説明

シリコン粒子の製造方法

【課題】粉砕効率が高い、アルミニウムを含むシリコン粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るシリコン粒子の製造方法は、アルミニウムを含むシリコン塊を加熱して600℃以上の温度にする前処理工程と、該シリコン塊を、600℃以上の温度に保持した状態で粉砕してシリコン粒子を得る粉砕工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリコン粒子の製造方法に関し、より詳細には粉砕工程を経てアルミニウムを含有するシリコン粒子を製造するシリコン粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ICチップの封止材用フィラーや太陽電池用シリコンなどの原料として、金属シリコンが用いられる。このような金属シリコンの製造方法として、ハロゲン化ケイ素を金属アルミニウムにより還元する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。金属シリコンは、通常、粉砕工程を経て粒状で製品化または後段の工程に供されるのが一般的である。
【0003】
従来より、シリコン粒子を作製するための粉砕方法について、いくつかの提案がなされている。例えば、特許文献2には、比較的大きいシリコン粗粒を高圧ガス流によって高速搬送し、シリコン製ターゲット盤に衝突せしめて粉砕し、かくして所望粒径のシリコン微粒子を製造する方法が開示されている。また、特許文献3及び4には、多結晶棒状シリコンをロールクラッシャーで粉砕して所望粒径のシリコン微粒子を製造する方法が開示されている。また、特許文献5には、衝撃式粉砕機を使用して、シリコン塊を二段階で粉砕する方法、即ち衝撃式粗粉砕機による粗粉砕と衝撃式微粉砕機による微粉砕とを順次に遂行するシリコン微粒子の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−64006号公報
【特許文献2】米国特許第4,691,866号明細書
【特許文献3】特公昭63−8044号公報
【特許文献4】特公昭63−8045号公報
【特許文献5】特開平8−109013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のいずれの方法においても、粉砕効率の向上が求められる。粉砕効率が低いと、生産性が上がらない。また、粉砕効率が低いために粉砕を何度も繰り返すと、装置材料の磨耗などに伴う不純物の混入機会が増え、得られるシリコン粒子の汚染が問題になる。
【0006】
本発明は、粉砕効率が高い、アルミニウムを含むシリコン粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るシリコン粒子の製造方法は、アルミニウムを含むシリコン塊を加熱して600℃以上の温度にする前処理工程と、該シリコン塊を、600℃以上の温度に保持した状態で粉砕してシリコン粒子を得る粉砕工程と、を有する。
【0008】
本発明は、上記前処理工程において、好ましくは、上記シリコン塊を不活性ガス雰囲気中で加熱する。
【0009】
本発明は、上記粉砕工程において、好ましくは、上記シリコン塊を不活性ガス雰囲気中で粉砕する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシリコン粒子の製造方法によると、効率よく粉砕を行なうことができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るシリコン粒子の製造方法について、好ましい実施形態を例示して詳細に説明する。本発明のシリコン粒子の製造方法は、アルミニウムを含むシリコン塊を加熱して600℃以上の温度にする前処理工程と、前記シリコン塊を、600℃以上の温度に保持した状態で粉砕してシリコン粒子を得る粉砕工程と、を有する。
【0012】
(前処理工程)
前処理工程に供されるシリコン塊(以下、「原料シリコン塊」とも言う)は、アルミニウムを含むものであり、本発明に係る粉砕工程における粉砕効率の向上の効果が十分に得られるという点で、好ましくは210重量ppm以上、より好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは6重量%以上のアルミニウムを含有する。また、シリコン塊におけるアルミニウムの含有量は15重量%以下であることが好ましい。15重量%を超えると、アルミニウム含有シリコン塊を加熱した際、溶解したアルミニウムが加熱保持容器に比較的多量に流出し、加熱保持容器を汚染するため好ましくない。
【0013】
原料シリコン塊としては、アルミニウムが含まれているものであれば特に限定されないが、たとえば、ハロゲン化ケイ素を金属アルミニウムで還元して得られる還元シリコンが適している。その他、いわゆるイレブンナイン以上の高純度のシリコンと金属アルミニウムとの混合融液を冷却凝固して得られるシリコン塊も本発明の製造方法で用いられる原料シリコン塊として適している。混合融液に混合される金属アルミニウムとしては、通常アルミニウムとして市販されている電解還元アルミニウム、あるいは電解還元アルミニウムを偏析凝固法、三層電解法などの方法によって精製して得られる高純度アルミニウムが用いられる。不純物による汚染が少ない原料シリコン塊が得られる点で、純度99.9重量%、さらには99.95重量%以上の高純度アルミニウムが好ましく用いられる。本明細書における金属アルミニウムの純度は、金属アルミニウム100重量%から、鉄、銅、ガリウム、チタン、ニッケル、ナトリウム、マグネシウムおよび亜鉛の合計含有量を差引いて求められる純度である。
【0014】
前処理工程は、原料シリコン塊を、電気炉などの加熱手段で加熱することにより実施される。前処理工程は、大気雰囲気中、不活性ガス雰囲気中等で行なうことができる。アルミニウムの酸化を抑制する点で、不活性ガス雰囲気中で加熱することが好ましい。不活性ガスとしては、アルゴン、窒素などが挙げられる。前処理工程においては、原料シリコン塊を加熱して、600℃以上の温度にする。好ましくは800℃以上でかつ1350℃以下の温度にする。1350℃を超えると、シリコン塊中のアルミニウムの含有量にもよるが、シリコン塊中のシリコン成分が溶解してしまう可能性があるため好ましくない。
【0015】
(粉砕工程)
粉砕工程は、前処理工程で加熱したシリコン塊を、前処理工程における加熱後の温度範囲と同じく、600℃以上、好ましくは800℃以上でかつ1350℃以下に保持した状態で粉砕することで実施される。1350℃を超えると、シリコン塊中のアルミニウムの含有量にもよるが、シリコン塊中のシリコン成分が溶解してしまう可能性があるため好ましくない。
【0016】
シリコン塊を粉砕する粉砕方法は、特に限定されない。粉砕方法として、粉砕機を用いた機械作業による粉砕方法とハンマーを用いた手作業による粉砕方法とがあり、本発明に係る粉砕工程においては、いずれであってもよい。機械作業による粉砕方法を採用する場合、粉砕機としては、たとえば、衝撃式粉砕機、打撃式粉砕機、圧粉砕機などを使用することができる。。粉砕工程は、大気雰囲気中、不活性ガス雰囲気中等で行なうことができる。アルミニウムの酸化を抑制する点で、不活性ガス雰囲気中で行なうことが好ましい。粉砕工程により、シリコン塊を粉砕してシリコン粒子が得られる。粉砕工程において、好ましくは粒径5mm以下のシリコン粒子を得る。
【0017】
(その他)
粉砕後のシリコン粒子はそのまま手を加えずに全量採取してもよいし、サイクロンなどの分級機や篩を用いて粒径ごとに区別して採取する分級工程を行なってもよい。分級工程の後、または分級工程を経ずに酸洗浄などの洗浄を行なう洗浄工程を行なってもよい。洗浄工程においては、好ましくは粒径50μm以上でかつ2mm以下のシリコン粒子を供する。粒径50μm未満では、酸洗浄や水洗をする場合、洗浄液と一緒にシリコン粒子も流れてロスしてしまう可能性があり、またシリコン粒子のハンドリングが困難であり好ましくない。
【0018】
本発明にかかる製造方法によると、効率よい粉砕を経てシリコン粒子が得られるので、生産性の向上に寄与し、また粉砕工程により生じるシリコン粒子の汚染を抑制することができる。
【実施例】
【0019】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例によって限定されるものではない。
【0020】
(実施例1)
高純度ポリシリコン(株式会社トクヤマ製)中に、5重量%の含有量となるように金属アルミニウムを添加して溶解し、融液を冷却凝固することによって、アルミニウムを含むシリコン鋳塊を作製した。次に、このシリコン鋳塊を電気炉内に仕込み、窒素雰囲気中で炉内を昇温し、シリコン鋳塊の温度が700℃となるまで加熱した(以下、このときの温度を「加熱温度」とする)。その後、電気炉の加熱を制御してシリコン鋳塊を700℃に3時間保持した(以下、ここでの温度を「保持温度」とする)。
【0021】
次に、加熱したシリコン鋳塊50gを電気炉内から取り出し、取り出し後、極めて早急に粉砕処理台にシリコン鋳塊をセットし、表面温度を測定した後(以下、このときの温度を「粉砕温度」とする)、打撃粉砕した。ハンマーを用いた手作業による打撃粉砕を行なった。腕の振り上げ位置を所定の位置とし、またハンマーの振り下ろし速度を一定の速度として、全ての打撃における打撃付加応力がほぼ同じになるようにした。シリコン鋳塊50gの全量が、粒径4mm以下のシリコン粒子となるまで打撃を行なった。そのときの打撃回数(以下、「全打撃回数」とする)をカウントした。全打撃回数は5回であった。
【0022】
(実施例2)
加熱温度および保持温度を800℃とした点以外は、実施例1と同様にして加熱したシリコン鋳塊を用意した。
【0023】
加熱したシリコン鋳塊50gについて、実施例1と同様にして、粉砕温度を測定し、打撃粉砕を施し、シリコン鋳塊50gの全量が、粒径4mm以下のシリコン粒子となるまで打撃を行なった。そのときの打撃回数をカウントした。全打撃回数は3回であった。
【0024】
(実施例3)
加熱温度および保持温度を1000℃とした点以外は、実施例1と同様にして加熱したシリコン鋳塊を用意した。
【0025】
加熱したシリコン鋳塊50gについて、実施例1と同様にして、粉砕温度を測定し、打撃粉砕を施し、シリコン鋳塊50gの全量が、粒径4mm以下のシリコン粒子となるまで打撃を行なった。そのときの打撃回数をカウントした。全打撃回数は2回であった。
【0026】
(実施例4)
高純度ポリシリコン中に、10重量%の含有量となるように金属アルミニウムを添加した点以外は、実施例1と同様にして加熱したシリコン鋳塊を用意した。
【0027】
加熱したシリコン鋳塊50gについて、実施例1と同様にして、粉砕温度を測定し、打撃粉砕を施し、シリコン鋳塊50gの全量が、粒径4mm以下のシリコン粒子となるまで打撃を行なった。そのときの打撃回数をカウントした。全打撃回数は4回であった。
【0028】
(比較例1)
加熱温度および保持温度を500℃とした点以外は、実施例1と同様にして加熱したシリコン鋳塊を用意した。
【0029】
加熱したシリコン鋳塊50gについて、実施例1と同様にして、粉砕温度を測定し、打撃粉砕を施し、シリコン鋳塊50gの全量が、粒径4mm以下のシリコン粒子となるまで打撃を行なった。そのときの打撃回数をカウントした。全打撃回数は9回であった。
【0030】
(比較例2)
シリコン鋳塊を加熱しなかった点以外は、実施例1と同様にしてシリコン鋳塊を用意した。
【0031】
用意したシリコン鋳塊50gについて、実施例1と同様にして、打撃粉砕を施し、シリコン鋳塊50gの全量が、粒径4mm以下のシリコン粒子となるまで打撃を行なった。そのときの打撃回数をカウントした。全打撃回数は12回であった。
【0032】
(比較例3)
高純度ポリシリコン中に、金属アルミニウムを添加しなかった点、加熱温度および保持温度を1000℃とした点以外は、実施例1と同様にして加熱したシリコン鋳塊を用意した。
【0033】
加熱したシリコン鋳塊50gについて、実施例1と同様にして、粉砕温度を測定し、打撃粉砕を施し、シリコン鋳塊50gの全量が、粒径4mm以下のシリコン粒子となるまで打撃を行なった。そのときの打撃回数をカウントした。全打撃回数は12回であった。
【0034】
実施例1〜4、および比較例1〜3の結果を表1に表す。なお、以下の評価基準にしたがって粉砕し易さの評価を行なった。
【0035】
◎:全打撃回数が1〜3回
○:全打撃回数が4〜6回
△:全打撃回数が7〜9回
×:全打撃回数が10回以上
【0036】
【表1】

【0037】
表1に示すように、実施例1〜4は、6回以下の打撃で、シリコン鋳塊の全量が粒径4mm以下のシリコン粒子となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムを含むシリコン塊を加熱して600℃以上の温度にする前処理工程と、
前記シリコン塊を、600℃以上の温度に保持した状態で粉砕してシリコン粒子を得る粉砕工程と、を有するシリコン粒子の製造方法。
【請求項2】
前記前処理工程において、前記シリコン塊を不活性ガス雰囲気中で加熱する、請求項1に記載のシリコン粒子の製造方法。
【請求項3】
前記粉砕工程において、前記シリコン塊を不活性ガス雰囲気中で粉砕する、請求項1または2に記載のシリコン粒子の製造方法。