説明

シリコーンオイル制御塗料

【課題】
本発明は、建造物の外壁等屋外部に施工したシリコーンシーリング材の内部から表面に滲み出し、周囲の建材等に付着・汚染するシリコーンオイルの滲み出を防ぐシリコーンオイル制御塗料である。さらに付着有機物を分解して汚染を防止することが出来る、シリコーンオイルの透過防止機能を持つ耐水性の光触媒塗膜を形成するシリコーンオイル制御塗料を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明のシリコーンオイル制御塗料は、トルエンとキシレン、メタノール、エタノール、酸化チタン、スメクタイト、アモルファスシリカ、アルコキシシロキサンおよびシリコーンレジンからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の外壁等屋外部分に施工したシリコーンシーリング材から滲み出るシリコーンオイルを制御する塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明においてシリコーンオイルとは、シリコーンシーリング材の中に存在している未硬化の低分子量のジメチルポリシロキサンをさす。
【0003】
従来、建造物の外部の建材の接合部には、雨水の侵入を防ぐためシリコーンシーリング材が充填されてきた。しかし、シリコーンシーリング材はゴム状に硬化した後、内部からシリコーンオイルが滲み出る。表面に滲み出たシリコーンオイルは周囲の建材に拡散・浸透し、その上に汚物が付着するため外壁の汚れが常態化している。
【0004】
シリコーンオイルが付着・浸透した部分は静電気を帯びて、浮遊塵を吸着するため汚物が付着しやすい。この汚染のメカニズムは20年以上前に解明され、その対応策として付着汚物を各種の洗剤で洗浄していたが、シリコーンオイルを完全に除去することが出来なかった。そこでシリコーンオイルの滲み出を防ぐプライマーや塗料が開発されたが、短期間で塗膜にクラックが入るため効果は長く続かなかった。又、シリコーンオイルの滲み出を防ぐコーテイング材が開発されたが、長期間雨に当たるとシリコーンオイルが滲み出る欠点があるため実用化されていない。
【0005】
シリコーンオイルの滲み出を防ぐ塗料に関する公知発明には、次の特許文献が挙げられる。
【特許文献1】特開2004−123993
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、建造物の外壁等屋外部に施工したシリコーンシーリング材から滲み出るシリコーンオイルの拡散と汚染を防ぐ、耐水性の塗膜を形成するシリコーンオイル制御塗料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、石油系溶剤とメタノール、エタノール、酸化チタン、スメクタイトのほかアモルファスシリカ、アルコキシシロキサン、シリコーンレジン、からなるシリコーンオイルの透過防止機能を持つ耐水塗膜を形成するシリコーンオイル制御塗料である。
【0008】
前記の石油系溶剤がトルエンの他キシレン、ミネラルスピリット、ヘキサン、nーブタン、nーデカンのいずれかを構成成分とするシリコーンオイル制御塗料である。
【0009】
本発明のシリコーンオイル制御塗料の組成は、いずれも重量%(以下、単に%と記す。)で、酸化チタン0.5〜1.5、メタノール1.0〜4.0、エタノール1.0〜4.0、スメクタイト1.0〜3.0、およびアモルファスシリカ0.5〜2.5、アルコキシシロキサン0.5〜2.5、シリコーンレジン2.0〜5.0、残余が石油系溶剤である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシリコーンオイル制御塗料をシーリング材に塗布すると、シリコーンオイル制御塗料は表面に存在するシリコーンオイルを包含して硬化し塗膜を形成する。したがって、その後塗膜に雨が当たってもシリコーンオイルの滲み出はほとんどない。又、シリコーンオイル制御塗料の塗膜は無機物だけで構成された絶縁体であるため、静電気を帯びず、浮遊塵を吸着しない。シリコーンオイル制御塗料が形成した緻密な塗膜はシリコーンシーリング材の内部から滲み出るシリコーンオイルの透過を抑制し、周囲への拡散を防ぐ。
【0011】
シリコーンオイル制御塗料が硬化した塗膜中の酸化チタンは、表面に接触したシリコーンオイルや有機物を光触媒反応により分解するため汚物が固着しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
シリコーンオイル制御塗料中の酸化チタンの配合量を0.5%よりも少なくすると有機物を分解する機能が低下し、1.5%を越えると塗膜の白化が激しくなる。
【0013】
スメクタトの配合量を1.0%未満にすると塗膜が薄くなり、3%を越えると塗膜にクラックが入るため、いずれもシリコーンオイルの滲み出を防止する機能が低下する。
【0014】
アモルファスシリカとアルコキシシロキサンおよびシリコーンレジンの合計量を4%以下にするとシリコーンオイルの透過防止機能と耐水性が低下する。
【実施例】
【0015】
以下に、実施例をもって本発明をさらに説明する。
【0016】
つぎのとおりの配合によるシリコーンオイル制御塗料を調製した(以下、SOP−Aと表現する)。
キシレン 3.0%
メタノール 2.8
エタノール 2.8
酸化チタン 0.5
スメクタイト 1.0
アルコキシシロキサン 1.2
アモルファスシリカ 1.2
シリコーンレジン 3.0
トルエン 残余
【0017】
SOP−Aをシリコーンシーリング材に塗布すると、指蝕乾燥時間は3秒である。
【0018】
SOP−Aをシリコーンシーリング材の表面に塗布すると、表面に滲み出ているシリコーンオイルをも取り込んで硬化するため塗布面にはシリコーンオイルが存在しなくなる。そのため塗布面は常時乾燥しており、静電気を帯びず浮遊塵を吸着しない。
【0019】
上記の塗布面と未塗布のシリコーンシーリング材にシリコーンオイル(粘度100cst)をそれぞれ1.4mg/cmを滴下した。その結果、未塗布部に滴下したシリコーンオイルは70時間後内部に浸透吸収され表面に存在しなくなった。一方、SOP−Aの塗布面に滴下したシリコーンオイルは170時間以上表面に存在していた。SOP−Aの塗膜は未塗布部分よりシリコーンオイルの浸透・透過を100時間以上長く防止した。
【0020】
SOP−Aをガラスに塗布して硬化させた塗布面にシリコーンオイル(100cst)を0.7mg/cm2塗布し10mW/cmの紫外線(波長360nm)を照射した。その結果、次第にシリコーンオイルの粘度が増し120日(2.880時間)後にはすべて分解され白い粉末になったことを目視により確認した。
【0021】
SOP−Aをシリコーンシーリング材に塗布して硬化させた試料をメチレンブルーで着色した水中に入れ、波長360nmの紫外線(14mW/cm)を照射した。その結果、二時間後にメチレンブルーは完全に分解され脱色された。SOP−Aに配合した酸化チタンの光触媒反応で試料に接触した有機物を分解したことを示唆している。
【0022】
上記の試料を水に1000時間浸漬した後、指で擦っても剥離がなく塗膜の接着力の低下がない。塗膜は加水分解されず耐水性が持続していることを証明した。
【0023】
上記の試料を曲率半径1cmで百回折り曲げたが、目視では塗膜にクラックは発生しない。SOP−Aは微粒子の状態でシリコーンシーリング材の表面と結合しているため下地の変形に追従し剥離しないものと推測される。
【0024】
SOP−Aの一成分であるキシレンを、ミネラルスピリットに替えて調製したSOP−Bを用い、シリコーンシーリング材に塗布した結果、同様の効果をもって表面を硬化させることができた。
【0025】
同様に、キシレンを、それぞれn−ブタン、n−デカン、ヘキサンに替えて調製したSOP−C、SOP−D、SOP−Eについても、ともに前記同様の効果が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油系溶剤とメタノール、エタノール、酸化チタン、スメクタイトのほかアモルファスシリカ、アルコキシシロキサン、シリコーンレジンを含むことを特徴とするシリコーンオイル制御塗料。
【請求項2】
石油系溶剤がトルエンの他キシレン、ミネラルスピリット、ヘキサン、n−ブタン、n−デカンのいずれかを含むことを特徴とする請求項1記載のシリコーンオイル制御塗料。
【請求項3】
いずれも重量%で酸化チタンが0.5〜1.5、メタノールが1.0〜4.0、エタノールが1.0〜4.0、スメクタイトが1.0〜3.0およびアモルファスシリカが0.5〜2.5、アルコキシシロキサンが0.5〜2.5、シリコーンレジンが2.0〜5.0残余が石油系溶剤からなることを特徴とする請求項1または2に記載のシリコーンオイル制御塗料。

【公開番号】特開2006−117778(P2006−117778A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−306476(P2004−306476)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(591106347)有限会社ケイ・ビー・エル営繕センター (3)
【Fターム(参考)】