説明

シリコン微粒子含有廃棄物の処分方法、再資源化方法および燃料組成物

【課題】 シリコンウエハー製造工程などで発生したシリコン微粒子含有廃棄物の焼却残渣がアルカリなどと反応して発熱したり水素ガスを発生して引火・爆発事故を起こすことを避け、安全に埋め立て処分できる焼却処分方法、他の廃棄物と混合して安全に取り扱って焼却して有効利用する再資源化方法およびセメント燃焼用などに好適な燃料組成物の提供。
【解決手段】 シリコン微粒子含有廃棄物を800℃以上の温度で焼却し、その焼却残渣が水もしくはアルカリと混合しても発熱したり水素ガス発生しないようにするシリコン微粒子含有廃棄物の処分方法により課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン微粒子含有廃棄物の処分方法、再資源化方法および燃料組成物に関するものであり、さらに詳しくは、シリコンウエハー製造工程でシリコンインゴットをダイヤモンドソーなどを用いて所定の形に整形する工程や整形されたシリコンインゴットを切断し、薄いシリコンウエハーとした後、切断面を研磨する工程などで発生するシリコン微粒子含有廃棄物の処分方法、再資源化方法および燃料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池パネルもしくはICチップなどに用いるシリコンウエハーは、ダイヤモンドソー、ワイヤーソーなどを用いて、シリコンの固まりであるシリコンインゴットをスライスし、また研磨して製造される。この研削、研磨工程よりシリコン微粒子を含む廃棄物が発生する。
【0003】
これら、シリコンウエハー製造工程より発生する廃棄物に含まれるシリコン微粉末は下式(1)に示されるごとく水と反応し水素ガスを発生する。
本反応は常温では穏やかであり、発生する水素量も小量である。
【0004】
式(1):
Si+2H2 O→SiO2 +2H2
【0005】
しかしながら、シリコン微粉末はアルカリを加えると下式(2)に示されるごとく激しく反応し大量の水素を発生する。
【0006】
式(2):
Si+2NaOH+H2O→Na2 SiO3 +2H2 +423.8[kJ/mol]
【0007】
前記式(2)に示される本反応は発熱反応であるため、反応が始まると自己の反応熱により組成物の液温が上昇し、反応速度が加速され、所謂暴走反応を起こし、短時間に多量の水素ガスを発生する。反応により発生する水素はその爆発範囲が4〜75%と非常に広く、また最小着火エネルギーが0.02mjと小さいため引火・爆発の危険性の大きなガスである。
【0008】
シリコンがアルカリと反応し水素ガスを発生する性質を利用して、シリコン微粒子を含む廃棄物から水素ガスを回収する試みがなされている(特許文献1および特許文献2参照)。
【0009】
また、シリコン微粒子を含む廃棄物を製鋼用資材として再利用する試みがなされている(特許文献3参照)。
【0010】
また、シリコン微粒子を含む廃棄物から砥粒である炭化珪素を取出し再資源化する試みがなされている(特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2004−307328号公報
【特許文献2】特開2004−115349号公報
【特許文献3】特開2005−163130号公報
【特許文献4】特開2002−167280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし前記のいずれの方法も商用化は殆ど行われておらず、シリコンウエハー製造工程より排出されるシリコン微粉末を含む廃棄物はその大部分は埋め立て処分もしくは焼却処分されている。
【0012】
しかし、埋め立てられたシリコン微粉末を含む廃棄物は雨水などと反応し水素ガスを発生する。また、アルカリ性廃棄物がシリコン微粉末を含む廃棄物と一緒に埋め立てられた場合には発熱し、大量の水素ガスを発生するため、引火・爆発の危険性が大きい。
【0013】
また焼却処分を行う際、通常シリコン微粉末を含む廃棄物は、一旦タンクもしくはピットに貯蔵される他に、他廃棄物と混合された後、焼却されるが、貯蔵する際、他廃棄物に含まれるアルカリと反応し発熱し、大量の水素ガスが発生し、引火・爆発の危険性が有る。
【0014】
シリコン微粉末を含む廃棄物は水と反応し、発熱して、水素ガスを発生する性質を有し、この性質はpHが高くなるほど強くなり、pH10以上では暴走反応を起こすほどに激しいものである。
そのためシリコン微粉末を含む廃棄物は通常の廃棄物とは異なる方法で処理を行う必要がある。
【0015】
本発明の第1の目的は、前記シリコン微粒子含有廃棄物を焼却した際に発生する焼却残渣が、水もしくはアルカリと混合されても発熱したり水素ガスが発生しないようにして、引火・爆発事故を起こすことを避け、安全に埋め立て処分できるように、前記シリコン微粒子含有廃棄物を焼却処分する方法を提供すること、および、前記シリコン微粒子含有廃棄物と他の廃棄物を混合して焼却する場合には、他の廃棄物に含まれるアルカリやアルカリ性の廃棄物との混合により発熱したり大量の水素ガスが発生しないようにして、引火・爆発事故を起こすことを避けて、安全に取り扱えるようにするとともに、前記のように焼却残渣を安全に埋め立て処分できるようにする、前記シリコン微粒子含有廃棄物を焼却処分する方法を提供することであり、
【0016】
本発明の第2の目的は、前記シリコン微粒子含有廃棄物と他の廃棄物を混合して、混合物を焼却して燃焼熱などを有効利用する際に、発生する焼却残渣が、水もしくはアルカリと混合されても発熱したり水素ガスが発生しないようにして、引火・爆発事故を起こすことを避け、安全に埋め立て処分できるように前記混合物を焼却する、前記シリコン微粒子含有廃棄物の再資源化方法を提供することであり、
【0017】
本発明の第3の目的は、前記シリコン微粒子含有廃棄物と他の廃棄物を混合して燃料組成物を製造するに当たり、他の廃棄物に含まれるアルカリやアルカリ性の廃棄物との混合により、発熱したり大量の水素ガスが発生しないようにして、引火・爆発事故を起こすことを避け、安全に取り扱えるようにするとともに、貯蔵タンクなどで燃料組成物中に含まれる固形物が沈降したり浮上して分離しないようにして組成を均一に維持するとともに、配管輸送や噴霧燃焼などを容易に安全に行うことができるような、セメント燃焼用あるいは製紙ボイラー用あるいは廃棄物焼却用などに好適な燃料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題を解決するために鋭意研究した結果、前記シリコン微粒子含有廃棄物を800℃以上で焼却すると、シリコン粒子表面にアルカリに犯されない酸化皮膜が形成されると考えられるため、その焼却残渣は水もしくはアルカリと混合しても発熱したり水素ガスが発生したりせず、安全に埋め立て処分できることを見いだし、
そして、前記シリコン微粒子含有廃棄物を他の廃棄物と混合して焼却を行う際には、前記混合物のpHが10未満となるように調整して混合すれば、前記混合物は水と混合されていても激しく反応せず、発熱したり水素ガスが発生したりせず安全に取り扱うことができ、そして前記混合物を800℃以上の温度で焼却すると、前記のようにその焼却残渣は安全に埋め立て処分できることを見いだし、本発明を成すに到った。
【0019】
すなわち、本発明の請求項1の発明は、シリコン微粒子含有廃棄物を800℃以上の温度で焼却し、その焼却残渣が水もしくはアルカリと混合しても発熱したり水素ガスが発生しないようにすることを特徴とするシリコン微粒子含有廃棄物の処分方法である。
【0020】
また、本発明の請求項2の発明は、シリコン微粒子含有廃棄物を他の廃棄物と混合して焼却を行う際には、混合物のpHが10未満となるように調整して混合し、前記混合物を800℃以上の温度で焼却し、その焼却残渣が水もしくはアルカリと混合しても発熱したり水素ガスが発生しないようにすることを特徴とするシリコン微粒子含有廃棄物の処分方法である。
【0021】
本発明の請求項3の発明は、シリコン微粒子含有廃棄物と他廃棄物を混合して燃料組成物を製造し、前記燃料組成物を800℃以上の温度で燃焼して有効利用することを特徴とするシリコン微粒子含有廃棄物の再資源化方法である。
【0022】
本発明の請求項4の発明は、シリコン微粒子含有廃棄物と他廃棄物を混合して製造された燃料組成物であって、前記燃料組成物のpHが10未満となるように調整されて混合されてなることを特徴とするシリコン微粒子含有廃棄物を含む燃料組成物である。
【0023】
本発明の請求項5の発明は、請求項4記載のシリコン微粒子含有廃棄物を含む燃料組成物において、シリコン微粒子含有廃棄物と他廃棄物を混合して製造された燃料組成物であって、前記燃料組成物はチキソトロピー性を付与されてチキソトロピー性を有してなることを特徴とする。
【0024】
本発明の請求項6の発明は、請求項4あるいは請求項5記載のシリコン微粒子含有廃棄物を含む燃料組成物において、セメント焼成用燃料組成物であることを特徴とする。
【0025】
本発明の請求項7の発明は、請求項4あるいは請求項5記載のシリコン微粒子含有廃棄物を含む燃料組成物において、製紙ボイラー用燃料組成物であることを特徴とする。
【0026】
本発明の請求項8の発明は、請求項4あるいは請求項5記載のシリコン微粒子含有廃棄物を含む燃料組成物において、廃棄物焼却炉用燃料組成物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明の請求項1の発明は、シリコン微粒子含有廃棄物を800℃以上の温度で焼却し、その焼却残渣が水もしくはアルカリと混合しても発熱したり水素ガスが発生しないようにすることを特徴とするシリコン微粒子含有廃棄物の処分方法であり、
前記シリコン微粒子含有廃棄物を800℃以上で焼却すると、シリコン粒子表面にアルカリに犯されない酸化皮膜が形成されると考えられるため、その焼却残渣は水もしくはアルカリと混合しても発熱したり水素ガスが発生したりせず、引火・爆発事故を起こすことを避け、焼却残渣を安全に埋め立て処分できるという顕著な効果を奏する。
【0028】
本発明の請求項2の発明は、シリコン微粒子含有廃棄物を他の廃棄物と混合して焼却を行う際には、混合物のpHが10未満となるように調整して混合し、前記混合物を800℃以上の温度で焼却し、その焼却残渣が水もしくはアルカリと混合しても発熱したり水素ガスが発生しないようにすることを特徴とするシリコン微粒子含有廃棄物の処分方法であり、
前記混合物のpHが10未満となるように調整して混合すれば、前記混合物は水と混合されていても激しく反応せず、発熱したり水素ガスが発生したりせず、引火・爆発事故を起こすことを避け、安全に取り扱うことができるとともに、前記混合物を800℃以上の温度で焼却すると、シリコン粒子表面にアルカリに犯されない酸化皮膜が形成されると考えられるため、その焼却残渣は水もしくはアルカリと混合しても発熱したり水素ガスが発生したりせず、引火・爆発事故を起こすことを避け、焼却残渣を安全に埋め立て処分できるという顕著な効果を奏する。
【0029】
本発明の請求項3の発明は、シリコン微粒子含有廃棄物と他廃棄物を混合して燃料組成物を製造し、前記燃料組成物を800℃以上の温度で燃焼して有効利用することを特徴とするシリコン微粒子含有廃棄物の再資源化方法であり、
前記燃料組成物を800℃以上の温度で燃焼して、発生する燃焼熱を有効利用すると、シリコン粒子表面にアルカリに犯されない酸化皮膜が形成されると考えられるため、その焼却残渣は水もしくはアルカリと混合しても発熱したり水素ガスが発生したりせず、引火・爆発事故を起こすことを避け、焼却残渣を安全に埋め立て処分できるという顕著な効果を奏する。
【0030】
本発明の請求項4の発明は、シリコン微粒子含有廃棄物と他廃棄物を混合して製造された燃料組成物であって、前記燃料組成物のpHが10未満となるように調整されて混合されてなることを特徴とするシリコン微粒子含有廃棄物を含む燃料組成物であり、
シリコン微粒子含有廃棄物と他廃棄物を混合して製造された燃料組成物のpHが10未満となるように調整して混合すれば、前記燃料組成物は水と混合されていても激しく反応せず、発熱したり水素ガスが発生したりせず、引火・爆発事故を起こすことを避け、安全に取り扱うことができるという顕著な効果を奏する。
【0031】
本発明の請求項5の発明は、請求項4記載のシリコン微粒子含有廃棄物を含む燃料組成物において、シリコン微粒子含有廃棄物と他廃棄物を混合して製造された燃料組成物であって、前記燃料組成物はチキソトロピー性を付与されてチキソトロピー性を有してなることを特徴とするものであり、
前記燃料組成物に後述する変性材料を所定量配合するなどにより、静止時など剪断速度(sec-1)が小さいか0の場合には粘度が高くなり、貯蔵タンクおよび配管内などでの固形分の沈降や浮上を防ぎ、一方、配管輸送時や噴霧燃焼時など剪断速度(sec-1)が大きくなると、前記燃料組成物の粘度が低下して容易に配管輸送、噴霧燃焼を行うことが出来るようにチキソトロピー性が付与されていると、前記燃料組成物を貯蔵タンクなどで貯蔵するなどの場合に、前記燃料組成物の粘度が上昇して前記燃料組成物に含まれる比重の大きい成分である固形物などが沈降したり、比重の小さな成分が浮上したりして分離せず、均一な組成を維持することができ、一方、貯蔵タンクなどで貯蔵した前記燃料組成物を配管輸送や噴霧燃焼などを行う際には前記燃料組成物の粘度が低下して容易に配管輸送や噴霧燃焼などを行うことができるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0032】
本発明の請求項6の発明は、請求項4あるいは請求項5記載のシリコン微粒子含有廃棄物を含む燃料組成物において、セメント焼成用燃料組成物であることを特徴とするものであり、
セメント製造工程で前記燃料組成物を燃焼して燃焼熱をセメント焼成に有効利用できるとともにシリコンおよび砥粒酸化物などがセメント原料になるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0033】
本発明の請求項7の発明は、請求項4あるいは請求項5記載のシリコン微粒子含有廃棄物を含む燃料組成物において、製紙ボイラー用燃料組成物であることを特徴とするものであり、
製紙工程で前記燃料組成物を燃焼して、燃焼熱を製紙に有効利用できるとともに、その焼却残渣を安全に埋め立て処分できるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0034】
本発明の請求項8の発明は、請求項4あるいは請求項5記載のシリコン微粒子含有廃棄物を含む燃料組成物において、廃棄物焼却炉用燃料組成物であることを特徴とするものであり、
廃棄物焼却炉で前記燃料組成物を燃焼して燃焼熱を有効利用できるとともに、焼却残渣を安全に埋め立て処分できるというさらなる顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明を詳細に説明する。
図1は、シリコン微粒子含有廃棄物の処分方法の一例の工程を説明する説明図である。
図2(1)、(2)は、シリコン微粒子含有廃棄物の処分方法の他の例の工程を説明する説明図である。
【0036】
図1に示したように、シリコン微粒子含有廃棄物をストーカ式焼却設備、流動床式焼却設備、回転式焼却設備などの形式の焼却設備を用いて焼却処理する際、シリコン微粒子の温度が800℃以上となるようにして焼却処理すると、シリコン粒子表面にアルカリに犯されない酸化皮膜が形成されると考えられるため、発生する焼却残渣は水もしくはアルカリと混合しても発熱したり水素ガスが発生しないようになるので、引火・爆発事故を起こすことを避け、焼却残渣を安全に埋め立て処分できる。
【0037】
図2(1)に示したように、シリコン微粒子含有廃棄物をピット内に貯蔵された他の廃棄物と混合して焼却を行う際には、ピット内に貯蔵された他廃棄物のpHを測定し、10未満であればシリコン微粉末含有廃棄物と混合してもよい。
しかし、図2(1)に示したように、ピット内に貯蔵された他廃棄物のpHが10以上であった場合は、他廃棄物に酸もしくは酸性廃棄物を投入してそのpHを測定し、pHが10未満とした後、シリコン微粉末含有廃棄物を投入して混合する。
図2(2)に示したように、シリコン微粒子含有廃棄物が貯蔵されたピットへ他廃棄物を投入して混合する際は、投入する他廃棄物のpHを測定し、10未満であればピット内に他廃棄物を投入する。
しかし、図2(2)に示したように、シリコン微粒子含有廃棄物が貯蔵されたピットへ他廃棄物を投入する際に、投入する他廃棄物のpHを測定し、他廃棄物のpHが10以上であった場合は、他廃棄物とシリコン微粒子含有廃棄物との混合試験を行い、混合物のpHが10未満となる混合割合を決定し、その混合割合となるように他廃棄物を均一にピット内に投入する。
以上のように、ピット内の混合物のpHが10未満となるように調整して混合した後、この混合物のシリコン微粒子の温度が800℃以上となるようにして焼却処理すると、発生する焼却残渣は水もしくはアルカリと混合しても発熱したり水素ガスが発生しないようになるので、引火・爆発事故を起こすことを避け、焼却残渣を安全に埋め立て処分できる。
【0038】
次に、太陽電池用シリコンウエハーの製造工程の一例を示す。
まず、円柱状の単結晶もしくは多結晶シリコンインゴットをダイヤモンドソーなどを用いて四角柱状のシリコンブロックを切り出し、切り出したブロック表面を研磨する。切削および研磨工程ではインゴットを冷却する目的で切削・研磨面に水を噴霧する。本製造工程から水にシリコン微粉末が分散した液状の廃棄物が発生する。本廃棄物には粒径0.1から10μmの粒径を持つシリコン(Si)が0.1〜数質量%含まれる。
【0039】
次に、切り出され、研磨されたシリコンブロックからワイヤーソーを用い薄板状のシリコンウエハーを切り出す。切り出す際にはワイヤーソーに油性もしくは水性切削油に砥粒を分散したスラリーを噴射しながら行う。
【0040】
油性切削油は、例えば鉱物油を主成分とし砥粒の分散を目的として少量の界面活性剤などを加えたものである。
水性切削油は、例えばプロピレングリコールを主成分とし砥粒の分散を目的として少量の界面活性剤などを加えたものである。
砥粒としては炭化珪素、炭化ホウ素、ダイヤモンドなどの微粉末が用いられその粒径は5〜15μm程度である。
前記砥粒と切削油の配合割合は質量比で切削油1に対し砥粒0.2〜2程度である。
【0041】
シリコンブロックからシリコンウエハーを切り出す工程からは油性もしくは水性切削油に砥粒およびシリコン微粉末が分散した泥状の廃棄物が発生する。
泥状の廃棄物には粒径は0.1〜10μmのシリコン微粒子が約5〜10質量%、砥粒が20〜60質量%含まれる。
【0042】
ICチップ製造工程は、先ず、シリコンインゴットをダイヤモンドソーもしくはワイヤーソーを用いてスライスしてシリコンウエハーを切り出した後、研磨する。本工程より太陽電池用シリコンウエハー製造工程と同様のシリコン微粒子を含む廃棄物が発生する。
【0043】
次にシリコンウエハー上に多数のICチップを形成した後、個々のICチップ単位に切断される。本工程からもシリコン微粒子を含有した廃棄物が発生する。これらシリコンウエハー製造工程から排出される廃棄物に含まれるシリコン微粒子は0.1〜10μmと微粉末であり、比表面積が大きいためアルカリと反応すると大量の水素ガスを発生する。
【0044】
本発明で使用するシリコン微粒子含有廃棄物とはシリコンウエハーを製造する工程より発生した水性シリコン汚泥や油性シリコン汚泥を包含するものであり、粒径0.1から10μmの粒径を持つシリコン(Si)が0.1〜数十質量%含まれる液状もしくは泥状の廃棄物である。その他各種産業で発生する類似のシリコン微粒子を含有するシリコン微粒子含有廃棄物を包含するものである。
【0045】
通常の廃棄物焼却処理施設では、多くの排出事業所から排出される様々な廃棄物を混合し、混合物の発熱量の変動を抑えて焼却することにより廃棄物焼却炉を効率よく運転しているので、シリコン微粉末が混入した廃棄物単体を焼却処分することは稀であり、シリコン微粉末を含む廃棄物は一旦焼却処理施設の貯蔵タンクもしくはピットに他の廃棄物と一緒に貯蔵される。
【0046】
この際、アルカリ性廃棄物が貯蔵タンクもしくはピットに入っているとシリコン微粉末と混合することにより発熱し、大量の水素ガスが発生し引火・爆発の危険性があるが、事前にpH試験や混合試験を行い、前記燃料組成物のpHが10未満になるように調整すれば、前記燃料組成物は水と混合されていても激しく反応せず、発熱したり大量の水素ガスが発生したりせず、引火・爆発事故を起こすことを避け、安全に取り扱うことができる。
そして廃棄物焼却炉で前記燃料組成物を800℃以上の温度で焼却して燃焼熱を有効利用すれば、その焼却残渣は水もしくはアルカリと混合しても発熱したり水素ガスが発生したりせず、引火・爆発事故を起こすことを避け、焼却残渣を安全に埋め立て処分できる。
【0047】
前記のようなシリコンウエハー製造工場で発生したシリコン微粉末を含む廃棄物は、貯蔵タンクもしくはドラム缶などの鋼鉄製容器などに貯蔵される。
シリコン微粉末を含む廃棄物に水が混入しているとpHが10未満であっても小量ではあるが水素が発生し、タンクもしくはドラム缶などの内部圧力を上昇させタンクもしくはドラム缶などの破裂に繋がる危険性が有る。そのため、タンクにはベンチレーターを設置し、またドラム缶にはガス抜き装置付きの蓋を用いると良い。
【0048】
そして、タンクで貯蔵されたシリコン微粉末を含む廃棄物は通常、所謂バキューム車に積み込み、焼却処理施設に運ばれ焼却処理が行われる。
一方、ドラム缶に貯蔵されたシリコン微粉末を含む廃棄物は一定量が溜まった時点で焼却処理施設に運ばれ焼却処理が行われる。
【0049】
焼却処理施設ではシリコン微粉末を含む廃棄物以外の多くの種類の廃棄物の焼却処理を行っており、多くの種類の廃棄物それぞれに対して専用の貯蔵設備を持つことは困難なため、シリコン微粉末を含む廃棄物は他廃棄物が貯蔵されているタンクもしくはピットに投入されることが多い。
【0050】
シリコン微粉末を含む廃棄物を他廃棄物が貯蔵されているタンクもしくはピットに投入に当り、すでに貯蔵されている他廃棄物のpHを測定し、10未満であることを確認してからシリコン微粉末を含む廃棄物を投入しなければならない。pHが10以上の他廃棄物とシリコン微粉末を含む廃棄物を混合するとシリコン微粉末とアルカリが反応し、発熱し、大量の水素ガス発生が起こり、引火・爆発の危険が有る。
【0051】
pHが10以上であった場合は、他廃棄物に酸もしくは酸性廃棄物を投入してそのpHを10未満とした後、シリコン微粉末を含む廃棄物を投入しなければならない。
また、シリコン微粉末を含む廃棄物を貯蔵したタンクもしくはピットに他廃棄物を投入する際は、他廃棄物のpHを測定し、10未満であればその他廃棄物を投入する。
pHが10以上の他廃棄物を投入する場合は、予めシリコン微粉末を含む廃棄物が貯蔵されているタンクもしくはピットの内容物をサンプリングし、投入しようとする他廃棄物とタンクもしくはピットの内容物とを試験的に複数の混合割合で混合し、混合物のpHが10未満となる混合割合を見出した後、pH10以上の他廃棄物を所定量均一になるように投入しなければならない。
【0052】
一旦貯蔵タンクもしくはピットに貯蔵されたシリコン微粉末を含む廃棄物は、焼却する廃棄物混合物の発熱量の変動幅を少なくし、焼却設備の円滑な運転を図るために、更に他の廃棄物と混合した後、焼却しても良い。
この際は、混合する廃棄物のpHを測定し、pHが10以上の廃棄物を混合するときは、前記のように混合試験を行い、混合物のpHが10未満となる混合割合を見出した後、pH10以上の他の廃棄物を所定量均一に混合しなければならない。
【0053】
本発明においては、このようにタンクもしくはピットに貯蔵されたシリコン微粉末を含む廃棄物もしくは、更に発熱量の調整のため他廃棄物と混合されたシリコン微粉末を含む廃棄物混合物は800℃以上の温度で焼却してシリコン微粒子の温度が800℃以上となるように焼却処分を行わなければならない。
実際に焼却設備で焼却処分を行う場合には、具体的には、例えば、焼却設備の燃焼室の出口温度を計測して800℃以上となるように制御して、燃焼ガスの滞留時間が約1秒〜約4秒で固形分の滞留時間が数十(分)〜2時間で焼却処分を行う例を挙げることができる。
【0054】
後述する実施例1に示したように、シリコン微粉末を含む廃棄物を燃焼室中の出口温度を800℃以上で焼却することにより、焼却残渣をアルカリと混合しても反応を起こさない。
【0055】
シリコン微粉末を含む廃棄物を燃焼室の出口温度を800℃以上で焼却すればシリコンの水およびアルカリに対する反応性は無くなり、焼却残渣(焼却灰)として埋立処分場に投入されて、仮にアルカリ性の廃棄物と混合されても水素ガス発生、引火・爆発事故は起こらない。
【0056】
焼却設備の形式はストーカ式焼却設備、流動床式焼却設備、回転式焼却設備などいずれの形式の焼却設備も用いることが出来る。
【0057】
シリコン微粉末を含む廃棄物の内、ワイヤーソーを用いてシリコンインゴットをスライスしシリコンウエハーを切り出す工程より発生する汚泥は、切削油に切削粉であるシリコン微粉末および砥粒が分散した泥状の廃棄物(以下シリコン汚泥と記す)であり、3,000〜8,000Kca/Kg程度の発熱量を有するため燃料組成物として用いることが出来る。
【0058】
本発明において、シリコン汚泥を燃料組成物として使用する際の燃焼温度は800℃以上で行う必要がある。800℃未満の温度で燃焼すると焼却残渣に含まれるシリコン微粉末に水およびアルカリとの反応性が残るため好ましくない。
【0059】
シリコン汚泥をセメント焼成用燃料組成物として用いた場合、焼却残渣として残るシリコン酸化物および砥粒酸化物がセメント原料として利用できるため好ましい。
【0060】
更に、シリコン微粉末を含む廃棄物と他廃棄物を混合して発熱量を調整して液体燃料(以下液体燃料組成物と記す)を製造することもできる。
シリコン微粉末を含む廃棄物と混合する他廃棄物のpHを測定し、pHが10以上の廃棄物に関しては混合試験を行い、混合物のpHが10未満となるようにpHが10以上の他廃棄物の添加量を決定しなければならない。
【0061】
本発明において、シリコン微粉末を含む廃棄物と混合して液体燃料組成物を製造する他廃棄物としては、特に限定はしないが、鉱物系廃油、廃動植物性油、廃溶剤、廃洗浄油、廃潤滑油、廃圧延油、廃インキ、廃塗料、廃脂肪酸などの廃油、有機性汚泥、下水道汚泥、上水道汚泥、活性汚泥、ベントナイト汚泥、無機性汚泥、排水処理汚泥、タンクスラッジなどの汚泥、有機廃酸、無機廃酸などの廃酸、乳製品精製残渣、ビール粕、でんぷん粕などの動植物性残渣などの液体廃棄物および電気集塵機捕集ダストなどの粒径の小さな粉体廃棄物が好適である。
【0062】
これらの他廃棄物には、油分、水分、固形分の内1種もしくは2種以上が含まれており、シリコン汚泥と混合して液体燃料組成物を製造する際に、液体燃料組成物の油分と水分が分離するような場合には乳化剤を用いて乳化することができる。
【0063】
液体燃料組成物の水と油の乳化を行うには、一般に乳化剤として使用される界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの陰イオン性界面活性剤、脂肪酸4級アンモニウム塩などの陽イオン性界面活性剤、イミダゾリウムベタインなどの両性界面活性剤などを用いて乳化させてもよい。また、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、ポリ燐酸ナトリウムなどのアルカリ性物質を加えて乳化させてもよい。更に、乳化剤とアルカリ性物質を併用して乳化を行うこともできる。
乳化の際に使用するアルカリ性物質の量は液体燃料組成物のpHが10以上にならないようにしなければならない。
【0064】
このようにして得られた液体燃料組成物は通常、タンクに貯蔵された後、配管輸送されて燃焼炉に送られ噴霧燃焼される。
液体燃料組成物には油分の他に水分も含まれている場合があり、これら液体成分に固形分であるシリコン微粉末、砥粒、廃棄物に含まれる固形分が分散されている。
【0065】
シリコン微粉末の比重は2.4であり、砥粒が炭化珪素である場合はその比重が3であり、油および水の比重0.8〜1と比べて大きいため、貯蔵中、タンク下部および配管下部に沈降する。更に廃棄物に含まれる固形分もその比重および粒径に応じて沈降する。特に配管下部に沈降した固形分は配管の閉塞を起こし、液体燃料組成物としての使用に大きな支障をきたす。
【0066】
そこで液体燃料組成物の固形分の沈降を防ぎ、燃料として好適に使用するためには液体燃料組成物に静止時など剪断速度(sec-1)が小さいか0の場合には粘度が高くなり、貯蔵タンクおよび配管内などでの固形分の沈降や浮上を防ぎ、一方、配管輸送時や噴霧燃焼時など剪断速度(sec-1)が大きくなると前記液体燃料組成物の粘度が低下して容易に配管輸送、噴霧燃焼を行うことが出来るようにチキソトロピー性を付与することが好ましい。このようなチキソトロピー性を付与することにより静止時には粘性が高くなり、貯蔵タンクおよび配管内での固形分の沈降や浮上を防ぐことが出来る。一方、配管輸送時には粘性が低くなり容易に配管輸送、噴霧燃焼を行うことが出来る。
【0067】
液体燃料組成物が貯蔵中などの静止状態では極端に粘度が高く、配管輸送、噴霧燃焼時などの流動時には粘度が低くなり、またこれを繰り返しても静止状態では再び極端に粘度が高くなり、配管輸送、噴霧燃焼時などの流動時には粘度が低くなるようないわゆるチキソトロピー性を組成物に対して付与するために、変性材料を所定量含有させることが好ましい。
【0068】
本発明で用いる変性材料としては、具体的には例えば、フッ素四珪素雲母、モンモリナイト、酸化第二鉄、五酸化バナジウム、白土類、セルロース、シリカ粉末、炭酸マグネシウム、ホワイトカーボン、スメクタイト、ポリアマイド、12―ヒドロキシステアリン酸、ジベンジリデンソルビトール、ポリアクリル酸誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどセルロース誘導体、ベントナイト、キサンタンガム、グアガム、ウエランガムなどの多糖類およびその誘導体、ポリエーテルエステル型界面活性剤、金属セッケン、酸化ポリエチレンワックス、高級アルコール、アマニ油、水添ひまし油、ろう類、溶剤型クロロプレンゴムなどを挙げることができる。これら変性材料は単独もしくは2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0069】
本発明においては、これらの変性材料が、前記廃棄物中の固形分や液体成分にあらかじめ含まれている場合は、それらをそのまま本発明における変性材料として使用することができる。
【0070】
前記変性材料の配合量の具体例としては、液体燃料組成物の組成物全体に対して好ましくは0.05〜20質量%、さらに好ましくは0.1〜15質量%、特に好ましくは0.5〜10質量%含まれる例を挙げることができる。0.05質量%未満では、変性材料の種類や変性特性および粒度にもよるがチキソトロピー性を付与できない恐れがあり、また20質量%を超えると流動時の粘度が5,000センチポイズを超え、配管圧送などが困難となる恐れがある。
【0071】
以上のようにして得られた本発明のチキソトロピー性を有する液体燃料組成物は、芝浦システム(株)製単一筒型回転粘度計(型式VS−A)を用いて、20℃において回転数が6回転/分(1.48せん断速度(sec-1))の粘度が好ましくは2,000〜50,000センチポイズ、さらに好ましくは3,000〜30,000センチポイズ、特に好ましくは5,000〜20,000センチポイズであり、更に回転数が60回転/分(14.8せん断速度(sec-1))の粘度が、6回転/分の粘度の1/10以下になるように調整することが好ましい。
【0072】
20℃において回転数が6回転/分(1.48せん断速度(sec-1))の粘度が2,000センチポアズ未満であると液体燃料組成物の貯蔵中に固形分の沈降分離が起こる恐れがあり、また50,000センチポアズを超えると60回転/分(14.8せん断速度(sec-1))での粘度が5,000センチポアズ以上となり、配管圧送や噴霧燃焼などが困難となる。回転数が60回転/分の粘度が、6回転/分の粘度の1/10を超えると配管圧送や噴霧燃焼などが困難となる。
【0073】
更に本発明のチキソトロピー性を有する液体燃料組成物を使用するためには、噴霧時の安定燃焼が必要であり、拡散火炎燃焼の安定化のために発熱量を3,000Kcal/Kg以上とすることが好ましい。
【0074】
このようにして製造された液体燃料組成物は特にその用途は限定されないが、セメント焼成用燃料、製紙ボイラー用燃料、廃棄物焼却用燃料として好適に用いられる。
特に、セメント焼成用燃料として用いた場合、焼却残渣に含まれるシリコン酸化物および砥粒酸化物はセメント原料の一部として再資源化されるため好適である。
【0075】
液体燃料組成物を燃料として使用する際には、焼却残渣として残るシリコン微粉末の水およびアルカリとの反応性を無くすため、燃焼温度を800℃以上で使用しなければならない。
【0076】
また、焼却処分場においてシリコン微粉末を含む廃棄物と他廃棄物を混合して焼却処分する際に、上述の様に液体燃料組成物にチキソトロピー性を与えることにより焼却が円滑に行われるため好適である。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を、実施例により具体的に説明するが、本発明は本発明の主旨を逸脱しない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に各実施例で使用したシリコン微粉末を含む廃棄物(水性シリコン汚泥、油性シリコン汚泥)およびその他の廃棄物(廃カーボン、ベントナイト汚泥、植物性廃油、鉱物性廃油、廃酢酸、廃白土、廃アルカリ)の油分含有量(質量%)、水分含有量(質量%)、固形分含有量(質量%)、発熱量(Kcal/Kg)および前記各種の他の廃棄物に含まれる変性材料名および変性材料の含有量(重量%)およびpHを示す。
【0078】
【表1】

【0079】
(実施例1)
表1に示した水性シリコン汚泥を磁製るつぼに入れ105℃に設定した乾燥機で水分を蒸発した後、無加熱(常温乾燥)のシリコン微粉末、および300、500、650、800、850℃に設定した電気炉を用で10分間加熱処理を行ったシリコン微粉末に、等量の10質量%水酸化ナトリウム水溶液(pH14)を加え、徐々に加熱して、大量の水素発生が起こる最低温度を測定した。結果を表2に示す。
表2から、シリコン微粉末を800℃以上の温度で加熱することにより、加熱残渣をアルカリと混合しても反応を起こさないことが分かる。
【0080】
【表2】

【0081】
(実施例2)
表1に示した油性シリコン汚泥400gと植物性廃油600g(pH8)を撹拌機に入れ3分間撹拌したところ均一な混合物が得られた。
本混合物のpHは8であり、混合物を1時間放置しても発熱及び水素ガス発生は起こらなかった。
【0082】
本混合物20gを磁製坩堝に入れ、加熱点火して燃焼した後、800℃に調整した電気炉に入れ10分間加熱し、冷却した残渣に等量の10質量%水酸化ナトリウム水溶液を加え、70℃に加熱したが、水素の発生は観られなかった。
【0083】
(実施例3)
表1に示した水性シリコン汚泥200g(pH7)、植物性廃油600g(pH8)、廃アルカリ100g(pH14)及び廃酢酸100g(pH4)を攪拌機に入れ3分間攪拌したが発熱及びガス発生は起こらず、均一な混合物が得られた。
【0084】
本混合物のpHは7であり、混合物を1時間放置しても発熱及び水素ガス発生は起こらなかった。
【0085】
本混合物20gを磁製坩堝に入れ、105℃に設定した乾燥機で水分を蒸発した後、800℃に調整した電気炉に入れ10分間加熱し、冷却した残渣に等量の10質量%水酸化ナトリウム水溶液を加え、70℃に加熱したが、水素の発生は観られなかった。
【0086】
(実施例4)
表1に示した油性シリコン汚泥300g、廃カーボン100g(pH9)、植物性廃油300g(pH8)、ベントナイト汚泥300g(pH8)を撹拌機に入れ、3分間撹拌したところW/O型エマルジョン状態の混合物が得られた。本混合物の発熱量は4700Kcal/Kgであった。
【0087】
本混合物の20℃の粘度を芝浦システム(株)製単一筒型回転粘度計、形式VS−A、を用い20℃の粘度を測定したところ、6回転/分では7.200センチポイズ、60回転/分では620センチポイズであり、好ましいチキソトロピー性を有している。本混合物を1Lビーカーに入れ7日間放置したが、シリコン微粉末、砥粒など固形分の沈降は観られなかった。
【0088】
本混合物20gを磁製坩堝に入れ加熱、点火して燃焼した後、800℃に調整した電気炉に入れ10分間加熱し、冷却した残渣に等量の10質量%水酸化ナトリウム水溶液を加え、70℃に加熱したが、水素の発生は観られなかった。
【0089】
(実施例5)
表1に示した油性シリコン汚泥500g、廃白土100g(pH7)、鉱物性廃油200g、廃アルカリ100g(pH14)、廃酢酸100g(pH4)を攪拌機に入れ、3分間攪拌したところW/O型エマルジョン状態の混合物が得られた。本混合物のpHは7であり1時間放置しても発熱及び水素ガス発生は起こらなかった。
【0090】
本混合物の20℃の粘度を芝浦システム(株)製単一筒型回転粘度計、形式VS−A、を用い20℃の粘度を測定したところ、6回転/分では8,600センチポイズ、60回転/分では720センチポイズであり、好ましいチキソトロピー性を有している。本混合物を1Lビーカーに入れ7日間放置したが、シリコン微粉末、砥粒など固形分の沈降は観られなかった。
【0091】
本混合物20gを磁製坩堝に入れ加熱、点火して燃焼した後、800℃に調整した電気炉に入れ10分間加熱し、冷却した残渣に等量の10質量%水酸化ナトリウム水溶液を加え、70℃に加熱したが、水素の発生は観られなかった。
【0092】
(比較例1)
表1に示した油性シリコン汚泥400gと植物性廃油500g(pH8)、廃アルカリ100g(pH14)を撹拌機に入れ2分間撹拌したところ発熱が起こりガスが発生し始めた。混合物のpHは8以上であった。
【0093】
攪拌を止め、混合物を5Lのガラス製ビーカーに移し放置したところ、約10分後には大量の水素ガスが発生し、内容物温度は95℃にまで上昇した。
【0094】
発生したガスを採取し島津製作所製ガスクロマトグラフGC14Bを用いてガス組成を分析したところ、水素ガスであった。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明のシリコン微粒子含有廃棄物の処分方法によれば、前記シリコン微粒子含有廃棄物を800℃以上で焼却すると、シリコン粒子表面にアルカリに犯されない酸化皮膜が形成されると考えられるため、その焼却残渣は水もしくはアルカリと混合しても発熱したり水素ガスが発生したりせず、引火・爆発事故を起こすことを避け、焼却残渣を安全に埋め立て処分できるという顕著な効果を奏し、
シリコン微粒子含有廃棄物を他の廃棄物と混合して焼却を行う際には、混合物のpHが10未満となるように混合すれば、前記混合物は水と混合されていても激しく反応せず、発熱したり水素ガスが発生したりせず引火・爆発事故を起こすことを避け、安全に取り扱うことができ、そして前記混合物を800℃以上の温度で焼却すると、前記のように焼却残渣を安全に埋め立て処分できるという顕著な効果を奏し、シリコン微粒子含有廃棄物を含むセメント焼成用燃料組成物、シリコン微粒子含有廃棄物を含む製紙ボイラー用燃料組成物やシリコン微粒子含有廃棄物を含む廃棄物焼却炉用燃料組成物として有効利用することができるので、産業上の利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明のシリコン微粒子含有廃棄物の処分方法の一例の工程を説明する説明図である。
【図2】本発明のシリコン微粒子含有廃棄物の処分方法の他の例の工程を説明する説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン微粒子含有廃棄物を800℃以上の温度で焼却し、その焼却残渣が水もしくはアルカリと混合しても発熱したり水素ガスが発生しないようにすることを特徴とするシリコン微粒子含有廃棄物の処分方法。
【請求項2】
シリコン微粒子含有廃棄物を他の廃棄物と混合して焼却を行う際には、混合物のpHが10未満となるように調整して混合し、前記混合物を800℃以上の温度で焼却し、その焼却残渣が水もしくはアルカリと混合しても発熱したり水素ガスが発生しないようにすることを特徴とするシリコン微粒子含有廃棄物の処分方法。
【請求項3】
シリコン微粒子含有廃棄物と他廃棄物を混合して燃料組成物を製造し、前記燃料組成物を800℃以上の温度で燃焼して有効利用することを特徴とするシリコン微粒子含有廃棄物の再資源化方法。
【請求項4】
シリコン微粒子含有廃棄物と他廃棄物を混合して製造された燃料組成物であって、前記燃料組成物のpHが10未満となるように調整されて混合されてなることを特徴とするシリコン微粒子含有廃棄物を含む燃料組成物。
【請求項5】
シリコン微粒子含有廃棄物と他廃棄物を混合して製造された燃料組成物であって、前記燃料組成物はチキソトロピー性を付与されてチキソトロピー性を有してなることを特徴とする請求項4記載のシリコン微粒子含有廃棄物を含む燃料組成物。
【請求項6】
セメント焼成用燃料組成物であることを特徴とする請求項4あるいは請求項5記載のシリコン微粒子含有廃棄物を含む燃料組成物。
【請求項7】
製紙ボイラー用燃料組成物であることを特徴とする請求項4あるいは請求項5記載のシリコン微粒子含有廃棄物を含む燃料組成物。
【請求項8】
廃棄物焼却炉用燃料組成物であることを特徴とする請求項4あるいは請求項5記載のシリコン微粒子含有廃棄物を含む燃料組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−71456(P2007−71456A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−259421(P2005−259421)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(599023107)近畿環境興産株式会社 (9)
【Fターム(参考)】