説明

シリンジのシリンダーを保持するアタッチメント、及びそのアタッチメントが装着されるシリンジ駆動装置

【課題】シリンジ駆動装置に装着するアタッチメントであって、外形形状が異なる2種類のシリンジを確実に保持することができるアタッチメントを提供する。
【解決手段】後端側にフランジが設けられたシリンダーと、前記シリンダーの内部に移動自在に挿入されたピストンとから構成されるシリンジの前記ピストンを駆動するシリンジ駆動装置に装着されるアタッチメントであって、アタッチメント本体1に、第1のシリンジのシリンダーが嵌る第1の凹部2と、前記第1のシリンジとはシリンダーの外形が異なる第2のシリンジのシリンダーが嵌る第2の凹部4と、前記第1と第2のシリンジのシリンダーのフランジが共通して嵌るフランジ受け溝3とが、前記第1の凹部2、前記フランジ受け溝3、前記第2の凹部4の順序で連接して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジのシリンダーを保持するアタッチメントと、そのアタッチメントが保持するシリンジのピストンを駆動するシリンジ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、病院内で、例えば点滴用の薬剤を調合する場合には、瓶詰めされた複数の薬剤をシリンジで抜き出すと共に、このシリンジ内で薬剤を混合して調合している。そして、この調合後の薬剤は、シリンジから押し出され、例えば点滴袋に充填される。
【0003】
このシリンジは、一端に注液口と他端に開口とをそれぞれ有する筒状のシリンダーと、このシリンダーの他端の開口からこのシリンダー内に移動自在に挿入されたピストンとから構成される。このシリンジを用いて瓶内から薬剤を引き出す際には、ピストンをシリンダーから引き出し、また薬剤を点滴袋等に押し出す際には、ピストンをシリンダー内に押し込む。
【0004】
しかしながら、瓶内から薬剤を引き出すためには、ピストンを引く際に発生する負圧に抗してピストンを引き続けなければならず、また薬剤を点滴袋等に押し出すためには、その押し出し経路に介在するフィルターや、シリンダーの狭い注液口、その注液口に設けた注射針などにより発生する正圧に抗してピストンを押し続けなければならない。この時の負圧や正圧による反力は数十Nと極めて大きい。
【0005】
そこで、従来より、シリンジ操作を支援する装置として、シリンジのピストンを駆動するシリンジ駆動装置が提案されている。例えば特許文献1には、本体に設けたフランジ受け溝に、シリンダーの後端側に設けられた滑り止め用のフランジが嵌められた状態で、本体に設けた支持部材によりシリンダーの外形を保持するシリンジ駆動装置が開示されている。また例えば特許文献2には、シリンダーの後端側を保持するシリンジインターフェースを備えたシリンジ駆動装置が開示されている。
【0006】
ここで、特許文献2に開示されているシリンジ駆動装置について、さらに詳しく説明する。このシリンジ駆動装置には、その本体の前壁に、その前方へと伸びるクレイドルが取り付けられている。そのクレイドルの前端には、2つのシリンジアダプタ保持部が並列に設けられている。それらのシリンジアダプタ保持部はシリンジアダプタをそれぞれ保持する。シリンジアダプタは、それが保持するシリンダーの外形に合わせた略半円状の内面と、そのシリンダーの後端側に設けられたフランジが嵌るフランジ受け溝を有し、シリンダーの後端側を保持する。シリンジアダプタ保持部に嵌められたシリンジアダプタにシリンジが保持されると、そのシリンジのシリンダーはクレイドルの前端から前方へ突出し、そのピストンはその後方へ、すなわちシリンジ駆動装置の本体の前壁へ向かって突出する。シリンジインターフェースは、これらのクレイドル、シリンジアダプタ保持部およびシリンジアダプタからなり、シリンジ駆動装置の本体の前壁に取り付けられている。このシリンジ駆動装置は、その本体に、シリンジインターフェースに保持された2つのシリンジのピストンをそれぞれ個別に駆動する駆動部材を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭59−51400号公報
【特許文献2】特許第4256677号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上説明したように、従来より、シリンジ操作を支援する装置として、シリンジのピストンを駆動するシリンジ駆動装置が提案されている。しかしながら、シリンジは、容量ごとにシリンダーの外形(長さや直径)が異なり、さらに、同じ容量であってもメーカーごとにシリンダーの外形が異なる。そのため、本体に設けたフランジ受け溝にシリンダーのフランジが嵌められた状態で、本体に設けた支持部材によりシリンダーの外形を保持するシリンジ駆動装置においては、ある外形形状のシリンジのみが確実に保持され、他の外形形状のシリンジの保持が不安定になる。それ故、シリンジの保持を確実にするために、そのシリンジ駆動装置の使用者は、使用するシリンジの外形形状ごとにシリンジ駆動装置を準備する必要があった。また、シリンジアダプタを用いてシリンジを保持するシリンジ駆動装置においては、シリンジアダプタごとに、確実に保持できるシリンジの外形形状が異なるため、そのシリンジ駆動装置の使用者は、使用するシリンジの外形形状ごとにシリンジアダプタを準備する必要があった。
【0009】
さらに、従来のシリンジ駆動装置においては、外形形状が異なる複数のシリンジを保持すると、それらのシリンジに取り付けられた注射針の先端の位置が一定せずにばらつき、薬液の吸引や押出しの作業性が悪化するという問題もあった。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑み、外形形状が異なる2種類のシリンジを確実に保持することができるアタッチメント、及びそのアタッチメントが装着されるシリンジ駆動装置を提供することを目的とする。
【0011】
さらに本発明は、外形形状が異なる2種類のシリンジを保持した場合でも、シリンジ駆動装置において、それらのシリンジに取り付けられた注射針の先端の位置を一定にすることができるアタッチメント、及びそのアタッチメントが装着されるシリンジ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のアタッチメントは、後端側にフランジが設けられたシリンダーと、前記シリンダーの内部に移動自在に挿入されたピストンとから構成されるシリンジの前記ピストンを駆動するシリンジ駆動装置に装着されるアタッチメントであって、アタッチメント本体に、第1のシリンジのシリンダーが嵌る第1の凹部と、前記第1のシリンジとはシリンダーの外形が異なる第2のシリンジのシリンダーが嵌る第2の凹部と、前記第1と第2のシリンジのシリンダーのフランジが共通して嵌るフランジ受け溝とが、前記第1の凹部、前記フランジ受け溝、前記第2の凹部の順序で連接して形成されていることを特徴とする。
【0013】
上記した本発明のアタッチメントにおいて、前記フランジ受け溝にフランジが嵌められ前記第1の凹部でシリンダーが支持された前記第1のシリンジの先端から、前記第1の凹部と前記フランジ受け溝と前記第2の凹部が連接する方向における前記アタッチメント本体の中心位置までの距離と、前記フランジ受け溝にフランジが嵌められ前記第2の凹部でシリンダーが支持された前記第2のシリンジの先端から前記中心位置までの距離とが等しくなる位置に前記フランジ受け溝が形成されていてもよい。
【0014】
本発明のシリンジ駆動装置は、上記した本発明のアタッチメントが嵌合される嵌合部が設けられており、前記嵌合部に嵌合した前記アタッチメントが保持するシリンジのピストンを駆動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のアタッチメントの好ましい形態によれば、外形形状が異なる2種類のシリンジを確実に保持することができる。したがって、本発明のアタッチメント及びシリンジ駆動装置の好ましい形態によれば、シリンジ駆動装置の使用者は、使用するシリンジの外形形状の種類よりも少ない数のアタッチメントを準備すれば済む。
【0016】
また、本発明のアタッチメントの好ましい形態によれば、外形形状が異なる2種類のシリンジを保持した場合でも、シリンジ駆動装置において、それらのシリンジに取り付けられた注射針の先端の位置を一定にすることができる。したがって、本発明のアタッチメント及びシリンジ駆動装置の好ましい形態によれば、シリンジ駆動装置において、外形形状が異なる少なくとも2種類のシリンジにそれぞれ取り付けられた注射針の先端の位置を一定にすることができ、ひいては薬液の吸引や押出しの作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係るアタッチメントの斜視図
【図2】本発明の実施の形態に係るアタッチメントの平面図
【図3】本発明の実施の形態に係るアタッチメントの正面図
【図4】本発明の実施の形態に係るアタッチメントの背面図
【図5】本発明の実施の形態に係るアタッチメントによりシリンジが保持される様子を示す斜視図
【図6】本発明の実施の形態に係るアタッチメントにより第1のシリンジと第2のシリンジが保持される様子を示す平面図
【図7】本発明の実施の形態に係るシリンジ駆動装置にアタッチメント本体を嵌合させる様子をシリンダー押さえ部及びピストン拘束部を外した状態で示す斜視図
【図8】本発明の実施の形態に係るシリンジ駆動装置の概略構成を示す斜視図
【図9】本発明の実施の形態に係るシリンジ駆動装置のシリンジ近傍の主要部の概略構成を示す平面図
【図10】本発明の実施の形態に係るシリンジ駆動装置の機構部の第一状態を示す斜視図
【図11】本発明の実施の形態に係るシリンジ駆動装置の機構部の第二状態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のアタッチメント及びシリンジ駆動装置に係る実施の形態について、図面を参照しながら説明する。但し、先行して説明した要素については同一符号を付して、適宜説明を省略する。
【0019】
図1は本発明の実施の形態に係るアタッチメントの斜視図、図2は本発明の実施の形態に係るアタッチメントの平面図、図3は本発明の実施の形態に係るアタッチメントの正面図、図4は本発明の実施の形態に係るアタッチメントの背面図、図5は本発明の実施の形態に係るアタッチメントによりシリンジが保持される様子を示す斜視図である。
【0020】
図1〜図4に示すように、このアタッチメントの本体1には、第1の凹部2とフランジ受け溝3と第2の凹部4とがこの順序で直線的に連接して形成されている。第1の凹部2の内面は、任意に選択された第1のシリンジのシリンダーの外形を確実に保持できるように、その外形に合わせた形状を有する。第2の凹部4の内面は、第1のシリンジとはシリンダーの外形が異なる任意に選択された第2のシリンジのシリンダーの外形を確実に保持できるように、その外形に合わせた形状を有する。
【0021】
また、フランジ受け溝3は、第1と第2のシリンジのシリンダーのフランジが共通して嵌り込むように形成されている。詳しくは、図4に示すように第1の凹部2と第2の凹部4の底部は同じ高さとなっており、フランジ受け溝3は、アタッチメント本体1により第1のシリンジと第2のシリンジが保持されたときに、それらのシリンジのシリンダーが第1の凹部2と第2の凹部4の底部から浮くことなく接触するように形成されている。
【0022】
図5には、アタッチメント本体1により第1のシリンジ5が保持されている様子を示している。図5に示すように、アタッチメント本体1は、第1のシリンジ5のシリンダー6をその後端側で保持する。詳しくは、第1のシリンジ5は、そのシリンダー6の後端側に設けられたフランジ7がフランジ受け溝3に嵌められ、第1の凹部2でシリンダー6の後端側が支持されている。図示しないが、第2のシリンジも同様に、シリンダーのフランジがフランジ受け溝3に嵌められ、第2の凹部4でシリンダーの後端側が支持された状態で、アタッチメント本体1により保持される。つまり、第1のシリンジと第2のシリンジは、アタッチメント本体1に対して向きを逆にして嵌められる。
【0023】
ここでシリンジについて、図5に示す第1のシリンジ5を例に説明する。シリンジ5は、一端に注液口8と他端に図示しない開口とをそれぞれ有する筒状のシリンダー6と、このシリンダー6の他端の開口からこのシリンダー6内に移動自在に挿入されたピストン9とから構成されており、シリンダー6の後端側には滑り止め用のフランジ7が設けられている。
【0024】
このアタッチメントによれば、外形形状が異なる2種類のシリンジを確実に保持することができる。それ故、シリンジ駆動装置の使用者は、使用するシリンジの外形形状の種類よりも少ない数のアタッチメントを準備すれば済む。
【0025】
さらに、この実施の形態においては、フランジ受け溝3は、図2に示すように、第1の凹部2とフランジ受け溝3と第2の凹部4が連接する方向におけるアタッチメント本体1の中心位置からオフセットされた位置に形成されている。詳しくは、フランジ受け溝3の位置は、アタッチメント本体1の中心位置から、第1のシリンジ5のシリンダの長さと第2のシリンジ10のシリンダの長さの差の半分の距離だけ、シリンダ長が短いほうのシリンジが嵌合する凹部の側へオフセットしている。このようにすれば、図6に示すように、前記第1の凹部2側に嵌められた第1のシリンジ5の先端から前記中心位置までの距離と、前記第2の凹部4側に嵌められた第2のシリンジ10の先端から前記中心位置までの距離とが等しくなる。
【0026】
したがって、この実施の形態におけるアタッチメントによれば、外形形状が異なる2種類のシリンジを保持した場合でも、このアタッチメントが装着されるシリンジ駆動装置において、それらのシリンジに取り付けられた注射針の先端の位置を一定にすることができる。それ故、シリンジ駆動装置の使用者が使用するシリンジの外形形状に合わせて準備した種々のアタッチメントが装着されても、それらに保持される外形形状が異なる複数のシリンジにそれぞれ取り付けられた注射針の先端の位置を一定にすることができる。さらに、注射針の先端の位置が一定になるので、薬液の吸引や押出しの作業性を向上させることができる。
【0027】
続いて、以上説明したアタッチメントが装着されるシリンジ駆動装置について説明する。図7は本発明の実施の形態に係るシリンジ駆動装置の概略構成を示す斜視図である。この図7には、後述するシリンダー押さえ部及びピストン拘束部を外した状態で、アタッチメント本体1を嵌合部11に嵌合させる様子を示している。この図7に示すように、シリンジ駆動装置には、アタッチメント本体1が嵌合される嵌合部11が設けられており、このシリンジ駆動装置の使用者は、使用するシリンジの外形形状に合わせて準備した種々のアタッチメントを交換して装着させることができる。
【0028】
図8は本発明の実施の形態に係るシリンジ駆動装置の概略構成を示す斜視図、図9は本発明の実施の形態に係るシリンジ駆動装置のシリンジ近傍の主要部の概略構成を示す平面図である。これらの図8、図9に示すように、前記嵌合部11に嵌合したアタッチメントにより、シリンジ駆動装置に対して、シリンダーの中心軸の方向と水平保持状態が確保される。
【0029】
図10は本発明の実施の形態に係るシリンジ駆動装置の機構部の第一状態を示す斜視図、図11は本発明の実施の形態に係るシリンジ駆動装置の機構部の第二状態を示す斜視図である。これらの図10、図11には、後述する本体ケースとカバー部を外した状態で、シリンジ駆動装置の機構部を示している。なお、図11には、シリンダー6の他端に形成された開口12を示している。
【0030】
このシリンジ駆動装置は、前記嵌合部11に嵌合したアタッチメント本体1が保持するシリンジのピストンをその中心軸方向に駆動する。以下、このシリンジ駆動装置について、図7〜図11を用いて、第1のシリンジ5のピストンを駆動する場合を例に、詳細に説明する。
【0031】
このシリンジ駆動装置は、図7、図8に示すように、本体ケース13を備える。この本体ケース13の下部には握り手部14が設けられている。このシリンジ駆動装置は携帯型となっており、シリンジ駆動装置の使用者は、握り手部14を例えば右手で拳銃を握る要領で握った状態で、人差し指の先で操作ボタン15、16を操作する。また、親指と人差し指以外の指は握り手部14に設けられた指置き面14aによりシリンジ駆動装置を握っている。
【0032】
また、本体ケース13の上方には、図7、図9に示すように、シリンダー6を保持するシリンダー保持部17を設けている。シリンダー保持部17は、上面が開口した半円状の凹部を有する。その凹部の底部は、嵌合部11にアタッチメント本体1が嵌合された状態で、前記した第1の凹部2および第2の凹部4の底部と同じ高さとなる。図8〜図11に示す如く、アタッチメント本体1が前記嵌合部11に嵌合している状態で、アタッチメント本体1とシリンダー保持部17にシリンダー6の後部が収納される。
【0033】
また、図8、図11に示すように、シリンダー6の上面には、シリンダー押さえ部18が装着される。シリンダー押さえ部18は、その一端側18aに軸19(図11を参照、)が設けられ、また、この軸19の下方にはばね(図示せず)が配置されており、他端側18bは遊端となっている。そして、一端側18aをばねの引っ張り力に抗して一度持ち上げ、持ち上げた状態で他端側18bを反時計方向に90度回動させることができるようになっている。このため、アタッチメント本体1とシリンダー保持部17にシリンダー6を保持させるときには、先ずシリンダー押さえ部18の一端側18aをばねの引っ張り力に抗して一度持ち上げ、次にその状態で他端側18bを反時計方向に90度回動させて、シリンダー保持部17の上面を開放し、その後、アタッチメント本体1とシリンダー保持部17にシリンダー6を保持させる。そして、その状態で、シリンダー押さえ部18の他端側18bを時計方向に90度回動させて、シリンダー押さえ部18でシリンダー6を押さえ、シリンダー6を固定する。このようにして、シリンジ駆動装置へのシリンジ5のセットを完了させる。
【0034】
なお、シリンダー押さえ部18の他端側18bには、図8、図11に示すように、その他端側18bに係合するロック爪20を設けてあり、シリンダー6のセット完了後、シリンダー押さえ部18にロック爪20を係合させることで、シリンダー押さえ部18によるシリンダー6の固定が不用意に外れるのを防止している。
【0035】
また、図11に示すように、シリンダー6内に開口12から挿入されたピストン9の後端には鍔21が設けられており、この鍔21はピストン操作桿22に当接している。そして、この状態でピストン9をピストン操作桿22に拘束するために、鍔21を挟んでピストン操作桿22とは反対側にピストン拘束部23を設けている。つまり、ピストン拘束部23とピストン操作桿22との間に、アタッチメント本体1とシリンダー保持部17に保持されたシリンダー6に挿入されるピストン9の鍔21が配置される。
【0036】
ピストン拘束部23もシリンダー押さえ部18と同じように、その一端側23aに軸24が設けられ、またこの軸24の下方にはばね(図示せず)が配置されており、さらに他端側23bは遊端となっている。そして、一端側23aをばねの引っ張り力に抗して一度持ち上げ、その状態で他端側23bを時計方向に90度回動させることができるようになっている。このため、ピストン9をピストン操作桿22に拘束させるときには、先ずピストン拘束部23の一端側23aをばねの引っ張り力に抗して一度持ち上げ、次にその状態で他端側23bを時計方向に90度回動させる。その後、アタッチメント本体1とシリンダー保持部17にシリンダー6を保持させてから、ピストン9の後端の鍔21をピストン操作桿22に当接させる。このピストン操作桿22には、ピストン9の鍔21用の溝(図示せず)が設けられており、この溝に鍔21を嵌めることで、ピストン9の中心軸の方向と水平保持状態が確保されるようになっている。そして、その状態で、ピストン拘束部23の他端側23bを反時計方向に90度回動させて、ピストン9をピストン拘束部23で拘束し、ピストン9のセットを完了させる。
【0037】
なお、ピストン拘束部23の他端側23bには、図8、図11に示すように、その他端側23bに係合するロック爪25を設けてあり、ピストン9のセット完了後に、ピストン拘束部23にこのロック爪25を係合させることで、ピストン拘束部23によるピストン9の拘束が不用意に外れるのを防止している。
【0038】
さて、ピストン操作桿22は、図11に示すように、ピストン9の中心軸方向に直交する両側に延長され、この両端で、円柱状のラック26、27の後端と結合されている。これらのラック26、27の中間部分は軸部28、29で軸支されている。また、ラック26、27の先端側には、図7〜図10に示すように抜け止め部30、31が装着されている。これらのラック26、27は、セットされたピストン9の中心軸方向、すなわちセットされたシリンダー6の中心軸方向に可動する。
【0039】
また、図10に示すように、軸部28の下方には切欠32が設けられている。図示しないが、軸部29の下方にも同様に切欠が設けられている。これらの切欠から、ラック26、27の下辺部に設けた歯33、34が下方へと表出する。それらの歯33、34には、各切欠の下方に設けられた歯車(ピニオン)35、36がそれぞれ係合しており、それらの歯車35、36には、それらの下方に設けられた歯車37、38がそれぞれ係合している。歯車37、38の間にも歯車39が設けられており、これらの歯車37〜39は、左右の軸受け41、42で軸支されている一つの軸40に固定されている。よって、これらの歯車37〜39は、一体に回転する。また、歯車39にはウォームギヤ43が係合しており、このウォームギヤ43にはモータ44が結合されている。
【0040】
このシリンジ駆動装置は、操作ボタン15を操作すると、モータ44が正転して、ラック26、27およびピストン操作桿22が、図8に示す矢印45が指す方向にピストン9を駆動する。一方、操作ボタン16を操作すると、モータ44が反転して、ラック26、27およびピストン操作桿22が、図8に示す矢印46が指す方向へピストン9を駆動する。
【0041】
続いて、薬剤を調合する際や、調合後の薬剤を点滴袋等へ充填する際のシリンジ駆動装置の動作について説明する。薬剤を調合する際等においては、図8に示すように、シリンダー6の注液口8に注射針47が装着される。
【0042】
まず、薬剤を調合する場合について説明する。この場合、シリンジ駆動装置の使用者は、右手で握り手部14を握り、左手で薬瓶を持った状態で、先ずは注射針47を薬瓶中に挿入する。そして、その状態で、操作ボタン15を操作する。この操作により、モータ44が正転し、これにより歯車37、38、39が図10において反時計方向に回転し、それにより歯車35、36が時計方向に回転する。すると、左右のラック26、27が図10に示す状態から図11に示す状態へと後方(図8に示す矢印45が指す方向)に移動する。
【0043】
ラック26、27の後端には、ピストン操作桿22が結合されており、またピストン操作桿22とピストン拘束部23でピストン9が拘束されている。そのため、左右のラック26、27が図10に示す状態から図11に示す状態へと後方に移動すると、ピストン拘束部23または鍔21用の溝に押されてピストン9がシリンダー6の外方向(図8に示す矢印45が指す方向)へと引き出される。これにより、注液口8に設けた注射針47が差し込まれた薬剤の瓶内から薬剤をシリンダー6内に吸引することができる。
【0044】
次の薬剤をシリンダー6内に吸引するためには、操作ボタン15の操作をやめてモータ44の回転を止め、この吸引動作を停止し、薬瓶を交換して同様に吸引動作を行わせる。このようにしてシリンダー6内に複数種類の薬剤が吸引されることにより、シリンダー6内で薬剤が調合される。
【0045】
続いて、調合後の薬剤を点滴袋等へ充填する場合について説明する。薬剤の調合が完了すると、今度は握り手部14を握った右手の人差し指で操作ボタン16を操作する。すると、モータ44が反転し、これにより歯車37、38、39が図10において時計方向に回転し、それにより歯車35、36が反時計方向に回転する。すると、左右のラック26、27が図11に示す状態から図10に示す状態へと前方(図8に示す矢印46が指す方向)に移動する。
【0046】
このように、左右のラック26、27が図11に示す状態から図10に示す状態へと前方に移動すると、ピストン操作桿22に押されてピストン9がシリンダー6内に押し込まれる。これにより、薬剤がシリンダー6内から例えば点滴袋へと押し出される。
【0047】
以上の動作説明で理解されるように、この実施の形態では、ピストン9をシリンダー6内から引き出す、あるいは押し込む際に、ピストン9の鍔21にピストン操作桿22とピストン拘束部23から動力を伝える。そして、この動力は、ピストン9の中心軸の左右からラック26、27により供給される構造となっている。すなわち、モータ44の出力はウォームギヤ43から歯車39に伝えられ、軸40を介して一体に構成された歯車37、38に分配される。歯車37、38に分配された力はそれぞれ歯車35、36を介してラック26、27に伝達される。ピストン9の中心軸の左右に位置するラック26、27に伝達された力は、ピストン操作桿22及びピストン拘束部23を介してピストン9を駆動する力となる。
【0048】
このように、ピストン9の中心軸に対して略左右対称の駆動力伝達系が構成されているため、駆動力伝達系が1系統の場合に比べて、駆動力伝達系を構成する各部材に働くモーメント荷重を抑制することができる。その結果として、駆動力伝達系を構成する各部材を、大きなモーメント荷重に耐えるものにする必要は無くなる。したがって、ピストン9の駆動部を小型化、軽量化することができ、ひいてはシリンジ駆動装置の小型化、軽量化も達成することができる。具体的には、左右のラック26、27は、例えば径の細いアルミニューム製とすることができ、また歯車35〜39は、例えば合成樹脂製とすることができる。よって、シリンジ駆動装置を、上述のごとく片手で簡単に保持して操作することが可能な、携帯型とすることができる。
【0049】
また、この片手での携帯型とすることに関連して、この実施の形態に係るシリンジ駆動装置は、使用者の安全性にも十分に配慮した構成としている。以下、この実施の形態に係るシリンジ駆動装置の安全性について説明する。
【0050】
軸部28の下方には、図7、図8に示す如く、外方に突出するカバー部48が設けられている。図示しないが、軸部29の下方にも同様に、外方に突出するカバー部が設けられている。これらの左右一対のカバー部内には、軸部28、29の切欠から表出するラック26、27の歯33、34と、歯車35〜39が収納されている。これにより、握り手部14を握った手が、これらの可動部(ラック26、27の歯33、34と歯車35〜39)に触れることは無く、シリンジ駆動装置の使用者の安全性が高くなる。また、モータ44とウォームギヤ43も、図7、図8に示す如くカバー部49により覆われているので、シリンジ駆動装置の使用者の安全性が高くなる。なお、この実施の形態においては、これらのカバー部は本体ケース13に一体形成しているので、部品点数の増加にもならず、小型化および軽量化を図ることができる。
【0051】
なお、この実施の形態では、ピストン9は、操作ボタン15の押下操作によってシリンダー6内に薬液を吸い込む方向に駆動され、操作ボタン16の押下操作によってシリンダー6内の薬液を押し出す方向に駆動される。この場合、ボタンに触れたときに指の感触でどちらの操作ボタンに触れているのかが分かるようにするのが好適である。特に、操作ボタン16はシリンダー6内の薬液を押し出す方向への駆動指示を与えるものであり、誤った操作で薬液を漏らす危険を極力回避させる必要がある。この実施の形態では、図7、図8に示す如く、操作ボタン15に比べて操作ボタン16の高さを低くして、シリンジ駆動装置の使用者に注意を促している。このように両操作ボタンの高さを異ならせる以外にも、例えば両操作ボタンの形状を異ならせてもよい。具体的には、例えば操作ボタン15は凸形状とし、操作ボタン16は凹形状としてもよい。また例えば、操作ボタン15、16とは別異にイネーブルボタンを設け、そのイネーブルボタンと操作ボタン16との二重押しによってのみ、シリンダー6内の薬液を押し出す方向への駆動が実行されるようにしてもよい。
【0052】
また、シリンダー6内に薬液を吸い込む方向への駆動とシリンダー6内の薬液を押し出す方向への駆動に関して、各々の駆動速度又は駆動力を調整できるボリューム調整部を設けることもできる。特に、シリンダー6内に薬液を吸い込む方向への駆動に関しては、指定された量の薬液の吸引操作になるため、駆動速度又は駆動力が調整できるボリューム調整部がシリンジ駆動装置に設けられていることが望ましい。
【0053】
また、この実施の形態では、モータ44の出力をウォームギヤ43と歯車39によって軸40に伝えて、軸40に一体に構成された歯車37、38に分配して、歯車35、36を介してラック26、27に伝えるようにしたが、この構成に限定されるものではない。例えば、ウォームギヤ43と歯車39をそれぞれ傘歯車としてもよいし、歯車35、36を省略して、歯車37、38を径の大きなもので構成して直接的にラック26とラック27に噛合させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明にかかるアタッチメントは、外形形状が異なる2種類のシリンジを確実に保持することができる。それ故、本発明にかかるアタッチメント及びシリンジ駆動装置は、用意すべきアタッチメントの個数を抑制することができ、病院などにおいて例えば点滴用の薬剤を調合するために使用するシリンジの操作を支援する装置に有用である。
【符号の説明】
【0055】
1 アタッチメント本体
2 第1の凹部
3 フランジ受け溝
4 第2の凹部
5 第1のシリンジ
6 シリンダー
7 シリンダーのフランジ
8 シリンダーの注液口
9 ピストン
10 第2のシリンジ
11 嵌合部
12 シリンダーの開口
13 本体ケース
14 握り手部
14a 指置き面
15、16 操作ボタン
17 シリンダー保持部
18 シリンダー押さえ部
18a シリンダー押さえ部の一端側
18b シリンダー押さえ部の他端側
19 軸
20 ロック爪
21 ピストンの鍔
22 ピストン操作桿
23 ピストン拘束部
23a ピストン拘束部の一端側
23b ピストン拘束部の他端側
24 軸
25 ロック爪
26、27 ラック
28、29 軸部
30、31 抜け止め部
32 切欠
33、34 歯
35〜39 歯車
40 軸
41、42 軸受け
43 ウォームギヤ
44 モータ
47 注射針
48、49 カバー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後端側にフランジが設けられたシリンダーと、前記シリンダーの内部に移動自在に挿入されたピストンとから構成されるシリンジの前記ピストンを駆動するシリンジ駆動装置に装着されるアタッチメントであって、アタッチメント本体に、第1のシリンジのシリンダーが嵌る第1の凹部と、前記第1のシリンジとはシリンダーの外形が異なる第2のシリンジのシリンダーが嵌る第2の凹部と、前記第1と第2のシリンジのシリンダーのフランジが共通して嵌るフランジ受け溝とが、前記第1の凹部、前記フランジ受け溝、前記第2の凹部の順序で連接して形成されていることを特徴とするアタッチメント。
【請求項2】
前記フランジ受け溝にフランジが嵌められ前記第1の凹部でシリンダーが支持された前記第1のシリンジの先端から、前記第1の凹部と前記フランジ受け溝と前記第2の凹部が連接する方向における前記アタッチメント本体の中心位置までの距離と、前記フランジ受け溝にフランジが嵌められ前記第2の凹部でシリンダーが支持された前記第2のシリンジの先端から前記中心位置までの距離とが等しくなる位置に前記フランジ受け溝が形成されていることを特徴とする請求項1記載のアタッチメント。
【請求項3】
請求項1もしくは2のいずれかに記載のアタッチメントが嵌合される嵌合部が設けられており、前記嵌合部に嵌合した前記アタッチメントが保持するシリンジのピストンを駆動することを特徴とするシリンジ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−67229(P2011−67229A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218340(P2009−218340)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】