドロゲルは、通常40〜200℃、好ましくは60〜120℃で乾燥する。乾燥方法は特に限定されるものではなく、バッチ式でも連続式でもよく、且つ、常圧でも減圧下でも乾燥することができる。必要に応じ、原料のシリコンアルコキシドに由来する炭素分が含まれている場合には、通常400〜600℃で焼成除去することができる。また、表面状態をコントロールするため、最高900℃の温度で焼成しても良い。また、シランカップリング剤や無機塩,各種有機化合物などにより親疎水性を調節するための表面処理を行なっても良い。
【0052】
そして、この原料シリカゲルを、必要に応じて粉砕、分級して、最終的に目的としていた本調湿剤用シリカゲルを得る。
以上本発明の調湿剤用シリカゲルの製造方法について説明したが、細孔制御のための水熱処理の前にシリカヒドロゲルを熟成しないという点を除けば、その製造方法は実質的に制限されるべきではない。
【0053】
なお、シリカゲルの形状は限定されず、球状であっても良いし、形の規定されないその他の塊状であっても良いし、後述するように破砕して細かな形状(破砕状)としても良いし、さらには、破砕状のものを集めて造粒したものであっても良い。コスト的には、粒径の制御が容易な破砕状又はこれを造粒したものが好ましい。さらに、シリカゲルをハニカム状に成形するなどしても良い(これについては後述する)。
【0054】
また、本調湿剤用シリカゲルの粒径は、その使用条件によって適宜設定されるものであり、例えば150μm以下の粒子に調整される。
シリカゲルの分級は、例えば篩,重力分級機,遠心分級機などを使用して行なわれる。また、粉砕は、以下のようにして行なわれる。
原料シリカゲルを粉砕する方法としては、公知のいかなる装置・器具を用いても良い。例えば、ボールミル(転動ミル、振動ボールミル、遊星ミル等)、攪拌ミル(塔式粉砕器、攪拌槽型ミル、流通管型ミル、アニュラー(環状)ミル等)、高速回転微粉砕機(スクリーンミル、ターボ型ミル、遠心分級型ミル)、ジェット粉砕機(循環ジェットミル、衝突タイプミル、流動層ジェットミル)、せん断ミル(擂解機、オングミル)、コロイドミル、乳鉢などの装置・器具を用いることができる。これらの中で、シリカゲルを比較的の小さな径(例えば2μm以下)とする場合には、ボールミル、攪拌ミルがより好ましい。また、粉砕時の状態としては、湿式法及び乾式法があり、何れも選択可であるが、シリカゲルを比較的の小さな径とする場合には湿式法がより好ましい。湿式法の場合、使用する分散媒としては、水及びアルコール等の有機溶媒の何れを用いても、また2種以上の混合溶媒としても良く、目的に応じて使い分ける。微粉砕時に不必要に強い圧力や剪断力を長時間かけ続けることは、原料シリカゲルの細孔特性を損なうことがあり好ましくない。
【0055】
なお、上述したように、粉砕されたシリカゲル粒子(一次粒子)を公知の方法により造粒し、粒状(例えば球状)或いは凝集体の形状としてもよい。シリカゲルは一般に一次粒子径2μm以下の場合、特にバインダを添加しなくても水スラリーとしてこれを乾燥するだけで凝集粒子を得ることができるが、2μmを越える粒子の場合、凝集させるためにはバインダが必要であることが多い。バインダとして用いることができる物質は何れのものでも良いが、例えば水に溶解する場合は砂糖、デキストローズ、コーンシロップ、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、その他の水溶性高分子、水ガラス、シリコンアルコキシド加水分解液(これは溶媒系にも使用可)などを用いることができ、溶媒に溶解して用いる場合には各種ワックス、ラッカー、シラック、油溶性高分子等を用いることができる。原料シリカゲルの多孔質性能を損なわずに凝集体とするためには、バインダを使用しないことが望ましく、やむを得ず使用する場合には最低限の使用量とし、原料シリカゲルの物性変化を誘起するような金属不純物量の少ない高純度なものを用いることが好ましい。
【0056】
シリカゲル微粒子を造粒する方法は公知の何れの方法を用いても良いが、代表的な方法として、転動法、流動層法、攪拌法、解砕法、圧縮法、押し出し法、噴射法等が挙げられる。このうち本発明の制御された細孔特性のシリカゲル微粒子凝集体を得るためには、バインダの種類及び使用量、純度の選択に注意を払い、シリカゲル微粒子を造粒する際に不要な圧力をかけないことなどが重要である。
【0057】
さて、上述したように本シリカゲルは空調機等に組み込むためにハニカム状に成形することもでき、これは、シリカゲルを結合剤と混合してこれを成形することによりできる。また、シリカゲルだけを用いて成形体を作成することもできる。また、シリカゲルを、結合剤及び水と混合し、スラリーにしたものを用いて成形体を得ることもできる。上記シリカゲルを含むスラリーは、例えば、シリカゲルと、該シリカゲル100重量部に対して2〜20重量部の有機結合剤と、10〜50重量部の無機結合剤と、150〜200重量部の水とからなる。上記有機結合剤としては、メチルセルロース等を用いる。上記無機結合剤としてはシリカゾル等を用いる。
【0058】
また、セラミック製などのハニカム体に本シリカゲルを塗布して用いることができる。この場合、例えばシリカゲルに必要な結合剤を混合し、これをハニカム体にコートする。上記ハニカム体としては、例えばコージライト製のものを用いることができる。また、シリカゲルは、これを球状体,柱状体等の粒子形態としてからカラムに充填して用いることができる。この場合、粒子の大きさは、カラムの充填部の通気性の確保や水蒸気との接触面積の確保を考慮して、球状体では直径0.1〜30mm、柱状体では柱径0.1〜10mmで長さ1〜30mm程度とすることが好ましい。
【0059】
上記シリカゲルを配したカラムあるいはハニカムに、調湿すべき空間の空気を導入する導入口、そして調湿した空気を吹き出す吹出口を付け、必要であれば空気を循環させる動力機(ポンプ,ファンなど)を取り付けても良い。上記カラム或いはハニカム体は、調湿すべき空間の空気を積極的に通すことにより、より多くの空気が湿度調節剤と接触可能となる。そのため、短時間で空間の湿度を一定に保つことができる。
【0060】
また、シリカゲルはセルロース繊維とともに用いることもできる。即ち、シリカゲルとセルロース繊維と有機系結合剤とを混合,成形して湿度調節剤とすることもできる。この場合、上記セルロース繊維に、上記シリカゲルと有機系結合剤とを混合し、スラリーを作成する。次いで、スラリーを脱水,成形して半湿濾過体とする。その後、該半湿濾過体を乾燥,固化して一体固化物とする。これにより、湿度調節紙が得られる。
【0061】
以下、上記湿度調節紙につき詳説する。上記湿度調節紙は,セルロース繊維100部(重量部)と、100〜3000部のシリカゲルと、該シリカゲル100部に対して固形分で1〜20部の有機系結合剤とにより構成することが好ましい。これにより、成形性が良く、かつ優れた湿度調節能を有する湿度調節紙を得ることができる。
【0062】
また、上記湿度調節紙の製造方法は、例えば、セルロース繊維とシリカゲルと水とを混合してスラリーとする第1混合工程と、該スラリーと有機系結合剤とを混合して混合スラリーとする第2混合工程と、該混合スラリーを脱水,成形して半湿濾過体とする成形工程と、該半湿濾過体を乾燥,固化して一体固形物とする乾燥工程とから成る。
【0063】
上記セルロース繊維は、植物体の細胞膜の主成分であるセルロースを主成分とする繊維素繊維である。これらのものには、天然セルロース繊維としては、綿花,ボンバックス面(キワタ),カボック等の種子毛繊維,麻,亜麻,黄麻,ラミー,コウゾ,ミツマタ等のジン皮繊維,マニラ麻,ニュージーランド麻等の葉繊維,針葉樹(マツ,モミ,トウヒ,ツガ,スギ),広葉樹(ブナ,カバ,ボプラ,カエデなど)の木材繊維等がある。
【0064】
また、人造のセルロース繊維としては、ビスコース人造絹糸,銅アンモニアレーヨン,フォルチザン,硝酸人絹等の再生セルロース繊維,アセテート人絹等の半合成繊維等がある。更に、このセルロース繊維は、古新聞,チリ紙,古雑誌等の再生資源から得られるものであってもよい。
このセルロース繊維は、繊維長が0.1mm〜数十mmの範囲のものであることが好ましい。繊維長が0.1mm未満である場合には、繊維の絡みが不十分で成形性が悪い。また,数十mmを越える場合には、該繊維とシリカゲルとが均質に分散しにくく、また、比表面積が小さくなり、湿度調節性能が低下するおそれがあるからである。
【0065】
次に、シリカゲルは、セルロース繊維100部に対して100〜3000部添加することが好ましい。100部未満の場合には、気中の湿気を吸収する充分な能力が得られないおそれがあるからである。また、3000部を越える場合には、湿度調節剤として一定の形状を保持することが困難となるおそれがある。
また,有機系結合剤は、シリカゲル100部に対して1〜20部とすることが好ましい。1部未満の場合には、十分な耐水性を有する材料とすることができないおそれがある。一方、20部を越える場合には、十分な湿度調節を期待し難いからである。
【0066】
また、上記湿度調節紙においては、その優れた性能を損なわない程度に他の添加剤を添加することができる。具体的には、分散性を向上する分散剤としてポリビニルアルコール(P.V.A),CMC(カルボキシメチルセルロース),アルミナゾル,シリカゾル等がある。また、繊維質のものとしては、ガラス繊維,セラミックファイバー等の無機質繊維、またはナイロン繊維,レーヨン繊維等の合成繊維がある。更に、添加助剤として顔料や染料等がある。また、強度を向上する結合剤として水ガラス,セメント,石膏等がある。
【0067】
次に、上記湿度調節紙の製造方法につき例示する。まず、上記セルロース繊維とシリカゲルと水とを混合してスラリーとする(第1混合工程)。これら原料を混合する順番は、特に限定するものではないが、まずセルロース繊維を叩解機等により叩解してセルロース繊維の水性スラリーを用意する。次いで、別に用意した適宜の大きさ,形状に乾式粉砕又は湿式粉砕したシリカゲルに上記セルロース繊維のスラリーを添加し混合する。上記の混合は、プロペラミキサー,ヘンシエルミキサー,ボールミル,振動ミル,ディスパーミル等を用いて行なう。
【0068】
次に、得られたスラリーと有機系結合剤とを混合して混合スラリーとする(第2混合工程)。上記のセルロース繊維,シリカゲル及び有機系結合剤の混合割合は前記と同様である。なお、上記第1または第2混合工程において、濾水性向上の目的で、硫酸バン土,アクリルアミド重合体,アクリルアミド変性重合体等の凝集剤を適宜添加・混合してもよい。また、染料,顔料等の添加剤を適宜添加してもよい。
【0069】
次に、得られた上記の混合スラリーを、抄造法,フィルタープレス法,スリップキャスト法等を用いて所望の形状に脱水,成形し、半湿濾過体を得る(成形工程)。また、該脱水,成形により得られた半湿濾過体の水分量は、50〜80wt%であることが好ましい。
これは、該水分量が80wt%を越えた場合、該成形工程における成形がしにくく、また、収縮率が大となり乾燥工程でひび割れやクラック等が発生して強度低下をもたらすおそれがあるからである。また、50wt%未満の場合には、結合力が弱いので好ましくないからである。尚、該水分量が55〜70wt%の場合には、より好ましい。
【0070】
次いで該半湿濾過体を加熱・固化して一体固化物とする(乾燥工程)。この乾燥工程においては、常温乾燥法,真空乾燥法,加圧乾燥法,加圧・加熱乾燥法,真空加熱乾燥法,真空凍結乾燥法等により該半湿濾過体の乾燥を行なう。この場合、上記乾燥は、成形工程における成形と同時に行ってもよい。
上記製造方法においては、添加剤として、強度向上,外観向上等の目的で適宜充填剤を添加してもよい。この添加剤としては、例えばカオリン,珪砂等が挙げられる。また、防カビ剤,香料,顔料,染料等の各種添加剤を適宜添加してもよい。
【0071】
上記の湿度調節紙は、優れた湿度調節機能を有している。そのため、例えば住宅の建材,壁材,壁紙,食料品を包装する包装紙,食品等の運搬時に使う段ボール紙,自動車の内装材,書物や絵画の保存庫の壁材などに配合することにより用いることができる。
本発明の一実施形態としての調湿剤用シリカゲルは上述したように形成されており、以下に示す理由から優れた調湿機能を有する。
【0072】
シリカゲルは高湿度では余剰の水蒸気を吸湿する一方、低湿度では吸湿していた水蒸気を放出する性質があり、平均細孔径を3〜5nmに設定すれば、系内を平均細孔径に対応した快適な湿度(40%〜60%)に調湿することができる。この調湿機能はシリカゲルに対する水蒸気の吸着等温線により評価されるが、細孔径分布がシャープであるほど、最頻細孔径に対応する相対湿度付近で、湿度の増加に対し急激に水蒸気の吸着量(吸湿能力)が増加する傾向となる。しかし、従来シリカゲルでは、その細孔径分布がブロードなので、湿度の変化に対する水蒸気の吸着量の変化は緩慢になり、その調湿も緩慢なものとなってしまう。
【0073】
吸着質(ここでは水蒸気)が毛管凝縮を起こしシリカゲルに急激に吸着され始める相対蒸気圧(P/P0)〔ここでは、吸着質が水蒸気なので、(P/P0×100)が相対湿度(%)に相当する〕と細孔半径r(nm)との相関関係は、下式(1)のケルビン式で表せる。
ln(P/P0)=−(2Vmγcosθ)/(rRT) …(1)
上式(1)において、Vmは吸着質のモル体積、γは吸着質の表面張力、θは吸着質の接触角、Rは気体定数、Tは吸着質の絶対温度(K)である。
【0074】
ここで、吸着質を水蒸気とし温度T=298K(=25℃)とすると、モル体積Vm=18.05×10-63/mol,表面張力γ=72.59×10-3N/mとなり、さらに、気体定数R=8.3143J/deg・mol、接触角θ=0とすると、上式(1)は下式(2)となる。
ln(P/P0)=−1.058/r …(2)
上式(2)より、細孔半径r(nm)のシリカゲルでは、相対蒸気圧(P/P0)がexp(−1.058/r)になると、水蒸気が毛細管凝縮してシリカゲルの細孔内に急激に吸着されることがわかる。
【0075】
このように、シリカゲルの細孔により水蒸気の吸着が行なわれるようになる相対蒸気圧(P/P0)ひいては相対湿度は、その細孔径2r(nm)を主な要因として決定され。したがって、上述したように、細孔径分布がシャープなシリカゲルでは、周囲の湿度が、その最頻細孔径に対応する所定の湿度を上回ると急激に吸湿が行なわれるようになり、一方、上記所定湿度を下回ると急激に脱湿が行なわれるようになる。この結果、細孔径分布がシャープなシリカゲルは、周囲の湿度を上記所定湿度に迅速且つ精度良く制御できるという優れた調湿作用を示すのである。
【0076】
本シリカゲルでは、直径がDmax±20%の範囲内にある細孔の総容積が、全細孔の総容積の50%以上であり、従来シリカゲルと比較して細孔分布がシャープであることから、その細孔径を従来よりも精密に制御することが可能である。そして、本シリカゲルでは、細孔径を2〜20nmの範囲の任意の径に制御可能なので、このような細孔径制御に対応して、周囲の相対湿度を、35〜90%の幅広い範囲で任意に精度良く調湿できるという利点がある。
【0077】
また、住環境において快適な湿度とされる相対湿度40%〜60%に調湿しうる3〜5nmの細孔径を有し且つシャープな細孔径分布を有するシリカゲルを再現性良く製造することは、従来法のシリカゲルにおいては困難であったが、本シリカゲルでは、上記の細孔径領域においても精度良く細孔制御を行なえる。
さて、一般にシリカゲルは水分の存在下で加熱すると劣化しやすいのに対し、本調湿剤用シリカゲルは、不純物の含有率が非常に低く、さらに、上式(I)を満たしてシロキサン結合角の歪みの少ない均質で安定な構造であることから、たとえ過酷な環境化(例えば高温・高湿化)においても細孔特性などの物性変化が少ないといった特性を有する。したがって、長時間にわたって使用したり、加熱による再生工程を伴う繰り返し行なったりしても、細孔特性ひいては調湿特性の劣化が少ないという利点がある。
【0078】
そして、本調湿剤用シリカゲルにおいては、有機テンプレートを使用することなく製造され、高精度な細孔制御により上記の利点を有するシリカゲルを安価に製造できる利点がある。
さらに、本発明のシリカゲルは、同程度の細孔径を有する従来シリカゲルと比較して、比較的高細孔容積且つ高比表面積という特徴を有しており、このため、同程度の細孔径を有する従来シリカゲルよりも、水蒸気の吸着能力に優れ、且つ、吸着容量が大きい。したがって、高湿度下のためシリカゲルの吸湿能力が飽和すると、シリカゲルが結露してしまい、シリカゲルによる調湿が不可能になるが、本シリカゲルではこのようなことが抑制され少ない量で効率的に調湿を行なえるという利点がある。
【0079】
さらに、本調湿剤用シリカゲルは非結晶質であることから極めて生産性に優れているという利点がある。
次に、本発明の第2実施形態としての調湿剤用シリカゲル(以下、単にシリカゲルともいう)を詳細に説明する。本実施形態のシリカゲルは、上述した第1実施形態の調湿剤用シリカゲルに対し、水分に対する親和性の高い調湿補助剤を含有させたものであり、シリカゲル自身の細孔による水分吸着効果に加え、調湿補助剤による水分吸着効果を有するものである。
【0080】
以下、本実施形態のシリカゲルについて具体的に説明すると、本発明の調湿剤用シリカゲルは、細孔容積及び比表面積が通常のものより大きい範囲にあることを特徴とし、具体的には、細孔容積の値は、通常0.3〜1.6ml/gの範囲、好ましくは0.4〜1.5ml/gの範囲、さらに好ましくは0.5〜1.3ml/gの範囲にあることが好ましい。また、比表面積の値は、通常200〜900m2/gの範囲、好ましくは200〜800m2/gの範囲、更に好ましくは200〜700m2/gの範囲に存在する。これらの細孔容積及び比表面積の値は、第1実施形態と同様、窒素ガス吸脱着によるBET法で測定される。
【0081】
第1実施形態に対し細孔容積及び比表面積の各設定が若干異なるが、これは以下の理由による。
つまり、細孔内に調湿補助剤が含有されているために第1実施形態のシリカゲルと比較して細孔容積,比表面積等の下限値が低目に設定されることとなるのである。
【0082】
更に、本実施形態の調湿剤用シリカゲルは、上記の最頻直径(Dmax)の値を中心として±20%の範囲にある細孔の総容積が、全細孔の総容積の通常30%以上であることを特徴とし、このことは、本実施形態の調湿剤用シリカゲルが有する細孔の直径が、第1実施形態のシリカゲルと同様に、最頻直径(Dmax)付近の細孔で揃っていることを意味する。なお、上記の最頻直径(Dmax)の値の±20%の範囲にある細孔の総容積について、特に上限は無いが、通常は全細孔の総容積の90%以下である。
【0083】
第1実施形態に対し、最頻直径(Dmax)の値を中心として±20%の範囲にある細孔の総容積の設定が若干異なるが、これは以下の理由による。
つまり、細孔内に含有された調湿補助剤の内、一部の調湿補助剤が細孔内において二次的な細孔構造を形成することがあり、この結果、最頻直径(Dmax)の値を中心として±20%の範囲にある細孔の総容積が、第1実施形態のシリカゲルよりも僅かに低目になるのことがあるためである
また、第1実施形態のシリカゲルと同様なので、詳細な説明を省略するが、本実施形態の調湿剤用シリカゲルは、BJH法により算出された最頻直径(Dmax)、最頻直径(Dmax)における微分細孔容積ΔV/Δ(logd)、三次元構造、金属元素(金属不純物)の合計の含有率、Q4ピークのケミカルシフトδ(ppm)、固体Si−NMR測定によるQ4/Q3の値にそれぞれ以下のような特徴を有する。
【0084】
つまり、細孔の最頻直径(Dmax)が20nm未満であることを特徴とする。本シリカゲルの好ましい最頻直径(Dmax)は、中でも17nm以下、更には15nm以下である。また、下限は特に制限されないが、好ましくは2nm以上である。
また、本実施形態の調湿剤用シリカゲルは、BJH法により算出された最頻直径(Dmax)における微分細孔容積ΔV/Δ(logd)が、通常2〜20ml/g、特に3〜12ml/gであることが好ましい。また、本実施形態の調湿剤用シリカゲルは、その三次元構造を見るに、非晶質であること、即ち、結晶性構造が認められないことを特徴とする。
【0085】
さらに、金属元素(金属不純物)の合計の含有率が、通常500ppm以下、好ましくは100ppm以下、更に好ましくは50ppm以下、最も好ましくは30ppm以下であることを特徴とする。なお、第1実施形態と同様に、上記の金属不純物には、後述するようにアルカリ金属,アルカリ土類金属のような調湿補助剤として機能しうる金属は含めない。
【0086】
更に、本実施形態の調湿剤用シリカゲルは、Q4ピークのケミカルシフトをδ(ppm)とした場合に、δが、〔−0.0705×(Dmax)−110.36>δ〕を満足することを特徴とし、δは、この式に基づき算出される値よりも、好ましくは0.05%以上小さい値であり、更に好ましくは0.1%、特に好ましくは0.15%以上小さい値である。
【0087】
さらに、本実施形態の調湿剤用シリカゲルでは、固体Si−NMR測定によるQ4/Q3の値が、通常1.3以上、中でも1.5以上であることが好ましい。
ここで、本実施形態のシリカゲルの大きな特徴である調湿補助剤について説明する。調湿補助剤は、上述したように高機能な調湿効果を付与すべくシリカゲルに含有させるためのもので、水分に対する親和性の高いものであれば良く、有機化合物,無機化合物,金属塩類などの群に属する様々な物質を選択することができ、このような群に属する物質の内、少なくとも1種類の含有率が、1〜80重量%の範囲、好ましくは3〜60重量%の範囲、さらに好ましくは5〜50重量%の範囲であることを特徴としている。また、これらの物質は、単独で用いても良く、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0088】
特に、調湿補助剤が金属塩類であり且つ金属塩類を細孔内に含有させる場合には、金属塩類は高湿度条件下で水溶液として細孔内に存在するため、最も好ましい調湿補助剤の含有量は、使用条件における最高湿度において、吸湿により細孔内に貯留された調湿補助剤の水溶液の体積がシリカゲルの総細孔容積以下の量となるような量である。
【0089】
つまり、金属塩と金属塩に吸着された湿分とからなる水溶液の量が、細孔容積を越えてしまうと、細孔内からこの水溶液が溢れてしまい、このため、脱湿により再びシリカゲルを乾燥した際に、水溶液に含有されて細孔内から排出された金属塩が細孔外部に不要に付着してしまう。この結果、シリカゲルの吸湿特性を悪化させてしまうことがある。このため、金属塩の含有量が多くなると吸湿能力は増加するが、上記の理由により高湿度域で便用できない恐れがあり、使用しうる湿度範囲を制限しなければならなくなってしまう。
【0090】
但し、付帯設備を設けるなど装置的な工夫が許容されるならば、細孔内の水溶液の量が細孔容積以上となる前にシリカゲルを再生させるような運転サイクルを組むことにより、静的な吸着データ上では使用できない高湿度領域においても使用可能とすることができる。
上記の調湿補助剤としては、中でもアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩をシリカゲルに含有させると、シリカゲルによる水蒸気吸着量が非常に高くなる。このため、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群に属する金属塩の内、少なくとも1種類の金属塩をシリカゲルに調湿剤として含有させることが好ましい。
【0091】
ここで、含有させるアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩は何れでも良いが、水蒸気との親和性が特に強いことから、例えば、LiF,NaF,KF,CaF2,MgF2,Li2S04,Na2S04,K2SO4,CaSO4,MgSO4,LiNO3,NaNO3,KNO3,Ca(NO32,Mg(NO32,NaCl,LiCl,CaCl2,MgCl2,LiBr,LiI,KBrの中から選択される少なくとも1種、或いは2種以上であることが好ましい。これらの中でも特にリチウム塩が最も吸湿性に優れ好ましく、中でも塩化リチウムが単位重量あたりの吸湿量が大きく好ましい。
【0092】
上記の調湿補助剤の存在状態は任意であり、例えばシリカゲル中に分子状、クラスター状、粒子状、その他何れかの状態で均一に分散していても、若しくはそれらがシリカゲル表面に添着、付着していてもよい。また、上記調湿補助剤の少なくとも一部が、直接又は酸素を介して珪素原子と結合していてもよい。さらに、これらの調湿補助剤は固体状であっても液体状であっても良い。また、これらの調湿補助剤は水和物の状態であっても良く、細孔内で一部が水溶液となっていても良い。
【0093】
具体的に、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群に属する金属塩とは、本実施形態のシリカゲルに含有される、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群に属する金属塩のうち、含有率の多いものから順に、通常4種、好ましくは3種、更に好ましくは2種、特に好ましくは1種を指すこととする。ここで、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群に属する金属塩が2種以上の場合には、その合計の金属塩の含有率が、通常1〜80%以上、好ましくは3〜60%以上、特に好ましくは5〜50%以上であることが好ましい。
【0094】
さて、本実施形態の調湿剤用シリカゲルは、第1実施形態の調湿剤用シリカゲルと同様に、シリコンアルコキシドを加水分解する加水分解工程と共に得られたシリカヒドロゾルを縮合する縮合工程を経てシリカヒドロゲルを形成する加水分解・縮合工程と、当該加水分解・縮合工程に引き続き、シリカヒドロゲルを熟成することなく水熱処理することにより、所望の物性範囲のシリカゲルを得る物性調節工程とを、ともに包含する方法で製造することができる。
【0095】
以下、本実施形態のシリカゲルの製造法についてさらに説明するが、第1実施形態のシリカゲルの製造法とは異なる点、即ち、補助調湿剤をシリカゲルに含有させる方法について説明し、その他については、第1実施形態と略同様なので説明を省略する。なお、調湿補助剤として、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩のような金属塩を含有させる例を説明する。
【0096】
まず、調湿補助剤を水熱処理前にドープして本シリカゲルを製造する場合には、珪酸アルカリ塩又はシリコンアルコキシドを加水分解した後、これをゲル化する前に、調湿補助剤を添加し、得られたシリカヒドロゲルを用いて、水熱処理による方法を応用して製造することができる。水熱処理による方法の応用例として、好ましくは、シリコンアルコキシドと調湿補助剤とを加水分解する方法が挙げられる。
【0097】
調湿補助剤は、シリコンアルコキシドを加水分解しシリカヒドロゲルを得る工程において、1種又は2種以上系内に添加される。その形態などについては、均質なシリカヒドロゲルの形成を妨げない範囲であれば特に限定されず、シリコンアルコキシドの加水分解に対して強い触媒活性を発現しないものが好ましい。また、高純度なシリカゲルを得る観点から、調湿補助剤も高純度なものを用いることが好ましい。
【0098】
調湿補助剤の添加方法は、均質なシリカヒドロゲルの形成を妨げない方法であれば特に限定されず、調湿補助剤をシリコンアルコキシド加水分解のための水に添加しても、シリコンアルコキシドに添加しても、加水分解直後に均一溶液となったヒドロゾルに添加してもよく、操作性に応じ適宜選択される。また、必要であれば、調湿補助剤を前もって加水分解した後に上記の系に添加したり、逆に、シリコンアルコキシドの部分加水分解を行なった後に調湿補助剤を添加したりしてもよい。
【0099】
また、本実施形態のシリカゲルは、細孔制御後の高純度シリカゲルに調湿補助剤を後担持させる方法でも製造できる。この場合、まず、シリカゲル細孔中に調湿補助剤を導入する。その方法としては、公知のいかなる方法でも良いが、例えば、触媒調整法としてよく知られている含浸法<吸着(absorption)法,ポアフィリング(pore−filling)法,“incipient wetness”法,蒸発乾固(evaporation to dryness)法,スプレー(spray)法等>が挙げられる。調湿補助剤を担持させる場合、細孔外に調湿補助剤が付着するとこの調湿補助剤が大粒子となり、吸湿特性が低下するため、特にポアフィリング法のように調湿補助剤の水溶液が細孔外にあふれない方法が好ましい。
【0100】
調湿補助剤は、シリコンアルコキシドを加水分解し、熟成すること無しに水熱処理して得られたシリカゲルに、上記の方法で担持させることができるが、その形態などは、調湿補助剤が機能性を発現する範囲であれば特に限定されない。また、高純度なシリカゲルを得る観点から、調湿補助剤も高純度なものを用いることが好ましい。調湿補助剤を後担持させる場合には、担体となる高純度シリカゲルに対して前処理を行なってもよい。なお、担体となるシリカゲルの原料であるシリコンアルコキシド等に由来する炭素分が含まれている場合には、必要に応じて、通常400〜600℃で焼成除去してもよい。さらに、表面状態をコントロールするために、最高900℃の温度で焼成してもよい。
【0101】
また、必要に応じて担体シリカゲル表面の親疎水性や表面活性や酸性度などの状態を変化させるための表面処理を施しても良い。
調湿補助剤を含有させる方法は前述のいかなる方法によっても良いが、細孔制御を確実に行なうことができ、含有する調湿補助剤を幅広く選択可能なことから、担持による方法がより好ましい。
【0102】
本発明の第2実施形態としての調湿剤用シリカゲルは上述したように水蒸気と親和性の高い調湿補助剤を含有しているので、第1実施形態の調湿剤用シリカゲルよりも調湿効果が高いという利点がある。
さらに、調湿補助剤が細孔内に担持され、且つ調湿補助剤が金属塩の場合には以下のような利点がある。
【0103】
つまり、本シリカゲルは、従来シリカゲルと比較して金属塩を高分散に担持することができ、担持した後も優れた細孔特性を維持することが可能である。この結果、担持された金属塩はその理論吸湿量に近い高効率な吸湿性能を発揮することができる。その理由は、様々な複合的な要因によるものと思われ、詳細は不明であるが以下のように推定される。
(1)担体(シリカゲル)が非常に高純度であり、且つ、そのシロキサン結合の結合角の歪みが少なく均質な構造であるため、担体の表面状態が均質で金属塩が特異的に吸着する活性点が少ない。したがって、細孔内に担持される金属塩は、低湿度下では固体で存在するが、細孔内に高分散に(すなわち均一に)担持されて高い表面積を有することとなり、高い吸着能力を発揮することができる。一方、高湿度下では、金属塩は細孔内に水溶液として存在するが、低湿度下と同様に細孔内に高分散に(すなわち均一に)担持される。金属塩が例えばリチウム塩だと、上記水溶液は粘度が比較的高く、特に細孔内に不均一に担持されてしまうと粘度の高い個所や液膜の厚い個所が局所的に生じてしまう。このような粘度の高い個所や液膜の厚い個所では、細孔内に吸湿された水分の細孔内(つまり粘度の高いリチウム塩水溶液内)での拡散速度が不十分となり、細孔内の全てのリチウム塩が有効に吸湿に寄与しない(細孔内の一部のリチウム塩しか吸湿に寄与しない)状態になりがちであるが、本シリカゲルでは上記のように金属塩水溶液が細孔内に均一に担持されるようになるので、これが抑制される。
(2)細孔径分布が非常にシャープである(細孔径が揃っている)ため担持された塩が細孔分布に応じて異なる条件で細孔内に析出することが無く、均一な粒径で担持される。つまり、細孔径分布がブロードだと(細孔径が不揃いだと)、細孔内に担持される金属塩の量などが不揃いとなり、粗大な粒径の金属塩では、水蒸気との接触効率が低下するため、吸湿に寄与しにくくなったり、吸湿速度が低下したりして、十分な調湿機能を発現できなくなる。これに対し、細孔径が揃っていれば、細孔内の多くの金属塩を均一な細かい粒径で担持することができ、吸湿に寄与しにくい粗大な粒子が少なくなるので十分な調湿機能を発現できるようになる。
【実施例】
【0104】
以下、本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。なお、実施例としては、(A)調湿補助剤をシリカゲルに含有させない場合(上記第1実施形態に対応するもの)、(B)調湿補助剤をシリカゲルに含有させる場合(上記第2実施形態に対応するもの)について説明する。
(A)調湿補助剤を含有させない場合
(1)シリカゲルの分析方法
1−1)細孔容積、比表面積
カンタクローム社製AS−1にてBET窒素吸着等温線を測定し、細孔容積、比表面積を求めた。具体的には細孔容積は相対圧P/P0=0.98のときの値を採用し、比表面積はP/P0=0.1,0.2,0.3の3点の窒素吸着量よりBET多点法を用いて算出した。また、BJH法で細孔分布曲線及び最頻直径(Dmax)における微分細孔容積を求めた。測定する相対圧の各点の間隔は0.025とした。
【0105】
1−2)粉末X線回折
理学電機社製RAD−RB装置を用い、CuKαを線源として測定を行った。発散スリット1/2deg、散乱スリット1/2deg、受光スリット0.15mmとした。
1−3)金属不純物の含有量
試料2.5gにフッ酸を加えて加熱し、乾涸させたのち、水を加えて50mlとした。この水溶液を用いてICP発光分析を行った。なお、ナトリウム及びカリウムはフレーム炎光法で分析した。
【0106】
1−4)固体Si−NMR測定
Bruker社製固体NMR装置(「MSL300」)を使用するとともに、共鳴周波数59.2MHz(7.05テスラ)、7mmのサンプルチューブを使用し、CP/MAS(Cross Polarization / Magic Angle Spinning)プローブの条件で測定した。具体的な測定条件を下の表1に示す。
【0107】
【表1】

【0108】
測定データの解析(Q4ピーク位置の決定)は、ピーク分割によって各ピークを抽出する方法で行なう。具体的には、ガウス関数を使用した波形分離解析を行なう。この解析には、サーモガラテック(Thermogalatic)社製の波形処理ソフト「GRAMS386」を使用することが出来る。
(2) シリカゲルの製造、評価
実施例1〜3
ガラス製で、上部に大気開放の水冷コンデンサが取り付けてある5Lセパラブルフラスコ(ジャケット付き)に、純水1000gを仕込んだ。100rpmで撹拌しながら、これにテトラメトキシシラン1400gを3分間かけて仕込んだ。水/テトラメトキシシランのモル比は約6である。セパラブルフラスコのジャケットには50℃の温水を通水した。引き続き撹拌を継続し、内容物が沸点に到達した時点で、撹拌を停止した。引き続き約0.5時間、ジャケットに50℃の温水を通水して生成したゾルをゲル化させた。その後、速やかにゲルを取り出し、目開き600ミクロンのナイロン製網を通してゲルを粉砕し、粉体状のウェットゲル(シリカヒドロゲル)を得た。
【0109】
このヒドロゲル450gと純水450gを1Lのガラス製オートクレーブに仕込み、実施例1については130℃×3Hr、実施例2については150℃×3Hr、実施例3については200℃×3Hrの条件で、それぞれ水熱処理を実施した。所定時間水熱処理した後、No.5A濾紙で濾過し、得られたシリカゲルを水洗することなく100℃で恒量となるまで減圧乾燥して、それぞれ実施例1〜3の原料シリカゲルを得た。
【0110】
そして、各原料シリカゲルを、それぞれ乳鉢にて粉砕後、篩により分級し、平均粒径20μmの粉体(実施例1〜3のシリカゲル)を得た。これらの実施例1〜3のシリカゲルの諸物性を下記の表2及び表3に示す。
【0111】
【表2】

【0112】
【表3】

【0113】
本調湿剤用シリカゲルの各実施例1〜3は、表2に示すように、最頻直径(Dmax)の値を中心として±20%の範囲にある細孔の総容積が、全細孔の総容積の60%以上と高く、シャープな細孔分布を有している。したがって、本発明の調湿剤用シリカゲルによれば、水熱処理温度を調整することによりその細孔径をきめ細かに制御できることがわかる。
【0114】
また、本調湿剤用シリカゲルの実施例1〜3は、図示しないが何れも粉末X線回折図には、周期的構造による低角度側(2θ≦5deg)のピークは認められなかった。
さらに、表3に示すように、本調湿剤用シリカゲルの各実施例1〜3では、固体Si−NMRのQ4ピークのケミカルシフトの値は上式(I)により計算される値よりも小さい(よりマイナス側にある)。これに対し、後述する比較例1のシリカゲルでは、固体Si−NMRのQ4ピークのケミカルシフトの値は上式(I)により計算される値よりも大きい(よりプラス側にある)。これは、本調湿剤用シリカゲルの各実施例1〜3は、比較例1のような従来のシリカゲルに較べて構造的なひずみが少ないことを意味し、過酷な使用条件においても物性が変化しにくい(即ち劣化しにくい)ことを示す。
【0115】
比較例として、以下を用意した。
比較例1
富士シリシア化学(株)製の触媒担体用シリカゲル CARIACT G−3 を用いた。
比較例2
富士シリシア化学(株)製の触媒担体用シリカゲル CARIACT G−6 を用いた。
これらの比較例1,2の諸物性を上記の表2及び表3に示す。なお、比較例1のシリカゲルでは、細孔分布曲線において明瞭なピークを発現しなかったので平均細孔径を最頻直径(Dmax)とした。
【0116】
比較例1,2のシリカゲルの何れについても、粉末X線回折図には周期的構造による低角度側のピークは認められない。さらに、不純物金属含有率を測定したところ、各々上記表に示す通りとなり、比較例1,2のシリカゲルは実施例1〜3のシリカゲルより不純物金属の含有量が多かった。また、表3からも明らかなように、比較例1,2のシリカゲルは、固体Si−NMRのQ4ピークのケミカルシフトの値は、上記式(I)の左辺より計算される値と比べて、より大きな値(よりプラス側の値)であることから、その構造は実施例1〜3のシリカゲルと比べてひずみが多く、物性変化しやすいものと思われる。
【0117】
シリカゲルの水中熱安定性試験
実施例1〜3、比較例1,2のシリカゲルに、各々純水を加えて40重量%のスラリーを調製した。容積60mlのステンレススチール製のミクロボンベに、上記で調製したスラリー約40mlを入れて密封し、280±1℃のオイルバス中に3日間浸漬した。ミクロボンベからスラリーの一部を抜出し、5A濾紙で濾過した。濾滓は100℃で5時間真空乾燥した。この試料について比表面積を測定した結果を表2及び表3に示す。実施例1〜3のシリカゲルは、比較例1,2のシリカゲルに比べて、比表面積の減少が少なく、水熱安定性に優れていた。
(3)調湿剤の性能評価
上記実施例及び比較例の調湿性能は、例えば、以下のような方法により評価することができる。
<静的吸湿性能評価>
乾燥処理を施したシリカゲルを一定湿度の環境下に置き吸湿させ、吸湿量が飽和に達した後、シリカゲルの重量増もしくは系内の圧力変化にてシリカゲルに吸着した水蒸気の量を知る方法である。
【0118】
各相対圧(相対湿度)において水蒸気の吸着量を求め、横軸相対圧、縦軸シリカゲル1gあたりの吸着量としてプロットすることにより、水蒸気の吸着等温線を得ることが出来る。一定湿度において急激に吸着量が立ち上がり、かつその変化量の多いシリカゲルは、この湿度に対する調湿性能に優れていると言える。
なお、重量変化による測定方法を重量法といい、圧力変化による測定方法を容量法という。
【0119】
重量法の簡易な測定例としては、例えばJIS Z0701 包装用シリカゲル乾燥剤の試験方法に記載の吸湿性試験が挙げられる。上記吸湿性試験は、秤量瓶に乗せたシリカゲルを、硫酸水溶液が入れられたガラス密閉器内に所定温度下で一定時間おき、シリカゲルの重量変化によりシリカゲルの吸湿率を測定するものである。この試験方法では、硫酸水溶液を所定の濃度/比重にすることで、ガラス密閉器内を相対湿度に設定するようにしており、相対湿度を20%,50%,90%にするための硫酸水溶液の濃度/比重が具体的に明記されている。
【0120】
硫酸水溶液の濃度と相対湿度との関係は化学便覧基礎編II,8章の3,二成分系の気液平衡の項に硫酸水溶液の全圧として更に詳細に記載されているので、これを参考に任意の湿度に対応する硫酸水溶液を調液することにより、上記試験方法に準じて、任意の湿度条件下における吸湿率を求めることも可能である。
容量法の測定例としては、一般のガス吸脱着装置を用いる方法が挙げられる。例えば日本ベル製水蒸気吸着装置BELSORP18等の装置を用いることにより、容易に水蒸気の吸・脱着等温線を測定することが出来る。
<動的調湿性能評価>
シリカゲルを調湿剤として使用する場合、水蒸気の吸放出速度及び調湿応答速度が十分に速いことも重要である。このような性能を評価するためには、一定量の調湿剤を湿度センサー付きの湿度可変容器の中に入れ、一定時間毎に高湿度・低湿度の2条件間で環境湿度をスイングさせ、その都度容器を密閉し、調湿剤の吸放湿作用により環境湿度が変化していく応答速度及び変化値一定となった際の湿度を調べる。環境湿度の変化に対する調湿応答速度が速く、繰り返しサイクルにおいても一定湿度に調湿し得るシリカゲルは優れた調湿剤と言える。動的性能はシリカゲル自体の性能の他、シリカゲル充填状態や成形法によっても大きく変化する。
<耐久性評価>
繰り返し使用した調湿剤の細孔特性や吸湿特性を経時的に分析し、劣化の有無を調べる。必要に応じて劣化促進試験を行ない同様に劣化の有無を調べる。
【0121】
先述した本シリカゲルの実施例の物性評価を考慮すれば、このような評価方法を行なうことにより本シリカゲルの調湿剤としての高い性能を確認できることが予想される。
(B)調湿補助剤をシリカゲルに含有させる場合
(1)実施例4
上記の実施例1と略同様の方法により製造されたシリカゲル(原料シリカゲル)に調湿補助剤として塩化リチウムをポアフィリング法により担持させて実施例4のシリカゲルを製造した。
【0122】
具体的には、上部が開放され斜めに固定されたポリエチレン製の容器に上記原料シリカゲルを仕込んだ。この容器の底部には低速回転モータが取り付けられており、このモータを作動させて上記容器を50rpmで回転させ内部のシリカゲルを流動させながら、この粉体(シリカゲル)上に30wt%の塩化リチウム水溶液13.3gをスプレーし、上記容器を3分間回転させた後、この容器から粉体を取り出した。
【0123】
使用した塩化リチウム水溶液の体積は担体(シリカゲル)の細孔容積の総和を越えない範囲として、添加した水溶液の全量が細孔内に吸収されるようにした。この粉体を真空乾燥機にて100℃で5時間乾燥し、塩化リチウムを20.0重量%担持した調湿剤シリカゲルを実施例4として得た。
この実施例4の諸物性を表4に示す。また、上述したJISZ0701に準じた方法により測定した吸湿率の結果を表5に示す。実施例4のシリカゲルは塩化リチウムを担持した後にもシャープな細孔分布及び高い細孔容積、比表面積を維持している。また、粉末X練回折図において周期的構造による低角度側(2θ≦5deg)のピークは認められなかった。さらに、アルカリ金属及びアルカリ土類金属を除く金属含有率(つまり不純物金属含有率)は0.1ppmであり非常に高純度であった。
【0124】
また、固体Si・NMRのQ4ピークのケミカルシフトの値は、〔−0.0705×(Dmax)−110.36〕よりも小さかった(よりマイナス側に存在した)。つまり、塩化リチウム担持後もシリカゲル担体自体は、ひずみの少ない構造が維持され、均質で安定性が高く物性変化しにくい性質が保持されたと考えられる。
【0125】
(2)比較例3
比較例3として、実施例4と同程度の最頻細孔径を有する日本シリカエ業(株)製NIPGELCX−200の諸物性を表4に、実施例4と同様に測定した吸湿率を表5に示した(但し、比較例3は塩化リチウムを担持していない)。比較例3のシリカゲルの粉末X練回折図には周期的構造による低角度側(2θ≦5deg)のピークは認められなかった。また、アルカリ金属、アルカリ土類金属を除く金属含有率(つまり不純物金属含有率)は732ppmであり、実施例4のシリカゲルよりも非常に多かった。
【0126】
また、固体Si・NMlRのQ4ピークのケミカルシフトの値は〔−0.0705×(Dmax)−110.36〕よりも大きかった(よりプラス側に存在した)。つまり、比較例3のシリカゲルは、実施例4のシリカゲルと比較してひずみが多く、繰り返しの使用などにおいて物性変化しやすいものと考えられる。この比較例3のシリカゲルは上述したように塩化リチウム(調湿補助剤)は担持させていないが、この比較例3のシリカゲルに塩化リチウムを担持させたものは、実施例4と比較すると細孔分布特性がブロードであり上述したように構造的なひずみが多いことから細孔特性に劣ることは明白であり、担持した塩化リチウムの吸湿特性を十分に発揮することは出来ないものと考えられる。
【0127】
(3)吸湿率の比較
実施例4の塩化リチウムを担持したシリカゲルは、比較例3のシリカゲルと比較して全湿度域にわたり吸湿率が大幅に高く、従来の固体吸湿剤に無い高い吸湿性能を示した。実施例4のシリカゲルの吸湿率は塩化リチウムの理論吸湿曲線と近い値となり、塩化リチウムは本シリカゲルに担持されることにより非常に高効率に水蒸気を吸湿出来るようになったと考えられる。
【0128】
また、実施例4のシリカゲルは相対湿度8%と相対湿度20%の間の吸湿率の変化量(吸収率差)が比較例3と比較して非常に大きかった。このことは低湿度域において僅かの湿度差で大量の水分を吸放出できることを示しており、これは、実施例4のシリカゲルが、吸湿剤の吸放湿を利用したヒートポンプの上記吸湿剤として非常に有効であることを示している。
【0129】
【表4】

【0130】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンアルコキシドを加水分解してシリカヒドロゾルを得る加水分解工程と、
該シリカヒドロゾルを縮合してシリカヒドロゲルを得る縮合工程と、
該シリカヒドロゲルを実質的に熟成することなく水熱処理を行なう物性調節工程とを有する
ことを特徴とする、シリカゲルの製造方法。
【請求項2】
前記加水分解工程が、シリコンアルコキシド1モルに対して、2モル以上20モル以下の水を用いて加水分解する
ことを特徴とする、請求項1記載のシリカゲルの製造方法。
【請求項3】
前記加水分解工程において、30rpm以上の撹拌速度で撹拌する
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のシリカゲルの製造方法。
【請求項4】
前記加水分解工程において、シリコンアルコキシドと水とが均一液となるときに撹拌を停止する
ことを特徴とする、請求項3に記載のシリカゲルの製造方法。
【請求項5】
前記物性調節工程において、破壊応力が6Mpa以下の前記シリカヒドロゲルの水熱処理を行なう
ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載のシリカゲルの製造方法。

【公開番号】特開2007−308372(P2007−308372A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227275(P2007−227275)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【分割の表示】特願2001−401403(P2001−401403)の分割
【原出願日】平成13年12月28日(2001.12.28)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】