説明

シリコーン層にフルオロポリマーを結合する方法

本発明は、(i)脱フッ化水素化が可能なフルオロポリマーを含むフルオロポリマー層を供給することと(ii)前記硬化性シリーン組成物が(a)SiH基を有するオルガノポリシロキサン化合物と、(b)脂肪族炭素−炭素の不飽和結合を有するオルガノポリシロキサン化合物と、(c)ヒドロシリル化触媒と(d)アミノ化合物とを含み、前記アミノ化合物は(1)Rが水素又は有機基である式−NHRのアミン官能基と(2)R1がアルキル基又はアリール基を表し、R2は2〜6の炭素原子数のアルキル基を表し且つnは1又は2である式、−SiR1n(OR23-nのシリル基とを有する、硬化性シリコーン組成物を含むシリコーン層を供給することと、(iii)前記シリコーン層及び前記フルオロポリマー層を接触させて前記シリコーン層の前記硬化性シリコーン組成物を硬化させることによってフルオロポリマー層をシリコーン層に結合する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(特許出願に対する相互参照)
本出願は、2005年6月17に出願された英国特許出願番号GB0512331.0に対する優先権を主張し、参照をもって本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明はフルオロポリマー層をシリコーン層に結合する方法に関する。詳細には、フルオロポリマー層は脱フッ化水素化でき、シリコーン層はヒドロシリル化触媒による硬化性のシリコーン層である。
【背景技術】
【0003】
フルオロポリマーの有利な性質は当技術分野に公知であり、例えば高温耐久性、例えば溶剤、燃料及び腐食性化学薬品に対する高耐久性が挙げられる高度な耐化学薬品性、並びに不燃性が挙げられる。これらの有利な性質のため、フルオロポリマーは特に高温及び/又は化学薬品に曝される材料に広い用途が見出される。
【0004】
一般的にフルオロポリマーは非フッ素化ポリマーよりも高価であり、従って物品の全体的コストを下げるためにフルオロポリマーをその他の材料と組み合わせて使用する材料が開発されてきている。同様に、フルオロポリマー層は物品の周囲条件に対する保護層として、例えば気候条件に対抗する屋外用途のような利用が見出される。一般にこれらの用途ではフルオロポリマーは物品中のその他の材料及び層と結合されることが要求される。不都合なことに、フルオロポリマーをその他の基材と結合させることはしばしば困難であり、特にシリコーン層との結合は困難であると見出されている。この課題を解決するためフルオロポリマーとその他の材料例えばシリコーンエラストマーの間の連結層が提案されている。しかし、これはコストを増加し製造過程をより複雑にする。
【0005】
国際公開第WO 03/037621には、例えば水素化シリコーンのような水素化物機能を有する有機化合物を使用し、シリコーンエラストマーとフルオロポリマー層の間の結合性を改善することが開示される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、フルオロポリマー層とシリコーンゴムの間の結合性を改善する更なる方法を見出すことが望まれる。詳細には、ヒドロシリル化反応が関わる硬化システムに基づく、フルオロポリマー層とシリコーンゴムの結合性の改善が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、一態様において、本発明はフルオロポリマー層をシリコーン層に結合する方法に関し、(i)脱フッ化水素化できるフルオロポリマーを含むフルオロポリマー層を供給することと、(ii)硬化性のシリコーン組成物を含むシリコーン層を供給することであって、前記硬化性シリコーン組成物は(a)SiH基を有するオルガノポリシロキサン化合物と(b)脂肪族の炭素−炭素不飽和結合を有するオルガノポリシロキサン化合物と(c)ヒドロシリル化触媒と(d)アミノ化合物とを含み、前記アミノ化合物は(1)Rが水素又は有機基である、式−NHRのアミン官能基と(2)R1はアルキル基又はアリール基を表し、R2は2〜6の炭素原子数のアルキル基を表し且つnは1又は2である、式−SiR1n(OR23-nのシリル基とを有する、前記シリコーン層を供給すること、(iii)前記シリコーン層及び前記フルオロポリマー層を接触させて前記シリコーン層の前記硬化性シリコーン組成物を硬化させること、を含む、結合方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(発明の詳細な説明)
(フルオロポリマー層)
フルオロポリマー層は脱フッ化水素化できるフルオロポリマーを含む。本明細書において、用語「フルオロポリマー層」はフルオロポリマーだけで構成される層のみならず、フルオロポリマー成分及び任意選択で追加的な成分を含む層を含めることをも意図する。一般的には、フルオロポリマー層はフルオロポリマー層の重量基準で少なくとも85重量%の量でフルオロポリマーを含み、特に少なくとも95重量%の量が好適である。
【0009】
フルオロポリマーは脱フッ化水素化できる。典型的には、フルオロポリマーは例えばアミンのような塩基に触れさせると容易に脱フッ化水素する。本発明に使用できる脱フッ化水素化可能なフルオロポリマーには、ポリマー主鎖中に水素原子を結合した炭素がフッ素原子を結合した炭素の間に配置された微細構造(microstructure)を有するものが挙げられる。水素と結合した炭素の脱フッ化水素化における反応性は、水素が結合されている炭素原子が−CF3基と結合した炭素(例えばヘキサフルオロプロピレン(HFP)又は2−ヒドロペンタフルオロプロピレンによって供給された)を有する炭素原子又はその他の電子吸引性基と隣接しているか若しくは結合している場合に、更に強化され得る。便宜的には、脱フッ化水素化できるフルオロポリマーはフッ化ビニリデン(「VF2」又は「VDF])から誘導され、及びその他のモノマーから誘導されるフルオロポリマーであって重合した時に重合したフッ化ビニリデンと類似のモノマー配列を形成する。そのようなその他のモノマーの例には、エチレン性不飽和モノマーであって、フルオロポリマーに組み込まれ場合、主鎖中に重合VDFと同様な(同一も含む)ポリマー微細構造を生成できるものが挙げられる。そのようなポリマーは同様に、シリコーン層中に包含されるアミノ化合物と反応できる反応活性部を形成することにより脱フッ化水素化し易く、そのことは以下に詳しく述べる。どのような理論に拘束されることを意図するものではないが、シリコーン層の硬化の際にアミノ化合物はフルオロポリマーと硬化したシリコーン組成物の間に両層の境界面で化学的連結の形成を惹き起こすと考えられる。フルオロポリマー中に脱フッ化水素化が可能であるサイトを形成するのに好適なモノマーには、VDF、1−ハイドロペンタフルオロプロペン、2−ハイドロペンタフルオロプロペン、及びトリフルオロエチレンが挙げられる。
【0010】
フルオロポリマーの脱フッ化水素化は、典型的には積層物の硬化の間に起こる。即ち、フルオロポリマーの主鎖の中で反応サイト、典型的には二重結合がその場で形成される。脱フッ化水素化の可能なフルオロポリマーは、VDFから又は重合時に同様な反応性を持つその他のモノマーから誘導された分子間重合される単位を少なくとも3重量%含むことが一般的である。典型的には、脱フッ化水素化の可能なフルオロポリマーは、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、1−ハイドロペンタフルオロプロピレン、2−ハイドロペンタフルオロプロピレン、それらの混合物のグループから選択されるフッ素含有モノマー、及び任意選択でそれらと共重合可能な一つ以上のモノマーとから形成される。特定の実施形態において、フルオロポリマーにはVDF又一つ以上のフッ素含有モノマーから誘導された単位が挙げられ、フッ素含有モノマーは、例えばヘキサフルオロプロペン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、2−クロロペンタフルオロプロペン、例えばCF3OCF=CF2、CF3CF2CF2OCF=CF2、又はCF3OCF2CF2CF2OCF=CF2のようなパーフルオロアルキルビニールエーテルを含むフッ素化ビニールエーテルである。ある種のフッ素含有ジ−オレフィン、例えばパーフルオロジアリルエーテル及びパーフルオロ−1,3−ブタジエンも同様に有用である。更に好適なコモノマーには、不飽和オレフィン例えばエチレン、プロピレン又はブタジエンのような非フッ素化モノマーが挙げられる。重合可能な混合物中に全モノマーの少なくとも50重量%がフッ素含有であることが好ましい。ある特定の実施形態において、フルオロポリマーは、TFE、HFP、及びVDFから由来される繰り返し単位(THVの)を含む。更に特定の実施形態において、フルオロポリマーはテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン及びパーフルオロ(n−プロピルビニール)エーテルから誘導される繰り返し単位を含む。
【0011】
一般に、脱フッ化水素化可能なフルオロポリマーは溶融加工性である。用語「溶融加工性」は、そのフッ素化ポリマーが通常的に使用される溶融押出装置で加工できる十分な低い粘度を有していることを意味する。典型的には、フルオロポリマー層中で使用される脱フッ化水素化が可能なフルオロポリマーは、いわゆる半結晶質フルオロポリマーであり、即ち、そのフルオロポリマーは明確で且つ明瞭に識別できる融点を示す。有用な半結晶質フルオロポリマーには、60〜320℃の融点、典型的には100〜300℃の融点を有するものが挙げられる。半結晶質フルオロポリマー類のブレンド並びに非晶質フルオロポリマーと半結晶質のブレンドが使用されて良い。
【0012】
本発明で使用するためのフルオロポリマーは、溶剤媒体中並びに水性媒体中を含めたどんな適切な重合技術によっても製造できる。典型的には、フルオロポリマーは構成するモノマー類の水性乳化重合プロセスによって製造される。
【0013】
フルオロポリマー層を作製するための組成物には、脱フッ化水素化の可能なフルオロポリマー(複数の場合含む)、脱フッ素化水素化の不可能な一つ以上のフルオロポリマーを用いた混和物を更に含めて良い。一般的に、大半の量(例えば、フルオロポリマーの全重量を基準にして少なくとも51重量%、好ましくは少なくとも60重量%及び更に好ましくは少なくとも80重量%)が脱フッ化水素化可能なフルオロポリマーで構成されるべきである。
【0014】
フルオロポリマー層を提供するためのフルオロポリマー組成物には、特定の所望特性を得るために例えば、安定化剤、可塑剤、潤滑剤、充填剤及び加工助剤のような添加物を更に含めて良い。本発明の特定の実施形態において、フルオロポリマーにガラス微小球、より詳細には中実及び中空の高強度ガラス微小球を含めて良い。フルオロポリマー層にガラス微小球の添加によりフルオロポリマー層のシートを積み重ねた時に又はフルオロポリマー層がロール巻きで自身の上に巻きつけられた時に発生する可能性のあるブロッキングを防止する利点がもたらされる。
【0015】
好ましい実施形態において、ガラス微小球はフルオロポリマーをフルオロポリマーフィルムに押出する間で一般的に受ける条件に耐えるに十分な強度を有する。有用な微小球には中実のもの並びに中空のものが挙げられる。好まれることではあるが、微小球が真球であることは一般的に必要ではない。特定的には、例えば楕円体の又はクレータのある球体のように微小球は真球から幾らかはずれた形状を有しても良いと考えられる。典型的には、微小球は直径で5〜100マイクロメータ及び特別には25〜50マイクロメータの平均直径を有する。異なった粒度又は粒度範囲を有する微小球を使用して良い。特に有用な微小球は34.5MPa(5000psi)超過の破壊強度、例えば、68.9MPa(10000psi)超過の又は124.1MPa(18000psi)超過の破壊強度を有するものである。そのような微小球はフルオロポリマー層がフルオロポリマー組成物の押出によって製造される場合に好適である。使用される場合の中空微小球の密度は0.3〜0.9g/cm3で変化して良い。0.5〜0.7g/cm3の密度を有するガラス微小球は圧潰に対して高い耐久性を有する比較的軽量の微小球が望まれる用途に特に有用である。これらの微小球は典型的には、重量%表示で60〜80%SiO2、5〜16%Na2O、5〜25%CaO、0〜10%K2O+Li2O、5〜16%Na2O+K2O+Li2O及び0〜15%B23の化学組成を有する。中空ガラス微小球は当技術分野では公知であり例えば、米国特許第4,767,726に記載される。本発明に使用し得る更に好適なガラス微小球には、3M社から商業的に入手可能なもので例えば商品名スコッチライト(Scotchlight)(登録商標)S60HSが挙げられる。使用する場合、ガラス微小球はフルオロポリマーの重量基準で0.05重量%〜3重量%の量で添加される。
【0016】
典型的には、フルオロポリマー層は任意選択でガラス微小球を含むフルオロポリマーを200〜300℃の間の温度で、50〜500μmの厚さを有するフィルムに押出することによって得られる。フルオロポリマーの透明性が重要な留意事項である場合には、任意選択でガラス微小球を含むフルオロポリマー層の厚さは50〜200μmの間が一般的である。
【0017】
フルオロポリマー層は、代わりに溶液からのフルオロポリマー組成物の注型又は焼結及びスカイビング(skiving)によって形成しても良い。
【0018】
(硬化性シリコーン組成物)
本発明のシリコーン層は(a)SiH基を有するオルガノポリシロキサン(これ以降オルガノシロキサン化合物(a)又は化合物(a)として表す)及び(b)脂肪族炭素−炭素不飽和結合を有するオルガノポリシロキサン化合物(これ以降オルガノポリシロキサン化合物(b)又は化合物(b)と表す)を含む硬化性シリコーン組成物を含む。
【0019】
SiH基を有する好適なオルガノポリシロキサン化合物には、式(I)の単位を含む直
鎖、環式又は分岐のシロキサンが挙げられる。
【0020】
3uvSiO(4-u-v)/2 (I)
式中、
各々のR3は独立して水素原子又は任意選択で置換されたSiC−結合した炭素原子数1−18の脂肪族飽和炭化水素基を表し、シリコン原子当たり1個以下のR3基が水素原子であるとの意味を有する;uは0、1、2、又は3の整数を表し、及びvは0、1、又は2の整数を表し、但しu+vの合計は3以下で平均であり且つ分子当たり少なくとも2つのSi−結合した水素原子がある。
【0021】
特に好適なオリガノポリシロキサンは分子当たり3つ以上のSiH基を含む。分子当たり2つだけのSiH基を含むオルガノポリシロキサン化合物(a)が使用された場合、脂肪族炭素−炭素不飽和結合を有するオルガノポリシロキサン化合物(b)は分子当たり少なくとも3つの不飽和基を含むことが好ましい。
【0022】
オルガノポリシロキサン(a)は架橋剤として作用する。シリコン原子に直接結合した水素原子に限定したときの(a)化合物中の水素含量は0.002重量%〜1.7重量%水素の範囲であり、好ましくは0.1重量%〜1.7重量%水素である。典型的には、オルガノポリシロキサン化合物(a)は硬化性シリコーン組成物中に、化合物(b)中の脂肪族炭素−炭素の不飽和結合基に対するSiH基のモル比が0.5〜5、好ましくは1.0〜3.0であるような量で存在する。
【0023】
硬化性シリコーン組成物中で使用されるためのオルガノポリシロキサン化合物は、直鎖、環式又は分岐のシロキサンが典型的である。それらは典型的には、平均で1.5以上の脂肪族の炭素−炭素不飽和結合を有し、且つ2つ以上の不飽和結合を有するオルガノポリシロキサンと一つだけの2重結合を有するオルガノポリシロキサンとの混合物を含んで良い。同様に、異なった分子量のポリシロキサンのブレンドが使用され得る。
【0024】
ある態様において化合物(b)は式(II)の単位を含むオルガノポリシロキサンを含む。
【0025】
4s5tSiO(4-s-t)/2 (II)
式中、各々のR4は独立してSiC−結合された炭素原子数2〜18の脂肪族の不飽和炭化水素基を表し、各々のR5は独立して水素原子又は任意選択で置換されたSiC−結合された炭素原子数1〜18の脂肪族の飽和炭化水素基を表し、シリコン原子当たり1つ以内のR5は水素原子の意味を有することができる。sは0、1、又は2、及びtは0、1、2又は3であり、但し、s+tの合計は3以下であり且つ分子当たり少なくとも2つのR4基が存在する。典型的には、式(II)のオルガノポリシロキサンは18以上のシリコン原子数を有する。
【0026】
4基の例には、SiH−官能性化合物とのヒドロシリル化反応に利用し得る脂肪族不飽和基が挙げられる。R4基の具体例には、2〜6の炭素原子数と結合した脂肪族多重結合を有する炭化水素基が含まれ、それには例えば、ビニール、アリル、メタリル、1−プロペニル、1−ブテニル、1−ペンテニル基、5−ヘキセニル、ブタジエニル、ヘキサジエニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘセニル、エチニル、プロパルギル、及び1−プロピニル基、が含まれる。特に好適なR4基にはビニール基及びその類が挙げられる。
【0027】
5基の例には、水素及び1〜18の炭素原子数の炭化水素基が挙げられ、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、n−オクチル及び2,2,4−トリメチルペンチル基のようなイソオクチルを含んだオクチル、ノニル、デシル、ドデシル及びオクタデシル、のような基が挙げられる。更なる例には、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びメチルシクロヘキシル基のようなシクロアルキル基、フェニル、ビフェニル、ナフチル及びアントリル及びフェナントリル基のようなアリール基、オルソ位−、メタ位−、パラ位−のトリル基、キシリル基及びエチルフェニル基のようなアラルキル基、ベンジル基、α−及びβ−フェニルエチル基のようなアラルキル基、が挙げられる。
【0028】
置換炭化水素基の例は、3−クロロプロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル及びパーフルオロヘキシルエチル基のようなハロゲン化アルキル基、p−クロロフェニル及びp−クロロベンジル基のようなハロゲン化アリール基、である。
【0029】
式(II)によるオルガノシロキサン(b)には、例えば、
(ViMe2SiO1/2)(ViMeSiO)0-50(Me2SiO)30-2000(ViMe2SiO1/2)が挙げられ、式中Meはメチル基を表し、Viはビニール基を表す。
【0030】
脂肪族炭素−炭素不飽和結合を有するさらに好適なオルガノポリシロキサン化合物には、2〜17のシリコン原子数を有し、式(III)の単位を含む化合物が挙げられる。
【0031】
6a7b(OR8cSiO4-(a+b+c)/2 (III)
式中、各々のR6は独立して水素原子又は任意選択で置換されたSiC−結合された1〜18の炭素原子数の脂肪族飽和炭化水素基を表し、式(II)のR5基に与えられたように、シリコン原子当たり1つ以内のR6基は水素原子の意味を有することができる。各々のR7は上の式(II)のR5に与えられたように、SiC−結合された2〜18の炭素原子数の脂肪族不飽和炭化水素基を表す。各々のR8は独立して水素原子又は任意選択で置換された1〜18の炭素原子数の炭化水素基を表し、その連鎖は一つ以上の酸素原子数によって割り込みされ得る。a、b及びcは0、1、2又は3を表し、且つa、b及びcの合計は3以下であり、且つ分子当たり少なくとも一つのR7が存在する。
【0032】
式(III)によるオルガノポリシロキサン化合物の典型的例には、a+b=3である式(III)中でM単位を有し、a+b=0である式(III)中で単位Qを有し,及び/又はa+b=1である式(III)中で単位Tを有する化合物が挙げられる。式(III)によるオルガノポリシロキサンは、典型的にはQ単位及び/又はT単位の合計に対するM単位の数値比が2以上であり、例えば2.5以上である。
【0033】
式(III)によるオルガノポリシリキサンは典型的には、2500g/モルより多くない、詳細には1000g/モルより多くない、更に詳細には500g/モルよりも多くない分子量を有する。
【0034】
式(III)によるオルガノポリシロキサン化合物の例には4〜10のシリコン原子数が含まれるものが挙げられる。具体例には以下のものが挙げられる。
【0035】
(ViMe2SiO)3SiH
(ViMe2SiO)4Si
(ViMe2SiO)3(Me3SiO)Si
(ViMe2SiO)3SiMe
(ViMe2SiO)3SiVi
式中、Meはメチル基を表しViはビニール基を表す。
【0036】
特定の実施態様において、式(III)のオルガノポリシロキサンは式(II)のオルガノポリシロキサン、特に18以上のシリコン原子数を有するものとの混和物で使用される。そのような混合物において、式(III)によるオルガノポリシロキサンは硬化性シリコーン組成物中にオルガノポリシロキサン合計量基準で0.01重量%〜10重量%、詳細には0.05重量%〜20重量%の量で使用される。
【0037】
更にまた好適なオルガノポリシロキサン化合物(b)は、米国特許第6,313,217号、同第3,419,593号、同第4,631,310号及び同第3,775,452号に見出され、参照として取り込む。
【0038】
硬化性シリコーン組成物は更に(c)ヒドロシリル化触媒を含み、それは成分(b)の脂肪族炭素−炭素2重結合を有する基と化合物(a)のSi−結合した水素原子との間の付加反応(ヒドロシリル化)のためである。好適なヒドロシリル化触媒には、白金、ロジウム、ルテニウム及びイリジウムのような金属が挙げられ、それらは任意選択で例えば活性炭、酸化アルミニウム又は二酸化珪素のような微粉砕支持材料上に固定される。詳細には、白金及び白金化合物が好適であり、更に詳細にはオルガノポリシロキサンに可溶性のそれらの白金化合物がある。好適な例には微粉金属白金が挙げられ、それらは二酸化珪素、又は活性炭のような支持体上に存在する白金の化合物又は錯体であっても良い。白金の化合物又は錯体には、例えばPtCl4、H2PtCl6・6H2O、Na2PtCl4・4H2Oのような白金ハライド類、白金−オレフィン錯体類、白金−アルコール錯体類、白金−アルコレート錯体類、白金−エーテル錯体類、白金−アルデヒド錯体類、H2PtCl6・6H2Oとシクロヘキサノンの反応物を含む白金−ケトン錯体類、白金−ビニールシロキサン錯体類、特に検出可能な無機的−結合したハロゲン含有物がある又は無いジビニールテトラメチルジシロキサン錯体類、ビス(γ−ピコリン)二塩化白金、及び同様に四塩化白金とオレフィンおよび1級アミンとの、又は2級アミンとの、又は1級アミンと2級アミンとの反応生成物類、例えば四塩化白金の1−オクテン溶液と2級ブチルアミンの反応生成物、又はアンモニウム−白金錯体類、一成分系用の白金触媒類、例えばマイクロカプセル化白金錯体類、又は白金−アセチリド錯体類がある。更にまたこの好ましい白金錯体には、米国特許第4,631,310号に開示されるように白金(O)アルキレン錯体類が挙げられる。
【0039】
ヒドロシリル化触媒はまたマイクロカプセル化した形でも使用でき、その場合、触媒を包む固形物は微粉末でありそしてオルガノポリシロキサン中に不溶である。例にはポリエステル樹脂又はシリコーン樹脂のような熱可塑性樹脂が挙げられる。ヒドロシリル化触媒はまた、例えば米国特許第6,313,217号に開示されるように例えばシクロデキストリン中の包接化合物の形でも使用できる。
【0040】
使用されるヒドロシリル化触媒の量は所望の架橋速度及び経済性考慮に依存する。典型的には、触媒は硬化性シリコーン組成物の(a)及び(b)の合計重量基準の量で、0.1重量ppm〜500重量ppm(100万重量当たりの重量部)、例えば元素状白金で2重量ppm〜400重量ppmで使用する。ヒドロシリル化触媒は、硬化性シリコーン組成物を例えば50℃以上のような適正な高温で例えば1時間以内のような適正な時間で、硬化するに十分な量で使用する。
【0041】
本発明によると、硬化性組成物はアミノ化合物(d)を更に含む。そのアミノ化合物は、(1)Rが水素又は有機基である式−NHRのアミノ官能基と(2)R1はアルキル基又はアリール基を表しR2は2〜6の炭素原子数のアルキル基を表しnは1又は2である式−SiR1n(OR23-nのシリール基とを有する有機化合物である。一つの実施例によると、アミノ化合物(d)は式(IV)で表すことができる。
【0042】
HRN−L−SiR1n(OR23-n (IV)
式中Rは水素又は有機基を表し、R1は2〜6の炭素原子数のアルキル基又はアリール基を表し、R2は2〜6の炭素原子数のアルキル基を表し、nは1又は2の整数を表し及びLは2価の連結基を表し、Lは例えば酸素及び窒素のような一つ以上のヘテロ原子又はエステル基、アミド基又はカルボニル基又はハロゲン基のような官能基を含んで良い脂肪族基又は芳香族炭化水素基を表す。連結基Lの例にはアルキレン基及びアリーレン基が挙げられる。特に好適なアミノ化合物には式(IV)によるアミノ化合物が挙げられ、式中Lは2〜10の炭素原子数を有する脂肪族基であり、Rは水素であり、nは0でありそしてR2はエチル基を表す。上記の式(IV)によるアミノ化合物には3−アミノプロピル トリエトキシシラン、3−アミノプロピル メチル ジエトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン及び下の式のものが挙げられる。
【0043】
【化1】

【0044】
添加されるべきアミノ化合物(d)の量は、一般にアミノ化合物及び硬化性シリコーン組成物のその他の成分及びフルオロポリマー層の特性に依存する。好適な量は所定の実験によって容易に決定できる。硬化性シリコーン組成物に加えるアミノ化合物の典型的な量は、硬化性シリコーン組成物の合計重量基準で0.3重量%〜5重量%であり、特に好適な量は0.5重量%〜4重量%である。
【0045】
硬化性シリコーン組成物には任意選択の添加剤が更に含まれて良い。存在しても良い添加剤には加工時間(ポットライフ)及び硬化性シリコーン組成物の架橋速度の確立を制御するのに役立つものである。当技術分野で通常使用される禁止剤がフルオロポリマー層及びシリコーン層の間の結合形成に悪影響を及ぼさない程度まで添加できる。組成物全体の透明性が留意事項である場合、添加剤はシリコーン層及び組成物全体の所望の透明性に悪影響を及ぼさないように選択しなければならない。
【0046】
上記のように硬化性シリコーン組成物は化合物(a)、(b)、(c)、(d)及びその他の任意の添加剤を均一に混合することによって調製でき、その混合にはスパチュラ、ドラムローラー、例えばメイヤーズミキサ(Myers mixer)、シグモイドブレードミキサ、三本ロール練り機、二本ロール練り機、ベーカー・パーキンズ(Baker Perkins)型ミキサ及びその他公知のミキサのような機械的撹拌機又はミキサのような混合手段を用いる。
【0047】
混合の順番は概して重要ではない。硬化性シリコーン組成物を意図した使用の直前にひとつの混合工程で全ての成分を混合することが可能である。或いは、ある成分を事前混合し、所望であれば2つ以上の貯蔵可能な包装物にし、次いでそれらの意図した使用の直前に最終工程で混合することができる。例えば、ある実施形態では、成分(c)及び(d)及び成分(b)の一部分を任意選択の充填剤のような添加剤と共に混合し第一の包装物を与えることができる。別口で、反応試剤(a)を反応試剤(b)の残りの部分と混合して第二の包装物を与えることができる。次いでこれら二つの包装物は組成物が所望されるまで貯蔵でき、使用時に均一に混合できる。
【0048】
本発明に基づくアミノ化合物が添加できる適切な硬化性シリコーン組成物には例えば米国特許第6,313,217号、米国公開特許2004006173、米国特許第4,531,319号、及び同第5,569,689号に開示されるものが挙げられる。フルオロポリマー層との結合性を改善するためにアミノ化合物に添加できる商業的に入手可能な硬化性組成物の例には、ダウ・コーニング(Dow Corning)社から商業的に入手できるシラスチック(Silastic)(登録商標)9252/900P、及びワッカー・ケミー(Wacker Chemie)社から商業的に入手できるエラストジル(Elastosil)(登録商標)LR7665が挙げられる。典型的には、これらの商業的に入手可能な硬化性シリコーン組成物は成分(a)、(b)、(c)及び更なる添加物を含む二つの包装物で構成される。成分(d)のアミノ化合物は、意図する使用の前に二つの包装物の均一混合の間に添加され得る。
【0049】
(層をセットで結合し防御層を製造する方法)
硬化性シリコーン組成物の成分(a)、(b)、(c)、(d)及び任意選択の添加物の均一な混合物を作製した後、硬化性シリコーン組成物を典型的にはフルオロポリマーフィルムで与えられるフルオロポリマー層と接触状態にさせる。本発明の一実施例においては、硬化性シリコーン組成物をフルオロポリマー層の最上層にコーティングすることができる。本発明の代わりの実施例においては、硬化性シリコーン組成物を例えば防御フィルムとして使用するためにフルオロポリマーの層又はフィルムを結合させることが所望される物品の上にコーティングすることができる。続いて、フルオロポリマー層をその硬化性シリコーン層の最上層に塗布できる。シリコーン層を硬化させ同時にこの層をフルオロポリマー層と結合させることは、シリコーン層と接触しているフルオロポリマー層を50℃〜220℃にシリコーン化合物が硬化するに十分な時間で加熱することにより達成できる。更に、加熱は同時に加圧しながら実施して良い。
【0050】
ここで、本発明を以下の実施例を参照して説明するが、そのことのよる本発明の制限を意図するものではない。特に指示がない限り、すべての部は重量による。
【実施例】
【0051】
以下の実施例及び比較例において、結合性はフルオロポリマー層とシリコーン層の間で試験した。したがって、さまざまなフルオロポリマーとシリコーン化合物の積層物を調製した。
【0052】
略語説明
シラスティック(登録商標)9252/900P:40ジュロメータ硬度、2−包装部型、1:1混合、透明、白金硬化、液状シリコーンゴムであり、ミシガン州ミッドランドのダウ・コーニング社から入手可能である。
【0053】
エラストジル(登録商標)LR7665:2成分白金硬化型、液状シリコーンゴム、ドイツのミュンヘンのワッカー・ケミー社より入手可能である。
【0054】
S60HS:スコッチライト(登録商標)60HS:高強度ガラス微小球、密度0.6kg/L及び圧縮率127MPa(1270バー)、ミネソタ州セントポールの3M社から入手可能である。
【0055】
FC−1:60%TEF、22%VDF及び18%HFPを含むフルオロプラスチック
FC−2:高速押出、多峰性(multimodal)THV、国際公開第WO 00/69969号の実施例に概説された手順で作製した。
【0056】
FC−3:47.6%TFE、23.1%VDF、25.3%HFP及び4%PPV−1を含むフルオロプラスチック
PPV−1:CF3CF2CF2OCF=CF2
シルクエスト(Silquest)(登録商標)A1100:アミノプロピル トリエトキシシラン、コネティカット州ミドルベリ(Middlebury)のクロンプトン(Crompton Corporation)社、現ケムチュラ(Chemtura Corporation)社より入手可能である。
【0057】
1.フルオロポリマーの白金硬化性シリコーン組成物との積層物の調製
トリエトキシ アミノプロピルシランを、実施例に表示したような量で、2−包装の商業的入手可能な白金硬化液状シリコーン組成物の50/50ブレンドに添加した。均一な混合物を作製した後、その混合物を厚さ0.1mmのフルオロポリマーフイルムの二つの層の間に塗布した。その二つのフルオロポリマーシートを厚さ0.1mmのPTFEスペーサによって分離した。硬化後で剥離強度を試験できるようにするために、ポリエステルのフィルム片を一方の端に挿入して剥離フィルムとして作用するようにした。積層物は、熱プレス(Agila 96/90)を使用して120℃で30分間でシリコーン組成物を硬化させ、フルオロポリマー層およびシリコーン層の間で結合形成させて作製した。24時間で室温まで冷却させた後、積層したシートを約1cmの幅に切出しした。層の間の接着性は、インストロン(登録商標)の機械的試験機を使用して、一般に「T−剥離」試験として知られたASTM D−1876に基づいて評価した。クロスヘッド速度は50mm/分であった。報告した結果(N/cm)は二つの試験体の平均値である。
【0058】
2.ガラス微小球を含むフルオロポリマーの白金硬化性シリコーン組成物との積層物の調製
第一工程において、実施例に示された量で商業的入手可能なガラス微小球スコッチライト(登録商標)S60HSを粒状化した形態でフルオロポリマーとブレンドした。フルオロポリマシートを温度250〜280でキャストフィルム押出しによって調製した。第二の工程において、ガラス微小球を含むフルオロポリマーフィルムの積層物を実施例に示されたアミノ化合物の量を添加した商業的に入手可能な2−包装の白金硬化性シリコーン組成物で作製した。上記の方法によって積層物を作製した。
【0059】
(実施例)
実施例1及び2及び比較例C〜1
実施例1及び2の積層物を、一般的手順1によって作製した。表1に示されたフルオロポリマーを0.5%のアミノ化合物シルクエスト(登録商標)A1100を添加したシラスチック(登録商標)9251/900P(50/50ブレンド)に対して積層した。比較例C−1は同一方法でアミノ化合物の添加無しに作製した。硬化および室温まで冷却してから、24時間後に結合強度を測定した。結果を表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
実施例3〜6並びに比較例C−2及びC−3
実施例3〜6において、ガラス微小球スコッチライト(登録商標)S60HSをブレンドしたフルオロポリマーを、アミノ化合物シルクエスト(登録商標)A−1100を含んだ2−包装の白金硬化シリコーン組成物に対して、一般的手順2によって積層した。比較例は同一方法でアミノ化合物の添加無しに作製した。試料の組成及び結合強度の結果を表2に示す。
【0062】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリマー層をシリコーン層に結合する方法であって、
(i)脱フッ化水素化できるフルオロポリマーを含むフルオロポリマー層を供給することと、
(ii)硬化性のシリコーン組成物を含むシリコーン層を供給することであって、
前記硬化性シリコーン組成物は、(a)SiH基を有するオルガノポリシロキサン化合物と(b)脂肪族の炭素−炭素不飽和結合を有するオルガノポリシロキサン化合物と(c)ヒドロシリル化触媒と(d)アミノ化合物とを含み、
前記アミノ化合物は、(1)Rが水素又は有機基である式−NHRのアミン官能基と(2)R1はアルキル基又はアリール基を表し、R2は2〜6の炭素原子数のアルキル基を表し且つnは1又は2である、式−SiR1n(OR23-nのシリル基とを有する、前記シリコーン層を供給することと、
(iii)前記シリコーン層及び前記フルオロポリマー層を接触させて、前記シリコーン層の前記硬化性シリコーン組成物を硬化させること、を含む前記結合方法。
【請求項2】
前記硬化性シリコーン組成物が、前記硬化性シリコーン組成物を少なくとも50℃の高温に供することによって硬化される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アミノ化合物は次の一般式、:
HRN−L−SiR1n(OR23-n
に対応し、
式中、R,R1,R2及びnは請求項1において定義された意味と同一の意味を持ち、且つここでLは2価の有機連結基を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記2価の結合基Lは2〜10の炭素原子数を有する脂肪族基であり、Rは水素であり且つnは0であり且つR2はエチルを表す、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記硬化性シリコーン組成物中の前記アミノ化合物の量は0.3重量%と4重量%との間である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ヒドロシリル化触媒は白金触媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記フルオロポリマーはテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン及びヘキサフルオロピロピレンから誘導される繰り返し単位を含むフルオロポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記フルオロポリマー層はガラスガラス微小球を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1の方法によって得られる物品。

【公表番号】特表2009−504431(P2009−504431A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517105(P2008−517105)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/023316
【国際公開番号】WO2006/138467
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】