説明

シリンジ補助器

【課題】体内の奥深い部分に無駄なく薬剤を適用することができるシリンジ補助器を提供する。
【解決手段】シリンジのバレルBに連結され、そのシリンジのピストンロッドPを受け入れ可能なシリンダ4と、シリンダ4の内面に密接してシリンダ4内を往復動し、前進時に先端面がピストンロッドPの後端面に当接しうるプランジャ5とを備え、シリンダ4が、先端面にバレルBの外周面と相補する孔を有し、後端面が開放された相対的に短い筒状のアタッチメント2と、先端がアタッチメント2の後部に嵌合可能で、プランジャ5が往復動するための相対的に長い筒状の本体3とからなり、バレルBへの連結が、バレルB後部にバレルBよりも径方向外側に突出するようにバレルBと一体的に形成されたフランジFをアタッチメント2と本体3とで挟むことによりなされることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シリンジ内の薬剤を押し出すための補助器に関し、特に薬剤が医療用接着剤や止血剤などの粘性の高い液体である場合、及びシリンジがプレフィルドシリンジである場合に好適に利用される。
【背景技術】
【0002】
外科手術では、手術時間を短縮する、抜糸を不要にする又は血管等の細部を接着する等の目的で、縫合に代えて又は縫合と併せてフィブリン糊などの生体適合性に優れた接着剤が塗布されることもある。塗布の手段として、感染の危険を軽減する、救急時の迅速な塗布を可能にするなどの目的のため、予めバレルに接着剤が充填されたプレフィルドシリンジが用いられることがある。プレフィルドシリンジは、そのまま用いられる場合と、先端に細長いノズルを取り付けることにより、体内の奥深い部分まで届くようにして用いられる場合とがある(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】エチコン社ホームページ(2011年8月16日改訂)、[online]、[平成23年8月17日検索]、インターネット<http://www.ethicon360.com/products/surgiflo-hemostatic-matrix>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、プレフィルドシリンジは、接着剤の充填量によって、その内径や長さが定まっていて、体内の奥深い部分に届くほどに長いものは市販されておらず、奥深い部分に対してはそのままでは使用できなかった。かといって、前記のようにノズルを取り付けると、ノズル中に高価な接着剤が残存し、非経済的であった。
また、医療用接着剤は、粘性が高いため、シリンジから押し出す際に通常の薬剤よりも強い力をかける必要があるところ、ピストンロッドの後端面の面積が狭いため、その反力によって指が受ける圧力が高くなり、外科医に負担となっていた。
それ故、この発明の第一の課題は、体内の奥深い部分に無駄なく薬剤を適用することのできるシリンジ補助器を提供することにある。第二の課題は、粘性の高い薬剤であっても押し出し易くすることができるシリンジ補助器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
その課題を解決するために、この発明のシリンジ補助器は、
シリンジのバレルに連結され、そのシリンジのピストンロッドを受け入れ可能なシリンダと、
シリンダの内面に密接してシリンダ内を往復動し、前進時に先端面が前記ピストンロッドの後端面に当接しうるプランジャと
を備えることを特徴とする。
【0006】
このシリンジ補助器をシリンジに連結すれば、使用者の手元からシリンジの先端までの距離が、補助器の長さだけ延びるので、シリンジの先端を体内の奥深い部分まで届けることができ、奥深い部分であっても薬剤を無駄なく適用することができる。また、使用者の手元からシリンジの先端までの距離が、補助器の長さだけ延びることから、シリンジのピストンロッドの後端面の面積よりもプランジャの後端面の面積を大きくしたり、プランジャにてこを組み合わせたりすることができ、その結果、指先にかかる負担を軽減し、シリンジ内の薬剤を押し出し易くすることができる。
【発明の効果】
【0007】
体内の奥深い部分であっても薬剤を無駄なく適用することができるので、経済的である。また、シリンジ内の薬剤を押し出し易くすることができるので、外科医等のシリンジ使用者の負担が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第一の実施形態に係るシリンジ補助器を示す正面図である。
【図2】同シリンジ補助器のアタッチメントと本体を分離した状態の軸方向中心線に沿う断面図である。
【図3】同シリンジ補助器の左側面図である。
【図4】同シリンジ補助器の使用状態を示す、軸方向中心線に沿う断面図である。
【図5】第二の実施形態に係るシリンジ補助器のアタッチメントと本体を分離した状態の要部正面図である。
【図6】第三の実施形態に係るシリンジ補助器のアタッチメントと本体を分離した状態の軸方向中心線に沿う要部断面図である。
【図7】第四の実施形態に係るシリンジ補助器の要部斜視図である。
【図8】第四の実施形態に係るもう一つのシリンジ補助器の要部斜視図である。
【図9】第五の実施形態に係るシリンジ補助器を示す正面図である。
【図10】第六の実施形態に係るシリンジ補助器を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
−実施形態1−
第一の実施形態に係るシリンジ補助器を図1〜図4とともに説明する。シリンジ補助器1は、シリンジに連結されてシリンジ使用者の入力を補助するためのもので、アタッチメント2の附属した本体3を有するシリンダ4と、プランジャ5とを備える。連結されるシリンジとしては、バレルB及びピストンロッドPを備え、バレルB後部にバレルBよりも径方向外側に突出するようにフランジFがバレルBと一体的に形成された一般的なタイプのものであってよく、プレフィルドシリンジも含まれる。
【0010】
アタッチメント2は、先端面にシリンジのバレルBの外周面と相補する孔を有し、後端面が開放された短い円筒状をなす。本体3は、先端がアタッチメント2の後部より圧入可能で、アタッチメント2よりも長く且つ少なくともシリンジのピストンロッドPよりも長い円筒状をなす。本体3の先端面にはシリンジのピストンロッドPを通すがバレルBのフランジFを通さない程度の孔が設けられている。本体3の後端面には、中心にプランジャ5のロッド5aを通す孔が設けられているとともに、フランジ3aが径方向に突出している。尚、本体3は角筒状であってもよい。
プランジャ5は、本体3よりも十分に長いロッド5aと、ロッド5aの先端に本体3の内周面と密接する前板5bと、後端にピストンロッドPの後端面よりも大きく、指の腹を押し当てても腹が局部的にへこまない程度の面積の後板5cを一体的に有する。
【0011】
シリンダ4及びプランジャ5の材質は、γ線滅菌、EOG滅菌、乾熱滅菌、蒸気滅菌、化学滅菌のうちのいずれかの方法で滅菌できるものであればよく、PP、ステンレス、ガラス、熱可塑性ゴム等が挙げられる。本体3は透明にして目盛りが印字されていても良い。
【0012】
シリンジ補助器1をプレフィルドシリンジに使用する時は、図4に示すように、先ずバレルBをアタッチメント2の孔に通す。次に、ピストンロッドPをシリンダ4の本体3に挿入させた状態で本体3の先端をアタッチメント2の後部に圧入する。これにより、バレルB後部にバレルBと一体的に形成されたフランジFがアタッチメント2と本体3とで挟まれ、ピストンロッドPが本体3内で往復動可能になるとともに、シリンダ4がバレルBに連結される。そして、後板5cを押すと、プランジャ5にかかる力がピストンロッドPに伝達されて、ピストンロッドPが前進し、バレルB内の薬剤が押し出される。
【0013】
シリンジ補助器1をシリンジに連結することにより、薬剤の投与個所が、体内の奥深い部分のようにプレフィルドシリンジ単独では届きにくいような遠い位置であっても、プランジャ5の分だけ長さが延びるので、投与可能である。後述の実施形態2〜6においても同様である。また、プランジャ5の後板5cがピストンロッドPの後端面よりも大きい面積を有するので、薬剤がウレタンプレポリマーを含む医療用接着剤のように高粘度のものであって力強く押し出さなければならない場合であっても、指の腹にかかる圧力が軽減され、押し出しやすくなる。
【0014】
−実施形態2−
この実施形態では、実施形態1でシリンダ4の本体3がアタッチメント2に圧入されていたのと異なり、図5に示すようにアタッチメント12の後部内周面及び本体13の先端部外周面にそれぞれ雌ねじ及び雄ねじが形成されている。そして、それらのねじ運動に伴って両部材の嵌合がなされることにより、シリンジ補助器11がシリンジ(図示省略)に連結される。ねじ嵌合でしっかりと固定されているので、薬剤の粘性が高い故に相当力強く押し出さなければならない場合であっても、アタッチメント2が本体3から抜けることはない。
【0015】
−実施形態3−
この実施形態では、図6に示すようにアタッチメント22の後部内周面及び本体23の先端部外周面にそれぞれ互いに相補する環状の凸部及び凹部が形成されている。そして、本体23がアタッチメント22に圧入されることにより、シリンジ補助器21がシリンジ(図示省略)に連結される。凸部と凹部が係り合っているので、薬剤の粘性が高い故に相当力強く押し出さなければならない場合であっても、アタッチメント22が本体23から簡単に抜けることはない。しかも圧入であるから、短時間に前記連結を行うことができる。
【0016】
−実施形態4−
この実施形態では、図7に示すようにシリンダの本体33が後端面にねじ孔を有し、プランジャ35の外周面にそのねじ孔と嵌合する雄ねじが形成され、後板35cがロッド35aの径方向断面よりも十分に大きい多角形をなしている。そして、後板35cを回転させることにより、プランジャ35がねじ運動に伴って本体33内を往復動する。
【0017】
ロッド35aが本体33の後端面にねじ嵌合しているので、押し出し時に後板35cから指が離れてしまってもシリンジのピストンロッド(図示省略)及びプランジャ35が後退することはない。従って、薬剤の泡立ちが防止される。また、後板35cがロッド35aの径方向断面よりも十分に大きい多角形をなしているので、大きい回転力がロッド35aに伝えられる。従って、指先の力が弱くても高粘度の接着剤を押し出すことができる。
尚、後板35cに代えて、図8に示すようにロッド35aの後端より径方向に延びて続いて後方に屈曲したハンドル35dが取り付けられても良い。
【0018】
−実施形態5−
この実施形態では、実施形態1の構成に加えて更に、図9に示すように挟み式の一対のレバー6a、6bを備える。即ち、その第一のレバー6aの先端がシリンダの本体43の後端に、第二のレバー6bの先端がプランジャ45の後端にそれぞれ固定されている。そして、レバー6a、6bを握って、それらの後端を互いに寄せ合うことにより、プランジャ45がシリンダの本体43に対して前進する。従って、てこの作用により、握力が弱くても高粘度の接着剤を押し出すことができる。
【0019】
−実施形態6−
この実施形態では、実施形態5の構成に加えて更に、シリンダの本体53の後端と第二のレバー16bとの間にリターンスプリング7が配置されている。従って、レバー16a、16bを握る力を解除すると、プランジャ55がリターンスプリング7の弾性復元力によって後退する。尚、リターンスプリング7は、シリンダ内に配置されてもよい。その場合は、前板55bと本体53の後端との間に配置される。また、プランジャ55の後端は、本体53内への全入防止及び危険防止のために滑らかに湾曲している。湾曲に代えて球状に形成してもよい。
【符号の説明】
【0020】
1、11、21 シリンジ補助器
2、12、22 アタッチメント
3、13、23 本体
4 シリンダ
5、45、55 プランジャ
6a、6b、16a、16b レバー
7 リターンスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジのバレルに連結され、そのシリンジのピストンロッドを受け入れ可能なシリンダと、
シリンダの内面に密接してシリンダ内を往復動し、前進時に先端面が前記ピストンロッドの後端面に当接しうるプランジャと
を備えることを特徴とするシリンジ補助器。
【請求項2】
前記シリンダが、先端面にシリンジのバレルの外周面と相補する孔を有し、後端面が開放された相対的に短い筒状のアタッチメントと、先端が前記アタッチメントの後部に嵌合可能で、前記プランジャが往復動するための相対的に長い筒状の本体とからなり、
前記バレルへの連結が、バレル後部にバレルよりも径方向外側に突出するようにバレルと一体的に形成されたフランジを前記アタッチメントと前記本体とで挟むことによりなされる請求項1に記載のシリンジ補助器。
【請求項3】
前記アタッチメントの後部内周面及び前記本体の先端部外周面にそれぞれ雌ねじ及び雄ねじが形成され、前記嵌合が、それらのねじ運動に伴ってなされる請求項2に記載のシリンジ補助器。
【請求項4】
前記アタッチメントの後部内周面及び前記本体の先端部外周面にそれぞれ互いに相補する環状の凸部及び凹部が形成され、前記嵌合が、圧入である請求項2に記載のシリンジ補助器。
【請求項5】
前記プランジャの後端面が前記ピストンロッドの後端面よりも大きい面積を有する請求項1に記載のシリンジ補助器。
【請求項6】
前記シリンダが後端面にねじ孔を有し、前記プランジャの外周面にそのねじ孔と嵌合する雄ねじが形成され、プランジャがねじ運動に伴ってシリンダ内を往復動する請求項1に記載のシリンジ補助器。
【請求項7】
更に、挟み式の一対のレバーを備え、その第一のレバーの先端が前記シリンダに、第二のレバーの先端が前記プランジャにそれぞれ固定されている請求項1に記載のシリンジ補助器。
【請求項8】
更に、前記シリンダ外又はシリンダ内にリターンスプリングが配置され、前記プランジャがそのリターンスプリングの弾性復元力によって後退する請求項1に記載のシリンジ補助器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−48662(P2013−48662A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186950(P2011−186950)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】