説明

シリカ種の電気化学検出

電気化学的検出を使用して液体中の非電気的活動材料を測定するシステムおよび方法である。電気活性材料の第1の電気的活動はターゲットの非電気活性材料がない状態で検出される(ステップ120)。電気活性材料の第2の電気的活動はターゲットの非電気活性材料が存在する状態で検出される(ステップ130)。第1および第2の電気的活動の差が得られて、得られた差に基づいて、ターゲット非電気活性材料の濃度が識別される(ステップ140)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気化学的な検出に関する。
【背景技術】
【0002】
液体(例えば水)中におけるシリカの検出は測色技術を使用できる。例えばシリカモリブデン酸塩錯体が形成され、450nmの波長のプローブ光の吸収を測定することにより測定されることができる。代わりに、シリカモリブデンヘテロポリ青色錯体が形成され、810nmの波長のプローブ光の吸収を測定することにより測定されることができる。これらおよびその他の測色プロセスは種々のステップにおける幾つかの化学試薬の付加を必要とする可能性があり、各ステップは十分な混合と反応を可能にするための規定された時間の期間を取る。
【発明の概要】
【0003】
本明細書は特に電気化学プロセスを使用して水中の無機種(例えばシリカ)を検出することに関する技術、システム、装置を記載している。
【0004】
1特徴では、金属錯体の検出は、金属錯体を含み、検出される無機種が存在しない緩衝液へ電圧を与えることを含んでいる。金属錯体に関連される第1の電流は無機種のない状態で測定される。無機種は緩衝液中に加えられ、加えられた無機種が存在する金属錯体に関連される第2の電流も測定される。第1の電流と第2の電流との差が緩衝液中の加えられた無機種の濃度を識別するために得られる。
【0005】
構成は随意選択的に以下の1以上を含むことができる。第1および第2の電流の測定はさらに累積電位とそれに追従する走査電位を与えることを含んでいる。累積電位の供給は0.5ボルトを含む振幅の累積電位の適用を含むことができる。供給される累積電位は60秒を含む時間期間にわたって供給されることもできる。さらに走査電位の供給は25ミリボルトの振幅と、4ミリボルトのステップ電位と、25ヘルツの周波数とを含むグループから少なくとも1つを有する走査電位を供給することを含むことができる。さらに電圧の供給にはモリブデン−クロラニレート錯体のような金属錯体を含む緩衝液への電圧の供給を含むことができる。第1および第2の電流はビスマス、金、炭素、水銀から構成される動作電極を使用して測定されることができる。動作電極を使用する第1および第2の電流の測定はスクリーン印刷電極を使用して行われることができる。さらに、付加される無機種はシリカ類を含むことができる。さらに、測定される第1および第2の電流はボルタンメトリー信号を含むことができる。ボルタンメトリー信号の測定はストリッピング電圧電流計を使用して行われることができる。ストリッピング電圧電流計を使用して測定されるボルタンメトリー信号は使い捨てのストリッピング電圧電流計を使用して測定されることができる。
【0006】
別の特徴では、無機種の検出は検出装置とデータ処理装置とを含むシステムを使用して行われることができる。検出装置は容器内に少なくとも部分的に溶液を保持するように設計された容器を含んでいる。容器内に保持された溶液は金属錯体を含んでいる。検出装置はまた少なくとも部分的に溶液中に浸されている導電性部材も含んでいる。容器、溶液、導電性部材は無機種のない金属錯体に対応する第1の電流と、無機種が存在する金属錯体に対応する第2の電流を測定するように設計されている。データ処理装置はまた測定された第1および第2の電流を検出装置から受けるように設計されている。データ処理装置は第1の電流と第2の電流との差を得て、その得られた差に基づいて無機種の濃度を識別するように設計されている。
【0007】
構成は随意選択的に以下の1以上のものを含むことができる。検出装置はモリブデン−クロラニレート金属錯体に対応する第1および第2の電流を測定するように設計されることができる。さらに、検出装置はシリカ種が存在する金属錯体に対応する第2の電流を測定するように設計されることができる。導電性部材はビスマス、金、炭素、水銀のうちの1つから構成されることができる。さらに導電性部材はスクリーン印刷電極であることができる。さらに、検出装置はストリッピング電圧電流計として構成されることができる。ストリッピング電圧電流計は使い捨てのストリッピング電圧電流計であることができる。また検出装置は累積電位とそれに追従する走査電位の供給により第1および第2の電流を測定するように構成されることができる。
【0008】
別の特徴では、電気活性材料の第1の電気的活動はターゲットの非電気活性材料がない状態で検出される。さらに、電気活性材料の第2の電気的活動はターゲットの非電気活性材料が存在する状態で検出される。第1および第2の電気的活動の差が得られ、得られた差に基づいて、ターゲットの非電気活性材料の濃度が識別される。
【0009】
構成は随意選択的に以下の1以上のものを含むことができる。第1および第2の電気的活動の検出は累積電位とそれに続く走査電位を供給することを含むことができる。さらに、第1および第2の電気的活動の検出は緩衝液における金属錯体の第1および第2の電気的活動の検出を含むことができる。さらに、ターゲットの非電気活性材料の濃度の識別はターゲットのシリカ種の濃度の識別を含むことができる。
【0010】
別の特徴では、電気化学的にアクチブではないターゲットの材料はターゲット材料のない電気化学的にアクチブな媒体の電気化学的特性の初期値を測定することにより検出される。ターゲット材料は電気化学的にアクチブな媒体へ導入される。ターゲット材料と電気化学的にアクチブな媒体の組合せの電気化学的特性の現在値もまた測定される。現在値と初期値に基づいて、ターゲット材料についての情報が得られる。
【0011】
この明細書で開示されている技術は1以上の利点を提供する方法で使用されることができる。例えば電気化学的検出システムは典型的な測色計と比較して廉価で簡単な電子系を有する使い捨てセンサを使用するように構成されることができる。
【0012】
特に、この明細書に記載されている主題は装置、システム、装置および/またはシステムの製造方法と、装置および/またはシステムの使用方法として実行されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】電気化学的検出を使用する無機種の検出のためのプロセスのプロセスフロー図である。
【図2】リガンドのない状態のMo重金属のボルタンメトリー信号を示す図である。
【図3】明白なピーク電流を示しているMo−CAA錯体のボルタンメトリー信号を示す図である。
【図4】高濃度のケイ酸がない状態とある状態のMo−CAA錯体のボルタンメトリー信号を示す図である。
【図5】予め規定されたレベルにおける種々の濃度のケイ酸がない状態とある状態のMo−CAA錯体のボルタンメトリー信号を示す図である。
【図6a】検出装置の開いた構造を示すブロック図である。
【図6b】検出装置の閉じた構造を示すブロック図である。
【図7】電気化学的検出を使用して無機種を検出するためのシステムの図である。
【図8】電気化学的検出を使用するプロセスのプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
種々の図の同じ参照符および指示は同じ素子を示している。
ストリッピング電圧電流計は種々の水性試料中の重金属イオンを検出するための解析ツールとして使用されることができる。ストリッピング電圧電流計は付着ストリッピング電圧電流計および吸収ストリッピング電圧電流計のような種々の構造で構成されることができる。この明細書に記載されている例示的な技術、システム、装置は吸収ストリッピング電圧電流計を使用している。吸収ストリッピング解析は微量金属(例えばモリブデン(Mo))とリガンド(例えばクロラニレート(CAA))との表面活性錯体の形成、吸収累積、減少を含んでいる。したがって、吸収ストリッピングはリガンドが存在する状態の金属(例えば金属錯体)の濃度を測定するために使用されることができる。適切なキレート剤又はリガンドが使用されることができる。さらに、吸収ストリッピングは重金属イオンが存在する状態の無機種の衝撃を測定することにより非電気活性無機種を測定するために使用されることができる。
【0015】
1特徴では、ストリッピング電圧電流計は電気化学的に活性ではないターゲット材料を検出するために使用される。ターゲット材料のない電気化学的な特性の初期値が測定される。ターゲット材料は電気化学的に活性な媒体中へ導入される。ターゲット材料と電気化学的に活性な媒体との組合せの電気化学的特性の現在値も測定される。現在値と初期値に基づいて、ターゲット材料についての情報が得られる。
【0016】
図1は電気活性ではない無機種を測定するための吸収ストリッピング電圧電流計を使用する例示的なプロセス100のプロセスフロー図である。ケイ酸のような非電気活性の無機種は電気活性重金属イオン(例えばMo)が存在する状態の無機種の衝撃を測定することにより検出されることができる。プロセス100は電気活性金属錯体と関連されるボルタンメトリー信号における無機種の影響を測定することにより間接的に無機種(例えばシリカ)を決定する簡単化された方法を提供する。
【0017】
金属錯体、例えばモリブデン−クロラニレート錯体(Mo−CAA)は試薬として形成される(110)。吸収ストリッピング電圧電流計測(例えば方形波吸収ストリッピング電圧電流計測)を使用して、金属錯体(例えばMo−CAA)のボルタンメトリー信号はアセテートpH緩衝(または他の適切な緩衝液)で測定される(120)。ボルタンメトリー信号が動作電極(例えばビスマス、水銀、金等)を使用してこの構造および他の構造で測定される。モロブデン−クロラニレート錯体は電気活性であり、動作電極を使用する電圧電流計により検出されることができる。予め規定された振幅の累積電位が予め定められた期間に緩衝液中の金属錯体に与えられ、それに続いて予め規定された振幅と、予め規定されたステップ電位と、予め規定された周波数を有する電位走査が行われる。
【0018】
非電気活性の無機種(例えば水中のケイ酸のようなシリカ)が方形波吸収ストリッピング電圧電流計を使用して間接的に検出されることができる。種々の濃度の非電気活性の無機種が金属錯体に加えられ、ボルタンメトリー信号は既知の濃度の非電気活性無機種をそれぞれ付加した後に測定される(130)。非電気活性無機種は金属との結合においてリガンド(例えばCAA)に匹敵する。例えばケイ酸はアセテートpH緩衝液において、モリブデンイオンで有効な配位部位のクロラニル酸に匹敵する。モリブデン−クロラニレート錯体は電気活性であるので、金属錯体は動作電極を使用して電圧電流計により検出されることができる。モリブデン−クロラニレート錯体の濃度レベルは一定に維持され、既知の濃度のケイ酸が導入されるとき、ボルタンメトリー信号の減少が検出される。ボルタンメトリー信号の減少と、対応する付加された非電気活性無機種の濃度が比較され(140)、信号の減少と付加された無機種の濃度との間の関係が得られる。
【0019】
図2はアセテートPH緩衝液中のモリブデン金属イオンのボルタンメトリー走査200を示している。ビスマス膜電極(BFE)による50μg/L Moの方形波吸収ストリッピング電圧電流計のグラフが示されている。この例ではMoは支持電解質溶液中にある0.1Mアセテート緩衝(pH5.5)の溶液中にある。0.50Vの累積電位が攪拌されて約60秒間与えられる。25mVの振幅、3mVのステップ電位、25Hzの周波数を有する電位走査が累積電位に後続して与えられる。
【0020】
図2はリガンド(例えばCAA)が存在しない状態で、Mo単独のボルタンメトリー信号は決定されることができないことを示している。それ故、金属錯体(例えばMo−CAA)が重金属に関連されるボルタンメトリー信号を検出するために加えられることができる。吸収ストリッピング電圧電流計測は種々の微量元素(例えばMo)のストリッピング測定範囲を強化できる。ボルタンメトリーおよび電位差ストリッピング方式の両者はそれぞれ負ヘ進む電位走査または一定のカソード電流により、吸収された錯体の測定に使用されることができる。吸収ストリッピング手順は典型的に吸収された錯体の金属の減少を示すように実行され、リガンドの減少も示されることができる。
【0021】
図3はクロラニル酸を有するモリブデン錯体の10の連続的な測定を示し、良好な再生能力を示している。図2と3を比較するときに認められるように、錯体イオンはかなり明白である。50μMクロラニル酸が存在する状態の50μg/L Moの10の連続的な電圧電流計のグラフが示されている。Moは支持電解質溶液、0.1Mアセテート緩衝液(pH5.5)に置かれた。これらの測定に使用された記録プロトコルは攪拌しながら約60秒間与えられた0.50Vの累積電位と、25mVの振幅と4mVのステップ電位と25Hzの周波数を有する電位走査との適用を含んでいる。電位走査は累積電位後に適用されることができる。図3は測定されたボルタンメトリー信号のピーク電流310と、ピーク電流が生じる電位320が測定されたことを示している。
【0022】
図4は図2および3に記載された同じ動作条件におけるモリブデン−クロラニル酸錯体のボルタンメトリー信号におけるケイ酸のインパクトを示している。高レベルのケイ酸の適用はMo−CAA錯体におけるケイ酸の影響を明白に示している。使用される記録プロトコルは50μMクロニラル酸の50μg/L Moの方形波吸収ストリッピング電圧電流を含んでいる。測定期間中、Mo−CAA錯体は支持電解質、0.1Mアセテート緩衝(pH5.5)の溶液に置かれた。ボルタンメトリー信号410は50μMのクロニラル酸が存在する状態の50μg/L MoのMo−CAA錯体に対応する。ボルタンメトリー信号a−f(412、414、416、418、420、422)はそれぞれ0.1、0.5、1.0、5.0、10、20mMケイ酸の効果を示している。記録プロトコルはさらに攪拌しながら約60秒間与えられる0.50Vの累積電位の適用を含んでいる。25mVの振幅と4mVのステップ電位と25Hzの周波数を有する電位走査が累積電位に後続することができる。
【0023】
図5は既知の濃度のケイ酸の添加前又は添加後に測定されたボルタンメトリー信号500のセットを示している。測定条件はケイ酸の検出限度を最適化するように設計された。50μMクロニラル酸が存在する状態の50μg/L Moの方形波吸収ストリッピング電圧電流計測が実行された。Mo−CAA錯体は支持電解質溶液、0.1Mアセテート緩衝液(pH5.5)中に置かれた。ボルタンメトリー信号510は10μMのクロニラル酸が存在する状態の50μg/L MoのMo−CAA錯体に対応する。ボルタンメトリー信号a−e(512、514、516、518、520)はそれぞれ5μM、10μM、15μM、20μM、25μMのケイ酸の効果を示している。0.50Vの累積電位は拡散しながら約60秒間与えられた。25mVの振幅と4mVのステップ電位と25Hzの周波数を有する電位走査が累積電位に後続して行われた。
【0024】
Mo−CAA錯体に加えられるクロラニル酸の量は1μM(図4参照)から5μMのこれらの条件下のケイ酸の検出限度を改良するために50μM(図4参照)から10μMへ減少された。これらの測定ではケイ酸の5μMはシリカの約10億分の300にほぼ等しい。検出限度の更なる改良は測定条件の変更によって可能である。
【0025】
図1乃至5に関して示されているようにシリカの検出は種々の装置の形状因子と、シリカ又は他の無機種の検出が所望される応用に対して適用されることができる。例えばシリカの検出は水の純度レベルを決定するために使用されることができる。
【0026】
さらに、この明細書に記載されたことに基づくシステム、装置、方法は簡単で合理的な価格の電気化学的検出システムを構成するために使用されることができる。例えば市販の測色機器は約1000米ドル以上かかる可能性があるが、この明細書に開示されているような電気化学的検出システムは100米ドルに満たない。この明細書に基づく検出システムの最終的な製造価格はユーザの仕様と所望の応用および動作モードに基づくことができる。
【0027】
図6aは解析プロセス(例えば吸収ストリッピング電圧電流計側)を使用してシリカのような無機種を検出するための装置600の1例を示している。装置600は基準電極640、感知電極650、少なくとも部分的に液体を保持するための容器またはホルダ625を含んでいる。装置600がフロースルー装置として構成されるとき、ターゲット液体の一部のみが実際に容器中に保持される。
【0028】
基準電極640は少なくとも部分的に導電するように構成された導電部材である。基準電極640は種々の導電材料を使用して構成されることができる。例えば電極(AgClで被覆され記録液に浸されるときの銀/塩化銀Ag/AgCl)を提供する銀ワイヤが使用されることができる。
【0029】
感知電極650はカーボンペースト電極、ガラス状カーボン電極、裸カーボン電極、網目状カーボン電極等のような任意の広範囲のカーボン電極を使用して構成されることができる。他の適切な導電電極、例えば金、水銀、ビスマス電極のような金属電極が使用されることができる。さらに感知電極650はビスマス被覆されるかめっきされた導電電極と、ビスマスが含まれた検体液を有する導電電極を含むことができる。ビスマスベースの電極は良好な導電性と低い毒性を与える。
【0030】
感知電極650は導電材料(例えばビスマス)を含む薄膜で被覆されるかめっきされることができる。導電材料で被覆された感知電極650はカーボン繊維またはガラス状のカーボン電極であることができる。代わりに感知電極650は平坦なスクリーン印刷されたカーボン電極のような任意の導電材料で被覆されることができる。例えば感知電極は使い捨てのスクリーン印刷されたビスマス電極として構成されることができ、これは典型的にはプラチナの補助電極を含むことができる。
【0031】
他の電極構造も使用されることができる。例えばここで参照文献とされている米国特許第6,682,647号および第5,292,423号明細書に記載されているような電極が感知電極650として構成されることができる。例えばスクリーン印刷された電極(例えばMedisense社のExacTech血糖条帯)が構成されることができる。これらの条帯は(対向面上の炭素接触部により)PVC基板上に印刷された作用(炭素)および基準電極を含んでいる。印刷された炭素接触部は(もとの動作電極のターゲット領域がエンザイム/メディエータ層で被覆されているので)水銀膜電極の基板としての役目を行う。別の条帯からの印刷された電極(Ag/AgCl)はボルタンメトリー実験期間中に基準としての役目を行う。電位差ストリッピングはTraceLabユニットの通常のAg/AgCl電極を使用して行われることもできる。さらに、プラチナワイヤの補助電極が使用されることができる。さらに感知電極650はビスマスのような1以上の導電材料を含む材料で被覆および/またはめっきされることができる。
【0032】
異なる形態のビスマスが感知電極650を構成するために使用されることができる。例えば微粒子また粒状形態の固体ビスマスが使用されることができる。同様にビスマス塩が活性物質として使用されることができる。幾つかの構成では、固体のビスマスまたはビスマス塩が感知電極650で被覆又はめっきされるペースト、ゲルまたはポリマー材料で使用される。
【0033】
装置600は入口ポート660と出口ポート670を随意選択的に含むことができる。例えばフロースルー装置として構成されるとき、ターゲット液体(例えば水)の流れは入口ポート660と出口ポート670を使用して装置600を通して流れることができる。装置を通って流れる液体中におけるシリカのようなターゲットの無機種の存在は連続して検出されることができる。代わりに、ターゲット液体の試料はシリカを検出するために入口ポート660へ付着されることができる。
【0034】
開いた構造を示す図6aは第1の部材610と第2の部材620との間で堅い気密および/または水封を行うように設計された(例えばゴム又は他の適切な材料で作られた)密封部材630も示している。第1の部材は入口ポート660、出口ポート670、密封部材630を含んでいる。第2の部材620は基準電極640と感知電極650を含んでいる。
【0035】
図6bは例示的な装置600の閉じた構造を示した図である。装置600が閉じられ、液体が入口ポート660を通って流れるとき、電流路が基準電極640と感知電極を横切って設けられる。
【0036】
装置600の形状因子はシリカ検出の解析的プロセスを簡単にするために変更されることができる。例えば装置600は試料の処理を簡単にし解析時間を加速するように設計されることができる。装置は(例えばビーカーにおける)バッチモードまたは流動モードで行われるように設計されたストリッピング電圧電流計測を使用するように設計されることができる。試料液体および/または標準を導入する以外にはユーザと装置の間にはほとんど又は全く相互作用は必要とされない。
【0037】
さらに、装置600は限定された量の測定(即ち使い捨て)ではスクリーン印刷されたフォーマットのビスマスベース(又は任意の他の導電材料ベースの)電極を使用するように設計されることができる。このような使い捨て装置600はユーザに対して廉価で消費可能であるように製造されることができる。例えばスクリーン印刷された電極の価格は米国ではセンサ当り5セントの程度である。
【0038】
図7は電気化学的検出を使用してシリカのような無機種を検出するための例示的なシステム700である。システム700はデータ処理装置720に結合された(例えば専用のフローセル設計で構成される)検出装置710を含んでいる。検出装置710は実質的に図6に関して説明されたようなものであることができる。代わりに、検出装置710は他の形状因子を使用して構成されることができる。
【0039】
データ処理装置720は検出装置710からデータを受信し、受信されたデータを処理するための種々の電子装置の1つとして構成されることができる。例えばデータ処理装置720はパーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、ポータブルコンピューティング装置等として構成されることができる。さらにデータ処理装置720はデータの捕捉と、検出装置710から受信されたデータの解析を行うプログラム(図示せず)のようなソフトウェアプログラムを実行するように設計された中央処理装置(CPU)のような種々のコンポーネントを含むことができる。
【0040】
例えば、プログラムはストリッピング電圧電流計測(例えば図1−5に関して説明したように累積電位と、振幅とステップ電位と周波数を有する電位走査)のための適切な記録プロトコルを通信できる。また、プログラムはボルタンメトリー信号上の異なる濃度のシリカの効果を決定するために受信されたボルタンメトリー信号と付加されたシリカの濃度とを比較するように設計されることができる。決定された効果は例えばボルタンメトリー信号の減少を測定することによって水中のシリカの未知の濃度を決定するために使用される。
【0041】
データ処理装置720は双方向通信チャンネル730を通して検出装置710からデータを受信する。双方向通信チャンネル730はワイヤ接続された又は無線の接続のいずれか一方を含むことができる。ワイヤ接続はユニバーサルシリアルバス接続、ファイヤーワイヤー接続、並列接続等に適応できる。無線接続はブルートュース、WiFi、Wimax等と適応できる。幾つかの構造では、検出装置は遠隔位置の水源を検査するため(例えば水域のようなフィールドの)遠隔位置に置かれることができる。検出装置710を使用して集められたデータは広域網(WAN)、構内網(LAN)またはインターネットのようなネットワークにわたってデータ処理装置720へ送信される。幾つかの構造では、システム700は独立のシステムとして、またはネットワークシステムのようなさらに大きいシステムの一部として構成されることができる。
【0042】
図8はシリカのような無機種を検出するためのシステム700を動作するプロセス800の例示的なプロセスフロー図である。ステップ810で、吸収ストリッピング電圧電流計測を使用して、データ(例えば金属錯体のボルタンメトリー信号)は検出装置710を通して集められる。820で、データ処理装置720は集められたデータを受信する。ステップ830で、受信されたデータはシリカの存在とその濃度を検出するように処理される。
【0043】
幾つかの構造では、システム700は方形波吸収ストリッピング電圧電流計測を使用する特別な検出システムとして構成される。検出システムはモリブデン金属イオンについてのケイ酸およびクロラニル酸の競合を測定するためにビスマス電極を使用できる。システム700はシリカリガンドが存在する状態で間接的に純水および超純水中の重金属イオンを測定することによりシリカの電気化学的検出のための適切で廉価なシステムとして開発されることができる。
【0044】
本願明細書に記載された主題および機能動作の実施形態はこの明細書で開示されている構造およびそれらの構造的等価物を含めた、デジタル電子回路、またはコンピュータソフトウェア、ファームウェアまたはハードウェア或いはそれらの1以上の組合せで実行されることができる。この明細書で記載されている主題の実施形態は1以上のコンピュータプログラムプロダクト、即ちデータ処理装置による実行のためにまたはデータ処理装置の動作を制御するために有形プログラムキャリアで符号化されるコンピュータプログラム命令の1以上のモジュールとして構成されることができる。有形プログラムキャリアは伝播された信号又はコンピュータの読取り可能な媒体であることができる。伝播される信号は人工的に発生された信号、例えばマシン発生された電気、光学または電磁気信号であり、これはコンピュータにより実行するための適切な受信機装置へ送信する情報を符号化するために発生される。コンピュータの読取り可能な媒体はマシン読取り可能な記憶装置、マシン読取り可能な記憶基体、メモリ装置、マシンの読取り可能な伝播信号に影響する組成物、或いはそれらの1以上の組合せであることができる。
【0045】
用語「データ処理装置」は例示によりプログラム可能なプロセッサ、コンピュータまたは多数のプロセッサ又はコンピュータを含めたデータ処理用の全ての機器、装置、マシンを含んでいる。機器はハードウェアに加えて、問題のコンピュータプログラムの実行環境を生成するコード、例えばプロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステムまたはそれらの1以上の組合せを生成するコードを含むことができる。
【0046】
(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、スクリプト又はコードとしても知られている)コンピュータプログラムはコンパイル又は解釈された言語、または宣言型或いは手続型言語を含めたプログラミング言語の任意の形態で書き込まれることができ、これはスタンドアロンプログラムとしてまたはモジュールとして、コンポーネント、サブルーチン、またはコンピューティング環境での使用に適した他のユニットを含めた任意の形態で配備されることができる。コンピュータプログラムはファイルシステムのファイルに必ずしも対応しない。プログラムは他のプログラムまたはデータ(例えばマークアップ言語文書に記憶された1以上のスクリプト)を保持するファイルの一部、問題のプログラムに専用の単一のファイルまたは多数の調整されたファイル(例えば1以上のモジュール、サブプログラム又はコードの一部を記憶するファイル)に記憶されることができる。コンピュータプログラムは1つのコンピュータ、又は1つのサイトに位置されるか多数のサイトを横切って分散され通信ネットワークにより相互接続される多数のコンピュータで実行されるように配備されることができる。
【0047】
本願明細書に記載されているプロセスおよび論理フローは、入力データで動作し出力を発生することによって機能を行うように1以上のコンピュータプログラムを実行する1以上のプログラム可能なプロセッサにより行われることができる。プロセスおよび論理フローはまた例えばFPGA(フィールドプログラム可能なゲートアレイ)またはASIC(特定用途集積回路)のような特別目的の論理回路により実行されることができ、装置もこのような論理回路として構成されることができる。
【0048】
コンピュータプログラムの実行に適切なプロセッサは例示により汎用および特別目的の両者のマイクロプロセッサと、任意の種類のデジタルコンピュータの任意の1以上のプロセッサを含む。通常、プロセッサは読取り専用メモリまたはランダムアクセスメモリ或いはそれらの両者から命令とデータを受信する。コンピュータの基本的な要素は命令を実行するためのプロセッサと、命令およびデータを記憶するための1以上のメモリである。通常、コンピュータは例えば磁気、光磁気ディスク又は光ディスクのようなデータを記憶するための1以上の大容量記憶装置を含み、そこからデータを受信するかそこへデータを送信するかその両者を行うために大容量記憶装置に結合される。しかしながらコンピュータはこのような装置を有する必要はない。さらに、コンピュータは別の装置中に埋設されることができる。
【0049】
コンピュータプログラム命令およびデータの記録に適切なコンピュータの読取り可能な媒体は非揮発性メモリ、媒体、メモリ装置の全ての形態を含んでおり、例示によれば半導体メモリ装置、例えばEPROM、EEPROM、フラッシュメモリ装置と、磁気ディスク、例えば内蔵はードディスクまたは取り出し可能なディスクと、光磁気ディスクと、CD ROMおよびDVD−ROMディスクを含む。プロセッサおよびメモリは特別目的の論理回路により捕捉されるか、そこに組み込まれることができる。
【0050】
ユーザとの相互動作を行うため、本願明細書に記載されている主題の実施形態はユーザへ情報を表示するためのディスプレイ装置、例えばCRT(陰極線管)またはLCD(液晶ディスプレイ)モニタと、キーボードと、ユーザが入力をコンピュータに提供できる指向装置、例えばマウス又はトラックボールとを有するコンピュータで実行されることができる。他の種類の装置は同様にユーザとの相互動作を行うために使用されることができ、例えばユーザからの入力は音響、スピーカ又は触覚入力を含めた任意の形態で受信されることができる。
【0051】
本願明細書に記載された主題の実施形態は例えばデータサーバとしてのバックエンドコンポーネントを含むか、またはミドルウェアコンポーネント、例えばアプリケーションサーバを含むか、またはフロントエンドコンポーネント、例えばグラフィックユーザインターフェースを有するクライアントコンピュータ或いはユーザが本願明細書に記載されている主題の構成と相互動作できるウェブブラウザ、または1以上のこのようなバックエンド、ミドルウェアまたはフロントエンドコンポーネントの任意の組合せを含むコンピューティングシステムで実行されることができる。システムのコンポーネントはデジタルデータ通信、例えば通信ネットワークの任意の形態又は媒体により相互接続されることができる。通信ネットワークの例には構内網(“LAN”)および広域網(“WAN”)、例えばインターネットが含まれている。
【0052】
コンピューティングシステムはクライアントとサーバを含むことができる。クライアントとサーバは通常相互に離れており、典型的に通信ネットワークを通して相互動作する。クライアントとサーバの関係は、それぞれのコンピュータで動作し相互にクライアント−サーバ関係を有するコンピュータプログラムによって生じる。
【0053】
本願明細書は多くの仕様を含んでいるが、これらは任意の発明または請求事項の技術的範囲における限定として解釈すべきではなく、特定の発明の特定の実施形態に対して特別な特性の説明として解釈すべきである。別の実施形態の文脈でこの明細書に記載されているある特性は単一の実施形態で組み合わせて実行されることもできる。反対に、単一の実施形態の文脈で説明されている種々の特性は別々に又は任意の適切な副結合で多数の実施形態で実行されることもできる。さらにある組合せで実行するように記載され、このように最初に請求されたが、請求された組合せからの1以上の特性は幾つかのケースでは組合せから削除され、請求された組合せは副結合または副結合の変形に関することができる。
【0054】
同様に、動作は特定の順序で図面に示されているが、これは所望の結果を実現するために、示されている特定の順序または逐次的な順序でこのような動作が行われること、または全ての示されている動作が行われることを必要とするものと理解すべきではない。
【0055】
少数の構成および例だけについて説明したが、強化および変形はこの応用で説明され示されている技術に基づいて行われることができる。例えば構成はMo−CAA錯体に限定されず、他の重金属とリガンドが可能である。また、吸収ストリッピング電圧電流計の記録プロトコルは変更されることができる(例えば0.50Vの累積電位の振幅、与えられる累積電位の期間、攪拌するかしないか、電位走査の振幅、ステップ電位の振幅、与えられる電位の周波数等)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属錯体を具備し、検出される無機種のない緩衝液へ電圧を与え、
無機種のない金属錯体に関連される第1の電流を測定し、
無機種を緩衝液に加え、
加えられた無機種が存在する金属錯体に関連される第2の電流を測定し、
緩衝液中の加えられた無機種の濃度を識別するために第1の電流と第2の電流の差を得るステップを含んでいる方法。
【請求項2】
第1および第2の電流の測定は累積電位とそれに後続する走査電位とを供給するステップを含んでいる請求項1記載の方法。
【請求項3】
累積電位の供給は0.5ボルトを含む振幅の累積電位の供給を含んでいる請求項2記載の方法。
【請求項4】
累積電位の供給は60秒を含む時間の期間の累積電位の供給を含んでいる請求項2記載の方法。
【請求項5】
走査電位の供給は25ミリボルトの振幅と、4ミリボルトのステップ電位と、25ヘルツの周波数の少なくとも1つを有する走査電位を供給するステップを含んでいる請求項2記載の方法。
【請求項6】
電圧の供給はモリブデン−クロラニレート錯体のような金属錯体を含む緩衝溶液へ電圧を供給するステップを含んでいる請求項1記載の方法。
【請求項7】
第1および第2の電流の測定はビスマス、金、炭素、または水銀を有する動作電極の使用を含んでいる請求項1記載の方法。
【請求項8】
動作電極を使用する第1および第2の電流の測定はスクリーン印刷電極の使用を含んでいる請求項7記載の方法。
【請求項9】
無機種の付加はシリカ種を付加するステップを含んでいる請求項1記載の方法。
【請求項10】
第1および第2の電流の測定はボルタンメトリー信号の測定を含んでいる請求項1記載の方法。
【請求項11】
ボルタンメトリー信号の測定はストリッピング電圧電流計の使用を含んでいる請求項10記載の方法。
【請求項12】
ストリッピング電圧電流計を使用するボルタンメトリー信号の測定は使い捨てのストリッピング電圧電流計の使用を含んでいる請求項11記載の方法。
【請求項13】
検出装置と、データ処理装置とを具備するシステムにおいて、
検出装置は、
金属錯体を含んでいる溶液を少なくとも部分的に中で保持するように構成されている容器と、
少なくとも部分的に溶液中に浸されている導電性部材とを含み、容器、溶液、導電性部材は無機種のない金属錯体に対応する第1の電流と、無機種が存在する金属錯体に対応する第2の電流を測定するように構成され、
データ処理装置は、
測定された第1および第2の電流を検出装置から受取り、
無機種の濃度を識別するために第1の電流と第2の電流との差を得るように構成されているシステム。
【請求項14】
検出装置はモリブデン−クロラニレート金属錯体を含む金属錯体に対応する第1および第2の電流を測定するように構成されている請求項13記載のシステム。
【請求項15】
検出装置はシリカ種を有する無機種が存在する金属錯体に対応する第2の電流を測定するように構成されている請求項13記載のシステム。
【請求項16】
導電性部材はビスマス、金、炭素、水銀のうちの少なくとも1つを有する請求項13記載のシステム。
【請求項17】
導電性部材はスクリーン印刷電極で構成されている請求項13記載のシステム。
【請求項18】
検出装置はストリッピング電圧電流計として構成される請求項13記載のシステム。
【請求項19】
ストリッピング電圧電流計は使い捨てのストリッピング電圧電流計を有する請求項18記載のシステム。
【請求項20】
検出装置は累積電位とそれに後続する走査電位の供給により第1および第2の電流を測定するように構成される請求項13記載のシステム。
【請求項21】
ターゲットの非電気活性材料がない状態の電気活性材料の第1の電気的活動を検出し、
ターゲットの非電気活性材料が存在する状態の電気活性材料の第2の電気的活動を検出し、
第1および第2の電気的活動の差を得て、
得られた差に基づいて、ターゲットの非電気活性材料の濃度を識別するステップを含んでいる方法。
【請求項22】
第1および第2の電気的活動の検出は累積電位とそれに続く走査電位の供給を含んでいる請求項21記載の方法。
【請求項23】
第1および第2の電気的活動の検出は緩衝溶液における金属錯体の第1および第2の電気的活動の検出を含んでいる請求項21記載の方法。
【請求項24】
ターゲットの非電気活性材料の濃度の識別はターゲットのシリカ種の濃度の識別を含んでいる請求項21記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6a】
image rotate

【図6b】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2010−532474(P2010−532474A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514732(P2010−514732)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/072585
【国際公開番号】WO2009/005522
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(507243142)アリゾナ・ボード・オブ・リージェンツ・アクティング・フォー・アンド・オン・ビハーフ・オブ・アリゾナ・ステイト・ユニバーシティー (5)
【出願人】(500174638)ミリポア・コーポレーション (5)