説明

シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを滅菌する方法

【課題】シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを滅菌する方法を提供すること。
【解決手段】本発明によるシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを滅菌する方法は、1以上のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、ガンマ放射線または電子ビーム放射線のような高エネルギー放射線に露出させることを含むものである。また、このようなシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを収容した、滅菌されたコンタクトレンズパッケージも開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
この出願は、2005年11月9日に提出された米国仮出願第60/735,407号の利益を主張し、その内容を本明細書の一部として援用する。
本発明は、コンタクトレンズの製造およびパッケージングに関する。更に特定すれば、本発明は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを滅菌する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズは、視力を改善するために首尾良く使用されてきている。コンタクトレンズは、ハードコンタクトレンズまたはソフトコンタクトレンズに分類することができる。剛性のガス透過性コンタクトレンズは、ハードコンタクトレンズの一例である。ヒドロゲルコンタクトレンズは、ソフトコンタクトレンズの一例である。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、コンタクトレンズの着用者が、非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに比較して、彼等の眼にこのようなレンズを長時間着用できることによって普及してきている。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの例は、アキュブーアドバンス(Acuvue Advance)およびアキュブーオアシス(Acuvue Oasys)の商標の下でジョンソンアンド・ョンソン社から、フォーカスナイトアンドデイ(Focus Night and Day)およびO2オプティックス(O2 Optix)の商標でチバ・ビジョン社から、またピュア・ビジョンの商標でバウシュ&ロンブ社(Bausch & Lomb)から入手可能である。アキュブーアドバンスは、ガリフィルコン(galyfilcon)Aの合衆国適合名(USAN)を有し、アキュブーオアシスはセノフィルコンAのUSANを有し、フォーカスナイトアンドデイレンズはロトラフィルコン(lotrafilcon)AのUSANを有し、O2オプティックスレンズはロトラフィルコンBのUSANを有し、またピュアビジョンレンズはバラフィルコン(balafilcon)AのUSANを有している。現在のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの作製に使用される材料の追加の例には、米国特許第6,867,245号に開示された材料が含まれる。
【0003】
シリコーンンヒドロゲルコンタクトレンズを含むコンタクトレンズは、製造プロセスにおいて、時にはブリスターパックと称されるプラスチック容器内に密封包装されることが多い。このブリスターパックは、屡々、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン等を含むが、これらに限定されない)に基づく材料等の、ポリマー材料を含み得る非極性樹脂で形成されている。
【0004】
パッケージングされたコンタクトレンズを頒布する前に、該パッケージングされたコンタクトレンズは滅菌される。予備パッケージングされたコンタクトレンズを滅菌するための共通の方法は、コンタクトレンズを収容したパッケージをオートクレーブ処理することである。例えば、コンタクトレンズをある容積の液体中に収容したブリスターパックは、タンパク質および脂質複合体を変性させることにより、シールされたブリスターパック中に存在する微生物を死滅させるために、加圧蒸気(例えば約121℃で存在する蒸気)を使用して滅菌することができる。コンタクトレンズをオートクレーブ処理することの一つの欠点は、望ましい程度の滅菌を得るために比較的高温(例えば121〜132℃)が必要とされ、従って、この高温および高圧に耐えることができる材料の数が制限されることである。
【0005】
非コンタクトレンズ製品を滅菌する他の方法には、乾燥加熱(例えば140〜170℃)、エチレンオキシド露出、および放射線(例えば、ガンマ放射線および加速された電子)が含まれる。これら方法の幾つかは、コンタクトレンズおよび該コンタクトレンズを含むブリスターパックを滅菌するためには使用できない。例えば、エチレンオキシドは乾燥製品にしか適用できないので、ブリスターパック中のコンタクトレンズを滅菌するためには使用できない。コンタクトレンズは、滅菌するとき通常はブリスターパック中の液体の中に与えられるので、エチレンオキシドは実行可能な選択肢ではない。加えて、放射線を使用して製品を滅菌するための設備は精巧で、製造および保守のための費用が嵩むため、放射線はコンタクトレンズを滅菌するためには使用されたことがない。
【0006】
加えて、高エネルギー滅菌、またはガンマ線照射、電子ビーム(eビーム)放射線等の放射線は、ポリマーの変化(例えば分子量ロス、架橋等)を生じる可能性があり、かかる変化はポリマー製品には望ましくないであろう。また、製品が水和した状態で放射線に露出されるときには、これらの変化は更に苛酷になることが知られている。
【0007】
従って、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのような、ポリオレフィンに基づくブリスターパック等の密封包装中に提供することができるコンタクトレンズを滅菌するための、新たな方法が未だ必要とされている。
【発明の開示】
【0008】
本発明の方法およびシステムは、この必要性および他の必要性に対処しようとするものである。本発明の方法は、ブリスターパックおよび同様の容器の中に与えられたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、ガンマ線または電子ビーム(eビーム)放射線のような放射線を使用して、該コンタクトレンズの材料特性を有害に変化させることなく、滅菌または最終的に滅菌するために実施することができる。例えば、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、該レンズに対して望ましい視力矯正または視力改善を与えること、およびそれを必要としている人が実質的な副作用なく着用できることを可能にする1以上の性質(望ましい大きさ、形状、透明度、耐磨耗性、酸素透過能、弾性などを含む)を保持している。例えば、ガンマ放射線またはeビーム放射線で最終滅菌されているシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズはやはり、該レンズを着用している患者に対して実質的な不快感または他の副作用を生じることなく、患者の視力を改善することができる。本発明の方法は、シリコーンヒドロゲルレンズの性質に実質的に悪影響を与えることなく、レンズおよび/またはレンズパッケージ液に存在する微生物または細菌(バクテリア、酵母、黴、およびウイルスを含むが、これらに限定されない)の量を充分に減少させるための、望ましい線量の放射線を送達する。
【0009】
ここでの記述に従えば、本発明の方法は、1以上のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、ガンマ放射線またはeビーム放射線のような、滅菌量の高エネルギー放射線に露出させることを含んでいる。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、パッケージまたは容器内に準備されてよい。一定の実施形態において、高エネルギー放射線は、プラスチックブリスターパック、例えばポリオレフィンに基づくブリスターパックの中に配置された、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを滅菌するために使用される。加えて、本発明の方法は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのバッチを露出させることを包含する。例えば、ある容積の液体中に含まれるコンタクトレンズのように、各ブリスターパックが一つのコンタクトレンズを含む密封されたブリスターパックのバッチを、高エネルギー放射線に露出させて、コンタクトレンズの全体のバッチを滅菌することができる。
【0010】
本発明はまた、本発明の方法を使用して滅菌されたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ、並びに、このようなコンタクトレンズを含むパッケージ、およびに本発明の方法を使用して、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを滅菌および製造するためのシステムに関する。
【0011】
ここに記載した何れかの特徴または特徴の組合せは、文脈、本明細書、および当業者の知識から明らかなように、このような組合せに含まれる特徴が相互に矛盾しない限り、本発明の範囲内に含まれるものである。加えて、何れかの特徴または特徴の組み合わせは、本発明の何れかの実施形態から特に排除されてもよい。本発明の追加の利点および側面は、以下の詳細な説明、図面および特許請求の範囲において明らかである。
【0012】
(発明の詳細な説明)
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造するための、新規な方法が発明された。更に詳細に言えば、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを滅菌するための方法が発明された。本発明の方法は、1以上のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを高エネルギー放射線に露出させることを含んでおり、該高エネルギー放射線にはガンマ放射線または電子ビーム放射線(eビーム放射線)が含まれるが、これらに限定されない。高エネルギー放射線への露出は、コンタクトレンズの1以上の性質に実質的な悪影響を与えることなく、該コンタクトレンズを滅菌するために効果的である。
【0013】
少なくとも一つの実施形態において、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、滅菌に先だって、密封または「予備密封」された容器内の中に準備される。例えば、この方法は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、密封された容器の中に準備する工程を含んでいる。この密封された容器は、その製造に関して、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズをパッケージングするための何れか適切な材料でできていてよい。例えば、密封された容器は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを収容するためのキャビティーまたはチャンバ、および該キャビティーまたはチャンバを覆って設けられたシールを有するプラスチックベース部材を含んでよい。一定の実施形態においては、当業者が理解するように、前記密封された容器はブリスターパックであると理解されてよい。前記高エネルギー放射線への露出は、ブリスターパックの構造、または物理的一体性および多孔性等のブリスターパックの性質に対して実質的に悪影響を及ぼすことなく、該ブリスターパックの中に収容された内容物を滅菌することにおいて有効である。
【0014】
当該シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、前記容器の中のある容積の液体の中に準備されてよい。例えば、該シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、このシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを滅菌状態で保存するのに適した、緩衝された食塩水溶液のようなある容積の食塩水溶液中に準備されてよい。また、該液体は表面活性剤を含んでよい。表面活性剤は、液体の表面張力を低下または減少させる物質として理解されてよい。一定のブリスターパックおよびシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの組合せにおいて、該表面活性剤は、表面活性剤を含まないパッキング液体を含む組合せと比較して、ブリスターパックへのシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの付着を低下させるのに効果的な量で与えられてよい。一定の組合せにおいて、表面活性剤は、表面活性剤を含まないパッキング液体を含む組合せと比較して、レンズ装着者によるシリコーンヒドロゲルレンズの眼科的快適性を増大させるのに有効な量で与えられてよい。一定の実施形態において、本発明の方法は、保存剤を含まないパッケージング液の中にシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを含んでなるブリスターパックを、滅菌線量の高エネルギー放射線に露出させることを含んでいる。他の実施形態において、前記パッケージング液は保存剤を実質的に含まなくてよい。これら液体の例には、抗菌剤を含まないか、または実質的に含まない液体が含まれる。少なくとも一つの実施形態において、前記パッケージング液は、本質的にまたは全体として、リン酸緩衝またはホウ酸緩衝食塩水溶液のような、緩衝食塩水溶液からなるものである。
【0015】
ここで述べたように、本発明の方法は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのバッチを滅菌するために使用されてよい。従って、本発明の方法は、大量のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの自動化された製造または生産において有用である。一定の方法において、ブリスターパックのバッチ(各ブリスターパックは、ある容積の液体中に一つのシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを含んでいる)は、滅菌量の高エネルギー放射線に露出される。
【0016】
ここで述べたように、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの製造に際して、ブリスターパックの中に配置され且つ密封されたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのバッチは、該バッチを滅菌量の高エネルギー放射線に露出することによって滅菌することができ、次いで公衆に配布することができる。
【0017】
本発明の方法、パッケージおよびシステムにおいて有用な、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、眼科的に許容可能な酸素透過性、眼科的に許容可能な酸素伝達性、眼科的に許容可能な弾性、および/または眼科的に許容可能な水含量のような、1以上の性質を有してよい。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、シリコーンヒドロゲル材料を含んでなるコンタクトレンズであり、且つ現存の公然利用可能なシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ材料、ならびに他のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ材料を包含するものであると理解することができる。例えば、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、ガリフィルコン(galyfilcon)A、ロトラフィルコン(Lotrafilcon)A,ロトラフィルコンB、バラフィルコン(balafilcon)A、セノフィルコン(senofilcon)A、またはコムフィルコン(comfilcon)Aの米国適用名(USAN)を有する1以上の材料を含むことができる。
【0018】
換言すれば、本発明の方法において使用されるレンズは、1以上のシリコーン含有成分、および1以上の親水性成分を含んでなるものと理解されてよい。
【0019】
シリコーン含有成分は、モノマー、マクロマー、プレポリマーまたはポリマーの中に、少なくとも一つの[−Si−O−Si]基を含有する成分である。このSiおよび結合されたOは、シリコーン含有成分の全分子量の20重量%よりも多く、例えば30重量%よりも多い量で、当該シリコーン含有成分の中に存在してよい。有用なシリコーン含有成分は重合性官能基、例えばアクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ビニルラクタム、N−ビニルアミド、およびスチリル官能基を含んでよい。本発明のレンズにおいて有用な幾つかのシリコーン含有成分の例は、米国特許第3,808,178号、同第4,120,570号、同第4,136,250号、同第4,153,641号、同第4,740,533号、同第5,034,461号、および同第5,070,215号、並びにEP080539号に見ることができる。
【0020】
適切なシリコーン含有モノマーの更なる例は、ポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリルモノマーであり、これには、メタクリロキシプロピル・トリス(トリメチルシロキシ)シラン、ペンタメチルジシロキサニル・メチルメタクリレート、およびメチル・ジ(トリメチルシロキシ)メタクリロキシメチルシランが含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
一つの有用なクラスのシリコーン含有成分は、ポリ(オルガノシロキサン)プレポリマー、例えばα,ω―ビスメタクリロキシプロピル・ポリジメチルシロキサンである。もう一つの有用なクラスのシリコーン含有成分には、シリコーン含有ビニルカーボネートモノマー、またはビニルカルバメートモノマーが含まれ、これには、1,3−ビス[4−(ビニロキシカルボニロキシ)ブタ−1−イル]テトラメチルシロキサン・3−(ビニロキシカルボニルチオ)プロピル−[トリス(トリメチルシロキシシラン)];3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル・アリル・カルバメート;3−[トリス(トリメチルシロキシ)ビニル]プロピル・ビニル・カルバメート;トリメチルシリルエチル・ビニル・カーボネート;およびトリメチルシリルメチル・ビニル・カーボネートが含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
材料の一例は、式Iとして示す以下の式を有している:
【化1】

【0023】
親水性成分は、残りの反応性成分と組合されたときに、得られるレンズに、少なくとも約20%、例えば少なくとも約25%の水含量を与えることができる成分を含んでいる。適切な親水性成分は、全ての反応性成分の重量に基づいて、約10〜約60重量%の量で存在してよい。約15〜約50重量%、例えば約20〜約40重量%が好ましい。本発明のレンズ用ポリマーを製造するために使用され得る親水性モノマーは、少なくとも一つの重合性二重結合および少なくとも一つの親水性官能基を有している。重合性二重結合の例には、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、フマル酸、マレイン酸、スチリル、イソプロペニルフェニル、O−ビニルカーボネート、O−ビニルカルバメート、アリル、O−ビニルアセチル、N−ビニルラクタム、およびN−ビニルアミドの二重結合が含まれる。このような親水性モノマーは、それ自身が架橋剤として使用されてもよい。「アクリル型」または「アクリル含有」のモノマーは、アクリル基(CR’H=CRCOX)を含むモノマーであり、ここでのRはHまたはCH3であり、R’はH、アルキルまたはカルボニルであり、XはOまたはNである。これらのモノマーはまた、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸、アクリル酸およびこれらの混合物のように、容易に重合することが知られている。
【0024】
本発明のレンズ材料の中に組込まれてよい親水性ビニル含有モノマーは、N−ビニルラクタム(例えばN−ビニルピロリドン(NVP))、N−ビニル−Nメチルアセタミド、N−ビニル−N−メチルアセタミド、N−ビニル−N−エチルアセタミド、N−ビニル−N−エチルホルムアミド、N−ビニルホルムアミド、N−2−ヒドロキシエチル・ビニルカルバメート、N−カルボキシ−β−アラニン・N−ビニルエステルのようなモノマーが含まれてよい。一つの実施形態において、該親水性ビニル含有モノマーはNVPである。
【0025】
本発明のレンズに用いることができる他の親水性モノマーには、重合性二重結合を含む官能基で置換された1以上の末端ヒドロキシ基を有するポリオキシエチレンポリオールが含まれる。その例には、重合性二重結合を含む官能基で置換された1以上の末端ヒドロキシ基を備えたポリエチレングリコールが含まれる。その例には、カルバメート基またはエステル基のような連結部分を介してポリエチレンポリオールに結合された1以上の末端重合性オレフィン基を有するポリエチレンポリオールを生成させるために、1モル当量以上の末端キャッピング基、例えばメタクリル酸イソシアナトエチル(IEM)、メタクリル酸無水物、塩化メタクリロイル、塩化ビニルベンゾイル等と反応されたポリエチレングリコールが含まれる。
【0026】
更なる例は、米国特許第5,070,215号に開示された親水性ビニルカーボネートモノマーまたはビニルカルバメートモノマー、および米国特許第4,190,277号に開示された親水性オキサゾロンモノマーである。他の適切な親水性モノマーは当業者に明らかであろう。本発明のポリマーン中に組込まれてよい更に好ましい親水性モノマーには、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、2−ヒドロキシエチルアクリレート,グリセロールメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−ビニルピロリドン(NVP)、およびポリエチレングリコールモノメタクリレートが含まれる。一定の実施形態では、DMA、NVPおよびその混合物を含む親水性モノマーが用いられる。
【0027】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造するために使用される材料の更なる例には、米国特許第6,867,245号開示されたものが含まれる。
【0028】
従って、本発明の方法に有用なシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、水膨潤性ポリマーのような、ヒドロゲル形成ポリマーを含んでいるレンズ本体を含んでなるものであってよい。該ヒドロゲル自身は、このような水で膨潤したポリマーを含んでいる。本発明のレンズの水含量は10重量%の水よりも大きく、且つ100重量%の水よりも少ない。例えば、本発明のレンズは、約20重量%〜約90重量%の水を有してよい。一定のレンズは、約30%〜約80重量%の水を有している。
【0029】
次に、その例が添付の図面に示されている、本発明の実施形態を詳細に参照する。可能なときは何時でも、同じ部材または類似の部材を参照するために、図面および説明においては同じ参照番号または類似の参照番号が用いられる。なお、図面は単純化された形態であり、正確な縮尺ではないことに留意すべきである。ここでの開示に対する参照においては、便宜性および明瞭さだけの目的で、方向的な用語、例えば頂部、底部、左、右、上方、下方、上、頭上、下、真下、背面、正面、後方、前方、遠位、近位、前、後、上位、下位、側頭部、および鼻先の用語は、添付の図面に関して使用される。このような方向的な用語は、如何なる意味においても、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきでない。
【0030】
ここでの開示では、一定の図示された実施形態を参照するが、これらの実施形態は限定のためではなく、例示として提示されるものである。以下の詳細な説明の目的は、例示的実施形態を述べるものではあるが、これら実施形態の全ての修飾、変更、および均等物が、添付の特許請求の範囲により定義された発明の精神および範囲内に入り得るものとして解釈されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造する方法100に含まれる工程を示すフローチャートである。該方法100は、シリコーンヒドロゲルレンズ前駆体組成物を、コンタクトレンズ型のモールドキャビティーの中に配置する工程110を含んでいる。該モールドは典型的には雄部分および雌部分を含んでおり、これらは一緒に結合されたときに、コンタクトレンズ形状のモールドキャビティーを形成する。コンタクトレンズ型のモールドキャビティー内にあるシリコーンヒドロゲルレンズ前駆体組成物は、工程120において硬化され、レンズ前駆体組成物の成分が重合されて、硬化したコンタクトレンズが形成される。該硬化したコンタクトレンズは、工程130において、モールドキャビティーから取出される。この硬化したレンズは、該硬化したレンズ中の未反応および/または非重合生成物を抽出する1以上の工程と、硬化/抽出されたレンズを水和して水で膨潤したシリコーンンゲルヒドロゲルコンタクトレンズを形成する1以上の工程とを含んでなる加工工程140を受ける。こうして形成されたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、工程150において、典型的にはパッケージング液またはパッケージング溶液を含むブリスターパックのキャビティーの中に配置され、また工程160において欠陥が検査される。検査の後、検査されたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを含むブリスターパックのキャビティーは、工程170において密封される。次いで、このシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを含む密封されたブリスターパックは、工程180において最終的に滅菌される。この容易な滅菌の後、滅菌されたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを収容したブリスターパックは、公衆に配布する準備が完了する。
【0032】
図2は、ここでの開示に従う方法200を示すフローチャートである。この方法200は、少なくとも一つのシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、滅菌量の高エネルギー放射線に露出させる工程210を含んでいる。当該シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、人間の眼に着用されたときに、レンズの快適性または特性を低下させ得るコンタクトレンズの1以上の性質に実質的に悪影響を及ぼすことなく、該コンタクトレンズを滅菌するために充分な時間だけ、有効量の高エネルギー放射線に露出される。
【0033】
当該シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、球面または非球面コンタクトレンズであることができ、また回転に対して安定化された非球面シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであってもよい。該シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、円環状領域を有してよく、および/または該レンズは単焦点、またはニ焦点を含む多重焦点のレンズであってよい。本発明の方法に使用されるシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、好ましくは、滅菌量の高エネルギー放射線に露出される前に、眼科的に許容可能な湿潤性を有する1以上の表面を有している。例えば、高エネルギー放射線への露出は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの濡れ性を増大させる必要はない。当業者が理解するように、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズおよび剛性のガス透過性コンタクトレンズは異なるものであり、相互に明確に識別可能である。従って、本発明の方法は、剛性のガス透過性コンタクトレンズではないコンタクトレンズを、滅菌量の高エネルギー放射線に露出させることを含んでなるものである。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの材料の例は、ここに記載されるものである。或いは換言すれば、ある方法は、剛性のガス透過性でないシリコーン含有コンタクトレンズを、滅菌量の高エネルギー放射線に露出させることを含んでなるものである。
【0034】
一定の実施形態において、この高エネルギー放射線に露出されるシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、高エネルギー放射線に露出される前に、眼科的に許容可能な表面濡れ性を有している。例えば、米国特許第5,529,727号には、ガンマ放射線が、剛性ガス透過性コンタクトレンズの表面濡れ性を改善すると記載されているが、本発明の方法は、レンズの表面濡れ性を実質的に変化させることなく、当該シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを露出させる。加えて、本発明の方法を使用して滅菌された一定のレンズは、該レンズの表面濡れ性を改善する表面修飾または表面処理を含んでいない。更に、本発明の方法を使用して滅菌された一定のレンズは、望ましい表面濡れ性を達成するための、ポリマー相互浸透ネットワークを含んでいない。しかし、他の実施形態においては、表面処理されたレンズおよびポリマー相互浸透ネットワークレンズは、本発明の方法を使用して滅菌することができる。
【0035】
本発明の方法に使用され且つ本発明のパッケージ中に与えられるシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、毎日の着用または連続的着用に適している。例えば、該コンタクトレンズは、使い捨て可能な日常のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであってよく、或いは連続着用のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ、例えば少なくとも2週間、更には約30日以上、人間の目に連続的に着用できるコンタクトレンズであってもよい。
【0036】
ここで述べたように、本発明において使用される高エネルギー放射線には、ガンマ放射線およびeビーム放射線が含まれるが、これらに限定されない。本発明の方法は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、少なくとも0.005メガrad(Mrad)〜10Mradの範囲、より好ましくは約1〜約4Mradのガンマ放射線量を送達するのに充分な時間だけ、ガンマ放射線に露出させることを含んでいる。一つの実施形態において、当該方法は、約2Mrad(20kGy)よりも大きく且つ3Mrad(30kGy)よりも少ないガンマ放射線の線量を送達するための時間だけ、該コンタクトレンズをガンマ放射線に露出させることを含んでいる。例えば、ガンマ放射線の線量は、約2.5Mrad(25kGy)であってよい。しかし、一定の実施形態において、一つまたは複数の当該レンズを滅菌するために使用される高エネルギー放射線の量は、剛性のガス透過性レンズの表面を更に濡れ性にするために使用される放射線の量とは異なっている。eビーム放射線を使用するときの露出時間は、通常はガンマ放射線についての時間よりも短いが、0.005Mradから5Mrad以上の線量を送達するために有効な時間である。例えば、ある方法は、少なくとも2.5Mrad(25kGy)の線量を達成するために十分な時間だけ、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズをeビーム放射線に露出させることを含んでよい。もう一つの方法は、約1.5Mrad〜約3.5Mradの線量を達成するために十分な時間だけ、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズをeビーム放射線に露出させることを含んでよい。該eビーム放射線は、細胞DNAのような重要な細胞成分をイオン化させることによって、微生物を死滅させる。本発明の方法により提供される一つの利点は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを適正に滅菌するために必要とされるパラメータの数が、オートクレーブ滅菌法に比較して減少することである。例えば、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの滅菌は、滅菌時間を制御することだけによって、例えば、少なくとも25kGyの線量をシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに送達するのに充分な時間を使用することによって達成することができる。本発明の方法によれば、この時間は、当該シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの眼科的許容可能性に悪影響を及ぼすことなく、該シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを滅菌するために十分である。もう一つの利点は、ここに開示する放射線滅菌の場合は高温が必要とされないので、このようなコンタクトレンズをパッケージするために使用し得る材料の選択または種類が、広範囲または大きいことである。
【0037】
ここで使用する「高エネルギー放射線」の用語は、ガンマ線および/または加速電子の形態の放射線を意味する。ここでも使用するとき、高エネルギー放射線には、紫外線のエネルギーまたは放射線は含まれない。例えば、ここで使用する高エネルギー放射線は、波長が10nm未満、例えば波長が約1nm未満で、放出または提供される放射線またはエネルギーを意味すると理解されてよい。
【0038】
従って、本発明の方法は、1以上のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、UV放射線以外の、滅菌量の高エネルギー放射線に露出させることを包含している。或いは、言い換えれば、ある方法は、当該シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを非UVの高エネルギー放射線に露出させることを含んでいる。本発明による方法の一定の実施形態は、該シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、約10-2nm未満、更には10-6nmと短い波長の放射線に露出させることを含んでいる。
【0039】
一般に、高エネルギー放射線は、粒子または量子当り約15×106電子ボルト(15Mev)〜約0.003×106電子ボルト(0.003Mev)のエネルギーを有している。幾つかの既知のエネルギー放射線源を下記に列挙する。
【表1】

【0040】
高エネルギー放射線の線量は、好ましくは、該レンズのポリマー成分に対する何等かの顕著な構造的変化、例えば、何等かの顕著な分子変化を生じることなく、該レンズの滅菌を行うように選択される。例えば、高エネルギー放射線の量は、レンズ本体のポリマーの機械的性質(引張り強度、弾性率、衝撃強度、剪断強度および伸びを含むが、これらに限定されない)について、如何なる有意な喪失も生じないように選択される。レンズ本体の脆化、並びにその結晶性(従ってその密度特性)における如何なる変化も回避されるべきである。
【0041】
当該レンズの滅菌を達成するための有効線量とは、レンズ本体によって如何に多くの放射線エネルギーが吸収されるかを意味するものであることが、当業者に理解されるであろう。これは、放射フィールドの供給源、強度および大きさ、レンズと供給源との間の距離、並びに利用される放射線の種類のような、測定可能な因子に依存するであろう。一般に、同じ強度の電子線源およびガンマ線源については、電子供給源の線量率はガンマ線源の場合よりも何倍も大きい。これは、電子ビームが一方向性で、小さい領域に遥かに集中されるからであり、また電子と他の電子との相互作用が、光子の場合よりも遥かに強いからである。
【0042】
ガンマ放射線の線源には、コバルト60またはセシウム137に基づく従来の放射線源が含まれる。多くのX線源が利用可能であり、当業者に既知である。
【0043】
当該シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを滅菌するために使用される最適線量、従って、滅菌方法の際の露出時間は、当業者に既知のルーチンの方法を使用して決定することができる。例えば、滅菌効果は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを高エネルギー放射線に露出させた後に確認することができる。
【0044】
ガンマ線滅菌の確認は、1以上の工程を含むことができる。例えば、ここに記載したガンマ線滅菌法を確認する方法は、予備滅菌生物負荷を決定することと;確認線量を確立することと;確認線量実験を実施することと;確認線量実験を解釈することとを含むことができる。当業者が理解するように、生物負荷とは、滅菌すべき製品に存在する生きた微生物の数または量、例えば、コンタクトレンズまたはコンタクトレンズのパッケージに存在する生きた微生物の数を意味する。
【0045】
放射線を受ける材料(例えばシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを含むブリスターパック)における実際の生物負荷の決定は、ANSI/AAMI/ISO11737−1(医療機器振興協会、新標準、医療装置の滅菌−微生物学的方法−パート1:製品における微生物ポピュレーションの評価、ANSI/AAMI/ISO11737−1、1995)に含まれる方法を使用して行うことができる。製品ユニット当り(例えばブリスターパック当り)の平均生物負荷の評価は、典型的には、最低限三つの製造バッチからの少なくとも10個のランダムなサンプルについて、並びにガンマ放射線への露出のためにサンプリングされた全ての製品ニットについて確立される。
【0046】
例えば、ユニット当りに許容される最大生物負荷は100cfuであってよい。ユニット当り1000cfuの生物負荷当り、約10-6の滅菌保証レベル(SAL)を達成するための計算吸収線量は24.9kGyである。このSALは、滅菌すべき所定の製品が、滅菌プロセスの後にも滅菌されずに残る確率として定義することができる。10-6のSALは、100万個の製品のうちの一つが、滅菌後にも滅菌されずに残るであろうことを示している。従って、25kGyの線量放出の実証は、生物負荷が1000cfu以下の全てのユニットにとって過剰である。ここで述べるように、25kGyの線量は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズまたは該レンズを収容したパッケージの特性に実質的に悪影響を及ぼすことなく、パッケージされたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの望ましい滅菌を提供することができる。
【0047】
生物負荷を決定した後に、確認線量を樹立することができる。平均のユニット生物負荷に基づいて、AAMI・TIR27:2001(医療機器振興協会、方法、ヘルスケア製品の滅菌−放射線滅菌−滅菌線量としての25kGyの実証−方法Vdmax、AAMI・TIR27:2001、5.3節、5.3.4節、5.3.5節、2001年3月)に従って、約10-2のSALを与えるように確認線量が統計的に計算される。この確認線量実験は、約10-2のSALについては、10サンプルのうち1以下の陽性が存在するはずであることを述べている。この10-2検定が成功であれば、10-6であるSALについて、滅菌線量としての25kGyの実証が確認される。
【0048】
AAMI・TIR27:2001に記載されているように、生物負荷評価のために使用された三つの製造ロットから、または正規の製造を表す条件下で製造された新たな製造バッチからの10ユニットがランダムにサンプリングされて、適切な確認線量(±10%)で照射される。吸収された染料が実証線量の±10%であることをチェックするために、装置全体の予め定められた場所に線量計が配置される。この工程はまた、最小線量を受取るゾーンを特定し、またルーチンの滅菌サイクルにおける最悪の場合の場所を定めるために使用される。製品が実行されている間、線量計は、最初の製品容器、中間の製品容器、および最後の製品容器の中に配置されるべきである。
【0049】
各サンプルは、確認線量に露出された後の滅菌性について試験される。10検定において1以下の陽性の検定が得られれば、25kGyの滅菌線量(SAL=10-6を与える)が実証される。二つの陽性が見つかれば、確認線量実験を繰返すことができる。ゼロの陽性が見出されれば(20のうち2の最大合計)、25kGyの滅菌線量(SAL=10-6を与える)が実証される。最初の10〜20の検定において三つ以上の陽性が見つかれば、25kGyの滅菌線量は実証されず、別の線量設定方法が必要とされる可能性がある。
【0050】
こうして、本発明の方法を実施した後に、高エネルギー放射線で滅菌されたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが提供される。このレンズは、人間の眼に着用して、実質的な不快感なく視力改善を提供するために適している。
【0051】
図3は、本発明に従った方法300の更なる例を示すフローチャートである。この方法300は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、密封されたブリスターパックのようなパッケージの中に準備する工程310を含んでいる。このレンズは、ある量の液体、例えば水性液体のような何れか従来のレンズパッケージング液の中に準備してよい。一定の実施形態において、この液体は食塩水である。一定の実施形態において、この液体は緩衝された食塩水である。一つの例として、該液体は燐酸干渉食塩水である。一定の実施形態は、表面活性剤を含有する液体中にシリコーンヒドロゲルレンズを含んでいる。一定の実施形態は、保存剤を含まない液体または抗菌剤を含まない液体を含んでいる。一定の実施形態は、潤滑剤を含まない液体または潤滑剤を含んでいない液体、例えば水性液体の表面張力を低下させないポリアニオン性ポリマーを含んでいる。例えば、当該パッケージング液は、カルボキシメチルセルロース(CMC)を含まなくてよい。加えて、一定の実施形態は、コンタクトレンズ洗浄剤または消毒剤を含まないパッケージング液を含んでいる。液体の幾つかの例には、水、塩化ナトリウム、塩化カリウム、1以上の他の張性剤等、およびそれらの混合物の溶液が含まれる。該液体のpHは好ましくは中性であり、また約7.0〜約8.0であってもよい。例えば、一定の実施形態において前記媒質のpHは7.2である。
【0052】
その中にシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが準備されるパッケージは、如何なる適切な材料のものであってもよい。例えば、該パッケージはガラス製またはプラスチック製であってよい。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズをパッケージングするためにブリスターパックが使用されるとき、該パッケージは、典型的には、ある容積の液体を保持するためのキャビティーを有するプラスチックベースの部材、および前記キャビティーを覆って配置されるシール部材を具備している。一定の実施形態では、一つのシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、一つの密封されたブリスターパックの中に与えられる。例えば、抽出および水和された一つのシリコーンヒドロゲルレンズが、一つのブリスターパック中のある容積のパッケージング液体の中に配置され、検査され、次いで、ブリスターパックのキャビティーを覆ってシール部材を配置することにより、ブリスターパックの中に密封される。
【0053】
前記方法300は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを含んでなるパッケージを、ここで説明したようにして、滅菌線量の高エネルギー放射線に露出させるもう一つの工程320を含んでいる。この滅菌包装されたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、公衆に配布するための準備が完了している。
【0054】
本発明の方法は、以下で説明するように、1以上の任意の工程を含んでもよい。
一定の実施形態において、ある方法は、前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ、またはシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの1以上のバッチを、高エネルギー放射線滅菌設備へと輸送する工程を含んでいてよい。例えば、高エネルギー滅菌設備は、典型低には製造、維持および運転するための費用が嵩む。従って、コンタクトレンズを製造するコースにおいて、予め存在する滅菌施設のサービスを利用するのが望ましいかもしれない。従って、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのバッチは、レンズ製造施設から、物理的に該レンズ製造施設から遠く離れて位置する滅菌施設へと輸送することができる。滅菌施設の一つの例は、アイソトロン(Isotron;英国)である。
【0055】
本発明の方法はまた、当該シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを滅菌線量の高エネルギー放射線に露出する前に、該シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ、または該コンタクトレンズを収容しているパッケージを冷却する工程を含んでよい。例えば、当該レンズを収容したパッケージは、パッケージが密封されるときと、該パッケージおよびレンズが滅菌されるときとの間で、該パッケージ中での細菌の増殖を減少させるために冷却することができる。コンタクトレンズを冷却することは、該パッケージ内に存在する生物負荷の増殖を低下させる利点を提供し、従って、該コンタクトレンズを滅菌するために充分な線量の放射線が使用されることを保証するのを補助する。該レンズまたはレンズパッケージの冷却は、前記パッケージ内またはその周囲の温度を低下させることによって達成することができる。例えば、該レンズまたはパッケージは、冷蔵庫または類似の装置内に配置することができる。或いは、該コンタクトレンズの直の環境温度を低下させるために、該パッケージング溶液を選択的に冷却することができる。ある方法がコンタクトレンズを滅菌施設へと輸送することを含むとき、当該方法は、該コンタクトレンズを冷凍区画の中に輸送することを含んでよい。一定の実施形態において、該コンタクトレンズは10℃未満に冷却され、例えば、該コンタクトレンズは4〜5℃に冷却されてよい。該コンタクトレンズは、長時間に亘って、涼しい温度(例えば、約20℃のような室温よりも低い温度)に維持することができる。例えば、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのバッチは、少なくとも30分間、低下した温度に保存することができる。加えて、該レンズは2時間、または所望であれば更に1日を超えて、低温で保存することができる。典型的には、所定時間内に製造できるレンズの量を高めるために、当該レンズは、該レンズを滅菌する前にできるだけ僅かな時間、低下した温度で保存されるであろう。
【0056】
ここで説明するように、高エネルギー放射線で当該シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを滅菌するために、滅菌施設を利用してもよい。このような4節の一例は、ここで説明され且つ図4に示される。このような施設において、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを滅菌室に向わせ、また滅菌されたレンズを滅菌室から外に向わせるために、コンベアシステムを使用することができる。従って、本発明の方法は、前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、滅菌施設を通して搬送する工程を含んでよい。
【0057】
一つの方法は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、それらが滅菌施設に到着するや否や、直ちにまたは実質的に直ちに滅菌する工程を含んでよい。このような直ちに滅菌する工程は、パッケージングと滅菌との間の時間において、潜在的な微生物増殖を低減する上で有用である。
【0058】
加えて、ここで説明するように、本発明の方法はまた、1以上の検査工程を含んでよい。例えば、一つの方法は、その中にシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが配置されている前記パッケージを密封する前に、欠陥について前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを検査することを含んでよい。この検査は、水和または非水和のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズについて行うことができ、また手動で、或いは自動検査システムを使用して実施することができる。前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、前記パッケージの中のある容積の液体中に配置されるであろうから、その中に前記コンタクトレンズが配置される「湿式」検査プロセスを利用するのが望ましいかもしれない。これに加えて、またはその代りに、ある方法は、前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを前記高エネルギー放射線に露出させた後に、滅菌されたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのサンプルを検査することを含んでよい。このような方法は、当該滅菌プロセスが当該レンズおよびパッケージを滅菌するために充分であることを保証し、また該レンズ特性が維持されることを保証する上で有用であるかもしれない。
【0059】
滅菌するためのシステムもまた本発明によって提供される。本発明の方法を実施する上で有用なシステムが、図4に概略的に示されている。該システム400は滅菌施設410を具備しており、これは高エネルギー放射線に対して不透過性の壁414で囲まれた滅菌室412を含んでいる。この壁414は、滅菌施設410の壁の一部であってよい。該滅菌室412は、高エネルギー放射線源416を含んでいる。例えば、高エネルギー放射線源416は、保持ラックに設けられたコバルト60またはセシウム137を含んでいてよい。該滅菌室412は、滅菌が生じないときに該ラックを保存するために、ある容積の水を含むピットを含んでいてよい。或いは、またはこれに加えて、高エネルギー放射線源はX線装置または電子加速器を含んでいてよい。滅菌室412は、滅菌室の入口および出口として使用することができる開口部418を含んでおり、また滅菌施設410は、入口420および出口422を含んでいてよい。コンベアシステム424は、入口420を通り、開口部418を通って滅菌室412に伸び、また該滅菌室から開口部418を通って出口422から出て行く。
【0060】
図4に示したように、コンベアシステム424は、入口520から滅菌室412の中へ、また開口部418から出口422へと、完全な直線経路に沿っては進まない。例えば、入口420と出口422および開口部418の間の構成は、「Fリボン」として理解されてよい。換言すれば、入口420と開口部418との間の経路、および開口部418と出口422の間の経路は、他の部分に対して直角に配向した1以上の部分を有することができる。この構成においては、滅菌室412からの高エネルギー放射線の偶発的な漏れは最小化される。
【0061】
滅菌室412がガンマ放射線源を含むとき、ガンマ放射線源は、ピット中の水から上昇して、滅菌室412を通して放射線を放出する。ガンマ線滅菌されたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのバッチを与えるために、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのバッチは、荷積みステーション426においてコンベアシステム上に載置され、入口420を通り、開口部418を通って滅菌室412の中に向けられることができ、また滅菌室412から開口部418を通り、出口422から荷降ろしステーション428へと向けられることができる。
【0062】
もう一つのシステムが図5に示されている。図5は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ、またはシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを収容するパッケージを滅菌するために電子ビームを使用する、高エネルギー放射線滅菌システムの図である。該システム500は、電子加速器510を含んでいる。該電子加速器510は走査電子ビームを発生させ、その中をシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズまたは該レンズを含むパッケージが通過して、滅菌されるに至る。該電子ビームは、タングステンフィラメント銃を使用することによって達成され、これは電子を放出し且つ該電子がその中で加速される管を通るように方向付ける。この電子加速器510は、滅菌室512の中に配置され、これは図4に示したものと類似であってよい。コンベアシステム514は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズもしくはパッケージ、またはそのバッチを滅菌施設516の中へと仕向けるために使用することができ、該施設は、滅菌室512の中に電子加速器510を含んでいる。電子ビーム滅菌システムを使用することによって、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、例えば約25kGY(2.5Mrad)〜約35kGY(3.5Mrad)の範囲の線量を用いて効果的に滅菌することができる。
【0063】
図5のシステムは、物理的には図4のものと同様に見えるが、本システムは、図示のものとは異なる物理的および構造的な特徴および構成を有することができる。例えば、追加のシステムは、より直接的な方法で滅菌施設を通過するコンベアシステムを有してよく、また該システムは、コンタクトレンズの滅菌に使用される放射線量を制御するための更に少なく、または更に多い構成で放射線源を通過してよい。加えて、本システムは、コンタクトレンズに対する望ましい滅菌量の放射線を提供するように制御できる、異なる移動速度をもった二以上のコンベアシステムを含むことができる。更に、該システムは、コンタクトレンズまたはパッケージがこれを通過して滅菌される複数の電子ビームカーテンを与えるように、二以上の電子加速器を含むことができるであろう。
【0064】
本発明はまた、ここで説明した高エネルギー放射線で滅菌されたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを含んだ、1以上のコンタクトレンズパッケージに関する。図6に示すように、係るパッケージの一つの実施形態はブリスターパック600である。ここで説明したように、ブリスターパック600は、キャビティー614を有するベース部材612を含んでいる。キャビティー614はある容積の液体616を保持しており、その中にはシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ618が配置される。密封部材620が、前記キャビティーを密封するためにベース部材612に取付けられる。例えば、該密封部材620は、ベース部材612にヒートシールすることができる。上記の方法およびシステムにおいては、如何なる適切なブリスターパック設計も使用することができ、例えば、ブリスターパックは湾曲した底面、1以上の湾曲した側壁表面、ブリスターパック周縁の回りまたは近傍に伸びる1以上の垂下した側壁を有してもよい。本ブリスターパックは使い捨てパッケージであってよい。換言すれば、このブリスターパックは、該パックを開放した後の滅菌環境にシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを保存するために、レンズ着用者が再使用することはできない。
【0065】
本開示を考慮すると、本発明の方法の一例は、ブリスターパックのバッチを提供することを含んでいる。各ブリスターパックは、密封されたキャビティー中の表面活性剤を含んでも含んでいなくてもよいある容積の液体(例えばリン酸緩衝食塩水)、および該液体の中に配置されたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを含んでいる。
【0066】
このブリスターパックのバッチは、該ブリスターパックを製造するために使用された製造施設から離れた、ビル等の滅菌施設へと輸送される。こうして、当該方法は、ブリスターパックのバッチを滅菌施設へと輸送することを含んでいる。
【0067】
滅菌施設は、図4に示したような滅菌室を含んでいる。この滅菌室は、ある容積の水が充填されるピットを含んでいる。滅菌法の前に、コバルト60放射線源ラックが水の中に保存および遮蔽される。該滅菌室は、約6フィートの厚さを有するコンクリート壁によって限定されている。滅菌室は入口および出口を有しており、コンベアシステムはこれらを通して、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを含むブリスターパックのバッチを滅菌室の中に送達し、また該滅菌室から送達することができる滅菌室の入口および出口は、放射線が滅菌室から周囲環境へ放出されるのを防止するような構造になっている。
【0068】
ブリスターパックのバッチは、コンベア上に配置されて滅菌室の中へと向けられる。コバルト60が水から持上げられ、放射線がそこから放出される。該放射線は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズおよびパッケージング液を滅菌するために、ブリスターパックのバッチに向けられる。
【0069】
ブリスターパックのバッチは、滅菌量のガンマ放射線をブリスターパックおよびその中に配置されたコンタクトレンズへ送達するために効果的な速度で、滅菌室を通って搬送される。次いで、最終的に滅菌されたブリスターパックは、滅菌室から搬出され、頒布およびレンズ着用者による使用のために処理される。
【0070】
本発明の方法はまた、所望であれば、他の滅菌技術と組合せて実施されてもよい。例えば、特にオートクレーブ処理技術に対する改良がなされるならば、本発明のレンズはオートクレーブ処理されてもよい。或いは、本発明の方法は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを滅菌量の紫外線光に露出することなく、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを滅菌することを含むことができる。加えて、本発明の方法は、該レンズを保存剤または滅菌剤に露出させる1以上の追加の工程、および所望であれば、該保存剤または滅菌剤を該レンズから除去するための1以上の洗浄工程を含んでもよい。
【0071】
上記では、多くの刊行物および特許を引用してきた。これら引用された刊行物および特許の各々は、それの全体が、本明細書の一部としてここに援用される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、本発明の方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【図2】図2は、本発明の方法の追加の実施形態を示すフローチャートである。
【図3】図3は、本発明の方法の追加の実施形態を示すフローチャートである。
【図4】図4は、本発明の方法を実施するために使用するシステムの説明図である。
【図5】図5は、本発明の方法を実施するために使用するもう一つのシステムの説明図である。
【図6】図6は、本発明の方法を使用して滅菌されたブリスターパック中の、滅菌されたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの説明図である。
【符号の説明】
【0073】
100,200,300…方法
110…レンズ型の中に組成物を配置する工程
120…硬化工程
130…レンズの取出し工程
140…加工工程
150…キャビティー中にレンズを配置する工程
160…欠陥検査工程
170…密封工程
180…最終的滅菌工程
210…放射線に露出させる工程
310…レンズをブリスターパック中に準備する工程
320…高エネルギー放射線に露出させる工程
400…滅菌システム
410…滅菌施設
412…滅菌室
414…放射線不透過性の壁
416…高エネルギー放射線源
41…開口部
420…入口
422…出口
424…コンベアシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを滅菌する方法であって、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、滅菌量の高エネルギー放射線に露出されることを含んでなる方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記放射線が、ガンマ放射線、電子ビーム放射線およびそれらの組み合わせからなる群から選択される方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記放射線がガンマ放射線である方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記ガンマ放射線の量が約1Mrad〜約4Mradである方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、前記ガンマ放射線の量が約2.5Mradである方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記放射線が電子ビーム放射線である方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、更に、前記コンタクトレンズを高エネルギー放射線に露出させる前に、コンタクトレンズパッケージにおけるキャビティー内の液体の中に、前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを準備する工程を含んでなる方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記液体が水性液体である方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法であって、前記液体が食塩水を含んでなる方法。
【請求項10】
請求項7に記載の方法であって、更に、前記コンタクトレンズが前記液体中に存在する間に、欠陥について前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを検査する工程を含んでなる方法。
【請求項11】
請求項7に記載の方法であって、前記液体が、ポリアニオン性ポリマー材料を実質的に含まない方法。
【請求項12】
請求項7に記載の方法であって、更に、前記コンタクトレンズを高エネルギー放射線で滅菌するために、複数のパッケージされた前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを滅菌施設へ搬送することを含んでなる方法。
【請求項13】
請求項7に記載の方法であって、前記パッケージが密封されたブリスターパックである方法。
【請求項14】
コンタクトレンズパッケージであって:
ある容積の液体の中にコンタクトレンズを保持するためのキャビティーを有するベース部材と;
前記キャビティー内のある容積の液体中に配置された、滅菌されたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであって、高エネルギー放射線への露出によって滅菌されるシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズと;
前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズおよび前記液体を、レンズ着用者が使用する前に前記キャビティー内の滅菌環境中に保持するように、前記キャビティーを覆って配置された密封部材と
を含んでなるコンタクトレンズパッケージ。
【請求項15】
ブリスターパックである、請求項14に記載のパッケージ。
【請求項16】
請求項14に記載のパッケージであって、前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、ガンマ線滅菌されたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであるパッケージ。
【請求項17】
請求項14に記載のパッケージであって、前記液体が水性液体であるパッケージ。
【請求項18】
請求項14に記載のパッケージであって、前記液体が食塩水を含んでなるパッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−152121(P2007−152121A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−329970(P2006−329970)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(506298068)クーパーヴィジョン インコーポレイテッド (13)
【Fターム(参考)】