説明

シリコンマイクロホン

【課題】導電層部の歪みおよび導電層部の周辺部における変則的な振動を低減し、感度が高く、性能の均一化が図られるシリコンマイクロホンを提供する。
【解決手段】ダイアフラム21を形成する第一導電層部20は、ダイアフラム21を形成する中心部とその外側の周辺部22との間にコルゲーション23が形成されている。コルゲーション23は、周方向へ複数配置されているスペーサ43を結ぶ仮想直線Lを跨いで配置されている。仮想直線Lを跨いでコルゲーション23を配置することにより、ダイアフラム21を形成する第一導電層部20の剛性は全体的に向上する。第一導電層部20の剛性が向上することにより、第一導電層部20は中心部および周辺部22において応
力の変化にともなう歪みが生じにくくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンマイクロホンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイスの製造プロセスを応用して製造可能なシリコンマイクロホンが知られている。シリコンマイクロホンは、音波によって振動するダイアフラムを備えている。このようなシリコンマイクロホンには、ダイアフラムを形成する導電層部を複数の支持部で支持するものがある。支持部は、ダイアフラムを形成する導電層部の周方向へ等間隔または不等間隔で複数の個所に設けられている(特許文献1、2参照)。
【0003】
しかしながら、ダイアフラムを形成する導電層部を周方向の複数の個所で支持する場合、音響入力の過程で導電層部の内部の応力が変化する。導電層部の応力に変化が生じると、導電層部および導電層部が形成するダイアフラムの変形や導電層部の内部における応力分布に偏りが生じ、導電層部に歪みが生じる。そのため、導電層部のうちダイアフラムを形成する中心部に比較して、中心部の外周側に位置する周辺部では、変則的な振動が生じやすくなる。その結果、振動の大きな部分では対向する電極との接触を招いたり、振動の小さな部分では静電容量の変化の減少にともなう感度の低下を招くという問題がある。また、周辺部では、中心部に比較して変則的な振動が生じるため、シリコンマイクロホンの性能の予測が困難になるという問題がある。
【0004】
【特許文献1】特表2005−535152公報
【特許文献2】米国特許第5,452,268号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、導電層部の歪みおよび導電層部の周辺部における変則的な振動を低減し、感度が高く、性能の均一化が図られるシリコンマイクロホンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するために本発明のシリコンマイクロホンは、中心部にダイアフラムを形成する導電層部と、前記導電層部の周方向において複数の個所に設けられ、前記導電層部を支持する支持部と、前記導電層部に設けられ、複数の前記支持部を結ぶ仮想直線を跨いで配置されている剛性部と、を備える。
複数の支持部を結ぶ仮想直線を跨いで剛性部を配置、すなわち剛性部を仮想直線と交差させて配置することにより、ダイアフラムを形成する導電層部の剛性は向上する。導電層部の剛性が向上すると、導電層部は応力の変化にともなう歪みが生じにくくなる。そのため、導電層部の局部的な過大な振動または過小な振動が低減される。したがって、ダイアフラムを形成する中心部に比較して外周に位置する周辺部における変則的な振動を低減することができ、感度を高めることができる。また、導電層部の変則的な振動が低減されるため、ダイアフラムの振動は安定する。したがって、性能および特性の均一化を図ることができる。
【0007】
(2)また、上記目的を達成するために本発明のシリコンマイクロホンは、中心部にダイアフラムを形成する導電層部と、前記導電層部の周方向において複数の個所に設けられ、前記導電層部を支持する支持部と、前記導電層部に設けられ、複数の前記支持部の間を結んで配置されている剛性部と、を備える。
複数の支持部を結んで剛性部を配置、すなわち剛性部を複数の支持部を結ぶ仮想線上に配置することにより、ダイアフラムを形成する導電層部の剛性は向上する。導電層部の剛性が向上すると、導電層部は応力の変化にともなう歪みが生じにくくなる。そのため、導電層部の局部的な過大な振動または過小な振動が低減される。したがって、ダイアフラムを形成する中心部に比較して外周に位置する周辺部における変則的な振動を低減することができ、感度を高めることができる。また、導電層部の変則的な振動が低減されるため、ダイアフラムの振動は安定する。したがって、性能および特性の均一化を図ることができる。
【0008】
(3)さらに、上記目的を達成するために本発明のシリコンマイクロホンは、中心部にダイアフラムを形成する導電層部と、前記導電層部の周方向において複数の個所に設けられ、前記導電層部を支持する支持部と、前記導電層部に設けられ、前記導電層部において前記支持部の外周側に配置されている剛性部と、を備える。
複数の支持部の外周側に剛性部を配置することにより、ダイアフラムを形成する導電層部の剛性は向上する。特に、導電層部は支持部の外周側における剛性が向上する。支持部の外周側において導電層部の剛性が向上すると、ダイアフラムを形成する中心部に対しその外周側の周辺部における変則的な振動が低減される。また、導電層部は、剛性の向上によって、応力の変化にともなう歪みが生じにくくなる。そのため、導電層部の局部的な過大な振動または過小な振動が低減される。したがって、ダイアフラムを形成する中心部に比較して外周に位置する周辺部における変則的な振動を低減することができ、感度を高めることができる。また、導電層部の変則的な振動が低減されるため、ダイアフラムの振動は安定する。したがって、性能および特性の均一化を図ることができる。
【0009】
(4)本発明のシリコンマイクロホンでは、前記剛性部は、前記導電層部と同心円上の円周状に形成されている。
これにより、導電層部の周方向の全周において剛性が向上する。これにより、導電層部は全体の剛性が向上する。したがって、周辺部における変則的な振動を低減することができ、感度を高めることができるとともに、性能および特性の均一化を図ることができる。
【0010】
(5)本発明のシリコンマイクロホンでは、前記剛性部は、前記導電層部と同心円上の円弧状に形成されている。
導電層部を複数の支持部で支持することにより、各支持部間における導電層部の剛性は支持部で支持されている部分に比較して小さくなる。そこで、例えば、支持部の間に円弧状に剛性部を配置することにより、比較的剛性の低い支持部間の剛性が向上する。これにより、導電層部は全体の剛性が向上する。したがって、周辺部における変則的な振動を低減することができ、感度を高めることができるとともに、性能および特性の均一化を図ることができる。
【0011】
(6)本発明のシリコンマイクロホンでは、前記剛性部は、前記導電層部の径方向へ放射状に形成されている。
導電層部を複数の支持部で支持することにより、各支持部間における導電層部の剛性は支持部で支持されている部分に比較して小さくなる。そこで、例えば、支持部の間において放射状に剛性部を配置することにより、比較的剛性の低い支持部間の剛性が向上する。これにより、導電層部は全体の剛性が向上する。したがって、周辺部における変則的な振動を低減することができ、感度を高めることができるとともに、性能および特性の均一化を図ることができる。
【0012】
(7)本発明のシリコンマイクロホンでは、前記剛性部は、前記導電層部の板厚方向に段差を形成するコルゲーションである。
コルゲーションは、板厚方向に段差を形成する。そのため、導電層部には、コルゲーションによる複数の角部が形成される。板厚方向の段差によって角部を形成することにより、導電層部の剛性は向上する。したがって、周辺部における変則的な振動を低減することができ、感度を高めることができるとともに、性能および特性の均一化を図ることができる。
【0013】
(8)本発明のシリコンマイクロホンでは、前記剛性部は、前記導電層部の肉厚が大きな肉厚部である。
肉厚部は、導電層部の肉厚を大きくすることにより、導電層部の剛性は向上する。したがって、周辺部における変則的な振動を低減することができ、感度を高めることができるとともに、性能および特性の均一化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。各実施形態において実質的に同一の構成要素には同一の符号を付している。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態によるシリコンマイクロホンを図1に示す。図1に示すシリコンマイクロホン10は、半導体製造プロセスを適用して製造される。
【0015】
シリコンマイクロホン10は、シリコン基板11、第一導電層部20、第二導電層部30および絶縁層部40を備えている。シリコン基板11は、例えば単結晶シリコンによって形成されている。シリコン基板11は、開口部としてのキャビティ12を有している。キャビティ12は、シリコン基板11を板厚方向に貫いている。
【0016】
絶縁層部40は、シリコン基板11の端面13側に積層されている。絶縁層部40は、例えば二酸化ケイ素などで形成される酸化物の層である。絶縁層部40は、内周側に開口部41を有している。絶縁層部40のうち開口部41の外周側は、第二導電層部30を支持する支持部42を形成している。
第二導電層部30は、絶縁層部40のシリコン基板11とは反対側に積層されている。第二導電層部30は、例えばリンが不純物としてドーピングされたポリシリコンなどで形成される導電性の層である。第二導電層部30の外周側は、絶縁層部40が形成する支持部42に支持されている。第二導電層部30は、支持部42から内周側へ突出している部分に梁31を形成している。梁31は、第二導電層部30の周方向へ複数設置されている。梁31には、スペーサ43が接続している。スペーサ43は、梁31とは反対側の端部に第一導電層部20を支持している。この梁31から伸びるスペーサ43は、第一導電層部20を支持する支持部を構成している。すなわち、スペーサ43は、特許請求の範囲の支持部である。したがって、スペーサ43は、第一導電層部20の周方向の複数の位置において第一導電層部20を支持している。
【0017】
第一導電層部20は、周方向の複数の個所において梁31から伸びるスペーサ43に支持されている。これにより、第一導電層部20は、スペーサ43によって第二導電層部30が形成する梁31に吊り下げられている。第一導電層部20は、第二導電層部30と同様に例えばリンなどの不純物がドーピングされたポリシリコンで形成される導電性の層である。第一導電層部20は、スペーサ43によって支持されている部分の内周側にダイアフラム21を形成する中心部を有している。ダイアフラム21は、音波によって振動する。また、第一導電層部20のダイアフラム21の外周側は、周辺部22を形成する。
【0018】
第二導電層部30のうち、梁31の内周側は、ダイアフラム21に対向する背面板としてのプレート33を形成する。プレート33は、複数の通孔34を有している。通孔34は、プレート33を形成する第二導電層部30を板厚方向に貫いている。第二導電層部30とシリコン基板11との間は、絶縁体である絶縁層部40によって電気的に絶縁されている。また、第一導電層部20を第二導電層部30に支持するスペーサ43は、絶縁層部40と同様に絶縁体で形成されている。これにより、第一導電層部20と第二導電層部30との間は、スペーサ43によって絶縁されている。なお、図1(A)では、第二導電層部30が形成するプレート33の記載は省略している。
【0019】
ダイアフラム21およびシリコン基板11は、図1(B)に示すようにバイアス電源50に接続している。シリコン基板11および第一導電層部20はいずれも導電性である。そのため、ダイアフラム21とシリコン基板11とは、実質的に同一の電位となる。一方、プレート33は、オペアンプ51の入力端子に接続している。オペアンプ51は、入力インピーダンスが高く設定されている。
【0020】
音波がプレート33の通孔34を経由してダイアフラム21に伝搬すると、音波によってダイアフラム21が振動する。ダイアフラム21の振動によって、ダイアフラム21とプレート33との間の距離は変化する。ダイアフラム21とプレート33との間に挟まれる空間は、絶縁体である空気で満たされている。そのため、ダイアフラム21とプレート33との間の距離が変化することによって、ダイアフラム21とプレート33との間の静電容量は変化する。
【0021】
プレート33は、入力インピーダンスの高いオペアンプ51に接続している。そのため、ダイアフラム21およびプレート33の静電容量が変化しても、プレート33に存在する電荷のオペアンプ51への移動量はわずかである。その結果、ダイアフラム21およびプレート33に存在する電荷の変化は、ほとんど無いとみなすことができる。これにより、ダイアフラム21とプレート33との間の静電容量の変化は、プレート33の電位の変化として検出される。したがって、シリコンマイクロホン10は、静電容量の変化にともなうプレート33の電位のわずかな変化を電気信号として出力する。すなわち、シリコンマイクロホン10は、ダイアフラム21に加わる音圧の変化を静電容量の変化に変換するとともに、変換した静電容量の変化を電圧の変化へ変換することにより、音圧に相関する電気信号を出力する。
【0022】
シリコンマイクロホン10は、第一導電層部20に剛性部としてのコルゲーション23を備えている。コルゲーション23は、第一導電層部20のダイアフラム21を形成する中心部とその外周側の周辺部22との間に設けられている。コルゲーション23は、第一導電層部20のダイアフラム21を形成する中心部と周辺部22との間に溝状に形成されている。コルゲーション23は、第一導電層部20から第二導電層部30とは反対側へ窪んで形成されている。第1実施形態の場合、コルゲーション23は、ダイアフラム21を形成する第一導電層部20と同心円上に周方向へ連続して形成されている。また、第1実施形態では、コルゲーション23は、複数のスペーサ43を結ぶ仮想直線Lを跨いでいる。仮想直線Lは、シリコンマイクロホン10の周方向へ複数設けられているスペーサ43を直線的に結んだ仮想的な直線である。
【0023】
コルゲーション23を形成することにより、第一導電層部20には板厚方向へ段差が形成される。この段差により、第一導電層部20には角部24が形成される。すなわち、第一導電層部20には中心側から周縁側へかけて複数の角部24が形成される。第一導電層部20のコルゲーション23によって複数の角部24を形成することにより、第一導電層部20はコルゲーション23が設けられた部分において周方向および径方向への剛性が向上する。仮想直線Lを跨いでコルゲーション23を配置することにより、ダイアフラム21を形成する中心部と、周辺部22とからなる第一導電層部20の剛性は全体的に向上する。すなわち、第一導電層部20は、コルゲーション23を形成することにより、全体の剛性が向上する。第一導電層部20の剛性が向上すると、第一導電層部20は応力の変化にともなう歪みが生じにくくなる。そのため、第一導電層部20は、局部的な過大な振動または過小な振動の発生が低減される。その結果、第一導電層部20は、ダイアフラム21を形成する中心部の外周側に位置する周辺部22で発生する変則的な振動が低減される。したがって、第一導電層部20の振動が安定し、周辺部22の変則的かつ過大な振動による第一導電層部20と第二導電層部30との接触や、ダイアフラム21を形成する中心部の過小な振動による感度の低下を低減することができる。
【0024】
また、周辺部22の変則的かつ過大な振動を低減することにより、振動にともなう第一導電層部20と第二導電層部30との接触が低減される。そのため、第一導電層部20と第二導電層部30との間に設定する距離を低減することができる。その結果、ダイアフラム21とプレート33との間の距離を低減することができ、シリコンマイクロホン10の感度を高めることができる。さらに、第一導電層部20の振動が安定するため、シリコンマイクロホン10の性能および特性の均一化を図ることができる。
【0025】
次に、上記第1実施形態によるシリコンマイクロホン10の製造方法について図2および図3に基づいて説明する。
図2(A1)に示すように、シリコン基板60の一方の端面61に酸化物層62が形成される。酸化物層62は、シリコン基板60の一方の端面61に二酸化ケイ素を成長させることにより形成される。形成された酸化物層62は図1に示す絶縁層部40となる。形成された酸化物層62には、図2(A2)に示すように一部に凹部63が形成される。凹部63は、例えばレジストでマスクを形成した後、フッ化水素で酸化物層62をエッチングすることにより形成される。酸化物層62の厚さは、図1に示す第一導電層部20のコルゲーション23の深さに対応する。酸化物層62は、凹部63からシリコン基板60の端面61が露出するまでエッチングされる。
【0026】
酸化物層62をエッチングし凹部63が形成されると、図2(A3)に示すように酸化物層62および酸化物層62から露出するシリコン基板60の端面61に第一導電層部64が積層される。第一導電層部64は、ポリシリコンを堆積することにより形成される。形成された第一導電層部64の外周側は、図2(A4)に示すようにパターニングにより除去される。
【0027】
第一導電層部64のパターニングが完了すると、図2(A5)に示すようにさらに酸化物層62が形成される。そして、酸化物層62のシリコン基板60とは反対側の端面65には、第二導電層部66がさらに積層される。酸化物層62は、第一導電層部64のシリコン基板60とは反対側に形成される。これにより、第一導電層部64は、酸化物層62の内部に埋没する。酸化物層62を十分に成長させた後、シリコン基板60の反対側の端面に第二導電層部66が積層される。第二導電層部66は、第一導電層部64と同様にポリシリコンを堆積することにより形成される。
【0028】
酸化物層62および第二導電層部66の形成が完了すると、図3(A6)に示すように第二導電層部66はパターニングされる。第二導電層部66をパターニングすることにより、第二導電層部30の通孔34に対応する凹部67が形成される。
第二導電層部66のパターニングが完了すると、図3(A7)に示すようにシリコン基板60がパターニングされる。シリコン基板60のパターニングは、シリコン基板60の端面68にレジストによってマスク69を形成した後、異方性または等方性のエッチング液によって行う。これにより、シリコン基板60には、キャビティ12となる開口71が形成される。
【0029】
また、第二導電層部66側には、図3(A7)に示すように第二導電層部66から露出する酸化物層62を覆うマスク72が形成される。そして、凹部67および開口71を通して、フッ化水素により酸化物層62のエッチングが行われる。酸化物層62は、第二導電層部66の外周側がマスク72に覆われている。そのため、第一導電層部64の外周側においては、酸化物層62は支持部42に対応する部分がエッチングされずに残存する。また、図4に示すように、凹部67が形成する通孔34間に残存する第二導電層部66の残存部73の幅を適切に設定することにより、残存部73のシリコン基板60側には酸化物層62によって形成されるスペーサ74がエッチングされずに残存する。これにより、第一導電層部64は、第二導電層部66との間に残存する酸化物層62からなるスペーサ74に支持される。
【0030】
酸化物層62をエッチングすることにより、図3(A8)および図4に示すように支持部42およびスペーサ43となる部分を残して酸化物層62が除去される。また、第一導電層部64には、コルゲーション23となる凹部75が形成される。酸化物層62のエッチングが行われた後、図3(A9)に示すようにマスク72が除去される。
上記の工程の後、ダイシングおよびパッケージングなどの工程を経てシリコンマイクロホン10が完成する。
【0031】
第1実施形態によるシリコンマイクロホン10では、ダイアフラム21を形成する第一導電層部20は、ダイアフラム21を形成する中心部とその外側の周辺部22との間にコルゲーション23を備えている。コルゲーション23は、周方向へ複数配置されているスペーサ43を結ぶ仮想直線Lを跨いで配置されている。仮想直線Lを跨いでコルゲーション23を配置することにより、ダイアフラム21を形成する第一導電層部20の剛性は全体的に向上する。第一導電層部20の剛性が向上することにより、第一導電層部20は応力の変化にともなう歪みが生じにくくなる。そのため、第一導電層部20は、局部的な過大な振動または過小な振動が低減され、ダイアフラム21を形成する中心部の外周側に位置する周辺部22で発生する変則的な振動が低減される。したがって、第一導電層部20の振動が安定し、感度を高めることができるとともに、シリコンマイクロホン10の性能および特性の均一化を図ることができる。
【0032】
(第2、第3実施形態)
本発明の第2、第3実施形態によるシリコンマイクロホンを図5または図6に示す。
第2実施形態では、図5に示すように第一導電層部20のコルゲーション23は第二導電層部30側へ突出している。第一導電層部20の剛性は、突出方向に関わらずコルゲーション23を設けることによって向上する。したがって、コルゲーション23は、第2実施形態のように第二導電層部30側へ突出して形成してもよい。
【0033】
第3実施形態では、図6に示すように第一導電層部20は剛性部として肉厚部25を有している。肉厚部25は、第一導電層部20の一部の肉厚を大きくすることにより形成される。肉厚部25は、第1実施形態のコルゲーション23と同様に第一導電層部20の剛性を向上させる。すなわち、第一導電層部20の剛性が高めるためには、コルゲーション23に限らず肉厚部25を形成してもよい。
【0034】
(コルゲーションの配置の変形例)
上述の第1実施形態では、図1に示すようにスペーサ43を結ぶ仮想直線Lを跨いでコルゲーション23を配置する例について説明した。また、コルゲーション23は、第一導電層部20の周方向へ連続して形成する例について説明した。しかし、コルゲーション23は、次のいずれかの条件を満たす位置に配置すればよい。
【0035】
(1)複数のスペーサ43を結ぶ仮想直線Lを跨いで形成する(第1実施形態)
(2)複数のスペーサ43の間に配置する
(3)複数のスペーサ43の外周側に配置する
以上の条件を満たす例について具体的に下記に説明する。
【0036】
(第4、第5実施形態)
本発明の第4実施形態を図7に示す。
図7に示す第4実施形態によるシリコンマイクロホン10は、上記の条件(2)を満たしている。すなわち、第4実施形態では、コルゲーション23は、第一導電層部20の周方向へ複数設置されている各スペーサ43の間に配置されている。第4実施形態の場合、コルゲーション23は、複数のスペーサ43を直線状に結んでいる。
【0037】
本発明の第5実施形態を図8に示す。
図8に示す第5実施形態によるシリコンマイクロホン10は、上記の条件(2)を満たしている。すなわち、第5実施形態では、コルゲーション23は、第一導電層部20の周方向へ複数設置されている各スペーサ43の間に配置されている。第5実施形態の場合、コルゲーション23は、複数のスペーサ43を第一導電層部20と同心円上に円弧状に結んでいる。
【0038】
第4実施形態または第5実施形態のように、第一導電層部20に複数のスペーサ43を結ぶコルゲーション23を形成することにより、ダイアフラム21を形成する第一導電層部20の剛性は全体的に向上する。第一導電層部20の剛性が向上することにより、第一導電層部20は応力の変化にともなう歪みが生じにくくなる。そのため、第一導電層部20は、局部的な過大な振動または過小な振動の発生が低減され、ダイアフラム21を形成する中心部の外周側に位置する周辺部22で発生する変則的な振動が低減される。したがって、第一導電層部20の振動が安定し、感度を高めることができるとともに、シリコンマイクロホン10の性能および特性の均一化を図ることができる。
【0039】
なお、第4実施形態および第五実施形態におけるコルゲーション23をさらに詳細に説明すれば、複数のスペーサ43の間を結ぶコルゲーション23は、スペーサ43を結ぶ仮想線上に配置されていればよいことになる。たとえば、図9および図10に示すように、スペーサ43を結ぶ仮想線Lii上にコルゲーション23が配置されていればよい。図9に示す例では隣り合うスペーサ43を結ぶ直線が仮想線Liiであり、図10に示す例では隣り合うスペーサ43を結ぶ円弧状の曲線が仮想線Liiである。この仮想線Liiに沿ってコルゲーション23が配置されることで、応力の変化に伴う歪みが第一導電層部20に生じにくくなる。
【0040】
(第6実施形態)
本発明の第6実施形態によるシリコンマイクロホンを図11に示す。
図11に示すシリコンマイクロホン10は、上記の条件(1)を満たしている。すなわち、第6実施形態では、コルゲーション23は、第一導電層部20の周方向へ複数設置されている各スペーサ43を結ぶ仮想直線Lを跨いで配置されている。第6実施形態の場合、コルゲーション23は、複数のスペーサ43の間に仮想直線Lを跨いで放射状に形成されている。
【0041】
第6実施形態のように、第一導電層部20に仮想直線Lを跨ぐコルゲーション23を形成することにより、ダイアフラム21を形成する第一導電層部20の剛性は全体的に向上する。したがって、第1実施形態と同様に第一導電層部20の振動が安定し、感度を高めることができるとともに、シリコンマイクロホン10の性能および特性の均一化を図ることができる。
なお、第6実施形態によるシリコンマイクロホン10では、コルゲーション23を放射状に各スペーサ43の間に三本ずつ配置する例を示している。しかし、コルゲーション23の本数または角度などは、シリコンマイクロホン10の特性に応じて任意に決定することができる。
【0042】
(第7実施形態)
本発明の第7実施形態によるシリコンマイクロホンを図12に示す。
図12に示すシリコンマイクロホンは、上記の条件(3)を満たしている。すなわち、第7実施形態では、コルゲーション23は、第一導電層部20の周方向へ複数設置されている各スペーサ43の外周側に配置されている。第7実施形態の場合、コルゲーション23は、複数のスペーサ43の外周側において第一導電層部20と同心円上に設けられている。これにより、コルゲーション23は、スペーサ43の外周側において、円周上に連続して形成されている。
【0043】
第7実施形態のように、第一導電層部20のスペーサ43の外周側にコルゲーション23を形成することにより、ダイアフラム21を形成する第一導電層部20の剛性は全体的に向上する。第一導電層部20の剛性が向上することにより、第一導電層部20は応力の変化にともなう歪みが生じにくくなる。そのため、第一導電層部20は、局部的な過大な振動または過小な振動の発生が低減され、ダイアフラム21を形成する中心部の外周側に位置する周辺部22で発生する変則的な振動が低減される。したがって、第一導電層部20の振動が安定し、感度を高めることができるとともに、シリコンマイクロホン10の性能および特性の均一化を図ることができる。
【0044】
(その他の実施形態)
以上説明した複数の実施形態では、ダイアフラム21を形成する第一導電層部20を第二導電層部30から伸びるスペーサ43によって支持する例について説明した。しかし、本発明は、第一導電層部20をスペーサ43によって支持する例に限らず適用することができる。
【0045】
図13に示すように、ダイアフラム21を形成する第一導電層部20は、シリコン基板11が支持する構成としてもよい。この場合、キャビティ12を形成するシリコン基板11は、第一導電層部20を支持する支持部を形成する。
また、図14に示すように、ダイアフラム21を形成する第一導電層部20は、シリコン基板11から伸びる支持部14によって支持する構成としてもよい。
【0046】
さらに、図15に示すように、ダイアフラム21を形成する第一導電層部20が第二導電層部30側へ移動する構成としてもよい。図15に示すシリコンマイクロホン10の場合、第一導電層部20および第二導電層部30に通電すると、第一導電層部20と第二導電層部30との間の静電引力により、第一導電層部20は第二導電層部30側へ吸引される。そして、第一導電層部20は、第二導電層部30から伸びるスペーサ44と接することにより移動が制限される。このように、ダイアフラム21を形成する第一導電層部20は、通電されると第二導電層部30側へ移動する。このとき、スペーサ44は第一導電層部20を支持する支持部を構成する。
【0047】
以上説明した複数の実施形態では、支持部となるスペーサ43を第一導電層部20および第二導電層部30の周方向の四個所に配置する例について説明した。しかし、支持部となるスペーサ43は、二個所以上であれば四個所に限らず配置することができる。スペーサ43が二個所の場合は、スペーサ間を結ぶ円弧状の仮想線上に剛性部を配置すればよい。
また、複数の実施形態では、ダイアフラム21を形成する第一導電層部20およびプレート33を形成する第二導電層部30などを円形状に形成する例について説明した。しかし、第一導電層部20および第二導電層部30は、円形に限らず、楕円形状、矩形状あるいは多角形状に形成してもよい。
さらに、上記の複数の実施形態では、各実施形態を個別に適用したコンデンサマイクロホン10について説明したが、複数の実施形態を組み合わせてコンデンサマイクロホン10に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1実施形態によるシリコンマイクロホンの概略を示す図であって、(A)は第一導電層部を第二導電層部側から見た平面図、(B)は(A)のB−B線における断面図、(C)は(A)のC−C線における断面図。
【図2】本発明の第1実施形態によるシリコンマイクロホンの製造工程を示す断面図。
【図3】本発明の第1実施形態によるシリコンマイクロホンの製造工程を示す断面図。
【図4】本発明の第1実施形態によるシリコンマイクロホンの製造工程を示す断面図であって、スペーサの近傍を拡大した図。
【図5】本発明の第2実施形態によるシリコンマイクロホンの概略を示す断面図。
【図6】本発明の第3実施形態によるシリコンマイクロホンの概略を示す断面図。
【図7】本発明の第4実施形態によるシリコンマイクロホンの概略を示す図であって、第一導電層部を第二導電層部側から見た平面図。
【図8】本発明の第5実施形態によるシリコンマイクロホンの概略を示す図であって、第一導電層部を第二導電層部側から見た平面図。
【図9】本発明の第4実施形態によるシリコンマイクロホンの概略を示す図であって、第一導電層部を第二導電層部側から見た平面図。
【図10】本発明の第5実施形態によるシリコンマイクロホンの概略を示す図であって、第一導電層部を第二導電層部側から見た平面図。
【図11】本発明の第6実施形態によるシリコンマイクロホンの概略を示す図であって、第一導電層部を第二導電層部側から見た平面図。
【図12】本発明の第7実施形態によるシリコンマイクロホンの概略を示す図であって、第一導電層部を第二導電層部側から見た平面図。
【図13】本発明の他の実施形態によるシリコンマイクロホンの概略を示す断面図。
【図14】本発明の他の実施形態によるシリコンマイクロホンの概略を示す断面図。
【図15】本発明の他の実施形態によるシリコンマイクロホンの概略を示す断面図。
【符号の説明】
【0049】
10:シリコンマイクロホン、11:シリコン基板、20:第一導電層部、21:ダイアフラム、23:コルゲーション(剛性部)、25:肉厚部、30:第二導電層部、33:プレート、40:絶縁層部、43:スペーサ(支持部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部にダイアフラムを形成する導電層部と、
前記導電層部の周方向において複数の個所に設けられ、前記導電層部を支持する支持部と、
前記導電層部に設けられ、複数の前記支持部を結ぶ仮想直線を跨いで配置されている剛性部と、
を備えるシリコンマイクロホン。
【請求項2】
中心部にダイアフラムを形成する導電層部と、
前記導電層部の周方向において複数の個所に設けられ、前記導電層部を支持する支持部と、
前記導電層部に設けられ、複数の前記支持部の間に配置されている剛性部と、
を備えるシリコンマイクロホン。
【請求項3】
中心部にダイアフラムを形成する導電層部と、
前記導電層部の周方向において複数の個所に設けられ、前記導電層部を支持する支持部と、
前記導電層部に設けられ、前記導電層部において前記支持部の外周側に配置されている剛性部と、
を備えるシリコンマイクロホン。
【請求項4】
前記剛性部は、前記導電層部と同心円上の円周状に形成されている請求項1または3記載のシリコンマイクロホン。
【請求項5】
前記剛性部は、前記導電層部と同心円上の円弧状に形成されている請求項1または3記載のシリコンマイクロホン。
【請求項6】
前記剛性部は、前記導電層部の径方向へ放射状に形成されている請求項1記載のシリコンマイクロホン。
【請求項7】
前記剛性部は、前記導電層部の板厚方向に段差を形成するコルゲーションである請求項1から6のいずれか一項記載のシリコンマイクロホン。
【請求項8】
前記剛性部は、前記導電層部の肉厚が大きな肉厚部である請求項1から6のいずれか一項記載のシリコンマイクロホン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−54307(P2008−54307A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−195783(P2007−195783)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】