説明

シリコーン材料で変性された有機ポリマー

【課題】比較的高い速度で押し出され、改善された疎水性を有するポリオレフィン組成物を提供する。
【解決手段】次の(A)及び(B)を含む組成物:
(A)100重量部の熱可塑性樹脂;及び
(B)少なくとも1重量部の相互作用性ジオルガノポリシロキサン加工助剤であって、数平均分子量が少なくとも10,000であるもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相互作用性のジオルガノポリシロキサンを熱可塑性樹脂に加える、高い疎水性の熱可塑性樹脂に関する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本発明者等は、少量の相互作用性ジオルガノポリシロキサンを熱可塑性樹脂に加えると相当に改善された性質が得られることを見出した。
【0003】
本発明は、次の(A)及び(B)を含む組成物である:
(A)100重量部の高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン、エチレンコポリマー、ポリアミド、ポリアミン及びポリエステルからなる群から選ばれる熱可塑性樹脂;及び
(B)少なくとも1重量部の数平均分子量が少なくとも10,000の相互作用性ジオルガノポリシロキサン。
【発明の効果】
【0004】
これらの組成物は、改善された疎水性、よりよい加工性、よりよい注型性及び改善された風合いのような驚くべき性質を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明の成分(A)を構成する熱可塑性樹脂は、好ましくは高密度ポリオレフィンであるが、他の熱可塑性樹脂、例えばポリアミド、ポリアミン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン又はアクリル樹脂であってもよい。ここで用いている用語「熱可塑性樹脂」は、熱に曝されると軟化し、室温に冷却されると元の固体の状態に戻るポリマーのことを言う。この熱可塑性樹脂がポリオレフィンであるときは、それは、オレフィンのホモポリマー、1又はそれ以上のオレフィン及び/又は40モル%までの1又はそれ以上のオレフィンと共重合可能なモノマーの共重合体(interpolymer)から選ばれる。適当なポリオレフィンの例としては、プロピレン、ブテン−1、イソブチレン、ヘキセン、1,4−メチルペンテン−1、ペンテン−1、オクテン−1、ノネン−1又はデセン−1のホモポリマーがある。これらオレフィンの2又はそれ以上の共重合体(interpolymer)も、成分(A)として用い得る。更に、それらはまた、ビニル化合物、ジエン化合物又はオレフィンと共重合可能な他の化合物と共重合されていてもよい。
前記ポリオレフィンは、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブテン及びエチレンコポリマーから選ばれるとよい。
【0006】
適当な共重合体(interpolymer)の特別な例を挙げれば、エチレンベースのコポリマー、例えばエチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−ブテン−1コポリマー、エチレン−ヘキセン−1コポリマー、エチレン−オクテン−1コポリマー、エチレン−ブテン−1コポリマー;又はエチレンと前記オレフィンの2もしくはそれ以上との共重合体(interpolymer)がある。
【0007】
成分(A)は、上記ホモポリマー又は共重合体(interpolymer)の2又はそれ以上のブレンドであってもよい。例えば、このブレンドは、上記系の1つと以下のものの1又はそれ以上との均一な混合物であり得る:ポリプロピレン;高圧法低密度ポリエチレン;高密度ポリエチレン;ポリブテン−1;及び極性モノマー含有オレフィンコポリマー、例えばエチレン/アクリル酸コポリマー、エチレン/アクリル酸コポリマー、エチレン/メチルアクリレートコポリマー、エチレン/エチルアクリレートコポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、エチレン/アクリル酸/エチルアクリレートターポリマー及びエチレン/アクリル酸/酢酸ビニルターポリマー。
【0008】
通常、これらの系は密度が0.85〜0.97g/ccで、より好ましくは0.875〜0.930g/ccであり、重量平均分子量(Mw)が60,000〜200,000である。
【0009】
上記ポリマーは当技術分野で周知であり、それについてのこれ以上の記載は、不必要であると考えられる。
【0010】
本発明のジオルガノポリシロキサン(B)は、数平均分子量(Mn)が10,000〜1,000,000である。好ましくは、成分(B)のMnは、40,000〜400,000、より好ましくは75,000〜400,000である。
【0011】
本発明の組成物の多くは、従来の押し出し装置で加工可能である。これらの組成物が押し出されるときは、成分(B)の分子量は前記組成物の加工特性に影響を与えるであろう。Mnが10,000未満であるときは、この組成物は過剰のスクリュースリップ、例えば与えられた押出機について予想されるよりも小さい1分間あたり回転数(RPM)における出力を示す傾向がある。更に、より低い分子量では、前記組成物が2回目に押し出されるとき押出機出力が著しく減少する。そのような第2の押し出しはしばしば工業上の操作において必要である。例えば、製造における誤り、例えば正確でない押出機の設定、又は重要な成分の除外/量的不充分があれば、「規格外」材料の再押し出しが必要となる。同様に、インフレート操作においては、平坦にしたバブルの端の部分はトリムされ、押出機にリサイクルされる。更に、スクラップが返され、リサイクルされたとき、再押し出しがなされ、この過程は当技術分野で「消費者後リサイクル(post consumer recycle)」として知られている。他方では、Mnが1,000,000を超えると、ジオルガノポリシロキサンをポリエチレン中に混合するのは、そのようなシロキサンが用いられ得るとしても、困難になる。
【0012】
本発明の実施にとってやはり重要なのは、本発明の押し出しプロセスにおいて使用されるダイの種類である。前記組成物は金属のダイを通して押し出したり、射出するのがしばしば必要である。好ましいダイはステンレススチールから作られるが、クロム、ニッケル又は白金のダイも使用できる。ダイはめっきされてもよいから、前記金属は中実のクロム又は白金である必要はない。この金属ダイは前記ポリジオルガノシロキサンの相互作用性基を引きつけ、ポリジオルガノシロキサンをダイへ移行させる。その結果、前記ポリジオルガノシロキサンは集まり、冷却された熱可塑性樹脂の表面に集中し、フィルムに改善された性質、例えばよりよい疎水性、よりよい注型適性及びよりよい風合いを与える。
【0013】
成分(B)は、Mnが100,000〜1,000,000、最も好ましくは75,000〜450,000の範囲にあるガムである。成分(B)は、前記有機基が独立にメチル基もしくはフェニル基から選ばれる線状又は分岐状のポリマーであってよい。
【0014】
適当なジオルガノポリシロキサンは、ポリジメチルシロキサンホモポリマー、ジメチルシロキサン単位及びメチルフェニルシロキサン単位から本質的になるコポリマー、ジメチルシロキサン単位及びジフェニルシロキサン単位から本質的になるコポリマー、ジフェニルシロキサン単位及びメチルフェニルシロキサン単位から本質的になるコポリマー及びメチルフェニルシロキサン単位のホモポリマーを含む。そのようなポリマー又はコポリマーの2又はそれ以上の混合物も成分(B)として使用できる。
【0015】
本発明にとって、ジオルガノポリシロキサン(B)は、少なくとも1つの、好ましくは2又はそれ以上の相互作用性の基、例えばヒドロキシル基、アミン基又はアルケニル基を分子中に含んでいなければならない。用語「相互作用性」は、この基が金属の表面、例えば押し出しダイに引きつけられる傾向のことをいう。最も好ましいのは、ヒドロキシル基である。この相互作用性基は分子の端に、鎖に沿って、又は両方の位置に存在してもよい。好ましくは、この相互作用性基は、ヒドロキシル基の場合のように、そしてジオルガノヒドロキシシロキシ基、例えばジメチルヒドロキシシロキシ、ジフェニルヒドロキシシロキシ及びメチルフェニルヒドロキシシロキシの形で、分子鎖末端に存在する。この相互作用性基が鎖にそってのみ存在するときは、ジオルガノポリシロキサンの末端基は、非反応性成分、典型的にはジ−又はトリオルガノシロキシ種、例えばジメチルビニルシロキシ又はトリメチルシロキシであってよい。
【0016】
ジオルガノポリシロキサン(B)は50モル%までのメチル基を含む線状ポリジメチルシロキサンであることが好ましい。最も好ましくは、それは、ジメチルヒドロキシシロキシ末端基を有するポリジメチルシロキサンホモポリマーである。
【0017】
本発明の組成物は、少なくとも1重量部のジオルガノポリシロキサン(B)を100重量部の熱可塑性樹脂(A)中に充分に分散することによって調製される。より多くの成分(B)の量(50部まで)を用いて更なる加工のための組成物のマスターバッチを形成するために使用することができる。最終製品のためには、成分(A)100重量部あたり1〜5重量部の成分(B)が使用される。好ましくは、(A)100重量部あたり1〜4重量部の成分(B)、より好ましくは1〜3重量部の成分(B)が使用される。(A)100重量部あたり1部未満の量でジオルガノポリシロキサンが加えられるときは、特に高速度の押し出し又は射出では、対応する未変性のポリオレフィンに対して、接触角における改善が殆どない。同様に、(A)100重量部あたり(B)が10部より多量であれば、押し出し物の表面品質が悪化しはじめる。更に、(A)100重量部あたり(B)が10部より多量に使用されれば、過剰量のシロキサンが押し出し物の表面に観察され、これは印刷性及びシール性のような性質に悪影響を与える。加えて、最終の押し出し物の物性が悪化する。従って、好ましい組成範囲は良好な接触角、疎水性をもたらし、また加工の間に、特に高い押出機出力速度で、スクリュースリップが低い。
【0018】
ジオルガノポリシロキサン(B)のポリエチレン(A)への分散は、高温での熱可塑性樹脂中への添加物の混合の従来法のいずれによっても通常達成することができる。例えば、2つの成分は、ミキシングヘッドを備え、又は備えていない二軸スクリュー押出機、バンバリーミキサー、二本ロールミル又は単軸スクリュー押出機中でブレンドできる。これらの成分を混合するのに使用される装置は、(A)中への(B)の均一な分散が達成される限り、特に限定されない。好ましくは、分散された粒度が10μm 以下であることである。
【0019】
上記成分に加えて、本発明組成物は、以下の各々を1wt%まで含んでいてもよい:充填材、硬化剤、滑剤、U.V.安定剤、酸化防止剤、触媒安定剤及びポリオレフィンの変性に一般に使用される他の加工助剤。これらの添加剤のいずれかを1wt%より多く使用すると、本発明の目的に障害が起こり、例えば加工及び/又は得られる押し出し物の特性が最適でなくなる。これは、良好な表面品質が非常に重要であるインフレーションフィルムの製造の場合に、特に重要である。更に、本発明の全組成物の15wt%まではブロッキング防止剤を含み得る。
【0020】
上記添加剤の特別な例としては次の物質があるが、これらに限られない。珪藻土、オクタデシル−3−(3,5−ジ−5−ブチル 4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、ビス(2−ヒドロキシエチル)タローアミン、ステアリン酸カルシウム、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン及び2,4,4−トリメチル 1,2−ペンタアミンを有するN,N−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−1,6−ヘキサンジアミンのポリマー、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールを有するコハク酸ジメチルとのポリマー、2,2−チオビス〔4−t−ブチルフェノラート〕n−ブチルアミンニッケル、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、ポリエチレングリコール、エルカミド、二酸化チタン、アルミナ、水和アルミナ、タルク、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシ=ベンゾフェノン、二酸化ケイ素、酸化亜鉛、硫化亜鉛及びステアリン酸亜鉛。
【0021】
本発明によれば、前記ジオルガノポリシロキサン(B)は、熱可塑性樹脂(A)に添加され、この樹脂が高温で押し出されて成形品(例えば、円筒・円柱形断面のもの、例えばフィルム、リボン、棒、環、繊維、シート、瓶、トレー、壺等)を成形するときにそのための加工助剤として役立つ。得られた押し出し物は、ジオルガノポリシロキサン(B)を含まない押し出し物に較べて改善された疎水性を持つ。この方法は、キャストフィルム又はインフレーションフィルムの製造に特に適用できるが、押出し吹込み成形;射出成形;パイプ、ワイヤー、又はケーブル押し出し;繊維の製造;及び全ての同様のポリオレフィン樹脂の高剪断溶融加工にも有用である。簡単に言えば、インフレーションフィルムは典型的には「バブル」法により製造され、この場合ポリオレフィン組成物(即ち、メルト)は環状ダイを通して押し出され、バブルの形状のフィルムを形成する。このバブルはダイから押し出し速度よりも大きな速度で引き出され、その間、正の空気圧がバブル内に維持される。この方法で製造されたフィルムは、半径方向及び軸方向に延伸される結果、二軸配向され、この配向は一般にこのフィルムに改善された機械的性質を与える。キャストフィルムは一般にスロットダイを通してポリオレフィンを押し出し、その後1又はそれ以上の冷却ロール上で冷却することにより調製される。この組成物が射出成形されるときは、ダイはやはり金属でなければならないか、又は熱可塑性樹脂が射出される型はステンレススチールのような金属、又は特にクロム、ニッケルもしくは白金でめっきされていなければならない。
【0022】
成分(B)を押出機のスクリュー部分に注入し、一方ポリエチレンペレットをそのホッパーを通して供給することにより比較的均一な分散体を得ることが可能であるが、最初に成分(B)を成分(A)の一部に充分に分散してマスターバッチを形成するのが好ましい。1〜50wt%、好ましくは20〜50wt%のジオルガノポリシロキサンを含むこのマスターバッチ(又は濃縮物)を粉砕し又はペレット化し、残りの粒子を追加の熱可塑性樹脂(マトリックス)とドライブレンドし、次いでこのブレンドを押し出し又は射出して本発明の適当な組成物を形成するとよい。このマスターバッチ法の使用は、熱可塑性樹脂マトリックス内でのジオルガノポリシロキサンのより均一な分散をもたらす。
【0023】
マスターバッチの調製に使用される熱可塑性樹脂は、マトリックスの熱可塑性樹脂と同じでも異なってもよい。好ましくは、この2つは同じ一般的タイプである(即ち、マスターバッチ及びマトリックスで同じ熱可塑性樹脂である)。
【0024】
本発明の変性された熱可塑性樹脂は種々の改善された性質を持つ。例えば、本発明者等は、ポリシロキサンは押出機の金属ダイ又は射出成形機の金属に引きつけられ、ポリシロキサンは熱可塑性樹脂の表面に移行すると考えている。この移行は、今度は熱可塑性樹脂の表面に改善された性質、例えば改善された疎水性及び注型適性を与える。従って、本発明から作られたフィルム及び成形品、例えば瓶又は容器はよりよい疎水性及び/又は注型適性を有する。
【0025】
更に、熱可塑性樹脂の表面でのシリコーンの集合は、改善された「風合い」を与える。この性質は、熱可塑性樹脂がポリプロピレンであり、繊維の感覚性及び触質性が重要である不織繊維を製造するのに使用されるとき、重要である。
【0026】
本発明の組成物は当技術分野で周知の他のプロセスステップ、例えば射出成形、射出吹込み成形、押出し吹込み成形、インフレーション法、キャストフィルム法、異形押出し、回転成形、圧縮成形、トランスファー成形、熱成形及びカレンダー成形に提供することができる。
【0027】
加えて、本発明のポリオルガノシロキサンを加えれば、以下の例に示すようにこの熱可塑性樹脂のプロセス効率も改善する。
【実施例】
【0028】
以下の例は特許請求の範囲に、より充分に定義された発明を更に説明するために提供するものである。特に断らない限り、これらの例における全ての部及び%は重量基準であり、全ての測定は25℃で得られたものである。
【0029】
特定の液の1滴と特定の基体の間の接触角をゴニオメーターを用いて測定した。このゴニオメーターはこの1滴の基体に対する側面の接触状態の角度を測定する。試験される物質はこの液体又は基体であり得る。これらの例において、蒸留水を用い、基体を変化させた。観察された角度は、液体及び基体の両方が何であるかと共に度で報告する。この方法は、ASTM D 724と同様である。
【0030】
測定をするために、ゴニオメーターのオプティカルベンチを水準合わせした。特定の基体を支持台の上に置き固定した。この台は基体又はフィルムが、顕微鏡又はビデオカメラを通してはっきりと見れるように調節した。次いで、表面へ液体を直接に接触させることにより、基体上に1滴(直径2.5mm)を置いた。この液体は前記表面上に落とさなかった。そうでなければ、置いている間に歪んだであろう。照明は最適のレベルに調節し、比較的明るい背景に対して暗い滴のシルエットに顕微鏡の焦点を合わせた。滴上の左手及び右手の固/液界面の両方の接触角を測定した。これを報告する。この手順は3回繰り返し、平均値を最も近い度で報告する。
【0031】
例において、以下の物質を用いた。
【0032】
HDPE=線状低密度ポリエチレン;密度0.923g/ccを持ち、Nova Chemical (Lemester,MA)によってDMDHTM 6147として市販されている高密度ポリエチレン。
【0033】
ナイロン6=Allied Signal,(Mt.Morris,NY)による、CapronTM 8202。
【0034】
ポリエステルテレフタレート=0.64 IV PET,Wellman,Inc.,(Columbia,SC)。
【0035】
(例1)
Mnが400,000で、25℃での粘度が2.5×107 mPa・s(cp)であるヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンを、HDPE、PET又はナイロン6に配合し、次いでパネルに成形し、疎水性について試験した。以下の手順を用いた。
【0036】
L/D(長さ/直径)が40/1でスクリュー直径が18mmであるLeistritzTM Micro 18共回転二軸スクリュー押出機を備えたHaake RheocordTM 90システム二軸スクリュー押出機(Haake Corporation,Paramus,New Jersey)で調製した。HDPE、PET又はナイロン6及びシロキサンを高温で充分に混合することにより、複数の混合物を配合した。この押出機の各室の8つのゾーンの温度を、熱可塑性樹脂によって、表1に述べるように設定した。
【0037】
【表1】

【0038】
HDPEの例については、充分なシロキサンをLDPEに加え、シリコーンの全濃度が、全組成物重量の25wt%となるようにした。PET及びナイロン6の例については、充分なシロキサンをこれらのポリマーに加え、シリコーンの全濃度が10wt%となるようにした。これらの「マスターバッチ」組成物はストランドダイを通して水浴中で冷却してペレットに細断した。
【0039】
次いで、上記方法で作られたマスターバッチをHaake ExtruderTMで再配合し、この度は熱可塑性樹脂を加えて、0.5wt%、1.0wt%及び2.5wt%のシリコーンを有する組成物を作った。この手順を各熱可塑性樹脂、HDPE、PET及びナイロン6について繰り返した。これは、各熱可塑性樹脂、PET及びナイロン6について、0.5wt%、1.0wt%及び2.5wt%の、並びにHDPEについて1.0wt%のシリコーンを有するペレットを生じた。次いで、これらの組成物を用いて、射出成形し、ペレットを最終的に疎水性について試験した。
【0040】
15/1 L/Dで、スクリュー直径が30mmで、スクリュー圧縮比が2/1である一般目的の単軸スクリューを有するArburgTM (35トン)31.8 Mgクランプレーティング(clamp rating)射出成形機中で、101.6×101.6×3.2mm(4×4×0.125インチ)の複数のパネルを作った。3つの加熱ゾーン、加熱ノズル(トップサイズ=2mm)及びパネルを作るための加熱金型キャビティーがあった。ノズル温度、成形されるプラスチック材料温度及び各ゾーンの温度を以下に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
これらのペレットを射出成形機に入れ、各特定のwt%のシリコーン及び熱可塑性樹脂について同じサイズのパネルに射出成形した。次に、各々について水接触角を測定した。
【0043】
10個のパネルの平均水接触角及び標準偏差を表3、4及び5に示す。
【0044】
【表3】

【0045】
【表4】

【0046】
【表5】

【0047】
高密度ポリエチレン(表3)については、パネルは、添加剤のない試験フィルムよりも疎水性において4%の改善を示した。同様に、PET(表4)は、やはり添加された添加剤の量によって、4%までの疎水性の改善を示した。ナイロン6パネル(表5)の場合には、添加剤は、添加されたシリコーンの量に従って、5%〜13%の疎水性の改善を示した。
【0048】
(例2)
以下の例は、本発明の表面偏析現象、即ち、ヒドロキシル末端シロキサンのフィルム表面への移行を明らかにする。
【0049】
例1のヒドロキシ末端ジメチルシロキサンのマスターバッチを、このシロキサンとポリプロピレンとを高温で充分に混合することによって調製した。この特定のマスターバッチを再びHaake押出機で調製した。この押出機の各々の室の8つのゾーンの温度を220℃に設定した。各々の場合に、前記マスターバッチ組成物をストランドダイを通して押し出し、水浴中で冷却してペレットに細断した。
【0050】
上記のマスターバッチをポリプロピレンマトリックス中に充分に分散し、押し出しによりペレットを製造した。使用したマスターバッチの量を計算して、この混合物中、ポリプロピレンに対する全シリコーン濃度2.5wt%を与えた。
【0051】
押出機中で配合したのち、これらペレットを、L/Dが24/1で220℃の3つの加熱ゾーンを持つインフレーションフィルム押出機(Davis StandardTM)モデルKL−075 1.90cm(3/4インチ)フロアモデル(floor model)押出機に入れた。220℃に維持した直径6.35cm(2.5インチ)の環状ステンレススチールダイを用いてバブルを作った。このバブルの内側の圧力は、膨張比が2となるように設定され、こうして12.7cm(5インチ)の「インフレート」チューブフィルムを作った。このエアリングは、バブルの周りに吹き付けてフィルムを冷却し結晶化させるために室内空気を用いた。折り畳みゲート及びピンチロールシステムでフィルムを寄せ集めた。接触角を測定するためにサンプルを採った。
【0052】
フィルムを1×1cmの正方形に切断し、電子走査化学分析(ESCA)のためにサンプルを調製し、それらを多サンプルステージ上に乗せた。
【0053】
これら分析の結果を原子百分率で以下に示す。表面組成(水素を除く)の百分率を深さ5nm(50Å)まで測定した。各サンプルについて分析した表面は800×300μm であった。探査(survey)スペクトル並びに多重(multiplex)(detail)酸素、炭素及びケイ素のスペトルを各サンプルについて取った。
【0054】
裸のポリプロピレンは酸素が0.03%、炭素が99.97%、ケイ素が0.0%であった。本発明フィルムは、酸素が0.4%、炭素が98.6%、ケイ素が0.2%であった。これらの測定は、変性ポリプロピレンフィルムの表面に多量のシリコーンがあることを示す。更に、このポリプロピレンフィルムは非常に絹様の感触を持ち、優れた風合いを持っていた。
【0055】
(例3)
この例は、本発明の添加剤を使用すると、与えられた量の押し出し物の加工に必要な単位時間当たりのエネルギー量を減らすことによって、熱可塑性樹脂の加工効率を改善することを証明する。
【0056】
高密度ポリエチレン(HDPE)中の例1のヒドロキシル末端ジメチルシロキサンのマスターバッチを、前記シロキサン及び前記熱可塑性樹脂を高温で充分に混合することにより、再び調製した。これらのマスターバッチを再びHaakeTM押出機で調製した。この押出機の各室の8つのゾーンの温度を、ゾーン1については185℃とし、他の全ては170℃に設定した。このマスターバッチ組成物をストランドダイを通して押し出し、水浴中で冷却してペレットに細断した。
【0057】
上記マスターバッチをHDPEマトリックス中に充分に分散した。使用したマスターバッチの量は、HDPE中の全シリコーン濃度が2%、6%及び10%となるように計算した。非変性裸のHDPEも対照として試験した。
【0058】
使用した製品押出機は、RecoTM共押し出しシステムを持ったBattenfeld FisherTM VK 1.1ボトル吹込成形機であった。このラインは、コアーが35mmで、スキンが35mmで、最大rpmが120及び150で40kg/hrの出力が可能な2つの押出機を持っていた。各押出機は、混合ペグ(mixing pegs)、MaddoxTMミキサー及びスパイラルダイを持っていた。
【0059】
押し出しの間、押出機のアンペア数(即ち、電力消費)、ダイ付近の圧力(バールで示す)及び押し出し物出力(フィート/分で示す)を押出機速度(1分当たりの回転数=rpm)の関数として記録した。アンペア数及び圧縮試験の結果を表6に示す。
【0060】
【表6】

【0061】
上記の結果は、本発明の添加剤を添加すると、押し出し圧力に大した変化無しに、押し出しの効率が凡そ50%改善されることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工された熱可塑性樹脂が未変性の熱可塑性樹脂に比べて改善された疎水性を示すことになる熱可塑性樹脂の加工方法であって、
高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン、エチレンコポリマー、ポリアミド、ポリアミン及びポリエステルからなる群から選ばれる熱可塑性樹脂100重量部を含む熱可塑性樹脂(A)に対して、ヒドロキシル基及びアルケニル基からなる群から選ばれる少なくとも1つのペンダント基又は末端基を有し、かつ、数平均分子量が10,000〜1,000,000であるジオルガノポリシロキサン1〜5重量部を含む加工助剤(B)を添加することにより均一ブレンドを形成し、そして
得られたブレンドを、金属ダイを通して加工することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記加工された樹脂を、射出成形、射出吹込成形、押出吹込成形、インフレート法、キャストフィルム法、異形押出し、回転成形、圧縮成形、トランスファー成形、熱成形及びカレンダー成形からなる群から選ばれる更なる加工工程に付す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂(A)が高密度ポリエチレン又はポリプロピレンである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記加工助剤(B)がポリジメチルシロキサンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
(A)高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン、エチレンコポリマー、ポリアミド、ポリアミン及びポリエステルからなる群から選ばれる熱可塑性樹脂100重量部、並びに
(B)ヒドロキシル基及びアルケニル基からなる群から選ばれる少なくとも1つのペンダント基又は末端基を有し、かつ、数平均分子量が10,000〜1,000,000であるジオルガノポリシロキサン1〜5重量部
を含む最終製品。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂(A)が高密度ポリエチレン又はポリプロピレンである、請求項5に記載の最終製品。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂(A)がポリエチレンとブレンドされる、請求項5に記載の最終製品。
【請求項8】
(A)高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン、エチレンコポリマー、ポリアミド、ポリアミン及びポリエステルからなる群から選ばれる熱可塑性樹脂100重量部、並びに
(B)ヒドロキシル基及びアルケニル基からなる群から選ばれる少なくとも1つのペンダント基又は末端基を有し、かつ、数平均分子量が10,000〜1,000,000であるジオルガノポリシロキサン1〜50重量部
を含む組成物を、熱可塑性樹脂の疎水性を改善するために使用すること。

【公開番号】特開2007−327072(P2007−327072A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237940(P2007−237940)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【分割の表示】特願平9−233051の分割
【原出願日】平成9年8月28日(1997.8.28)
【出願人】(590001418)ダウ・コ−ニング・コ−ポレ−ション (166)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【Fターム(参考)】