説明

シリコンブロックの外形測定方法及びこれを用いたシリコンブロックの製造方法

【課題】異形ブロックであっても適正な製品加工が可能なシリコンブロックの外形測定方法を提供する。
【解決手段】本発明によるシリコンブロックの外形測定方法は、シリコンインゴットから切り出された略四角柱のシリコンブロックの長手方向と平行な4つの側面を被測定面とし、各被測定面において複数の測定点の座標を求め、複数の測定点の中からシリコンブロックの内側寄りの2点を選択した後、当該2点を通過する直線を各被測定面ごとに求めることにより4本の直線を定義し、4本の直線の交点同士を結ぶことによって得られる2本の対角線のうち短いほうの対角線を基準対角線Dとして定めると共に、当該基準対角線の中点Oを求め、前記基準対角線Dの角度θDSと前記基準対角線の中点Oに基づいて製品ブロックSQの有効範囲の座標及び研削代を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンブロックの外形測定方法に関し、特に、多結晶シリコンインゴットから切り出されたシリコンブロックの外形測定方法に関する。また、本発明は、そのような外形測定方法を用いたシリコンブロックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、太陽電池用多結晶シリコンは、溶融シリコンを鋳型で凝固させる鋳造法(「キャスト法」ともいう)、または電磁誘導による連続鋳造法(「電磁鋳造法」ともいう)で製造される(特許文献1、2参照)。太陽電池用多結晶シリコンの鋳造では、角形の石英るつぼ、或いは角形のグラファイト製の鋳型が用いられ、得られたシリコンインゴットも角柱状となる。このシリコンインゴットを加工しやすい所定のサイズのシリコンブロックに分割した後、シリコンブロックをスライスすることにより、例えば約15×15cmの正方形の太陽電池用多結晶シリコン基板が完成する。
【0003】
シリコンインゴットを分割することによって得られるシリコンブロックはバンドソーで切り出された加工精度の低いブロックであり、切断面は湾曲していたり対向面が平行でなかったりすることから、ブロックの外形を測定し、外周面を研削してブロックの寸法精度を高める必要がある。
【0004】
図12は、従来のシリコンブロックの外周面研削工程を説明するための模式図である。図12に示すように、従来の外周面研削工程では、まずシリコンブロック20の外周面から任意に選んだ一つの側面を基準面20aとして、この基準面20a上の任意の2点P,Pを結ぶ直線が研削装置の基準座標軸に対して垂直となるようにシリコンブロック20の角度を補正する。次に、この基準面20aの幅方向中央を基準としてブロックの有効辺を定めた後、さらに有効辺から一義的に定まる正方形の領域を製品ブロックの有効範囲として定め、研削代を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−156166号公報
【特許文献2】特開2009−99734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の外形研削方法では、例えばブロックの断面形状が図12(a)に示す菱形の場合や図12(b)に示す台形の場合には、それらの傾斜面を基準面として角度を補正しようとすると、研削できない部分20bが生じることがあり、正方形に正しく加工することができないという問題がある。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、異形ブロックであっても適正な製品加工が可能なシリコンブロックの外形測定方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、寸法精度の高いシリコンブロックを製造することが可能なシリコンブロックの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明によるシリコンブロックの外形測定方法は、シリコンインゴットから切り出されたシリコンブロックの長手方向と平行な4つの側面を被測定面とし、各被測定面において複数の測定点の座標を求める第1の工程と、前記複数の測定点の中から選択された2点を通過する直線を各被測定面ごとに求めることにより4本の直線を定義する第2の工程と、前記4本の直線の各交点同士を結ぶことによって得られる2本の対角線のうち短いほうの対角線を基準対角線として定めると共に、当該基準対角線の中点を求める第3の工程と、前記基準対角線の角度と前記基準対角線の前記中点の座標に基づいて製品ブロックの外形の座標及び研削代を求める第4の工程とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明によるシリコンブロックの製造方法は、シリコンインゴットを鋳造する工程と、前記シリコンインゴットから複数のシリコンブロックを切り出す工程と、本発明による上記外形測定方法によって前記シリコンブロックの外形を測定する工程と、前記外形に基づいて前記シリコンブロックの長手方向と平行な4つの側面からなる外周面を研削する工程とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明においては、シリコンブロックの外形を基準とせず、対角線から求めたブロックの中心点を基準にして製品加工できる範囲を決定するので、異形ブロックにおいても適正な加工が可能となる。
【0011】
本発明において、前記第2の工程は、前記複数の測定点の中から前記シリコンブロックの最も内側寄りの1点を選択し、当該1点とその他の複数の点から選ばれた1点とを結んだときに前記被測定面と実質的に平行な基準座標軸と最も平行となる直線を各被測定面ごとに求める工程を含むことが好ましい。この方法によれば、シリコンブロックの最小サイズを基準にして対角線を求めるので、製品加工できる範囲をさらに正確に求めることができる。
【0012】
本発明において、前記第4の工程は、前記複数の測定点の基準座標に対して前記基準対角線の角度が45度となるように前記シリコンブロックの角度を調整する工程と、前記基準対角線の前記中点を中心点とする正方形を前記製品ブロックの外形として定める工程を含むことが好ましい。シリコンブロックの傾きを補正することで製品ブロックの外形の座標を容易に定めることが可能となる。
【0013】
本発明において、各被測定面における前記複数の測定点の測定箇所は、前記シリコンブロックの前記側面の前記長手方向の一端側に位置する第1の測定箇所と、前記長手方向の他端側に位置する第2の測定箇所と、前記第1の領域と前記第2の領域との間に位置する第3の測定箇所を含み、前記第1乃至第3の測定箇所において同数の測定点を取得することが好ましい。被測定面内において均等に分散した測定点の座標を定めることにより、被測定面の正確な平面特性を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、異形ブロックであっても適正な製品加工が可能なシリコンブロックの外形測定方法を提供することができる。また、本発明によれば、寸法精度の高いシリコンブロックの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】太陽電池用多結晶シリコン基板の製造工程を概略的に示すフローチャートである。
【図2】多結晶シリコンインゴットからシリコンブロックを切り出す切断工程を説明するための模式図である。
【図3】シリコンブロックの研削装置の構成の一例を示す模式図である。
【図4】Z軸方向から見た研削装置の略平面図である。
【図5】シリコンブロックの外形測定方法を説明するための模式図であって、複数の測定点のXY平面座標を示すプロット図である。
【図6】シリコンブロックの外形測定方法を説明するための模式図であって、複数の測定点のXY平面座標を示すプロット図である。
【図7】シリコンブロックの外形測定方法を説明するための模式図であって、複数の測定点のXY平面座標を示すプロット図である。
【図8】シリコンブロックの外形測定方法を説明するための模式図であって、複数の測定点のXY平面座標を示すプロット図である。
【図9】シリコンブロックの外形測定方法を説明するための模式図であって、複数の測定点のXY平面座標を示すプロット図である。
【図10】シリコンブロックの外形測定方法を説明するための模式図であって、複数の測定点のXY平面座標を示すプロット図である。
【図11】座標変換について説明するための模式図である。
【図12】従来のシリコンブロックの外周面研削工程を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、太陽電池用多結晶シリコン基板の製造工程を概略的に示すフローチャートである。
【0018】
図1に示すように、太陽電池用多結晶シリコン基板の製造では、まずキャスト法や電磁鋳造法によって角柱状の多結晶シリコンインゴットを製造する(ステップS101)。次に、多結晶シリコンインゴットから複数のシリコンブロックを切り出した後(ステップS102)、各シリコンブロックの外形を測定し、ブロックの有効範囲及び研削代を算出する(ステップS103)。次いで、シリコンブロックの外周面を研削することにより製品サイズのシリコンブロックが完成する(ステップS104)。その後、このシリコンブロックを所定の厚さにスライスし(ステップS105)、さらに表裏面を研磨してその厚さと平坦度を調整することにより(ステップS106)、多結晶シリコン基板が完成する。
【0019】
図2は、多結晶シリコンインゴットからシリコンブロックを切り出す切断工程を説明するための模式図である。
【0020】
図2(a)に示すように、まず全長Lの多結晶シリコンインゴット1を分割して複数個の中インゴット2を得る。ラインC11は等分割の切断位置を示している。インゴットの分割数は特に限定されず、最終目標とするシリコンブロックの長さに応じて適宜決定すればよい。
【0021】
次に、中インゴット2を所定数に分割して断面が略正方形のシリコンブロック3を得る。インゴット1の断面サイズが例えば505×345mmの矩形である場合、中インゴット2を6分割して約158×158mmのシリコンブロック3を得ることができる。すなわち、図2(b)に示すように、中インゴット2をラインC21、C22の位置で切断して鋳肌面を除去し、さらにラインC23の位置で切断してX軸方向に2分割する。さらに、図2(c)に示すように、2分割された中インゴット2aの各々をラインC31、C32の位置で切断して鋳肌面を除去し、さらにラインC33、C34の位置で切断してY軸方向に3分割する。以上により、図2(d)に示すように、中インゴット2が最終的に6分割されたシリコンブロック3を得ることができる。
【0022】
シリコンブロック3はバンドソーで切り出された加工精度の低いものであることから、その外形形状を正確に測定し、外周面を研削して高精度なブロック形状にする必要がある。以下、シリコンブロックの外形研削方法について詳細に説明する。
【0023】
図3は、シリコンブロックの研削装置の構成の一例を示す模式図である。また、図4は、Z軸方向から見た研削装置の略平面図である。
【0024】
図3及び図4に示すように、シリコンブロックの研削装置100は、四角柱に切り出されたシリコンブロック3を保持する保持機構101と、シリコンブロック3の外周面の座標を測定する測定機102と、シリコンブロック3の外周面を研削する研削機103を備えており、これらの構成要素はコントローラ(不図示)によって制御される。
【0025】
保持機構101は、移送機構(不図示)によって加工位置まで運ばれてきたシリコンブロック3の長手方向(Z軸方向)の両端面3a,3bをクランプして保持する。保持機構101はシリコンブロック3をZ軸方向に移動させることが可能であり、この移動によって研削機103の当接面の相対的な移動が行なわれる。また、保持機構101はそのZ軸(設備原点)を中心に回転可能な構成を有している。シリコンブロック3の被測定面及び被研削面の切り替えは、シリコンブロック3を90度回転させることによって行うことができる。
【0026】
測定機102は任意の位置に移動可能に構成されており、横方向(X軸方向)に延びるフレーム102aの両端から下方(Y軸方向)に延びるアーム102bの先端に接触センサ102cをそれぞれ備えている。そのため、測定機102はシリコンブロック3の対向する2つの側面3d,3f(又は2つの側面3c,3e)を同時に測定することができる。なお、ここにいう「同時」とは、「シリコンブロック3の向きを変更することなく」という意味である。すなわち、一方の側面3d側の接触センサ102cを側面3dに近づけて側面3d上の一点の座標を測定した後、シリコンブロック3の向きを回転させることなく、他方の側面3f側の接触センサ102cを側面3f側に近づけて側面3f上の一点の座標を測定することができる。
【0027】
研削機103はX軸方向に移動可能に構成されており、シリコンブロック3の研削量は研削機103のX軸方向の位置を調整することによって行うことができる。シリコンブロック3をZ軸方向に移動させながら回転する研削機103に接触させることにより、シリコンブロック3の側面全体の研削を行うことができる。なお、研磨機103をX方向及びZ方向に移動可能な構成とし、シリコンブロック3は固定した状態で研磨機103のみを移動させて当接面を研磨することも可能である。
【0028】
シリコンブロック3の外形測定では、まずシリコンブロック3の外周面のうち互いに平行な2つの側面(例えば側面3d,3f)を被測定面として測定機102による測定を行い、この測定が完了すると、Z軸を中心にしてシリコンブロック3を90度回転させて、被測定面を他の2つの側面(例えば側面3c,3e)に切り替え、測定機102による測定を行う。なお、シリコンブロック3の外周面とはシリコンブロックの長手方向と平行な4つの側面3c〜3fを意味する。測定時においてシリコンブロック3の被測定面は常にYZ平面と平行である。
【0029】
測定機102は複数の測定点Pの3次元座標又はXY平面座標を求める。各側面において正確な平面特性が得られるよう、複数の測定点Pは被測定面内において均等に分散していることが好ましい。特に限定されるものではないが、本実施形態においては、シリコンブロック3のZ軸方向の両端部及び中央部の3箇所を対象とし、これら3箇所において幅方向の4点を測定する。つまり図3に示すように、一面につき12点の測定を行う。
【0030】
図5〜図10は、シリコンブロック3の外形測定方法を説明するための模式図であって、複数の測定点のXY平面座標を示すプロット図である。
【0031】
図5に示すように、シリコンブロック3のA面〜D面(図4の側面3c〜3fに対応)において12点の測定点をそれぞれ求めることにより、XY平面座標上に合計48個のドットを得る。図5では各々のドットが重なっていないが、実際には重なるドットが存在する場合があることは容易に推測できる。
【0032】
次に、図6に示すように、XY平面座標がほぼ同じである(Z軸方向の位置のみが異なる)測定点各3点の中から、当該被測定面と実質的に平行な基準座標軸(X軸又はY軸)までの距離が最も近い内側寄りの1点をそれぞれ選択する。これにより、4×4=16点の測定点が抽出される。次に、各被測定面において得られた測定点4点の中から同様に最も近い内側寄りの1点を選択し、その1点を基点としその他の3点のいずれかとを結ぶとき基準座標軸に最も平行となる直線を各被測定面毎にそれぞれ求め、最終的に4本の直線を得る。図6において各直線の通過点となる内側寄りの2点のドットは白抜きで示されている。各被測定面で得られる直線の式は以下の通りである。
A面:Ya=mXa+n
B面:Yb=mXb+n
C面:Yc=mXc+n
D面:Yd=mXd+n
【0033】
さらに、4本の直線に囲まれた範囲をシリコンブロック3の適正化された外形とし、直線同士の交点(つまりブロックの角)のXY平面座標を求める。例えば、シリコンブロック3の角ABの座標(Xab、Yab)、角BCの座標(Xbc、Ybc)、角CDの座標(Xcd、Ycd)、角DAの座標(Xda、Yda)はそれぞれ以下のようになる。
ab=(n−n)/(m−m
ab=(n−n)/(m−m
bc=(n−n)/(m−m
bc=(n−n)/(m−m
cd=(n−n)/(m−m
cd=(n−n)/(m−m
da=(n−n)/(m−m
da=(n−n)/(m−m
【0034】
次に、図7に示すように、4つの交点から互いに交差する2本の対角線D,Dを求め、各対角線D,Dの長さLD1,LD2と傾きθD1,θD2をそれぞれ求める。対角線Dの長さLD1及び傾きθD1、対角線Dの長さLD2及び傾きθD2はそれぞれ次のようになる。
D1={(Xab−Xcd+(Yab−Ycd1/2
θD1=(Xab−Xcd)/(Yab−Ycd
D2={(Xbc−Xda+(Ybc−Yda1/2
θD2=(Xbc−Xda)/(Ybc−Yda
【0035】
次に、図8に示すように、2本の対角線D,Dの長さLD1,LD2のうち、その長さが短いほうを基準対角線Dとして定め、さらに基準対角線Dの中点をシリコンブロック3の中心点Oとして定める。本実施形態ではD=Dである。中心点Oは、外周面を研削して得られる最終的な製品ブロックの中心点である。中心点Oの座標はシリコンブロックの外形から算出されるものであるため、設備原点(保持機構の中心点)Oとは必ずしも一致しない。基準対角線Dの両端の座標を(Xab,Yab)、(Xcd,Ycd)とするとき、中心点Oの座標(X,Y)は次のようになる。
=(Xab−Xcd)/2
=(Yab−Ycd)/2
【0036】
次に、図9に示すように、基準対角線Dの角度θDS(=θD1)が設備基準のXY平面座標に対して45度となるようにシリコンブロック3を回転させる。このときの回転の中心軸は設備原点Oである。この回転によってシリコンブロック3の外周面の座標位置はすべてシフトすることから、すべての測定点の座標を回転補正された座標に変換する必要がある。
【0037】
図11は、座標変換について説明するための模式図である。
【0038】
図11に示すように、設備原点Oを中心として任意の座標(X,Y)を角度θ回転させたとき、回転後の座標(X,Y)は次のようになる。
=COS(θ+θ)・L
=SIN(θ+θ)・L
なお、角度θは座標(X,Y)の角度θである。また、Lは設備原点Oから座標(X,Y)までの距離であり、次のように表される。
L=(X+Y1/2
【0039】
その後、図10に示すように、基準対角線D及び中心点Oを基準としてXY平面方向の一辺の長さWが所定長(例えば156mm)となる正方形SQを定め、シリコンブロック3の有効範囲(最終的な仕上がり形状)の座標位置と研削代を算出する。このとき、正方形SQの一方の対角線は基準対角線Dと重なり、正方形SQの中心点はOである。
【0040】
次に、シリコンブロック3の外形測定結果に基づいてシリコンブロック3の外周面を研削する。シリコンブロック3の研削では、測定機102を待避位置に移動させた後、研削機103をシリコンブロック3に接触させて外周面を研削する(図3参照)。研削は一面ずつ行い、一つの側面を研削した後は保持機構を90度回転させてシリコンブロック3の未研削面を研削機103に対向させ、新たな研削を行う。各面に対する研削工程を4つの側面すべてに対して実施することによりシリコンブロック3の研削が完了する。
【0041】
シリコンブロック3の外周面の研削が完了した後は、シリコンブロック3の4つの角を研削する面取り工程を実施してもよい。面取り工程では、いずれかの側面が研削機103と平行となっているシリコンブロックを45度回転させて、シリコンブロック3の角を研削機103側に向ける。その後、研削機103をシリコンブロック3の角部に接触させて研削を実施する。面取りを行った場合には、シリコンブロック又はシリコン基板の角部の欠けを防止することができ、信頼性の高い多結晶シリコン基板を提供することができる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態においては、シリコンブロック3の各側面3c〜3fを理想的な平面に見立てた後、それぞれの交点から対角線を引き、短いほうの対角線Dの中点をシリコンブロック3の中心点Oとすることで、異形ブロックであっても確実に加工することができ、シリコンブロック3の加工精度を高めることができる。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0044】
例えば、上記実施形態においては、シリコンブロック3のZ軸方向の両端部及び中央部の3箇所を対象とし、一つの被測定面につき3×4=12点を測定しているが、測定箇所は3箇所より多くてもよく、少なくてもよい。同様に、測定点の数は特に限定されず、12点より多くてもよく、少なくてもよい。すなわち、測定点の数は一面につき2点以上であれば何点でも構わない。ただし、測定点の数が少なすぎると測定精度が低下し、多すぎると測定時間及び演算処理時間が増加することから、9〜25点程度が好適である。なお、測定点の数が一面につき2点である場合には、直線を求めるための2点が一義的に選択されることになる。
【0045】
また、上記実施形態においては、鋳造によって得られた多結晶シリコンインゴットの断面形状が矩形であり、中インゴットを6分割して規定サイズのシリコンブロックを得ているが、本発明において多結晶シリコンインゴットの寸法やシリコンブロックの形状は特に限定されない。例えば、シリコンインゴットの断面サイズを505×505mmの正方形としてもよく、このシリコンインゴットを切断して得られる中インゴットを9分割して158×158mmのシリコンブロックを得てもよい。
【0046】
また、上記実施形態においては、太陽電池用多結晶シリコンインゴットから切り出されたシリコンブロックの外形測定方法及び製造方法について説明したが、本発明は太陽電池用以外の種々の多結晶シリコンインゴットに対して適用可能である。また本発明は、多結晶シリコンインゴット以外の種々のシリコンインゴットに対して適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 多結晶シリコンインゴット
2 中インゴット
2a 分割された中インゴット
3 シリコンブロック
3a,3b シリコンブロックの端面
3c〜3f シリコンブロックの側面
100 研削装置
101 保持機構
102 測定機
102a フレーム
102b アーム
102c センサ
103 研削機
AB,BC,CD,DA シリコンブロックの角
11,C21,C22,C23,C31,C32,C33,C34 切断ライン
,D 対角線
基準対角線
シリコンインゴットの全長
設備原点
シリコンブロックの中心点
SQ 正方形

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンインゴットから切り出されたシリコンブロックの長手方向と平行な4つの側面を被測定面とし、各被測定面において複数の測定点の座標を求める第1の工程と、
前記複数の測定点の中から選択された2点を通過する直線を各被測定面ごとに求めることにより4本の直線を定義する第2の工程と、
前記4本の直線の各交点同士を結ぶことによって得られる2本の対角線のうち短いほうの対角線を基準対角線として定めると共に、当該基準対角線の中点を求める第3の工程と、
前記基準対角線の角度と前記基準対角線の前記中点の座標に基づいて製品ブロックの外形の座標及び研削代を求める第4の工程とを備えることを特徴とするシリコンブロックの外形測定方法。
【請求項2】
前記第2の工程は、前記複数の測定点の中から前記シリコンブロックの最も内側寄りの1点を選択し、当該1点とその他の複数の点から選ばれた1点とを結んだときに前記被測定面と実質的に平行な基準座標軸と最も平行となる直線を各被測定面ごとに求める工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のシリコンブロックの外形測定方法。
【請求項3】
前記第4の工程は、
前記複数の測定点の基準座標に対して前記基準対角線の角度が45度となるように前記シリコンブロックの角度を調整する工程と、
前記基準対角線の前記中点を中心点とする正方形を前記製品ブロックの外形として定める工程を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のシリコンブロックの外形測定方法。
【請求項4】
各被測定面における前記複数の測定点の測定箇所は、前記シリコンブロックの前記側面の前記長手方向の一端側に位置する第1の測定箇所と、前記長手方向の他端側に位置する第2の測定箇所と、前記第1の領域と前記第2の領域との間に位置する第3の測定箇所を含み、前記第1乃至第3の測定箇所において同数の測定点を取得することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシリコンブロックの外形測定方法。
【請求項5】
シリコンインゴットを鋳造する工程と、
前記シリコンインゴットから複数のシリコンブロックを切り出す工程と、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の外形測定方法によって前記シリコンブロックの外形を測定する工程と、
前記外形に基づいて前記シリコンブロックの長手方向と平行な4つの側面からなる外周面を研削する工程とを備えることを特徴とするシリコンブロックの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−56825(P2012−56825A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204427(P2010−204427)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】