説明

シリコンナノシート及びその製法

【課題】新規なシリコンナノシートを提供する。
【解決手段】本発明のシリコンナノシートは、ケイ素原子で構成された六員環が複数連なった構造を基本骨格とするシリコンナノシートであって、1級又は2級アミンと結合する部位を有するものであり、層間距離が層状ポリシランよりも広い。このシリコンナノシートは、層状ポリシランと1級又は2級アミンとを反応させることにより得られることから、層状ポリシラン中の少なくとも一部のSi−Hの水素原子がアミノ基で置換されている可能性が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンナノシート及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体や電気・電子等の分野への利用が期待されるナノシリコン材料が開発されている。例えば、特許文献1では、二ケイ化カルシウムを−30℃以下に冷却した濃塩酸水溶液と反応させて組成式Si66で示される層状ポリシラン粉末を生成させ、得られた層状ポリシラン粉末と末端に炭素−炭素不飽和結合を有する有機化合物とをヒドロシリル化反応触媒を用いて反応させ、層状ポリシランの水素原子を有機基に置き換えることにより、シリコンナノシートを作製している。このようにして作製されたシリコンナノシートは、薄片状であり、大きな形状異方性を有するため、半導体や電気・電子等の分野への利用が期待される。例えば、リチウムイオン二次電池の電極への利用が考えられるが、その場合には層間距離が広いほど、リチウムイオンの移動速度が速くなり、この移動に伴う体積変化が小さくなることから好ましい。なお、層状ポリシランは、便宜上、組成式Si66と表記されるが、図8に示すように、ケイ素原子で構成された六員環が複数連なった構造を基本骨格とするものであり、各ケイ素原子の4つの結合手のうち3つは隣接するケイ素原子に繋がり、残り1つは水素原子に繋がっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−69301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、末端に炭素−炭素不飽和結合を有する有機化合物を層状ポリシランのケイ素にヒドロシリル化反応により付加させる方法では反応率が低く、層状ポリシランの基本骨格の各層表面へ付加した有機鎖の密度が低いシリコンナノシートしか得られなかった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、新規なシリコンナノシートを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明者らは、層状ポリシランとn−デシルアミンのようなアルキルアミンとを加熱して反応させたところ、層間距離が層状ポリシランより広い新規なシリコンナノシートが得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の第1のシリコンナノシートは、ケイ素原子で構成された六員環が複数連なった構造を基本骨格とするシリコンナノシートであって、1級又は2級アミンと結合した部位を有するものである。本発明の第2のシリコンナノシートは、層状ポリシランと1級又は2級アミンとを反応させることにより得られるものである。
【0008】
本発明の第1のシリコンナノシートの製法は、層状ポリシランと1級又は2級アミンとを不活性ガス雰囲気下で溶媒中又は無溶媒で反応させることによりシリコンナノシートを得るものである。本発明の第2のシリコンナノシートの製法は、層状ポリシランと1級又は2級アミンとを不活性ガス雰囲気下で溶媒中又は無溶媒で反応させたあと、オートクレーブ中で60〜150℃に加熱して更に反応させることによりシリコンナノシートを得るものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1及び第2のシリコンナノシートは、層間距離が層状ポリシランに比べて広いため、ゲスト分子やイオン等の出入りによる形状変化が少ない。例えば、リチウムイオン二次電池の負極材料においては、充放電に伴ってリチウムイオンの層間挿入、脱離を伴い体積変化が起こりやすいが、このシリコンナノシートを採用すればそのような体積変化を抑制することができる。また、このシリコンナノシートを層間剥離させた単層剥離状態(層間距離が無限大)では、シリコンナノシートは薄片状であり、大きな形状異方性を有する。このため、半導体、電気・電子等の各種分野への応用が期待される。更に、このシリコンナノシートは、Si−O結合を有さない場合もあり、その場合には半導体薄膜として非常に好適に利用することができる。
【0010】
本発明の第1及び第2のシリコンナノシートの製法は、上述した本発明の第1及び第2のシリコンナノシートを製造するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のシリコンナノシートの模式図である。
【図2】実施例1のシリコンナノシートのIRスペクトルのグラフである。
【図3】実施例1のシリコンナノシートの熱重量曲線のグラフである。
【図4】実施例1のシリコンナノシートのXAFSスペクトルのグラフである。
【図5】実施例2のシリコンナノシートのXRDの結果を示すグラフである。
【図6】実施例2のシリコンナノシートのAFM像の写真である。
【図7】実施例2のシリコンナノシートの膜厚を示すグラフである。
【図8】層状ポリシランの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1のシリコンナノシートは、ケイ素原子で構成された六員環が複数連なった構造を基本骨格とするシリコンナノシートであって、1級又は2級アミンと結合する部位を有するものである。このシリコンナノシートは、層状ポリシランと1級又は2級アミンとを反応させることにより得られることから、層状ポリシラン中の少なくとも一部のSi−Hの水素原子がアミノ基で置換されている可能性が高い。図1は、その構造を模式的に表した一例である。図1では、六員環を構成するすべてのケイ素原子に炭化水素鎖を持つ1級アミンが結合してSi−NH結合が形成されたものであるが、実際にはすべてのケイ素原子ではなくその一部に1級アミンが結合していると推測される。2級アミンの場合も同様の構造をとると推測される。なお、1級アミンの場合にはその窒素原子が層状ポリシランの基本骨格の2つのケイ素原子に結合している可能性も考えられる。こうした構造により、層状ポリシランの基本骨格の層間にインターカレーションしたアミンが該基本骨格の各層の表面に安定的に存在し、層間を広げると考えられる。窒素上の置換基によって層間が拡大したシリコンナノシートは、層間に低分子化合物を含んで膨潤している層状ポリシランと類似の構造をとると考えられるため、極端な体積変化を伴うことなく層間を低分子やイオン半径の小さいイオンが自由に移動できるようになると推測される。また、層状ポリシランの基本骨格の表面のケイ素原子は窒素上の置換基によって保護され酸化されないままの状態であるため、バルクのシリコンが示すような電気特性や光特性を示すことが期待されるほか、単層剥離状態では非常に大きな比表面積を保持しているため、いくつかの化学反応に対して高い触媒活性を示すことが期待される。
【0013】
本発明の第2のシリコンナノシートは、層状ポリシランと1級又は2級アミンとを反応させることにより得られるものである。これは、いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームであるため、請求項中に記載されているプロセスを経て得られるシリコンナノシートのみならず、このシリコンナノシートと実質同じ物質であれば、請求項中に記載されているプロセス以外のプロセスを経て得られるシリコンナノシートであっても、技術的範囲に属する。なお、本発明の第2のシリコンシートは、本発明の第1のシリコンシートと実質同じである可能性が高い。
【0014】
本発明の第1及び第2のシリコンナノシートにおいて、1級又は2級アミンは、窒素原子に置換基を有していてもよい炭化水素基が結合していることが好ましい。ここで、炭化水素基としては、鎖状(直鎖でもよいし分岐鎖を有していてもよい)の炭化水素基や環状の炭化水素基が好ましく、炭素数は1〜20が好ましい。鎖状の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基、ウンデカニル基、ドデカニル基などの飽和炭化水素基;ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基などの不飽和炭化水素基などが挙げられる。また、環状の炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などの環状飽和炭化水素基;フェニル基、ナフチル基などの芳香族炭化水素基などが挙げられる。また、1級又は2級アミンは、窒素原子に、複素環基を有していてもよい。複素環基としては、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、ピペリジン、モルフォリンなどの含窒素複素環式化合物が挙げられる。これらの炭化水素基や複素環基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基などが挙げられる。炭化水素基や複素環基は、同じ種類の置換基を複数有していてもよいし、異なる種類の置換基を複数有していてもよい。
【0015】
本発明の第1及び第2のシリコンナノシートは、修飾前の層状ポリシランに比べて層間距離が広がっている。ここで、修飾前の層状ポリシランの層間距離は0.60nmである。後述する実施例に示すように、1級アミンの窒素上の炭化水素基の炭素数を4,10,16と変化させたときの層間距離は1.54nm,2.98nm,4.85nmであったことから、炭素数1の場合の層間距離を外挿して求めると0.62nmとなる。したがって、本発明の第1及び第2のシリコンナノシートは、層間距離が0.62nm以上が好ましい。
【0016】
本発明の第1及び第2のシリコンナノシートは、単層に剥離した状態か複数の層が積層した状態のいずれかをとる。単層に剥離した状態又は少数の層(たとえば2,3層)が積層した状態のシリコンナノシートは、シリコンナノシートの希薄なコロイド溶液を基板上に滴下して乾燥することにより得ることができる。また、多数の層(たとえば5層以上)が積層した状態のシリコンナノシートは、シリコンナノシートの高濃度なコロイド溶液を基板上に滴下して乾燥することにより得ることができる。多数の層が積層した状態の場合には、XRD回折における横軸を2θ、縦軸を強度とするグラフでピークが所定間隔ごとにほぼ周期的に現れる。なお、所定間隔はシリコンナノシートの積層周期に対応している。こうしたシリコンナノシートの厚さは、特に限定するものではないが、0.5nm〜10nmであることが好ましい。また、大きさは、特に限定するものではないが、縦0.1〜10μm、横0.1〜10μmが好ましく、1μm四方程度の大きさが特に好ましい。なお、前出のコロイド溶液は、本発明の第1及び第2のシリコンナノシートを分散媒に一様に分散したものである。このときの分散媒はアミンの種類に応じて適宜選択すればよく、例えばクロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;トルエン、キシレン、ヘキサンなどの炭化水素などが挙げられる。また、シリコンナノシートと分散媒との重量比もコロイド状態になるように適宜設定すればよい。
【0017】
本発明の第1のシリコンナノシートの製法は、層状ポリシランと1級又は2級アミンとを不活性ガス雰囲気下で溶媒中又は無溶媒で反応させる。層状ポリシランとアミンの混合比(モル比)は、層状ポリシランの繰り返し単位(Si66)1モルに対してアミン0.5〜10モルが好ましい。アミンの使用量が下限値を下回ると、層間距離が十分広がらないおそれがあるため好ましくない。また、アミンの使用量が上限値を上回っても、層状ポリシランに対するアミンの導入量は上限に達しているため経済的に好ましくない。不活性ガスとしては、反応に影響を与えないガスであればよく、例えば窒素ガスやアルゴンガス、ヘリウムガスなどが挙げられる。使用するアミンは、液体であっても固体であっても構わない。液体の場合には、溶媒を用いてもよいし用いなくてもよい。固体の場合には、溶媒に溶かして反応させてもよいが、融点以上に加熱して反応させるのであれば溶媒を用いてもよいし用いなくてもよい。溶媒としては、反応に影響を与えないものであればよく、例えばクロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられる。特にクロロホルムを利用する場合、安定剤にエタノール等のアルコールが添加されていないことが好ましい。シリコンナノシートの合成反応は、加熱した方が早く進行するが、加熱することは必須ではない。反応温度は、室温から溶媒の沸点程度の範囲が好ましい。
【0018】
本発明の第2のシリコンナノシートの製法は、層状ポリシランと1級又は2級アミンとを不活性ガス雰囲気下で溶媒中又は無溶媒で反応させたあと、得られた反応物をオートクレーブ中で60〜150℃に加熱して更に反応させることによりシリコンナノシートを得るものである。前半の工程は、上述した本発明の第1のシリコンナノシートの製法と同じである。後半の工程は、前半の工程で溶媒を用いた場合にはその溶媒を留去したあと実行するのが好ましい。この後半の工程を採用することにより、層状ポリシランとアミンとの結合がより強固になる。
【実施例1】
【0019】
二ケイ化カルシウム(CaSi2)粉末1gに対して濃塩酸水溶液100cm3の割合で接触させ、−30℃で反応させた。7日後、次式に従い黄緑色を呈した層状ポリシランSi66を得た。−30℃に冷却した濃塩酸水溶液でCaCl2を除去した後、アセトンで洗浄して、層状ポリシランを取りだした。
3CaSi2 + 6HCl → Si6H6 + 3CaCl2
【0020】
次に、この層状ポリシラン約100mgを量り取り、n−デシルアミン約2mLを添加して不活性ガス(窒素ガス)の雰囲気下、120℃で延べ60時間加熱した。反応物を回収後、クロロホルムを注いで沈殿する未反応シリコンなどを除去した後、トルエンを注いで遠心分離することによって未反応n−デシルアミンを除去し、シリコンナノシートを得た。
【0021】
得られたシリコンナノシートのIRスペクトルを図2に示す。2853cm-1及び2926cm-1にCH2のC−H伸縮、2872cm-1及び2962cm-1にCH3のC−H伸縮に帰属されるピークが観察され、Siに炭化水素基が結合されたことが確認できた。また、Si−O由来の結合は1060cm-1あるいは850cm-1付近にブロードに観察されるが、今回得られたシリコンナノシートにはそれらは存在しなかった。これより、得られたシリコンシートのSiは酸化されていないことが確認できた。
【0022】
得られたシリコンナノシートの熱重量変化を窒素雰囲気下で測定した。測定装置は、RIGAKU製の熱重量分析装置Thermo plus TG8120を用いた。また、石英パンを用い、窒素ガスを0.5L/min流し、昇温速度を10℃/minとした。その熱重量曲線をn−デシルアミンのそれと比較して図3に示す。n−デシルアミンは170℃付近で完全に揮発した。一方、得られたシリコンナノシートは170℃までに14.6重量%が減少した後、220℃までに更に53.5%減少し、その後31.8%残存した。最後まで残った分が層状ポリシランであり、170〜220℃の範囲での減少分(53.5%)がSiに結合したn−デシルアミンであると考えられる。これより、層状ポリシランのSi原子1モルあたり、約0.30モルのn−デシルアミンが付加していることになり、n−デシルアミンの付加率は約30%と見積もられた。なお、こうした熱重量変化の挙動から、層状ポリシランの層間に1級又は2級アミンが単に入り込んでいる可能性は否定される。
【0023】
実施例1で得られたシリコンナノシートのX線吸収微細構造(XAFS)スペクトルを、窒化珪素(β−Si34),石英(quartz:SiO2),結晶シリコン(crystal Si)と比較して図4に示す。実施例1で得られたシリコンナノシートは1844eV付近に吸収ピークを示した。これは、Si−N結合を有するβ−Si34のピーク位置とほぼ同じであり、Si−Si結合(1840eV)から成るcrystal SiやSi−O結合(1846eV)から成るquartzとはピーク位置が異なっていた。また、文献データから、原料である層状ポリシランは1840eVにピークを示す。これらのことから、実施例1で得られたシリコンナノシートはSi−N結合を有し、n−デシルアミンはSi層と共有結合していることがわかる。なお、図4の「TEY」は全電子収量(Total Electron Yield)を意味する。
【実施例2】
【0024】
実施例1と同様にして合成した層状ポリシラン約100mgを量り取り、n−デシルアミン約1mLと脱水クロロホルム(アミレン添加品)を添加して60℃で不活性ガス(窒素ガス)の雰囲気下、12時間加熱した。減圧してクロロホルムを除去した後、反応物を回収してオートクレーブに移し、更に120℃で60時間加熱した。反応物を回収後、クロロホルムを注ぐと未反応シリコンが沈殿し、シリコンナノシートが分散したコロイド溶液が得られた。このコロイド溶液をガラス基板上に滴下して溶液を蒸発させた後、広角X線回折測定(XRD)を行った。そのXRD回折図を図5に示す。2θ=2.97°に強く鋭いピークが現れ、その高次ピークが多数現れた。このことから、層状ポリシランの層間距離が2.98nmに拡大し、それが規則的に多数積層していることが確認できた。
【0025】
一方、上記のコロイド溶液を約100倍に希釈してから、カーボン基板上に滴下して溶媒を蒸発させた後、原子間力顕微鏡(AFM)で観察した。そのAFM像を図6に、シリコンナノシートの膜厚を示すグラフを図7に示す。図7のグラフは、図6のAFM像の白線部分のうち色が変化している境界(基板にシートが付着した部分と付着していない部分の境界)付近の厚さを測定した結果である。これより、得られたシリコンナノシートは厚さ約7.5nmで、大きさはおよそ1μm×2μmであることが確認できた。
【実施例3】
【0026】
n−デシルアミン約1mLをn−ブチルアミン約0.4mLに変えた以外は実施例2と同様にして、シリコンナノシートが分散したコロイド溶液を得た。実施例2と同様にしてXRD測定を行ったところ、層間距離が1.54nmに拡大した積層構造をとっていることが確認できた。溶媒を蒸発させたシリコンナノシートについて実施例1と同様にして熱重量変化を測定したところ、図3と同様の2段階の重量減少を示し、74℃までに9.5%重量減少した後、275℃までに更に43.2%減少し、その後47.0%残存した。最後まで残った分が層状ポリシランであり、74〜275℃の範囲での減少分がSiに結合したn−ブチルアミンであるとみなすと、n−ブチルアミンの付加率は約35%と見積もられた。
【実施例4】
【0027】
n−デシルアミン約1mLをn−ヘキサデシルアミン約1.2mLに変えた以外は実施例2と同様にして、シリコンナノシートが分散したコロイド溶液を得た。実施例2と同様にしてXRD測定を行ったところ、層間距離が4.85nmに拡大した積層構造をとっていることが確認できた。溶媒を蒸発させたシリコンナノシートについて実施例1と同様にして熱重量変化を測定したところ、n−ヘキサデシルアミンの沸点が高いため必ずしも明瞭ではなかったが、図3と同様の2段階の重量減少を示した。すなわち、277℃までに44.5%重量減少した後、330℃までに更に43.3%減少し、その後12.2%残存した。最後まで残った分が層状ポリシランであり、277〜330℃の範囲での減少分がSiに結合したn−ヘキサデシルアミンであるとみなすと、n−ヘキサデシルアミンの付加率は約41%と見積もられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素原子で構成された六員環が複数連なった構造を基本骨格とするシリコンナノシートであって、
1級又は2級アミンと結合した部位を有する、シリコンナノシート。
【請求項2】
前記1級又は2級アミンと結合した部位は、前記基本骨格のSi原子と前記1級又は2級アミンのN原子とが共有結合した部位である、請求項1に記載のシリコンナノシート。
【請求項3】
層状ポリシランと1級又は2級アミンとを反応させることにより得られる、シリコンナノシート。
【請求項4】
前記1級又は2級アミンは、置換基を有していてもよい炭化水素基を持つ、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリコンナノシート。
【請求項5】
層間距離が0.62nmより大きい、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリコンナノシート。
【請求項6】
XRD回折における横軸を2θ、縦軸を強度とするグラフでピークが所定間隔ごとにほぼ周期的に現れる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシリコンナノシート。
【請求項7】
層状ポリシランと1級又は2級アミンとを不活性ガス雰囲気下で溶媒中又は無溶媒で反応させることによりシリコンナノシートを得る、シリコンナノシートの製法。
【請求項8】
層状ポリシランと1級又は2級アミンとを不活性ガス雰囲気下で溶媒中又は無溶媒で反応させたあと、得られた反応物をオートクレーブ中で60〜150℃に加熱して更に反応させることによりシリコンナノシートを得る、シリコンナノシートの製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−215895(P2010−215895A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3790(P2010−3790)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】